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2017年11月22日
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【サトリツンデレ3】

2012年06月26日
 今日は梅雨という噂なのだが、幸いな事に晴れている。雨でないのは嬉しいが、暑いのだけは勘弁な。
 とか思いながらぷらぷら通学路を歩いてると、一際目を引く人物が曲がり角から現れた。
(あの目立つ金髪、そしてブラをしててもなお揺れるあの乳は……転校生か! どうする、声をかけるか? ……まあ、一応はクラスメイトだし、昨日友達になったし、大丈夫だよな)
「お、おはよー」
 しかし、転校生はこちらを見ることもなく、そのままスタスタと行ってしまった。
(……無視? 昨日少しだけ仲良くなれたと思ったのだが……。それとも昨日の出来事は夢だったのか? ……なるほど、それなら先の行動も理解できる。俺の妄想は記憶を捏造するくらい酷くなっているのだなあ)
 などと悲しみに暮れていると、転校生がびっくりしたような顔でこちらを見ていることに気づいた。落ち窪んだ気分をどうにか奮い立たせ、再び挨拶をしかける。
「え、あ、お、おっはー」
(今更おはスタ!? 慌てていたとはいえ、なんたる時代錯誤! この恥辱をそそぐには死ぬしかない。放課後にでも縄を買いに行こう)
 死を決意していると、何やら転校生があわあわしだした。何だろう。
「……お、お」
「ん?」
「……お、おっはー」
 どういうわけか、転校生は顔を真っ赤にしながら精一杯という感じでおっはーを返した。フリつきで。
(……局地的におっはーが再流行していたのか? 何にせよ、助かった。しかし、そんな恥ずかしいのならしなくてもいいのに。変な奴)
「……誰のためにしてあげたと思ってるのっ」(ぼそり)
 なんか知らんが転校生が半泣きで俺を睨みながら何か呟いてた。
「ええと。学校にはもう慣れた?」
「……ふん。そんなすぐ慣れたりなんてしません」
「そ、そりゃそうか」
(……言葉が冷たい。昨日友達になったハズなんだけど。話しかけられるのが嫌なのだろうか)
 横目で転校生を盗み見る。つーんと澄ました顔の下で、おっぱいがどでーんと存在を主張していた。
(ふぅむ。改めて見ると、やっぱでかいなあ。デカメロン伝説だなあ。無理だろうけど、一度揉んでみたいなあ)
「……はぁ。どこ見てるんですか」
 隣で揺れてる乳を見つめていると、転校生がため息を吐きながら冷たい視線を俺に送ってることに気づいた。
「いや、おっぱいを少々見ていただけなんだ」
 これはまずいと思ったが、気がつくと思ったままのことを言っていた。
「……え?」
 想定外の答えだったのか、転校生はハトが豆鉄砲食らったみたいな顔をした。まずいと思ったが、止まらない。
「や、見ただけで触りませんよ? けどまあ、こうも近くに大きなおっぱいがあると、男ってのは見たくなるもんなんです。だから、目線がそっちに行っても、許してはもらえないだろうか」
「…………」
(いかん。依然変わらずぽかーんだ)
「じゃあもういっそ揉ましてくれないだろうか」
「な……何を言ってるんですか!?」
 ようやっと意識が戻ったのか、転校生は顔を真っ赤にしながらそう叫んだ。
「いや本当に、何を言ってるんだろう」
(どうして俺はテンパると思ったまま言ってしまうのだろう。我ながら頭がおかしいとしか思えない)
 転校生はびっくりした顔でしばらく俺を見つめた後、突然吹き出した。
「ええと。何なのだろうか」
「……ふふっ。いいえ、なんでもありません。……そう、貴方はそういう人なんですね」
「?」
 何か勝手に納得された。どう判断されたのか、ちょっと気になる。
「それより、いい加減私のことを名前で呼んでもらえませんか? 転校生呼ばわりは、ちょっと悲しいです」
「あ、それもそうか。ええと……」
(いかん。覚えてない。……乳山乳子だったか? 絶対に違うと言い切れる。……だが!)
「よろしくな、乳山乳子」
 にっこり笑いながら、手を差し出す。
「……横溝リネアです」
 転校生改め横溝リネアは、引きつった笑みを浮かべながら俺の手を万力の如く締め付けた。
(もぎ取れる! なんだこの力は!? きっと親類縁者にゴリラ族がいるに違いない!)
「いませんっ!」
「はい?」
「え、あ、いや、なんでもないですっ! ……昨日も教えたんだから、ちゃんと覚えてくださいね、別府くん」
(覚えてくれてたのは嬉しいが、苗字かあ。……まあいっか)
「ああ。悪かったな、横溝」
「……リネアです。名前で呼んでください」
「え、あ、や、まあ」
「昨日もそう言ったのに……」
「その、やはり女性のファーストネームを気安く呼ぶのは少々抵抗が」
「私がそう呼んで欲しい、と言ってるのに?」
「……ああもう、分かったよ。リネアね、リネア」
「そう、それでいいんです♪ ……この名前、結構気に入ってるんですよ?」
 とっておきの秘密を打ち明けるかのように、リネアはチャーミングに片目をつむりながら俺に言った。
「リニアモーターカーに似てるから?」
「…………」
 そんな可愛らしい顔を即座に粉砕し、うんざりさせる俺の話術は大した物と言えるだろう。
「……似てません」
「実は俺もそうじゃないかと密かに思ってたんだ」
「じゃあ言わないでください!」
「本当になあ……」
「何をしみじみ遠くを眺めてるんですか! 別府くんの話をしてるんですよ!?」
「ところで、リネア」
「なんですかっ!」
「そろそろ急がないと遅刻するぞ?」
「えっ?」
 リネアはポケットからケータイを取り出し、時間を確認した。
「どういうことですかっ!?」
「無駄話とはかくも恐ろしいものなんだなあ……」
「何をまた遠い目をしてるんですかっ! ほらほらっ、急ぎますよっ!」ギュッ
「はへえっ」
「きゃっ!? な、なに!?」
「いや、あの、突然手を握られて狼狽してうろたえた結果、あのような声が」
「一緒の意味ですっ! ……て、手を握ったのは、急ぐためです。た、他意なんてないですっ!」
「いや、繋がないで走ったほうが速いと思うが」
「…………。じゃあ一生別府くんと手なんて繋ぎませんからねっ!」
(しまった。言い過ぎたようだ。もうあの感触を味わえないとは。帰ったらさっきの感触を反芻してから死のう)
「って、ていうのは冗談、冗談ですからね? ね、ね?」
 とか思ってたら、何やら慌てた様子でリネアがまた手を握ってきたので、またしてもはへぇっ。
「ほ、ほら、行きますよ?」
「は、はい」
(柔らかい手が柔らかいスベスベする気持ちいい一生手を繋いでいたい最高すぎるリネアとずっと一緒にいたいなあ!)
「~~~~~っ! な、なにをぼーっとしてるんですかっ! い、急いでるんですから!」
 なんか知らんが超絶顔が赤いリネアに手を引っ張られながら、通学路を疾走しました。

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【サトリツンデレ2】

2010年07月22日
 転校生がやってきた翌日。いつものごとく登校すると、喧騒の中ぽつねんと一人自分の席に座っている転校生に気づいた。級友という大義名分を持っているので、挨拶する。
「おはよっす、転校生」
 しかし、転校生は俺の顔を一瞥しただけで、挨拶を返そうとはしなかった。
(一瞥だけとは……くそう。こうなったらこっちも一瞥してやる。いや、それどころか百瞥してやる!)
 そんなわけで、転校生の前まで回りこみ、真正面から視線を合わせてじぃぃぃぃっと見る。
「……はぁ。なんですか」
「朝は挨拶するのが日本の風習だ」
「知ってます。ていうか、どこの国でも大体そうです」
「そか。じゃ、改めて。おはよ、転校生」
「……はぁ。おはようございます。……これでいいですか?」
「ん。おはよ」
 意識して笑顔を作り、転校生に背を向ける。
(迷惑なのは分かるが、それでもな。知らない奴ならともかく、知ってる奴が暗い顔してるのはどうも苦手だ。しかしまあ、らしくないなあ、俺。大きなお世話なのは分かってるんだけどなあ)
 そのまま自分の席に戻ると、友人がどでどでやってきた。
「お、お前、どうやって転校生と仲良くなったんだ!?」
「弱みを握った」
「オレの想像を余裕で凌駕するくれーサイテーだな、お前!」
「うそ、嘘です」
 つばを吐きかけられる勢いだったので、慌てて事情を説明する。
「……はぁ、保健室になあ」
「だから、仲良くなったと言うか、顔見知りになったというか、お腹空いた」
「話の展開がおかしいぞ! どういうことだよ! ていうかまだ朝だぞ!」
「寝坊したんで朝ごはん食べてこなかったんだ」
「…………」
「なんかください」
「……これやるから黙ってろ」
 友人は俺の頭に何か乗せると、力なく自分の席に戻っていった。頭のブツを手で探り、目の前に持ってくる。
(これは……クリームパンだ! 俺の大好物じゃないか! こいつぁらっきー)
 早速包装を破ってかぶりつこうとしたら、チャイムが鳴って教師が入ってきた。
(いかん、このままでは没収される! しかし、腹具合から換算するにこのままでは授業中に腹が減って動けなくなること間違いない! ……ばれないよう、こっそり食うしか)
「別府、早弁するな」
 音もなくゆっくり口を開けてたら、早速注意された。
(なんか知らんがいきなりばれた。……でも、まあ、いいか!)
 特に気にせずそのままパンにかぶりついたら、俺の席まで教師がやって来て連絡簿で人の頭を叩く。
「食うなっつっとろーが!」
「いや悪いとは思ってるんですもぐもぐもぐ」
「んじゃ行動で示せ! いつまで食っとるんだ!」
「リスみたいで可愛いと思いませんかもぐもぐ」
「思わんッ!」
「思ってよむしゃむしゃ……ごちそうさま」
「ああっ、貴様! 最後まで食っちまいやがったな!」
「おいしかったです。中のクリームが絶妙で、しかもそれがパンによくあってて」
「知らんっ! ええい、後で職員室まで来い!」
「嫌だなあ」
「ちょっとは隠せ、阿呆っ!」
 先生はぷりぷり怒りながら戻っていった。
(うまかったなあ。腹が膨れると眠くなるよね。……眠い)
「いきなり寝るなっ、別府!」
「寝てません」
「せめて机から顔をあげて答えろっ!」
(よく怒られる日だなあzzz)
「寝息を立てるなッ!」
 なんかすごい怒られた。

 授業が終わって職員室へ出向き、大変怒られてから教室に戻る。次は3時限目か。……どれだけ怒られてんだ。
「……貴方は馬鹿なんですか?」
 席に戻り、怒られ疲れてうつらうつらとしてると、誰かに声をかけられた。顔を上げると、
「あ、転校生」
 俺の机の前に、転校生が腕を組んで立っていた。
「……私には横溝リネアという名前があります」
「あ、ごめんごめん。人の名前覚えるの苦手で」
「……まあいいです。昨日世話になったから一応忠告しておきますが、貴方、もうちょっと大人しくしていた方がいいですよ? 昨日ここに来た私ですら分かるほど、貴方はこのクラスでも浮いてるのですから」
(そう言ってる転校生の方が明らかに目立ってると思うが)
「なんですって!?」
「何が!?」
(なんかいきなり怒られた。超怖い。なんで美人って怒ると怖いんだろう)
「え、あ、い、いや、なんでもないです。私の勘違いです」
 転校生は顔を赤くしながらすまし顔をした。
「……こほん。そ、それでですね、朝の話なのですが」
(なんか挙動不審だな……まだ学校に慣れてないのか? 早く親しい友人でもできればいいのになあ。でも、こんだけ美人だと下心丸出しの奴ばっか近寄ってくるだろうし……。あー、誰かいないかな、転校生の内側も外側も大事に想ってくれる奴は。俺みたいな奇行をしちゃう変人じゃなくて、普通の奴で)
「ひ、人の話を聞いてるんですか!?」
「すいません!?」
 なんかまた怒られた。怒りのためか、転校生は顔を真っ赤にしている。
「あ、貴方はアレです、その……ダメです! 先生に怒られてる最中にパンとか食べてるし!」
「あ、いや、それはその、お腹が空いてて」
「ちょっとは我慢しなさいっ!」
「それができたら苦労しないんだ」
「何を他人事みたいに……と、とにかく反省してください、反省っ!」
 転校生……いや、横溝リネアは顔を真っ赤にしたまま自分の席へと戻っていった。
(あー……しかし、いったい何を反省したらいいのだろう。……パンか? よし、次はおにぎりにしてもらおう)
「そ……っ!」
 突然横溝リネアが頭を上げて奇声をあげた。周囲の級友も何事かと、固唾を呑んで横溝リネアを見つめる。
「……な、なんでもないです。ごめんなさい」
 先日と同じように、横溝リネアはぺこりと周囲に頭を下げた。そして、周囲が興味をなくすのを確認すると、そのまま崩れるように机に突っ伏した。
(……なんかえらく消耗してるな。まだ風邪が治ってないのか?)
「あー、あの、横溝リネア、さん」
 席まで行って、恐る恐る声をかける。
「……なんですか」
 ものすごく怖い目で見られた。
「あ、あの、まだ風邪治って?」
「……もう治りました」
「じゃあ、何か別の風土病が?」
「なんで風土病限定なんですかっ!」
(もっともな疑問だ。どうして俺も風土病なんて言ったのだろう。相変わらず俺の口と思考は直結してないな)
「……ちょっと、まだ学校に慣れてなくて、少し疲れているだけです」
「そ、そっか。ならいいんだ」
(いや、本当はよくない。疲れてるなら保健室で休んだ方が絶対にいい。連れて行きたいけど、二日連続で俺が連れて行くと横溝リネアも嫌だろうしなあ。どうし……あ、昨日行ったから道覚えてるか。よかった、一人なら横溝リネアの風評も下がらないな)
「そ、それじゃ」
 安心したのでそのまま自分の席に戻ろうとしたら、くいっと引っ張られる感覚。見ると、俺のベルトを引っ張ってる横溝リネアの姿が。
「……や、やっぱり少し眠りたいので、保健室に連れて行ってください」
「え、いや、でも道はもう」
「……貴方は憔悴してる女生徒を、一人で保健室へ行かせるつもりなんですか?」
「あっ、じゃあオレ、オレが!」
 様子を見守っていた友人が挙手して俺たちに近寄ってきた。
「…………」
「……と思ったけど、お前に譲るよ別府」
 が、氷の視線に負けたのか、そのまま逆再生して元の場所に戻っていった。
「というわけで。私を連れて行きなさい」
 俺の隣に立つと、横溝リネアは優雅に命令した。
(なんか元気そうに見えるのは俺だけだろうか)
「ふ、ふぅっ」
「わっ!?」
 立ちくらみでも起こったのか、横溝リネアが突然俺の方に倒れ掛かってきた。慌てて抱きとめる。
(うおおっ、不可抗力とはいえ胸が、おっぱいが俺の身体にぐにゃりと変形トランスフォームして密着と!? なんか生きててよかったかも! 神という概念を初めて認めよう!)
「あっ、あのっ! ご、ごめんなさい、そ、その、立ちくらみが!?」
 横溝リネアは慌てて俺から離れると、顔を真っ赤にしながら何か言い訳してた。
「い、いえいえ、結構なお手前で!?」
(なんだお手前って! 俺は俺で何を言っている!? ……ともあれ、調子が悪いのは間違いないようだ。指名もあったことだし、連れて行こう)
「……と、とにかく、行こうか」
「え、ええ」
 友人の「なんでお前だけー!」という涙声を背に受けながら、二人で教室から出た。
(ああ……いや、しかし柔らかかった。本当に柔らかかった。女の子の胸ってあんな柔らかいのか。もう一生感じることはないだろうし、今の内に記憶にしっかり刻み込み、死ぬまで反芻してやる)
「あ、あの……」
 誰もいない廊下を歩きながら反芻準備をしていると、横溝リネアがくいくいと俺の服を引っ張った。
「さ、さっきの、忘れてください」
「さっきの?」
「……だ、抱きついちゃったの」
(無理絶対無理100%無理不可能ダメに決まっている何を言っているのだこの娘はふんとにもう!)
「すいません無理です」
(そして俺は何故そのまま言うのだ。こんな時くらい嘘をつけばいいのになんでこんなとこまで馬鹿正直に! なんだって俺はいつもこうなのだ!)
 横溝リネアはぽかーんとした顔をしていた。そして、
「……ぷっ、くすくす。貴方って、その、もてないでしょ?」
 意外にも、横溝リネアはおかしそうにくすくす笑っていた。
「見たままです」
「くすくすくすっ。……じゃあ、可哀想ですから、覚えててもいいです。……特別ですよ?」
「あ、ああ」
(なんだ……? 気のせいか、ずいぶんと雰囲気が柔らかくなったような……。ひょっとして、これが横溝リネアの本来の姿なのだろうか。美人というより、可愛らしいという表現がぴったりじゃないか)
 教室での憔悴が嘘のように、機嫌よさそうに俺の前を歩いている横溝リネアを見て思った。あ、鼻歌まで歌ってる。
(……やっぱ気を張ってたんだな。俺じゃなくてもいいから、いやもちろんできれば俺がいいんだけど、誰かの前でだけでもこの姿になれたら、学校生活も楽になるだろうになあ)
 などと思いつつ横溝リネアを見ていたつもりだったのだが、いつこっちを向いたのだろう、じぃーっと見つめ返されていた。気のせいか、緊張してるような。
「え、ええと。なんだろうか」
「あ、あの! ……こ、こうやって保健室に連れて行ってもらうのも二回目だし、その」
「え、あ、はい」
「こ、これだけ迷惑かけちゃって、まだ名前も知らないし、その……」
「あ、ええと、じゃあ、遅ればせながら。別府タカシです」
「よ、横溝リネアです!」
「それはもうさっき聞いた」
「え、あ、あはは……」
(やっぱドジっ子だ。間違いねえ)
「ちがっ!?」
「ちが? ……血が? え、血!?」
「えっ、ちっ、違います違います、なんでもないですっ! ……ううう」
 なんか知らんが落ち込んだ後、横溝リネアは真面目な顔をして俺を見た。あまりの気迫に少したじろぐ。
「あっ、あのっ! ……そ、その、私、緊張しいなんです」
「あ、あー。確かに、なんかそんな気がする」
「そ、それに、人が多いところとかダメなんです……。すぐに頭痛くなっちゃうし」
(やっぱ身体が弱いのか。心配だな。できるだけ傍にいてやりたいが……俺では力不足もいいところだしな。誰か友達でもできればいいのになあ)
「だ、だからと言うわけじゃないんですけど……その、貴方さえよかったら、その……友達になってくれません……か?」
「…………」
(…………)
「あ、あの……ダメ、ですか?」
「…………」
(…………)
「あ、あの、えと……ご、ごめんなさい。い、いまの、なかったことに……」
「……ええっ!?」
「えっ!?」
(いま何かすげー言葉聞いたような……友達? え、俺が? 俺が横溝リネアと? ……いやいやいや。ないないない。ありえない。絶対夢だよ。白昼夢だよ。もしくは幻聴。はーやれやれ、俺の妄想は本当に都合よく幻聴とか聞かせるから怖いよ)
「あ、あの、と、友達、ともだちになって……」
(……ええっ!? ていうか、え? なんか半泣き!? 俺か、俺のせいか! ええい早く答えろ今すぐだ何をしている俺の愚図ッ!)
「も、もちろん!」
「あ……」
(なんでそんなので嬉しそうに笑うのか! ええい、なんでちょっと泣いてるのか! 全く分からん! 俺だぞ、性根が腐りきってる俺だぞ!? ああもうっ、ていうか俺も超嬉しい!)
「あ、あの、よ、よろしくお願いしますね、え、えと……べ、別府くん?」
「あ、ああ、うん。よろしく、横溝リネア」
「リネア、でいいです。……親しい人には、名前で呼んでもらうようにしてるんですよ?」
 リネアは人差し指をぴーんと立てて、とっておきの秘密を話すかのように小声で囁いた。
(ははーん。俺を萌え殺す気だな? 死ぬほど可愛いのは何兵器だ? ああもう、俺はもう今死んでもいい。たぶんこの瞬間が俺の人生で最大の幸福だ)
「……え、えと。じゃ、じゃあ、ほ、保健室、行きましょう」
 なぜか顔の赤いリネアは俺の手を取ると、小走りで保健室へ向け走り出した。
(最大幸福が更新された!? 柔らかい、手が柔らかい! おのれ可愛い兵器め、俺をドキドキさせて殺す気だな!?)
「ま、待て、走るな! ていうか元気になってねえか!?」
「え、えへへっ、そんなことないですよー?」
 俺に振り向きながら、これっぽっちも信憑性のないことを笑顔で言うリネアだった。
 そして、後ろを向きながら走ってたせいで俺を巻き添えに思い切り転ぶリネアだった。
「やっぱドジっ子だ、お前」
 廊下に倒れたまま、ジト目でリネアに言ってやる。
「ど、ドジっ子じゃないですっ! 偶然です! 浮かれてただけです!」
「浮かれる?」
「なっ、ち、違います、浮かれてませんっ!? は、早く保健室行かないと! ね、ね!?」
「あ、ああ」
 全力で顔を赤くするリネアに引っ張られ、俺は何も考えられないまま一緒に保健室へ向かうのだった。

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【サトリツンデレ】

2010年07月13日
 登校すると、どうにも教室が騒がしい。一体どうしたのかクラスでも物見高い友人に話を聞くと、どうやら転校生が来るらしい。それも、女子だとか。
「それはいいなあ。可愛い子だといいなあ。なんなら俺に一目惚れしてあんなことやこんなことを……うっ、うっうっうっ……」
「いきなり泣くな!」
「や、ありえない想像が翼を羽ばたかせたはいいが、現実との差異に思わず涙してしまっただけなんだ」
「今日もアレだな」
 失礼な、と思っていたら本鈴が鳴った。席に着くと、ほどなく担任が現れた。その隣に、小さな少女が。あの子が転校生か?
「えー、転校生を紹介する。キミ、自己紹介して」
 担任が隣の少女を促すと、彼女はかすかに頷いて教卓の前に立った。
「……横溝リネアです」
 それだけ言って、少女はむすっとした顔を教室の生徒たちに向けた。
「え、えっと、それだけかな?」
「そうです」
 隣で担任がうろたえているが、こちらとしてはそれどころではない。なんなのだ、目の前のアレは。まるでフランス人形のようではないか。
 ハーフなのだろうか、肌がアジア系のそれと違い、白磁と言うにふさわしい白さを誇っている。瞳は深い青。そして、腰まである長い金色の髪が陽光を受け、きらきらと輝いていた。彼女が着ているだけで、ただの制服がまるでモデルが着るような瀟洒な服と錯覚を覚えそうだ。
 そして何より目を引くのは、その圧倒的なボリュームを誇る胸。なんだアレ。内側から限界まで押し上げられ、今にも服が悲鳴をあげそうだ。
(……いやはや。人ってすげえ。ここまですごいと、なんかもう同じ空間で息をするのも申し訳なく感じる。いっそ息でも止めようか。せーの)
「そ、そうか。じゃあ、席に着いてくれ。ええと……あそこの席だ」
 担任が指した席は、ちょうどクラスの中央だった。ちぇ、漫画とかだと俺の隣になるのに。まあ漫画でも俺が主人公とかないか。
 などと息を止めつつ転校生が席に着くのを、窓側最後尾の自分の席から見守る。
(ああそれにしてもさっきから死にそうだ。いや、死ぬかも。息を自分で止めて窒息死。あんまりな最後だなあ)
「先生、別府くんがさっきから顔色が青いです」
 しまった、隣の奴にばれた! 慌てて呼吸する。
「ぶはっ。……い、いや、違うんです! 一人チキンレースをしていただけで、重大な疾患があるとかじゃなくて! 空気感染とかしないから! 本当に!」
 周囲の級友が机ごと俺から離れだした。
「保健室行ってこい」
 教室から追い出された。鍵までかけられた。……しょうがない、行くか。

 保健室で養護教諭とアニメの話に数時間花を咲かせていると、チャイムが鳴った。腹時計から換算するに、もうすぐ昼か。
「おお、もうこんな時間か。サボるのはこのくらいにして、いい加減戻れ別府」
「強制排除されただけで、決してサボったのではないのですよ?」
「いーから行け。そして戻ってくるな」
「どこからも邪魔者扱いだ」
「はっはっは」
「笑ってるし……ええい、腹立たしい。悔し紛れに乳揉んでやろうか」
「教師相手に堂々とセクハラトークをかますなッ!」
 顔を赤くして胸を隠す養護教諭に見送られ、保健室を後にする。教室に戻ろうと廊下をふらふら歩いてると、友人に会った。
「よ、サボり魔」
「初めまして」
「友人だろっ!?」
「……?」
「『何言ってんだコイツ』みたいな顔すんなッ! ……ったく、そんな奴にゃ何も教えてやんねーぞ?」
「それは困る! 頼む、教えてくれ! 金ならいくらでも払う!」
「……何のことだか分かって言ってるのか?」
「んんん」
 ぷるぷると首を振ると、友人は疲れたように眉間に指を押し当てた。
「はぁ……。あの転校生だ。お前も興味あんだろ?」
「あー。すっげー綺麗だよね。抱っこしたいよね。ちゅーとかしたい。あと、おっぱい揉みたい!」
「…………」
 俺が思った事を言うと、大抵会話の相手や近くの通行人から物凄く冷たい視線を受けまくります。悲しいです。
「……あー、まあいいや。結論から言うと、やめとけ」
「はい?」
「アイツ……ええと、横溝リネアな。強敵だぞ」
「教卓に脱糞でもしたのか?」
「しねえよッ!」
「よかった。転校初日にそんなアグレッシブなことする奴の対処法なんて知らないからな」
「はぁ……。あのな、みんな最初は物珍しいから横溝に群がってたんだが、誰が何言っても無視して、結局最後まで一言も喋らねえの。そんな調子だから、休み時間ごとに転校生を囲む人の数も徐々に減っていって、今じゃ誰もいねーぞ」
「緊張してたんじゃないか? もしくは、教室の隅で誰か用をたしてたのが気になったんじゃないか?」
「それはもういいっ! ……まあいいや。とにかく、忠告はしたからな。落とすなら頑張れよー」
 やる気なさ気に手をひらひら振って、友人は便所へ向かった。
「そんなつもりはないんだが……」
 まあいいか、と思いながら教室に入り、自分の席に戻る。そこから転校生の方をちらりと見る。
 さっきの話通り、転校生の周囲に人影はなかった。当の本人もつまらなさそうな顔で小説っぽいのを読んでいる。
(うーむ。後ろから見ても可愛いにゃー。抱っこしたいにゃー。しようか。でもしたら捕まるしなあ。法律が憎いなあ)
 などとぼんやり考えてたら、件の者がこちらを見ていることに気づいた。
「え、えと……こんにちは?」
 突然のことにどうしたらいいのか分からず、ニヤニヤ笑いながら手を振ったが、すぐにぷいっとされてしまった。
(がむでぶ! 方法を誤った! 慣れない笑顔で気持ち悪さが炸裂したに違いない! ああそれにしても可愛いなあ。抱っこしたいなあ。もし来世がイケメンだったら恋仲になれるのかなあ)
(……ああ、いやいや。そんな益体もないことを考えても仕方がない。よし、友人に背中を押されたし、ここはひとつ話しかけてみるか! ……いや、引き止められたんだっけ? まあどっちでもいいや)
(さあ、頑張ろう俺! 声をかけるのだ! なんて? ……いい天気だね? ……これだッ! ここから→そうですね→でも君の方が素敵だよ→抱いて、となるはず!)
「えええっ!?」
 突然転校生が奇声をあげたので、クラス中の視線がそこに集まった。
「え、あ、えと……な、なんでもない、です」
 ぺこりと周囲に頭を下げ、転校生は小さくなって再び本を読み出した。
(なんだろう。小説に何か変なことでも書いてあったのだろうか。……お? よし、これを話の種に、お近づきに!)
 そう思いながらこっそり近づこうとしたら、小説を机の中に入れられてしまった。
(……読破? なんたるチア! 早々に話すことがなくなった! こうなったらやはり天気コンボを繋げ、抱いてオチにもっていくしか!)
 どっきんどきどきしながら転校生の近くまで歩み寄り、精一杯で声をかける。
「や、やあ!」
 開口一番、声が裏返った。
(よし。終わった。声と一緒に全身の皮が裏返って死ねばいいのに、俺)
「…………」
 さっき友人が言っていたように、何のリアクションもない。机の上で組んだ自分の手をぼーっと見ている。
(聞こえているはずだが……はっ! まさか、耳に障害があり、聞こえていないのでは? もしそうなら、窓ガラスを粉砕するほどの音量をもってこんにちはを行えば、返事もありうるのでは!? いくぜ、必殺こんにちはッ!)
「……何か用ですか」
 すぅーっと息を吸い込んでいると、転校生が視線だけをこちらに向け、面倒くさそうに口を開いてくれた。
「あ、あー。聞こえてたのか。や、耳が悪いのかと」
「別に悪くないです」
「そ、そっか」
「ええ」
(…………。いや、そこで話を終えたらダメだろ、俺! 頑張るンだ! 必殺の天気コンボを発動させるのだ!)
「え、ええと。今日はいい天気だね?」
「くもってます」
 視線を窓に向ける。超くもり。さよなら天気コンボ。
「……用件はそれだけですか?」
(はい。いやそうじゃねえ。用件っていうかちょっとお話したかっただけなのだけなので終わりなのだが、もっと話してえんだ! ……それにしても間近で見るこの迫力はなんなのだ。顔も髪も胸も、ていうかそういうパーツの話ではない。全てが物凄く綺麗で、近くにいるだけでドキドキするんじゃあないか! ああもう超抱っこしてえ! むぎゅーって!)
「と、特に用事がないなら一人にしてください」
 なんて、頬をほんのり赤くしながら転校生は言った。
(なんだ? 突然顔を赤くして。……風邪? 身体が弱いのか? )
「あの。保健室の場所、分かる?」
「え、あ、いえ……」
「そか。んじゃ、案内するよ」
「え、あ、あの……」
(調子を崩したりしたら、そりゃ誰だって不機嫌っぽく見えちゃうよ。それにしても転校初日が体調不良なんて、転校生もついてない)
 などと思いながら転校生の手を引き、保健室へ連れて行く。転校生は少し困ったような顔をしながらも、素直に着いて来てくれた。
「…………」
「…………」
 保健室への道中、当然というかなんというか、全く会話がない。
(そりゃ調子崩してちゃ会話どころじゃねーわな。それにしてもクラスの奴もアレだな、病人を囲むなんてどうかと思うな。……まー、これだけ綺麗だと仲良くなりたくなる気持ちも分かるけど)
 そう思いながら、転校生を見る。まるでエルフがそこにいるかのようなファンタジーな空間が転校生を中心に広がっている。そこだけぽっかりと現実感を喪失しているような気分だった。
(しっかし、病人相手になんだが、やっぱ美人だなー。周りの奴みんな転校生見てるもん。保健室連れて行ってるだけなんだけど、無駄な優越感を感じちまうなー。あー、こんな美人な彼女がいたらなー。毎日幸せだろうなー)
 ふと見ると、転校生の顔が先ほどより赤くなっているではないか。急がないと。
「……あ、あの」
 急ぎ足で保健室に向かっていると、転校生から初めて声をかけられた。
「え、あ、うん。何?」
「その、いつまで握ってるんですか?」
「いつまで?」
「…………」
 転校生が無言で視線を下に向ける。それにつられるようにくりんと視線を下に向けると、あらあら、おてて繋いでますよ。
「のああっ!? ごっ、ごめっ、わざとじゃないんだ!?」
 あまりの事態に、慌てて手を離す。
(全く! 何で俺は普通に手を繋いだりなんかしちゃうかねえ!? こんなナチュラルにセクハラをしていたとは、なんて酷い俺なんだ! ええいそれにしても柔らかかった! 超名残惜しい! 悪魔に魂を売ってでも、もう一度手を握りたい!)
「…………」
 転校生は何も言わずにうつむいてしまった。熱が酷くなっているのか、さっきより顔が赤い。
(……ああもう。とっとと保健室に連れて行って、先生に診てもらおう。それで俺の仕事は完了だ。保健室に行けば転校生も元気になるだろう。さっきのでわざと手を握る気持ち悪い奴と思われただろうが、まあいい。早く行こう)
「えーと。すぐそこなんで、その、もうちょっと我慢してくれ」
「…………」
 転校生は何も答えなかったが、俺のすぐ後ろからついてくる気配はあったので、そのままにしておいた。そこからしばらく歩くと、保健室に着いた。
「ほい、ここがそう。じゃ、そゆことで」
 とっとと戻ろうと元来た道を行こうとしたら、腰に違和感。見ると、転校生が俺の腰部分をぎゅっと握っていた。
「あ、あの、一応礼儀として言っておきます。……その、ありがとうございます」
「え、あ。はぁ」
「そ、それと。……別に、気持ち悪いなんて思ってませんから」
「へ?」
「……そ、それじゃ!」
 転校生は顔を真っ赤にして保健室に駆け込んでいった。
(気持ち悪い? ……口に出したっけ?)
 そう思った瞬間、保健室の中からがっしゃーんと何かを引っくり返す音が響いた。何事かと室内に入ると、びっくりした顔の養護教諭と、床に散乱している医療器具や薬と、その中心に寝そべっている転校生が視界に入った。
「……あー、転んだ?」
 転校生は泣きそうになりながら、こっくりうなずいた。
(ドジっ子属性すら……。ええい、何もかもが可愛いなクソ)
 転校生に手を貸し、立ち上がらせる。デコでも打ったのか、顔中真っ赤にしていた。
「す、すいません、ありがとうございます」
「いや、なんつーか……先生。ええと、こいつに風邪薬と、あとドジに効く薬を」
「後者はないなぁ」
 俺たちの様子をうかがっていた先生は、にやにやしながら言った。
「ど、ドジじゃないです! ちょっと転んだだけです! 普段はこんなんじゃないんです!」
 転校生は必死になって俺に訴えた。
「と言われても、普段を知らないからなあ」
「……貴方のせいで転んだのに」(ぼそり)
「ん?」
 転校生が呟いた言葉は、俺の耳までは届かなかった。
「なんでもないです! も、もーいいから出てってください!」
「おお、おおお?」
 転校生に背中を押され、保健室から追い出されてしまった。
(なんてことだ。でもまあ思ったより元気そうだし、何より貴重な光景を見れたし、いいか。いや、しかしあんな綺麗なのに、実は転校生がドジっ子だったとは。本当にいるのな、現実に)
 などと思いながら教室に戻ろうとしたら、突然保健室のドアが開き、転校生が顔を出したのでびっくりした。
「な、何?」
「……ドジなんかじゃないですっ!」
 それだけ言って、転校生はドアを勢いよく閉めた。
(んな顔を真っ赤にして言うことじゃないだろうに。……でもまあ、言ってほしくないみたいだし、俺だけの秘密にしておこう)
 そう思いながら、俺はチャイムが鳴っているというのにゆっくり教室へ向かうのだった。そして当然教師に叱られるのだった。

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