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2019年10月18日
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【ツンデレにお前って料理下手だよなって言ったら】

2010年04月04日
「かなみ、お前って料理下手だよな」
 かなみの手が伸びたかと思うと、俺の首にまとわりついて万力になった。
「下手? 下手って言った?」
「ち、違います違います! 上手、極めて上手と!」
 死の危険を感じたので、慌ててへりくだる。かなみの手が離れたのを確認してから、そっとため息をつく。
「最初っからそう言いなさいよね、もう。せっかくお弁当作ってやったんだからさ」
「や、照れ臭くてね。つい」
「……てっ、照れる必要なんかないわよ! そ、その、おばさんに頼まれたから! 出張でしばらく家を空ける間だけって頼まれたから! それだけだから!」
「もぐもぐ、うーんまずい。特にこのホウレン草が泣けるほどまずい」
「聞いてない上に侮辱を!?」
 ホウレン草の御浸しの味を確かめていたら、なんか頬つねられた。
「……ほっぺ痛い」
「うっさい!」
「もぐもぐもぐ。なーかなみ、お前も不確定ながら女の子なんだから料理の勉強したらどうだ?」
「生まれた時に確定してるわよ! 料理も上手だから勉強する必要なし! ホンット、失礼な奴ねぇ……」
「いや、でもほら、その、ええと、だな。この味を好む人物を探すのは、少しばかり骨が折れる作業かと思ったりなんかしちゃったり」
「……なによ、まずいって言うの?」
「そう、その通ぐげっ」
 本当のことを言うと殴られる。
「……ふん、いいわよいいわよ。どーせまずいわよ。……嘘でもいいから、ちょっとくらい美味しいって言いなさいよ、馬鹿」
「むしゃむしゃ、まずい」
「こんだけ言ってるんだから美味いって言え!」
「こ、怖い」
「美味いよ、うまい! 怖がってどうすんのよ!」
 うふふ、だってかなみさんったら膀胱が破裂しそうなほど怖いんですもの。(半泣き)
「ほら、一言でいいからさ。う・ま・い、って」
「ま・ず・いぃぃぃぃぃ」
 後半言葉が伸びたのは、首を絞められているからです。
「嘘でもいいから褒めろッ!」
「暴力で言葉を強制させるかなみは、とても男らしいです。それはもう惚れ惚れするくらい」
「嬉しくないっ! 料理を褒めるの、りょーり!」
「個性的と言うには、その言葉の範疇に収まりきれないこの料理はどうだ。もはや味の暴力と言っても過言ではないかと」
「うーあーうーっ!」
 両の頬を引っ張られ、かなみが声を上げるたびにどんどん頬が伸びて大変なことに。
「アンタ、馬鹿にしすぎ! 作ってもらっておいてその態度はなによっ!」
「馬鹿にしたつもりはないんだが……あと、弁当作ってくれるのは純粋に感謝してるぞ」
「じゃあちょっとくらい褒めなさいよ。『美味しい』とか『こんな弁当食べれるなんて、俺はなんて幸せ者なんだ』とか『嫁に欲しいくらいだ』とか、とか!」
 最後の台詞にちょっとばかり待ったをかけたいが、なんか自分で言ってて気づいてないようだしスルーで。
「嘘は嫌いなんです」
「ちょっとくらいいいじゃん、ばかー!」
「もぐもぐもぐ。うーん、まずい」
「ううううう……もういいわよ、馬鹿!」
 かなみは俺に背を向けてしまった。
「まぁまぁ。練習すりゃすぐ上手に……うん?」
 かなみを慰めながら口にした玉子焼きに、小さな違和感。……あれ、美味しい?
「かなみーかなみーかなかなみー」
「うるわいわね、何よッ!」
「玉子焼き、うまいぞ。いや、これだけはホントうまい」
 振り向いたかなみに、素直な言葉をぶつける。途端、かなみの顔が綻んだ。
「えっ、ホント? あははっ、それだけは頑張って練習したんだ。よかった、美味しかったんだ」
「うん、おいしい。ところで、なんでこれだけ練習……あ」
 そーいや、玉子焼きって俺の好物だよな。もしかして、それ知ってて練習を……?
「なっ、なに勘違いしてるか知んないけどね、そんなんじゃないからね!」
「じゃあ、どんなんだ?」
「うっ……うるさいっ! 黙って食べろっ!」
 顔を真っ赤にしてうつむいてるかなみを眺めながら、玉子焼きだけがやけに美味い弁当を残らず食べました。

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