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2019年10月15日
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【サトリツンデレ2】

2010年07月22日
 転校生がやってきた翌日。いつものごとく登校すると、喧騒の中ぽつねんと一人自分の席に座っている転校生に気づいた。級友という大義名分を持っているので、挨拶する。
「おはよっす、転校生」
 しかし、転校生は俺の顔を一瞥しただけで、挨拶を返そうとはしなかった。
(一瞥だけとは……くそう。こうなったらこっちも一瞥してやる。いや、それどころか百瞥してやる!)
 そんなわけで、転校生の前まで回りこみ、真正面から視線を合わせてじぃぃぃぃっと見る。
「……はぁ。なんですか」
「朝は挨拶するのが日本の風習だ」
「知ってます。ていうか、どこの国でも大体そうです」
「そか。じゃ、改めて。おはよ、転校生」
「……はぁ。おはようございます。……これでいいですか?」
「ん。おはよ」
 意識して笑顔を作り、転校生に背を向ける。
(迷惑なのは分かるが、それでもな。知らない奴ならともかく、知ってる奴が暗い顔してるのはどうも苦手だ。しかしまあ、らしくないなあ、俺。大きなお世話なのは分かってるんだけどなあ)
 そのまま自分の席に戻ると、友人がどでどでやってきた。
「お、お前、どうやって転校生と仲良くなったんだ!?」
「弱みを握った」
「オレの想像を余裕で凌駕するくれーサイテーだな、お前!」
「うそ、嘘です」
 つばを吐きかけられる勢いだったので、慌てて事情を説明する。
「……はぁ、保健室になあ」
「だから、仲良くなったと言うか、顔見知りになったというか、お腹空いた」
「話の展開がおかしいぞ! どういうことだよ! ていうかまだ朝だぞ!」
「寝坊したんで朝ごはん食べてこなかったんだ」
「…………」
「なんかください」
「……これやるから黙ってろ」
 友人は俺の頭に何か乗せると、力なく自分の席に戻っていった。頭のブツを手で探り、目の前に持ってくる。
(これは……クリームパンだ! 俺の大好物じゃないか! こいつぁらっきー)
 早速包装を破ってかぶりつこうとしたら、チャイムが鳴って教師が入ってきた。
(いかん、このままでは没収される! しかし、腹具合から換算するにこのままでは授業中に腹が減って動けなくなること間違いない! ……ばれないよう、こっそり食うしか)
「別府、早弁するな」
 音もなくゆっくり口を開けてたら、早速注意された。
(なんか知らんがいきなりばれた。……でも、まあ、いいか!)
 特に気にせずそのままパンにかぶりついたら、俺の席まで教師がやって来て連絡簿で人の頭を叩く。
「食うなっつっとろーが!」
「いや悪いとは思ってるんですもぐもぐもぐ」
「んじゃ行動で示せ! いつまで食っとるんだ!」
「リスみたいで可愛いと思いませんかもぐもぐ」
「思わんッ!」
「思ってよむしゃむしゃ……ごちそうさま」
「ああっ、貴様! 最後まで食っちまいやがったな!」
「おいしかったです。中のクリームが絶妙で、しかもそれがパンによくあってて」
「知らんっ! ええい、後で職員室まで来い!」
「嫌だなあ」
「ちょっとは隠せ、阿呆っ!」
 先生はぷりぷり怒りながら戻っていった。
(うまかったなあ。腹が膨れると眠くなるよね。……眠い)
「いきなり寝るなっ、別府!」
「寝てません」
「せめて机から顔をあげて答えろっ!」
(よく怒られる日だなあzzz)
「寝息を立てるなッ!」
 なんかすごい怒られた。

 授業が終わって職員室へ出向き、大変怒られてから教室に戻る。次は3時限目か。……どれだけ怒られてんだ。
「……貴方は馬鹿なんですか?」
 席に戻り、怒られ疲れてうつらうつらとしてると、誰かに声をかけられた。顔を上げると、
「あ、転校生」
 俺の机の前に、転校生が腕を組んで立っていた。
「……私には横溝リネアという名前があります」
「あ、ごめんごめん。人の名前覚えるの苦手で」
「……まあいいです。昨日世話になったから一応忠告しておきますが、貴方、もうちょっと大人しくしていた方がいいですよ? 昨日ここに来た私ですら分かるほど、貴方はこのクラスでも浮いてるのですから」
(そう言ってる転校生の方が明らかに目立ってると思うが)
「なんですって!?」
「何が!?」
(なんかいきなり怒られた。超怖い。なんで美人って怒ると怖いんだろう)
「え、あ、い、いや、なんでもないです。私の勘違いです」
 転校生は顔を赤くしながらすまし顔をした。
「……こほん。そ、それでですね、朝の話なのですが」
(なんか挙動不審だな……まだ学校に慣れてないのか? 早く親しい友人でもできればいいのになあ。でも、こんだけ美人だと下心丸出しの奴ばっか近寄ってくるだろうし……。あー、誰かいないかな、転校生の内側も外側も大事に想ってくれる奴は。俺みたいな奇行をしちゃう変人じゃなくて、普通の奴で)
「ひ、人の話を聞いてるんですか!?」
「すいません!?」
 なんかまた怒られた。怒りのためか、転校生は顔を真っ赤にしている。
「あ、貴方はアレです、その……ダメです! 先生に怒られてる最中にパンとか食べてるし!」
「あ、いや、それはその、お腹が空いてて」
「ちょっとは我慢しなさいっ!」
「それができたら苦労しないんだ」
「何を他人事みたいに……と、とにかく反省してください、反省っ!」
 転校生……いや、横溝リネアは顔を真っ赤にしたまま自分の席へと戻っていった。
(あー……しかし、いったい何を反省したらいいのだろう。……パンか? よし、次はおにぎりにしてもらおう)
「そ……っ!」
 突然横溝リネアが頭を上げて奇声をあげた。周囲の級友も何事かと、固唾を呑んで横溝リネアを見つめる。
「……な、なんでもないです。ごめんなさい」
 先日と同じように、横溝リネアはぺこりと周囲に頭を下げた。そして、周囲が興味をなくすのを確認すると、そのまま崩れるように机に突っ伏した。
(……なんかえらく消耗してるな。まだ風邪が治ってないのか?)
「あー、あの、横溝リネア、さん」
 席まで行って、恐る恐る声をかける。
「……なんですか」
 ものすごく怖い目で見られた。
「あ、あの、まだ風邪治って?」
「……もう治りました」
「じゃあ、何か別の風土病が?」
「なんで風土病限定なんですかっ!」
(もっともな疑問だ。どうして俺も風土病なんて言ったのだろう。相変わらず俺の口と思考は直結してないな)
「……ちょっと、まだ学校に慣れてなくて、少し疲れているだけです」
「そ、そっか。ならいいんだ」
(いや、本当はよくない。疲れてるなら保健室で休んだ方が絶対にいい。連れて行きたいけど、二日連続で俺が連れて行くと横溝リネアも嫌だろうしなあ。どうし……あ、昨日行ったから道覚えてるか。よかった、一人なら横溝リネアの風評も下がらないな)
「そ、それじゃ」
 安心したのでそのまま自分の席に戻ろうとしたら、くいっと引っ張られる感覚。見ると、俺のベルトを引っ張ってる横溝リネアの姿が。
「……や、やっぱり少し眠りたいので、保健室に連れて行ってください」
「え、いや、でも道はもう」
「……貴方は憔悴してる女生徒を、一人で保健室へ行かせるつもりなんですか?」
「あっ、じゃあオレ、オレが!」
 様子を見守っていた友人が挙手して俺たちに近寄ってきた。
「…………」
「……と思ったけど、お前に譲るよ別府」
 が、氷の視線に負けたのか、そのまま逆再生して元の場所に戻っていった。
「というわけで。私を連れて行きなさい」
 俺の隣に立つと、横溝リネアは優雅に命令した。
(なんか元気そうに見えるのは俺だけだろうか)
「ふ、ふぅっ」
「わっ!?」
 立ちくらみでも起こったのか、横溝リネアが突然俺の方に倒れ掛かってきた。慌てて抱きとめる。
(うおおっ、不可抗力とはいえ胸が、おっぱいが俺の身体にぐにゃりと変形トランスフォームして密着と!? なんか生きててよかったかも! 神という概念を初めて認めよう!)
「あっ、あのっ! ご、ごめんなさい、そ、その、立ちくらみが!?」
 横溝リネアは慌てて俺から離れると、顔を真っ赤にしながら何か言い訳してた。
「い、いえいえ、結構なお手前で!?」
(なんだお手前って! 俺は俺で何を言っている!? ……ともあれ、調子が悪いのは間違いないようだ。指名もあったことだし、連れて行こう)
「……と、とにかく、行こうか」
「え、ええ」
 友人の「なんでお前だけー!」という涙声を背に受けながら、二人で教室から出た。
(ああ……いや、しかし柔らかかった。本当に柔らかかった。女の子の胸ってあんな柔らかいのか。もう一生感じることはないだろうし、今の内に記憶にしっかり刻み込み、死ぬまで反芻してやる)
「あ、あの……」
 誰もいない廊下を歩きながら反芻準備をしていると、横溝リネアがくいくいと俺の服を引っ張った。
「さ、さっきの、忘れてください」
「さっきの?」
「……だ、抱きついちゃったの」
(無理絶対無理100%無理不可能ダメに決まっている何を言っているのだこの娘はふんとにもう!)
「すいません無理です」
(そして俺は何故そのまま言うのだ。こんな時くらい嘘をつけばいいのになんでこんなとこまで馬鹿正直に! なんだって俺はいつもこうなのだ!)
 横溝リネアはぽかーんとした顔をしていた。そして、
「……ぷっ、くすくす。貴方って、その、もてないでしょ?」
 意外にも、横溝リネアはおかしそうにくすくす笑っていた。
「見たままです」
「くすくすくすっ。……じゃあ、可哀想ですから、覚えててもいいです。……特別ですよ?」
「あ、ああ」
(なんだ……? 気のせいか、ずいぶんと雰囲気が柔らかくなったような……。ひょっとして、これが横溝リネアの本来の姿なのだろうか。美人というより、可愛らしいという表現がぴったりじゃないか)
 教室での憔悴が嘘のように、機嫌よさそうに俺の前を歩いている横溝リネアを見て思った。あ、鼻歌まで歌ってる。
(……やっぱ気を張ってたんだな。俺じゃなくてもいいから、いやもちろんできれば俺がいいんだけど、誰かの前でだけでもこの姿になれたら、学校生活も楽になるだろうになあ)
 などと思いつつ横溝リネアを見ていたつもりだったのだが、いつこっちを向いたのだろう、じぃーっと見つめ返されていた。気のせいか、緊張してるような。
「え、ええと。なんだろうか」
「あ、あの! ……こ、こうやって保健室に連れて行ってもらうのも二回目だし、その」
「え、あ、はい」
「こ、これだけ迷惑かけちゃって、まだ名前も知らないし、その……」
「あ、ええと、じゃあ、遅ればせながら。別府タカシです」
「よ、横溝リネアです!」
「それはもうさっき聞いた」
「え、あ、あはは……」
(やっぱドジっ子だ。間違いねえ)
「ちがっ!?」
「ちが? ……血が? え、血!?」
「えっ、ちっ、違います違います、なんでもないですっ! ……ううう」
 なんか知らんが落ち込んだ後、横溝リネアは真面目な顔をして俺を見た。あまりの気迫に少したじろぐ。
「あっ、あのっ! ……そ、その、私、緊張しいなんです」
「あ、あー。確かに、なんかそんな気がする」
「そ、それに、人が多いところとかダメなんです……。すぐに頭痛くなっちゃうし」
(やっぱ身体が弱いのか。心配だな。できるだけ傍にいてやりたいが……俺では力不足もいいところだしな。誰か友達でもできればいいのになあ)
「だ、だからと言うわけじゃないんですけど……その、貴方さえよかったら、その……友達になってくれません……か?」
「…………」
(…………)
「あ、あの……ダメ、ですか?」
「…………」
(…………)
「あ、あの、えと……ご、ごめんなさい。い、いまの、なかったことに……」
「……ええっ!?」
「えっ!?」
(いま何かすげー言葉聞いたような……友達? え、俺が? 俺が横溝リネアと? ……いやいやいや。ないないない。ありえない。絶対夢だよ。白昼夢だよ。もしくは幻聴。はーやれやれ、俺の妄想は本当に都合よく幻聴とか聞かせるから怖いよ)
「あ、あの、と、友達、ともだちになって……」
(……ええっ!? ていうか、え? なんか半泣き!? 俺か、俺のせいか! ええい早く答えろ今すぐだ何をしている俺の愚図ッ!)
「も、もちろん!」
「あ……」
(なんでそんなので嬉しそうに笑うのか! ええい、なんでちょっと泣いてるのか! 全く分からん! 俺だぞ、性根が腐りきってる俺だぞ!? ああもうっ、ていうか俺も超嬉しい!)
「あ、あの、よ、よろしくお願いしますね、え、えと……べ、別府くん?」
「あ、ああ、うん。よろしく、横溝リネア」
「リネア、でいいです。……親しい人には、名前で呼んでもらうようにしてるんですよ?」
 リネアは人差し指をぴーんと立てて、とっておきの秘密を話すかのように小声で囁いた。
(ははーん。俺を萌え殺す気だな? 死ぬほど可愛いのは何兵器だ? ああもう、俺はもう今死んでもいい。たぶんこの瞬間が俺の人生で最大の幸福だ)
「……え、えと。じゃ、じゃあ、ほ、保健室、行きましょう」
 なぜか顔の赤いリネアは俺の手を取ると、小走りで保健室へ向け走り出した。
(最大幸福が更新された!? 柔らかい、手が柔らかい! おのれ可愛い兵器め、俺をドキドキさせて殺す気だな!?)
「ま、待て、走るな! ていうか元気になってねえか!?」
「え、えへへっ、そんなことないですよー?」
 俺に振り向きながら、これっぽっちも信憑性のないことを笑顔で言うリネアだった。
 そして、後ろを向きながら走ってたせいで俺を巻き添えに思い切り転ぶリネアだった。
「やっぱドジっ子だ、お前」
 廊下に倒れたまま、ジト目でリネアに言ってやる。
「ど、ドジっ子じゃないですっ! 偶然です! 浮かれてただけです!」
「浮かれる?」
「なっ、ち、違います、浮かれてませんっ!? は、早く保健室行かないと! ね、ね!?」
「あ、ああ」
 全力で顔を赤くするリネアに引っ張られ、俺は何も考えられないまま一緒に保健室へ向かうのだった。

拍手[23回]

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Comment
これは

ツンデレに間接キスの作者と同じ人なのか

No title
やばい、サトリツンデレやばい
すげぇ可愛い
No title
横溝リネアっていう名前の由来が知りたいです。
無題

更新しないのカナ?









カナ?
No title
はい死んだ!萌え死んだよ俺!
No title
サトリツンデレと綿飴をくれないと立法機関に通報します
No title
どうでもいいが続きはまだかね?
久々に読み返したら大変良質な萌えが俺の脳髄を焼ききる勢いで脳内をぐるんぐるんしてるんだが。
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