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2019年10月15日
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【魔法で嘘がつけなくなったタカシ】

2010年04月04日
 学校から帰ってると、杖持ったコスプレ娘に襲われた。
「悪人成敗! 私ってばサイコー♪」
 頭のおかしな娘のほっぺを引っ張って何をしたのか聞くと、魔法で嘘をつけなくした、と。
「わ、悪い人から嘘を取ったらいい人になるし! いいじゃない、これくらい!」
「自分を呪ってろ、ばか」
「何よ、その言い方じゃまるで私が悪人みたいじゃない! 第一、呪いじゃなくて魔法よ、魔法!」
「うっさい。いきなり初対面の相手を呪う奴が、悪人じゃないとでも?」
「う、うう……悪人に口じゃ勝てない! えぇーい、ぴんくるぽんくる、死ねぇッ!」
 死ねと言いながら杖を振りかぶる姿を最後に、意識が途絶える。
 気がついたら道端で倒れてて残念無念、逃げられた。次見つけたら肉奴隷にしてやる。
「……といったことが昨日会ったのですよ、ボクっ娘さん」
「へー、そうなんだ。あと、ボクっ娘とか言うな」
 昨日の変人とのいざこざを梓に伝えると、そっけない返事が返ってきた。
「それで、本当に嘘がつけなくなったの?」
「信じられないが、そうなのだ。梓はかなりのお馬鹿。……な? 俺の口からは真実しか出ない」
「それ嘘だよ! ボクは賢いよ! アインシュタインもびっくりだよ!」
「では賢い賢い梓たん、円周率を100桁暗唱してください」
「えっ、ええっ!? さ、3.14……ええと、ええと」
「まだ三桁ですが」
「……およそ3!」
 近代数学を揺るがす答えが出た。
「だいたいさ、タカシは答え知ってるの?」
「……およそ3」
「ほーら、人のこと言えないじゃん」
 む、ボクっ娘のくせに小憎たらしい。鼻つまんでやれ。
「ひゃ、ひゃふ~」
「ひゃふーって言った」
 ひゃふーに満足したので手を放すと、猛烈な勢いで抗議してきた。
「ひゃふーとも言うよ! なんで鼻つまむんだよ!」
「エロスに魅入られし者と呼称される俺とはいえ、流石に学校で乳首をつまむのは抵抗が」
「どこでもつまんじゃダメだよっ! えっちなこと言うな、ばかっ!」
「む、梓相手だとつい。ごめんな、梓」
 軽口を叩いて馬鹿にするつもりが、呪いの効果か思ったことがそのまま口に出てしまった。このままでは梓をつけ上がらせてしまう、どうにかせねば!
「え、あ……うん、反省してるならいいんだよ、うん」
 ……つけあがる、と思ったのだけど。梓ったらなんかコクコク頷いて、変なの。
「コクコク頷く梓は、なんか可愛いなぁ」
 ……いやいや。何言ってんだ、俺?
「え、あ、……う」
「む、照れてる顔もいいなぁ。梓は本当に可愛いなぁ」
 いやいやいや! 違う、違うって! 違うんですよ、俺はそんなキャラじゃないですよ!? 畜生、呪いか、呪いなのか!?
「……タカシってさ、本当はそんなこと思ってたんだ?」
「うむ。正直、お前にメロメロ」
 いやいや、いやいやいや! やめて、誰か俺の口を止めて! コスプレ娘さん悪かったです、お願いだから呪い解いて!
「め、メロメロって……ぐ、具体的に?」
「す、す……」
 史上稀に見るほどの意志力で言葉を止める。これはダメ、ダメ絶対!
「……す?」
「す、す、す……すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッッ!!!」
「うわぁっ、タカシ、タカシ!?」
 意志力と呪いが拮抗し、オーバーロードで電源OFF。ぱったり倒れた模様です。

「……あー、しんど」
 見知らぬ天井、ではなく見知った天井。保健室の天井。保健室の天丼だったら怖いなぁ。怖いけど天丼食べたいなぁ。美味しいよね、天丼。
「……天丼はどうでもいい。まさか梓にあんなこと言いかけるとは……」
「天丼?」
「うわらばっ!?」
 閉められていたカーテンが開けられ、梓が顔を出したので大変驚くと共に変な声が出た。
「うわらば? それよりさ、いきなり倒れないでよね。ここまで運んでくるの、大変だったんだよ」
「あ、ああ……ごめん」
「別にいいケドさ。……それでさ、その、……倒れる前に言いかけたことって、さ」
 む、俺の第七感、いわゆるセブンセンシズがビンビン訴えかけている。「誤魔化せ」と!
「好きってことだ!」
 うわーん、呪いのばかー。
「…………」
 ほら見ろ、ほら見ろ! うつむいてるじゃん! 困ってるじゃん! 今からでも遅くない、誤魔化せ!
「す、好きと言っても、ほら、色々あるじゃん? こ、この好きは、その、愛と! 愛しいと! そう言っていいかと!」
 うわーん、呪いのばかー。いや、マジで。勘弁して。
「……うー」
 ほらほらほら! うーとか言ってるじゃん! あんま人ってうーって言わないじゃん! 明らかに困ってるじゃん! あーもーだから言いたくなかったのに畜生め!
「でででも、その、梓が困るなら俺としては一向に気にしないというか別に今まで通り友達でいいしその関係を途絶されるのだけは勘弁というか」
「…………」
「……あ、あの、友達もダメ?」
 なんてこった。こんなことで、こんな訳の分からない呪いなんかで俺は梓を失うのか。
 ……ああ、これが足元がなくなる感覚って言うんだな。まるで地の底に落ちて行くようだ。
「……えへ、えへへ」
 人が奈落に落ちてるってのに、梓は何やら嬉しそうな声をあげた。
「……なんだよ、そんな友達じゃなくなるのが嬉しいのか?」
「違うよ。そうじゃなくて……えと、……両想い、カナ?」
 そう言って、梓ははにかみながら俺の手をきゅっと握った。
「…………」
 いま、なんて? 俺の頭が都合よく梓の言葉を捻じ曲げたのでないのなら、……両想い、と? 本当にそう言った?
「えへー」
 ……言ったな。この満面の笑みを見てると、それだけで実感できる。
「えへえへ言うな。変な奴」
「へ、変じゃないよ! 嬉しい時は笑うもんだよ! それに、タカシも笑ってるじゃん」
「うぇっ、嘘!?」
 自分の顔をさする。……む、頬がにやけきってやがる。だらしない頬め。
「ね、ね? ……えへー」
「えへえへ言うな。変な奴」
「し、仕方ないじゃん! ……嬉しいんだもん」
 そう言って少し恥ずかしそうに頬を染める梓に、俺は抗う術を持ってなかった。
「あー……なんだ、その、……俺も嬉しい……ような気がしないような気がするような予感がないわけでもないような」
「長いよ、長すぎるよ! ……もっと簡潔に、ね?」
 優しく微笑んで、俺の手を柔らかく握る梓。
「……あー、その、俺も嬉しい。梓とこれからも一緒に話をできることが、嬉しくて仕方ない」
 ……呪われてなきゃ、意地でも言わなかっただろうな。そういう意味では、あのコスプレ女に感謝かな。
「……あ、あのね、ボク……なんかね、……その、もっとタカシに引っ付きたいんだけど……いいカナ?」
「梓に頼まれて、断れる男がいるだろうか」
「ボクは、タカシとしかくっつきたくないよ」
「む……ど、どうぞ」
 ええぃ、なんでこう俺を喜ばせることばかり言うかね、このボクっ娘は。
 緩みまくる頬をそのままに、ベッドの脇に寄ってスペースを空ける。その空間に梓はそっと座った。
「……暖かいね」
「夏だからな」
「そうじゃなくて! ……もう、空気読んでよ」
「んーと……こう、かな?」
「あ……」
 梓の方に体ごと向き直り、そっと近づく。自分の心音が、工事現場の騒音になったかのようだ。
「梓、そ、その、目閉じて……」
「ん……」

「んー、やっぱ悪を更生させるのは愛の力よね♪」
「ああっ、てめぇ頭のおかしいコスプレ娘!」
 折角いい雰囲気だと言うのに、昨日の娘が窓から覗いて全て台無しにしやがった。
「頭おかしくないし、コスプレじゃないっ!」
「んなこたぁどうでもいい! 呪い解け、呪い! これのせいで俺はボクっ娘なんかに告白する羽目になっちまったじゃねぇか!」
「キスしようとした相手に向かって羽目って言った!?」
 梓が何かショックを受けてるが、それどころではない。
「だーいじょーぶよ。24時間経ったら戻るから。あーもう戻ったかな? これで前みたいに嘘つきほーだいだよ。でも、ま、今のキミは恋人がいるし嘘つかないよね」
「好きだッ!」
「うひゃあああ!?」
 ためしに窓まで突撃し、目の前の頭おかしいコスプレ娘に抱きつく。うむ、嘘可能!
「よし、これでこそいつもの俺だ! 祝ってくれ、あず……梓?」
「……恋人の目の前で、ボクじゃない子に好きって言った。好きって言って、抱きついた!」
「あ、いや、違う、違うんだよ? これはその、実験というかお試しというか、その」
「ま、まーアレよね、私の魅力に誰しもメロメロ?」
 人が必死で言い訳してるってのに、勘違い娘がとんちんかんな事を言いだして場を混乱させた。
「メロンパンおいしい」
「訳わかんないこと言うな! しかも美味しいとか言いながら、ボク以外の子のほっぺ舐めてる!?」
 混乱しているのは場ではなく、俺のようだ。ほっぺはすべすべでなんかおいしい。
「あ、あは……もしかして、私惚れられちゃった? きゃーっ! どうしようどうしよう!」
 勘違い娘の本領発揮により、梓の怒気が超パワーアップ。超泣きそう。
「告白したそのすぐ後に、ボク以外の子に抱きついて、あまつさえほっぺにちゅーするなんて……タカシの、タカシの浮気者ぉぉぉぉぉ!」
「へぐっ!?」
 梓のとんでもない勢いの地獄突きが俺のノドにクリーンヒット。ダルマ落としみたいに首だけ取れるかと思った。
「今日の告白は、なしっ! また後日やり直すようにっ!」
「えええええっ!? 馬鹿な、あんなこっ恥ずかしい真似二度もできるかっ!」
「うるさいうるさいうるさいっ! ボク以外の子とイチャイチャした罰だよっ! めーれーだかんね、めーれー!」
 とんでもない罰を残して、梓は保健室から出て行ってしまった。
「う……ううううう、どうしてくれんだよ、コスプレ女っ!」
「コスプレじゃないわよっ! だいたい、あの子に告白できたのは私の魔法のおかげでしょ? 感謝される覚えはあっても、恨まれる覚えはないわよ!」
「ええいうるさい! なんかこう、別の呪いはないのか? 何も言わなくても想いが伝わる呪いとか、他の部族を根絶やしにする呪いとか」
「本当の呪いが混じってるわよ!」
「む、しまった。ともかく、なんかないのか?」
「ないわよ! 自分で頑張ることね。それじゃ、あでゅー♪」
 あでゅーとか言って、コスプレ女は最初からいなかったかのようにその場から消えた。
 あんな恥ずかしいことを、もう一度。想像するのも勘弁願いたい。願いたいが……。
「……梓には代えられないか」
 頭の中でリハーサルを行いながら、俺は保健室を出た。

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