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2024年04月26日
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【ツンデレ喫茶で働く事になったボクっ娘】

2010年02月15日
 梓がバイトを紹介してくれと言うので、ツンデレ喫茶を紹介してやった。
「なんだってよりにもよってこんなところ紹介すんだよ……」
「職業に貴賎はないぞ? あと汽船もない」
「意味わかんないよッ!」
「いや、アレだ、こう……汽船の……蒸気が、こう、……ぽっぽー?」
「適当に言ったのを無理につなげようとするな、ばかっ!」
 そんなわけで、今日は梓の初バイトです。様子を見に行ってみよう。ドアを開けて店内に入る。
「何しに来たの?」
 入るなりいきなり出迎えてくれたウェイトレスさんが暴言を吐くので、ちょっと面食らう。
「いや、その、喫茶店だし、汁気の物をすすりに」
 店員さんは一瞬怪訝な顔をした後、いいからそこに座れと言って俺を近くのテーブルに案内した。
 ……ううむ、想像してたのと違うな。なんちうか、思いっきりマニュアルって感じだな。梓は大丈夫だろうか。
 ぼやーっと待ってると、ウエイトレスさんが注文を取りに来た。……ん、梓じゃん。いつものボーイッシュな格好とは違い、今日はメイドさん装備に身を包んでおり、ムネキュンな感じだ。
「あ、タカシだ! ……あ、えへんえへん。何にするの? 早く決めてよね」
 梓は一瞬だけ顔を綻ばせたが、すぐに顔を引き締め、嫌そうに俺に注文を促した。
「偉そうだから、帰ったら物凄い罰ゲーム」
「えええっ!? で、でも、仕事だからこーゆー対応しないと、店長さんに怒られ……」
「罰ゲーム」
「あ、あぅぅ……」
 泣きそうな顔に満足したので、とりあえず注文する。
「ええと、もんじゃ焼き」
「喫茶店なんだから、そんなのないよ! ……食べたいんだったら、帰ってから作ろっか?」
 他の人にばれないよう、梓はこそこそっと俺に耳打ちした。
「お、マジ? じゃあ頼む」
「お任せだよ♪ ……で、それはそれとして、注文なに? 早く決めてよね」
「んーと、果汁100%のコーラ」
「か、果汁!? コーラの果汁ってなんだろ……」
「そりゃ、黒い汁なんだから……黒い果実? 果実……じゃなくて、虫? 黒い虫……ゴキブリの絞り」
「すとーーーーーーっぷ! これから先コーラ飲めなくなっちゃうから、それ以上その嘘を言うの禁止!」
「どっちにしろ、炭酸飲めないじゃん、お前」
「う……お、大人になったら飲めるもん! ボクが大人になる頃には、しゅわしゅわするのなくなってるかもしんないし!」
 それはもう炭酸ではない。
「まあなんでもいいや、コーラ頂戴」
「ん、分かったよ……じゃないや、しょうがないからやったげる」
 ムカつくタイプの口調なので、こめかみを拳でぐりぐりする。
「あぅぅぅぅーっ! し、仕事だもん、マニュアルだもん! 怒られてもしょうがないもん!」
「マニュアルだかなんだか知らないが、俺様相手にそんな口を利くとは……今日の罰は凄そうだな」
「あ、あぅぅ……」
 すっかりしょげかえった梓を見送り、しばし待つ。ほどなく、梓がコーラを持ってやってきた。
「はい、コーラです。……さっさと飲んで早く帰ってよね!」
「…………」
「あ、あの、ま、まにゅある、マニュアルだから……あ、あぅぅ」
 とても怖い顔をしたら、とてもとても怯えられた。
 とにかく、ここはダメだ。俺の肌に合わない。とっとと帰ろう。コーラを5秒で飲み干し、席を立つ。
「んじゃ、俺帰るな。バイト頑張れよ」
「あっ……うんっ!」
 頭を軽くなでると、梓は顔を輝かせた。犬属性め。素敵だぞ。
 レジで金を払い、店から出ようとしたら、店員さんが呼び止めた。
「いっぱい酷いこと言っちゃったけど、また来てくれるよね?」
 死んだ魚のような目でそんなことを言う店員さんに、俺は会釈だけしてそこから逃げ出した。

「おじゃまします! あー疲れた! もー嫌だよあの店!」
 喫茶店から帰った後、部屋でぼやーっと漫画読んでたら、バイトを終えた梓が入ってきた。
「お疲れ」
「まったくだよ。来るお客さんみんなボクがなんか言う度にニヤニヤして、なんか……あーっ、もーっ!」
 ベッドに倒れこみ、その場で泳ぐように梓は手をばたつかせた。
「まぁ、無理するこたないさな。合わないなら別のバイトすれ」
「そもそもタカシが紹介したんだろ、あそこ!」
「だって、ノーパンしゃぶしゃぶの店を紹介したら嫌がるだろ?」
「当然だよっ! ていうか未成年がそんなところで働けないし、仮に働けても嫌に決まってるだろっ、ばかっ!」
「今度適当なバイト先紹介するから、そう怒るな」
「……真っ当なバイトなんだろうね? 変なとこだったら怒るよ?」
「俺のノーパン店リストを甘く見るな」
「なんでノーパン限定なんだよっ! あんまり変なことばっか言ってると、もんじゃ作ってあげないよ?」
「もんじゃ……?」
「あっ、もー忘れてる。作ってくれってタカシが言ったんじゃないかよ」
「んー、そだっけ? まあいいや、腹は減ってないからそれはいいや。代わりに、罰ゲームしよう、罰ゲーム」
「なっ、なんでそんなことだけ覚えてるんだよっ! こら、にやにやしながら来るなっ、手をわきわきさせんなっ!」
 怯えまくる梓にゆっくりと近寄り、一気に襲い掛かる!
「あぅぅぅぅっっっ!!! ……あぅ?」
「ふはははは! どうだ、我が指テクは?」
「あっ、あー……気持ちイー」
 梓の後ろから肩をもみもみする、というオチですよ。
「あー、お前でも慣れない事したら緊張すんだな。けっこー凝ってるじゃん」
「ボクでも、っていうのが引っかかるけど……まあいいや。珍しくタカシが優しいし」
「何を言うか。俺はいつだって優しいぞ」
「あは。そだね、タカシって本当は優しいよね」
 てっきり「何言ってんだよ、ばか」とかそういう返しがくると思っていたのだけど、梓は嬉しそうにそう言って俺に背中を預けた。
「タカシ、もー肩揉みはいいから、……その、ぎゅってして?」
 しばらくそのまま肩を揉んでると、梓は肩越しに振り向き、そう言ってちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。綿菓子みたいな微笑みに、どうにも調子が狂う。
「恥ずかしい奴だな、お前は」
「う……た、タカシ限定だからいいんだよ! ……その、嫌だったらいいんだけど」
「そうは言ってない」
 悲しそうな瞳に、俺は慌てて後ろからぎゅっと抱きしめた。全く、梓の悲しそうな顔に弱くて困る。
「……え、えへ。で、でねでね、すりすりも、いい?」
「ものすごい甘えっぷりですね」
「う……い、いーじゃん。バイト頑張ったんだし、それくらい。ね?」
 甘えに特化した梓の視線と上目遣いに、撃沈。後ろからすりすりすりしました。その度にきゅーきゅーと嬉しそうな悲鳴があがって嬉しいやら恥ずかしいやら嬉しいなあチクショウ。

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