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2024年03月19日
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【ツンデレと黒板を消したら】

2013年12月29日
 先日、そこらの鬼より口が悪い女と知り合ってしまった。だが、あんな奴百害あって一利なし。このまま知り合いという細い間柄で過ごし、これ以上仲を深めなければ最低限の被害で済むはず!
「早く黒板を消してください別府くん。何をぼーっとしてるんですか。どうせ想像の中で私をセクハラしているんでしょう死んでください」
 ──って思ってたんだけどなあ。なんだよ日直でコイツと一緒の当番って。
「はぁぁぁぁ……」
「なんですかそのウンザリした顔は。辛気臭いですこちらに顔を向けないでくださいついでに死んでください」
「鬼め。ああもういいや、とっとと終わらせちまおう」
 適当に黒板を拭く。ん、大体おーけー。終わり終わり。
「待ってください。全然綺麗になってないじゃないですか。雑過ぎです。貴方が何事も雑に終えて人生の最後に路傍で朽ち果てるのは勝手ですが、仕事はキチンとしてください」
 軽く手を払って戻ろうとしたら、黒板消しをこちらに向けた女に引き止められた。
「ああ、もう! 分かった、分かったからイチイチ攻撃するない!」
 向けられた黒板消しを半ばひったくるように取り、乱雑に黒板を拭く。だが、黒板に黒板消しの白い軌跡が描かれるばかりで、ちっとも綺麗にならない。
「ええい、こんなのまで俺を馬鹿にしやがる。クリーナーってあったかな……」
 キョロキョロと周囲を見回す。……あ、例の女の側にある。近づきたくないなあ。また死ね死ね言われそうだし。
「…………」
 だが、女は自分の手を見つめたまま固まっている。なんだろう。
「お、おい。どした?」
「…………。い、いえ。……ちょっと、先ほど黒板消しを貴方に取られた際に、手が当たったもので」
「あ、悪い。大丈夫か? 痛かったか?」
「……い、いえ。大丈夫です。痛くないです」
 む? てっきり『何を気遣ったふりして私の手を触ろうとしているんですかキモいです死にます死んでください殺します』とか言われると思ったが、普通の反応だ。
 いつもそういう対応ならこちらも態度を軟化させるのだが、普段が普段だからなあ。なかなかに難しいね。
「……な、何を見ているのですか」
「あ、いや、なんでもない。その、そこのクリーナーを使いたいのだが、いいか?」
「ど、どうぞ。私の物ではないですから」
「そりゃそうだ。逆に私物だと言われたらびっくりするわ」
 俺の軽口に反応することもなく、未だ手を見たり軽くさすったりしている女。……うーむ。
「あのさ、本当に大丈夫か? なんか手を気にしてるみたいだが……爪でも割れたか?」
「だ、大丈夫と言ってます。くどいです。なんですか、私は手を気にするのに貴方の許可がいるのですか。なんて横暴ですか許可を得る代わりに私の身体を貪るつもりですね死んでください」
 1言放つと5、6発返ってきて辛い。もうさっきの普通の反応が懐かしいよ。
「すいません俺が悪かったです。……や、なんでもないならいいんだが、やけに手を気にしているようだからさ。俺の手が当たったのが原因で何かあったのなら悪いし、その」
「な、なんですか私の手がおかしくなったらどうすると言うのですか一生面倒を見るとでも言うのですかそのついでにえっちなことをする気ですね死んでください」
「なんという言いがかりを! ……ていうか一生面倒を見るって、その……」
「……じ、冗談に決まってるじゃないですか。何をまともに受け取っていますかユーモアのセンスぜろですか」
「そ、そうだよな。ははは」
「そ、そうです。は、はは」
 ええい。なんだ、突然現れたこのむず痒空間は。
「……う、うぅ」
 目の前の女も何か困ったように手をさすったりして、こっちをチラチラ見たりなんかしたりして!
 何だ、何のフラグが立ったというのだ。いつの間に立ったというのだ。それとも全ては俺の勘違いなのか。
「か、勘違いしないでよねっ! 俺の勘違いを危惧しているだけなんだからねっ!」
「…………。近寄らないでください伝染ります」
 明らかに後退りされた。シッシともされた。あとフラグが折れた気がした。
「違いますよ!? ちょっと混乱してたので落ち着こうとしたらツンデレ語が出ちゃっただけなんだからねっ」
「まだ残ってます」
「しまった。まあいいや、別に病気じゃなくてただのクセなので伝染るとか言うない」
「馬鹿が伝染ります」
「あー」
「何を納得してますか馬鹿ですか人に言われて納得する程度には馬鹿なんですか馬鹿は生きてる価値がないです死んでください」
 この女はよく口が回るなあ。将来アナウンサーとかになるといいだろうなあ。とか思って現実逃避しないと生きることを挫けてしまいそうになるよ。
「……はぁ。ええと……女。クリーナーを使うからちょっとそこどいてくれるか?」
「嫌です」
「掃除できないのだけど」
「人を性別で区別するような方の言うことは聞きたくないです」
「あ……。い、いやその、名前を知らないんだ。おしえ……」
 はっ。このパターンは『チミの名前を教えてくだたいっ♪』『絶対に御免です私の名前で検索してSNSを調べて個人情報を集めてストーカーの末に目を覆わんばかりの犯罪行為を働くつもりですねその前に死んでください世界のためです』とかいうアレ!
「きいろ」
「はい。え?」
「で、ですから。……篠原きいろ、です。……名前。私の」
「あ、ああ。きいろね、きいろ」
 変な名前、と思ってたら、にわかに女……いや、きいろの顔色が変わった。
「な、馴れ馴れしいですいきなり名前で呼ぶとは何事ですか馬鹿ですか貴方は馬鹿なんですか」
 なんかあわあわしながら俺を指さしてあわあわしてる。つまり、二回言っちゃう程度には慌てている。……ちょっと可愛い、とか思ってしまって悔しい。
「ええと。大丈夫か、きいろ?」
「また呼びましたねなんですか早くも亭主関白気取りですか片腹痛いです私はそういうの困りますし大丈夫ですええとても大丈夫です今日も私は元気です」
「なんか魔女の宅急便が混じってるし、とても大丈夫には見えないぞ。とにかく、なんだ。落ち着け」
「私はいつだって落ち着いてますそうです座右の銘にいつだって落ち着くとあるくらい落ち着いているのですむしろ貴方がもう少し落ち着いて色々思い出した方がいいです」
「待て、座右の銘が変なきいろ! ちょっと目が怖いです! と、とにかく一度落ち着いてだな……」
 ──その時。俺の脳裏になんか変な猫耳娘が現れ、『落ち着くにはなでなでが一番と先日の妹サミットで決まったんだよ、お兄ちゃん!』と囁いた。

 気づいた時には手が動いていた。
「よしよし」ナデナデ
「…………」
「落ち着け」ナデナデ
「…………?」
 不思議そうな顔で俺を見てるきいろ。一方、俺は俺で不思議に思いながらきいろをなでている。どうして俺はこんなナチュラルに今日初めて名を知った奴の頭をなでているのか。
「──っ!?」
 ややあって、きいろの顔が赤一色で染まった。すごいバックステップで思い切り俺から距離を取り、物凄い速度で俺を指そうとしてるが目標が定まらないようで、一見北斗の拳系の技のよう。あべし。
「あ、あ、あ、あ、貴方は、何をーっ!?」
「いや本当に。その、訴訟しない方向で対処して頂けると何かと助かります」
「わ、わざとですか!? わざと私を辱めて楽しんでいるのですか!?」
「いや、辱めるて……いくらなんでも人聞きが悪すぎるだろ。ていうかいきなり女性の頭をなでた俺が全面的に悪いが、きいろはきいろで色々と問題があるかと」
「ま、また名前を!? そういうプレイなのですか!? いくらなんでも気が早過ぎると思いますよ!?」
「何の話だ!?」
 俺の脳裏で『やれやれなのにゃ』と肩をすくめる猫耳娘だった。誰だお前。

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【ツンデレに消しゴムを拾われたら】

2013年12月28日
 英語の授業中。とても眠い。だが、最近寝すぎて先生に目をつけられているため、例えポーズだけでも起きていなければ。ああそれにしても眠い。
 ……そうだ、板書をノートに写して目を覚まそう。えーと、I am a pen、と。斬新なカミングアウトだな……あ、全然違う。寝ボケて見間違えたか。
 消しゴムを筆箱から取り出そうとしたら、手が滑って床に落ちてしまった。慌てて腰を浮かしかけてると、隣の席の女子が拾ってくれた。
「あ、サンキュ」(小声)
「うるさいです殺しますよ」(小声)
 はい、と俺に消しゴムを手渡し、なんでもない顔で授業に戻る女生徒。俺も黒板に向き直る。
「……いやいや、いやいやいや! 違うだろう! そりゃ拾ってくれたことには感謝しますがその感謝に対しうるさい殺しますよはないんじゃないですかねェ!? いやうるさいまでは100歩譲っていいとしても殺されるのはどうしても嫌だ! なぜなら死ぬのはとても怖いから!」
「別府うるさい。座れ」
「はい」
 あまりの納得のいかなさのあまり思わず立ち上がって思いの丈をぶち撒けたら、普通に英語教師に叱られた。
「とてもうるさいです殺します」(小声)
 そしてまた殺意をぶつけられた。睨まれもした。
「……あのさ、俺なんかしたか?」
 このままでは大人しく授業を受けることなんてできやしない。こそこそっと例の女子に耳打ちしようと近寄ったら、その距離だけ離れられた。
「お、おい待て。逃げるな」
「悪臭がします。むしろ死臭です」
「あれ、俺死んでた?」
「はい」
「いつの間に!? 嫌だあ!」
「別府うるさい。座れ」
「はい」
 知らず死んでいた恐怖に再び立ち上がって叫んだらまた怒られたので、座る。あと、よく考えたらこんなので騙される俺が悪い。が、それとこれは別。
「ええい、よくも騙しやがって、この……ええと、名も知らぬ女生徒!」ヒソヒソ
「私だって貴方の名前なんて知らないです」ヒソヒソ
「さっきから教師に名前を呼ばれてますが。口だけじゃなく耳まで悪いのか」
「う、うるさいです死にます死になさい殺します」
 このお嬢さんはすぐに人を殺そうとするので怖いが、ちょっと頬が赤いので恐怖心が薄れた。
「すぐに人を殺そうとするな。それより、どうしてそんなに俺を殺そうとするんだ。アレか、実はお前は悪魔か何かで、俺の魂にすごく価値があるからそれを他の悪魔に奪われまいといち早く俺を殺して魂を取ろうとしているのか」
「邪気眼キモいです」
「…………」
「さらに言うなら、貴方の魂にそんな価値があるとはどうしても思えません。どれだけ自惚れてるんですか。自身を顧みたことないのですか。その上での発言ならもうどうしようもないです、一人で穴でも掘って永遠に埋まっててください」
「…………」
「最後に、授業中です。邪魔しないでください。とても迷惑です」
「うっうっうっ……」ポロポロ
「泣いたッ!?」
 畳み掛けられすぎて思わず涙が出てしまった。そしてそれを大声で言われた。
「うわっ、マジだ! 別府の奴泣いてるぞ!」
「すげぇ、高校生でここまでマジ泣きしてる奴初めて見た」
「別府くんの泣き顔よ! レアよレア! 早く撮らないと!」パシャパシャ
「うわ、調教したい……」ハァハァ
 周囲から聞こえてくる黄色い声に、自らの立ち位置を自覚して死にたくなる。ていうか最後のなんだ。
「どうした別府、お腹でも痛いのか? ほら、便所行って来い」
 そういうわけではないが、ここで晒し者になってるよりマシだ。俺は逃げるように教室から出て行った。

「はぁ……」
 数分時間を潰してから教室に戻る。先ほどの喧騒が嘘のように、教室は静寂を取り戻していた。だが、生徒たちの俺を見るニヤニヤとした顔が夢幻ではなく現実であると知らしめる。
 ただ、ニヤニヤされて悔しいので俺なりの精一杯の愉快な顔をして対抗したのだが、全員一斉に真顔になったので一層辛い。
「ちくしょう」
 さっき泣いたのとはまた別の理由で泣きそうになりながら着席する。今日は厄日だ。大人しく最初から寝てりゃよかった、とか思ってたらツンツンと肩をつつかれた。例の女がボールペンでつついている。
「なんだコンチクショウ。今の俺のは非常に傷心なので、これ以上死ねと言われたら実行しかねないので勘弁してくれると嬉しいです」
「さっきの顔はなんですか?」
 真新しい傷に塩をたっぷり塗り込まれた。
「……なんでもない」
「そうですか。……あの、その。……さっきはごめんなさい。私が言わなかったらあんなことにならなかったですよね?」
 ……びっくりした。この殺します女に、こんな殊勝な態度を取れるとは。
「全くだ。土下座して謝れ。その際全裸でお願いします。支配欲が満たされそうだし、その大きなおっぱいが床でぐにゃりと押しつぶされる様をとても見たいです」
 そこで、全力で大人げない態度をとる。
「…………」ジーッ
「嘘ですごめんなさい」
 養豚場の豚を見る目で見られたので、思わず謝ってしまう。
「……いや違う、なんで俺が謝ってんだ。そうだ、お前が謝るんだ。酷いこと言って泣かせてごめんなさいと言え。あ、泣かせてはやっぱナシで」
「ちょっと言っただけで高校生を泣かせてしまい申し訳ありません」
「ちくしょう」
 謝らせたはずなのに、心は晴れるどころかより一層重くなる。
「ところで、なんであんなので泣けるんですか? 何か秘訣があるのですか? 子供じゃあるまいし、あんなので普通泣けませんよね?」
「俺に恨みでもあるのか」
「はい」
「え? マジ? 何かしたの、俺?」ズイッ
「近寄らないでください真剣にキモいです死にます殺します」
「うっうっうっ……」ポロポロ
「また泣いた!?」
 十数分前の繰り返しになったので割愛。

拍手[10回]

【シロ 最初】

2013年12月23日
 先日、うちで飼ってる猫がめでたく化けた。
「にゃあ……にゃうう……くひゅうぅ……」スピャー
 学校から帰ると、俺のベッドで寝息を立てる少女。件の猫、シロだ。
「人が学校行ってる間、ずっと寝てたのか……なんて羨ましい。俺も猫になりてえ」ナデナデ
「んっ……んーっ。……くああああ。……んー。……ん? あっ! にいちゃ! おかえり!」
 シロの目が覚めてしまったようだ。ベッドの上で丸まって寝ていた姿勢から一気にこちらに飛びついてくる。
「うおっ! ……っと。いきなり飛びついたりしたら危ないじゃないか」ナデナデ
「んぅ? 前からしてるが?」ゴロゴロ
「や、今は猫の形をしてないだろ。人の形をしてるなら、それ相応の対応をだな」
「なでなでが止まってるが!」プンスカ
「人の話を聞いてください」ナデナデ
「ぜんしょはするが、やくそくはできない」フンス
「この猫変な言葉使うな」ナデナデ
「んー。んぅー。……ん。ちょと満足。ただあとでまたなでてもらうがな!」ズビシ
 何やらキメ顔で俺に指さした後、シロは床に降りると部屋の中をうろつき出した。
「どした? おしっこなら便所でな」
「ちがう!」
「大きいほうか。そっちも便所でお願いします」
「もっとちがう! なわばりをたんけんちゅう! これだいじ。とてもだいじ」ウンウン
「それはいいが、あまり狭いところへ行くない。詰まるぞ」
「せまい!」フカーッ
「ほら早速挟まった」
 シロはベッドと壁の隙間で一人で動けなくなって勝手に怒っていた。
「ちょっと、にいちゃ! うごけないんだけど!」
「そのようですね」
「うぐぐぐぐ。……そだ」ポヒュ
「お」
「ニャー」
 小さな煙をあげ、シロは元のにゃんこに戻った。かわいい。
「フニャッ」
 小さくなったのでスペースが空き、シロは隙間から簡単に抜け出せた。ベッドの上に軽く跳び乗り、ペロペロと自分の足を舐めて毛づくろいしている。
「かわいい」ナデナデ
「ニャー!」
 可愛かったのでなでたら怒られた。毛づくろい中に触られるのは嫌なようだ。
「すいません」
「ニャムッ。ニャムニ! ンニャー」
 何やらぶつぶつ文句を言ってから、シロは再び毛づくろいを始めた。
「さっきショムニって言った?」
「カーッ!」
「すいません」
 またニャムニャム文句を言ってペロペロ毛を舐めている。
「シロも相手してくれないし、ゲームでもするかな」
 パソコンの電源を入れて椅子に座り、ぼんやり起動を待ってると毛づくろいを終えたシロがトテトテやってきた。
「どしました」
「ンニャッ」ピョイン
「うおっ」
 シロは軽いジャンプで俺の膝に飛び乗り、足をふみふみして丸まった。
「成る程」
「ンゥー。……ンニャッ」ポムッ
「おっ。……おおおおおっ!?」
「うるさい、にいちゃ」(迷惑げ)
「服は!?」
 猫から人になったシロは、普通に裸だった。
「むこうに落ちてるが?」
 そういえばベッドの隙間で猫になったのだから、当然そこに落ちている。
「着てください!」
「いやだ」
「全部見えてますよ!?」
「にいちゃがシロによくじょうしている……!」
「はい」
「はいときた」
「だってシロってつるぺたじゃないですか。そりゃ興奮しますよ」
「にいちゃがじゅうかんをすいしょうするー……」プルプル
「こいつの言語感覚変だな。何で学んだ」
「まあいいや。ふくを着ろというなら着る。ぺっとのしゅくめい。かなしい」
 シロは俺から離れると、ベッドの上に四つん這いになって服を取ろうとした。
「後ろから見たら何もかも丸見えですが!!!」
「とてもうるさい! あまりのうるささにシロはねむくなってきた!」フカーッ
「いや、それはおかしい」
「いわれてみるとそのとおり。だまされた!」フカーッ
「いいから早く服を拾って着てください」
「シロのすじはもう見なくてもヘーキか、にいちゃ?」
「コイツわざとか」
「のうさつ!」ウッフーン
 シロがハニワのポーズを取った。
「いいから服を着ろ」
「しっぱい……」ションボリ
「いいから」
「いま着てるとこ!」
 シロは服に手をかけ、頭からかぶった。
「今日もふくのやろうシロにはむかう!」フカーッ
 そして今日も頭の出口を見失っていた。
「ほら、落ち着け」
 仕方ないのでシロの頭を服の穴に誘導してやる。
「……んっ! まったく、ふくのやろーは……あっ、にいちゃ! あははー、にいちゃ!」ペチペチ
「人の顔を叩かないでください」
「むちゃをいうものではない!」ペチペチ
「無茶なのか」
「んー。ちゅーしていい?」
「ダメです」ナデナデ
「しかたない。しょくごにしよう」
「そういうことじゃない」
「……ねるとき?」
「違います」
「まえはしてくれたのに! まいにち!」ドタバタ
「はいはい」ナデナデ
「うぐぐぐ。あまりなでるものではない。ふまんがきえる」
「そりゃ初耳だ」ナデナデ
「あああ。あああああ」ゴロゴロ
 何やら恍惚とした表情をしている猫娘をしばらくなでてました。

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【素直ヒート 試作】

2013年07月04日
「おい、そこのテメェ! 私と合体しろォォォォォッッッ!」
「ひぃ、痴女!?」
 学校から帰ってる最中、とんでもないのに出くわした。
「痴女じゃねえ! これは! この叫びは! お前への溢れんばかりの愛が! 私に叫ばせているだけだ! さあ、脱げ! 今すぐ全部脱げェェェェェッッッ!!!」
「通報していい?」(スマホ片手に震えながら)
「やめて」
 
 詳しく話を聞くと、俺に一目惚れしたとか何とか。
「はぁはぁ、成る程。眼科を受診することをオススメします」
「私の視力は左右ともに6.0だ!」
「お前それサバンナでも同じ事言えんの?」
「とにかく! 私がお前に惚れていることは、嘘偽りのない真実だァァァァァ!」
「超うるさい」
「これは! 私の溢れるパッションが! 魂の律動が! お前への愛が! 言葉となり世界を震わせているだけだ!」
「ふむー。花のように愛らしい少女に好かれるのは大変喜ばしいことなんだが、精神疾患を患ってる奴が相手となると、話は別だなァ」
「は、花みたいとか言うな///」
「なんか急にモジモジしだした! これは可愛い! 直喩した甲斐があった!」
「う、うー///」
「ただ、精神疾患のことに対して何の言及もないのは、気づかなかったのか、それともガチなのであえて無視したのか、そのどちらか判明しないとこれ以上踏み込めません」
「前者に決まっているだろう! 私は正常だ!」
「しかし、頭がオカシイ奴は決まってそう言うぞ? しかしその場合俺も頭がおかしい奴にカテゴライズされ、更に言うなら世界はそのカテゴリでいっぱいとなり地球滅亡へまっしぐらなので、その説はお断りさせて頂きます」ペコリ
「お前は面白いな!」
「…………」
「ん? どうした?」
「大抵の奴は、俺がこういう言動をすれば引きつった笑いをして去っていくものだが、お前は変わらないんだな」
「私には私の信念があり、お前にはお前の信念がある! その信念を、どうして笑い飛ばせようか!」
「い、いや、そんな御大層なものではないんですが……。ただの趣味というか、クセというか、脊髄反射というかその」
「たとえ他者がどう思おうとも諦めないその気骨……気に入った! さらに気に入ったぞ! 脱げ! さあ、私に種を仕込めッッ!!!」
「通報していい?」(二回目)
「やめて」(二回目)
 
 このお嬢さんはすぐに人を裸にしようとするので、それはいけないということをこんこんと説明する。
「そ、それくらい私にだって分かっている! ただ、私の情熱が、理性を放逐するのだ! 仕方がないのだ! あと、正座もうやめていい?」
「ダメ」
「うぐー……」ションボリ
「はぁ……。しかし、すごい奴と知り合っちゃったなー。タイムマシン使って数十分前に戻ってなかったことにしたいよ」
「案ずるな! ずっとずっと前からお前の観察は続けていた! 今更多少戻ろうとも、結果は変わらないぞ!」
「アッパー方向のストーカーかぁー。うあー」
「観察は完璧、対策も完全! お前好みの女性になっているハズだ!」
「いや、確かに見た目はどストライクですが、性格がその、ええと、あのー」
「花丸合格か! 即お嫁さんか! 努力の甲斐があったというものだ! ふふ……ふははははッ!!」
 嬉しそうに高笑いしているので、どうにも言い辛い。
「そのくらい頑張ったし、正座やめていい?」
「ダメ」
 ちょこんと小首を傾げる所作は鼻血が出そうなほど可愛いが、それはそれ。
「足が、足がぁ……」(半泣き)
「まあ、話は分かった」
「じゃあ嫁か!? 子作りか!? ここでか!?」
「とりあえず、知り合いからで」
「普通、こういう時は友達だろう!?」
「じゃあ、友達で」
「うんっ! ……む?」
 何か思案顔だったが、これからヨロシクという名目で握手したら、ニマニマしだしたので、よしとしよう。

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【男の娘の精霊 最初】

2013年01月06日
 どうも近頃ついてないなあと思ってたら、交通事故に遭った。結果、数日生死の狭間をさまよう羽目に。
 幸運にも生還できたが、その代償かどうかは知らないが、近頃妙なものが見える。

拍手[7回]

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