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2019年10月15日
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【ツンデレと黒板を消したら】

2013年12月29日
 先日、そこらの鬼より口が悪い女と知り合ってしまった。だが、あんな奴百害あって一利なし。このまま知り合いという細い間柄で過ごし、これ以上仲を深めなければ最低限の被害で済むはず!
「早く黒板を消してください別府くん。何をぼーっとしてるんですか。どうせ想像の中で私をセクハラしているんでしょう死んでください」
 ──って思ってたんだけどなあ。なんだよ日直でコイツと一緒の当番って。
「はぁぁぁぁ……」
「なんですかそのウンザリした顔は。辛気臭いですこちらに顔を向けないでくださいついでに死んでください」
「鬼め。ああもういいや、とっとと終わらせちまおう」
 適当に黒板を拭く。ん、大体おーけー。終わり終わり。
「待ってください。全然綺麗になってないじゃないですか。雑過ぎです。貴方が何事も雑に終えて人生の最後に路傍で朽ち果てるのは勝手ですが、仕事はキチンとしてください」
 軽く手を払って戻ろうとしたら、黒板消しをこちらに向けた女に引き止められた。
「ああ、もう! 分かった、分かったからイチイチ攻撃するない!」
 向けられた黒板消しを半ばひったくるように取り、乱雑に黒板を拭く。だが、黒板に黒板消しの白い軌跡が描かれるばかりで、ちっとも綺麗にならない。
「ええい、こんなのまで俺を馬鹿にしやがる。クリーナーってあったかな……」
 キョロキョロと周囲を見回す。……あ、例の女の側にある。近づきたくないなあ。また死ね死ね言われそうだし。
「…………」
 だが、女は自分の手を見つめたまま固まっている。なんだろう。
「お、おい。どした?」
「…………。い、いえ。……ちょっと、先ほど黒板消しを貴方に取られた際に、手が当たったもので」
「あ、悪い。大丈夫か? 痛かったか?」
「……い、いえ。大丈夫です。痛くないです」
 む? てっきり『何を気遣ったふりして私の手を触ろうとしているんですかキモいです死にます死んでください殺します』とか言われると思ったが、普通の反応だ。
 いつもそういう対応ならこちらも態度を軟化させるのだが、普段が普段だからなあ。なかなかに難しいね。
「……な、何を見ているのですか」
「あ、いや、なんでもない。その、そこのクリーナーを使いたいのだが、いいか?」
「ど、どうぞ。私の物ではないですから」
「そりゃそうだ。逆に私物だと言われたらびっくりするわ」
 俺の軽口に反応することもなく、未だ手を見たり軽くさすったりしている女。……うーむ。
「あのさ、本当に大丈夫か? なんか手を気にしてるみたいだが……爪でも割れたか?」
「だ、大丈夫と言ってます。くどいです。なんですか、私は手を気にするのに貴方の許可がいるのですか。なんて横暴ですか許可を得る代わりに私の身体を貪るつもりですね死んでください」
 1言放つと5、6発返ってきて辛い。もうさっきの普通の反応が懐かしいよ。
「すいません俺が悪かったです。……や、なんでもないならいいんだが、やけに手を気にしているようだからさ。俺の手が当たったのが原因で何かあったのなら悪いし、その」
「な、なんですか私の手がおかしくなったらどうすると言うのですか一生面倒を見るとでも言うのですかそのついでにえっちなことをする気ですね死んでください」
「なんという言いがかりを! ……ていうか一生面倒を見るって、その……」
「……じ、冗談に決まってるじゃないですか。何をまともに受け取っていますかユーモアのセンスぜろですか」
「そ、そうだよな。ははは」
「そ、そうです。は、はは」
 ええい。なんだ、突然現れたこのむず痒空間は。
「……う、うぅ」
 目の前の女も何か困ったように手をさすったりして、こっちをチラチラ見たりなんかしたりして!
 何だ、何のフラグが立ったというのだ。いつの間に立ったというのだ。それとも全ては俺の勘違いなのか。
「か、勘違いしないでよねっ! 俺の勘違いを危惧しているだけなんだからねっ!」
「…………。近寄らないでください伝染ります」
 明らかに後退りされた。シッシともされた。あとフラグが折れた気がした。
「違いますよ!? ちょっと混乱してたので落ち着こうとしたらツンデレ語が出ちゃっただけなんだからねっ」
「まだ残ってます」
「しまった。まあいいや、別に病気じゃなくてただのクセなので伝染るとか言うない」
「馬鹿が伝染ります」
「あー」
「何を納得してますか馬鹿ですか人に言われて納得する程度には馬鹿なんですか馬鹿は生きてる価値がないです死んでください」
 この女はよく口が回るなあ。将来アナウンサーとかになるといいだろうなあ。とか思って現実逃避しないと生きることを挫けてしまいそうになるよ。
「……はぁ。ええと……女。クリーナーを使うからちょっとそこどいてくれるか?」
「嫌です」
「掃除できないのだけど」
「人を性別で区別するような方の言うことは聞きたくないです」
「あ……。い、いやその、名前を知らないんだ。おしえ……」
 はっ。このパターンは『チミの名前を教えてくだたいっ♪』『絶対に御免です私の名前で検索してSNSを調べて個人情報を集めてストーカーの末に目を覆わんばかりの犯罪行為を働くつもりですねその前に死んでください世界のためです』とかいうアレ!
「きいろ」
「はい。え?」
「で、ですから。……篠原きいろ、です。……名前。私の」
「あ、ああ。きいろね、きいろ」
 変な名前、と思ってたら、にわかに女……いや、きいろの顔色が変わった。
「な、馴れ馴れしいですいきなり名前で呼ぶとは何事ですか馬鹿ですか貴方は馬鹿なんですか」
 なんかあわあわしながら俺を指さしてあわあわしてる。つまり、二回言っちゃう程度には慌てている。……ちょっと可愛い、とか思ってしまって悔しい。
「ええと。大丈夫か、きいろ?」
「また呼びましたねなんですか早くも亭主関白気取りですか片腹痛いです私はそういうの困りますし大丈夫ですええとても大丈夫です今日も私は元気です」
「なんか魔女の宅急便が混じってるし、とても大丈夫には見えないぞ。とにかく、なんだ。落ち着け」
「私はいつだって落ち着いてますそうです座右の銘にいつだって落ち着くとあるくらい落ち着いているのですむしろ貴方がもう少し落ち着いて色々思い出した方がいいです」
「待て、座右の銘が変なきいろ! ちょっと目が怖いです! と、とにかく一度落ち着いてだな……」
 ──その時。俺の脳裏になんか変な猫耳娘が現れ、『落ち着くにはなでなでが一番と先日の妹サミットで決まったんだよ、お兄ちゃん!』と囁いた。

 気づいた時には手が動いていた。
「よしよし」ナデナデ
「…………」
「落ち着け」ナデナデ
「…………?」
 不思議そうな顔で俺を見てるきいろ。一方、俺は俺で不思議に思いながらきいろをなでている。どうして俺はこんなナチュラルに今日初めて名を知った奴の頭をなでているのか。
「──っ!?」
 ややあって、きいろの顔が赤一色で染まった。すごいバックステップで思い切り俺から距離を取り、物凄い速度で俺を指そうとしてるが目標が定まらないようで、一見北斗の拳系の技のよう。あべし。
「あ、あ、あ、あ、貴方は、何をーっ!?」
「いや本当に。その、訴訟しない方向で対処して頂けると何かと助かります」
「わ、わざとですか!? わざと私を辱めて楽しんでいるのですか!?」
「いや、辱めるて……いくらなんでも人聞きが悪すぎるだろ。ていうかいきなり女性の頭をなでた俺が全面的に悪いが、きいろはきいろで色々と問題があるかと」
「ま、また名前を!? そういうプレイなのですか!? いくらなんでも気が早過ぎると思いますよ!?」
「何の話だ!?」
 俺の脳裏で『やれやれなのにゃ』と肩をすくめる猫耳娘だった。誰だお前。

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Comment
No title
うむ、良い娘じゃないか

しかしこれだけ書いといてキャラがかぶってないのはすごいな
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