【ツンデレと一緒にプールで泳いだら】

2010年09月10日
 欠伸をしつつだらだらと登校してると、俺と同じように暑そうにだらだら歩いてる奴発見。
「おっす、かなみ。暑そうだな」
「暑いわよクソ暑いわよ暦の上では秋だってのにこの暑さは何よどうにかしなさいよ!」
 挨拶しただけなのに、ものすごい詰め寄られた。しょうがないのでどうにかする。
「むにゅむにゅむにゅ……どうにか!」
 両手をばっとあげ、大きく叫ぶ。
「どうにもなってない! 暑いまんま!」
 失敗。俺の術は世界に嫌われているようだ。
「もー! 暑い暑い暑い暑い!」
「うるさいなあ……んじゃ、学校終わったらプールでも行くか?」
 プールと聞き、かなみは目を輝かせた。
「あっ……で、でもアンタとなんて行きたくないし。……で、でも、アンタがどーしてもって言うなら、行ってやらなくもないわよ?」
「そこまでして一緒に行きたくありません」
「どーしても一緒に行って欲しいって言え!」
「それもう強制だろ」
「いーから言うの!」
「やれやれ感が非常に強いが……まあいいか。ええと、どうしても一緒に来て欲しい」
「へへー、じゃあしょうがないから行ったげる。感謝するのよ?」
「でもよく考えるとお金がないので行かない」
「行くの! お金ないなら貸したげるから!」
「友人間とはいえ、お金の貸し借りはトラブルの元だからよくないぞ?」
「じゃあもうおごるから一緒に行くの!」
「女性におごられて平気な顔をしていられるほど厚顔無恥でもないからなあ」
「もーっ! どーしろって言うのよ!」
「だから、放課後に学校のプールに忍び込んで勝手に泳ごう」
「水泳部がいるから無理よ、馬鹿」
「そこの部長と部員と顧問の先生の弱み握ってるから大丈夫だ」
「悪魔!?」
 そんなわけで、放課後かなみと一緒に学校のプールで泳ぐことになった。今から楽しみだ。

 放課後。待ちに待ったふわふわプールタイムだ。だがしかし、ここで俺は驚愕の事実に気づいてしまった。
「水着持ってきてねえ……」
 俺一人なら裸の開放感! とか言いながら屋外に飛び出して逮捕されるのも問題ないのだが、かなみも一緒なので色々と問題が山積みだ。あと、よく考えると捕まるので問題ある。
 どうしたものかと頭を悩ませながら廊下を歩いてると、見るからに浮かれているかなみがスキップしながらこっちにやってきた。
「あっ……あ、あーあ。とうとう放課後になっちゃったわね。あーあ、やだやだ」
 俺を見た途端スキップをやめ、かなみは殊更嫌そうに顔をしかめた。
「もうちょっと前からそういう所作はお願いします」
「う、うっさい、ばか! 暑いからプールが楽しみなだけ! アンタと一緒なのは嫌なんだからね!?」
「それは丁度よかった。実は水着を持ってきてなくて、俺は泳げそうにないんだ。だから、お前だけ泳いでくれ」
「えっ……」
「それでも一応水泳部には話つけておくよ。まあ、俺がいなくても平気だろ?」
「あ、当たり前でしょ。……で、でも、そなんだ。一緒じゃないんだ。……そ、それはラッキーね。……らっきー」
 ラッキーならそれらしい顔をして。そんな今にも泣きそうな顔しないで。
「と、とりあえずプール行くか」
「……うん」
 ものすごい落ち込んだかなみを連れてプールへ向かう。その途中、購買部の前を通りがかった。
「あ。かなみ、ちょっと待ってて」
「うん? ……うん、待ってる」
 かなみをその場に置いて購買部に入り、ちょちょっと買い物する。
「お待たへ。行こ」
「ん」
 相変わらずしょげかえってるかなみを連れ、プール前へ到着。
「んじゃちょっと話つけてくるから、その間に着替えてて」
「……ん」
 背中からとんでもない悲壮感を噴出してるかなみを見送り、顧問がいる部室棟へ侵入、必殺の弱みを使ってプールの一レーンを借りることに成功。
「ううう……気をつけてたのに、気をつけてたのに……。一体どこで仕入れてくるのよ、そんな写真!」
「コミケ等」
 見た目はボーイッシュで普段は男らしい格好を好む先生の、ありえないほどフリフリロリロリした衣装で決めポーズしてる写真を片手に高笑いする。
「ところでこの服何? さくら? CCさくら? 今更感が強いですが、今でも根強い人気が俺内部であるのではにゃーんとか言え」
「はにゃーんッ!」
 殴られはしたが、そんな感じでプールを借りられたので、今度は男子更衣室へ向かう。さて、と。

「……あー、涼しいわね。……あー、楽しい。……ふん。ばか」
「独り言とは楽しそうで何よりですね」
「うっさい! ……え、あれ?」
「どした、狐につままれたような顔をして」
 実際にかなみのほっぺをふにーっと引っ張る。やーらかくて素敵。
「え、だって、水着ないんじゃ……?」
「購買部で買った」
「……わ、わざわざ?」
「かなみと一緒に泳ぎたかったからな」
 やめて。そんな染み渡るような笑顔見せないで。そこまで喜ばれると恥ずかしいです。
「はっ! ……へ、変態。そこまであたしと一緒に泳ぎたかったなんて、泳いでる最中にあたしの身体を触るつもりね!?」
「酷い言われようだ。もう泳ぐのやめようかなあ」
「えっ、嘘! やだ、ダメッ!」
 かなみは俺を抱きつくようにして引き止めた。
「……あ、いや、冗談なんだけど」
「うっ! ……う、うぅ~! ず、ずるい!」
 冗談と気づき、かなみは俺からぴょいんと離れると顔を真っ赤にして俺を責めた。
「ずるいと言われても」
「わざとそーゆーこと言ってあたしを抱きつくように仕向けた! ずるい!」
「や、そこまで好かれてるとは思ってませんでした」
「だっ、誰がアンタなんかを好きってのよ!? あ、アンタなんてだいっ嫌いなんだからっ!」
「へー」
「う、嘘なんかじゃないわよ! ホントのホントに嫌いなんだからねっ!」
「じゃあ、そんな嫌いで嫌いでしょうがない俺と一緒に泳いだりはしないのだな?」
「……お、泳ぐけど。一緒に泳ぐけど! でも嫌いなの!」
「ほへー」
「超馬鹿にしてえ! 嫌いなの! ホントにホントにホントにホントに!」
「ライオンだー」
「富士サファリパークは関係ないッ!」
「あれ歌ってるの和田アキ男とみせかけ、実は違う人らしいな」
「知んないわよっ! ……て、ていうか、なんかさ。そっちはどうなのよ」
「何が」
「だ、だから、その……あ、あたしのことをさ。その……す、好き? とか、そーゆーの」
「え」
「……や、やっぱなし! 今のうそ! なんもなし!」
 かなみは素早く水に潜ると、ぴうーっと潜水したまま泳いでいってしまった。
「ふ……甘いぞ、かなみ! ぼくドザエモンの異名を持つ俺に勝てると思ったか!」
 近くの水泳部員が「水死体……?」と怪訝な顔をしているのを尻目に、かなみを追いかける。
「わっ、なんか来た! くっ、来るなっ、ばかっ!」
「ふふん。俺様から逃げられると思ったら大間違いだ!」
 かなみの尻目掛けざぶざぶ泳ぐ。目の前の尻がふりふり動くたび、俺の運動能力が+1されるのを確かに感じる。
 10mほど泳いだ所でかなみを捕獲成功。後ろからがっしとかなみを掴み、動きを封じる。
「うー! ううー!」
「こら、暴れるな、ばか」
「馬鹿はそっちよ! 馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿!」
「馬鹿でいいから落ち着け」
「うぅー!」
「まあ、なんだ。答えを言う前に逃げられたので、一応は言っておこうと思いまして」
 ぴたり、とかなみの抵抗が止んだ。じぃーっと物言いたげな視線が俺を貫く。その視線の持ち主の耳元に顔を近づける。
「うっ……ばっ、ばかっ!」
 口を開く前にかなみは俺を突き飛ばすと、ばしゃばしゃと水をかけた。
「ぷわ。ぷわ。ぷわ」
「ばっ、ばか! ばかばか! ばかばかばか!」
「馬鹿馬鹿言うな。ぷわ。自覚はしてる。ぷわ。ていうか水をかけるのやめろ。ぷわ。まだ言ってないんだから」
「うっ、うるさい、ばか! アンタの気持ちなんてどーでもいいわよ! どっちにしろ、あたしはアンタなんて大嫌いなんだからっ!」
「嫌いであろうとなかろうと、俺の気持ちは別に」
「わ、わーっわーっわーっ! 聞こえない聞こえない聞こえないーっ!」
「ちくわ大明神」
「全く関係ないッ!」
 聞こえてるじゃん。
「うう……なによ、この敗北感は!」
「知らん。ていうかなんか疲れた。もう普通に泳ごうぜ……」
「そ、そうね。普通が一番よね」
 そんなわけで、かなみと一緒にしばらく泳ぐ。
「あー……涼しくて気持ちいいわねー。プールって大好き!」
「全くだな」
「でしょ? アンタもそう……」
 油断してるかなみに背後からすいーっと近づき、耳元でぽしょぽしょ囁く。
「!!!!?」
 そしてすぐさますいーっと逃げる。
「こっ、こら、ばか! そ、そういうこと言うだけ言って逃げるとかずるい! ばか、ばかばか!」
「いやははは、これでも人並みに羞恥心がありましてね。ああ、返事はまた後日で結構」
「ばか、ばかばか、ばかばかばか! 今すぐ返事言わせろ、ばかーっ!」
 真っ赤な顔で泳いでくるかなみから逃げるぼくドザエモンだった。

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【亜衣 ぺとぺと妹】

2010年09月08日
 妹が欲しい。いや、違う。訂正しよう。“普通”の妹が欲しい。
「何を考え込んでるんですか、お兄ちゃん?」
 最近出来た義理の妹を見ながら、そう思う。
「いや……あの、亜衣?」
「なんですか、お兄ちゃん?」
「俺の背中から降りてはどうだろうか」
 先ほどから俺の背中にべたーっと張り付いている義妹に優しく語り掛けてみる。
「嫌です。今は亜衣のお兄ちゃん引っ付きタイムなので、降りられません」
「そんな時間はないのですが」
「んー……まあいいです。んしょっと」
 亜衣は俺の背中から降りると、今度は俺の前に回りこんできて俺の手を取った。
「亜衣を抱っこしますか? いいですよ? はい、抱っこ」
「いやいや、いやいやいや。そんなの望んでません」
「望んでください」
 一体兄に何を求めているのだ、この義妹は。
「あのな、亜衣。確かに俺たちゃ兄妹になった。でも、だからって、四六時中一緒にいるのはおかしいと思わないか?」
 なぜかは知らないが顔を合わせた瞬間に大変気に入られ、それからずっと亜衣は俺と一緒にいようとする。
「亜衣はずっとずっとお兄ちゃんが欲しかったんです。半ば諦めていた頃にお母さんが再婚して降って湧いたお兄ちゃんに、亜衣は興奮を隠せませんでした。そして出会ったお兄ちゃんは、亜衣の理想のお兄ちゃん像にピタリ一致していて、亜衣の興奮は有頂天に達したのです」
「全体を通して分かったことは、頭が悪いことくらいですね」
「そういう意地が悪いことをさらっと言うところもポイント高いです」
 何を言っても気に入られるビクンビクン悔しいでも(ry
「クリムゾンですか?」
「人の思考を読まないで!」
「妹にかかればお手の物です。ふふん。……褒めますか?」
「褒めません」
「残念です……」
「…………」(なでなで)
 悲しそうだったので、思わず頭をなでてしまう俺は弱い人間だと思う。
「こういうところもポイント高いです」
「ええい。ていうかいうかていうかだな、一応俺と亜衣は兄妹なので仲が良いのは問題ないが、その仲が過剰なのは色々と問題があるのではなくって?」
「お兄ちゃんの秘蔵の本によると、兄妹仲が過剰によいのは何ら問題ないようです。むしろ、推奨されてます」
「馬鹿な!!!!?」
 幾重のダミーに守られているはずの、俺の、俺の『大人になる呪文』が、どうして亜衣の手の平に!?
「しかし、この本の妹に対し、私は中学生なので少々成長しすぎです。問題ありますか?」
「いや年齢も体つきもまだまだ余裕で俺の射程範囲内なので全く問題ありませんじゃなくって!」
「ノリツッコミです……♪」
 何をそんなに喜んでいる。
「ええいっ、いいから返せ!」
 とにかく、亜衣から本を奪い返す。
「あっ。全くもー、お兄ちゃんは乱暴です。横暴です。大好きです」
「なんか混じってる!」
「キスしますか?」
「甘えのベクトルがおかしい! 仮に甘えるとしても、兄に甘えるのであればもうちょっと、こう、緩いものだろう!?」
「初めてのお兄ちゃんなので、どこまでいったらいいのか分からないんです」
「ん……ま、まあ、それはしょうがないな。適宜言うしかないか」
「じゃあ、キスしましょう」
「いきなり間違ってるッ!」
 がぶあっと抱きついてきたので、全力で抵抗する。
「ぐぐぐ……キスします、キスします!」
「しないから! しないから!」
 おでこを押さえつけ、妹の魔の手を防ぐ。ややあって諦めたのか、亜衣はぺたりと座り込んで頬を膨らました。
「ぶー」
「ぶーじゃねえ。あのな、亜衣。さういうことは、好きな人にしなさい」
「亜衣はお兄ちゃんが大好きですよ?」
「いやいや、いやいやいや。そうじゃなくてだな、異性として好きな人に対してすることで」
「亜衣はいつだってお兄ちゃんを性的な目で見てますよ?」
「それはそれで色々問題があるかと思いますが!」
「寝てる間にちゅーとかしていいですか?」
「ダメです!」
「じゃあやっぱり起きてる間に無理やりするしかないです」
 再び寄ってきたのでぐぐぐっと抵抗する。
「キスします! させてください!」
「ダメだっての! ええい、なんでお前はやること全部力技なんだ!」
「ほっぺたで! ほっぺたで我慢しますから!」
「……本当だな?」
 コクコクと嬉しそうにうなずいたので、ひとまず信じてみることにする。
「あー……じゃあ、まあ、それならいいや。ほれ、ぶちゅーっとしろ」
「亜衣にお任せです」
 亜衣は俺の前に回りこむと、ぶちゅー。
「ほっぺって言ったろーが!!!」
 慌てて亜衣を引き離す。超びっくりした。
「ああっ、まだ舌を入れてないのに」
「入れるな!!! はぁ……全く、最近の若い子は慣れてるのだか知らないが、恥じらいがなくて困るよ」
「あ、ファーストキスですよ?」
「…………。……そ、そうか」
「お兄ちゃん、照れてます?」
「あー……まあ、人並み程度には」
「お兄ちゃんの恥ずかしがる姿に、亜衣はすっごくドキドキしてますよ? どうしてくれますか?」
「知らんッ!」
 ぺとぺとくっついてくる義妹に困る俺だった。

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【ツンデレと運動会の練習】

2010年09月07日
 もうすぐ運動会なので、毎日放課後に練習を行っている。だがしかし、俺は運動とか大変苦手な生物なのでサボりがちだ。
「あっ、アンタまた逃げようとしてる! ほら、ちゃんとやりなさいよ!」
 そんなわけで今日もこっそり教室から抜け出そうとしたら、かなみに見つかってしまった。
「いや、当日はちゃんと真面目にやりますよ? ただ、それ以外は面倒くさいのでサボりたいんだ」
「ダメに決まってるでしょ! アンタ一応リレー選手でしょ? ちゃんと練習しないと!」
 くじ運が激烈に悪いのでそんなのに選ばれた俺なのだった。俺以外全員が陸上部員という地獄に君は耐えられるだろうか。
「うーん。でもなあ。めんどくさいしなあ。ハートはどこにつけよかなあ」
「知らんッ!」
 かなみさんはとても怖いです。
「ほら、いいから行くわよ! 先生にも頼まれてるのよ、アンタがサボらないようにちゃんと監視しててくれって」
「どこの囚人だ、俺」
「ほらほら、いーから行く行く」
「うわたた、押すな押すな」
 そんなわけで、無理やりに着替えさせられ運動場に連れて来られた。もう既にやる気メーターが0だ。
「あー今日もよく頑張った。さて帰るか」
「まだ着替えただけっ! とっとと練習しろっ!」
「暑くてやる気がしないんだ」
 着替えた時点でやる気はないと言うのに、さらにこの暑さが俺のやる気メーターをマイナスへと追いやる。そんなわけで、練習してるクラスメイトを尻目に木陰に退避。
「こらっ、早々とリタイヤするなっ! みんな頑張ってるんだから、アンタも頑張りなさいよ!」
 そんな俺を叱りつけるかなみ。腰に両手をあててお姉さん叱りするのは大変に喜ばしいが、その程度では俺のやる気メーターは変動しない。
「気温を10度ほど下げてくれたらやる」
「神様じゃないんだからそんなのできないわよ、馬鹿。ほーら、頑張る」
「うぁー」
 両手をぐいーっと引っ張られるが、その程度では俺様を動かすことは出来ない。いや、俺の方が体重が重いので。
「ふぅふぅ……ちょっと! 重いわよ!」
「100kgを超えた身体にこの暑さは辛いデブー」
「そんなにないでしょ! そんな語尾ついてなかったし! いーから練習しなさい!」
「かなみがチアガールの格好で俺を応援してくれたら頑張れる」
「なっ、なんでアンタなんかのためにそんな格好しなきゃいけないのよ、馬鹿!」
「なんで、と言われても、見たいから、としか言いようがない」
「見……だっ、誰がするもんですか、この変態!」
「残念なことこの上ないな。んじゃ俺帰るな」
「だから、すぐに帰ろうとするなっ! ……ほ、ホントに着たらやるんでしょうね?」
「おおっ!? その台詞はつまり着てくれるのか!?」
「かっ、勘違いしないでよね! 先生にアンタを練習に参加させるよう頼まれたからで、そのために仕方なく着るだけなんだから! 嫌々着るんだからねっ!」
「テンプレをありがとう」
「はあ?」
「ま、ま。とにかく、着て俺を応援してください」
「こっ、こら、押すな!」
 ぐいぐいかなみを押して校舎に押しこめ、クラスメイツの待つ場所へ戻る。
「待たせた皆の者! 王の帰還だ!」
 全員に無視された。
「サボってすいませんでした。今から頑張るのでどうか参加させてください」
 何かの虫みたいにぺこぺこ謝ってご機嫌を伺った結果、許してもらった。
「やれやれ。それで俺は何をしたらいいのかな? 女子のブルマの観察? 任せろ、得意だ」
 今の発言で女子全員が俺を敵と認識したようで、とんでもない量の視線が突き刺さってきたが、気づかないフリをする。まともにぶつかると廃人になること請け合い。
 視線の恐怖で半泣きになりながらも走ったりバトンの受け取り方の練習をしたり走ったりした結果、超疲れた。
「ああ……ああ、本当に疲れた。もう帰りたい。よし、帰ろう」
「だから、すぐに帰ろうとするなっ、ばかっ!」
 聞きなれた声に慌てて振り向く。そこに、待ち焦がれた姿があった。
「……な、何よ、じろじろ見て」
 かなみがいた。チアガール姿のかなみがいた。両手にポンポンを持ち、短いスカートを履き、真っ赤なノースリーブを着たかなみがそこにいた。大きなポンポンで自分の胸元を隠すようにしている。
「大変可愛いですね!」
「うっ……か、可愛いとか言うなっ、ばかっ!」
 かなみは真っ赤になりながら俺をげしげし叩いた。しかし、ポンポンは応援には適していても攻撃には向いてないようで、俺のダメージは0だ!
「いやはや。もう既にかなみのチアガール姿で俺のやる気メーターは大分回復したが、これに応援が伴うと俺のやる気メーターは天井知らずになるのでお願いします」
「回復したんでしょ? じゃあやんない」
「衝撃の発言におしっこが漏れそうだ」
「幼児かッ!」
「ていうかお願いします応援してください。土下座? 任せろ、得意だ」
「土下座なんかされても嬉しくないッ!」
 一切の躊躇なく土下座したのに、かなみときたら全く応援してくれない。
「ここまでしてもダメとは。これはもういっそおしっこを漏らすべきか……?」
「漏らすなッ! ……そ、そんなにあたしに応援してほしいの?」
「そりゃ勿論。そのためだけに俺は今ここにいるのだから」
「……ふ、ふーん。そなんだ。……あたしのためなんだ」
 なぜか知らないが、かなみは頬を染めながらゴニョゴニョ呟いた。そんなにチアガール姿が恥ずかしいのだろうか。
「……わ、分かった。覚悟決める。でっ、でも、応援した姿見て笑ったりしたら殺すわよ!?」
「笑いません」
 ガクガク震えながら答える。このチアガール超怖え。
「そ、そう。……じゃ、やるわよ?」
「お、おう」
「……ふ、ふぁいと」
「…………」
 俺の前までちょこちょこやって来ると、かなみはポンポンを小さく揺らしながらぽしょぽしょと俺を応援した。
「が、がんばれー。ふぁいとー」
「…………」
「え、えっと。元気、出た?」
 ちょこんと小首を傾げつつ、かなみは俺に訊ねた。
「超!」
「ひっ!?」
「超! 元気! が! 出た!」
「そ、そう。それならよかった」
「今なら空だって飛べそうな! ……いや、飛べる! よしかなみ、ちょっと屋上からFly Highってくるので見てて!」
「それただの自殺! 飛べないから行くな、馬鹿!」
「いやまあそれくらい元気が出たってことですよ! 本当にありがとう、かなみ! お前の応援に感謝する!」
「え、あ、そ、そこまで感謝されたらアレなんだけど……そ、そんな嬉しかったの?」
「それはもう! ここ数年来で一番嬉しかった!」
「こんなのが一番って、アンタの人生結構哀れなのね……」
 失礼なことを言われている気がする。
「まあとにかくまた練習してくる! ありがとな、かなみ!」
「そ、そう。……んじゃ、まあ、仕方ないから、あたしが引き続き応援してあげ」
「……あ、おにーさん」
 すぐ横から聞き覚えのある声がした。学校と外を隔てる金網の向こうに、知り合いの中学生であるふみがいた。慌ててそちらへ駆け寄る。
「よう、ふみ。学校帰りか? それとも探し物か? なかなか見つからないか? それより僕と一緒に踊りませんか?」
「……うふーふーうふーふーうふーふー?」
 この娘は俺と似た感性を持っているので、一緒にいて楽しい。時折(でもないが)辛らつな言葉を投げかけられるのを抜きにすると。
「……まあ、おにーさんと一緒に踊るのはともかくとして、おにーさんの背後にいるおもしろ格好をしているおねーさんが鬼もかくやと思えるほどの形相をしているので、私は逃げます」
 とてとてとふみはゆっくり逃げていった。なんだかすごく振り向きたくないよバーニィ。
「……え、ええと。それで、何の話だっけ、かなみ?」
「知らないわよっ、馬鹿ッ!」
 俺の口の中にポンポンを詰め、かなみは足音も荒く校舎に入って行ってしまった。
「もがもが……もがもがもが」
「ふーんふーん……ひっ、見たら死ぬ系の妖怪!? はわ、はわわわわ!?」
 偶然通りがかった大谷先生が悪戦苦闘しながらポンポンを取り出そうとする俺を見て腰を抜かしていた。

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【憑かれてるツンデレ2】

2010年09月05日
 先日、俺の特殊スキル除霊が発動したため、ボクっ娘に憑り付いていた幽霊が俺に憑り付いた。しかしそれは除霊ではなく依代が変わっただけのような気がするので、俺の特殊スキルは依代変更ということで。
 そんなわけで、俺の部屋には件の幽霊と、あとなぜかボクっ娘もいる。
「で、なんでおまいまでいるんだ」
ぐいいっと梓に指を突きつける。そのままついでにほっぺをぷにぷにする。やーらかい。
「だ、だって、タカシを一人にしたら絶対にこの幽霊にえっちなことするに決まってるもん。そんな悪どいこと、ボクの目が黒いうちはさせらんないよ!」
「つまり、カラコンを買ってこいと言うのだな。何色がいい?」
「買ってこいとなんて言わないのだな!」
「変な返事」
「うがー!」
 梓にがぶがぶ噛まれてると、幽霊がおずおずと俺の服の裾を握ってきた。
「ん? どした?」
「あ、あの……今更ですけど、いいんですか? 私がここにいても」
「人権のないおにゃのこと一つ屋根の下だなんて、考えるだけでニヤけて仕方ないからいいよ」
 幽霊がゆっくりと離れていった。
「うそ、うそです。何もしないっての。だから、気が済むまでここにいなさい」
「…………」
 幽霊はちょっと嬉しそうにこちらに戻ってきた。ので、悪い顔でニヤリと笑う。
「……騙されてますか、私?」
「騙されてるよ! だから、今すぐ成仏すべきだよ!」
 隣から嬉しそうに梓が声をかけた。
「まあ、成仏できるならそうしたほうがいいんだろうけど、自分の部屋に可愛い女の子がいるという現実が崩れるなら成仏しないほうがいいなあ」
「今日も自分勝手だよこの人!」
 幽霊の頭をなでてると、反対側から梓が僕の頬を引っ張ります。
「……ところで、根本的な疑問なんですが、どうして私に触れられるんですか?」
「女体に触りたいという想念が人より優れているから、じゃないかな?」
「「…………」」
 幽霊だけでなく、どうしたことか梓まで引いていた。
「嘘です。いや、そうでもないです。うーん……うん! やっぱりこれは本当です。自分に嘘なんてつけやしねえ!」
「無駄に男らしいよ、ばかっ!」
「……かっこいい、です」
「「ええっ!?」」
 俺と梓が異口同音で驚いた。
「……自分に言い訳しない男性で、かっこいいです」
「自分で言っておいてなんだが、先の発言をかっこいいと感じるのはどうかと思うぞ。よくもまあ今までそこらの悪い狼に食べられなかったものだ」
「……幽霊なので、普通の人は触れないんです」
「なるほどそれもそうか! わはははは!」
「わははじゃないよ! それってタカシだけがこの幽霊さんを襲えるってことじゃんか!」
 梓の言葉に、幽霊はぽっと頬を染めた。
「こら、そこの幽霊! 何を赤くなってんだよ!」
「そう怒るな梓。この幽霊もきっと今まで話し相手もいなくて寂しかったんだ、しばらく話せば成仏するだろう可愛いおにゃのこ幽霊が一緒で嬉しいなあウヒヒヒヒ」
「建前と本音が同居してるよっ、ばかっ!」
 このボクっ娘は人の頭をよく叩くのでひどいと思います。
「うー……しょ、しょがないからボクもここにいる!」
「妙なことを言うのはいつものことだが、今日のボクっ娘は普段よりも妙な発言をするね」
「みょーじゃない! だ、だって、タカシと幽霊さんを二人っきりにしたら、絶対にえっちなことするに決まってるもん! それを監視するため、ボクも今日からここで寝泊りする!」
「そして俺と幽霊が梓の家で寝泊りするのだな?」
「何の意味があって家を交換すんだよ!」
「梓のおじさんとおばさんにばれないように幽霊とえっちをするスリルを味わうため?」
「さいてーやろう撲滅ぱんち!」
 最低野郎撲滅パンチにより、煩悩退散。
「……どきどき、します」
「こらっ、そこっ! ドキドキしない! ボクの目が黒いうちは、えっちなことなんてさせないかんねっ!」
「つまり、カラコンを買って来いと言うのだな。何色がいい?」
「話がループしてるよ、ばかっ!」
 今日も時空のねじれに巻き込まれる俺だった。
「……と、とにかく! 今日からボクもタカシの家に住むからね! これ、めーれーだから!」
「めーざー光線!」
「……ぎゃあー?」
 めーれーとめーざーという響きが似てたので、なんとなくめーざー光線と言いながら手を銃にみたてて幽霊に撃ったら、疑問系ながらも反応してくれたので嬉しい。
「よしよし、偉いぞ」(なでなで)
「……せいかい、でした。ぶい」
「ボクをほっぽって二人で遊ぶなっ!」
 すると、なぜか梓が涙目で抗議してきた。
「じゃあ三人で遊ぼう」
「そ、そゆことじゃなくて、幽霊さんの成仏の方法を探るとか、なんで幽霊になっちゃったか、色々調べることあるじゃんか。そゆのはしないの?」
「梓は遊ばないようなので、幽霊と遊ぼう。何しよっか?」
「……とらんぷ」
「……あー、もうっ! 分かったよ、ボクも遊ぶっ!」
 そんなわけで、三人で徹夜でトランプした。超楽しかった。が。
「うおお……超眠い……」
「徹夜でトランプなんかするからだよ、ばかー……」
「むにゃ……いってらっしゃい……すぴー……」
 半分寝息を立ててる幽霊に見送られ、俺と梓は超あくびを超しながら学校へ向かうのだった超。眠い超。

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【ツンデレと新学期】

2010年09月04日
 今日からまた学校なので大変面倒くさい。
「うやー」
「突然先生の頭をわしわしっと!? これはもう確実に別府くんの仕業に違いないです! ……ほら見たことか!」
 かったるいので登校中に発見した珍獣こと大谷先生の頭を後ろからわしわしこねたら、即座にばれた。
「おはよう、先生」
「おはようではないですっ! 先生にする挨拶ではないです! どうして先生の頭をわしわしーってするですか!?」
「だって、先生の胸をわしわしーってしたら冗談では済まないと思って。……いや、まさか冗談で済むと? 先生、ちょっと前向いて」
「絶対に向きませんッ! まったく、別府くんには困ったものです。いや、というよりも、先生に大人の魅力が溢れすぎているのが困りものなのですかね。おっぱいが大きいのも困りものです」
「先生のおっぱいは着脱可能な製品なの?」
「不可能製品ですっ! おっきかったらなーって仮定のお話ですっ! ええそりゃ夏休み前から今に至るまで全くちっとも全然サイズ変わってませんようえーんっ!」
「ああ先生を泣かしてしまった。泣き叫ぶ幼女は嗜虐心をそそっていいなあ」
「幼女じゃありませんし、ちょっとは泣き止ませる努力を見せてほしいし、何より発言がすっごく怖いですっ!」
「実はS気質なんだ」
「そんなの、普段の別府くんを見てればがっつり分かります! 別府くんのいじわる!」
「はいはい。ごめんな、先生」(なでなで)
「いつでも子ども扱いですよぉ……」
「分かったよ、次からは大人扱いするよ」
「……具体的には?」
「名刺渡す」
「すっごく大人っぽいです! はや、でも先生は名刺持ってないから交換できないです……」
「普段から大人大人と言ってるくせにこの体たらく。先生もこの程度か」
「ぐぅぅぅぅ……だってだって、名刺なんて使う機会ないからしょうがないです! わたくし、こーゆーものですとか言ったことないです!」
「わたくし、こーゆーものです」
「先を越されました!? ……あの、なんで握手してるんですか?」
「名刺なんて持ってないから代わりだ」
「やーい、子供ー♪」
 全力で先生の手を握りつぶす。
「はやややや!? 手が、先生の手がみりみりと!?」
「先生の手は柔らくて気持ちいいね」
「こっちはそれどころではないですよ!? 手が、手がみりゃみりゃ言ってます! そして同時に激しい痛みが先生を襲っていますよ!?」
「なんか余裕あるなこの生物」
「ないです、ちっともないです! 痛くて痛くて死にそうです! ぐげー! あ、今死にました! だから手を、手を離してください!」
「先生って基本的に頭が悪い発言多いよね」
「いいから手を、手をー!?」
 いい加減限界っぽかったので、手を離してあげる。先生はすぐさま手を戻し、ふーふー息を吹きかけた。
「ううううう……とっても痛かったです! 別府くんのばか!」
「ごめんな。ただ、俺は先生をいじめたかっただけなんだ。それだけは、どうか信じて欲しい」
「全然いい話じゃないのに、それっぽい雰囲気で騙そうとしてます!?」
「信じた?」
「信じるも何も、最初っから最後まで全力でいじめられてます!」
「分かってるならいいや。じゃ、そろそろ学校行こうか、先生」
「結局一度も謝られてませんっ! そんな酷い生徒と一緒になんて行きません!」
「それにしても、久しぶりに先生に会えて嬉しいよ」
「……で、でもまあ、先生は大人なので、自分より生徒の都合を優先する度量を見せる必要があります。だ、だから、一緒に行ってあげてもいいです……よ?」
「でも、友達に噂とかされると恥ずかしいし」
「自分から誘っておいてまさかのときメモ返しっ!? もう何も信じられませんよ、別府くんのばかーっ!」
「ああ待って待って先生。一緒に行こうよ」
「行きませんっ、絶対に行きませんっ!」
 早足でスタスタと行く先生を追いかけながら、学校へ向かうのだった。

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