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2026年03月20日
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【ボクっ娘にお前の好きな物を三つあげよって聞いたら】
2010年02月16日
もうすぐボクっ娘の誕生日だ。いつも適当にプレゼント買っているのだが、今年は何がいいか本人に聞いてみよう。
「なあ少年、おまいの好きなものを三つあげてみてはどうだろうか」
「少年じゃないよ、少女だよっ!」
「そんな瑣末事はいい。ほれ、言え」
「瑣末じゃないのに……ええと、ボクが好きなのはタカ」
「鷹?」
「……じゃじゃじゃ、じゃなくてっ!」
突然、ボクっ娘の顔がりんごみたいに真っ赤になった。
「何を赤くなっている」
「なってない、なってないよ!? あ、あははっ、気にすんなよ!」
「分かった、全力で気にする」
「何一つ分かってないよこの人!? そ、そんなことよりボクの好きなものだろ? 言うからそっちを気にしてはどうかにゃ?」
「可愛く媚びられてはそちらに気を向けるしかあるまい。ほれ、言え」
媚ぱぅわーに引き寄せられ、梓の頭をなでなでしながら訊ねる。
「わふわふ♪」(嬉しそう)
「わふわふはいいから」
「うっ、うるさいなあ……タカシになでられると言っちゃうんだよ、なんか」
「じゃあ今後絶対になでない。それがお前へのプレゼントの一つだ。よかったな、梓!」
「……わ、わぁーい」
地獄に落ちたみたいな顔で喜ぶ梓。
「しかし、お前を喜ばせるのはつまらないのでやっぱやめ。今後もお前の頭をなで続ける」
「えっ……こ、困ったなあ、もー。ほんっと、タカシってばいぢわるで嫌な奴だね♪」
満面の笑みで俺をなじる梓。変な奴。
「それはそれとして、好きなものを三つ言え」
「えぇと、タカ……じゃ、じゃなくて! もうっ、それはいいの! 学習しろ、ボク!」
「学習とかボクっ娘には無理だ」
「タカシつっこみが冷たすぎるよ! 愛情がないよ、愛情が!」
「代わりにあんぱんならある」
「なんで……?」
懐から取り出したあんぱんを渡すと、梓は不思議そうな顔をしつつかぶりついた。
「まふっ。あ、おいし」
「俺の非常食。しかし、梓が食べてしまったので非常時にはお前を食べる」
「ボクの知り合いが食人鬼に成り果てた!?」
「いや、性的な意味合いで」
ややあって、梓の頭から湯気が出た。
「たたたたっ、タカシのえっちえっちえっち! なっ、なんだよ、性的な意味合いって! いや説明しないでよ! タカシのことだから嬉々として事細かに説明するだろうからっ!」
期待に応える。
「説明するなって言ってるのになんで説明すんだよっ、ばかっ!」
ド赤面&涙目で梓は俺をぽかぽか叩いた。
「なぜ好きな物を聞くだけでこんな大騒ぎになるのだ……?」
「もーっ! もーっ! もーっ!」
ぽこぽこ叩かれること数分、梓が落ち着いたのを見計らって口を開く。
「で。そろそろ好きなものを聞きたいのだが」
これだけ話しても未だに一つも聞き出せないことに、我ながら驚く。どれだけ脱線してんだ。
「えーと……くまさん、かな」
「くま……くまの手……熊手か。ホームセンターに売ってるかな」
「勝手に連想されて熊手が好きな変な子にされた!? 違うよ、ボクが好きなのは熊手じゃなくて、くまさんだよ! 冬眠する方!」
「冬眠する熊手……? バイオの力を駆使すれば、どうにかなるか?」
「バイオとかいいの! くま! 手はいらないの! くまのぬいぐるみとか喜ぶ所存だよ!」
「じゃあ、くまのぬいぐるみ(手なし)を今度プレゼントするよ」
「かっこの中が余計だよっ! 手はいらないってのはそういう意味じゃない! そんなぬいぐるみ嫌だよ、なんか呪われてそうだよ!」
「いやいや、呪われてなんてないぞ。ちょっと夜中に『手……オレの手はどこだ……』って呟きながらうろうろする機能がついてるだけだ」
「それを呪いって言うんだよっ!」
その後も話は続いたが、結局何一つ決まらなかった。
「ううう……ふつーに話せば5分で済むことが、なんでタカシが相手だと何時間経っても終わらないの?」
「無駄話のしすぎだな。俺と梓、単品なら問題ないが、二人が化学反応を起こすと無駄話が生まれてしまう。いわば、二人の愛の結晶」
「そ、そんな結晶嬉しくないよっ!」
とか言いながら、ちょっとにやけてる梓だった。
「なあ少年、おまいの好きなものを三つあげてみてはどうだろうか」
「少年じゃないよ、少女だよっ!」
「そんな瑣末事はいい。ほれ、言え」
「瑣末じゃないのに……ええと、ボクが好きなのはタカ」
「鷹?」
「……じゃじゃじゃ、じゃなくてっ!」
突然、ボクっ娘の顔がりんごみたいに真っ赤になった。
「何を赤くなっている」
「なってない、なってないよ!? あ、あははっ、気にすんなよ!」
「分かった、全力で気にする」
「何一つ分かってないよこの人!? そ、そんなことよりボクの好きなものだろ? 言うからそっちを気にしてはどうかにゃ?」
「可愛く媚びられてはそちらに気を向けるしかあるまい。ほれ、言え」
媚ぱぅわーに引き寄せられ、梓の頭をなでなでしながら訊ねる。
「わふわふ♪」(嬉しそう)
「わふわふはいいから」
「うっ、うるさいなあ……タカシになでられると言っちゃうんだよ、なんか」
「じゃあ今後絶対になでない。それがお前へのプレゼントの一つだ。よかったな、梓!」
「……わ、わぁーい」
地獄に落ちたみたいな顔で喜ぶ梓。
「しかし、お前を喜ばせるのはつまらないのでやっぱやめ。今後もお前の頭をなで続ける」
「えっ……こ、困ったなあ、もー。ほんっと、タカシってばいぢわるで嫌な奴だね♪」
満面の笑みで俺をなじる梓。変な奴。
「それはそれとして、好きなものを三つ言え」
「えぇと、タカ……じゃ、じゃなくて! もうっ、それはいいの! 学習しろ、ボク!」
「学習とかボクっ娘には無理だ」
「タカシつっこみが冷たすぎるよ! 愛情がないよ、愛情が!」
「代わりにあんぱんならある」
「なんで……?」
懐から取り出したあんぱんを渡すと、梓は不思議そうな顔をしつつかぶりついた。
「まふっ。あ、おいし」
「俺の非常食。しかし、梓が食べてしまったので非常時にはお前を食べる」
「ボクの知り合いが食人鬼に成り果てた!?」
「いや、性的な意味合いで」
ややあって、梓の頭から湯気が出た。
「たたたたっ、タカシのえっちえっちえっち! なっ、なんだよ、性的な意味合いって! いや説明しないでよ! タカシのことだから嬉々として事細かに説明するだろうからっ!」
期待に応える。
「説明するなって言ってるのになんで説明すんだよっ、ばかっ!」
ド赤面&涙目で梓は俺をぽかぽか叩いた。
「なぜ好きな物を聞くだけでこんな大騒ぎになるのだ……?」
「もーっ! もーっ! もーっ!」
ぽこぽこ叩かれること数分、梓が落ち着いたのを見計らって口を開く。
「で。そろそろ好きなものを聞きたいのだが」
これだけ話しても未だに一つも聞き出せないことに、我ながら驚く。どれだけ脱線してんだ。
「えーと……くまさん、かな」
「くま……くまの手……熊手か。ホームセンターに売ってるかな」
「勝手に連想されて熊手が好きな変な子にされた!? 違うよ、ボクが好きなのは熊手じゃなくて、くまさんだよ! 冬眠する方!」
「冬眠する熊手……? バイオの力を駆使すれば、どうにかなるか?」
「バイオとかいいの! くま! 手はいらないの! くまのぬいぐるみとか喜ぶ所存だよ!」
「じゃあ、くまのぬいぐるみ(手なし)を今度プレゼントするよ」
「かっこの中が余計だよっ! 手はいらないってのはそういう意味じゃない! そんなぬいぐるみ嫌だよ、なんか呪われてそうだよ!」
「いやいや、呪われてなんてないぞ。ちょっと夜中に『手……オレの手はどこだ……』って呟きながらうろうろする機能がついてるだけだ」
「それを呪いって言うんだよっ!」
その後も話は続いたが、結局何一つ決まらなかった。
「ううう……ふつーに話せば5分で済むことが、なんでタカシが相手だと何時間経っても終わらないの?」
「無駄話のしすぎだな。俺と梓、単品なら問題ないが、二人が化学反応を起こすと無駄話が生まれてしまう。いわば、二人の愛の結晶」
「そ、そんな結晶嬉しくないよっ!」
とか言いながら、ちょっとにやけてる梓だった。
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【星を見て綺麗と言ったツンデレにお前のほうが……って言ったら】
2010年02月15日
部活をしていたら腹が減ったので部活の面子と一緒にラーメンを食いつつだべってたら、随分と遅くなってしまった。現在夜の8時、子供は帰る時間です。男子として、女子を送らねば。
「流石にこんな時間だし、送ってくよ」
男子連中が女の子たちを送ろうと打診している中、帰る方向が一緒ということで、俺もみことにその旨を伝える。
「結構だ。むしろ、貴様に送られる方が不安だ」
人の善意をごく自然に踏みにじるみこと嬢。人をなんだと思ってやがる。
「何もしないよ。本当だよ。きっとしないという噂だよ。もししたら、罰としてしっぺしてもいいよ」
「なんだその罰は! 何かする気満々ではないか! 絶対に貴様などに送ってなどもらわん!」
みことは一人でとっとと歩き出してしまった。友人たちに別れの挨拶を告げてから、慌てて追いかける。
「待て、待てって。冗談に決まっとろーが。お前みたいなのでも女の子なんだから、一人で帰るな、馬鹿」
早足でみことの元まで走り、隣を歩く。
「馬鹿は貴様だ、馬鹿」
「ばかって言う方がばかなんですー」
「子供か」
「ストライクポイントが? まあ、そうなんですが! そういえばみことも子供体型で嬉しい限りですねウヒヒヒヒ」
無言で鼻っ柱を殴られ鼻血が止まらないが、一緒に帰ることはなんとか許可を頂いた。
「はぁ……まったく、どうして貴様はそんなに変態なのだろうな」
「いや、俺が特別変態というわけではないと思うぞ。ただ、俺が人より心のうちをポンポン言うので変態扱いされるんじゃないか?」
鼻にティッシュを詰めつつ、そんなことを言ってみる。
「分かっているなら自重しろ、変態」
「みことに嘘をつくのは嫌なんだ」
「んなっ……きっ、貴様はなんでそういうことをさらっと……この、ばかっ!」
「痛い痛い痛い!」
なんか知らんがみことが赤い顔で俺を攻撃するので痛い。
「むー……」
「なんで殴ったお前が不服そうなんだよ……」
「うるさいっ、ばかっ!」
なんか何を言っても殴られるので、黙って歩く。口を開くと怒られるので、なんとはなしに空を見上げる。ぽつぽつとだが、星が瞬いていた。
「……こんな住宅街でも、結構星が見えるものなのだな」
そのまましばらく星を眺めながら歩いてたら、俺にならって星を見ていたみことがぽつりとつぶやいた。
「そだな。ほら、あの星なんてはっきり見えるぞ」
「ああ、あれはデネブだな」
「あー。なんか、昔習ったような」
「その隣がベガ、その隣がアルタイル。この三つを夏の大三角形という」
まるで先生のような口ぶりに、思わず口元が緩む。
「な、なんだ。……どうせ、私が星の名前を知ってるなんて、似合わないとでも言いたいのだろう」
「や、そうじゃなくて」
「ふん。いいじゃないか、私が星に詳しくても」
みことはぷいっと顔を背けてしまった。うーむ、誤解なんだがなあ。
「……私のような人間でも、星を見て綺麗と思う心はある」
「……そだな。確かに星は綺麗だな」
けど、と言って、一旦言葉を止める。……うむ、ちょっと照れ臭いが、言っちゃおう。
「お前の方が綺麗……だと、思う」
隣の人物がえらい勢いでこっちを向く気配があるが、こっちはこっちでえらい勢いでそっぽを向いたので確認できないし、したくもない。
「……は、恥ずかしい事を言う奴だな、お前は」
「いや、全く。らしくもないが、嘘を言った覚えはない」
「……う、うー」
唸り声がしたかと思ったら、服の裾を掴まれた。
「恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め」
そんな声と共に、腹あたりをぐりぐりされる感覚。たぶん、頭をぐりぐり押し付けられているのだと思うが、ちょっとわけありで視線が明後日の方向に固定されているので確認できません。
「何度も何度も言うな。自覚はしてるんだから」
「……うー」
うーうー唸り続けるみことを連れ、夜道を散歩するかのようにゆっくりゆっくり帰った。結局最後まで目を合わせられませんでした。
「流石にこんな時間だし、送ってくよ」
男子連中が女の子たちを送ろうと打診している中、帰る方向が一緒ということで、俺もみことにその旨を伝える。
「結構だ。むしろ、貴様に送られる方が不安だ」
人の善意をごく自然に踏みにじるみこと嬢。人をなんだと思ってやがる。
「何もしないよ。本当だよ。きっとしないという噂だよ。もししたら、罰としてしっぺしてもいいよ」
「なんだその罰は! 何かする気満々ではないか! 絶対に貴様などに送ってなどもらわん!」
みことは一人でとっとと歩き出してしまった。友人たちに別れの挨拶を告げてから、慌てて追いかける。
「待て、待てって。冗談に決まっとろーが。お前みたいなのでも女の子なんだから、一人で帰るな、馬鹿」
早足でみことの元まで走り、隣を歩く。
「馬鹿は貴様だ、馬鹿」
「ばかって言う方がばかなんですー」
「子供か」
「ストライクポイントが? まあ、そうなんですが! そういえばみことも子供体型で嬉しい限りですねウヒヒヒヒ」
無言で鼻っ柱を殴られ鼻血が止まらないが、一緒に帰ることはなんとか許可を頂いた。
「はぁ……まったく、どうして貴様はそんなに変態なのだろうな」
「いや、俺が特別変態というわけではないと思うぞ。ただ、俺が人より心のうちをポンポン言うので変態扱いされるんじゃないか?」
鼻にティッシュを詰めつつ、そんなことを言ってみる。
「分かっているなら自重しろ、変態」
「みことに嘘をつくのは嫌なんだ」
「んなっ……きっ、貴様はなんでそういうことをさらっと……この、ばかっ!」
「痛い痛い痛い!」
なんか知らんがみことが赤い顔で俺を攻撃するので痛い。
「むー……」
「なんで殴ったお前が不服そうなんだよ……」
「うるさいっ、ばかっ!」
なんか何を言っても殴られるので、黙って歩く。口を開くと怒られるので、なんとはなしに空を見上げる。ぽつぽつとだが、星が瞬いていた。
「……こんな住宅街でも、結構星が見えるものなのだな」
そのまましばらく星を眺めながら歩いてたら、俺にならって星を見ていたみことがぽつりとつぶやいた。
「そだな。ほら、あの星なんてはっきり見えるぞ」
「ああ、あれはデネブだな」
「あー。なんか、昔習ったような」
「その隣がベガ、その隣がアルタイル。この三つを夏の大三角形という」
まるで先生のような口ぶりに、思わず口元が緩む。
「な、なんだ。……どうせ、私が星の名前を知ってるなんて、似合わないとでも言いたいのだろう」
「や、そうじゃなくて」
「ふん。いいじゃないか、私が星に詳しくても」
みことはぷいっと顔を背けてしまった。うーむ、誤解なんだがなあ。
「……私のような人間でも、星を見て綺麗と思う心はある」
「……そだな。確かに星は綺麗だな」
けど、と言って、一旦言葉を止める。……うむ、ちょっと照れ臭いが、言っちゃおう。
「お前の方が綺麗……だと、思う」
隣の人物がえらい勢いでこっちを向く気配があるが、こっちはこっちでえらい勢いでそっぽを向いたので確認できないし、したくもない。
「……は、恥ずかしい事を言う奴だな、お前は」
「いや、全く。らしくもないが、嘘を言った覚えはない」
「……う、うー」
唸り声がしたかと思ったら、服の裾を掴まれた。
「恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め。恥ずかしい奴め」
そんな声と共に、腹あたりをぐりぐりされる感覚。たぶん、頭をぐりぐり押し付けられているのだと思うが、ちょっとわけありで視線が明後日の方向に固定されているので確認できません。
「何度も何度も言うな。自覚はしてるんだから」
「……うー」
うーうー唸り続けるみことを連れ、夜道を散歩するかのようにゆっくりゆっくり帰った。結局最後まで目を合わせられませんでした。
【ツンデレ喫茶で働く事になったボクっ娘】
2010年02月15日
梓がバイトを紹介してくれと言うので、ツンデレ喫茶を紹介してやった。
「なんだってよりにもよってこんなところ紹介すんだよ……」
「職業に貴賎はないぞ? あと汽船もない」
「意味わかんないよッ!」
「いや、アレだ、こう……汽船の……蒸気が、こう、……ぽっぽー?」
「適当に言ったのを無理につなげようとするな、ばかっ!」
そんなわけで、今日は梓の初バイトです。様子を見に行ってみよう。ドアを開けて店内に入る。
「何しに来たの?」
入るなりいきなり出迎えてくれたウェイトレスさんが暴言を吐くので、ちょっと面食らう。
「いや、その、喫茶店だし、汁気の物をすすりに」
店員さんは一瞬怪訝な顔をした後、いいからそこに座れと言って俺を近くのテーブルに案内した。
……ううむ、想像してたのと違うな。なんちうか、思いっきりマニュアルって感じだな。梓は大丈夫だろうか。
ぼやーっと待ってると、ウエイトレスさんが注文を取りに来た。……ん、梓じゃん。いつものボーイッシュな格好とは違い、今日はメイドさん装備に身を包んでおり、ムネキュンな感じだ。
「あ、タカシだ! ……あ、えへんえへん。何にするの? 早く決めてよね」
梓は一瞬だけ顔を綻ばせたが、すぐに顔を引き締め、嫌そうに俺に注文を促した。
「偉そうだから、帰ったら物凄い罰ゲーム」
「えええっ!? で、でも、仕事だからこーゆー対応しないと、店長さんに怒られ……」
「罰ゲーム」
「あ、あぅぅ……」
泣きそうな顔に満足したので、とりあえず注文する。
「ええと、もんじゃ焼き」
「喫茶店なんだから、そんなのないよ! ……食べたいんだったら、帰ってから作ろっか?」
他の人にばれないよう、梓はこそこそっと俺に耳打ちした。
「お、マジ? じゃあ頼む」
「お任せだよ♪ ……で、それはそれとして、注文なに? 早く決めてよね」
「んーと、果汁100%のコーラ」
「か、果汁!? コーラの果汁ってなんだろ……」
「そりゃ、黒い汁なんだから……黒い果実? 果実……じゃなくて、虫? 黒い虫……ゴキブリの絞り」
「すとーーーーーーっぷ! これから先コーラ飲めなくなっちゃうから、それ以上その嘘を言うの禁止!」
「どっちにしろ、炭酸飲めないじゃん、お前」
「う……お、大人になったら飲めるもん! ボクが大人になる頃には、しゅわしゅわするのなくなってるかもしんないし!」
それはもう炭酸ではない。
「まあなんでもいいや、コーラ頂戴」
「ん、分かったよ……じゃないや、しょうがないからやったげる」
ムカつくタイプの口調なので、こめかみを拳でぐりぐりする。
「あぅぅぅぅーっ! し、仕事だもん、マニュアルだもん! 怒られてもしょうがないもん!」
「マニュアルだかなんだか知らないが、俺様相手にそんな口を利くとは……今日の罰は凄そうだな」
「あ、あぅぅ……」
すっかりしょげかえった梓を見送り、しばし待つ。ほどなく、梓がコーラを持ってやってきた。
「はい、コーラです。……さっさと飲んで早く帰ってよね!」
「…………」
「あ、あの、ま、まにゅある、マニュアルだから……あ、あぅぅ」
とても怖い顔をしたら、とてもとても怯えられた。
とにかく、ここはダメだ。俺の肌に合わない。とっとと帰ろう。コーラを5秒で飲み干し、席を立つ。
「んじゃ、俺帰るな。バイト頑張れよ」
「あっ……うんっ!」
頭を軽くなでると、梓は顔を輝かせた。犬属性め。素敵だぞ。
レジで金を払い、店から出ようとしたら、店員さんが呼び止めた。
「いっぱい酷いこと言っちゃったけど、また来てくれるよね?」
死んだ魚のような目でそんなことを言う店員さんに、俺は会釈だけしてそこから逃げ出した。
「おじゃまします! あー疲れた! もー嫌だよあの店!」
喫茶店から帰った後、部屋でぼやーっと漫画読んでたら、バイトを終えた梓が入ってきた。
「お疲れ」
「まったくだよ。来るお客さんみんなボクがなんか言う度にニヤニヤして、なんか……あーっ、もーっ!」
ベッドに倒れこみ、その場で泳ぐように梓は手をばたつかせた。
「まぁ、無理するこたないさな。合わないなら別のバイトすれ」
「そもそもタカシが紹介したんだろ、あそこ!」
「だって、ノーパンしゃぶしゃぶの店を紹介したら嫌がるだろ?」
「当然だよっ! ていうか未成年がそんなところで働けないし、仮に働けても嫌に決まってるだろっ、ばかっ!」
「今度適当なバイト先紹介するから、そう怒るな」
「……真っ当なバイトなんだろうね? 変なとこだったら怒るよ?」
「俺のノーパン店リストを甘く見るな」
「なんでノーパン限定なんだよっ! あんまり変なことばっか言ってると、もんじゃ作ってあげないよ?」
「もんじゃ……?」
「あっ、もー忘れてる。作ってくれってタカシが言ったんじゃないかよ」
「んー、そだっけ? まあいいや、腹は減ってないからそれはいいや。代わりに、罰ゲームしよう、罰ゲーム」
「なっ、なんでそんなことだけ覚えてるんだよっ! こら、にやにやしながら来るなっ、手をわきわきさせんなっ!」
怯えまくる梓にゆっくりと近寄り、一気に襲い掛かる!
「あぅぅぅぅっっっ!!! ……あぅ?」
「ふはははは! どうだ、我が指テクは?」
「あっ、あー……気持ちイー」
梓の後ろから肩をもみもみする、というオチですよ。
「あー、お前でも慣れない事したら緊張すんだな。けっこー凝ってるじゃん」
「ボクでも、っていうのが引っかかるけど……まあいいや。珍しくタカシが優しいし」
「何を言うか。俺はいつだって優しいぞ」
「あは。そだね、タカシって本当は優しいよね」
てっきり「何言ってんだよ、ばか」とかそういう返しがくると思っていたのだけど、梓は嬉しそうにそう言って俺に背中を預けた。
「タカシ、もー肩揉みはいいから、……その、ぎゅってして?」
しばらくそのまま肩を揉んでると、梓は肩越しに振り向き、そう言ってちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。綿菓子みたいな微笑みに、どうにも調子が狂う。
「恥ずかしい奴だな、お前は」
「う……た、タカシ限定だからいいんだよ! ……その、嫌だったらいいんだけど」
「そうは言ってない」
悲しそうな瞳に、俺は慌てて後ろからぎゅっと抱きしめた。全く、梓の悲しそうな顔に弱くて困る。
「……え、えへ。で、でねでね、すりすりも、いい?」
「ものすごい甘えっぷりですね」
「う……い、いーじゃん。バイト頑張ったんだし、それくらい。ね?」
甘えに特化した梓の視線と上目遣いに、撃沈。後ろからすりすりすりしました。その度にきゅーきゅーと嬉しそうな悲鳴があがって嬉しいやら恥ずかしいやら嬉しいなあチクショウ。
「なんだってよりにもよってこんなところ紹介すんだよ……」
「職業に貴賎はないぞ? あと汽船もない」
「意味わかんないよッ!」
「いや、アレだ、こう……汽船の……蒸気が、こう、……ぽっぽー?」
「適当に言ったのを無理につなげようとするな、ばかっ!」
そんなわけで、今日は梓の初バイトです。様子を見に行ってみよう。ドアを開けて店内に入る。
「何しに来たの?」
入るなりいきなり出迎えてくれたウェイトレスさんが暴言を吐くので、ちょっと面食らう。
「いや、その、喫茶店だし、汁気の物をすすりに」
店員さんは一瞬怪訝な顔をした後、いいからそこに座れと言って俺を近くのテーブルに案内した。
……ううむ、想像してたのと違うな。なんちうか、思いっきりマニュアルって感じだな。梓は大丈夫だろうか。
ぼやーっと待ってると、ウエイトレスさんが注文を取りに来た。……ん、梓じゃん。いつものボーイッシュな格好とは違い、今日はメイドさん装備に身を包んでおり、ムネキュンな感じだ。
「あ、タカシだ! ……あ、えへんえへん。何にするの? 早く決めてよね」
梓は一瞬だけ顔を綻ばせたが、すぐに顔を引き締め、嫌そうに俺に注文を促した。
「偉そうだから、帰ったら物凄い罰ゲーム」
「えええっ!? で、でも、仕事だからこーゆー対応しないと、店長さんに怒られ……」
「罰ゲーム」
「あ、あぅぅ……」
泣きそうな顔に満足したので、とりあえず注文する。
「ええと、もんじゃ焼き」
「喫茶店なんだから、そんなのないよ! ……食べたいんだったら、帰ってから作ろっか?」
他の人にばれないよう、梓はこそこそっと俺に耳打ちした。
「お、マジ? じゃあ頼む」
「お任せだよ♪ ……で、それはそれとして、注文なに? 早く決めてよね」
「んーと、果汁100%のコーラ」
「か、果汁!? コーラの果汁ってなんだろ……」
「そりゃ、黒い汁なんだから……黒い果実? 果実……じゃなくて、虫? 黒い虫……ゴキブリの絞り」
「すとーーーーーーっぷ! これから先コーラ飲めなくなっちゃうから、それ以上その嘘を言うの禁止!」
「どっちにしろ、炭酸飲めないじゃん、お前」
「う……お、大人になったら飲めるもん! ボクが大人になる頃には、しゅわしゅわするのなくなってるかもしんないし!」
それはもう炭酸ではない。
「まあなんでもいいや、コーラ頂戴」
「ん、分かったよ……じゃないや、しょうがないからやったげる」
ムカつくタイプの口調なので、こめかみを拳でぐりぐりする。
「あぅぅぅぅーっ! し、仕事だもん、マニュアルだもん! 怒られてもしょうがないもん!」
「マニュアルだかなんだか知らないが、俺様相手にそんな口を利くとは……今日の罰は凄そうだな」
「あ、あぅぅ……」
すっかりしょげかえった梓を見送り、しばし待つ。ほどなく、梓がコーラを持ってやってきた。
「はい、コーラです。……さっさと飲んで早く帰ってよね!」
「…………」
「あ、あの、ま、まにゅある、マニュアルだから……あ、あぅぅ」
とても怖い顔をしたら、とてもとても怯えられた。
とにかく、ここはダメだ。俺の肌に合わない。とっとと帰ろう。コーラを5秒で飲み干し、席を立つ。
「んじゃ、俺帰るな。バイト頑張れよ」
「あっ……うんっ!」
頭を軽くなでると、梓は顔を輝かせた。犬属性め。素敵だぞ。
レジで金を払い、店から出ようとしたら、店員さんが呼び止めた。
「いっぱい酷いこと言っちゃったけど、また来てくれるよね?」
死んだ魚のような目でそんなことを言う店員さんに、俺は会釈だけしてそこから逃げ出した。
「おじゃまします! あー疲れた! もー嫌だよあの店!」
喫茶店から帰った後、部屋でぼやーっと漫画読んでたら、バイトを終えた梓が入ってきた。
「お疲れ」
「まったくだよ。来るお客さんみんなボクがなんか言う度にニヤニヤして、なんか……あーっ、もーっ!」
ベッドに倒れこみ、その場で泳ぐように梓は手をばたつかせた。
「まぁ、無理するこたないさな。合わないなら別のバイトすれ」
「そもそもタカシが紹介したんだろ、あそこ!」
「だって、ノーパンしゃぶしゃぶの店を紹介したら嫌がるだろ?」
「当然だよっ! ていうか未成年がそんなところで働けないし、仮に働けても嫌に決まってるだろっ、ばかっ!」
「今度適当なバイト先紹介するから、そう怒るな」
「……真っ当なバイトなんだろうね? 変なとこだったら怒るよ?」
「俺のノーパン店リストを甘く見るな」
「なんでノーパン限定なんだよっ! あんまり変なことばっか言ってると、もんじゃ作ってあげないよ?」
「もんじゃ……?」
「あっ、もー忘れてる。作ってくれってタカシが言ったんじゃないかよ」
「んー、そだっけ? まあいいや、腹は減ってないからそれはいいや。代わりに、罰ゲームしよう、罰ゲーム」
「なっ、なんでそんなことだけ覚えてるんだよっ! こら、にやにやしながら来るなっ、手をわきわきさせんなっ!」
怯えまくる梓にゆっくりと近寄り、一気に襲い掛かる!
「あぅぅぅぅっっっ!!! ……あぅ?」
「ふはははは! どうだ、我が指テクは?」
「あっ、あー……気持ちイー」
梓の後ろから肩をもみもみする、というオチですよ。
「あー、お前でも慣れない事したら緊張すんだな。けっこー凝ってるじゃん」
「ボクでも、っていうのが引っかかるけど……まあいいや。珍しくタカシが優しいし」
「何を言うか。俺はいつだって優しいぞ」
「あは。そだね、タカシって本当は優しいよね」
てっきり「何言ってんだよ、ばか」とかそういう返しがくると思っていたのだけど、梓は嬉しそうにそう言って俺に背中を預けた。
「タカシ、もー肩揉みはいいから、……その、ぎゅってして?」
しばらくそのまま肩を揉んでると、梓は肩越しに振り向き、そう言ってちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。綿菓子みたいな微笑みに、どうにも調子が狂う。
「恥ずかしい奴だな、お前は」
「う……た、タカシ限定だからいいんだよ! ……その、嫌だったらいいんだけど」
「そうは言ってない」
悲しそうな瞳に、俺は慌てて後ろからぎゅっと抱きしめた。全く、梓の悲しそうな顔に弱くて困る。
「……え、えへ。で、でねでね、すりすりも、いい?」
「ものすごい甘えっぷりですね」
「う……い、いーじゃん。バイト頑張ったんだし、それくらい。ね?」
甘えに特化した梓の視線と上目遣いに、撃沈。後ろからすりすりすりしました。その度にきゅーきゅーと嬉しそうな悲鳴があがって嬉しいやら恥ずかしいやら嬉しいなあチクショウ。
【風邪引くとデレだけになるツンデレ】
2010年02月15日
ちなみが風邪をひいたとかひいてないとか裸祭り開催中とかで、放課後、見舞いに来た。
「こんにちは! 裸はどこだ! 隠し立てすると容赦しないぞ!」
「……けほんけほん」
しかし、そこには布団に寝そべり咳をするちなみがいるだけで、裸などどこにも存在しなかった。というか、裸祭りなんてしてるわけねー。どこでノイズが入ったのだ。
「あー、病気なのに騒いだりしてすまん。それで、具合はどうだ?」
ちなみが寝てるベッドの側に椅子を寄せ、その上に腰を下ろす。
「……んー、と。……ちょっち寝て、……ちょっち元気になったような、……そうでもないよな」
ちなみの顔を見る。普段よりやや赤らみ、汗でうっすら濡れてる顔はなんだか色っぽ……いやそうじゃなくて! 落ち着け!
「……どしたの? 顔ぶるんぶるん振って」
「急に俺の顔に小型の知的生命体が住み着いたので、神として地震という試練を与えている最中だ」
「……タカシは熱のある私より熱があるっぽいよね」
微妙に馬鹿にされてる感がある。
「夏風邪という馬鹿しかひかない病気にかかる奴は、言うことが違うな」
ちなみの頬が膨れた。
「むくれんな。……さて、あまり長居しても疲れるだろうし、そろそろ帰るな」
「え……」
思ったより良さそうなちなみの姿に安心したので、とっとと帰ろうとしたら、ちなみの奴が悲しそうな顔をするんですの。眉が八の字になってるんですの。
「……も、もう帰るの?」
そんな顔されたら困るんですの。声を震わせないでほしいんですの。裾を掴まないでほしいんですの。
「帰らない予感」
色々考えた末にそう言って腰を落ち着かせると、ちなみの奴はふにゃっと柔らかい笑みを浮かべた。
「……その予感は、とても好ましい」
「そいつは重畳」
なんとなくちなみの頬に手をやると、ちなみはその手を取り、両手でにぎにぎ握った。
「……タカシの手、おっきい」
「おまいの手が小さいだけだ。というか、病気なんだから寝てろ」
「……昼間寝すぎて、眠くない」
「眠くなくとも、寝るのが病人の仕事だろ」
「……転職する。……今から私はタカシ遊びが仕事」
そう言って、ちなみはがじがじと俺の指を甘噛みした。
「それで金が貰えるなら、俺もその仕事したい」
「ダメ。……これは、私だけの特権」
人の指をがじがじぺろぺろしながら、満足そうに鼻息を漏らすちなみ。
「……まずい」
「勝手に人の指食べておいて、あまつさえまずいと。どこの王様だ」
「……美食王なので」
なんか偉そうなので、舌引っ張ってやる。
「ひゃ、ひゃひー」
困った顔に満足したので離してやる。
「うう……タカシは病人が相手だろうとも手加減ナッシングのドS。……受け止められるのか、私に」
「なんか余裕っぽいので帰ります」
腰を浮かそうとしたら、ちなみが全身を使って俺に抱きついてきたので再び椅子に座る。
「……帰るの、禁止」
「無茶を言うな」
「…………」(じわーっ)
「分かったいるずっと側にいるから泣くな泣かないでごめんなさい!」
ちなみの瞳に涙が貯まり始めたので、慌てて頭をなでなでしながら謝る。どうして俺が謝っているのか。
「…………」
しかし、まだ安心してないのか、ちなみは俺をじーっと見つめたまま離れようとしない。つーか近い。近すぎる。呼気がここまで届きそうだ。
なんだか急に恥ずかしくなって視線を顔から体に移すと、襟ぐりから覗く妙に色っぽい鎖骨が視界に入る。ふらふらと……いやいや、いやいやいや! 病人相手に何しようとしてるか、俺!
「ほ、ほら、ここにいるから。お前が寝てる間にどっか行ったりしないから、もう寝ろ。な?」
できるだけ声が上ずらないよう注意しつつ、ちなみから体を離す。
「……ん」
しばらく逡巡した後、ちなみはこっくりうなずき、ぽふりと布団に寝そべった。
「……おやすみ、タカシ」
「ああ、おやすみ」
眠くないと言っていたが、ちなみは目を瞑るとすぐに寝息を立て始めた。呼吸と共に上下する薄い胸、軽くはだけた服、そこから覗く可愛いヘソ。
ここが生き地獄か、とか思いながら衣服の乱れを必死に直す俺だった。
「こんにちは! 裸はどこだ! 隠し立てすると容赦しないぞ!」
「……けほんけほん」
しかし、そこには布団に寝そべり咳をするちなみがいるだけで、裸などどこにも存在しなかった。というか、裸祭りなんてしてるわけねー。どこでノイズが入ったのだ。
「あー、病気なのに騒いだりしてすまん。それで、具合はどうだ?」
ちなみが寝てるベッドの側に椅子を寄せ、その上に腰を下ろす。
「……んー、と。……ちょっち寝て、……ちょっち元気になったような、……そうでもないよな」
ちなみの顔を見る。普段よりやや赤らみ、汗でうっすら濡れてる顔はなんだか色っぽ……いやそうじゃなくて! 落ち着け!
「……どしたの? 顔ぶるんぶるん振って」
「急に俺の顔に小型の知的生命体が住み着いたので、神として地震という試練を与えている最中だ」
「……タカシは熱のある私より熱があるっぽいよね」
微妙に馬鹿にされてる感がある。
「夏風邪という馬鹿しかひかない病気にかかる奴は、言うことが違うな」
ちなみの頬が膨れた。
「むくれんな。……さて、あまり長居しても疲れるだろうし、そろそろ帰るな」
「え……」
思ったより良さそうなちなみの姿に安心したので、とっとと帰ろうとしたら、ちなみの奴が悲しそうな顔をするんですの。眉が八の字になってるんですの。
「……も、もう帰るの?」
そんな顔されたら困るんですの。声を震わせないでほしいんですの。裾を掴まないでほしいんですの。
「帰らない予感」
色々考えた末にそう言って腰を落ち着かせると、ちなみの奴はふにゃっと柔らかい笑みを浮かべた。
「……その予感は、とても好ましい」
「そいつは重畳」
なんとなくちなみの頬に手をやると、ちなみはその手を取り、両手でにぎにぎ握った。
「……タカシの手、おっきい」
「おまいの手が小さいだけだ。というか、病気なんだから寝てろ」
「……昼間寝すぎて、眠くない」
「眠くなくとも、寝るのが病人の仕事だろ」
「……転職する。……今から私はタカシ遊びが仕事」
そう言って、ちなみはがじがじと俺の指を甘噛みした。
「それで金が貰えるなら、俺もその仕事したい」
「ダメ。……これは、私だけの特権」
人の指をがじがじぺろぺろしながら、満足そうに鼻息を漏らすちなみ。
「……まずい」
「勝手に人の指食べておいて、あまつさえまずいと。どこの王様だ」
「……美食王なので」
なんか偉そうなので、舌引っ張ってやる。
「ひゃ、ひゃひー」
困った顔に満足したので離してやる。
「うう……タカシは病人が相手だろうとも手加減ナッシングのドS。……受け止められるのか、私に」
「なんか余裕っぽいので帰ります」
腰を浮かそうとしたら、ちなみが全身を使って俺に抱きついてきたので再び椅子に座る。
「……帰るの、禁止」
「無茶を言うな」
「…………」(じわーっ)
「分かったいるずっと側にいるから泣くな泣かないでごめんなさい!」
ちなみの瞳に涙が貯まり始めたので、慌てて頭をなでなでしながら謝る。どうして俺が謝っているのか。
「…………」
しかし、まだ安心してないのか、ちなみは俺をじーっと見つめたまま離れようとしない。つーか近い。近すぎる。呼気がここまで届きそうだ。
なんだか急に恥ずかしくなって視線を顔から体に移すと、襟ぐりから覗く妙に色っぽい鎖骨が視界に入る。ふらふらと……いやいや、いやいやいや! 病人相手に何しようとしてるか、俺!
「ほ、ほら、ここにいるから。お前が寝てる間にどっか行ったりしないから、もう寝ろ。な?」
できるだけ声が上ずらないよう注意しつつ、ちなみから体を離す。
「……ん」
しばらく逡巡した後、ちなみはこっくりうなずき、ぽふりと布団に寝そべった。
「……おやすみ、タカシ」
「ああ、おやすみ」
眠くないと言っていたが、ちなみは目を瞑るとすぐに寝息を立て始めた。呼吸と共に上下する薄い胸、軽くはだけた服、そこから覗く可愛いヘソ。
ここが生き地獄か、とか思いながら衣服の乱れを必死に直す俺だった。
【ツンデレが無言で手を繋いできたら】
2010年02月15日
アニメの影響で剣道部に入ったらとてもしんどい! しかも強くならない! 弱いままだよチクショウ!
「こら別府、遊んでないで練習しろ、練習。ちったあ真面目にやれ」
「ごめんね?」
口調からは男性と思われがちな先生に怒られた。なんとなく可愛く謝ってみる。
「うわっ、キモ!」
「いわゆるキモカワイイという奴だな」
「違うわ、アホっ! あーもー、お前今日は居残りで練習だ、練習!」
ちょっとした冗談で面倒なことになってしまった。
「……怒られてる。……ぷぷー」
そして、そんな俺を笑うちなみん。
「くそう、ちょっと強いからって笑いやがって! ちょっとタマちゃんとキャラ被ってるからって笑いやがって! このタマ、タマちゃんめ!」
「……タマちゃんではなく、ちなみです」
「これはご丁寧に、別府タカシと申します」
ぺこりとお辞儀しあう俺たち。なんだこれ。
「あー、ちょうどいい。華丹路、お前こいつ指導してやってくれ」
華丹路とはちなみの苗字であり、かにみちと読み、変な苗字と常々思っている俺の指導をちなみに押し付ける先生。しかし、何故ちなみに任せる?
「……別にいいけど、なんで先生が指導しないんですか?」
俺と同じような疑問を抱いたのか、ちなみが先生に尋ねた。
「やー、先生今日はデートでな。はっはっは」
「奇特な男性がいるもんだな。ボランティア?」
思わず口を挟んでしまう。
「ボランティア言うなッ! これでも先生モテモテなんだぞ?」
「猿に?」
「なんでだっ!」
「いや、ピーナッツを常に携帯してそうな顔してるから。いわゆるピーナッツ顔という奴だな」
「どんな顔だっ!」
ちなみが「また変なこと言ってる」とでも言いたげな表情で俺を見る。悔しいので反撃にとっておきの愉快な顔をしてやる。
「ぶふっ! ……くっ、うぬれー」
悔しげにうめくちなみ。よし、勝利。
「ええいっ、少しは真面目に練習しろ、別府っ!」
先生の叫びと同時に部活の終了を知らせるチャイムが鳴った。
「終わりっ! よし、帰るぞちなみ!」
「帰るなっ! 華丹路、せめて足の運びはできる程度まで頼むな」
ちなみがこっくんと頷くのを見て、先生は部員を集めて解散の号令を出した。三々五々に散って行く部員に紛れて俺も着替えようとしたら、背中を引っ張られた。
「……補習」
俺より頭二つほど小さい奴が何か言ってる。
「この俺に勝てたらな!」
不意打ちで襲い掛かったら2秒で負けたので、大人しく練習する。
「……見てて。足。……こーで、こー」
俺とちなみしかいなくなった道場で、ちなみが足運びを教える。
「ふむふむ、こうだな」
「……全然違う。こう、こー」
「こうか? こうだな? よし、こうだッ!」
「……足運びの練習なのに、どうして踊っているのか。……まったく、タカシは壊滅的に物覚えが悪い」
「ごめんね?」
申し訳なく思ったので、可愛く謝ってみる。
「……うーん、キモい」
「いわゆるキモカワイイという奴だな」
「……天丼だ」
驚かれたことに満足したので、しばらく真面目に練習する。
「……ん。まあ、及第点をあげる」
「よし! 疲れた! もう今日はここに泊まる!」
床に大の字になって寝そべる。代の字になって寝そべるにはバラバラ死体にならないといけないので大変危険です。
「……ほら、馬鹿言ってないで帰る。……早く帰らないと、暗くなる」
「性格が? いや、もうすでに暗いか」
無言でほっぺを引っ張られたので、だらだらしながら着替えて外に出る。だらだらしすぎたのか、道場から出ると夕日が地平線に隠れそうになっていた。
「……遅い。……遅すぎる。……超遅い」
そんな夕日を背中に、ほっぺを膨らました生物が俺をなじる。
「着替えてる最中に刺客に襲われ、危機に瀕した俺に前世の記憶が突如蘇り、僕の地球を守らねばという使命感が」
「…………」
「帰りましょう」
すごい睨まれたので、素直に帰ることにする。
校門を出てからものの数分もしないうちに、すっかり暗くなってしまった。
「……タカシが早く着替えないから。……そもそも、タカシが居残り命じられなかったら。……まったく」
ぶちぶち言いながらも、ちなみは少し不安そうに周囲を窺っている。
「暗いの苦手?」
「……ぜ、全然。……子供じゃないんだから、そんなの怖いはずもない。……逆に、タカシが怖いんじゃ」
「うん、お前の後ろから血を流した女生徒がゆっくりついてくるからすごい怖い」
「ぴきゃあっ!?」
叫びながらちなみは俺に飛びついた。
「という夢を見そうな今日この頃」
全力で頬をつねられ痛い痛い。
「……怖いこと言うの禁止」
「じゃあ、楽しいことを喋ろう」
ちなみはほっとしたように頷いた。
「今日は疲れたな。疲れきったので、早く風呂に入って頭でも洗いたいよ。頭洗う時ってなんか視線感じる時あるよな。それとは全然関係ないが、水場って幽霊を呼び込みやすいらしいね」
「……なんで幽霊の話になってるのか!」
半泣きで睨まれたのでやめる。
「……もう、黙ってて」
言われた通りしばらく黙って歩いてると、不意にぎゅっと手を握られた。
「……べ、別に怖いとかじゃなくて。……た、タカシが怖がるといけないから、握ってあげてるだけ」
「や、怖くないから大丈夫です」
まるで言い訳のように早口に並べるちなみに、すげなく返す。
「……そ、そう」
ちなみはなんだか残念そうに手を離した。それから数分もしないうちに、再び手に感触が。
「……こ、怖くなったでしょ? ……優しい優しい私が、手、握ってあげるよ? ほ、ほら、タカシは女の子に全くもてないダメダメくんだから、こんな機会でもないと手、繋げないよ?」
「霊媒体質の俺になんて優しいんだろう。手を繋ぐとそいつの方に霊が引き寄せられるが、せっかくの好意だ、ありがたく手を繋がせてもらおう」
ちなみは半泣きで俺の手から逃げた。
「うう……嘘だって分かってるのに、分かってるのに……」
「怖いなら怖いって言えばいいのに……」
「……こ、怖くなんてないもん。お化けとか、いないし」
「そりゃそうだ。ところで、そこの暗がりから視線など感じてないが、急に全力で走りたくなったので走ってもいい?」
電信柱の死角を指差すと、ちなみが半泣きで俺の手を握り、ぶんぶん頭を振った。
「……怖いこと言うの禁止!」
「分かった、分かったから手を離せ。幽霊が寄ってくるぞ」
「……怖いこと言うの禁止ぃ!」
なんか目がぐるぐるしだした。これ以上は可哀想か。というか、最初から可哀想だが。
「わーったよ、嘘だよ嘘。手繋いでも幽霊は寄ってこないし、それどころか二人の愛のぱぅわーにより結界が発動、幽霊を寄せ付けません。一ヶ月経ったら効果が切れるのでお取替えください」
「……途中からお薬の説明になってるよ?」
「つっこみどころを間違えてませんか」
「?」
何のことか分からないのか、ちなみは可愛らしく小首を傾げた。
「いや、ほら、俺が殊更言うのも変だが、その、……愛のぱぅわーってぇところに注目されるかにゃーとか思ってたんだが」
「え、あ、……にゃ、にゃー」
ちなみは赤くなってうつむき、小さく鳴いた。
「……もーど、ねこちなみん。……ペットと飼い主の関係なので、愛があってもへーき、という噂」
「便利な機能ですね」
「……便利だにゃあ」
「しかし、俺は猫アレルギーなので、猫が近くにいると全力で駆け出したくなるタチなんだ」
駆け出そうとする俺を全身を使って止めるちなみ。1分ほど揉みあった結果、俺が白旗を揚げることに。
「……タカシはいじわるだ。いじわる、オブ、いじわるだ」
「意地悪オブジョイトイと呼んでくれ」
「……いじわるおぶじょいとい」
全く嬉しくなかった。
「……じょいとい、早く帰ろう」
「その呼び名は勘弁してください」
「……家に着くまで、手、離さないでくれるなら、……呼ばないであげる」
薄く微笑むちなみに、俺は苦笑しながらうなずくのだった。
「こら別府、遊んでないで練習しろ、練習。ちったあ真面目にやれ」
「ごめんね?」
口調からは男性と思われがちな先生に怒られた。なんとなく可愛く謝ってみる。
「うわっ、キモ!」
「いわゆるキモカワイイという奴だな」
「違うわ、アホっ! あーもー、お前今日は居残りで練習だ、練習!」
ちょっとした冗談で面倒なことになってしまった。
「……怒られてる。……ぷぷー」
そして、そんな俺を笑うちなみん。
「くそう、ちょっと強いからって笑いやがって! ちょっとタマちゃんとキャラ被ってるからって笑いやがって! このタマ、タマちゃんめ!」
「……タマちゃんではなく、ちなみです」
「これはご丁寧に、別府タカシと申します」
ぺこりとお辞儀しあう俺たち。なんだこれ。
「あー、ちょうどいい。華丹路、お前こいつ指導してやってくれ」
華丹路とはちなみの苗字であり、かにみちと読み、変な苗字と常々思っている俺の指導をちなみに押し付ける先生。しかし、何故ちなみに任せる?
「……別にいいけど、なんで先生が指導しないんですか?」
俺と同じような疑問を抱いたのか、ちなみが先生に尋ねた。
「やー、先生今日はデートでな。はっはっは」
「奇特な男性がいるもんだな。ボランティア?」
思わず口を挟んでしまう。
「ボランティア言うなッ! これでも先生モテモテなんだぞ?」
「猿に?」
「なんでだっ!」
「いや、ピーナッツを常に携帯してそうな顔してるから。いわゆるピーナッツ顔という奴だな」
「どんな顔だっ!」
ちなみが「また変なこと言ってる」とでも言いたげな表情で俺を見る。悔しいので反撃にとっておきの愉快な顔をしてやる。
「ぶふっ! ……くっ、うぬれー」
悔しげにうめくちなみ。よし、勝利。
「ええいっ、少しは真面目に練習しろ、別府っ!」
先生の叫びと同時に部活の終了を知らせるチャイムが鳴った。
「終わりっ! よし、帰るぞちなみ!」
「帰るなっ! 華丹路、せめて足の運びはできる程度まで頼むな」
ちなみがこっくんと頷くのを見て、先生は部員を集めて解散の号令を出した。三々五々に散って行く部員に紛れて俺も着替えようとしたら、背中を引っ張られた。
「……補習」
俺より頭二つほど小さい奴が何か言ってる。
「この俺に勝てたらな!」
不意打ちで襲い掛かったら2秒で負けたので、大人しく練習する。
「……見てて。足。……こーで、こー」
俺とちなみしかいなくなった道場で、ちなみが足運びを教える。
「ふむふむ、こうだな」
「……全然違う。こう、こー」
「こうか? こうだな? よし、こうだッ!」
「……足運びの練習なのに、どうして踊っているのか。……まったく、タカシは壊滅的に物覚えが悪い」
「ごめんね?」
申し訳なく思ったので、可愛く謝ってみる。
「……うーん、キモい」
「いわゆるキモカワイイという奴だな」
「……天丼だ」
驚かれたことに満足したので、しばらく真面目に練習する。
「……ん。まあ、及第点をあげる」
「よし! 疲れた! もう今日はここに泊まる!」
床に大の字になって寝そべる。代の字になって寝そべるにはバラバラ死体にならないといけないので大変危険です。
「……ほら、馬鹿言ってないで帰る。……早く帰らないと、暗くなる」
「性格が? いや、もうすでに暗いか」
無言でほっぺを引っ張られたので、だらだらしながら着替えて外に出る。だらだらしすぎたのか、道場から出ると夕日が地平線に隠れそうになっていた。
「……遅い。……遅すぎる。……超遅い」
そんな夕日を背中に、ほっぺを膨らました生物が俺をなじる。
「着替えてる最中に刺客に襲われ、危機に瀕した俺に前世の記憶が突如蘇り、僕の地球を守らねばという使命感が」
「…………」
「帰りましょう」
すごい睨まれたので、素直に帰ることにする。
校門を出てからものの数分もしないうちに、すっかり暗くなってしまった。
「……タカシが早く着替えないから。……そもそも、タカシが居残り命じられなかったら。……まったく」
ぶちぶち言いながらも、ちなみは少し不安そうに周囲を窺っている。
「暗いの苦手?」
「……ぜ、全然。……子供じゃないんだから、そんなの怖いはずもない。……逆に、タカシが怖いんじゃ」
「うん、お前の後ろから血を流した女生徒がゆっくりついてくるからすごい怖い」
「ぴきゃあっ!?」
叫びながらちなみは俺に飛びついた。
「という夢を見そうな今日この頃」
全力で頬をつねられ痛い痛い。
「……怖いこと言うの禁止」
「じゃあ、楽しいことを喋ろう」
ちなみはほっとしたように頷いた。
「今日は疲れたな。疲れきったので、早く風呂に入って頭でも洗いたいよ。頭洗う時ってなんか視線感じる時あるよな。それとは全然関係ないが、水場って幽霊を呼び込みやすいらしいね」
「……なんで幽霊の話になってるのか!」
半泣きで睨まれたのでやめる。
「……もう、黙ってて」
言われた通りしばらく黙って歩いてると、不意にぎゅっと手を握られた。
「……べ、別に怖いとかじゃなくて。……た、タカシが怖がるといけないから、握ってあげてるだけ」
「や、怖くないから大丈夫です」
まるで言い訳のように早口に並べるちなみに、すげなく返す。
「……そ、そう」
ちなみはなんだか残念そうに手を離した。それから数分もしないうちに、再び手に感触が。
「……こ、怖くなったでしょ? ……優しい優しい私が、手、握ってあげるよ? ほ、ほら、タカシは女の子に全くもてないダメダメくんだから、こんな機会でもないと手、繋げないよ?」
「霊媒体質の俺になんて優しいんだろう。手を繋ぐとそいつの方に霊が引き寄せられるが、せっかくの好意だ、ありがたく手を繋がせてもらおう」
ちなみは半泣きで俺の手から逃げた。
「うう……嘘だって分かってるのに、分かってるのに……」
「怖いなら怖いって言えばいいのに……」
「……こ、怖くなんてないもん。お化けとか、いないし」
「そりゃそうだ。ところで、そこの暗がりから視線など感じてないが、急に全力で走りたくなったので走ってもいい?」
電信柱の死角を指差すと、ちなみが半泣きで俺の手を握り、ぶんぶん頭を振った。
「……怖いこと言うの禁止!」
「分かった、分かったから手を離せ。幽霊が寄ってくるぞ」
「……怖いこと言うの禁止ぃ!」
なんか目がぐるぐるしだした。これ以上は可哀想か。というか、最初から可哀想だが。
「わーったよ、嘘だよ嘘。手繋いでも幽霊は寄ってこないし、それどころか二人の愛のぱぅわーにより結界が発動、幽霊を寄せ付けません。一ヶ月経ったら効果が切れるのでお取替えください」
「……途中からお薬の説明になってるよ?」
「つっこみどころを間違えてませんか」
「?」
何のことか分からないのか、ちなみは可愛らしく小首を傾げた。
「いや、ほら、俺が殊更言うのも変だが、その、……愛のぱぅわーってぇところに注目されるかにゃーとか思ってたんだが」
「え、あ、……にゃ、にゃー」
ちなみは赤くなってうつむき、小さく鳴いた。
「……もーど、ねこちなみん。……ペットと飼い主の関係なので、愛があってもへーき、という噂」
「便利な機能ですね」
「……便利だにゃあ」
「しかし、俺は猫アレルギーなので、猫が近くにいると全力で駆け出したくなるタチなんだ」
駆け出そうとする俺を全身を使って止めるちなみ。1分ほど揉みあった結果、俺が白旗を揚げることに。
「……タカシはいじわるだ。いじわる、オブ、いじわるだ」
「意地悪オブジョイトイと呼んでくれ」
「……いじわるおぶじょいとい」
全く嬉しくなかった。
「……じょいとい、早く帰ろう」
「その呼び名は勘弁してください」
「……家に着くまで、手、離さないでくれるなら、……呼ばないであげる」
薄く微笑むちなみに、俺は苦笑しながらうなずくのだった。


