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2026年03月17日
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【ツンデレにお前って料理下手だよなって言ったら】

2010年04月04日
「かなみ、お前って料理下手だよな」
 かなみの手が伸びたかと思うと、俺の首にまとわりついて万力になった。
「下手? 下手って言った?」
「ち、違います違います! 上手、極めて上手と!」
 死の危険を感じたので、慌ててへりくだる。かなみの手が離れたのを確認してから、そっとため息をつく。
「最初っからそう言いなさいよね、もう。せっかくお弁当作ってやったんだからさ」
「や、照れ臭くてね。つい」
「……てっ、照れる必要なんかないわよ! そ、その、おばさんに頼まれたから! 出張でしばらく家を空ける間だけって頼まれたから! それだけだから!」
「もぐもぐ、うーんまずい。特にこのホウレン草が泣けるほどまずい」
「聞いてない上に侮辱を!?」
 ホウレン草の御浸しの味を確かめていたら、なんか頬つねられた。
「……ほっぺ痛い」
「うっさい!」
「もぐもぐもぐ。なーかなみ、お前も不確定ながら女の子なんだから料理の勉強したらどうだ?」
「生まれた時に確定してるわよ! 料理も上手だから勉強する必要なし! ホンット、失礼な奴ねぇ……」
「いや、でもほら、その、ええと、だな。この味を好む人物を探すのは、少しばかり骨が折れる作業かと思ったりなんかしちゃったり」
「……なによ、まずいって言うの?」
「そう、その通ぐげっ」
 本当のことを言うと殴られる。
「……ふん、いいわよいいわよ。どーせまずいわよ。……嘘でもいいから、ちょっとくらい美味しいって言いなさいよ、馬鹿」
「むしゃむしゃ、まずい」
「こんだけ言ってるんだから美味いって言え!」
「こ、怖い」
「美味いよ、うまい! 怖がってどうすんのよ!」
 うふふ、だってかなみさんったら膀胱が破裂しそうなほど怖いんですもの。(半泣き)
「ほら、一言でいいからさ。う・ま・い、って」
「ま・ず・いぃぃぃぃぃ」
 後半言葉が伸びたのは、首を絞められているからです。
「嘘でもいいから褒めろッ!」
「暴力で言葉を強制させるかなみは、とても男らしいです。それはもう惚れ惚れするくらい」
「嬉しくないっ! 料理を褒めるの、りょーり!」
「個性的と言うには、その言葉の範疇に収まりきれないこの料理はどうだ。もはや味の暴力と言っても過言ではないかと」
「うーあーうーっ!」
 両の頬を引っ張られ、かなみが声を上げるたびにどんどん頬が伸びて大変なことに。
「アンタ、馬鹿にしすぎ! 作ってもらっておいてその態度はなによっ!」
「馬鹿にしたつもりはないんだが……あと、弁当作ってくれるのは純粋に感謝してるぞ」
「じゃあちょっとくらい褒めなさいよ。『美味しい』とか『こんな弁当食べれるなんて、俺はなんて幸せ者なんだ』とか『嫁に欲しいくらいだ』とか、とか!」
 最後の台詞にちょっとばかり待ったをかけたいが、なんか自分で言ってて気づいてないようだしスルーで。
「嘘は嫌いなんです」
「ちょっとくらいいいじゃん、ばかー!」
「もぐもぐもぐ。うーん、まずい」
「ううううう……もういいわよ、馬鹿!」
 かなみは俺に背を向けてしまった。
「まぁまぁ。練習すりゃすぐ上手に……うん?」
 かなみを慰めながら口にした玉子焼きに、小さな違和感。……あれ、美味しい?
「かなみーかなみーかなかなみー」
「うるわいわね、何よッ!」
「玉子焼き、うまいぞ。いや、これだけはホントうまい」
 振り向いたかなみに、素直な言葉をぶつける。途端、かなみの顔が綻んだ。
「えっ、ホント? あははっ、それだけは頑張って練習したんだ。よかった、美味しかったんだ」
「うん、おいしい。ところで、なんでこれだけ練習……あ」
 そーいや、玉子焼きって俺の好物だよな。もしかして、それ知ってて練習を……?
「なっ、なに勘違いしてるか知んないけどね、そんなんじゃないからね!」
「じゃあ、どんなんだ?」
「うっ……うるさいっ! 黙って食べろっ!」
 顔を真っ赤にしてうつむいてるかなみを眺めながら、玉子焼きだけがやけに美味い弁当を残らず食べました。

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【魔法で嘘がつけなくなったタカシ】

2010年04月04日
 学校から帰ってると、杖持ったコスプレ娘に襲われた。
「悪人成敗! 私ってばサイコー♪」
 頭のおかしな娘のほっぺを引っ張って何をしたのか聞くと、魔法で嘘をつけなくした、と。
「わ、悪い人から嘘を取ったらいい人になるし! いいじゃない、これくらい!」
「自分を呪ってろ、ばか」
「何よ、その言い方じゃまるで私が悪人みたいじゃない! 第一、呪いじゃなくて魔法よ、魔法!」
「うっさい。いきなり初対面の相手を呪う奴が、悪人じゃないとでも?」
「う、うう……悪人に口じゃ勝てない! えぇーい、ぴんくるぽんくる、死ねぇッ!」
 死ねと言いながら杖を振りかぶる姿を最後に、意識が途絶える。
 気がついたら道端で倒れてて残念無念、逃げられた。次見つけたら肉奴隷にしてやる。
「……といったことが昨日会ったのですよ、ボクっ娘さん」
「へー、そうなんだ。あと、ボクっ娘とか言うな」
 昨日の変人とのいざこざを梓に伝えると、そっけない返事が返ってきた。
「それで、本当に嘘がつけなくなったの?」
「信じられないが、そうなのだ。梓はかなりのお馬鹿。……な? 俺の口からは真実しか出ない」
「それ嘘だよ! ボクは賢いよ! アインシュタインもびっくりだよ!」
「では賢い賢い梓たん、円周率を100桁暗唱してください」
「えっ、ええっ!? さ、3.14……ええと、ええと」
「まだ三桁ですが」
「……およそ3!」
 近代数学を揺るがす答えが出た。
「だいたいさ、タカシは答え知ってるの?」
「……およそ3」
「ほーら、人のこと言えないじゃん」
 む、ボクっ娘のくせに小憎たらしい。鼻つまんでやれ。
「ひゃ、ひゃふ~」
「ひゃふーって言った」
 ひゃふーに満足したので手を放すと、猛烈な勢いで抗議してきた。
「ひゃふーとも言うよ! なんで鼻つまむんだよ!」
「エロスに魅入られし者と呼称される俺とはいえ、流石に学校で乳首をつまむのは抵抗が」
「どこでもつまんじゃダメだよっ! えっちなこと言うな、ばかっ!」
「む、梓相手だとつい。ごめんな、梓」
 軽口を叩いて馬鹿にするつもりが、呪いの効果か思ったことがそのまま口に出てしまった。このままでは梓をつけ上がらせてしまう、どうにかせねば!
「え、あ……うん、反省してるならいいんだよ、うん」
 ……つけあがる、と思ったのだけど。梓ったらなんかコクコク頷いて、変なの。
「コクコク頷く梓は、なんか可愛いなぁ」
 ……いやいや。何言ってんだ、俺?
「え、あ、……う」
「む、照れてる顔もいいなぁ。梓は本当に可愛いなぁ」
 いやいやいや! 違う、違うって! 違うんですよ、俺はそんなキャラじゃないですよ!? 畜生、呪いか、呪いなのか!?
「……タカシってさ、本当はそんなこと思ってたんだ?」
「うむ。正直、お前にメロメロ」
 いやいや、いやいやいや! やめて、誰か俺の口を止めて! コスプレ娘さん悪かったです、お願いだから呪い解いて!
「め、メロメロって……ぐ、具体的に?」
「す、す……」
 史上稀に見るほどの意志力で言葉を止める。これはダメ、ダメ絶対!
「……す?」
「す、す、す……すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッッ!!!」
「うわぁっ、タカシ、タカシ!?」
 意志力と呪いが拮抗し、オーバーロードで電源OFF。ぱったり倒れた模様です。

「……あー、しんど」
 見知らぬ天井、ではなく見知った天井。保健室の天井。保健室の天丼だったら怖いなぁ。怖いけど天丼食べたいなぁ。美味しいよね、天丼。
「……天丼はどうでもいい。まさか梓にあんなこと言いかけるとは……」
「天丼?」
「うわらばっ!?」
 閉められていたカーテンが開けられ、梓が顔を出したので大変驚くと共に変な声が出た。
「うわらば? それよりさ、いきなり倒れないでよね。ここまで運んでくるの、大変だったんだよ」
「あ、ああ……ごめん」
「別にいいケドさ。……それでさ、その、……倒れる前に言いかけたことって、さ」
 む、俺の第七感、いわゆるセブンセンシズがビンビン訴えかけている。「誤魔化せ」と!
「好きってことだ!」
 うわーん、呪いのばかー。
「…………」
 ほら見ろ、ほら見ろ! うつむいてるじゃん! 困ってるじゃん! 今からでも遅くない、誤魔化せ!
「す、好きと言っても、ほら、色々あるじゃん? こ、この好きは、その、愛と! 愛しいと! そう言っていいかと!」
 うわーん、呪いのばかー。いや、マジで。勘弁して。
「……うー」
 ほらほらほら! うーとか言ってるじゃん! あんま人ってうーって言わないじゃん! 明らかに困ってるじゃん! あーもーだから言いたくなかったのに畜生め!
「でででも、その、梓が困るなら俺としては一向に気にしないというか別に今まで通り友達でいいしその関係を途絶されるのだけは勘弁というか」
「…………」
「……あ、あの、友達もダメ?」
 なんてこった。こんなことで、こんな訳の分からない呪いなんかで俺は梓を失うのか。
 ……ああ、これが足元がなくなる感覚って言うんだな。まるで地の底に落ちて行くようだ。
「……えへ、えへへ」
 人が奈落に落ちてるってのに、梓は何やら嬉しそうな声をあげた。
「……なんだよ、そんな友達じゃなくなるのが嬉しいのか?」
「違うよ。そうじゃなくて……えと、……両想い、カナ?」
 そう言って、梓ははにかみながら俺の手をきゅっと握った。
「…………」
 いま、なんて? 俺の頭が都合よく梓の言葉を捻じ曲げたのでないのなら、……両想い、と? 本当にそう言った?
「えへー」
 ……言ったな。この満面の笑みを見てると、それだけで実感できる。
「えへえへ言うな。変な奴」
「へ、変じゃないよ! 嬉しい時は笑うもんだよ! それに、タカシも笑ってるじゃん」
「うぇっ、嘘!?」
 自分の顔をさする。……む、頬がにやけきってやがる。だらしない頬め。
「ね、ね? ……えへー」
「えへえへ言うな。変な奴」
「し、仕方ないじゃん! ……嬉しいんだもん」
 そう言って少し恥ずかしそうに頬を染める梓に、俺は抗う術を持ってなかった。
「あー……なんだ、その、……俺も嬉しい……ような気がしないような気がするような予感がないわけでもないような」
「長いよ、長すぎるよ! ……もっと簡潔に、ね?」
 優しく微笑んで、俺の手を柔らかく握る梓。
「……あー、その、俺も嬉しい。梓とこれからも一緒に話をできることが、嬉しくて仕方ない」
 ……呪われてなきゃ、意地でも言わなかっただろうな。そういう意味では、あのコスプレ女に感謝かな。
「……あ、あのね、ボク……なんかね、……その、もっとタカシに引っ付きたいんだけど……いいカナ?」
「梓に頼まれて、断れる男がいるだろうか」
「ボクは、タカシとしかくっつきたくないよ」
「む……ど、どうぞ」
 ええぃ、なんでこう俺を喜ばせることばかり言うかね、このボクっ娘は。
 緩みまくる頬をそのままに、ベッドの脇に寄ってスペースを空ける。その空間に梓はそっと座った。
「……暖かいね」
「夏だからな」
「そうじゃなくて! ……もう、空気読んでよ」
「んーと……こう、かな?」
「あ……」
 梓の方に体ごと向き直り、そっと近づく。自分の心音が、工事現場の騒音になったかのようだ。
「梓、そ、その、目閉じて……」
「ん……」

「んー、やっぱ悪を更生させるのは愛の力よね♪」
「ああっ、てめぇ頭のおかしいコスプレ娘!」
 折角いい雰囲気だと言うのに、昨日の娘が窓から覗いて全て台無しにしやがった。
「頭おかしくないし、コスプレじゃないっ!」
「んなこたぁどうでもいい! 呪い解け、呪い! これのせいで俺はボクっ娘なんかに告白する羽目になっちまったじゃねぇか!」
「キスしようとした相手に向かって羽目って言った!?」
 梓が何かショックを受けてるが、それどころではない。
「だーいじょーぶよ。24時間経ったら戻るから。あーもう戻ったかな? これで前みたいに嘘つきほーだいだよ。でも、ま、今のキミは恋人がいるし嘘つかないよね」
「好きだッ!」
「うひゃあああ!?」
 ためしに窓まで突撃し、目の前の頭おかしいコスプレ娘に抱きつく。うむ、嘘可能!
「よし、これでこそいつもの俺だ! 祝ってくれ、あず……梓?」
「……恋人の目の前で、ボクじゃない子に好きって言った。好きって言って、抱きついた!」
「あ、いや、違う、違うんだよ? これはその、実験というかお試しというか、その」
「ま、まーアレよね、私の魅力に誰しもメロメロ?」
 人が必死で言い訳してるってのに、勘違い娘がとんちんかんな事を言いだして場を混乱させた。
「メロンパンおいしい」
「訳わかんないこと言うな! しかも美味しいとか言いながら、ボク以外の子のほっぺ舐めてる!?」
 混乱しているのは場ではなく、俺のようだ。ほっぺはすべすべでなんかおいしい。
「あ、あは……もしかして、私惚れられちゃった? きゃーっ! どうしようどうしよう!」
 勘違い娘の本領発揮により、梓の怒気が超パワーアップ。超泣きそう。
「告白したそのすぐ後に、ボク以外の子に抱きついて、あまつさえほっぺにちゅーするなんて……タカシの、タカシの浮気者ぉぉぉぉぉ!」
「へぐっ!?」
 梓のとんでもない勢いの地獄突きが俺のノドにクリーンヒット。ダルマ落としみたいに首だけ取れるかと思った。
「今日の告白は、なしっ! また後日やり直すようにっ!」
「えええええっ!? 馬鹿な、あんなこっ恥ずかしい真似二度もできるかっ!」
「うるさいうるさいうるさいっ! ボク以外の子とイチャイチャした罰だよっ! めーれーだかんね、めーれー!」
 とんでもない罰を残して、梓は保健室から出て行ってしまった。
「う……ううううう、どうしてくれんだよ、コスプレ女っ!」
「コスプレじゃないわよっ! だいたい、あの子に告白できたのは私の魔法のおかげでしょ? 感謝される覚えはあっても、恨まれる覚えはないわよ!」
「ええいうるさい! なんかこう、別の呪いはないのか? 何も言わなくても想いが伝わる呪いとか、他の部族を根絶やしにする呪いとか」
「本当の呪いが混じってるわよ!」
「む、しまった。ともかく、なんかないのか?」
「ないわよ! 自分で頑張ることね。それじゃ、あでゅー♪」
 あでゅーとか言って、コスプレ女は最初からいなかったかのようにその場から消えた。
 あんな恥ずかしいことを、もう一度。想像するのも勘弁願いたい。願いたいが……。
「……梓には代えられないか」
 頭の中でリハーサルを行いながら、俺は保健室を出た。

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【メイド+体育+背中】

2010年04月04日
 今日はメイドの日だ。
 メイドの日とは、うちの学校の全女性がメイド化する素晴らしい日のことだ。こんなめでたい日を作った校長に乾杯。
「うー……なんで体育の時までこんな服着なきゃいけないのよ」
 かなみがメイド服をひらひらさせながら俺に愚痴る。
「可愛いよ?」
「え、ええっ!? ……そう?」
「うむ。特にあの巨乳がぶるんぶるん揺れる様が俺の劣情を刺激してたまらない。……巨乳を可愛いと評して怒られないかな?」
「知るかッ! それより誰の胸見て──リナかぁッ!」
 少し遠くで柔軟してるリナの揺れ乳を見てたら、目潰しされた。
「ぐぎゃあああ! 目が、目がぁっ!」
「どーせあたしは胸薄いわよ!」
「痛い、目が痛い! なんか目からビーム出そうなくらい痛い!」
「うっさい」
「ぐ」
 痛みのあまり地面を転がりまわってると、顔を踏まれた。半泣きになりながら立ち上がる。
「人の目を突き、さらには顔に靴の跡をつけて謝罪の言葉もないのですか」
「地面転がってるからよ、ばーか」
 なんと! 誰のせいで転がったと思ってるのだろうこの娘さんは! ええぃ一言申さねば気がすまん!
「かなみ!」
「何よッッッッッ!」
「なんでもないよ?」
 ちっちゃい“つ”がいっぱい出てとても怖かったので、誤魔化す。ちょっと涙出た。
「な、何よ、なにも泣かなくても……」
「な、泣いてない、泣いてないよ?」
 かっこ悪いので必死で涙を隠してると、先生がやってきた。丁度いいので逃げよう。
「あ、先生来た。さようなら」
「今日は女子の先生休みで、合同よ。……ほ、ほら、行こ」
 何だかばつの悪そうなメイドかなみに手を引っ張られ、ふらふら先生の元に行く。
「はーい、みんな揃った? じゃあ授業始め……きゃあああああ! べ、別府くんが泣いてる!?」
 黙ってりゃいいのに、生徒より幼く見える体育教師の大谷先生が俺を見て絶叫した。……ああ、もちろん先生もメイドです。
「うわ、マジだマジ! 別府が泣いてる! あはははは!」
「わ、本当だ。……ちょっと母性本能くすぐるかも」
 みんなに囲まれ大変居心地が悪いです。でも半分メイドさんなので、少し嬉しい。
「別府くんどうしたの? 悲しいことがあったの? お腹空いたの?」
 先生に優しく問われるが、流石に隣の胸が薄いメイドさんが怖かったので泣いたとは言えず、答えに窮する。あと、お腹が空いても泣きません。
「お腹空いたから泣いたって」
 そんなこと一言も言ってないのに、かなみが勝手に俺を子ども扱いした。
「そうなの? じゃ、後で先生がおやつ分けてあげるね。それにしても、お腹空いて泣くなんて別府くんてば可愛い♪」
 俺より身長が低くて童顔でぺたんこな先生に、頭を撫でられながら可愛いと言われても困る。
「…………」
 何より困るのが、隣から殺気をどがどがぶつけてくるメイドさんがいることだ。怖い。
「せ、先生、授業。授業しよう」
「あ、そだね。あははっ、ついなでなでに夢中になっちゃった。……それとも、もっとしてほしい?」
「は……いやいやいや。授業しましょ、授業」
 頷きそうになったが、殺気が増したので慌てて否定する。
「ざーんねん。じゃ、はじめるねー」
 そう言って、先生は出席を取り始めた。小声で隣のかなみに話しかける。
「あのな、かなみ。誰が腹減って泣いた、だ。これ以上俺の学校での地位を低くしないでくれ」
「なによ、先生に頭なでられてデレデレしてたくせに……」
「……? いや、してたとしても、それがお前に何の関係が?」
「そっ、それはその、ええと!」
 なんか急にオロオロしだした。なんだ?
「生理? 生理か? 生理なのか?」
 顔に拳が埋まりました。
「別府く……きゃああああ! べ、別府くんが鼻血出してる!?」
 またみんなに囲まれた。もう勘弁。
「じゃ、柔軟しますねー。隣の子と二人一組になってー」
 どうにかこうにか危機を脱し、先生の号令により隣のかなみとペアになってしまい柔軟を始める。
「本当、アンタって余計なことばっか言うわね……」
 地面にぺたりと座ってると、心底疲れたように言うかなみに背中を押された。
「あいたた、あんま押すな」
「うわ、アンタ体硬いわねー。ほとんど曲がってないじゃない」
「お昼のおやつに持ってきたバナナがその分曲がってくれてるから、大丈夫」
「意味分かんないわよっ!」
 俺も分からない。なんだ、大丈夫って。
「あいたた、交代だ交代。チェンジお願いします」
 ぐいぐい押されて痛いので、するりと抜け出しかなみと交代。今度は押す番だ。
「ふふん、あたしは体柔らかいわよ?」
「タコより?」
「いや、軟体動物に勝つ自信はないけど……」
「やーい、タコ未満」
「あとで殴るね♪」
 言うんじゃなかったと心底後悔しながら、かなみの背中を押す。自分で言うだけあって、頭が地面につくほどかなみの体は柔らかかった。
「おおっ、すげぇ」
「ふふん、どう?」
「さすがはメイド服と言っていいだろう。見事なものだ」
「メイド服は関係ないっ! 全部あたしの力!」
「へーほーふー……おおっ、見ろかなみ! リナの奴、体超硬いぞ? しかもふるふる震えて前に倒れようとしてるもんだから、胸もふるふると……ぷるぷると!」
 揺れる乳の動画を脳の一番大事な記憶を収める引き出しに入れてると、柔軟してたはずのかなみが俺の隣に立ってて。
「どうしましたか?」
「それが辞世の句?」
 おかしなことに、死ぬようだ。

 死にはしなかったけど、大変大変痛かったです。保健室で看病受けるくらい。
「痛いよぅ。痛いけど、メイドさんがご飯食べさせてくれるのでちょっと嬉しい自分がいじらしいよぅ」
「いっ、いちいち言うな、ばかっ! ……はい、あーん」
 怒りながらも、バナナを俺に向けるかなみでした。

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【こばんざめちなみん】

2010年04月03日
 ちなみがコバンザメになった、と言い張る。
「……こばんざめなので、仕方ないのです」
 なんて言いながら、俺にぎゅーっと抱きついてきた。
「仕方ないのか?」
「のです。……やれやれ、タカシとくっつくなんて本当は不満ですが、こばんざめなので我慢です」
 我慢です、なんて言うなら嬉しそうに笑わないで。俺までにやけてくるから。
「……何だか嬉しそうですが、勘違いは禁止です。別に好きとか、そういうのじゃないのです。こばんざめの習性として、くっつかざるを得ないのです」
「得ないのか?」
「です。……あーあ、早く大きくなって巨大鮫になり、タカシの野郎を食い散らかしたいものです」
 コバンザメは大きくなっても人食い鮫にならないことを指摘したらいいのか、抱きついてる相手に食い散らかすとか言うなと注意したらいいのか。
「……まぁ、大きくなるまでの我慢です。というわけで、ご飯食べましょう。タカシが子供のようにぽろぽろこぼすご飯を食べて、こばんざめは大きくなります」
「や、期待されてるようだけど、実は飯食うの上手でして。ここ数年飯をこぼしたことがないんだ」
「…………」
 むーっという感じで睨まれた。
「代わりに涎こぼそうか?」
「……全然まったくちっとも代わりになりません。……こうなっては仕方ありません、直接タカシから栄養を摂取するしか」
 どういうことかしばらく考えて、辿り着いた答えに思わず赤面混乱大変です!
「や、ま、待つヨロシ! それはちょっと女の子として慎みに欠けているというかいや別にちなみとそういうことしたくないといったら嘘になるけどそれは段階を踏んでというかその!」
「……何か勘違いしてるようですが、違います。……タカシにご飯を食べさせてもらうだけです」
 ああなんだ、そうなのか。俺はてっきり口移しとかそういう甘ったるいアレかと。それなら別に……いやいやいや。
「それはその、なんといいますか、……恋人っぽくて、その、ね? 分かるだろ?」
「…………」
 むーっという感じで睨まれた。
「……嫌なら、別にタカシが想像した方でも……」
「いいねぇご飯食べさせるの! 恋人式食事方法と言いますかリアス式海岸と言いますか、いいよね!」
「…………」
 三度むーっという感じで睨まれる。これ以上話をこじらせるとちなみとランデブーしかねないし、とっとと飯食おう。
 ……いや、別にちなみとランデブーするの嫌とかそういうのじゃなくて、その。
「……まぁいいです。じゃあ、ご飯食べましょう、ごはん」
「ああ、分かった」
「…………」
「…………」
「……ご飯、食べないんですか?」
「食べたいのはやまやまだが、それにはお前がのいてくれないとどうしようもない予感が」
 ちなみに抱きつかれたまま動くのは大変しんどいです。
「……むぅ、これは大問題です。ごはんも食べたいですが、今の私はこばんざめなのでタカシから離れるのは至難の業です」
「や、ちょっと離れて飯食う時にでも戻ればいいじゃん」
「……折角の休みなのに、少しでも離れるなんて嫌です」
「…………」
 なんつーことを言うかな、この娘さん。俺を殺す気か。ああもう、緩むな頬!
「……こ、こばんざめの習性として、です。……私としては別にどうでもいいんですが」
「あーうん、そうな。習性なら仕方ないな」
 鼻をつまみながらちなみの話に頷く。
「よし!」
「ひゃっ」
 気合を入れ、ちなみを抱きかかえたまま立ち上がる。
「……ちょっと、びっくりです。……ぱわふるまん、です」
「そのネーミングセンスに脱帽」
「……むっ、馬鹿にされてる気がします。えいえい、許しがたいです」
「ああこら、ひっついたまま殴るな! 落ちるぞ!」
「……落ちたら、一生恨みます」
「なんて勝手な言い草だ」
「……女の子はわがままなのです。頑張れ、男の子」
「へーへー」
 ちなみとじゃれあいながら、飯食うために台所に移動しました。結構どころか、かなり楽しい一日でした。

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【昨日の晩飯がレタスとご飯だった男とツンデレ】

2010年04月03日
「もむもむもむ。ねータカシ、ご飯食べないの?」
 昼休み、ボクっ娘が飯を食う様をじーっと眺めてると、そんなことを訊ねられた。
「もむもむ言いながら飯を食うボクっ娘に答えます。実は、昨夜さる悪事が母にばれ、夕食がレタス&ライスというダイエット中の女性もびっくりな食事が出てきたのです」
「もむもむ……」
 折角教えてやったというのに、梓はなんだか嫌そうな顔をした。
「そして今日、弁当を母にもらおうとしたら『反省してる顔じゃない』と言われ、作ってくれませんでした。しかも、学食用の金もくれない有様!」
「へー、大変だね」
 全然まったくちっとも大変そうに思ってない口調でのほほんと飯を食うボクっ娘。
「というわけで、腹が減る減る減りまくる」
「あっそー。もむもむもむ」
「……えい」
 同情を誘って飯をもらおうと思ったら、ぜーんぜん同情してくれないので勝手に梓のおかずを取る。
「あああああ! ボクのおかず取った!」
「むぐむぐ、うむ。いまいち」
「人のおかず取っといてイマイチとか言ってるよこの人!?」
「梓、ご飯は静かに食べなさい」
「誰のせいでうるさくしてるんだと思ってるんだよぉ!?」
「むしゃむしゃむしゃ。うーん、全体的に野菜が多くて困る。肉が欲しい、肉」
「全然人の話聞かないでボクのお弁当食べまくってる!? こら取るな、ボクんだぞこのお弁当!」
「だがしかし、これを作ったのは梓の母親であって、そういう意味ではこの弁当の本当の持ち主は梓ママと言えるかともぐもぐ」
「いーから食うな! タカシが食べたらボクの分なくなっちゃうだろ!」
「うーん、ノド渇いた。梓、お茶取って」
「取んないよっ! お弁当だけじゃなく、持ってきたお茶まで飲み干すつもりだろ!」
「むー……ノドが渇く渇く渇く。しゃーない、そこらの奴を襲って水筒を奪うか」
「奪うなっ! ……もー、全部飲んじゃイヤだからね?」
 梓は嫌そうな表情を浮かべながら、俺に水筒を渡した。
「任せろ!」
 キャップを開いてから水筒を傾け、期待通り一気に飲み干す。
「全部飲んじゃイヤって言ったそばから全力で飲んでる!?」
「……ぶはーっ! む、腹がたぽんたぽんだ。略してハポン……む、日本人なので間違ってない」
「全部飲むなって言ってるのに、なんで全部飲むんだよ!」
「やっぱ夏は麦茶だな」
「ちょっとはボクの話聞けッ!」
「初体験はまだです」
「そんな話してないっ! はーっ、はーっ……」
「大丈夫か? ほら、お茶飲め」
「あ、ありがと……」
 水筒を傾けるが、茶は出てこない。
「ああ、さっき飲みきったから出てくるわけないな。はっはっは」
「うう……ううううう、ううううう~!」
「ん? うが多いな。どうした梓?」
「タカシのばか! いじめっこ! ロリペド野郎!」
 最後の悪口で大ダメージ。
「なんでボクのご飯全部食べちゃうんだよ! ボクお腹空いたよ! ぐーぐーだよ、はらぺこさんだよ!」
「やーい、はらぺこキャラ」
「誰のせいではらぺこキャラになったと思ってるんだよ! どうしてくれるんだよ!」
「むー……梓、今いくら持ってる?」
「教えな……かったら、勝手にボクの財布取りそうだから教える」
 随分と信用されてなかった。
「えーと……今日は200円しか持ってきてない」
「ふむ。梓の200円と俺の全財産50円、ふたつ合わせたら学食でなんか食えるだろ」
「タカシ、全財産50円しかないんだ……」
「うっさい。ほれ、早く行かないと5限始まるぞ。急げ急げ」
「ぼ、ボクまだ行くって言ってないよ! こら引っ張るな!」
 梓を引っ張って学食へ行く──が、250円では一品しか買えない。買えないなら、感動の名作に倣おう。
「なんでボクがタカシと一緒に……」
「ずるずるずる。黙って食え」
「うー……」
 一杯のかけそばならぬ、一杯のラーメンを梓と一緒に分け合って食う。目の前に顔の赤い奴がいたら、大変食いにくい事を学習した。

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