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2024年04月26日
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【ツンデレの首筋に冷たい手を押し当てたら】

2014年11月26日
 近頃めっきり寒くなったので、登校中のかなみの首筋によく冷えた俺の手を背後からぴたりとつけたら悲鳴をあげられたうえ、すげー殴られた。
「解せぬ」
「朝っぱらからもう! こいつは! 本当に!」ゲシゲシ
「うーん。大変に痛いね。これは大変だ。はっはっは」
「笑うなーッ!」ゲシゲシ
 ひと通り殴られて少々泣きそうになりつつも、我慢する俺は大人だと言えよう。誰か褒めろ。
「ったく……んで? なんでいきなり痴漢なんてすんのよ」
「痴漢!? これは異なことを。ただ知り合いの首筋に俺の手をくっつけただけではないか! 本当に痴漢するなら乳なり尻なり触って楽しい箇所を触るわ、たわけ!」
 思いの丈をぶつけたのに、かなみからは冷笑されるわ周囲の学生たちはヒソヒソと囁いてるわで散々だ。
「うーん。どうやら選択肢を誤ったようだ。ちょっとロードしたいんだけど、ボタンが見つからない」
「リセットボタンならあるわよ? 押してあげよっか?」
「これは分かりやすい殺意表明。やめてね?」
「今後の態度次第ね。少なくとも次また同じ事されたら押す」
「軽い挨拶で死に直結とは、なんという死にゲーだ。……でも、まあ、いいか!」
「よくない! アンタのそーゆートコ、よくないかんねっ!」
「あ、はい。ありがとう」
「こっ、こっちは怒ってるんだからねっ!」
「いや、なんか心配してもらったのだし、感謝は当然かと」
「うっ」
「う?」
「……う、うるさいっ!」ギュー
「ひはひ」
 なんか頬を引っ張られたため、呂律が回らず酩酊中のような醜態を晒す羽目に。
「うるさいっ! ばかみたいな顔でこっち見てるからよ、変態!」ギュー
「解せぬ」
「うるさいうるさいうるさいっ!」ギュー
「ひはひ」
 ひと通りつねったら満足したのか、手を離してもらった。痛かったので頬をさすさすする。誰か俺をさすさすしろ。
「むー……」
 それでもまだつねり足りないのか、かなみは不満げに口を尖らせながらこちらを見ている。
「んじゃそろそろ行きましょか。今日の一時間目なんだっけ。昼休みだっけ」
「……ふんっ!」プイッ
 ぷいってされたので残念と思ってたら不意に手が柔らかいので包まれたのでおやと思って見たらかなみのちっこい手が俺の無骨な手を包んでたのでわひゃあ。
「あ」
「アンタを放ってまた冷たい手で首をぴとってされてわってなるのが嫌だから! それを防ぐためにしてるの! 他意はないの!」
「『あ』しか言ってないのに、ものすごい言い訳された」
 鬼が俺の手を締め上げる。顔も赤いし赤鬼に違いない。
「もーいいっ!」パッ
「それはどうかな?」ギュッ
「あっ、こらっ! 勝手に握るな!」
「いやほら、折角だし」ニギニギ
「何が折角よ! ああもう、にぎにぎすんな変態! 顔もにやにやすんなっ! 何笑ってんのよこの変態っ!」
「では顔をにぎにぎして、手をにやにやするなら許してもらえるでしょうか」
「無茶言うなッ!」
「顔をにぎにぎするってどうやんの?」
「あたしに聞くなッ!」
 などと二人してぎゃーぎゃーにやにやしながらおてて繋いで学校まで行きました。

拍手[22回]

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【ツンデレに邪魔をしたら】

2014年06月09日
「恥ずかしながら、がをられが竹井10日の作だったというのを知ったのはアニメを視聴してからなんだ」
 登校するなりクラスの婦女子たちと談笑していたかなみたちの輪に割り込んで思いの丈をぶつける。
「……あのね。挨拶くらいできないの?」
「おはよう」
「おはよう。じゃあ、あたし友達と楽しくおしゃべりしてる最中だから邪魔しないで」
「分かった。それはそうと以前から自分が好きな作家の作品がアニメ化するってこんな楽しいものなんですね。俺はとても嬉しいよ」
「アンタ人の話聞いてんのッ!?」
「聞いてはいるが聞き入れてはいない」
 どういうわけか朝からとても殴られ不愉快。
「痛いのだが」プンスカ
「るっさい! プンスカじゃないわよ! 怒ってるのはこっちの方!」
「いいや、それは違うね! 一番怒っているのは朝っぱらから変な奴に訳の分からんことを聞かされたクラスメイトの女性たち! 今更ながら非常に申し訳ない! すいません!」
 とりあえずぺこりと頭を下げ、女生徒たちの怒リミットゲージを下げることを試みる。これが満タンになるとクラスで俺の陰口が一斉に広まり今後の学生生活に支障が出ること請け合い。
「あたしにも謝りなさいよ!」
「生きててすいません」
「重いッ! そういう謝罪じゃなくて!」
「あ、あー。アレね、アレ」
「そうよ。ったく、すぐに分かりなさいよね」
「ポケロリまでは追いかけてたんだけどその後金が尽きてね。後で買おうと思ってたらつい忘れててこの有り様ですよ。ファンとして申し訳ない。あっ、ゲームは全部やりましたよ?」
「んなこたぁどーでもいいっ!」
「カナ坊とすずねえとはるぴーが好き」
 折角の嗜好発表の場をアイアンクローに汚される。
「は・や・く・あ・た・し・に・あ・や・ま・れ」ギリギリ
 言葉の一区切り毎に指がこめかみにめり込み、脳髄がSOSをしきりに訴える。一刻の猶予もない!
「ゴメンネ☆」
「…………」ギリギリギリ
「謝罪したのに痛みが増した。解せぬ」
「アンタがしたのはあたしを馬鹿にしただけッ! ……あーもう、いいわよ。あたしも疲れちゃった」パッ
「ゴリラにも乳酸って溜まるんだ。あっ、これ怒られるパターンだ! 先に謝ったら怒られないかも! ゴメンネ☆」
 駄目でした。
「ったく、本気馬鹿」
「いやはや。あ、邪魔してごめんな。どうしてもこの思いを誰かにぶつけたかったんだ」
「ものすごい迷惑なんだけど」ジトーッ
「や、こういうなんでもないことを気軽に言える奴ってのがかなみしかいなくてなあ」
「なっ……!」
 かなみが赤くなるのと、俺たちを見守っていた女生徒たちが黄色い声を上げるのは、ほぼ同時だった。
「なっ、あっ、アンタ何言ってんのよッ!!!」
「みかんの筋を取るか取らないかという議論の提案」
 ものすごいアワアワしてる姿に惑わされ、こちらの思考も惑わう。いつも通りという噂もあるが気のせいだ。
「してないッ! あたしは取る派!」
 かなみは律儀なのかもしれない。俺は取らない派。
「じゃなくてっ、そっ、そのっ、さ、さっきの……?」
「あー。かなみって喋りやすいよな。気の置けない間柄ってーの?」
「そ、そなんだ……へへへ」ニマニマ
「俺にはもったいないくらい出来た友人だと思うぞ!」ビシッ
「…………へ?」
「どうした、呆けた顔をして。俺にサムズアップはそんなに似合わないか?」
「え、いや、……え? 友人?」
「あ、これは失礼。知人でしたな」
「下がった!?」
「む、違ったか。恋人でしたっけ?」
「っ!! だっ、誰と誰が恋人だってーの! アンタとなんて絶対ありえないわよ! ばーかばーかばーか!」ペシペシペシ
「痛い痛い。叩くな、人の頭をぺしぺし叩くな」
「ばーかばーかばーか!」ペシペシペシ
「痛い痛い。冗談です、冗談ですから!」
「ばーかばーかばーか!」ペシペシペシペシ
「ひぃ、両手に!」
 このままでは身長が縮むかもしれないという恐怖に襲われたが、どういうわけかやたらかなみが嬉しそうだからまあいいや。

拍手[14回]

【ツンデレとみかんを食べたら】

2013年12月30日
 寒い。もう何もしたくない。こうしてコタツに入っていたい。永遠に。
「そう。永久に俺はここにいるのだ……」ブツブツ
「うるさい。さっきから何ブツブツ言ってるのよ。あと夏もコタツ入ってたら熱中症で死ぬわよ」
 人がいい感じに超(すーぱー)☆コタツ引きこもり宣言をしていると、そのコタツの持ち主が冷たい声で俺を現実に引き戻す。
「だが冷たいのは声だけで、足は割合温かい。何故ならコタツに足を突っ込んでいるから」サワサワ
「あっこら、触るな馬鹿!」
「触ってません! 言いがかりだ! これが痴漢冤罪か! 皆さん、これが冤罪です、よく見ててください!」サワサワ
「だから、触ってるでしょ! せめて冤罪って言ってる最中は触るのやめなさい馬鹿!」ゲシッ
「あうちっ」
 蹴られたので足を触るのを中止。ちなみに足で足を触ってました。
「だけど本当は手でしっかりと触りたかった。ふとももとか。勇気が出ない俺をどうか許してくれ」
「うるさい、変態。はぁ、なんで暇だからってこんなの呼んじゃったかなー……」
 ウンザリした顔で、コタツの主であるところのかなみが卓上に手を伸ばした。なんとなく、みかんの入った器をかなみから遠ざける。
「…………」
「…………」
 かなみの顔がゆっくりこちらを向く。視線が絡み合い、火花が散る。戦の合図だ。
「ちょっと。それこっちによこしなさいよ」
「分かった。では、輸送費としてみかんを5個いただきます」
「それじゃ全部なくなっちゃうじゃない! いいからよこせ、馬鹿!」
「みかん亡者ですね。痛っ、痛いっ!? すいません全部献上しますから!」
 コタツの中でいっぱい蹴られたので全面降伏、器ごとみかんを差し出す。
「最初からそうしろ、馬鹿」
 かなみはみかんの皮をむくと、実を口に入れた。
「ん~♪ やっぱみかんはおいしいわね♪」
「俺も食っていい?」
「ダメ」
「丸ごと口に入れて実だけ器用にプププと吐き出し、かなみの口に直接入れる奇芸を見せるから」
「キモいっ! 妖怪かっ! ああもう、分かったわよ。アンタのバカ話も食べてる間は聞かなくて済むし」
「やったね」
 手渡されたみかんをむく。かなみは白い筋も全部取ってるが、俺はそんなの気にせずそのままひょいぱく。おいしい。
「わ、筋取らないで食べた」
「んー、別に気にならないし、食物繊維が豊富と聞くし」
「んー……じゃさ、これだけ食べられる?」
 そう言って、かなみは自分のみかんから取った筋を手に取り、俺に渡した。
「…………。まあ、食えなくはないが、決して楽しいものではないな」モグモグ
「わ、ホントに食べた! 変な奴~!」
「失敬な。別に好んで食べているわけではないぞ?」
 と認識を正しているのに、かなみの奴は既に次の白い筋を取りにかかっている。
「ほらほら、おかわりよ?」
「聞け。俺の話を聞け」
「ほら、あーん?」
「ちくしょう」
 可愛い女の子にあーんと言われると、口を開けてしまう。悲しい男の習性を知り尽くしたかなみの策にしてやられ、再び食物繊維を摂取する羽目に。
「あははっ、また食べた」
「もういいからな。いらないからな。おいしいものじゃないからな」
「分かってるって」ムキムキ
「いいや、分かってないね! 何故なら既に次の白い筋を取りにかかっているから!」
「気のせいよ。……よし、むけた。はい、あーん?」
「ちくしょう。ちくしょう」
 また食べさせられる。おいしくない。甘みがほしい。
「むぐむぐ……。ちっとも楽しくないのに口を開けてしまうのは俺が馬鹿だからか」
「そうよ、ばーかばーか。あははっ」
 ケラケラ笑って、かなみは顔をコタツの天板に頭を乗せた。頬が重みでむにょりとゆがむ。かわいい。
「はぁ。あー……うー。あーもう、本当にコイツといると……」
「うん?」
「なんでもなーいっ。このこのー」ゲシゲシ
「痛い痛い」
 コタツの中で軽く足を蹴られた。文句のひとつでも言ってやろうと思ったが、ケラケラと楽しそうに笑ってるのでまあいいや。
 それに、今はかなみのツインテールで遊ぶほうが先決だ。かなみの髪を一房軽く掴み、毛先を軽く触る。
「うー。何すんのよー」
「体毛を触ってます」
「たいもーとか言うな、ばか」
「む、そりゃそうだ。頭毛を触ってます」
「あたまげ……」
 嫌そうな顔をされた。
「かなみのあたまげは綺麗だな」
「褒められてるけどちっとも嬉しくない……」ムーッ
「女性はあたまげを褒められると喜ばれると聞きましたが」
「馬鹿には無理な芸当よ」
「なんと。なら仕方ない、諦めよう」ナデナデ
「うー。勝手に人の頭をなでるなー」
「嫌なら自爆して俺もろとも死ぬのだな」ナデナデ
「無茶言うなーこのーやめろーばかー」ニコニコ
「わはは」ナデナデ
 俺にされるがままなのにニコニコしてるかなみは可愛いなあ、とか思いながらしばらくなでてました。

拍手[20回]

【ショートケーキのイチゴを先に食べるのか後で食べるのかで言い合いになる男とツンデレ】

2013年09月06日
 ケーキが食べたいのでケーキ食べたいとかなみに言ったら、うるさいと言われた。
 仕方ないので耳元で食べたいと囁いたら、超殴られた。あんなに顔を真っ赤にして怒らなくてもいいと思います。
 あと、そんなに耳を押さえなくてもいいと思う。俺の声はそんなにダメなのか。
 さて。怒られた程度で俺の甘味欲が治まるはずもなく、近所のケーキ屋さんへ出向くことにした。ということを未だ顔を赤くしてフーフーしてるかなみに告げたら、「私も行く」とか言い出した。
「発情してる犬みてえ」
 と思ったが、言わないでおこう。というつもりだったのだが、さらにかなみの顔が赤くなっていくところを見るに、ああ、言ってしまったんだなあという想いが胸に去来します。

 さる事情により頬を腫らしつつ、かなみと一緒に近所のケーキ屋へ。
「さってと。なーににするかなー」
「ケーキなんて久々ね。それもおごりなんて♪」
「えっ」
 びっくりしてかなみの方を見るが、奴ときたら楽しげにルンルン鼻歌なんて口ずさみながらショーウィンドウの中身を選んでやがる!
 楽しそうなら仕方ない。財布に大ダメージだが、甘んじて受け入れよう。さて、俺は何にしようかな。
「……ね、ねー」
 などと思いながら舐めるようにケーキを見つめていると、不意に背中を引っ張られるような感覚が。見ると、所在無さげな顔でかなみが俺の背をクイクイ引っ張っていた。
「じ、冗談だよ? おごらなくてもいいよ?」
「断る。たとえフリだとしても、あんな楽しそうなかなみを見せられ、どうして割り勘できようか! ここはおごらせてもらおう」
「いっ、いいよ! 冗談だし! ……それに、ほら、ここ結構高いよ?」
 俺の耳に顔を寄せ、かなみがポショポショと囁く。
「ウヒヒィ」
 それがなんだかむず痒気持ち良かったので、思わず声に出てしまい、かなみがしかめっ面をした。
「……妖怪なのは知ってるけど、どこでもそれを出すのはやめてよね。私まで妖怪扱いされちゃう」
「妖怪じゃないです。人間です。さもそれを既知の事実のように喋るのはやめてくれませんかねェ……?」
「あははっ」
 ケラケラと笑いながら遠慮なく人の背中をばんばん叩く。痛いっての。
「あー楽し……っ! く! は! ない! けど!」
 なんか急に顔を赤くして叫びだした。負けるかッ!
「は! か! た! の! 塩!」
「対抗すなッ!」
「すいません」
 俺のせいで店内がスイーツムードから伯方の塩ムードに。
「かなみは天ぷら何派? ちなみに俺は天つゆ派」
 そこでさらに塩ムードを強めようと天ぷらの話をしてみたが、つい天つゆと言ってしまった。
「いきなり何を言い出してんのよ! そしてさっきの発言を使うなら嘘でも塩派って言いなさいよ!」
「俺もそう思ったが、気づいたら天つゆって言ってた。もうどうしようもないから野球の話でもしようぜ。どのバットが好き?」
「しないッ! この子は……本当に」
 何やら疲れた顔をされた。色んな人に迷惑をかけて申し訳なく思う。
「……まあいいわ。私も天つゆ派よ」
「ケーキ屋に来てなんで天ぷらの話してんの?」
「アンタがふったんでしょうがッ!」
 とても怖かったし、いい加減お客さんや店員さんの視線が気になるのでケーキの話をすることにする。
「かなみはさ、ショートケーキのイチゴって先に食う? 後に回す?」
「アンタにしてはまともな話ね。何か裏があるんじゃないでしょうね……?」
 ただ聞いただけなのに、非常に怪しまれる。普段が普段なのでこのような扱いも仕方ないと言えよう。もっとまともになろう。
「……まあ、裏があっても最悪ぶん殴ればいっか。ええとね、私はイチゴは先に食べるわ」
「えっ、殴られるの?」
「殴られるの」
 一応確認してみたが、やはり殴られるらしい。辛い。
「まあいつものことだし、いいや。しかし変わってるな、先に食うなんて。普通後で食うだろ、最後のお楽しみとして。ゆうべはおたのしみでしたね」
「いらんことは言わんでいいっ! ていうか、アンタにだけは変わってるとか言われたくないんだけど」
「そんな人を変人代表みたいに言うない。これでも一般人代表として宇宙人にさらわれるのを夢見る程度には平均的だぞ?」
 かなみが『どこがよ』って顔をした。
「ちなみに宇宙人が女性形(幼女ならなお良し)ならいいなあ、嬉しいなあ! そしたら俺、世界初……いや、有史始まって初の異世界婚するんだ!」
「もしその宇宙人がグレイみたいなのだったらどうするのよ」
「男色の趣味はないから断るよ」
「そっちのGLAYじゃないッ!」
「なんだ。急にホモ話になったからびっくりした」
「こっちの方がびっくりよ。アンタと話してると疲れるわ……」
「じゃあ甘いもの食って癒やされよう。かなみは何にする?」
「えっ? えと……じゃあ、ショートケーキ」
 俺の話に触発されたのか、かなみはイチゴがちょこんと乗ったシンプルなショートケーキを選んだ。
「俺は……えーと、これ」
 チョコケーキを指すと、ショーケースの奥にいる店員さんがトングで挟んだ。しまった、かなみとの話に夢中で店員さんがこんな近くにいるなんて気づかなかった。これは恥ずかしい。
「かなみ、『こ、こんな格好……恥ずかしいよぉ』ってM字開脚しながら言って」
「するかッ!」
 俺がいかに恥ずかしかったか、かなみに代弁させようとしたが、失敗した。あと、殴られた。店員さんにも笑われた。チクショウ。

 お金を払って商品を受け取り、店を出る。
「……ね、ねー。ホントにおごってもらっちゃったけど、よかったの?」
 宝物でも持ってるかのように大事そうにケーキの入ってる箱を抱えたまま、かなみが俺に訊ねる。
「よくない。払え。倍払え。いや、やっぱ身体で返せ。一生かけて身体で返せ。ひとまず今日のところはおっぱいを揉ませてください」
 ものすごく頬をつねられたので黙る。
「冗談はいいからさ。自分の分くらい自分で出すよ?」
「いや、いいって。俺一人でファンシーなケーキ屋に行く勇気なんて持ってないし、付き合ってもらった礼とでも思っとけ」
「むーっ……」
 むーって言いながらかなみがむーって膨れた。かわいい。
「どうしても不満なら、ケーキ食べる時に俺にあーんとかしてくれるか?」
 よし、これでかなみも『何言ってるのよ馬鹿! 死んでも嫌よ! というか死ね! 死んで生まれ変わって自殺しろ!』と言うに違いない。そして俺の中のかなみ像が酷すぎる。想像なのに泣きそう。
「えっ……。……わ、わかった。しょがないもんね。おごってもらったお礼だからね。うん」
 想像と違う。なんか頬を染めてコクコクうなずいてる。
「あ、あのー、かなみさん?」
「なに? ……え、えと、あーんの練習?」
 そんな練習聞いたことねえ。
「そ、そうよね。難しいもんね。あ、でもケーキ使うわけにもいかないし……じゃ、じゃあ、私の指で、練習する?」
 おかしい。なんか全体的におかしい。
「じゃあ、私が指をアンタの口の前に持ってくから、あーんって言ったらその指を咥えるのよ?」
 ケーキを買いに来たら野外プレイすることになったでゴザル、と思いながら帰宅しました。

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【ツンデレの頭を執拗になでたら】

2013年07月14日
 どうにもかなみが可愛いので隙を見てはなでてしまい、その度に殴られるので辛い。
「痛いよ……身体も心も痛いよ……」(落涙しつつ)
「あにが痛いよー、よっ! こっちはアンタなんかに毎日毎日なでられて頭が腐りそうよッ!」
「うわ、汚え」シッシ
「例えよっ! 手で払うなっ!」
 頬をつねられた。やめてください。
「しっかし、なんで毎回毎回殴られてんのにめげないかねー……。アホは厄介ね」
「関西人にとってアホという呼称は一種の親愛表現だとか。世界という大きな括りで見れば、日本も関西もほぼ同じ。なら、かなみも関西人と言っても過言ではないだろう。つまり、関西人のかなみにとって、先の発言は俺への親愛表現、即ちプロポーズと見た。謹んで応諾させていただきます」
「にゃー」(目潰し)
「うっぷす」
 無茶が過ぎたようだ。
「今日も無駄に屁理屈こねくり回して……。その労力を別のことに使えないの?」
「使える。具体的には、これに」ナデナデ
「あっ、なでるな、ばかっ!」
 一瞬の隙をついてかなみの頭をなでる。幸せ。
「このっ、離せっ、ばかーっ!」
「はっはっは。かーわぅーい」ナデナデ
 すばやさのたねを過剰摂取した気がする俺なので、素早くかなみの背後に回って抱きつき、動きを抑制することも容易い。ただ、あとで殴られるのでほどほどにしないといけない。その辺りに見極めが難しいが、数々の修羅場をくぐり抜けた俺には問題ない。
「だーっ! もうっ、なでるなーっ!」ベコボコ
「ふべべ」
 失敗。振りほどかれて殴られた。危険なのは見抜けるのだが、どうにもいい匂いがするし柔らかいし幸せだし、という様々な理由で危険域を超えてもなで続けてしまうので、毎度殴られます。
「ったく……なんなのよ、その私に抱きつく時だけ発揮される無駄な素早さは」
「突出した痴漢の才能があるんじゃないか?」
「……まさかとは思うけど、他の子とかにしてるんじゃないわよね?」
 ジローッとした目で睨まれる。いわゆるジト目だ。かわいい。
「まさかまさか。かなみ以外に興味あるわけないだろ」
「んな……っ!」
 なんかかなみが赤くなった。かわいい。
「そっ、なっ、あ、アンタみたいなのに、そんなこと言われても、その、あの、えと……う、うぅー」
「ロリコンだからつるぺたにしか興味ないんだ」
「…………」
「ロリコンだからつるぺたにしか興味ないんだ」
「二回言うなッ!」
「聞こえてないんじゃないかと思ったんです。善意なんです」
「絶対嘘だ……」
 またジト目が出ました。かわいいです。
「……あのさぁ、怒ってる人を相手に、なんで平然となでられるの?」
「ん? おお、言われてみれば確かに俺の手がかなみの頭をなでていますね。可愛かったので、つい」
 かなみのムスーっとした表情はそのままに、頬だけが赤くなっていく。
「うるさい。可愛いとか言うな。ばか。しね」
「嫌です」
「言うな。なでるな。こっちをじーっと見るな」
「いいえいいえいいえ」
「うー」
 かなみが困った顔をした。困らせるのは本意ではないので、かなみから手を離す。
「あっ……」
「えっ」
「何も言ってない!!!」
 無茶が過ぎるが、追求するのも色々とアレなので、やめておく。
「そ、そうな。何も言ってないな」
「うん、言ってない。別に寂しくない」
「…………」
「?」
「あー……うん。何も問題ない」
「うん? ……!」
 気づいたようだ。目に見えてかなみが朱に染まっていくので困る。
「あー……えっと。どうすればいいのだ?」
「うるさい。口を開くな。何か言ったら殺す」
 文言だけならただの殺し屋の台詞だが、現実は顔を真っ赤にした女の子なので、俺が喜ぶだけです。
「分かった、死ぬのは嫌なので何も言わない」
「ん。物分かりのいい奴でよかった。…………」
「?」
「……だ、だから、特別に、もっかいだけ、なでなでを許可する」
 一呼吸おいて、ゆっくりとかなみがそう言った。
「あ、大丈夫です」(NOという感じの手を突きつけながら)
 なので、悪逆無道を実行する。
「…………」
 かなみの顔が驚愕を貼りつけたまま、時間を止めた。
「…………」ウルウル
 と思ったら、ゆっくりと目に涙が溜まりだしたではないですか!!!
「モチロン冗談ですがね! 悪質な嘘ですがね! すいません言いたかっただけなんです泣かないでください!!!」ナデナデナデ
「な、泣いてない、泣いてないわよ! こんなので泣くわけないじゃない!」(目をこすりながら)
「あーはいはい」ナデナデ
「馬鹿にしてる。絶対馬鹿にしてる……」
 なんかブチブチ言っては俺を睨む子供みたいなのを、しばらくなでてました。

拍手[45回]

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