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2019年08月21日
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【留美 押しかけにゃー】

2010年08月17日
 このところ暑いのでおうちでうんだりしてる毎日なのですが、そんな平穏な日常を脅かす魔の手が俺の元へ忍び寄ろうとしていた。
「暑いっ!」
 ていうか早速来た。魔の手が。
「あの。留美さん、いきなりなんの御用でせうか」
「夏休み入ってからずーっと待っ……じゃない、アンタがあたしの家に突然来るかもしんないって思うと落ち着かないから、あたしから来てやったのよ! 感謝しなさいよね!」
 この魔の手は留美といい、俺のクラスメートだ。高校に入ってからずっと同じクラスで、俺の自意識過剰でなければそこそこ仲がいいと思う。のだけど。
「あの、留美さん。行かないから。用事とかないから」
「来なさいよっ! 落ち着かないじゃない!」
「行ったら行ったで文句言うだろ」
「言うに決まってるじゃない」
 どうしろと言うのだ。
「それより! 折角来てやったんだから、あたしを楽しませなさいよ。アンタあたしの奴隷なんだから、いつ何時でもあたしを楽しませなきゃダメなんだからね?」
「はい?」
「奴隷よ、奴隷! 言っとくけど、永続契約だから解除とかはないからね!」
「何を言ってるのですか。暑いからですか。それとは関係ナシに頭がダメなのですか」
「むーっ!」
 むーと言われつつ頬をつねられていると、ふと思い出した。
 一年ほど前、こいつと一緒にゲームして遊んでたとき、戯れに賭けをして、勝った奴が負けた奴を奴隷にできる、というゲームをした。そして俺は負け、奴隷になってしまった。で、その契約はまだ継続している、らしい。
「ほら、楽しませなさいよ。アンタ奴隷でしょ?」
「なんてめんどくさい奴だ」
「うるさい! 暇になっちゃったんだから、何かして楽しませなさいよ!」
「ああ、そういうことか。んじゃ、どっか遊び行くか?」
「えっ、そ、それって、デー……ト?」
 留美は手をこしょこしょと結び合わせ、上目遣いで俺を見た。
「いや、んな大層なものではないけれども」
「…………。ふ、ふん! それは嬉しい限りね! 誰がアンタなんかと遊びになんて行くもんですか! 調子に乗らないでよね! ばか、ばーか!」
「やっぱデートかも」
「うっ……で、でも、どーしてもあたしと一緒に遊びたいなら、あんまりにもアンタが哀れだから遊んであげなくも」
「いや、やっぱデートではない」
「…………。もーっ! 人で遊ばないの! いーから一緒に遊びなさいっ!」
「いいけど、暑いから外に行くのは嫌だ。おうちで遊ぶならいい」
「え? ……こ、こんな狭い場所で、ふたりっきり?」
 留美はほんのり頬を染め、きょろきょろと周囲を窺いつつ確かめた。
「そう。もし嫌ならもうちょっと涼しい日に改めてどこかへ遊びに行きますが」
「ううんっ! ここで! 今日! 一緒に! 遊ぶの!」
「そ、そうか」
 あまりの勢いに、少したじろぐ。
「あっ! ……べ、別にアンタと一緒で嬉しいとかじゃないからねっ! そこ、勘違いしたら殺すからねっ!」
「はぁ」
「……で、でもちょこっとだけの勘違いならゆるす」
 何がだ。
「そ、それより! 一体何をしてこのあたしを楽しませてくれるって言うの?」
「何も考えていません」
「はぁ? そんなのでよくもまああたしを誘ったものね。何考えてんだか」
「誘ってません。勝手に押しかけられました」
「……そ、それはともかくとして」
 ともかくとするな。
「じゃ、じゃあ、あたしの考えた遊び、する?」
「まあ、いいけど」

「……遊び?」
「そ、そうよ。何か変なことでも?」
 留美の考えた遊びとは、俺が留美を前から抱っこして時折頭をなでること、らしい。
「遊びではないよね。ていうか、対面座位だよね」
「? なにそれ」
「……いや、なんでもない」
 思ったより性の知識がなくてお兄さん安心しました。
「それより、この体勢はどうかと思うぞ。なんちうか、恋人同士が抱き合ってるように見えるような」
「あ、アンタの身勝手な恋人論なんてどうでもいいの! それより、手が空いてるわよ?」
「はぁ」
 指摘されたので、とりあえず留美の頭をよしよしなでる。
「もっと」
 もうちょっとなでる。
「もっと! もっといっぱい!」
 たくさん望まれたのでたくさんなでる。
「そ、そう。そんな感じ。……で、でも、もちょっと」
 言われた通りにもっとなでる。なでる合間に頭をごく軽く、ぽんぽん叩いたりとかもしてみる。
「へへ……えへへ。えへへぇ」
「留美の言語野がおかしくなった。しかしこの暑さだ、留美だけを責めるのは酷か」
「おかしくなってないっ! ……そ、それよりさ。アレだったら頭だけじゃなくて、他のとこもなでていーから」
「胸かっ!」
「言うと思ったわよ、変態っ! ……そ、そゆとこじゃなくて、ほっぺたとか、おなかとか」
「お尻とか!」
「今日も変態っ!」
 変態扱いされ悲しいので、乳やら尻やらは置いといて、ほっぺをなでたりふにふにしたり両手で挟み込んだりしてみる。
「……あ、アンタってばホントーにあたしを触るの好きよね。ほっぺなでる手つきとか、いやらしーもん」
「あー。お前触ってると気持ちいいからそうなっちゃうのかな」
「……へ、へんたい」
 留美は俺をなじりながらも、ほっぺをうにうにされて気持ちよさそうに目を細めていた。
「留美って猫みたいだな。にゃーとか鳴け」
「誰が鳴くもんですか!」
「ほら、にゃーだ。にゃー」
「い、言わないってば」
「にゃーって言って。ほら、留美。にゃー」
「……にゃ、にゃー」
「留美は簡単だな」
「にゃー!」
 にゃーぱんちが飛んできて痛い。
「痛いのですが」
「人を馬鹿にした罰よ。ふん、だ」
「いや、人を猫にしたんだ。だから、人を猫にする罰にしろ」
「にゃー!」
 再びにゃーぱんちが飛んできてやっぱり痛い。
「一緒なのですが」
「人を猫にするからよ。がうがう」
「食うな」
 留美は俺の肩に口をつけ、あむあむ軽く噛んだ。
「あう……なんかしょっぱい」
 しかし、すぐに俺から口を離すと、留美は顔をしかめさせながら舌を出した。
「汗かいたからな。それも已む無しだ」
「しゃざいとばいしょーをようきゅーするにだー」
「ふむ。じゃ、今度どっか一緒に出かけたときに何か買ってやるよ。安いの」
「最後に何か変なのついた! 高いのが欲しい!」
「俺と一緒にいる限り、高級品とは縁がないものと思え! ふわーっはっはっは!」
「あぅー……なんて甲斐性のない奴だ。こんなで将来だいじょぶかなあ」
「将来?」
「ん? ……ち、違くて! 別にアンタと一緒の未来なんて想像なんてしてないし! そんなの考えるだけでもおえーって感じだし! 子供は二人くらい欲しいし!」
 留美は顔を真っ赤にさせながらあわあわと抗弁した。ていうか、なんか混じってる。混乱しすぎだ。
「そ、そゆことだから。勘違いしたらにゃーだからね!?」
「それは大変に怖いので勘違いしません」
「そ、それならいい。……で、でも、1ミリくらいなら勘違いゆるす」
 何をだ、と思いながらぶすーっとしてる留美のほっぺをむにむにする俺だった。

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【凛 誰だ】

2010年07月05日
 昼休み。飯も食い終わったので、中庭でぼやーっとしてたら、不意に視界が黒に染められた。誰かに後ろから目を塞がれた様だ。
「えへへっ。だーれだ?」
「符長彰人です」
「違うの! 彰人が誰か聞いてないの! こうやって、だーれだってやってる人を聞いてるの!」
「分かりません」
「もーちょっと考えてから、そういうことは言ってほしいのに……」
「ふむ。声から考えるに、女性、もしくはまだ声変わりが起きていない少年だろう。さらに顔に当たる手の大きさから、小柄な人物と考えられる。体温はやや低い。そこから導き出される答えは──」
「もー! 遅い!」
 折角人が答えようとしたのに、視界を開けられた。そして、件の人物が俺の前に回りこんできた。
「やっぱ凛か。こんにちは」
 俺に目隠しをしていたのは、絶賛交際中のお嬢さん、凛だった。気の強そうな切れ長の瞳が俺を見つめている。
「こんにちは! そうじゃなくて、もっと早く答えるの!」
「こんぬつはっ」(0.2秒)
「するんじゃないかと思ったけど、そうじゃないの! あとなんかなまってる!」
「田舎出身なんだ」
「嘘ばっかり……それで、何か言うことは?」
 凛は腰に手をあて、俺に何かを促した。
「ええと。よしよし?」(なでなで)
「違うの! ……ち、違うけど、もちょっと」
 欲求されたので、もっと頭をなでてみる。
「へへ……なでられちった♪」
 凛は嬉しそうにニコニコしながらなでられた箇所をさすった。
「嬉しそうで何よりです」
「うんっ♪ ……じゃなかった。あのね、彰人。彰人が好きな人がだーれだってやったんだから、すぐに分からなくちゃダメだよ?」
「すきなひと」
「そ、そだよ。……そだよね?」
 心なしか不安な面持ちで、凛は俺の顔色を窺った。
「まあ、否定はしませんが。ていうか、恋人ではないのですか」
「ち、違うもん。彰人が凛のこと好きなだけで、凛は別に彰人のこと好きじゃないもん」
「そうなの?」
「そうなの! だから、もっとしっかり凛のこと捕まえておかないと、凛、どっか行っちゃうよ?」
「浮気されて許せるほど男らしくも心が広くもないからなあ。裏切られたら絶望してすぐに自殺すること請け合い」
「しないけど! 絶対にしないけど! ずっとずーっと彰人と一緒だけど! でも捕まえておかないとダメなの!」
 凛は半泣きになりながら俺の服の袖をぎゅっと強く握った。お前が捕まえてどうする。
「捕まえるなあ……具体的には?」
「え? えと……次のお休みにデート! ショッピングとかー、映画とかー、動物園とか! あ、水族館とかもいーね?」
「次の小遣い支給日まで、お金がありません」
「彰人のかいしょーなし……」
「面目次第もない」
「しょーがないなあ……凛がおごったげるから、一緒に行こ? ね?」
「いや、しかし……」
「なに? お金ならあるから心配しなくてもいーよ?」
 凛は少し前まで豪奢な衣装を纏ってTVカメラや人前で踊ったり歌ったりする仕事に就いており、その時に貯めた金がものすごいことになっている、というのを以前本人の口から聞いたことがある。
「うーん。やはり女性におごられるというのは、どうにも男としてプライドが邪魔をする」
「気にしないでいいのに……。だいたいさ、もし凛と結婚したら、彰人は一生凛におごられっぱなしなんだよ? だから、全然気にしなくてもいーんだよ?」
「クズ男の見本みたいで嫌なので、凛と結婚はしないでおこう」
「もし結婚したらお金全部どっかに寄付するから平気だよ!?」
「それはそれでどうかと」
「うー……そんなのいーからデート! デートするの! デートデートデート!」
「あー、はいはい、分かったからあんま連呼するな。だが、デート費用は俺に出させてもらおう。男のささやかなプライドを守らせてくれ」
「うんっ、うんうんっ! えへへっ、やったね。彰人とデートだ。……えへへっ♪」
 凛ははちきれそうな笑顔を振りまいた。見てるこっちまで嬉しくなってきそうだ。
「そこまで喜んでいても、俺が好きではないのですね」
「う……え、えと、そう。そうなの。彰人が凛を好きなだけで、凛は別に、って感じなの」
「悲しさのあまり自殺しそうだ」
「別にって感じの中でも最上級の好きだから大丈夫だよ!?」
 何が大丈夫なのか。しかしまあ、必死の形相で俺の服の袖を引っ張っているので、やめておこう。
「うー……彰人はすぐ自分の命を脅迫の材料に使うよね」
 凛は少し不満そうに俺の鼻をむぎゅーっと押した。
「あまり押すと自爆装置が作動するので危険ですよ?」
「彰人ってロボットなの?」
「初耳だ」
「彰人って、基本的に思考が混乱してるよね」
 なんて失礼な奴だ。髪をわやくちゃにしてやれ。というわけで、両手で凛の頭をわしわしする。
「うやー♪」
 失敗。なんか喜ばれただけだった。
「ううう……うふー。へへー、なんかまたいっぱいなでられちゃった♪」
「じゃあそういうことで、次の休みはどっかデートな。そして現在、腹いっぱいの俺は眠い」
「そなんだ。……あのさ、膝枕。してあげよっか?」
「ほう、それはナイス提案。んじゃ、早速お願い」
「ちょっとは照れるとか喜ぶとかしてほしいのにぃ……」
「凛に膝枕されるというとんでもない事態に、心臓がドキドキを堪え切れず爆発四散しそうだ」
「また思ってもないこと言って……うー、それでも嬉しくなっちゃう自分がヤダ」
 凛は少しだけふてくされた顔をして、正座した。そして、俺にこいこい手招きした。
「はい。準備かんりょーだから寝ていいよ?」
 いいらしいので、凛の太ももに頭を乗せる。少々肉付きが足りないが、それでも一応は女性なのでもふもふして柔らかい。
「へへー。どう? どう? 気持ちー?」
 凛は俺の顔をぺたぺた触りながら、ニコニコ訊ねた。
「悪くない」
「もっと全力で喜ぶの! わーいって!」
「わーいって」
「余計な部分がついてるの!」
「いって」
「必要な部分がどっかいっちゃった!? ……もーいーよ。彰人に普通を要求した凛が馬鹿だったよ」
「いって、炒って……コーヒー豆? むぅ、なんかコーヒーが飲みたくなってきた」
「しかも、なんか勝手に話進めて、勝手にコーヒー飲みたくなっちゃってるし……」
「ちうわけで、凛。そこの自販機で缶コーヒー買ってくるから、ちょっと待ってて」
「あっ……」
 名残惜しいが凛の太ももから離れ、自販機に向かおうとしたら手をきゅっと握られた。
「凛?」
「凛も一緒に行く」
「え、いや、すぐそこなんだけど……」
 中庭を挟み、ほんの50mほど先の自販機を指差すが、凛は手を離そうとはしなかった。
「一緒に行くの! ……ほ、ほら、彰人、一人だったら泣いちゃうだろうし」
「幼児か、俺」
「いーから一緒なの!」
「まあいいか……」
 凛と二人、おてて繋いで自販機へ向かう。その道中、何やら隣からじーっと見られているような。
「どした、凛?」
「んー? なんでもないんだけどね……えへへ。一緒がね、嬉しいの♪」
「…………」
「り、凛がじゃなくて、彰人がそうじゃないのかなーって思っただけなんだよ!? ほ、ホントに……ホントだよ?」
「可愛いですね」
「う!? ……そ、そりゃ可愛いもん。元アイドルだもん。で、でも唐突にそゆこと言うの禁止!」
「見た目もそうだけど、今回は性格の方です」
「なっ!? ……う、うー! そゆの禁止! 凛を喜ばすの禁止!」
「なんて無茶な。言論の弾圧だ」
「弾圧でもなんでも禁止! 禁止なの!」
 隣でわきゃわきゃ言いながらにやにやしてる赤ら顔の生物を引きつれたまま、俺はゆっくり中庭を横断するのだった。

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【姉に「あたし、実は女の子なの」って意味なく嘘を付いてみたら】

2010年02月11日
 うん、そういう無意味な嘘は大好物なので早速。
「姉さん、あたし、実は女の子なの」
「…………」
「やめて無言でズボンずらさないで嘘ですついてます!」
「…………」
「だから嘘だって嘘だってばついてるってぬがさないでと言ってるのにパンツまで!?」
「……ほう」
「ほうとか言うなぁぁぁぁぁッッッ!!!」

「そう落ち込むな、弟よ。少しばかり驚愕しているが、大丈夫。姉は頑張るぞ」
「何を!? いや待て言うな言うなよ! 別にフリでもなんでもなくて!」
「無論、弟を迎え入れることに」
「だから言うなと言ってるのに! ええい、ここは自宅じゃなくて学校! 昼時の中庭なので衆目も沢山! わきまえて下さい!」
「む。いかん、姉は少し興奮していたようだ。反省」
「分かってくれればいいんだよ、分かってくれれば」
「弟よ、姉が作った玉子焼きを食え。ほら、あーん」
「てめえ、さては何ひとつ分かってねえな?」
「ほら、あーん、だ。あーん」
「いや、だからみんな見てるってば」
「あーん」
「……あーん」
「ほら。どうだ? うまいか?」
「もぎゅもぎゅ」
「うまいだろう? 姉の手作りだからな。ほら、うまいか?」
「もぐもぐもぐ」
「咀嚼が長い! 早く感想を言えッ!」
「怖い」
「味の感想だッ!」
「おいしいです」
「……ふ、ふん、当然だ。姉の手製だからな。ほら食え、もっと食え、これも食え」
「もがもがもが」
「もがもがではない!」
「もがもが……もぎゅ、もぎゅもぎゅもぎゅ、ごくん」
「どうだ? 美味いか?」
「リスってすげえな」
「味の感想を言えと言っている!」

 何故か分からないが大層怒られる昼食を終え、教室へ戻る。その最中、そこかしこでひそひそと囁かれる声が耳に届く。
「すっげえ美人……」
「クールビューティーって感じだよね」
「先輩、かっこいい……」
 そのどれもこれもが姉を賛美する言葉であり、隣を歩く弟としては誇らしいが、同時に俺という個体が無視されてるのが少し悲しい。
「ほら、背が曲がっているぞ。しゃんとしろ」
 悲しさから少し猫背になっていたようで、姉に注意された。
「背骨を骨折したからしょうがないんだ」
「お姉ちゃんに任せろ!!!!!」
「待って嘘嘘ですからやめてお姫さま抱っこってありえねえ!?」
 あっという間に抱きかかえられ、姉は俺の言葉を完全無視し、保健室へ俺を連行した。

「……なんともないが」
「どういうことだ!」
 怖い顔で俺の顔を覗き込む姉の奥で、頭をぽりぽりかく養護教諭。
「治った」
「こんな短時間で治るものか! 貴様、嘘をついていたな! 姉に嘘をつくなど……許さないぞ!」
「許されない場合、どのような仕打ちが?」
「もう一緒にご飯食べてあげないし一緒に布団に入ってあげないし寝る時に抱っこしてやらない!」
 養護教諭が苦笑しながら俺を見る。違うんです、別に望んでのことではないんです。
「いいのか!? 私は嫌だぞ!」
 嫌なのか。
「ほら、謝れ。今なら許さなくもないぞ? しかも、特別に今日だけ一緒にお風呂に入ってやるぞ?」
 断固謝らないことに決定。
「姉弟ってすごいな」
「これをノーマルと思われると色々問題があると思われます」
「お姉ちゃんの話を聞けッ!」
 養護教諭と話してたら、姉に頭を持たれた。
「い、いま謝ったら、特別に、お姉ちゃんがほっぺにちゅってしてやるぞ? と、特別だからな!」
 非常に危険がピンチ。助けて先生!
「おー……」
 何を目をキラキラさせて行方を見守ってんスか。いいのか聖職者。
「ほ、ほら、ごめんなさい、だ。ごめんなさいって言え」
「そんな名前のエロ漫画家がいるよね。ファンです」
「知らんッ!」
 さてどうしよう、と思ってたらチャイムが鳴った。好機!
「授業に行かなければと思ったので授業に行く!」
「阻む姉」
「阻む養護教諭」
 女性二人がドアの前に立ち塞がる。ていうか、
「アンタは阻むな、教師!」
「面白そうだからな!」
 養護教諭は愉快そうにメガネをかけ直した。こんな教師雇うな。
「さて……謝罪の言葉はどうだ、弟よ?」
「いや、その……」
「…………」
「そこっ! 携帯構えるな! 写メか、写メ撮る気だな!?」
「私にも後でそのデータ寄こせ、養護教諭!」
「任せろ!」
「この空間おかしい」
 結局、謝りました。ほっぺに暖かい何かが触れ、結果相好が崩れるのをパシャパシャ撮られた。チクショウ。

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【ちなねえ 起こされる】

2010年02月07日
 俺こと彰人には年上の幼馴染がいる。昔から色々と可愛がってもらって非常にありがたいのだが、高校生になった今でもその対応が変わらないのはどうなんだろう。
「……重いですか、アキくん?」
 そんなことを寝起きのぼんやりした頭で考えつつ、人の布団の上にのぺーと乗ってる年上の幼馴染、ちなねえを見る。
「あまりの重さに全内臓が震撼しそうだ」
「……お姉ちゃんは、映画じゃないです」
「ええっ!? 知らなかった……」
「……朝から変なアキくん」
「朝っぱらから人の布団にのっかる妖怪みたいな奇行してる人に言われたくない」
 ほっぺをうにーっと引っ張られた。
「痛え」
「……お姉ちゃん、アキくんの育て方間違ったかな?」
「はいはい。いーからのけ」
 ちなねえごと布団を横にまくり上げ、起床。おはようございます。
「にゃ。……ひどい。お姉ちゃん捨てられました。……お姉ちゃん、めそめそ」
 うるさいので布団で巻く。
「……お姉ちゃん、お寿司になりました。……出してください」
「朝、人の布団に乗ってこないなら出す」
 うにうにと体をくねらせ、ちなねえは自力で脱出しようとした。しばらくうねうねしてたが、無理っぽい。
「……出して、ください」
 泣きそうになってたので、慌てて布団から解放する。
「……アキくんのいじわる」
「いや全く。ごめんな、ちなねえ」
「……ちゅーしてくれたら、許します」
「俺のことは永久に許さなくていいです」
「がーん。……選択肢を誤りました。やはり、『許せねえ。絶対殺す』という選択肢の方がよかったのでしょうか?」
 それだけは絶対に違うと断言できるが、もう朝から疲れ果てたのでちなねえを放って部屋を出る。
「……お姉ちゃんもー」
 ふらふらしながらちなねえもついてきた。そしてそのまま俺を抜き、一人で台所に入ってしまった。
「もふもふ。……おいしい」
 続いて俺も台所に入ると、さっき台所に入ったはずのちなねえがまだ湯気の立ってるパンをぱくついていた。
「おはよ。母さん、俺のパンは?」
「ちなちゃんが食べてるわよ」
 皿洗いしてる母さんがこともなげに言った。幸せそうに人のパンを食べてるちなねえを見る。
「むしゃむしゃむしゃむしゃ、ごくん。……食べてないです」
 口周りにむちゃくちゃパンくずをつけながら、ぷるぷると首を振るちなねえ。隠す気ゼロだな、この人。
「母さん、まだパンある?」
「ないわよ」
「…………」
「……げふー」
 ちなねえの満足そうなゲップを聞いてると、朝からなんだか泣きそうになる。
「……アキくん、可哀想。……お姉ちゃんのゲップでよかったら、いくらでも吸っていいですよ? ……お姉ちゃんの思いやりに、アキくんにっこり」
 そんな許可では、とてもじゃないがにっこりできない。
「よかったわね、彰人」
「どこによかったと思える要素があるか挙げてくれないか、母さん」
「こーんな可愛い幼馴染がいて」
 母さんの言葉に、ちなねえの顔がほころんだ。
「可愛くなくても、人の朝食を勝手に食わない幼馴染の方がいい」
 ちなねえがしょぼーんな感じになった。
「ほらほら、いーから二人とも行った行った。早くしないと遅刻よ」
 母さんの言葉に時計を見る。む、結構いい時間じゃないか。
「ちょっと俺着替えてくる。ほらちなねえ、いつまでもしょぼーんとしてないで玄関行ってろ」
「うー……お姉ちゃん、挽回します。アキくんの着替え手伝います」
「嫌です」
 そう言ったのに手伝われた。
「はい、ばんざーい」
「一人でできます」
「……ばんざーい?」
 小首をちょこんと傾げ、両手を胸の前に合わせてばんざーいと言うちなねえに負け、素直に万歳する。
「……よくできました。はい、ぬぎぬぎ。……わ、裸」
「ちなねえが俺を視姦する」
「…………」(じーっ)
「ホントに視姦すなッ! いーから制服よこせっ!」
「……はい」(じーっ)
 未だ視姦を続けるちなねえから制服を受け取り、ぱぱぱっと着替える。
「……ぷよぷよ」
「腹を突つくなっ!」
 Tシャツを着てる最中に腹をつっつかれた。
「……もうちょっと鍛えた方がいいと思うお姉ちゃんです。……ぷよぷよです。……ぷよぷよ」
「つつくなっての!」
「……癖になります」
「なるな!」
 ちなねえの頭を押さえて腹を押すのを抑制し、どうにか着替え終わる。色々邪魔されたため、ちょっと時間がヤクイ感じだ。
「……もっと押したいです」
 だというのに、ちなねえはハンターの目で俺の腹を見つめ続けている。
「押すな。何か押したいのであれば、自身のつるぺたんXな胸でも押してろ」
「……アキくんの大好きな、つるぺたんX保持者です」
 どうして俺の性癖がばれているのか。
「……アキくん、えっちな本は定期的に隠す場所を変えたほうがいいですよ? ……まあ、あんなにたくさんあっては、隠すのも大変と思いますが」
「ちなねえ、俺をいじめて楽しいか(泣)」
「……よしよし」
 頭をなでられたが、ちっとも嬉しくなかった。
 姉ぱぅわーによりなんとか泣き止んだ俺は、鞄片手に明るい光溢れる外へ飛び出し……
「待って、アキくん待って~」
 姉がもたもたと靴を履いているので飛び出せなかった。
「5秒以内に履かないと、今日は学校休んでちなねえとイチャイチャする」
「…………。だ、ダメです。サボりなんて悪い子がすることです」
「ちなねえが俺を嫌う」
「……お姉ちゃん、アキくんのこと大好きですよ? 嫌うなんて、ありえませんよ?」
 極々当たり前のことのように、ちなねえはまっすぐな好意を俺に向けた。
「……は、恥ずかしいことを言う姉め。干からびてしまえ!」
「……アキくんは恥ずかしがりやさんですね。……そーゆーところも、お姉ちゃん、大好きです」
 人の手を勝手に取って、ちなねえはにっこり微笑むのだった。

 そして遅刻するのだった。
「ちなねえ、足遅すぎだッ! 俺の早歩きとちなねえの全力疾走が同じ速さってどういうことだ!」
「……お姉ちゃん、悪くないもん」
 膨れっ面のちなねえだった。

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【後輩ちゃん】

2010年02月07日
「先輩先輩せんぱいっ!」
 学校から帰ってると、聞き覚えのある甲高い声が背後から聞こえた。
「パンツ一丁で駆けてくる痴女と出くわした。コマンド?」
「私、制服ですよ? それとも、下着姿のほうがぐっときますか? 脱ぎますか?」
「脱ぐなッ!」
 俺に叱られしゅんとしているこの娘っ子は俺の一つ年下の女生徒、由依という。さる事情で知り合い、それ以来なんか知らんがやけに気に入られている。
「お帰りですか?」
「レレレのレ」
「惜しいですっ、それお出かけです! そんな惜しい先輩も大好きです!」
 この後輩は隙あらば告白してくるので油断ならない。
「それはそうと、先輩っ! 私、先輩と手を繋ぎたいです! 繋いでいいですか?」
「握り潰されるから嫌だ」
「そうしないよう努力しますから!」
「潰せるの!? 怖っ、由依怖あっ!」
「嘘です!」
「…………」
 俺もよっぽどだが、コイツもよっぽどだと思う。
「あっ、怒りましたか? 怒らせてしまいましたか? ……嫌いになりましたか?」
「…………」
「やっ、髪が乱れます! 困ります! でもちょっと嬉しいです!」
 無言で髪をくしゃくしゃっとすると、由依は嬉しそうにはにかんだ。
「えへへっ……えっとですねっ、先輩はどんな子が好きですか?」
「つるぺ……っ、え、えーと、そうな、どんな子だろうな。はっはっは」
「つるぺたですかっ! 困りました、私ちょびっとだけ胸ありますっ!」
「途中で止めたんだからそれとなく察してくれ!」
「すいません! お詫びとして胸をそぎ落としますから!」
「怖っ、お前の愛情怖あっ!」
「嘘です! 痛いの嫌ですから!」
「…………」
「あっ、ひょっとして先輩痛くするのが好きなんですか? こうなっては努力して痛みを快楽に変える練習をするしかないです!」
「ちげーよ! なんでいつも色々と微妙に間違ってんだ!」
「先輩が訂正してくれるのが好きだからですっ!」
「……ったく。困った生き物だ」
 むぎゅー、と眉間を押してやる。
「わわわっ、どんな感情表現なのか分かりません! でも、なんだかちょっぴり嬉しい感じです!」
「下痢になるツボ」
「永遠に恨み続けます!」
「だから、怖いっての! にこやかに言うなッ!」
「嫌なら手を繋いでください!」
「うーん……」
 俺みたいな変人と一緒にいたら、いらぬ中傷を受けるだろうに……なんでこんな好意を抱かれてるかな。
「むっ! ばってんにゃんこ!」
「ぐげっ」
 自分の手を交差して、由依は俺の首にクロスチョップした。
「げほっげほっ……何すんだ!」
「その目はまた悲しいこと考えてます! ダメです! 許しません!」
「そ、そんなこと考えてないぞ? お前の裸体を想像してただけだグヒヒヒヒ」
「それはとても光栄ですが、私は騙されません! 先輩、また自分のこと卑下してましたね?」
「そっ、……そんなことないぞ」
 卑下とかじゃなく、ただの事実だし。
「ほらまた! ばってんにゃんこ!」
「ぐがっ」
 またしてもクロスチョップが俺の首に直撃。
「げほっげほっ……お前なぁ、いちいちクロスチョップするな。言えば分かるから」
「クロスチョップじゃないです! ばってんにゃんこです!」
「何が違うんだ」
「可愛いです!」
「…………」
「可愛いですにゃ!」
 ……まあ、可愛いケド。
「話を戻しますが、先輩はもっともっと自分のこと好きになってください。なんだか先輩、ご自分のこと嫌いみたいに見えます」
「……そっか?」
「そうです! ずーっと先輩見てた私が言うのだから、間違いありません!」
「うーん……そうかなあ」
「そうです! なので、代わりといっては何ですが、私が先輩を好きになります! なりました! 好きです!」
「ずっと告白されてる」
「ずっと好きですから! 先輩のこと、いっぱい甘やかして、いっぱい甘えたいです!」
「……いいのか? 変だぞ、俺?」
「私も変ですから!」
 なんだかすごく納得する。
「……そこで納得されると、ちょっと傷つきます」
「ごめぬ」
「許します! 好きですから!」
「じゃあ、その、とりあえず、……よろしく、ということで」
「はい!!!」
 ひまわりのような笑顔を見せる由依だった。

「で、早速ですか」
「もちろんです! 私、先輩に鬼甘えます!」
 どうしても俺の部屋に来たいというので、てっきりエロ展開かと思ったが、そうではないようで、さっきから俺にべたーっと張り付いている。
「先輩!」
「うん?」
「呼んだだけです! ……なっ、なんだか恋人同士のようで素敵です!」
「なんだかじゃなくて、実際そうだろ」
「こいびと……」
 にへらっ、と締まりのない笑みを浮かべる由依。
「なんだか幸せすぎです……はっ! よもや夢ではないでしょうね!」
「実は夢なんだ」
「想像通りです! こうなっては先輩の皮を被った偽者を惨殺し、この夢世界から脱出するしか!」
「助けてえ!」
 ちょっとした冗談でラブコメがサイコホラーに。
「嘘です! 軽い冗談です!」
「重えよッ!」
「恋人同士の甘々トークですねっ♪」
 こいつには一度甘々トークというのがどういうものか、きちんと教えないといけない。
「先輩! 甘々トークが終わったので、次は抱っこしてほしいです!」
「らっこ?」
「可愛いですよね、ラッコ!」
「そうだね」
「……? 違います、抱っこです! 先輩の巧緻極まる話術にしてやられました!」
 こいつがちゃんと日常生活を送れているのか、時々心配になる。
「……あの、ひょっとして、嫌ですか?」
「んなこと言ってねーだろ。ほら、来い」
 両手を広げてカムカムする。
「じゃ、じゃあ、思い切っていきます! とうっ!」
「ぐべっ」
 ばってんにゃんこが飛んできた。
「あああああっ、ついやってしまいました! ごめんなさい先輩!」
「恋人が殺そうとする」
「……こ、こいびと……」
 その響きに、またしてもにへらっとする由依。
「せっ、先輩! どうしましょう、私、幸せすぎて死んじゃいそうです!」
「俺は物理的に死にそうだ」
「お似合いのカップルですねっ!」
 付き合うの、早まったかもしれない。俺に抱きつき、幸せそうな笑みを浮かべる由依を見ながらそう思った。

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