【ツンデレにマルチを強要したら】
2012年01月22日
「久しぶりに昔のエロゲを引っ張り出してプレイしたところ、マルチが死ぬほど可愛かったので今日から先生はマルチ。決定」
「なんて無茶なことを平然と言うですかっ!? 先生はマルチではなく、先生ですっ! 大人です!」
なんかもにゃもにゃ言ってる大谷先生(自称大人、見た目小学生)の耳にマルチっぽい自作の付け耳をつける。
「あーっ!? もうっ、全然許可してないのに勝手に変なのつけないでくださいっ!」
「お、普通にくださいって言った」
「へ? ……あーっ! 今回はちゃんと言えました! えへへっ、すごい? すごい?」
「あーすごいすごい」
ぴょんこぴょんこ跳ねつつ、満面の笑みですごいか生徒に問いかける教師の頭をなでる。
「……なんか知んないけど、馬鹿にされた気分でいっぱいです」
折角なでてやったというのに、大谷先生は不満気に眉を寄せた。
「そりゃ馬鹿にしているからなあ。そんな気分にもなるだろ」
「やっぱりですっ! 別府くん、先生を馬鹿にしてはいけませんっ!」
「いや、教師という職業を馬鹿にしたんじゃない。大谷先生という一個人を馬鹿にしたんだ。勘違いさせたなら謝る。悪かった」
「謝られたのにより一層不愉快になる魔法をかけられましたっ!」
ぺこりと頭を下げたのに、先生は涙目で怒った。
「それより先生、折角マルチっぽくなったのだからはわわはわわと言いなさい」
「生徒が教師に要求することじゃないですっ!」
「言ったら大人扱いするから」
そう言った途端、先生の目が輝きだした。
「ほっ、本当ですかっ!? 先生のこと、尊敬しますかっ!? もー子供だ子供だって馬鹿にしませんか!? 胸が小さいことをいじりませんか!? 執拗に頭をなでませんか!? 意味もなく抱っこしませんか!?」
「質問が多い。一つにしてくれ」
「う……そ、それじゃ、本当に先生のことを大人扱いしてくれますか?」
「任せろ。約束しよう」
「わ、分かりました。それなら先生も我慢して言います。……は、はわわ!」
「…………」
「はわわ! はわわ! はわわ! はぁはぁ……ど、どですか?」
「なんかイマイチ。20点」
「えええええ!?」
「どーも先生にはマルチ感が足りない。ゲーム貸すからマルチシナリオをクリアし、きちんとマルチのキャラを把握すること」
「頑張ったのに! 折角言いたくもないのにはわわって言ったのに、20点って! 先生、非常に不本意です!」
「赤点なので、当然先ほどの約束も反故させていただきます」
「酷いです! 別府くん酷すぎです! 悪魔です! 悪魔超人です! いっそ悪魔将軍です!」
「地獄の断頭台!」
「わ、上手です! ぱちぱちぱち!」
隠れた特技、一人必殺技を披露したら、普通に感心された。
「……いやいや、違います。必殺技とかどーでもいいんです」
「全く関係ないが、口でぱちぱちって言う奴って馬鹿みたいだよな。いや、全く関係ないが」
「また馬鹿にされた!? もー! 別府くんは! やっぱり悪魔です!」
「人間です」
「うぐぐ……しかも冷静に否定するなんて、なんだか先生の方が子供みたいじゃないですか! どーゆーつもりですかっ!?」
「実際に子供だから、別に変なことじゃないと思う」
「こんなに言ってるのにまだ先生のことを子供扱いしますか!? どういうつもりなのですかっ!」
「だって、先生の幼女感ときたら尋常ではないのだから、仕方ないではないか」
「仕方ないではなくないですっ! 別府くんのばかっ!」
「ややこしい怒り方をするな。まあそういうわけで、引き続き子供扱いするのでそのつもりで」(なでなで)
「ほーら、早速先生の頭をなでなでと! 酷い扱いです! 頭なでないでくだたいっ!」
「お、例のくだたいが出た。さすが先生、自身のキャラをよく分かっていらっしゃる」
「そんなつもりないですっ! 別府くんのばかっ! 先生のこと馬鹿にしてばっかで! だいっきらいですっ!」
「これは悲しいことを。俺は先生のことを大好きなのに」
「はわっ、はわわっ!?」
「ん?」
「は、う、え、そ、そんなこと言われても、こっ、困ります、困りますっ! そ、そりゃ先生も本心では、その、アレですけど、……そ、そーゆーことは卒業してからですねっ!?」
先生はやたらと顔を赤くしながら、両手をぶんぶんと振った。
「ふむ……」
「……あ、あの、別府くん? ……あ、あの、どしてもって言うならですね、その……あの、えと。……み、みんなに秘密で、そ、その、……て、手とか繋いだりとかなら、ですね?」
「さっきの“はわわ”はなかなかの出来だった。なんだ、やればできるじゃないか!」(なでなで)
「…………」
「もーっ! 別府くんは! もーっ!」
先生は両手をぐるぐると回転させながらこちらに突撃してきた。
「ひぃ、先生が急遽牛憑きに! なのに乳が依然平らとは、涙を禁じ得ない」
「今日も別府くんはいじわるです! 許しがたいです!」
「あ、ちなみにさっき先生を大好きと言ったけど、異性へのそれではなく、人間としての好意の話ですよ、もちろん」
「さらにいじわるを上乗せ!? 信じられないほどいじわるです! もはやいじわる王のれべるです!」
「王か。最近の俺は黄衣の王とかが好きだなあ。いあ! いあ! はすたあ!」
「ちっとも分からないですしなんだかちょこっと怖いですうわーんっ!」
「ああ今回も先生を泣かしてしまった。はいはい、泣かない泣かない。ごめんな、先生」(なでなで)
「ぐすぐす……今回も泣かされました。今日も別府くんは悪魔の御使いです」
「いあ いあ はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ! あい あい はすたあ!」
「本物っ!? はわっ、はわわわわっ!?」
ガタガタと震えながらSAN値を減らす大谷先生は可愛いなあと思った。
「なんて無茶なことを平然と言うですかっ!? 先生はマルチではなく、先生ですっ! 大人です!」
なんかもにゃもにゃ言ってる大谷先生(自称大人、見た目小学生)の耳にマルチっぽい自作の付け耳をつける。
「あーっ!? もうっ、全然許可してないのに勝手に変なのつけないでくださいっ!」
「お、普通にくださいって言った」
「へ? ……あーっ! 今回はちゃんと言えました! えへへっ、すごい? すごい?」
「あーすごいすごい」
ぴょんこぴょんこ跳ねつつ、満面の笑みですごいか生徒に問いかける教師の頭をなでる。
「……なんか知んないけど、馬鹿にされた気分でいっぱいです」
折角なでてやったというのに、大谷先生は不満気に眉を寄せた。
「そりゃ馬鹿にしているからなあ。そんな気分にもなるだろ」
「やっぱりですっ! 別府くん、先生を馬鹿にしてはいけませんっ!」
「いや、教師という職業を馬鹿にしたんじゃない。大谷先生という一個人を馬鹿にしたんだ。勘違いさせたなら謝る。悪かった」
「謝られたのにより一層不愉快になる魔法をかけられましたっ!」
ぺこりと頭を下げたのに、先生は涙目で怒った。
「それより先生、折角マルチっぽくなったのだからはわわはわわと言いなさい」
「生徒が教師に要求することじゃないですっ!」
「言ったら大人扱いするから」
そう言った途端、先生の目が輝きだした。
「ほっ、本当ですかっ!? 先生のこと、尊敬しますかっ!? もー子供だ子供だって馬鹿にしませんか!? 胸が小さいことをいじりませんか!? 執拗に頭をなでませんか!? 意味もなく抱っこしませんか!?」
「質問が多い。一つにしてくれ」
「う……そ、それじゃ、本当に先生のことを大人扱いしてくれますか?」
「任せろ。約束しよう」
「わ、分かりました。それなら先生も我慢して言います。……は、はわわ!」
「…………」
「はわわ! はわわ! はわわ! はぁはぁ……ど、どですか?」
「なんかイマイチ。20点」
「えええええ!?」
「どーも先生にはマルチ感が足りない。ゲーム貸すからマルチシナリオをクリアし、きちんとマルチのキャラを把握すること」
「頑張ったのに! 折角言いたくもないのにはわわって言ったのに、20点って! 先生、非常に不本意です!」
「赤点なので、当然先ほどの約束も反故させていただきます」
「酷いです! 別府くん酷すぎです! 悪魔です! 悪魔超人です! いっそ悪魔将軍です!」
「地獄の断頭台!」
「わ、上手です! ぱちぱちぱち!」
隠れた特技、一人必殺技を披露したら、普通に感心された。
「……いやいや、違います。必殺技とかどーでもいいんです」
「全く関係ないが、口でぱちぱちって言う奴って馬鹿みたいだよな。いや、全く関係ないが」
「また馬鹿にされた!? もー! 別府くんは! やっぱり悪魔です!」
「人間です」
「うぐぐ……しかも冷静に否定するなんて、なんだか先生の方が子供みたいじゃないですか! どーゆーつもりですかっ!?」
「実際に子供だから、別に変なことじゃないと思う」
「こんなに言ってるのにまだ先生のことを子供扱いしますか!? どういうつもりなのですかっ!」
「だって、先生の幼女感ときたら尋常ではないのだから、仕方ないではないか」
「仕方ないではなくないですっ! 別府くんのばかっ!」
「ややこしい怒り方をするな。まあそういうわけで、引き続き子供扱いするのでそのつもりで」(なでなで)
「ほーら、早速先生の頭をなでなでと! 酷い扱いです! 頭なでないでくだたいっ!」
「お、例のくだたいが出た。さすが先生、自身のキャラをよく分かっていらっしゃる」
「そんなつもりないですっ! 別府くんのばかっ! 先生のこと馬鹿にしてばっかで! だいっきらいですっ!」
「これは悲しいことを。俺は先生のことを大好きなのに」
「はわっ、はわわっ!?」
「ん?」
「は、う、え、そ、そんなこと言われても、こっ、困ります、困りますっ! そ、そりゃ先生も本心では、その、アレですけど、……そ、そーゆーことは卒業してからですねっ!?」
先生はやたらと顔を赤くしながら、両手をぶんぶんと振った。
「ふむ……」
「……あ、あの、別府くん? ……あ、あの、どしてもって言うならですね、その……あの、えと。……み、みんなに秘密で、そ、その、……て、手とか繋いだりとかなら、ですね?」
「さっきの“はわわ”はなかなかの出来だった。なんだ、やればできるじゃないか!」(なでなで)
「…………」
「もーっ! 別府くんは! もーっ!」
先生は両手をぐるぐると回転させながらこちらに突撃してきた。
「ひぃ、先生が急遽牛憑きに! なのに乳が依然平らとは、涙を禁じ得ない」
「今日も別府くんはいじわるです! 許しがたいです!」
「あ、ちなみにさっき先生を大好きと言ったけど、異性へのそれではなく、人間としての好意の話ですよ、もちろん」
「さらにいじわるを上乗せ!? 信じられないほどいじわるです! もはやいじわる王のれべるです!」
「王か。最近の俺は黄衣の王とかが好きだなあ。いあ! いあ! はすたあ!」
「ちっとも分からないですしなんだかちょこっと怖いですうわーんっ!」
「ああ今回も先生を泣かしてしまった。はいはい、泣かない泣かない。ごめんな、先生」(なでなで)
「ぐすぐす……今回も泣かされました。今日も別府くんは悪魔の御使いです」
「いあ いあ はすたあ! はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ! あい あい はすたあ!」
「本物っ!? はわっ、はわわわわっ!?」
ガタガタと震えながらSAN値を減らす大谷先生は可愛いなあと思った。
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【ボクっ娘と一緒に下校したら】
2012年01月20日
今日の6限は体育だった。超疲れた。
「ふぁ~……」
俺の隣を歩いてるボクっ娘も同様なのか、あくびなんかしてる。分類上は女のくせにだらしねえな。
「はふー。ね、タカシ。今日は疲れちゃったね?」
「普段ならお前の言うこと全てを否定しているところだが、今回に限って言えば同意せざるを得ない」
「普段も同意してよ! 今日もタカシはヤな感じだよ!」
「いやははは。ところで、今日の女子の体育はマラソンだったようだな」
「あ、うん、そなんだ。もー、ずーっと走りっぱなしで。すっごく疲れちゃったよ」
「さる事情により俺はマラソンしてる女子のおっぱいの揺れ具合をずーっと調べてたんだ。んでその時思ったんだが、お前のおっぱいは一体どこへ旅立ってしまったのだ?」
「ずーっとここに住んでるよ! 永住予定だよっ! 走ろうが何しようがどーせ揺れないよっ! さる事情ってどーせ揺れてるおっぱいが見たかっただけだろっ! 今日も変態っ!」
「ぺたんこが怒った」
「せめて思うだけにしろっ!」
怒鳴られたので実行しよう。ぺたんこが怒った。
「まったく……疲れてるんだから怒らせるなよな、ばか。ていうか、普通にセクハラだよ?」
「分かった、次から異常なセクハラをする」
「セクハラの方をどうにかしろっ!」
「しまった、異常なセクハラの方法が思いつかない。そも、セクハラが異常なのだから、それをさらに異常にさせるには……一周して、頭なでたりとか?」
「…………」
どういうことか、梓の視線が何かを期待しだした。しかも、ほんのりと前傾姿勢になっているような。
「なでなで」
「はぅぅ」
ので、なでたら喜ばれた。
「梓がセクハラを喜ぶ」
「よっ、喜んでないよっ! ちっともだよっ! 言い方があんまりだよっ!」
「なでなで」
「はぅぅ」
「どうにも俺には喜んでいるようにしか見えない」
「あぅぅ……そ、それはともかく、これはセクハラじゃないよ」
「実は俺もそう思ってたんだ」
「じゃあするなっ!」
「梓の頭をなでたくなっちゃったから、適当な理由つけてなでただけなんだ」
「……き、今日もタカシは気持ち悪いね」
せめて顔の赤さをどうにかしてから言ってください。
「で、でも、ついでだし、もちょっとなでる?」
「いいえ、結構です」
「…………。じゃーいーよっ! 一生ボクの頭なでちゃダメだかんねっ!」
「なでなで」
「って言ってるそばからなでてる!? どんだけ天邪鬼なんだよっ!」
「ふむ。何やら嬉しそうに見えるのは、俺の勘違いなのでしょうか」
「あ、当たり前だよっ! クラッカーだよ! むしろリッツだよ! 不満が満載だよ! あー不幸不幸!」
「そんなそげぶな人みたいなこと言わないでくださいよ」(なでなで)
「……そ、そんなことよりさ。ちょっとだけ、ボクの家来いよな」
何やらクイクイと俺の服を引っ張りながら、そんなことを目の前の可愛い娘さんが言うんですの。
「うーん。我慢できるだろうか」
「? 何の話?」
「いやね、なんかやけに可愛いので、お前に襲いかからないよう我慢できるだろうか、という話」
「冷静に説明するなっ!」
「うーむ、正直自信ないが……でも、他人事だし、いいか!」
「いくない! そして酷すぎる! ボクの初めてをそんな簡単にあげられるわけないだろっ!」
「じゃあ、難しくもらうから」
「だから、簡単とか難しいとかの問題じゃないのっ!」
「なぞなぞですか?」
「ちーがーうっ!」
よく分からなかったので、梓の家で改めて聞いてみることにした。ほら、道端で喋ってても寒いし。
「というわけで梓の家にやってきたわけなんですが、室内だというのに寒いですね」
「さっき暖房つけたばっかだもん。ちょっとは時間かかるよ」
「甘いぞ、梓! おまえんちではそうかもしれないが、我が家……というか、俺の部屋には暖房器具は布団のみ! なので、この程度の寒さなど慣れ親しんでいる!」
「……あの、古い電気ストーブでよかったら、あげよっか?」
純粋に哀れまれた。これは恥ずかしい。
「それはもうパンチラを偶然にも俺に目撃されてしまい、『おにぃたん、見ちゃやー』と初めての羞恥に頬を染めるようじょくらい恥ずかしい」
「意味が分からないけど、本気で病院を奨めそうになる程度にはヤバさが伝わってきたよ」
「俺は少し口に出す言葉を吟味した方がいいかもしれないね」
「その方が周囲の人のためではあるよね」
「ところで梓、寒いので無遠慮に抱きつきたいがいいか?」
「早速吟味無視!? しかもこの寒さに慣れ親しんでいると言ってたのに!?」
「ばか、慣れてても寒いは寒いんだよ。あと、適当言って女体に触れたいんだよ」
「思考がだだ漏れすぎるよっ! パッキン取り替えろっ!」
「分かった、取り替えるから頬ずりさせてください」
「ちょーお断りだよ! どーしてタカシなんかとそんなことしなくちゃいけないんだよっ!」
「くそぅ、断られた。仕方ない、梓のうすぺたいおっぱいに顔を埋めるので我慢するか。あー残念残念」
「要求がぐれーどあっぷしてるよ! 絶対確実らいじんおーってくらいやらせないよっ!」
「さりげなく言うことにより、成功確率が0%から2%くらいに上がると思ったんだ」
「それ上がってもほぼ無理だよ!」
「ところで、なんでライジンオーって言ったの? あれ言う必要ないよね?」
「いっ、一回クッション挟むなっ! ……恥ずかしーじゃんか」
「うーむ、頬を赤らめるボクっ娘はやたら可愛いなあ。よし、頭なでてやれ!」(なでなで)
「……うー」
「不満そうながらも、何か言うとライジンオーについて言及されるので何も言えずにただなでられるボクっ娘萌え」
「全部分かった上での行為!?」
「さらに言うなら、本当はそんな不満でもないと見た」
「ひっ、人の心読むなっ、ばかっ!」
ぺけぺけとやたら攻撃力の弱い抗議がきた。こんなの逆に喜ばしいですよ。
「はっはっは。かーわいーい」
「あぅぅーっ!?」
テンションが上がってしまい、わけもなくボクっ娘のほっぺを引っ張る俺だった。
「ふぁ~……」
俺の隣を歩いてるボクっ娘も同様なのか、あくびなんかしてる。分類上は女のくせにだらしねえな。
「はふー。ね、タカシ。今日は疲れちゃったね?」
「普段ならお前の言うこと全てを否定しているところだが、今回に限って言えば同意せざるを得ない」
「普段も同意してよ! 今日もタカシはヤな感じだよ!」
「いやははは。ところで、今日の女子の体育はマラソンだったようだな」
「あ、うん、そなんだ。もー、ずーっと走りっぱなしで。すっごく疲れちゃったよ」
「さる事情により俺はマラソンしてる女子のおっぱいの揺れ具合をずーっと調べてたんだ。んでその時思ったんだが、お前のおっぱいは一体どこへ旅立ってしまったのだ?」
「ずーっとここに住んでるよ! 永住予定だよっ! 走ろうが何しようがどーせ揺れないよっ! さる事情ってどーせ揺れてるおっぱいが見たかっただけだろっ! 今日も変態っ!」
「ぺたんこが怒った」
「せめて思うだけにしろっ!」
怒鳴られたので実行しよう。ぺたんこが怒った。
「まったく……疲れてるんだから怒らせるなよな、ばか。ていうか、普通にセクハラだよ?」
「分かった、次から異常なセクハラをする」
「セクハラの方をどうにかしろっ!」
「しまった、異常なセクハラの方法が思いつかない。そも、セクハラが異常なのだから、それをさらに異常にさせるには……一周して、頭なでたりとか?」
「…………」
どういうことか、梓の視線が何かを期待しだした。しかも、ほんのりと前傾姿勢になっているような。
「なでなで」
「はぅぅ」
ので、なでたら喜ばれた。
「梓がセクハラを喜ぶ」
「よっ、喜んでないよっ! ちっともだよっ! 言い方があんまりだよっ!」
「なでなで」
「はぅぅ」
「どうにも俺には喜んでいるようにしか見えない」
「あぅぅ……そ、それはともかく、これはセクハラじゃないよ」
「実は俺もそう思ってたんだ」
「じゃあするなっ!」
「梓の頭をなでたくなっちゃったから、適当な理由つけてなでただけなんだ」
「……き、今日もタカシは気持ち悪いね」
せめて顔の赤さをどうにかしてから言ってください。
「で、でも、ついでだし、もちょっとなでる?」
「いいえ、結構です」
「…………。じゃーいーよっ! 一生ボクの頭なでちゃダメだかんねっ!」
「なでなで」
「って言ってるそばからなでてる!? どんだけ天邪鬼なんだよっ!」
「ふむ。何やら嬉しそうに見えるのは、俺の勘違いなのでしょうか」
「あ、当たり前だよっ! クラッカーだよ! むしろリッツだよ! 不満が満載だよ! あー不幸不幸!」
「そんなそげぶな人みたいなこと言わないでくださいよ」(なでなで)
「……そ、そんなことよりさ。ちょっとだけ、ボクの家来いよな」
何やらクイクイと俺の服を引っ張りながら、そんなことを目の前の可愛い娘さんが言うんですの。
「うーん。我慢できるだろうか」
「? 何の話?」
「いやね、なんかやけに可愛いので、お前に襲いかからないよう我慢できるだろうか、という話」
「冷静に説明するなっ!」
「うーむ、正直自信ないが……でも、他人事だし、いいか!」
「いくない! そして酷すぎる! ボクの初めてをそんな簡単にあげられるわけないだろっ!」
「じゃあ、難しくもらうから」
「だから、簡単とか難しいとかの問題じゃないのっ!」
「なぞなぞですか?」
「ちーがーうっ!」
よく分からなかったので、梓の家で改めて聞いてみることにした。ほら、道端で喋ってても寒いし。
「というわけで梓の家にやってきたわけなんですが、室内だというのに寒いですね」
「さっき暖房つけたばっかだもん。ちょっとは時間かかるよ」
「甘いぞ、梓! おまえんちではそうかもしれないが、我が家……というか、俺の部屋には暖房器具は布団のみ! なので、この程度の寒さなど慣れ親しんでいる!」
「……あの、古い電気ストーブでよかったら、あげよっか?」
純粋に哀れまれた。これは恥ずかしい。
「それはもうパンチラを偶然にも俺に目撃されてしまい、『おにぃたん、見ちゃやー』と初めての羞恥に頬を染めるようじょくらい恥ずかしい」
「意味が分からないけど、本気で病院を奨めそうになる程度にはヤバさが伝わってきたよ」
「俺は少し口に出す言葉を吟味した方がいいかもしれないね」
「その方が周囲の人のためではあるよね」
「ところで梓、寒いので無遠慮に抱きつきたいがいいか?」
「早速吟味無視!? しかもこの寒さに慣れ親しんでいると言ってたのに!?」
「ばか、慣れてても寒いは寒いんだよ。あと、適当言って女体に触れたいんだよ」
「思考がだだ漏れすぎるよっ! パッキン取り替えろっ!」
「分かった、取り替えるから頬ずりさせてください」
「ちょーお断りだよ! どーしてタカシなんかとそんなことしなくちゃいけないんだよっ!」
「くそぅ、断られた。仕方ない、梓のうすぺたいおっぱいに顔を埋めるので我慢するか。あー残念残念」
「要求がぐれーどあっぷしてるよ! 絶対確実らいじんおーってくらいやらせないよっ!」
「さりげなく言うことにより、成功確率が0%から2%くらいに上がると思ったんだ」
「それ上がってもほぼ無理だよ!」
「ところで、なんでライジンオーって言ったの? あれ言う必要ないよね?」
「いっ、一回クッション挟むなっ! ……恥ずかしーじゃんか」
「うーむ、頬を赤らめるボクっ娘はやたら可愛いなあ。よし、頭なでてやれ!」(なでなで)
「……うー」
「不満そうながらも、何か言うとライジンオーについて言及されるので何も言えずにただなでられるボクっ娘萌え」
「全部分かった上での行為!?」
「さらに言うなら、本当はそんな不満でもないと見た」
「ひっ、人の心読むなっ、ばかっ!」
ぺけぺけとやたら攻撃力の弱い抗議がきた。こんなの逆に喜ばしいですよ。
「はっはっは。かーわいーい」
「あぅぅーっ!?」
テンションが上がってしまい、わけもなくボクっ娘のほっぺを引っ張る俺だった。
【病み上がりの男】
2012年01月07日
風邪を引いてしまい、数日学校を休んだ。しかし、ようやっと体調が戻ってきたので、まだ少しだるいが頑張って登校してみた。
「あら? 貴方、放校処分になったんじゃなかったんですの?」
「登校するなり語尾と頭がおかしい奴にからまれた。なんてついてないんだ」
「いきなり酷すぎですのっ!」
「いや、この場合の頭がおかしいとは髪形のことを指してるから安心しろ」
「このお嬢様然とした髪形のどこがおかしいんですのっ!?」
「ドリル(笑)」
「今すぐ殺しますわッ!!!!!」
「ごめんなさい冗談です。お願いだから殺さないでください」
あまりの恐怖に震えながら土下座で許しを請う。プライド? そんなものとうの昔に犬にくれてやったわ!
「……貴方、哀れにもほどがありますわね」
効果は抜群なようで、リナの俺を見る目が虫か何かを見る目になったけど、死なずに済んだようだ。やれやれ。
「それはそうと、おはよう。リナ」
「土下座からの挨拶っ!?」
「それは挨拶じゃないぞ」
「わ、分かってますわ。おはようございますですわ」
「うーん、やっぱ語尾がおかしい」
「貴方失礼にも程がありますわよっ!?」
「や、悪い悪……げほっげほっげほっ」
「……大丈夫ですの? まだ顔が青いですわよ?」
いい加減土下座させるのも悪いと思ったのか、俺を起こしながらリナは心配そうな顔を覗かせた。
「そういうリナは顔が緑色だぞ。ナメック星人だったっけ? 口から卵産み系?」
「そんな系統ありませんわっ! 全力で人間ですっ! 頭と一緒に目までおかしくなったんですの!?」
「病み上がりだからか、視力もおかしくなっちゃったんですの」
「真似しないでくださいまし!」
「ジャッジメントですの!」
「ドやかましいですわっ!」
しんどいのに無理してかっこいいポーズを決めたのに、超怒られたんですの。
「全く……。それより、感染されては敵いませんわ。近寄らないでくださいまし」
「そうだな。俺もリナの奇病、頭ドリルが感染ったら嫌だから近寄らないよ」
「これは別に病気じゃありませんわっ! そういう素敵な髪形ですの! ていうか奇病って酷いですの!」
「俺みたいに短髪の奴が感染したら、頭蓋骨がねじられるの? ガン並に致死確率の高そうな病気ですね」
「だから、病気じゃないと言ってるんですのっ! どんだけ失礼なこと言えば気が済むんですの!?」
「分かった分かった、悪かった。とにかく、お前の言う通り二度とリナなんかには近寄らない」
「な、なんか言い方が酷いですわっ!」
「寄るな」
手でしっしってやったら、半泣きの人にいっぱい叩かれたので土下座して謝る。
「すいませんでした」
「うぅ~……」
「ただ、病み上がりということを加味していただけると何かと助かります。ほら、頭がうまく回らないんですよ」
「……ホントですの? わたくしのこと、嫌いになったとかじゃないんですの?」
「う」
「……っ!? べっ、別に貴方なんかに嫌われても蚊に食われたほども感じませんけど!? 感じませんけども、なんとなく聞いただけですわっ!」
「うーん。熱がぶりかえしたのか、なんかあちい」
「な、何を照れてるんですのっ!? そ、そういうのとは違うんですのっ! 勝手に勘違いしないでくださいましっ!」
「か、勘違いしないでよね、勘違いしただけなんだからねっ!」
「ややこしいですわっ!」
「自分で言っておいてなんだが、俺もよく分からない。しょうがないからサメの話でもしようか」
「なんでそうなるんですの!? しませんわ!」
「リナはお嬢様だけあってワガママだなあ」
「これでワガママって言われたら、世の中の人ほぼ全てがワガママですわ!」
「ところでワガママを英訳するとmy motherなのかな?」
「脈略がなさすぎですわっ! そろそろ殴りますわよ!?」
お嬢様が暴力を訴えてきたので黙ることにする。
「全く……いつも頭が悪いですが、今日はそれに輪をかけて頭が悪いですわね」
「まだスッキリ治ってなくてね。いつもなら検閲に引っかかるボケも繰り出しちゃってるんだ」
「ものすごい迷惑ですわ……あ、そうですわ!」
「それはどうかな?」
「何がですの!?」
「何か提案されそうだったから、とりあえず煙に巻いてみた」
「……いいからしばらく黙っててくださいまし」
お願いされたからには黙らざるを得ない。……べ、別に怒りに打ち震えているリナが怖いとかじゃなくてね!?
「こほん。治ってないなら早退すればいいんですの。そのまま退学しちゃえばいいんですの。ついでに人生からも卒業すればいいんですの」
「なるほどそいつぁいいと頷きそうになったが、よく考えたら死ねって言われてるよね?」
「気のせいですわ♪」
「なんだそうか! じゃあ言われた通り人生を卒業しよう! リナ、縄ってどのくらいの値段なのかな?」
「死ぬ気満々ですわっ! ちゃんと否定なさいっ!」
自分で言っておいて、俺が受け入れると怒る。変な奴。
「あー……しかし、なんかやっぱだるいな。どうしよう、折角登校したけど、無理せず早退するかなあ」
「それがいいですわ。少しでも早く学校を出て、わたくしの視界から出て行ってくださいな」
「んー。そうする」
「ちょ、ちょっとお待ちなさいな! そこは少し言い返してもらわないとわたくしが酷い事を言っただけの悪人になってしまいますわ!」
「ええい、面倒な奴め。えーと、今日もリナは可愛いなあ。抱っことかしてえ」
「は、はいぃ!?」
「あ、いかん。それは今は関係なかった。うーむ、まるで頭が回らん。何の話だっけ? サメ?」
「……べ、別に、その。……も、もう、早く帰ったらいいんですの!」
なんか知らんが超顔の赤いリナに背を押され、教室から追い出されたんですの。
その勢いのまま素敵に早退。何しに来たんだか。そんなわけで帰宅。早々にベッドに入る。どうにも力が入らない。やっぱ無理すんじゃなかったと思っていると、急激な眠気が。あっという間に眠りに落ちた。
そんな感じでfade outした意識だったが、何やらガサゴソ物音がしたことで視界がfade inしてきた。
「そーっと、そーっと。……まだ寝てますわよ、ね?」
ぼやけた視界に映るは、何やら両手に土鍋を持った女性の姿。
「ヤベェ、知らぬ間に人食い部族が我が家に侵入し、俺を煮込んで食おうとしてる」
「食べませんし人食い部族じゃないし寝起きの台詞じゃありませんわっ!」
「む。聞き覚えのある声。知り合いに人食い趣味の奴はいなかったハズだが」
視界がはっきりするにつれ、人食い悪魔が侵入したと思っていたことは勘違いと判明した。
「なんだ、カニバリズムな人でなくてリナだったか。おはよう」
「おはようじゃないですわ。どうして人食い部族に間違われなくちゃいけないんですの?」
「だって、鍋持った奴が枕元にいたら誰だってそう思うだろ」
「思わないですわっ! どういう頭の構造してるんですの?」
「ところで、なんで鍋持ってるの?」
「うぐっ」
「うぐ? ……ああ! うぐぅ、な! いや懐かしいな、kanon。超好きだったよ」
「違いますわっ! 言葉に詰まっただけですわっ!」
「なるほど。じゃ、それも踏まえて、どうしてリナがここにいるのか詳しく聞かせてもらいましょうかね」
「べ、別に大したことじゃないですわ。学校も終わったし、暇つぶしに苦しんでる貴方を観察しに来ただけですわ」
「ふむ、看病に来てくれたのか。なんだかんだ優しいな、リナは。ありがとうな」
「か、看病じゃありませんわっ! 観察ですわっ! むしろ嫌がらせに来たんですわっ!」
「はいはい。んで、その鍋は?」
「こっ、これは、そのー……煮えたぎったおでんを貴方の口につっこむ『駝鳥倶楽部的拷問』をしようとしただけですわっ!」
「ほう」
「あっ、ふた取っちゃダメっ!」
鍋の中身は、ほこほこと小さく湯気を立ててるおかゆだった。上にかかってる玉子がおいしそう。
「……お、おでんがないレベルの貧民だと思わなかったんですの! 冷蔵庫におでんがなかったから、しょうがなくお米を炊いただけですのっ!」
「このおかゆを、食べさせてくれると」
「たっ、食べ!? ど、どうしてわたくしがそこまでしなくちゃいけないんですのっ!?」
「いや、ダチョウ倶楽部のアレをやるんだったら、食べさせなくちゃいけないだろ」
「あ……そ、そっか。……じゃ、じゃあ、食べさせてもいいんですよ……ね?」
「なんで俺に聞いてんだ」
「べ、別に聞いてませんわ! ほ、ほら、口をお開けなさい! 熱々のおかゆで、火傷させますわよ!」
「あー」
「ちょ、ちょっとは抵抗なさいな……もう」
リナは少し困った顔をすると、おかゆをレンゲで一掬いし、ふーふーと息を吹いて冷ました。
「はい。あーん、ですわ」
「火傷はどこいった」
「あ。……ち、ちょっと間違っただけですわ」
素だったのか、リナは顔を赤くして照れた。
「と、とにかくこれは食べちゃいなさいな!」
「はいはい。あーんもぐもぐ」
「……ど、どうですの?」
「もぐもぐ。ん、うまいな。リナはお嬢様のくせに料理上手なのな」
「高貴なる者はなんでもできるんですの。料理なんてわたくし専用の厨房があるレベルなんですから、出来て当然ですのよ?」
「ブルジョアは凄いなあ。死ね」
「怖いですわっ!!!」
「や、悪い悪い。俺の妬み根性が出た」
「うぅー……食べさせてもらってる者に言う台詞じゃないですの。酷いですの」
「無意識レベルで金持ちを恨んでるからなあ。諦めろ」
「より一層怖いですわっ!」
「分かった分かった。今回世話になったし、リナは除外しとくよ」
「せ、世話なんてしてませんわ! 拷問してるんですわ!」
「へいへい。それより、もっとくれ。ちょっと食べたら余計に腹減った」
「わ、分かりましたわ。ふーっ、ふーっ。はい、あーん、ですわ」
「あー、もぐもぐ。……いや、俺はありがたいんだが、冷ましていいのか」
「あ。も、もーっ! ごちゃごちゃ言うからすぐ忘れちゃうですの!」
「俺にとっては幸いだな。次もずっと忘れてくれると、とても嬉しい」
「そ、そうはいきませんわ! 次こそ熱々おかゆでアチチ火傷地獄ですわ!」
「そいつぁ怖いな」
「そうですのよ? もー舌が熱い熱いってなって、何も食べられなくなっちゃうんですのよ? それで……お腹空いちゃって……でも舌が痛いから食べられなくて……」
何やら想像しちゃったのか、リナの目がうるみだした。
「お前が泣いてどーする」
「っ!? なっ、泣いてなんていませんわっ! それとこれはちっとも関係ないですが、諸事情により火傷作戦は中止ですのっ!」
「どんだけ優しいんだ、お前」(なでなで)
「やっ、優しいとか意味分かりませんわっ! 頭なでないでいただけますことっ!?」
「あ、悪い悪い。ついね、つい」
「……べ、別に、どーしてもと言うなら続けても構いませんが……」
「…………」
「しっ、してほしいわけじゃないですわよっ!? ……ほ、ホントに。……ホントですわよ?」
「あー。何やら無性にリナの頭部をこする嫌がらせをしたくなったが、どうだろうか?」
「……あ、貴方はすっごく性格が悪いから、わたくしが嫌がってもするでしょう?」
「いや、俺ほど性格がねじ曲がってると、一周回って逆にしないんだ」
「……本当に、いじわるですの」(半泣き)
「ああ嘘ですごめんなさい俺が悪かったですどうか泣かないで」(なでなで)
「……でも、とっても優しいですわよね?」
「ははーん。嘘泣きだな?」
「何のことか分かりませんわ♪」
「女性ってのは怖いなあ」(なでなで)
そのような感じで、ニコニコしてるドリル頭の変な奴をしばらくなでてました。
「あら? 貴方、放校処分になったんじゃなかったんですの?」
「登校するなり語尾と頭がおかしい奴にからまれた。なんてついてないんだ」
「いきなり酷すぎですのっ!」
「いや、この場合の頭がおかしいとは髪形のことを指してるから安心しろ」
「このお嬢様然とした髪形のどこがおかしいんですのっ!?」
「ドリル(笑)」
「今すぐ殺しますわッ!!!!!」
「ごめんなさい冗談です。お願いだから殺さないでください」
あまりの恐怖に震えながら土下座で許しを請う。プライド? そんなものとうの昔に犬にくれてやったわ!
「……貴方、哀れにもほどがありますわね」
効果は抜群なようで、リナの俺を見る目が虫か何かを見る目になったけど、死なずに済んだようだ。やれやれ。
「それはそうと、おはよう。リナ」
「土下座からの挨拶っ!?」
「それは挨拶じゃないぞ」
「わ、分かってますわ。おはようございますですわ」
「うーん、やっぱ語尾がおかしい」
「貴方失礼にも程がありますわよっ!?」
「や、悪い悪……げほっげほっげほっ」
「……大丈夫ですの? まだ顔が青いですわよ?」
いい加減土下座させるのも悪いと思ったのか、俺を起こしながらリナは心配そうな顔を覗かせた。
「そういうリナは顔が緑色だぞ。ナメック星人だったっけ? 口から卵産み系?」
「そんな系統ありませんわっ! 全力で人間ですっ! 頭と一緒に目までおかしくなったんですの!?」
「病み上がりだからか、視力もおかしくなっちゃったんですの」
「真似しないでくださいまし!」
「ジャッジメントですの!」
「ドやかましいですわっ!」
しんどいのに無理してかっこいいポーズを決めたのに、超怒られたんですの。
「全く……。それより、感染されては敵いませんわ。近寄らないでくださいまし」
「そうだな。俺もリナの奇病、頭ドリルが感染ったら嫌だから近寄らないよ」
「これは別に病気じゃありませんわっ! そういう素敵な髪形ですの! ていうか奇病って酷いですの!」
「俺みたいに短髪の奴が感染したら、頭蓋骨がねじられるの? ガン並に致死確率の高そうな病気ですね」
「だから、病気じゃないと言ってるんですのっ! どんだけ失礼なこと言えば気が済むんですの!?」
「分かった分かった、悪かった。とにかく、お前の言う通り二度とリナなんかには近寄らない」
「な、なんか言い方が酷いですわっ!」
「寄るな」
手でしっしってやったら、半泣きの人にいっぱい叩かれたので土下座して謝る。
「すいませんでした」
「うぅ~……」
「ただ、病み上がりということを加味していただけると何かと助かります。ほら、頭がうまく回らないんですよ」
「……ホントですの? わたくしのこと、嫌いになったとかじゃないんですの?」
「う」
「……っ!? べっ、別に貴方なんかに嫌われても蚊に食われたほども感じませんけど!? 感じませんけども、なんとなく聞いただけですわっ!」
「うーん。熱がぶりかえしたのか、なんかあちい」
「な、何を照れてるんですのっ!? そ、そういうのとは違うんですのっ! 勝手に勘違いしないでくださいましっ!」
「か、勘違いしないでよね、勘違いしただけなんだからねっ!」
「ややこしいですわっ!」
「自分で言っておいてなんだが、俺もよく分からない。しょうがないからサメの話でもしようか」
「なんでそうなるんですの!? しませんわ!」
「リナはお嬢様だけあってワガママだなあ」
「これでワガママって言われたら、世の中の人ほぼ全てがワガママですわ!」
「ところでワガママを英訳するとmy motherなのかな?」
「脈略がなさすぎですわっ! そろそろ殴りますわよ!?」
お嬢様が暴力を訴えてきたので黙ることにする。
「全く……いつも頭が悪いですが、今日はそれに輪をかけて頭が悪いですわね」
「まだスッキリ治ってなくてね。いつもなら検閲に引っかかるボケも繰り出しちゃってるんだ」
「ものすごい迷惑ですわ……あ、そうですわ!」
「それはどうかな?」
「何がですの!?」
「何か提案されそうだったから、とりあえず煙に巻いてみた」
「……いいからしばらく黙っててくださいまし」
お願いされたからには黙らざるを得ない。……べ、別に怒りに打ち震えているリナが怖いとかじゃなくてね!?
「こほん。治ってないなら早退すればいいんですの。そのまま退学しちゃえばいいんですの。ついでに人生からも卒業すればいいんですの」
「なるほどそいつぁいいと頷きそうになったが、よく考えたら死ねって言われてるよね?」
「気のせいですわ♪」
「なんだそうか! じゃあ言われた通り人生を卒業しよう! リナ、縄ってどのくらいの値段なのかな?」
「死ぬ気満々ですわっ! ちゃんと否定なさいっ!」
自分で言っておいて、俺が受け入れると怒る。変な奴。
「あー……しかし、なんかやっぱだるいな。どうしよう、折角登校したけど、無理せず早退するかなあ」
「それがいいですわ。少しでも早く学校を出て、わたくしの視界から出て行ってくださいな」
「んー。そうする」
「ちょ、ちょっとお待ちなさいな! そこは少し言い返してもらわないとわたくしが酷い事を言っただけの悪人になってしまいますわ!」
「ええい、面倒な奴め。えーと、今日もリナは可愛いなあ。抱っことかしてえ」
「は、はいぃ!?」
「あ、いかん。それは今は関係なかった。うーむ、まるで頭が回らん。何の話だっけ? サメ?」
「……べ、別に、その。……も、もう、早く帰ったらいいんですの!」
なんか知らんが超顔の赤いリナに背を押され、教室から追い出されたんですの。
その勢いのまま素敵に早退。何しに来たんだか。そんなわけで帰宅。早々にベッドに入る。どうにも力が入らない。やっぱ無理すんじゃなかったと思っていると、急激な眠気が。あっという間に眠りに落ちた。
そんな感じでfade outした意識だったが、何やらガサゴソ物音がしたことで視界がfade inしてきた。
「そーっと、そーっと。……まだ寝てますわよ、ね?」
ぼやけた視界に映るは、何やら両手に土鍋を持った女性の姿。
「ヤベェ、知らぬ間に人食い部族が我が家に侵入し、俺を煮込んで食おうとしてる」
「食べませんし人食い部族じゃないし寝起きの台詞じゃありませんわっ!」
「む。聞き覚えのある声。知り合いに人食い趣味の奴はいなかったハズだが」
視界がはっきりするにつれ、人食い悪魔が侵入したと思っていたことは勘違いと判明した。
「なんだ、カニバリズムな人でなくてリナだったか。おはよう」
「おはようじゃないですわ。どうして人食い部族に間違われなくちゃいけないんですの?」
「だって、鍋持った奴が枕元にいたら誰だってそう思うだろ」
「思わないですわっ! どういう頭の構造してるんですの?」
「ところで、なんで鍋持ってるの?」
「うぐっ」
「うぐ? ……ああ! うぐぅ、な! いや懐かしいな、kanon。超好きだったよ」
「違いますわっ! 言葉に詰まっただけですわっ!」
「なるほど。じゃ、それも踏まえて、どうしてリナがここにいるのか詳しく聞かせてもらいましょうかね」
「べ、別に大したことじゃないですわ。学校も終わったし、暇つぶしに苦しんでる貴方を観察しに来ただけですわ」
「ふむ、看病に来てくれたのか。なんだかんだ優しいな、リナは。ありがとうな」
「か、看病じゃありませんわっ! 観察ですわっ! むしろ嫌がらせに来たんですわっ!」
「はいはい。んで、その鍋は?」
「こっ、これは、そのー……煮えたぎったおでんを貴方の口につっこむ『駝鳥倶楽部的拷問』をしようとしただけですわっ!」
「ほう」
「あっ、ふた取っちゃダメっ!」
鍋の中身は、ほこほこと小さく湯気を立ててるおかゆだった。上にかかってる玉子がおいしそう。
「……お、おでんがないレベルの貧民だと思わなかったんですの! 冷蔵庫におでんがなかったから、しょうがなくお米を炊いただけですのっ!」
「このおかゆを、食べさせてくれると」
「たっ、食べ!? ど、どうしてわたくしがそこまでしなくちゃいけないんですのっ!?」
「いや、ダチョウ倶楽部のアレをやるんだったら、食べさせなくちゃいけないだろ」
「あ……そ、そっか。……じゃ、じゃあ、食べさせてもいいんですよ……ね?」
「なんで俺に聞いてんだ」
「べ、別に聞いてませんわ! ほ、ほら、口をお開けなさい! 熱々のおかゆで、火傷させますわよ!」
「あー」
「ちょ、ちょっとは抵抗なさいな……もう」
リナは少し困った顔をすると、おかゆをレンゲで一掬いし、ふーふーと息を吹いて冷ました。
「はい。あーん、ですわ」
「火傷はどこいった」
「あ。……ち、ちょっと間違っただけですわ」
素だったのか、リナは顔を赤くして照れた。
「と、とにかくこれは食べちゃいなさいな!」
「はいはい。あーんもぐもぐ」
「……ど、どうですの?」
「もぐもぐ。ん、うまいな。リナはお嬢様のくせに料理上手なのな」
「高貴なる者はなんでもできるんですの。料理なんてわたくし専用の厨房があるレベルなんですから、出来て当然ですのよ?」
「ブルジョアは凄いなあ。死ね」
「怖いですわっ!!!」
「や、悪い悪い。俺の妬み根性が出た」
「うぅー……食べさせてもらってる者に言う台詞じゃないですの。酷いですの」
「無意識レベルで金持ちを恨んでるからなあ。諦めろ」
「より一層怖いですわっ!」
「分かった分かった。今回世話になったし、リナは除外しとくよ」
「せ、世話なんてしてませんわ! 拷問してるんですわ!」
「へいへい。それより、もっとくれ。ちょっと食べたら余計に腹減った」
「わ、分かりましたわ。ふーっ、ふーっ。はい、あーん、ですわ」
「あー、もぐもぐ。……いや、俺はありがたいんだが、冷ましていいのか」
「あ。も、もーっ! ごちゃごちゃ言うからすぐ忘れちゃうですの!」
「俺にとっては幸いだな。次もずっと忘れてくれると、とても嬉しい」
「そ、そうはいきませんわ! 次こそ熱々おかゆでアチチ火傷地獄ですわ!」
「そいつぁ怖いな」
「そうですのよ? もー舌が熱い熱いってなって、何も食べられなくなっちゃうんですのよ? それで……お腹空いちゃって……でも舌が痛いから食べられなくて……」
何やら想像しちゃったのか、リナの目がうるみだした。
「お前が泣いてどーする」
「っ!? なっ、泣いてなんていませんわっ! それとこれはちっとも関係ないですが、諸事情により火傷作戦は中止ですのっ!」
「どんだけ優しいんだ、お前」(なでなで)
「やっ、優しいとか意味分かりませんわっ! 頭なでないでいただけますことっ!?」
「あ、悪い悪い。ついね、つい」
「……べ、別に、どーしてもと言うなら続けても構いませんが……」
「…………」
「しっ、してほしいわけじゃないですわよっ!? ……ほ、ホントに。……ホントですわよ?」
「あー。何やら無性にリナの頭部をこする嫌がらせをしたくなったが、どうだろうか?」
「……あ、貴方はすっごく性格が悪いから、わたくしが嫌がってもするでしょう?」
「いや、俺ほど性格がねじ曲がってると、一周回って逆にしないんだ」
「……本当に、いじわるですの」(半泣き)
「ああ嘘ですごめんなさい俺が悪かったですどうか泣かないで」(なでなで)
「……でも、とっても優しいですわよね?」
「ははーん。嘘泣きだな?」
「何のことか分かりませんわ♪」
「女性ってのは怖いなあ」(なでなで)
そのような感じで、ニコニコしてるドリル頭の変な奴をしばらくなでてました。
【親方、空から女の子が!という状況に陥ったら】
2012年01月05日
とある日の昼下がり。飯を食い終わった俺は、学食から教室に戻るため、学校の階段を上っていた。
けんけんとリズミカルに昇る俺はなんてかっこいいんだ、とか思いながらふと頭上を見上げると、親方、空から女の子が!
いや違うこれラピュタ違うただの現実! という高速思考のもと、急ぎ落下点まで移動し、落ちてきた女子をがっしり抱きとめる。しかしこれが超重くてお兄さん泣きそう。
「…………え?」
当の女子は何が起こったのか理解していないのか、目をぱちくりさせている。
負けるか俺もぱちくりさせてやる、という無駄な負けん気をなんとか抑え、その女生徒を廊下に下ろす。
「ふー……。危ないぞ。気をつけろ」
それだけ言って、そそくさと逃げる。
「え? ……え? え、あ、あのっ!」
なんか後ろで言ってる気がするが、いいです。注目されるの超苦手なんです。
ということがあったのが昨日。そして今日の俺はというと。
「……ええと。説明してもらえると大変ありがたいのですが」
「そうね。私もそうしようと思ってたところよ」
何やら男子生徒数人に囲まれ、無理矢理どこかの教室に連れて来られたんですの。俺を運んだ生徒達は既に去り、代わりになんだか怖い顔をした女生徒がいるんですの。理解しがたいんですの。
「ジャッジメントですの!」
「はぁ!?」
「あ、いや、なんでもないです」
いかん。ですの口調が続くと思わず黒子になってしまう。オネニーサマ!(間違い)
「……ま、まあいいわ。あのね、私の顔に見覚えあるでしょ?」
「いいぃえ」
「……え?」
「ないです」
「…………」
「帰っていいですか?」
「見覚えあるでしょっ!?」
「はいっ」
本当はないのだけど、とても怖かったので思わず肯定してしまった俺を一体誰が責められようか。
「そ、そう。そうよね。そりゃそうよね。私だけ覚えてるわけないものね」
しかし、そうすることによって何やら向こうさんが納得しているようだったので、俺の決断はあながち間違っていなかったようだ。
「そ、それで。なんで逃げたのよ」
「……?」
「な、何を不思議そうな顔してるのよ! ……お礼のひとつも言わせないでさ。勝手に逃げちゃって」
何の話か皆目見当がつかないが、話の展開上理解している風を装わないといけない。
「いや、あの、ごめんなさい?」
「何よ、その疑問系は!」
どこまでいっても理解していないので、ハテナの野郎がつい顔を出してしまう。
「と、とにかく、そーゆーことだから。……あの、ありがとう。助けてくれて。感謝してます」
そう言って、目の前の女子はぺこりと頭を下げた。どうやら俺は以前この女子を助けたようだ。
「いや、まあ気にするな。それで、反物はいつもらえるのだろうか」
「たんもの?」
「恩返しといえば自分の毛を使い、反物を織るものだろう。君はたぶん俺が以前助けた鶴か何かだろう?」
「違うわっ! 人をなんだと思ってんのよ!」
「鶴、もしくはそれに類した存在。獣の類であると予想される」
「だから、違うって言ってんでしょうがっ! そもそもアンタ前に鶴なんて助けたの?」
「この間道で困ってる外人なら助けた。ただ、もうこれが全然言葉が通じなくて通じなくて」
「それ全然関係ないっ! んじゃ何、私はその外人が日本人に化けて恩返しにやってきたってこと!?」
「ゲラゲラゲラ! 超意味ねー!」
「笑うなーっ!」
「いや、だってそれ以外に俺が助けた奴なんて誰も……」
……ん? 助ける?
「あっ、お前昨日の階段落ちの奴か!」
「今更!?」
「あー、あーあーあー。そういやそんな気がしないこともないようなこともない。つまり……お前は誰だ?」
一回余分なものが入ったため、一周回って誰だか分からなくなってしまった。
「さっき貴方が言った通りよっ! ……な、なんだってこんな変な奴に……」
何やら女性はショックを受けているようだった。
「……決めたっ! 貴方、今日から生徒会入りなさい!」
「はい?」
「貴方の変なトコロ、私が全部直してあげる! だから、生徒会に入りなさい!」
「いや、意味が分からない」
「生徒会長である私が直々にアンタを矯正してあげるって言ってるのに、逆らうっての!?」
「いや逆らうとか……えっ、お前って生徒会長なの?」
「ええっ、知らなかったの!? 朝礼で挨拶とかしてるでしょ!?」
「朝は眠いから夢うつつだし、壇上まで見通せるほど透き通ったまなこをしてないし、そもそもそんな健康体でもないから、朝礼では貧血でぶっ倒れそうでフラフラしてるのでそれどころでは」
「えっ? ……君、体弱いの?」
「まあ、強い方ではないですね」
本当に自慢ではないが、俺はよく体調を崩す。学校を休む頻度もそれなりに多い。病弱なのは美少女にしか似合わないってのに、我ながら厄介な体だ。
「……なのに、私を助けてくれたの?」
「あー、や、まあ、その。咄嗟だったし。色々考える余裕なんかなかったし」
「…………」
会長は俺をじーっと見ている。何やら頬付近が赤く染まってる気がするが、気のせいに違いない。目が潤んでるのも、きっと気のせいだ。
「……や、その! アレだよ、俺がやらなくてもきっと誰かが助けたよ!? その助けた奴が偶然俺だっただけで! だから、別に気にする必要ないと思いますよ? じゃ、俺はこれにて!」
「……あっ、待て逃げるなっ!」
「ぐげっ」
「きゃああああっ!?」
なんだか居た堪れなくなって逃げようとしたら、会長が咄嗟に伸ばした手が俺の喉に納まり、しかもいい具合に頚動脈を押さえたがため、一瞬で気絶したという伝説がここに誕生した。
「……うぅん」
「あっ、気がついた?」
何やら声が聞こえる。妙に声が近い。
「……む、むぅ」
「本っ当、アンタって弱いのね。これは心と一緒に身体も鍛えなおす必要があるかもしんないわね」
「そんな、人を虚弱体質みたいに……」
「こんなか弱い女の子に気絶させられといて、何言ってるのよ」
「俺も初対面の女性に気絶させられるとは夢にも思わなかった」
「初対面じゃないわよ! 二回目よ!」
「あの階段落ちを一回に入れるのはどうかと思うが」
「うぐ……い、一回は一回よ。文句ある?」
「いや、ないが……」
「そ、それより。……ど、どうなのよ」
「具体性にかける質問。故に、何を指しているのか推測不能。結論:寝る」
「寝るなッ! ……じゃ、じゃなくて。ほ、ほら、オトコノコって好きなんでしょ? こーゆーの」
「またしても具体性にかける問いかけ。彼女は一体何のことを喋っているのだろうか」
「あーもー分かるでしょうがっ! この状況だと!」
「俺に分かることはといえば、やけに会長の顔が近いのと、会長の髪が顔にあたるなあと思うことと、何やら枕がふにょふにょして気持ちいいことくらいしか」
「そ、そう。それ。枕。……ふにょふにょとか言うな、ばか」
「枕?」
枕が一体なんだと言うのだろうか。手をやってみる。
「ふひゃっ!? い、いきなり触るな、ばか!」
いやね、これがもう完璧に人の足。しかも、女性(予想)の足。つまり、そこから察するに、現在俺は“膝枕”と呼ばれる極楽にいるようだ。
「……ああ。夢か」
「現実よっ!」
こんな幸せなことが俺の人生に起こるなんて想定してなかったが故の結論だったが、否定されては仕方ない。受け入れよう。
「俺は、今、会長に膝枕をされているっ!」
「なっ、何を叫んでるのよ、ばかっ!」
受け入れたら受け入れたで怒られる。どうしろと言うのだ。あと、照れ隠しだとは思うのだけど、ビンタをしないで。何度もしないで。何度も何度もしないで。
「顔が痛え」
「はーはーはー……変なこと言うからよ、ばか」
「そんなつもりはないのだけれど」
「ううぅ……そ、それで。理解したところで、どうなのよ」
「いや、そりゃ、ねぇ?」
「わ、私に同意を求めないでよ。男ならはっきり言いなさいよ」
「そんなの、幸せに決まってるじゃないですか」
「……そ、そう」
静かに赤面しないで。こっちまで恥ずかしくなってくる。
「な、なに赤くなってんのよ! か、勘違いしないでよね、枕がなかったからしょーがなくしてあげただけなんだからねっ!?」
「今後も常備しない方向でお願いします」
「も、もうしてあげるわけないでしょ、この馬鹿! 私のせいで気絶させちゃったから、特別中の特別にしてあげただけなんだからねっ!」
「自殺も視野に入れる程度には絶望する事実ですね」
「そんなことで死ぬなっ!」
俺の顔をぺちぺち叩いて激励する会長だった。
けんけんとリズミカルに昇る俺はなんてかっこいいんだ、とか思いながらふと頭上を見上げると、親方、空から女の子が!
いや違うこれラピュタ違うただの現実! という高速思考のもと、急ぎ落下点まで移動し、落ちてきた女子をがっしり抱きとめる。しかしこれが超重くてお兄さん泣きそう。
「…………え?」
当の女子は何が起こったのか理解していないのか、目をぱちくりさせている。
負けるか俺もぱちくりさせてやる、という無駄な負けん気をなんとか抑え、その女生徒を廊下に下ろす。
「ふー……。危ないぞ。気をつけろ」
それだけ言って、そそくさと逃げる。
「え? ……え? え、あ、あのっ!」
なんか後ろで言ってる気がするが、いいです。注目されるの超苦手なんです。
ということがあったのが昨日。そして今日の俺はというと。
「……ええと。説明してもらえると大変ありがたいのですが」
「そうね。私もそうしようと思ってたところよ」
何やら男子生徒数人に囲まれ、無理矢理どこかの教室に連れて来られたんですの。俺を運んだ生徒達は既に去り、代わりになんだか怖い顔をした女生徒がいるんですの。理解しがたいんですの。
「ジャッジメントですの!」
「はぁ!?」
「あ、いや、なんでもないです」
いかん。ですの口調が続くと思わず黒子になってしまう。オネニーサマ!(間違い)
「……ま、まあいいわ。あのね、私の顔に見覚えあるでしょ?」
「いいぃえ」
「……え?」
「ないです」
「…………」
「帰っていいですか?」
「見覚えあるでしょっ!?」
「はいっ」
本当はないのだけど、とても怖かったので思わず肯定してしまった俺を一体誰が責められようか。
「そ、そう。そうよね。そりゃそうよね。私だけ覚えてるわけないものね」
しかし、そうすることによって何やら向こうさんが納得しているようだったので、俺の決断はあながち間違っていなかったようだ。
「そ、それで。なんで逃げたのよ」
「……?」
「な、何を不思議そうな顔してるのよ! ……お礼のひとつも言わせないでさ。勝手に逃げちゃって」
何の話か皆目見当がつかないが、話の展開上理解している風を装わないといけない。
「いや、あの、ごめんなさい?」
「何よ、その疑問系は!」
どこまでいっても理解していないので、ハテナの野郎がつい顔を出してしまう。
「と、とにかく、そーゆーことだから。……あの、ありがとう。助けてくれて。感謝してます」
そう言って、目の前の女子はぺこりと頭を下げた。どうやら俺は以前この女子を助けたようだ。
「いや、まあ気にするな。それで、反物はいつもらえるのだろうか」
「たんもの?」
「恩返しといえば自分の毛を使い、反物を織るものだろう。君はたぶん俺が以前助けた鶴か何かだろう?」
「違うわっ! 人をなんだと思ってんのよ!」
「鶴、もしくはそれに類した存在。獣の類であると予想される」
「だから、違うって言ってんでしょうがっ! そもそもアンタ前に鶴なんて助けたの?」
「この間道で困ってる外人なら助けた。ただ、もうこれが全然言葉が通じなくて通じなくて」
「それ全然関係ないっ! んじゃ何、私はその外人が日本人に化けて恩返しにやってきたってこと!?」
「ゲラゲラゲラ! 超意味ねー!」
「笑うなーっ!」
「いや、だってそれ以外に俺が助けた奴なんて誰も……」
……ん? 助ける?
「あっ、お前昨日の階段落ちの奴か!」
「今更!?」
「あー、あーあーあー。そういやそんな気がしないこともないようなこともない。つまり……お前は誰だ?」
一回余分なものが入ったため、一周回って誰だか分からなくなってしまった。
「さっき貴方が言った通りよっ! ……な、なんだってこんな変な奴に……」
何やら女性はショックを受けているようだった。
「……決めたっ! 貴方、今日から生徒会入りなさい!」
「はい?」
「貴方の変なトコロ、私が全部直してあげる! だから、生徒会に入りなさい!」
「いや、意味が分からない」
「生徒会長である私が直々にアンタを矯正してあげるって言ってるのに、逆らうっての!?」
「いや逆らうとか……えっ、お前って生徒会長なの?」
「ええっ、知らなかったの!? 朝礼で挨拶とかしてるでしょ!?」
「朝は眠いから夢うつつだし、壇上まで見通せるほど透き通ったまなこをしてないし、そもそもそんな健康体でもないから、朝礼では貧血でぶっ倒れそうでフラフラしてるのでそれどころでは」
「えっ? ……君、体弱いの?」
「まあ、強い方ではないですね」
本当に自慢ではないが、俺はよく体調を崩す。学校を休む頻度もそれなりに多い。病弱なのは美少女にしか似合わないってのに、我ながら厄介な体だ。
「……なのに、私を助けてくれたの?」
「あー、や、まあ、その。咄嗟だったし。色々考える余裕なんかなかったし」
「…………」
会長は俺をじーっと見ている。何やら頬付近が赤く染まってる気がするが、気のせいに違いない。目が潤んでるのも、きっと気のせいだ。
「……や、その! アレだよ、俺がやらなくてもきっと誰かが助けたよ!? その助けた奴が偶然俺だっただけで! だから、別に気にする必要ないと思いますよ? じゃ、俺はこれにて!」
「……あっ、待て逃げるなっ!」
「ぐげっ」
「きゃああああっ!?」
なんだか居た堪れなくなって逃げようとしたら、会長が咄嗟に伸ばした手が俺の喉に納まり、しかもいい具合に頚動脈を押さえたがため、一瞬で気絶したという伝説がここに誕生した。
「……うぅん」
「あっ、気がついた?」
何やら声が聞こえる。妙に声が近い。
「……む、むぅ」
「本っ当、アンタって弱いのね。これは心と一緒に身体も鍛えなおす必要があるかもしんないわね」
「そんな、人を虚弱体質みたいに……」
「こんなか弱い女の子に気絶させられといて、何言ってるのよ」
「俺も初対面の女性に気絶させられるとは夢にも思わなかった」
「初対面じゃないわよ! 二回目よ!」
「あの階段落ちを一回に入れるのはどうかと思うが」
「うぐ……い、一回は一回よ。文句ある?」
「いや、ないが……」
「そ、それより。……ど、どうなのよ」
「具体性にかける質問。故に、何を指しているのか推測不能。結論:寝る」
「寝るなッ! ……じゃ、じゃなくて。ほ、ほら、オトコノコって好きなんでしょ? こーゆーの」
「またしても具体性にかける問いかけ。彼女は一体何のことを喋っているのだろうか」
「あーもー分かるでしょうがっ! この状況だと!」
「俺に分かることはといえば、やけに会長の顔が近いのと、会長の髪が顔にあたるなあと思うことと、何やら枕がふにょふにょして気持ちいいことくらいしか」
「そ、そう。それ。枕。……ふにょふにょとか言うな、ばか」
「枕?」
枕が一体なんだと言うのだろうか。手をやってみる。
「ふひゃっ!? い、いきなり触るな、ばか!」
いやね、これがもう完璧に人の足。しかも、女性(予想)の足。つまり、そこから察するに、現在俺は“膝枕”と呼ばれる極楽にいるようだ。
「……ああ。夢か」
「現実よっ!」
こんな幸せなことが俺の人生に起こるなんて想定してなかったが故の結論だったが、否定されては仕方ない。受け入れよう。
「俺は、今、会長に膝枕をされているっ!」
「なっ、何を叫んでるのよ、ばかっ!」
受け入れたら受け入れたで怒られる。どうしろと言うのだ。あと、照れ隠しだとは思うのだけど、ビンタをしないで。何度もしないで。何度も何度もしないで。
「顔が痛え」
「はーはーはー……変なこと言うからよ、ばか」
「そんなつもりはないのだけれど」
「ううぅ……そ、それで。理解したところで、どうなのよ」
「いや、そりゃ、ねぇ?」
「わ、私に同意を求めないでよ。男ならはっきり言いなさいよ」
「そんなの、幸せに決まってるじゃないですか」
「……そ、そう」
静かに赤面しないで。こっちまで恥ずかしくなってくる。
「な、なに赤くなってんのよ! か、勘違いしないでよね、枕がなかったからしょーがなくしてあげただけなんだからねっ!?」
「今後も常備しない方向でお願いします」
「も、もうしてあげるわけないでしょ、この馬鹿! 私のせいで気絶させちゃったから、特別中の特別にしてあげただけなんだからねっ!」
「自殺も視野に入れる程度には絶望する事実ですね」
「そんなことで死ぬなっ!」
俺の顔をぺちぺち叩いて激励する会長だった。
【かなみは俺の嫁3】
2011年12月24日
今日も俺の嫁はかなみで、しかも嫁になってから初のクリスマス。これは気合を入れねばなるまい! ふおおおお!
「うわぁ……」
しかし、気合を注入してる最中に明らかに引いてる声が聞こえてきたので、一気に気合が霧散した。
「あの。引かないで」
「引くに決まってるでしょ。なんだって朝一番に見るのがアンタの尻なのよ……」
「気合を入れている最中だったがために起こった悲劇と言えよう」
「何の気合なんだか……ふああああ」
大きくあくびをして、むにゅむにゅと口を動かしている。うーむ、可愛い。
「ふひゃっ!? な、何すんのよっ!」
ので、思わず抱っこしたら怒られた。だが、婚前と違い、叱られるだけで手が出ないので大変嬉しい。
「……あ、朝からするの? 何かコスプレした方がいい?」
「かなみはえろいなあ!」
ものすごい殴られた。婚前と変わらず手は出る模様。
「アンタが仕掛けたことでしょうがッ!」
「いやはや。それはそうとおはよう、かなみ」
「あ、うん。おはよ」
夫婦の決まり事として、どんなことがあっても挨拶する時は笑顔を心がける、というものがある。そんなわけで二人して笑顔で挨拶したのだが、これがもう毎日破壊力がありまして。
「……アンタって、挨拶のあと、いっつも私の頭なでるわよね。もーいい加減慣れたけど」
「そしてお前はその度嬉しそうだな」
「うっ、嬉しくなんてないもん! 挨拶の余韻が残って笑顔のままなだけなんだから!」
「猫語で」
「ええっ!?」
「猫語で」
「……にゅ、うにゃにゃんにゃにゃににゃ! にゃににゃにゅにょにょにょにんにゃにょにょっにぇにぇにゃにょにょにゃにゃにゃんにゃにゃにゃ! ……にゃ?」
「うーん、素晴らしい」(なでなで)
「うにゃー」(やり遂げた顔)
「しかし、何言ってんだか一切分からなかったな。はっはっは」
「がぶがぶがぶっ!」
猫語強制は大変危険です。
「もー……ていうか朝から何やってんのよ」
「いや、クリスマスですから」
「それ関係ないしっ! クリスマスだから猫語で会話するとか聞いたことないしっ!」
「俺もまさかやってくれるとは思わなかった」
「う……だ、だって、アンタこーゆーの好きじゃん」
「うむ。それをかなみにやってもらうと、好きの相乗効果でもう凄いことになります」
「そー……それってさ、私のコトが好き、ってコトだよね?」
「結婚しといて今更聞くか」
「い、いーじゃない! 何回だってアンタの気持ち悪いトコロ見たいし! で、どーなのよ」
「あーはい好き好き」
「もっと気合入れて言いなさいよっ! そんな片手間の好きなんて嫌なの!」
「さて、折角だしどっか出かけるか」
「ちゃんと言いなさいよッ!」
「つーわけで。大好きなかなみさん、俺と一緒にデートしませんか?」
「…………。す、する。……じゃない、どしてもって言うならしてあげるっ! あんまりにもアンタが哀れだから!」
「そういうの毎回言わなきゃいけない決まりでもあるの?」
「うっさい!」
超怒られた。
「えっへっへー。なんかね、いーわよね♪ 街がキラキラしてるもんね♪」
しかし、外に出たら機嫌が即直ったようで、俺と繋いだ手をプラプラ揺らしながらにへにへしている。薬でもやってそうで一寸怖い。
「…………」
「…………」
なので、そーっと手を緩めて逃げようとしたらとても怖い顔で睨まれたので、握り直す。
「うんっ、それでよし♪ まったく、なんで逃げようとするかな」
「いやはや。なんだかんだ言って、大好きなのな」
「なっ、だっ、誰が誰を大好きだってのよ!? さ、寒いから手を繋いでるだけだしっ! 暖かくなって思わず笑顔になっちゃっただけだしっ!?」
「帰ったらいっぱいちゅーしようね」
「……う、うん。……って、し、しないわよ、ばかっ! 誰がアンタなんかとっ!」
「分かった、絶対しない」
「素直でありがたいわねッ!」
そう言ったら言ったで半泣きになりながらも全力で頬をつねってくるので、うちの嫁は厄介です。
「痛い痛い。分かった、帰ったら嫌がるお前に無理やりちゅーしてやる」
「……ど、どれくらい?」
「ん、回数か?」
コクコクうなずかれたので、指を一本立ててみた。かなみの頬が膨らむ。
「んー……じゃあ、2?」
プルプルとかなみの首が横に振られる。それにつられてツインテールが揺れた。一本ずつ立てる指の数を増やしていき、最後にパーの形になってようやくかなみの顔に笑顔が灯った。
「そ、そか。5回もされちゃうんだ。……あーヤだヤだ♪」
「それはいいんだけど、街中でこんな話して大丈夫かな? ようじょにいたづらする好青年に見えないかな?」
「誰がようじょで誰が好青年よッ! どっちもおかしい!」
140cmが怒った。
「だってお前発育不良のうえ、ちっこいじゃん。そして俺は誰がどう見ても好青年じゃん」(なでなで)
「ちっこくない! そしてアンタは誰がどー見ても不審者! 頭なでるなっ!」
「そんな不審者と結婚したのか、お前は」
「う……あ、あれよ、誰かがそばにいて見てなきゃ捕まっちゃうだろーし。ほ、ほら、貧乏クジ引いたっていう感じ?」
「ぎゅー」(抱っこ)
「むみゃー♪」(大喜び)
「貧乏クジ?」
「……び、貧乏くじ」
自分でも無理があると思っているのか、顔が赤い。
「て、ていうかいきなり抱っことか反則! ……咄嗟だと、反応できないじゃん」
「うーん可愛い。よし、今日は一緒にお風呂入ろうね」
「毎日一緒に入ってるでしょっ!」
「しまった、既に毎日いたづらしていた!」
「い、いたづらとか言うな、ばかっ!」
「どんだけ揉んでも大きくならないのは呪いか何かなんですか?」
ものすごく顔の赤いかなみに手を引っ張られ、その場から逃げ出しました。
「どういうことよッ!?」
さほど人気のない公園まで辿り着くと、何やら詰問された。
「それは呪いをかけた人に言ってもらわないと」
「じゃなくて! ていうか呪いじゃない!」
「なんだ。つか別に呪いだろうが何だろうがこちとら一向に構いませんが。ちっこいの大好きだし!」
「そ、そうよね。暇さえあればぺろぺろしてるもんね。……だから、そうじゃなくて!」
「外でしたくなったの? そんな勇気は持ち合わせていないのですが……いや、かなみの頼みだし……ううむ、悩む!」
「んな頼みしたことないッ! そうじゃなくて、そうじゃなくて! 外でそーゆーこと言うなって言ってるの!」
「ああなんだ、そうだったのか。分かった、努力しよう」(なでなで)
「努力しなきゃ無理なんだ……」
頭をなでるついでに呆けた様子のかなみの頬を両手で包み込むようにすりすりする。
「……うー。アンタ、ほんっとーに私のこと好きよね」
「なぜに」
「気づいてないかもしんないけどさ、すっごい嬉しそーなんだもん、私のほっぺ触ってる時」
「女体に触り放題でウハウハだからな」
「ヘタだよね、照れ隠し」
「ぐぅ」
「えっへっへー。そんじゃさ、デートの続き、しよっか?」
「おや、突然機嫌が直った。貧乳の神様の仕業か? 粋なことしやがる」
何やらつねられたが、どうにか無事クリスマスを過ごせました。
「うわぁ……」
しかし、気合を注入してる最中に明らかに引いてる声が聞こえてきたので、一気に気合が霧散した。
「あの。引かないで」
「引くに決まってるでしょ。なんだって朝一番に見るのがアンタの尻なのよ……」
「気合を入れている最中だったがために起こった悲劇と言えよう」
「何の気合なんだか……ふああああ」
大きくあくびをして、むにゅむにゅと口を動かしている。うーむ、可愛い。
「ふひゃっ!? な、何すんのよっ!」
ので、思わず抱っこしたら怒られた。だが、婚前と違い、叱られるだけで手が出ないので大変嬉しい。
「……あ、朝からするの? 何かコスプレした方がいい?」
「かなみはえろいなあ!」
ものすごい殴られた。婚前と変わらず手は出る模様。
「アンタが仕掛けたことでしょうがッ!」
「いやはや。それはそうとおはよう、かなみ」
「あ、うん。おはよ」
夫婦の決まり事として、どんなことがあっても挨拶する時は笑顔を心がける、というものがある。そんなわけで二人して笑顔で挨拶したのだが、これがもう毎日破壊力がありまして。
「……アンタって、挨拶のあと、いっつも私の頭なでるわよね。もーいい加減慣れたけど」
「そしてお前はその度嬉しそうだな」
「うっ、嬉しくなんてないもん! 挨拶の余韻が残って笑顔のままなだけなんだから!」
「猫語で」
「ええっ!?」
「猫語で」
「……にゅ、うにゃにゃんにゃにゃににゃ! にゃににゃにゅにょにょにょにんにゃにょにょっにぇにぇにゃにょにょにゃにゃにゃんにゃにゃにゃ! ……にゃ?」
「うーん、素晴らしい」(なでなで)
「うにゃー」(やり遂げた顔)
「しかし、何言ってんだか一切分からなかったな。はっはっは」
「がぶがぶがぶっ!」
猫語強制は大変危険です。
「もー……ていうか朝から何やってんのよ」
「いや、クリスマスですから」
「それ関係ないしっ! クリスマスだから猫語で会話するとか聞いたことないしっ!」
「俺もまさかやってくれるとは思わなかった」
「う……だ、だって、アンタこーゆーの好きじゃん」
「うむ。それをかなみにやってもらうと、好きの相乗効果でもう凄いことになります」
「そー……それってさ、私のコトが好き、ってコトだよね?」
「結婚しといて今更聞くか」
「い、いーじゃない! 何回だってアンタの気持ち悪いトコロ見たいし! で、どーなのよ」
「あーはい好き好き」
「もっと気合入れて言いなさいよっ! そんな片手間の好きなんて嫌なの!」
「さて、折角だしどっか出かけるか」
「ちゃんと言いなさいよッ!」
「つーわけで。大好きなかなみさん、俺と一緒にデートしませんか?」
「…………。す、する。……じゃない、どしてもって言うならしてあげるっ! あんまりにもアンタが哀れだから!」
「そういうの毎回言わなきゃいけない決まりでもあるの?」
「うっさい!」
超怒られた。
「えっへっへー。なんかね、いーわよね♪ 街がキラキラしてるもんね♪」
しかし、外に出たら機嫌が即直ったようで、俺と繋いだ手をプラプラ揺らしながらにへにへしている。薬でもやってそうで一寸怖い。
「…………」
「…………」
なので、そーっと手を緩めて逃げようとしたらとても怖い顔で睨まれたので、握り直す。
「うんっ、それでよし♪ まったく、なんで逃げようとするかな」
「いやはや。なんだかんだ言って、大好きなのな」
「なっ、だっ、誰が誰を大好きだってのよ!? さ、寒いから手を繋いでるだけだしっ! 暖かくなって思わず笑顔になっちゃっただけだしっ!?」
「帰ったらいっぱいちゅーしようね」
「……う、うん。……って、し、しないわよ、ばかっ! 誰がアンタなんかとっ!」
「分かった、絶対しない」
「素直でありがたいわねッ!」
そう言ったら言ったで半泣きになりながらも全力で頬をつねってくるので、うちの嫁は厄介です。
「痛い痛い。分かった、帰ったら嫌がるお前に無理やりちゅーしてやる」
「……ど、どれくらい?」
「ん、回数か?」
コクコクうなずかれたので、指を一本立ててみた。かなみの頬が膨らむ。
「んー……じゃあ、2?」
プルプルとかなみの首が横に振られる。それにつられてツインテールが揺れた。一本ずつ立てる指の数を増やしていき、最後にパーの形になってようやくかなみの顔に笑顔が灯った。
「そ、そか。5回もされちゃうんだ。……あーヤだヤだ♪」
「それはいいんだけど、街中でこんな話して大丈夫かな? ようじょにいたづらする好青年に見えないかな?」
「誰がようじょで誰が好青年よッ! どっちもおかしい!」
140cmが怒った。
「だってお前発育不良のうえ、ちっこいじゃん。そして俺は誰がどう見ても好青年じゃん」(なでなで)
「ちっこくない! そしてアンタは誰がどー見ても不審者! 頭なでるなっ!」
「そんな不審者と結婚したのか、お前は」
「う……あ、あれよ、誰かがそばにいて見てなきゃ捕まっちゃうだろーし。ほ、ほら、貧乏クジ引いたっていう感じ?」
「ぎゅー」(抱っこ)
「むみゃー♪」(大喜び)
「貧乏クジ?」
「……び、貧乏くじ」
自分でも無理があると思っているのか、顔が赤い。
「て、ていうかいきなり抱っことか反則! ……咄嗟だと、反応できないじゃん」
「うーん可愛い。よし、今日は一緒にお風呂入ろうね」
「毎日一緒に入ってるでしょっ!」
「しまった、既に毎日いたづらしていた!」
「い、いたづらとか言うな、ばかっ!」
「どんだけ揉んでも大きくならないのは呪いか何かなんですか?」
ものすごく顔の赤いかなみに手を引っ張られ、その場から逃げ出しました。
「どういうことよッ!?」
さほど人気のない公園まで辿り着くと、何やら詰問された。
「それは呪いをかけた人に言ってもらわないと」
「じゃなくて! ていうか呪いじゃない!」
「なんだ。つか別に呪いだろうが何だろうがこちとら一向に構いませんが。ちっこいの大好きだし!」
「そ、そうよね。暇さえあればぺろぺろしてるもんね。……だから、そうじゃなくて!」
「外でしたくなったの? そんな勇気は持ち合わせていないのですが……いや、かなみの頼みだし……ううむ、悩む!」
「んな頼みしたことないッ! そうじゃなくて、そうじゃなくて! 外でそーゆーこと言うなって言ってるの!」
「ああなんだ、そうだったのか。分かった、努力しよう」(なでなで)
「努力しなきゃ無理なんだ……」
頭をなでるついでに呆けた様子のかなみの頬を両手で包み込むようにすりすりする。
「……うー。アンタ、ほんっとーに私のこと好きよね」
「なぜに」
「気づいてないかもしんないけどさ、すっごい嬉しそーなんだもん、私のほっぺ触ってる時」
「女体に触り放題でウハウハだからな」
「ヘタだよね、照れ隠し」
「ぐぅ」
「えっへっへー。そんじゃさ、デートの続き、しよっか?」
「おや、突然機嫌が直った。貧乳の神様の仕業か? 粋なことしやがる」
何やらつねられたが、どうにか無事クリスマスを過ごせました。

