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2024年04月29日
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【文化祭で周りから二人の関係をからかわれて、必死になって否定するボクっ娘】

2010年05月27日
 文化祭当日。どうにか二人羽織も成功し、打ち上げパーティとなった。
「二人羽織よかったよ~! すごい面白かった!」
「え、えへへ、そっかなぁ?」
「うんうん、二人の息ピッタリって感じ! やっぱアレ? 普段から一緒にいるから二人羽織も楽勝?」
「い、いつも一緒になんていないよぉ!」
「何言ってんのよ。ずーっと一緒だったじゃないの。休み時間も昼休みも放課後も」
「そ、それは二人羽織の練習するため、しかたなくだよぉ!」
「そんなこと言って、実際のとこどうなの、別府君?」
「ん?」
 机の上に置かれた料理を食うのに必死で、何も聞いてなかった。
「そ、そんな口一杯に頬張らなくても誰も取らないわよ……えっと、梓と別府君の関係の話よ」
「むぐむぐ……関係も何も、見たままだ」
「それって……もう二人は恋人ってこと?」
「ち、違うよぉ! ボクはこんないじわるなタカシのことなんて、嫌いだよぉ!」
「俺は結構好きだけどな、梓のこと」
「ふぇ……」
 周囲から黄色い声が上がる。
「ぼ、ボクは嫌いだからね! ホントだからね! 嘘じゃないからね!」
 梓は真っ赤な顔でまくしたてて、教室を出て行ってしまった。
「ちょ……梓出て行っちゃったよ? 追わなくていいの?」
「腹減った。食い終わるまで待っててもらおう」
 再び机に向かって飯に箸を伸ばしていると、その手をむんずと捕まれた。
「い・い・か・ら、追いかけなさい!」
 教室から追い出された。鍵までかけられた。
「二人で戻ってきたら、入れてあげるからね~♪」
 なんて勝手な奴らだろう。俺はしかたなく梓の行きそうな場所へ足を向けた。
 女子更衣室……怒られた。女子便所……悲鳴上げられた。水泳部更衣室……つるぺたツインテールに絶対死なすって言われた。屋上……いた。
「よお、何ぼーっとして……」
「あ……タカシ」
 短い髪を風に遊ばせて、鉄柵にもたれた梓がそこにいた。夕日に照らされたその姿に、少しだけドキリとした。
「……どしたの? ぼーっとして」
「あ……いや、なんでもない。おまえこそ、どうしたんだ?」
「ん……」
 そう言って、梓は校庭を見下ろした。釣られて俺も見る。まもなく行われるキャンプファイヤーの準備に、皆おおわらわな様子だ。
「……みんな、忙しそうだね」
「最後の締めだからな。これで祭りも終わり、明日からまたつまらん日常が戻ってくる」
「あははっ、タカシといたらつまらない日常なんてないよ。いっつも滅茶苦茶なことしてるもん」
 そんな自覚はないのだが、それで梓が笑ってくれるなら、よしとしよう。
「……なぁ、梓。俺……」
「……ね、踊ろっか?」
「はぁ?」
「だから、踊ろ。キャンプファイヤーの練習」
 そう言って、梓は俺の手を取った。
「お、おい」
「こうして、はい、ターン。くるっと回って、はい、ターン」
「わっ、たっ、とっ、はっ……」
 梓に言われるがまま、不器用な踊りをする。
「へたっぴ」
「うるさい。こういうのは苦手なんだ」
「……だから去年、踊らなかったの?」
「ああ。……ひょっとして、踊りたかったのか?」
「……さあね。今こうして踊ってるんだから、そんなのどうでもいいよ」
 俺の手を中心に、梓がくるりと回る。そして、ぎゅっと俺に抱きついた。
「お、おい」
「……嫌い、っていうのは嘘。……けど、まだ好きじゃないよ」
 顔を俺の胸に押し付け、梓がささやく。
「今は、それでいいさ」
「……そっか」
 日が落ちるまでの短い間、俺と梓は何も喋らず、そっと抱き合ってた。

 教室に戻ると、みんなキャンプファイヤーに出かけたのだろう、誰もいなくなっていた。
「誰もいないね」
「腹減った」
 机の上の料理を手づかみで食う。
「あー、もう手で食べない! お箸使いなよ、もう……」
 梓は俺の手を自分のハンカチで拭き、箸を渡した。
「梓も食え。腹減ったろ?」
「ボクは二人羽織の時、ケーキをたくさん食べたから平気だよ」
 そう言いながら、梓は見るとはなしに俺を見ていた。
「むぐむぐ……なんだ?」
「ぽろぽろこぼしてるよ。ホントにもう、大きな子供なんだから」
 どこか嬉しそうに、梓は俺の口元をハンカチで拭った。
 誰が子供だコンチクショウ、と思いながら梓を見る。梓も、俺を見ていた。目と目が合った。
 誰もいない教室。静かな空間。ふたりきり。ボクっ娘。
 そんなキーワードが頭をめぐる。いかん、どうしたことか梓がやけに可愛く見えてきた。
 そっ、と梓のほおに触れる。まるで火に触れたように熱い。自分の心音がやけにうるさい。
「た……タカシ、ボク……ボク、ね、ホントは……」
 そっと、梓の唇に……
「たっだいまー! ……あー! 梓に別府くん、やっぱそういう関係ー!?」
 クラスメイトが勢いよくドアを開け、教室になだれ込んできた。
「ち、ちち違う違う違う! ボクはタカシなんて大っ嫌いだよぉ!」
 ……まぁ、ゆっくりやるさ。
 真っ赤な顔で抗弁する梓を見ながら、そう思った。

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【こいぬボクっ娘】

2010年05月23日
 ボクっ娘の誕生日に、こいぬのぬいぐるみを贈った。口では渋りながらも、喜んで受け取ってもらった。
 で、その一週間後の日曜日。なんでこいぬの格好したボクっ娘が俺のベッドの中で寝息を立ててますか?
「むにゅ……ん、ふわぁぁぁ……あ、タカシ。おはよう」
「あ、おはよう……いや、そうじゃなくてなんで俺の部屋にいるの?」
「え、えっと、……一週間前にね、プレゼントくれたじゃない、こいぬのぬいぐるみ。……その、お返しに何がいいかってちなみちゃんと相談して、これ、貸してくれて、それで、その、こうしろって、ちなみちゃんが……」
 ちなみの奴、余計なことしやがる。あとでほっぺ引っ張ってやる。
「しかし、ボクっ娘にこいぬか……おまえ犬属性だし、まんまだな。お手」
「ボクっ娘じゃないよぉ、梓だよぉ! 覚えてよぉ! それに、犬属性ってなんだよぉ!」
 怒りながらも、梓はちゃんとお手をした。
「よしよし、偉いぞ」
「う……頭、なでないでよぉ。うみゅみゅ……」
 説得力のない言葉をはきながら、梓は相好を崩した。
「うみゅうみゅ言うな。萌えキャラ気取りか」
「なんだよぉ、ボクは萌えキャラとかじゃないよぉ! ボクはかっこいい自立した女性なんだ……あ、なでないでよぉ、うみゅみゅ……」
 かっこいい自立した女性は、頭なでられてもみゅうみゅ言わないと思います。
「んー、ボクっ娘からかうのも飽きたな。……まだ眠いし、寝なおすか」
「だから、ボクっ娘って呼ぶなって……え、寝るの?」
「眠い。寝る」
「あ、じゃ、ボク今日は帰る……ひゃ!?」
 ベッドから出て行こうとする梓を引きずり込む。
「抱き枕の代わりになれ。それでお返しはおーけー」
「う……そ、そうだよね。お返しだもんね。しかたなくだからね」
 犬っぽい生き物を胸に抱き、深く呼吸する。女の子特有の甘い匂いがした。
「んー、いー匂い。やーらかいし、最高」
「そ、そういうこと言わないでよぉ!」
「タカシー? そろそろ起きなさい」

 どうして母親という生き物はノックをしないで入ってくるのですか?
 そして何故俺はこうも土下座をする羽目になるのですか? もう土下座慣れたよ。畜生。

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【ぽかぽかぱんち】

2010年05月20日
 今日も今日とてタカシは日課のボクっ娘いじめをしていた。
「うっ、ひぐっ……タカシのばかぁ、いじめっこ! こら、逃げるなぁ!」
「わはははは! 馬鹿め、怪盗タカシ様が捕まってたまるか!」
 窓から身を躍らせ、タカシは教室から飛び出した。
「ああっ! 逃げたぁ!」
「ここ3階なのに……相変わらずタカシは後先考えてないわね」
 地面に落ちていくタカシを見ながら、かなみはボクっ娘──梓に近づいた。
「……ねぇ、梓ちゃん。タカシに仕返ししたくない?」
「えぐっ……し、仕返し?」
「そう。……やる気があるなら、私の『ぽかぽかぱんち』、伝授してもいいわよ」
 その傍で話を聞いていたみことは、かなみの言葉を聞き驚いていた。
「ぽかぽかぱんちだと!?」
「知っておるのか、雷で……げふんげふん、みこと」
 わざとらしい咳をしながら、まつりはみことに問いかけた。
「ぽかぽかぱんちとは、歩禍歩禍班血のこと。その技を喰らった者に禍を与え、使い手の歩いた後には斑に血が付着するという伝説とまで言われた技……よもやかなみがその伝承者だったとは」
「へー」
 まったく興味を示さないまつりにみことが軽く殺意を覚えていたころ、かなみは梓に伝授を終えていた。
「これで大丈夫。タカシなんて一撃よ♪」
「は、はぁ……これ、やっても死なないよね?」
「…………」
「なんで目をそむけるの!?」
 明けて翌日。全身に包帯を巻いたタカシはいつものように梓をいじめていた。
「ほーら梓、象さんだよー。ぱおーん、ぱおーん」
「うううううっ、タカシのばかぁ、セクハラ大魔王! 食らえ、ぽかぽかぱんち!」
 梓の拳が唸りを上げてタカシの顔に! ……へろへろへろ、ぽすん。
「……? なんだこれ? ぽかぽかっていうか、へろへろぱんちだな」
 むにむにと梓のほっぺを引っ張りながら、タカシは言った。
「うう~、ひっひゃらひゃひへほ、はは~!」
「はいそこまで!」
「ぐぎゃあ!」
 一撃で教室の端までタカシを吹き飛ばし、かなみは梓に話しかけた。
「あーもう、何やってんのよ。昨日ちゃんと教えたでしょ?」
「う……だ、だって、あれやっちゃうとタカシ死んじゃうんでしょ? で、できないよぉ……」
「……ぷ、あはははは! だいじょーぶだいじょーぶ。死にはしないわよ。後遺症残るけど」
「一緒だよぉ! い、いいの! タカシはボクが自力でどうにかするから!」
 吹き飛ばされて目を回しているタカシの元へ、梓は駆けていった。その様子を、かなみは微笑ましくも、羨ましそうに見ていた。

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【ボクっ娘にタイヤキをおごってやったら】

2010年05月19日
 冬。雪が街を白く染め上げるころ、俺はKanonをクリアした。その記念として、ボクっ娘にタイヤキを奢ってやることにした。 
「珍しいね、タカシがボクに奢ってくれるなんて」
「感謝してむせび泣いて初めてを寄越すんだな、ボクっ娘」
「感謝はするけど泣かないし初めてなんかあげないしボクっ娘じゃなくて梓! いい加減に覚えてよぉ!」
 よく分からないことをわめいている梓としばし歩き、タイヤキ屋につく。妙にガタイのいい兄ちゃんがせっせとタイヤキを焼いていた。
「盗むなよ。拉致監禁されてリコーダーで処女喪失プレイされるぞ」
「盗まないよぉ! 怖いこと言わないでよぉ!」
「いや、あの顔は恥部に肉便器と刺青を入れるプロだな。もう20人はやってる」
「随分失礼なこと言うな、兄ちゃん」
「タイヤキ三つくれ。アンコと白アンとマヨネーズ」
「……へい、毎度」
 なんだか知らないが態度の悪い店員からタイヤキを受け取り、適当なベンチに座る。
「ほい、食え」
「……なんでマヨネーズ入りを渡すの?」
「こんなもん食えねぇから、おまえにやる」
「ボクも食べないよ!」
 強引に袋からアンコ入りを取り出し、梓はかぶりついた。
「ん~! おいしいねぇ。奢りだと余計においしく感じるよ!」
「……なぁ、梓。実は折り入って頼みが」
 食い終わったのを見計らい、俺は梓に切り出した。
「ん? お金なら貸さないよ。タカシに貸したら、いつ返ってくるか分からないもん」
 白アンのタイヤキを口にしながら、梓は言った。
「いや、そんなんじゃない。簡単な話だ。……うぐぅ、って言ってくれないか」
「……? う、うぐぅ?」
「……あゆっ!」
「うわあああ! あゆじゃなくて梓だよぉ! なに抱きついてんだよぉ!」
「探し物は見つかったか? ちゃんと幸せに暮らしてるか?」
「訳分かんないよぉ! ちょっと、どこ触ってんだよえっち!」
 思わずヒートアップして乳をもんでいた。よくある失敗といえよう。
「いきなり何すんだよぉ!」
「悪い悪い。ちょっとはっちゃけた。実は……」
 俺は梓にKanonに出てくるキャラ、あゆについて説明した。
「……というわけで、飛んでいったベールを見て泣いちゃうんだよ。その後意識が戻って7年の空白を埋めるために謎のジャムを食うんだ」
 他のキャラの話が混じった。まぁいいか。
「うっうっ……いい話だねぇ。ずびー」
 こんな説明で泣ける梓はすごい。
「それを踏まえて、もう一度うぐぅを! リピート!」
「うっうっ……うん、ボク、言うよ! うぐぅ、うぐぅ、うぐぅ!」
「あゆーーーーーーーーーーっ!!!」
「だからボクはあゆじゃなくて梓だよぉ! なんでいちいち抱きつくんだよぉ!? おっぱい触るなぁ!」
 夕暮れの街に、雪が静かに降り積もっていった。

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【『ツンデレ』で検索してボクっ娘がヒットしなかったらどうなるの?】

2010年05月18日
「ツ、ン、デ、レ、と……」
「あ、タカシだー。何してんの?」
 ふらふらと寄ってきたボクっ娘の頭を抱え、締め上げる。
「いたたたたたた!?」
「暇だからツンデレで検索してみたんだ。……ほぅほぅ、アッパーにダウナー、他にも色々いるなぁ」
「何すんだよぅ!」
 俺の魔の手から逃れたボクっ娘は、半泣きで頭を抱えていた。
「ふんふん、老成に尊大、関西に中華と……お? おまえいないな」
「ふぇ?」
「検索してもボクっ娘はヒットしない。おまえはツンデレに認定されてないんだな。うぐぅとか言ってるからだぞ」
「言ってない! そんなことより、ボクにやらせてよ」
 梓は俺をどかして、パソコンの前に座った。
「……で、どうやるの?」
「そこの欄に、ツンデレと入れろ。間違えたら爆発するから気をつけろ」
「えええええ!? 待って、ここにいてよ!」
 そそくさと梓の範囲外に逃げる。今時パソコンも使えないとは、非常に遊び甲斐がある。
「大丈夫。死にはしない。たぶん」
「たぶんとか言わないでよぉ! だ……大丈夫だよね? ……えい!」
「どかーん!」
「ひゃあああああ! 脅かすなぁ!」
「いや、急に土管と言いたくなったんだ。けして驚かせるつもりはなかった」
「嘘つくなぁ! ……あ、なんか出た。アッパー、ダウナー……うう、ボクっ娘はない」
「いいじゃん。これからはツンデレではなくボクっ娘として生きていくことだな。大丈夫、需要は……まぁ、その、な、わはははは!」
「慰めるなら最後まで慰めろぉ! ううっ、いいもんいいもん。ボクはツンデレじゃないもん。ふん」
「まぁ俺を好きな時点でデレデレだからな」
「な!? ぼ、ぼ、ボクはタカシなんか嫌いだよ! そうだよ、だからツンデレじゃなくてツンツンだったらヒットするよ! 調べないけどね! じゃ!」
 真っ赤な顔で逃げていく梓を、俺はぼんやり見ていた。

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