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2017年11月22日
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【魔女とタンク3】

2013年01月15日
最初から読む場合はこちら
前回はこちら

「というわけで、学校に着いた」
「……何ヶ月もかかったように思えるのは、気のせい?」
「気のせい!」(断言)
「断言されては仕方ない」
「物分かりが良い奴は好きだぞ」(なでなで)
「タンクに好かれてもしょがない」
 そう言いながらも、なでられて心なしか口角が上がってるラピスだった。
「酷い話だ。で、面接か。どこでやるんだ? 職員室?」
「ん」
「……大丈夫とは思うが、あんま魔法使うなよ」
「なんで?」
 さも以外という顔でこちらを見るラピス。やはり俺と違う常識を持ってるようだ。まあ、世界が違うから仕方ないか。1つずつ教えていくしかないな。
「ばれたら面倒な事になるだろうが。下手すりゃ見世物小屋で一生を終えることになるぞ」
「んー……だいじょぶ。ばれない」
「どこからそんな自信が湧いてくるんだ」
「ばれたら魔法で頭いじくるから、だいじょぶ」
「せめて記憶を操作するって言ってくれませンかねェ!?」
「……うるさい」
 ラピスは迷惑そうに眉をひそめた。誰のせいだ。
「はぁ……もう。とにかく、もし魔法使っちゃったら魔力を補充しに俺のトコ来いよ。俺のクラスは2-Aだから、探してくれな」
「使うな、って言ったのに使った時のこと言ってる。……やっぱこのタンク頭悪い」
「この魔女性格悪いな。じゃなくて、最悪の事態を想定してるだけだ。魔法を連発なんてできないんだろ?」
 コクコクとうなずくラピス。素直でよろしい。
「何もなけりゃないに越したことはないが、想定外の事は得てして起こるものだからな。魔力を充填して、最悪の事態に備えることに越したことはないだろ」
「…………」
「どした? 見直したか?」
「ん。ちょっと」
「ほほう。惚れた?」
「魔女とタンクの間でそゆことは起きない」
「何事にも例外はあるものだ」
「……はぁ。じゃ」
 小さく嘆息すると、ラピスは廊下の奥へ向かっていった。
「あ、待て待て」
「……まだ何か? 急いでるんだけど」
 殊更面倒くさそうにそう言ってのけやがった。よっぽど放っておこうかと思ったが、一応言っておく。
「逆だ、逆。職員室は反対側だ」
「……初めての場所だから、間違えても仕方ない」
 小走りにこっちに戻ってくるラピス。
「顔赤いぞ」
「赤くない。別に方向音痴じゃない」
「後者に関しては触れてなかったのだが」
「……後で根こそぎ魔力奪ってやる」
 俺をじろーっと睨んでから、今度こそラピスは職員室の方へ歩いて行った。
 軽く嘆息してから、自分の教室へ。友人に軽く挨拶して、世間話を開始。
「よぉ。あのさ、昨日公園の方で何か爆発みてーのあったろ? でもニュースとか全然やってねーの。あれ何だったんだろな?」
「魔女が怪物を退治してたんだ。ちなみに俺はその魔法タンクなんだ」
「中二病はもう卒業しろ」
 試しに正直に話してみたが、全く信用されなかった。一安心だ。しかし、ニュースになってないのは一体……?
 って、考えるまでもないか。魔法でなかったことにしたのだろう。しかし、それなら結界的なもので最初から隠蔽すりゃいいのに。何か考えがあるのだろうか。
 とか考えてたらチャイムが鳴ったので、思考中断。学生らしく授業を受けよう。
 それから数時間後、英語の時間。即ち、大変眠い時間。
 いつものようにアクビを噛み殺していると、突然教室のドアが勢い良く開いた。嫌な予感がする。
 いきなりのことに教室の皆が入り口を注視する。果たして、俺の予感は的中した。
「えーと……あ、いた」
 その闖入者はキョロキョロとクラスを見回すと、一直線にこちらに近づいてきた。
「……いや、確かに言ったよ、なにかあれば来いって。でも、もうちょっとTPOを考えるとかあああああ!?」
「んー」
 闖入者──ラピスは、むぎゅっと俺に抱きついてきた。女体の柔らかな感触が俺を絶叫に誘う。なにこれすごい。
「あ、あの、ら、ラピスさん?」
「んぅ」スリスリ
 頬を襲う未経験の感触。噂に聞く頬ずりに違いない。本当に俺と同じ皮膚をしてるのか。柔らかすぎるぞ。
「……ろ」
 しばし柔らかSHOCKに襲われてると、ラピスが小さくなにかつぶやいた。
「は、はい?」
「……なでなでしろ」
 なんという破壊力。これは抗う術がない。
「は、はい」ナデナデ
「んー」
 これで満足したのか、ラピスは最後に数度スリスリすると、俺から離れた。
「……ん、回復。……じゃ」
 さっきの逆回しを見るかのように、ラピスはまっすぐに教室を出て行った。
「……え」
 え、置いてかれるの? この状況で?
 男子勢はほぼ全員が俺を親の仇とでも勘違いするばかりに鬼気迫る勢いで睨んでいるし、女性陣は何か周囲の女性とヒソヒソ囁き合ってるし、先生は仁王っぽくなってるし。
「……さて。どういうことか説明してもらえるな?」
 先生の言葉に、そりゃ俺の台詞だ、と心の中でつぶやくのだった。

「……あ、やっと出てきた。……遅い」(ほっぺぷくー)
「よくもまあいけしゃあしゃあと……」
 放課後、すごいことになってたが今世紀最大の口八丁手八丁スキルでどうにか切り抜け、へろへろになりながら昇降口へ向かうと、そこに頬を膨らませたラピスがいた。
「お前なあ、あれは一体どういうことだよ」
「……魔力が切れたら来いって言ったのはタンクなのに。……なんか怒ってる」シュン
「あ、いや、怒ってはいるが、その、あまり怒ってないぞ?」
「まあ、タンクのことだし、どっちでもいいけど」
「…………」
「じゃ、帰ろ? まだ帰り道よく分かんないから、待ってた」
「あー……まあ、途中で話すか」
「ん」コクコク

 ラピスと並んで帰宅。14歳というのを差し引いてもコイツは結構背が低く歩幅が狭いので、ちょっと油断すると置いていってしまう。
「うー。……もっとゆっくり歩け、ばか」
 そんなわけで、ラピスが頻繁に小走りする羽目になってしまう。
「ああ、悪い悪い」
「……好きで小さいわけじゃない」
「何も言ってません」
「……足の長さは普通。背が伸びないだけ」
「だから、何も言ってないのだが」
「……うー」
「唸られても。って、そんなのどうでもいい。教室でのことだ」
「…………。なんかあったっけ?」
「ええっ!? あれだけの爆弾を放り込んでおいて!?」
「……冗談。……面白い?」
「他人事ならなあ……!」
「やたっ。……将来は、お笑い芸人になろう。……片手間に適当なこと言って、億万長者」
「舐めくさった将来設計はともかく、今は教室での行為について、だ。なんであんな目立つ真似を」
「……別に、問題ないし」
「いやいやいや! 超あるよ! 現に俺さっきまで職員室で詰問されてたし! なんで魔法で助けてくれなかったんだ!?」
「……私のことじゃないし」
「なんという度胸だコンチクショウ。俺が『ラピスは魔法使いだぴょーん。TV局に売り払うでゲスよ』と先生たちにばらす危険性を考えなかったのか?」
「……信じてるから」
「う」
 真っ直ぐに見据えられた。青い瞳が俺を映してる。
「……ま、まあ、俺も別にお前が嫌いとかじゃなくてだな、避けられる危険は避けたほうがいいんじゃないかって話をしたかっただけでだな、その……」
「……まあ、タンクごときが言った所で誰も信じないだろうし。信じても、魔法で頭いじくるからだいじょぶだし」
「さっきの信じるっていい台詞はなんだったんですかねェ……?」
「……ドキドキした?」
「あーもー心臓が破裂するかと思うほどですよ」(むぎゅー)
「……その割に、ほっぺを引っ張られてる。……ツンデレ?」
「うるせい。で、俺のトコ来たってことは、魔法使ったってことだよな。……何かあったのか?」
「……だいじょぶ。たいしたことない」
「本当か? ……その、何かやらしいことされた、とか?」
「……薄い本の読み過ぎ」
「うぐ」
 ……そういや、コイツは俺を数年に渡って観察してたって言ってたよな。……と、いうことは……。
「……いくらなんでも、毎日は、どうかと思う」
 ほんのりと頬を染めて、自分の足元を見ながら、ラピスはぽしょぽしょと呟いた。
「よし。死のう」
「……それは、困る。……だから、ダメ」ギュッ
 俺の前に回りこみ、ラピスは包み込むように俺の両手を握った。そして、真摯に俺を見つめた。
「フヒィ」
 まるでモテた経験のない俺の当然の帰結として、そんな声が漏れる。
「……訂正。……やっぱどうでもいい」
 汚いものを触ったかのように手を振り払われた。
「酷い! ニヤケ面ながらもどうにかいいセリフを返そうと苦心した結果なのに!」
「……失敗してるじゃん」
「頑張ったことを評価してくださいよ」
「……結果が大事」
「チクショウ! ……はぁ、過ぎたことだし、もういいや。と思い込もう。で、魔法はなんで使ったんだ?」
「……試験の後、ノド乾いたから、ジュース買おうと思ったけど、お金持ってなかったから」
「から……え? 偽造したの?」
「……魔法で自販機を壊して、ジュース手に入れた」
「より悪質な犯罪を!?」
「……うるさい」
 迷惑そうな顔で両耳をふさぐラピス。この魔女、怖え。
「お前、そんな無茶すんなよ。その前に俺を探して金を借りろよ。ていうか100円くらいならおごってやるよ」
「……タンクごときに借りを作るなんて、魔女としてプライドが許さない」
「それくらいで借りなんて思わねーよ。いーから、次はちゃんと俺に言うこと。いいな?」
「むー」
 頭をぽんぽんして言い聞かせたら、むーって口を尖らされた。なんて胸キュンな仕草だろう。
「ま、まあそういうことだから。ちなみに、その自販機の後始末は?」
「……だいじょぶ。……ちゃんと粉々にした」
「え、直したとかじゃなくて? 粉々を後始末と言い張る精神構造から、かなりの爆発性質を保持してると判断できますが、俺の推察はどうだと思います?」
「……このタンクも粉々にしようかな」
「怖いですね。とにかく、明日その粉々を直すように」
「……めんどい」
「めんどくても!」
「ぶー」
 といった感じでぶーたれる魔女だったが、どうにか平穏無事(?)に転入は成功したようで、安心しました。

拍手[16回]

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【魔女とタンク2】

2012年06月14日
「……魔法?」
「だから、そう言ってる」
 学校への道すがら、事情を聞く。
 少女(ラピスとかいったか)が言うには、自分は魔女の見習い、らしい。本来はこことは違う世界にいるのだが、昨日のような化け物がこちらの世界に現れる時、退治するためにこちらにやってくるとか。
「なるほど。でも、なんで退治なんかすんだ? お前からすりゃ、よその世界のことだろ? 放っときゃいいじゃん」
「……私はタンクと違い、善人なので放っておくとかできない」
「人を勝手に悪人に認定するな」
 ぺちりとラピスのでこを叩く。ラピスはむっとしたような顔をしながらおでこをさすった。
「……それと、経験を積むため、という理由もある」
「あー」
 なるほど、下積みか。単純かつ明確な理由だ。
「あと、お金にもなる」
「え? でも、昨日の化け物を見る限り、別に何も落としてなかったように思ったが」
「倒したことを申請したら、国からお金もらえる。モノによっては、がっぽり。大もうけ」
「化け物退治で金儲けか……いいなあ、なんかいいなあ! RPGみたいでいいなあ!」
「……やる?」
「俺にもできるのかっ!?」
「昨日みたいな魔物を倒せる技術があるなら」
「……参考までに聞くが、あの魔物はどのくらい強いんだ? こっちの世界の動物で例えてくれ」
「……くま?」
「分かった。無理です」
「ちなみに、昨日の魔物はかなり弱いほう。ドラクエで言うとおおありくい級」
「もういい、分かった。俺みたいなただの人間には無理だ」
「……特別。私、特別」
 とても褒めてほしそうだったので、ほっぺを引っ張ってやる。
「……おかしい。想定外」
 ラピスは両手で自分のほっぺをさすさすしつつ、何やら呟いていた。
「あー、そだ。なんで俺の親とお前が顔見知りになってんだ? 薬でも使ったか?」
「……魔法。ちょこっと記憶をいじくった」
「とても怖いですね!」
「……そんなことない。私のことを昔から知ってるって風に、少しいじっただけ」
「それでも充分怖えーよ。あ、それから、なんで朝うちにいたんだ?」
「住んでるから」
「……はい?」
「だから、住んでるからいたの。何度も言わせないで」
 ラピスの頬がぷくーっと膨らむ。ホント怒りっぽいなこいつ。……いやそうじゃなくて!
「え、知らない間に一つ屋根の下に住んでるの!? お前普段は向こうの世界にいるって言ってたじゃんか!」
「タンクと一緒の方が何かと都合がいいから。今日から私も一緒に学校行く」
「学校まで!? 編入とかどうなってんだ?」
「魔法」
「魔法万能すぎだろ……」
「──でタンクの親に願書とか色んな証明書を出してもらった」
「普通だ!」
「だから、今日試験と面接。らしい」
「はぁ、なるほど。何の試験か知らんがとにかく、頑張れ」(なでなで)
「…………」
 ラピスは黙って俺のなでなでを受けていた。心持ち嬉しそうな表情をしているような、そうでないような。
「あ、そうだ。昨日も聞いたが、そもそもタンクって何を指してんだ?」
「……昨日も聞かれた。また今日も聞かれた」(ほっぺぷくー)
「昨日の説明じゃ分かんねーから改めて聞いてんの!」
「……このタンク馬鹿だ。死んだ方がいい」
「お前が女じゃなければ殴ってる」
「女でよかった」
 ああ腹が立つ。
「このタンクは馬鹿だから、特別にこの私が講義してあげる。感謝せよ」
「講義は受け入れるが、感謝は断る」
「…………」
 ラピスはじろーっと俺を睨んだ。どうにも恨めしげだ。
「いーから早く教えれ」
「……むぅ。……んと、タンクというのは、魔力を貯められる許容量が大きい人間の通称。魔女は魔法を使えるんだけど、基本的に魔力の容量がとても小さいので、常にタンクを従えている」
「はー、なるほど。……ん? てことは、タンクがいなけりゃ魔女は魔法を使えないってコトか?」
「……使えないことはないけど、すぐ魔力が切れる。簡単な魔法を一つか二つ使ったらそれで終わり」
「ふーん。なんつーか、面倒なことだな」
「面倒だけど、大事なこと。魔女だけなら、すぐに魔力が切れる。タンクだけなら、そもそも魔法が発動できない。だから、魔女とタンクは二人でひとつ。一蓮托生」
「ふーん……」
「だから、優秀なタンクを手に入れるため、魔女は普段から人間界を各々調査してる」
「ふーん。お前も調査してるのか?」
「ん。してた」
「大変なのな。どんくらいの期間してたんだ?」
「……5年?」
「5年っ!? ロリババア系か、お前っ!?」
「……失礼」
 ロリババアのほっぺが膨れだした。
「え、お前いま何歳なんだ?」
「……女性に年齢を聞くのは、大変に失礼」
「とても大事なことなんです!」
「……はぁ。……んと、ひのふの……たぶん、14歳」
 全然ロリババアじゃなかった。ていうか2個年下だ。
「びっくりさせるなよ……。まあ、俺はババア結婚してくれ派だから実年齢はどっちでもいいけど」
「このタンクは変な派閥に所属している。……早まっただろうか」
「ん? 今14で、5年調査してたってことは……お前、9歳の頃からこの世界を調査してたのか? 向こうにゃ小学校とかないのか?」
「常に調査してた訳じゃない。放課後とか、休みの時とか、そういう時に調査に来てた」
「なるほど。部活みたいな感じなのか」
「ん。魔女の世界とこっちの世界をちょくちょく行き来してた」
「へぇ、そんな簡単に行き来できるんだ。どこでもドア的な道具があるのか?」
「んんん。魔法」
 そう言って、ラピスは何事かつぶやいた。空間が歪み、青いうねうねした輪郭の穴が開いた。
「……こんな感じ。ポータル。こっちと私の世界を繋ぐ門。……これができないとこの世界には来てはいけないという、すごい魔法。……弱冠9歳で取得した私はすごい」
「ふーん」
 うねうねしてる周辺に手をやると、俺の手までうねうねして見える。空間が歪んでいるのか。
「あまり近づくと、向こうの世界に行っちゃうから注意」
「そか。ちなみに、俺みたいな普通の人間が向こうに行くとどうなるんだ?」
「……体中の内臓が裏返って2、3日苦しんだ後、死ぬ?」
 ものすごい勢いでポータルから遠ざかる。
「今すぐ消してください!」
「……まだほめてもらってないから嫌だ」(ほっぺぷくー)
「ええい! なんて厄介な奴だ! ええい!」
「はやくほめろ。天才の私をほめろ」(うずうず)
「ああもう! ああもう! 弱冠9歳というロリ歳でポータルという魔法を習得したラピスはすごいなあ!」(なでなで)
「…………」(嬉しい)
「褒めたので! 早くあの処刑装置を消してください!」
「もっとなでろ」
「ええい! ええぇい!」(なでなでなで)
「…………」(嬉しい)
「もういいですか!?」
「ん」
 ラピスが手を軽く上げると、ポータルは音もなく消えた。
「はふぅ……なんだってこんなうららかな日に突然死に瀕さなけりゃいけないんだよ……」
「まあ、別に人間が私の世界に来ても死にはしないけど」
「なんだとぉ!?」
「騙した。……すごい?」
「あーすごいすごい」(頬をぎりぎりとつねりながら)
「……つねられている。あまり褒められている気がしない」
「まったく……この魔法使いは厄介だ」
 つねって気が晴れたので手を離してやる。あと、一応頬をさすさすしてあげる。
「それと、普通に町中で魔法を使うな。今は偶然誰もいないからいいけど、もし誰かいたら騒ぎになってるぞ?」
「…………」(ほっぺぷくー)
 ラピスは不満げに頬を膨らませつつ、俺の手を取ったあああああ!?
「な、なんでしょうか、いきなり」
「……魔力の補充。くっつかないと補充できない」
「ああなるほどこれがタンクとやらの役目なんですね」
 などと冷静を装っているが、やはり女子との接触に慣れていないので挙動が不審になったのだろう、ラピスがじとーっとした目でこちらを見ているではないか!
「……どきどき?」
「はい!」
 力いっぱい答えたら、目を見開かれた。
「……びっくり。予想に反する行動。変な奴。……うん、やっぱ私のタンクに最適」
「別に好きで変な訳ではない」
「……ツンデレだ」
 この魔女は妙に人間界に精通していて困る。
「か、勘違いしないでよね! 別に好きで変な訳じゃないんだからねっ!」
「……ツンデレ度が増した」
 そしてのってしまう俺もどうかと思う。
「……このタンクは楽しい。容量もいっぱいだし、やっぱりこのタンクは大当たりだ」
「人を物扱いするない」
「……ただ、頭が悪いのが難点」
「貴様、俺の秘密どこで知った!?」
「ずっと、観察してた」
 あー、そういや5年ほど調査してたって言ってたな。……え? ずっと?
「あの。まさかとは思いますが、5年ずっと俺を監視してたんじゃない……よね?」
「……流石にそんなにはしてない」
「だよねー。あー安心した」
「4年と少しくらい」
「俺の安心を返してください!」
「最初、色んな人間を観察したけど、どの人間もあんまり面白くなかった。……でも、このタンクは面白かった。容量もすごくいっぱいあるみたいだから、マークしてた」
「勘弁してください。本当に」
「……だから、このタンクがどういう人間か、よく分かってるつもり」
 ぼくはいまとんでもないすとーかーとてをつないでいます。
「……私のことをストーカーって思ってる」(ほっぺぷくー)
「いや、そりゃ思いますよ! そう思わない奴は信じられないくらいのお人好しか、途方もない馬鹿ですよ!」
「……このタンクは後者だよ?」
「お前の考えはよく分かった」
 とりあえず、空いてる手でラピスのほっぺを引っ張ってやる。
「……痛い」
 まるで堪えた様子がないよコンチクショウ。
「……私のタンクになるの、嫌?」
 きゅっ、と手が強く握られる。ラピスの顔が不安で曇る。この状態で嫌だと言える奴がいたら、俺はある意味尊敬するが、それ以上に軽蔑する。
「あー。その、困惑してるだけで、嫌というわけではなくてだな」
「……まあ、タンクの考えなんて知ったことじゃないんだけど」
「人が必死こいてモテ台詞をはいたのになんつー言い草だ!」
「……うーん、やっぱり変なタンク」
 などと呟きながら説明回を終えるラピスだった。

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【魔女とタンク】

2011年08月10日
「ほう」
 寝てると空から女の子が──って、これなんてラピュタ?
 ただ、明らかに天井に穴が空いてるんですよね。今もなお天井から木屑やら瓦の欠片やらが落ちてきて俺の部屋を汚してるし。もっとこう、騙すなら上手に騙して欲しい。変に現実感を出さないで。
 といったことを落ちてきた女の子に懇々と説教する。
「……はぁ」
 俺の話なんかより、少女は被ってた大きなつばの帽子を被り直す方に興味があるようだ。少女の身体に対し、明らかに大きいので、よくずれるようだ。ていうか、そもそも誰だコイツ。
「……じゃ、動かないで。外れるから」
 え、という暇もなく、女の子の持ってた杖が光った。次の瞬間、俺の首へ光の線が走った。
「ライトニングボルトぉーッ!?」
 首が吹き飛んだかと思ったが、そうではなかったようで。
「ん、成功」
 女の子が小さくガッツポーズをしている。大変可愛いですが、そうではなくて。
「ええと。あの、さっきのは一体?」
「……首輪」
「はぁ、首輪。……首輪っ!?」
 慌てて首まわりを確かめる。なるほどつい先ほどまでなかった首輪がこの世界に現出しているではないか。
「えええええーっ!? 何コレ!? S属性はあってもM属性はないんですよ俺は!?」
「……首輪。逃げると困るから」
「いやいや、いやいやいや! 困るも何も現在絶賛困ってるのは俺の方で!」
「……じゃ、行こ」
「質疑応答すらままならないと!?」
 少女が杖をまたぐ。まさか!?
「ん」
 想像通り、ふわり、と少女の体が宙に浮く。そして、それにつられるように、俺の身体まで──って!
「ぐっ、首輪! 首輪しか浮いてない! 俺の身体は依然重力に引かれていますので、結果何もない宙空に浮かぶ斬新な首吊り死体ができあがりますよ!?」
「……あ、忘れてた」
 少女の杖が輝く。すると、先ほどまでの苦しさが嘘のように消え、同時に奇妙な浮遊感が俺を襲った。
「ふぅー……あー、死ぬかと思った」
「……じゃ、今度こそ行こ」
「いや、だから。どこへ行くのだ。ていうか俺はなんでいきなり拉致されているのだ。説明が全くないのだが」
「……いっぱい聞かれた」
 少女の頬がぷくーっと膨れた。怒っている……のか?
「なんか分からないけど超可愛いからまあいいやうへへへへ」
「……変なタンク」
 それで興味をなくしたのか、少女はぷいっと前を向き、滑るように前へと進みだした。それに引っ張られるように、俺の身体も滑っていく。
「しかし、なんて斬新な拉致だ。こんな拉致なら悪くない……そう、悪くない!」
「……うるさい」
「まあそう言わないでくださいよ。もう状況が全く飲み込めていないので、いっそこれは夢なんじゃないかと半ば信じてきているほどなのだから」
「夢じゃない。現実」
「だよねー」
 先ほど感じた苦しみも、今感じている空を飛び、風を身体に受けている感覚も、リアルに感じ取れる。これを夢と思うのは少々無理がある。
「それで、さっき俺のことをタンクと呼んだみたいだけど、それは?」
「……燃料を入れる容器のこと」
「いやいや、いやいやいや。それは分かる。知ってる」
「……じゃあ聞かないで」
 再び少女の頬が膨らむ。ゆっくりした喋り方と違い、案外怒りっぽいようだ。
「ただ、その怒り方が俺の食指が超動きまくる感じの怒り方なのでもっと怒っていただきたい!」
「……やっぱり変なタンク」
 少女は前を向き、杖を滑らせることに集中したようだ。しょうがないのでその後姿を眺めることにする。
 黒い大きなつば付き帽子に、これまた真っ黒なマント。いわゆる魔女の服装、というやつなのだろうか。ということは、こいつは魔女……か?
 正直、魔女について造詣は深くない。おジャ魔女どれみで魔女知識は止まっている。まどかマギカを視聴しなかったツケがここに来るとは……!
「着いた」
「え?」
「……だから、着いた」
 また少女のほっぺが膨らむ。やっぱ怒りっぽいなコイツ。
 そこは、小高い丘の公園だった。一体ここに何があると言うのだ。
 そう思いながら周囲を見渡してると、突然少女が俺に抱きついてきたあああああ!?
「あ、あ、あ、あの、あのですね、一体これは?」
「補充」
「ほ、ほじゅう?」
「……ん。補充」
 少女は再度むっとしたように眉を寄せて繰り返した。燃料タンク、補充。それらから導き出される答えは──。
「え、俺は何かのエネルギーを溜め込んでいて、それをお前に現在供給してるってコト?」
「……だから、さっきから言ってる」
「いや、言ってねえ」
 依然むっとした顔のままだったが、それでも少女は俺から離れなかった。
 しかし、これはどうしたものか。普通に役得と思っていればいいのか、それともこれから起こる何かに戦々恐々していればいいのか。
 まあ、先のことなんて分かりやしない。今はこんなきゃわいい魔女っ子に抱きつかれた喜びを最大限に味わうのが先決だろう。
「……ん、おーけー」
 少女が俺から離れる。ぼさーっとしてる間に補充終わってた!
「がむでぶ! いつもそうだ! 俺はいつだってタイミングの神に嫌われている!」
「……来た」
「え?」
 ぞろり、と何かが現れた。
 地面が盛り上がり、土くれが形を変え、人型を成していく。歪な人間が三体、現れた。ただ、その大きさたるや、普通の人間の約三倍。巨人だ。土の巨人だ。
 巨人たちは、体から土くれを落としながら、ゆっくりと少女に襲い掛かった。
「……遅い」
 少女の杖の先端に、閃光が集中する。光は三対の光る帯を生み出し、巨人たちの身体を貫いた。
「……終わった」
 くるり、とこちらに少女が振り向く。
「終わってねえ! 危ない!」
 思わず声をかける。巨人は光の帯など意にも介さず、その巨大な手を振り上げている!
「……終わってる」
 ぴたり、と巨人の動きが止まる。と、巨人たちの体が内側から膨れだし、最後に爆発した。
「おおおおおっ!?」
「……うるさい」
 迷惑そうに眉をひそめる少女。お前のせいだっつの。
「……え、ええと。認識が追いつかないのだが」
「……倒した」
「あー、いや、それは分かる。ただ、相手が何者で、そもそもお前は何者かってことも分からなくて、どうして俺がここに居合わせているのかすら分からないので、もうどうしたらいいのか」
「……とりあえず、頑張った私を褒めるのがいいと思う」
「それは候補に上がりすらしなかった」
「…………」
 またしても少女の頬が膨らみだした。初対面の人間に褒めて欲しいのか。
「はぁ……まあいいや。よく頑張ったな」(なでなで)
 少女の頭を帽子の上からなでつける。だが、帽子がでかすぎるせいで、まるでなでている感覚がない。それどころか、帽子が動きまくり、それにつられ少女の頭がガクガクと動くので怖いだけだ。
「……むぅ」
 少女は帽子を脱ぎ、俺につむじを見せた。
「……はい。やりなおし」
 なでてほしいのか。変な奴。
「はい、なでなでー」
「…………」
 少女は目をつむり、なでなでを堪能しているようだった。
「はい、終わり」
「…………」
 目を薄く開き、何か言いたげに俺を見つめる少女。
「ええと……まだ?」
「まだ」
「なでられるの好きなのか?」
「……分かんない。ただ、なんか、ぽわぽわする」
 そう言って、少女は俺をじっと見つめた。
「あーはいはい。追加なでなでー」
「…………」(堪能中)
「はい、終わり」
「…………」
 目を薄く開き、何か言いたげに俺を見つめる少女。
「あの。たぶんだけど、もっとしてほしい感を感じるのだが」
 少女はコクコクうなずいた。
「終わらないのでいい加減終了です」
 みるみるうちに少女の頬が膨れていく。
「我慢しなさい」
「……はぁ。ま、いい。んじゃ、補給」
「おお。お? おおお?」
 さっきと同じように、少女は俺にべそっと抱きついた。
「い、いや。だから、これ何だ?」
「……補充、ってさっき言った」
「いや言った! 言いましたけど! 何を補充しているのかそして俺は何を供給しているのか皆目見当が!」
 俺の話なんてちっとも聞かずに、少女は俺の胸に顔を埋ずめ、ふにゅふにゅつぶやいた。
「まあ、いっか!」
 その様子がとても可愛かったので思考を放棄する。ついでに頭もなでてやれ。
「んー」
 少女は軽く顔を上げると、猫のように目を細め、小さく呟いた。これは大変に俺の脳がやられるので大変危険です。
「……やっぱ、当たりだ。すっごく深い。観察の甲斐があった」
「はい?」
「……なんでもない」
 それっきり、少女は黙って俺に抱きつくだけだった。よく分からんが、返事もないようなので、頭なでるだけにしておこう。
 ややあって満足したのか、少女はゆっくりと俺から離れ、帽子をかぶった。
「……んじゃ、帰ろ?」
 少女は杖をまたぎ、何か呟いた。少女の体が宙に舞う。同時に俺の身体も……って!
「ぐぎぎぃ」
「……あ、また忘れてた」
 ええ、また空中の首吊り死体が発見されるところでしたよ。
「ごほっごほっ……お前は俺を殺す気なのか」
「……忘れてただけ。そんなギャンギャン言わなくても分かる」(ほっぺぷくー)
「いや、ギャンギャン言いたくもなるよ! 死にかけたんだよ! これはいい壷なんだよ!」
「……いーから帰る」
 マ・クベ的な俺を見えない力で引っ張りながら、少女は空を滑る。結局なんだったんだ、今日のことは。
「……ん。着いた」
 しばらくして、見慣れた家に到着した。ただ、一部見慣れぬ外観になっているが。
「あのさ。屋根、修理していけ」
 悲しいことに、俺の部屋の真上に位置する屋根には未だ大穴が開いていた。
「……めんどくさい」
「めんどくさくても! 直すの! 壊した人が直すのは当然のことだと思いますが!」
「……いんけん」
「陰険じゃねえ! 至極真っ当なことを言ってますよ、俺は!」
「……はぁ、やれやれ」
 それは俺の超台詞だ、と思ったが、直すようなので、黙っておく。
 少女が杖をかざす。先端部分に小さな光が灯ると、屋根に開いてた大穴に俺の部屋に散乱してた瓦礫やら木屑やら瓦やらが集まっていく。それらは元の位置に収まり、結合していった。
 しばらくすると、修繕の跡すら残さず大穴は消えた。
「……ふう。できた」
「おお。すごいな」
「…………」
 何やらもの言いたげな視線をこちらに向ける少女。褒めてほしいオーラをひしひしと感じる。だけど、そもそも壊したのコイツだしなあ。
「…………」
 なんとなく察したのか、少女がしょぼんとした。
「あー……うん、よく直した。偉い偉い」
 しょんぼり少女を放置できるほど出来た人間でもないので、わしわし頭をなでる。
「わ、わわ」
 しかし、でけぇ帽子があったので、頭をがくがく揺するだけに終わった。
「……なでる時は先に言って。帽子取るから」
 ちょっと怒りながら帽子を取ると、少女は頭頂部を俺に見せつけた。
「もうなでたからいいじゃん」
「……納得がいかない」(ほっぺぷくー)
 そんなの納得なんてこちとら一度だってしてないが、膨れられては太刀打ちできない。諦めて優しく頭をなでる。
「ん。ん。……ん」
 何かを確認するようにコクコクうなずく少女。なでにくい。
「……分かった。これでもだいじょぶみたい」
「何が?」
「いーからなでろ」
「へーへー」
 それから数度なでると、少女は帽子をかぶりなおした。満足したようだ。
「……じゃ」
 窓を開け、そこから少女は外に躍り出た。
「……えええええっ!? えっ、終わり!? 状況説明がないままだよ!?」
 慌てて窓から身体を半ば出して外を見るが、既に少女の姿はなかった。
「……なんだよこれ。訳が分からん」
 結局、それから少女が現れることはなかった。

 明けて翌日。昨夜、色々なことがあってなかなか寝付けなかった俺は、当然のように寝坊した。
「これはなかなかスリリングな時間帯だゼ……!」
 急ぎ台所へ向かい、栄養補給を行う。父は既に出勤したようだ。母は向こうで何か作っている。少女は眠そうにパンをぱくついて──いやいや。待て。そんなわけがない。
「……おはよう」
 人が必死で現実を否定してるのに、少女が声をかけてきた。
「ほら、彰人。ちゃっちゃとご飯食べちゃいなさい。ラピスちゃんまで遅刻しちゃうでしょ」
 なんなのこの状況。なんで母さんと顔なじみなんだ。ていうかラピスって名前なのか。
「つーかなんでいるんだ昨日のお前ーっ!!!」
「……朝からうるさい」
 ずびしっ、と迷惑そうな少女の顔に指を突きつける俺だった。


 続く

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