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2026年03月20日
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【寒いのでツンデレの頬っぺたで手を暖めてみたら】

2010年02月22日
 最近暖かくなってきたなあと思ってたのに急に寒くなりやがってへっくしょん。
「……タカシが鼻を垂らしてる。……タカシと鼻水、お似合いのカップル、爆誕」
 教室でくしゃみをしたら、嫌な奴がやってきて嫌な事を言う。
「寒いんだよ。……あ、とてもいいことを思いついた!」
「……否決」
「否決されたにも関わらず果敢に挑む俺は凄い。このかじかんだ手をおまいのほっぺで温めよう。心が冷たい奴でも、恒温動物である限り体温はあるはず」
「……むっ。心が冷たくなんてない。……タカシ限定で冷たいだけ。……ヤッタネ」
 ちっともヤッタネではない。
「……それに、タカシに触られたら、そこから腐れ落ちる予感」
「人を妖怪扱いするな。いーから触らせろ」
「……うう、タカシが孕ませようとする」
「してないッ!」
 俺から逃げるちなみを一喝する。
「聞いた? 別府くん、ちなみを孕ませたらしいよ」
「うわ、子供相手に……別府くん鬼畜」
 してないと言うのに、クラスメイトたちが微妙に聞こえる程度の声で俺の悪口を言う。あと、クラスメイトを子供と言うな。
「……子供じゃない」
 ほら見ろ、ちなみの奴が落ち込んだ。
「大丈夫、俺はちなみが子供じゃないって知ってるぞ。立派に大人、いや熟女だと思ってるぞ」
「……ちっとも嬉しくない」
「老婆と思われたいのか?」
 この人は馬鹿なのかなあ、という視線をぶつけられる。
「……タカシは馬鹿なの?」
 視線だけでなく、実際に言葉でぶつけられた。
「別府くん、老婆趣味だって」
「うわ、別府くんアグレッシブ……」
 それだけでなく、クラスメイト達が俺の性癖を曲解する始末。
「普通の性癖と思われたいので、どうかここは一つちなみさん、俺にほっぺを触らせてください」
「……普通?」
 ちなみは自分の体を見下ろした。遮るものがない胸部を見て、次に俺を見る。
「訂正。老婆趣味よりロリコンの方がマシなので、ほっぺを触らせて」
「……失礼千万」
 ほっぺを引っ張られた。
「自分で疑問を持ったくせに」
「……うるさい」
 引っ張る力が強まる。
「うーん。これはこれで悪くないですが、俺がちなみのほっぺを触りたいのですよ。こんな感じで」
 ちなみのほっぺをふにふにする。
「……触るの、許可してないけど」
「この俺に目を付けられた不運を嘆くことだな! ふわーっはっはっはっはっは!」
「……タカシが安っぽい悪の帝王みたいに」
 安っぽい言うな。
「しかし、おまいのほっぺやーらかいな。ふにふにふに」
 ちなみのほっぺを両手で包み、揉みほぐすようにふにふにする。
「……人のほっぺで遊ばない」
「楽しいよ?」
「……楽しくても遊ばない」
「じゃ、遊ばないから温めさせて」
「……はぁ、仕方ない。……温まるまでだよ?」
 そんなわけで、ちなみのほっぺをふにふにし続ける。
「……まだ温まらないの?」
「凍傷にかかってるから時間かかるんだ」
「……平然と嘘を。……まったく、困った人だ」
 互いにほっぺを擦りあう、奇妙で割と幸せな休み時間だった。

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【ツンデレとホワイトデー】

2010年02月22日
 一ヶ月ほど前、近所に住む年上の幼なじみ、みこねえから義理(という割に手作りで気合入ってた)チョコを貰ったので、その一ヵ月後、つまり今日、お返ししないといけない。
 しかし、お金を使うのは嫌だ。だからといってそこらの雑草をプレゼントと称して渡しても、
『はい、プレゼントふぉーゆー』
『ふむ、美麗な箱だな。それで、中身は何だ?』
『くさ』
『結婚しよう』
 となる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。なので、無難に近所のスーパーで適当な品を買おうと学校帰りに寄ると、みこねえに遭遇した。
「む? どうして貴様がこんなところにいるのだ」
 嫌そうな顔をされたので半泣きで店の外に出ようとしたら、慌てた様子のみこねえに引き止められた。
「な、何も泣かずともよい! 怒ってないぞ、私は怒ってないからな」
 幼児にするように頭をなでられた。やや屈辱。
「それで、何しに来たのだ? 母君のおつかいか? 偉いぞ」
 この人は俺を幼稚園児と勘違いしてるに違いない。お使いで褒められるのは小学生までだろう。もう高校生ですよ、俺。
「や、ただのお返……」
 待て。ここで素直にお返しを買いに来たと言ったと仮定しよう。
『ホワイトデーのお返しを買いに来たんだ』
『私へのお返しをこんなおんぼろスーパーで買うつもりか? 死んだほうがいいな』(鈍く光る刃物片手に)
 さくっぶしゅーぎにゃーぱたり。
『さよなら愛しい人』
 とBADEND一直線に違いない。適当な言い訳を!
「おかえ?」
「陸へ行きたいなあ、進化したいなあ、という進化しそこねた過去の水棲生物の記憶が突如蘇ったんだ」
「…………」
 不憫な子を見る目をしたみことに頭をなでられた。
「まあそんなこんなでぶらりとお買い物に来ただけなので、俺の事は気にせずみこねえは好きに行動してください。俺は俺で適当にうろつくから」
「何を言うか。貴様のような不審人物を放っておけるか。ほら、一緒に回るぞ」
 手を引っ張られ、一緒に店内を回ることになってしまった。困った、これではお返しの菓子を買えない。
「そうだ、今日はうちで一緒にご飯食べるか? 父も母もお前のことを心配していたぞ」
 うちは両親が共働きで忙しいので、子供の頃はよくみこねえの家で飯を食っていた。その延長で、今でもたまに飯を食べさせてもらっているが、さすがにこの歳になると食い気より申し訳なさの方が先に立つ。
「や、折角のお誘いだけど……」
「今日は特別に私がオムライスを作ってやるぞ」
「行く」
 みこねえの作るオムライスは絶品なので大好きだ。申し訳なさ? そんなのオムライスの前では塵芥に等しいですよ!
「そうか。久々に腕を振るおうとしよう」
 再びみこねえは俺の頭をなでた。やめてほしいが、機嫌よさそうになでてるので我慢しよう。ほら、大人なので。
「~♪」
 鼻歌を口ずさむみこねえと手を繋ぎ、一緒に店内を回ってると、見覚えのある女生徒を見かけた。
「あら、みことじゃない。それに、弟クンも。こんにちは」
 見覚えある女性は、よくみこねえと一緒にいる友達のようだった。とまれ、挨拶を返そう。
「こんにちは」
「はい、よくできました」
 女生徒はにっこり笑い、背伸びして俺の頭をぐりぐりなでた。……どうして年上の女性というのは俺の頭を撫でるのだろう。そういう決まりでもあるのだろうか。
「姉弟そろってお買い物?」
「別に姉弟ではない。こいつが寄ってくるだけだ。全く、迷惑な話だ」
「あらそうなの? じゃ弟クン、私と一緒に来る?」
 お誘いを受けた。どうしようかとみこねえの顔を窺う。
「す、好きにしたらいいだろう。私には関係ない」
 顔を背けながらも、みこねえは俺の手をぎゅっと握った。……うーん、やっぱみこねえと一緒にいたいな。よし、断ろう。
「ね、弟クン。……いけない遊び、しよっか?」
「する」
 思わず脊髄反射で答えると、握られた手に渾身の力が込められた。骨が軋む音がここまで聞こえてくるようだ。
「ぼぼぼくはみこねえと一緒にお買い物しているので、折角ですが辞退させてください」
「あらそう残念。じゃあね、二人とも♪」
 お姉さんはひらひらと手を振って去っていった。……したかったなあ。いけない遊び、したかったなあ!
 歯噛みして悔しがってると、みこねえが俺を睨んでるのに気がついた。
「……お前は可愛い子が相手だと、すぐホイホイついていこうとするな。……お姉ちゃんがいるというのに」
 みこねえは口を尖らせ俺を責めた。みこねえの一人称が私ではなくお姉ちゃんとなった時、それは姉ぶっている時であり、大概面倒なことになる。
「や、そ、その、男と生まれたからにはやはり女性に恥をかかせてはならないと思ったまでで! 決していけない遊びに惹かれたのではないですヨ?」
「…………」
「嘘です惹かれました男の子ですから!」
 みこねえには嘘はつけない。べべべつに無言の圧力が怖いとかじゃなくて! ホントに!
「……はぁ。お姉ちゃんはどうかと思うぞ」
「すいません」
「まったく……まぁ、着いていかなかったから、いいけど」
 ようやっと機嫌が直ったようだ。やれやれ、困った姉だ。
「ところで、お前は何を買うんだ?」
「ホワイトデーのお返しを」
「…………」
 しまった、普通に答えてしまった! いかん、俺の未来予想図(BADEND一直線)が現実のものに! 回避、かいひー!
「……誰のだ」
 底冷えのする声でみこねえが俺に尋ね……いや、詰問する。
「答えろ。誰へのお返しだ」
「みみみみみこねえへのデス」
「……へ?」
 よほど意外だったのか、みこねえは珍しく間の抜けた返事をした。
「だ、だから、みこねえへのお返し」
「……わ、私のために、か?」
 包丁ENDかと思われたが、意外にも感触は悪くなかったようで、みこねえは少し顔を赤らめて訊ねた。
「え、あ、うん。……当日にこんなスーパーで探すのもどうかと思うけど」
「いやっ、いやいやいや! 大丈夫だ、お姉ちゃんは気にしないぞ! そうか、私のためか……ふふっ、そうか!」
 途端、みこねえの機嫌がとてもよくなった。見てて怖くなるくらい。
「買うお金あるか? お姉ちゃんがあげようか?」
「い、いや、みこねえへのプレゼントなんだし、それは自分で出さないとダメだろ」
「~~~~~っ!!」
 感極まったようにみこねえが俺を抱きしめ、動物にするかのように何度も何度もほお擦りする。
「偉いぞ! 流石は自慢の弟だ!」
「み、みこねえ! 当たってる、さほど大きくはないがそれでもしっかりと自己を訴えかける二つの膨らみが当たってる!」
「ん? ……さ、触りたいのか?」
「女の子がそういうこと言うのダメー!」
「お、お姉ちゃん、お前が相手なら……」
「のー! ダメ! ばつ!」
 両手でバツを作る。
「いいから買い物すませよう! な、みこねえ?」
「その後で、ということか? ……ま、まったく、えっちな奴め」
「ちげーっ!」
 そんなこんなで買い物を終え、飯をお呼ばれし、むしゃむしゃ後、みこねえの部屋に移動する。
「さて。腹もこなれたので、ホワイトデーの真骨頂を見せる時間です」
「……ぷ、プレゼントはお前なのか? ……お、お姉ちゃん、ちょっとドキドキだぞ」
「そう実は俺がプレゼント大事にしてねってちげーよ」
「ノリツッコミだ」
 何故か拍手された。
「これ。クッキー。おいしいよ、きっと」
 そこそこ高級なクッキーがあったので、みこねえに隠れて買っておいたのだ。
「クッキーか。よし、一緒に食べよう」
「え、いや、お返しだからそれはおかしいと」
「飲み物は何がいい? コーヒーか? 紅茶か?」
「尿」
 殴られたのでコーヒーを頼む。
「ほら。熱いから気をつけろ。それとも、お姉ちゃんがふーふーしようか?」
 それはとても恥ずかしいので断る。
「ふー、ふー。……ほら、ちょうどいい温度になったぞ」
 断ったのにふーふーされた。
「みこねえにこれって間接息だよなって言ったら」
「よ、余計な事を言うな、ばかっ」
 と、怒られます。
「しかし……義理チョコだったのに、こうして律儀にお返ししてくれるなんて、お前は偉いな。お姉ちゃんは誇らしいぞ。うにうに」
 誰も見てない事をいいことに、みこねえは俺を後ろから抱っこして頬をすりすりする。
「ほら、あーん」
 そしてその状態のままクッキーを食べさせようとする。
「みこねえ、流石に恥ずかしいのでやめもがもが」
「どうだ? おいしいか?」
「もがもぎゅもぎゅごくん。おいしい」
 制止している最中にクッキーを食べさせられ感想を強要された。おいしかった。
「ふふっ、そうか」
 そして、再びすりすり。
「ほら、あーん」
「いやあのみこねえ、これはお返しなのでみこねえが食べないともがもがもが」
「おいしい?」
「もぎゅもぎゅごくん。おいしい。いやそうじゃなくて」
「んー♪」
 三度すりすり。
「みこねえ、俺ばかり食べるのはおかしいと」
「あーん♪」
「いや、その、これはみこねえのために買ったものでもがもが」
「どうだ?」
「もぐごきゅん。おいしい」
「んきゅ~~~~♪」
 またすりすりされた。
 結局、クッキーは全部俺が食べました。

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【ボクっ娘と肉まんをはんぶんこして食べたら】

2010年02月21日
「んー……くはぁぁぁぁ」
「もー、でっかいアクビしてぇ……だらしないなあ」
 ボクっ娘と一緒に帰ってる最中、全身を伸ばしてアクビしたら、ボクっ娘が生意気にも俺をたしなめる。
「仕方ないだろう、こうも暖かいとアクビの一つも出る」
「あー、最近暖かいもんね。ボクも授業中とか、ついうとうとしちゃうよ」
「この暖かさは、ボクっ娘の脳内環境が外に漏れ出たんだろうな。迷惑な話だ」
「ボクの脳内がぽかぽかお花畑って言いたいんだろっ! タカシの悪口ましーん!」
「おっ、自分の事をよく分かってるな。偉いぞ」(なでなで)
「わふわふ♪ ……はうっ! な、なでんなよっ! タカシになでられたら、なんかわふわふ言っちゃうんだよ!」
「やーい萌えキャラ」
「萌えキャラ違うっ!」
 そんな感じでいつものように梓をいじってたら、コンビニの前を通りがかった。
「梓さん、肉まん食べません?」
「ません! 今けんかのまっさいちゅーだよ! 普通に誘うな!」
「喧嘩のつもりは毛頭ないが……まあいいや。ほら入るほら入る」
「あぅっ、押すなよ! もー、強引だなぁ……」
 梓の背中を押してコンビニに入る。そしてそっと俺だけ抜け出し、店外から梓の様子を眺める。
「ま、いーや。ねータカシ、何買うの? ……あれ? タカシ?」
 きょろきょろと店の中を見回す梓。んむ、馬鹿っぽくて実に愉快。あ、目があった。
「もー! なんで店の外にいるんだよ!」
 梓はぷりぷりしながら出てきた。
「ちょっと透き通った爺さんが俺を呼ぶんだよ」
「タカシ見えちゃいけないものが見えてるよ!?」
「よく見たら腹の辺りから臓物のようなものが出てたような……」
「どっ、どうせ嘘だろ! 知ってるもんね、ボクを怖がらせよーとしてることくらい!」
「嘘だといいんだが……」
「そっ、そーゆー思わせぶりなこと言ってボクを怖がらせるの禁止禁止禁止っ! ほら、いーからコンビニ入る!」
 今度は梓に押されて俺が店内へ。
「梓、臓物のこぼれた爺さんに気をつけろ。黄泉路を共にする羽目になるぞ」
「う、嘘でもそーゆー怖いこと言うな、ばかっ!」
 適度に怖がらせたので満足。肉まん買って店を出る。
「うー……」
 そして、周囲を警戒してるボクっ娘が俺の後をついてくる。
「そう怖がるでない。俺の嘘だってことくらい気がついてるだろ?」
「それはそれとして、なんか怖いんだよっ!」
「大丈夫。もし爺さんが襲ってきたら、俺、絶対に梓のこと、放って逃げるから」
 梓の手を握り、真剣な目で訴えかける。
「た、タカシ……ボク、嬉し……ん? え、逃げるの!? ボク放って!?」
「だって怖いじゃん、臓物撒き散らしながら走ってくる爺なんて」
「そこはタカシが『絶対に梓のこと守るから』とかかっくいーこと言って、ボクが感動する場面だろ!」
「無茶を言うない。お化けとか怖いだろ」
「うー……まあいいや。もし本当にボクが困ってたら、タカシは絶対ボクを助けてくれるって知ってるもん」
「随分と高い評価されてんな。俺、何かお前の弱み握ってたっけ?」
「違うよ。今までの経験からそう判断したんだよ」
 そう言って、梓は優しい笑みを浮かべた。……ええい、この娘は。
「ふん。騙されてるとも知らずに」
「……タカシ、相変わらず褒められるの苦手だねぇ。顔、真っ赤だよ?」
「うるさい。黙ってたら肉まんやるから黙ってろ」
「あ、はんぶんこしてくれるの? やっぱタカシは優しいね」
「だから、こんなつまらんことでイチイチ褒めるでない、ばかちん」
 誤魔化すように梓の頭をやや乱暴になでる。
「やー、なでんなよぉ♪」
「嬉しそうにするでない、ばか」
 肉まんを半分に割って、梓に渡す。
「えへ、ありがとね。まふっ、まぐまぐ……ん、たまに食べるとおいしいね」
「まったく関係ないが、中国産の餃子で大騒ぎが起きたな」
「コンビニに中国産の材料は使ってないって張り紙してたよ? それに、もしこれで原因で死んでも、タカシと一緒だからへーきだよ♪」
 ちっとも笑顔を崩してくれない梓を腕に絡ませながら、一緒に帰宅した。

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【ナンパされているツンデレを助けたら】

2010年02月21日
 とある休日。まつりは一人買い物に出かけた。普段は家の者に任せているのだが、今日は天気がよかったので、散歩がてら街に出たのだった。
 だが、それが悪かった。買い物帰り、軽薄そうな男に声をかけられた。
「ね、キミキミ、ちょっと俺と遊ばない?」
 まつりは男を一瞥すると、何も言わずその場から去ろうとした。だが、男が行く手を遮る。
「無視するなんてヒドイなー。ドイヒーだね」
 金色に染められているが、毛の根元付近は黒い髪、浅黒い肌、だらしなく開けられた胸元、チャラチャラと目にうるさい金色のネックレス、極限まで下げられたズボン。まつりの嫌悪感を引き出すには充分すぎる格好の男に、まつりは顔をしかめた。
「二度は言わん。そこを退け」
「へ? なになに、俺? 俺に言ってんの?」
「二度は言わんと言ったはずじゃ」
「え? え? なに、俺舐められてマスか? この街しきってんの、俺の友達だよ? あんま俺怒らせない方がいんじゃね?」
 まつりは一つ息を吐くと、面倒くさそうに男を見た。さて、どうしたものか。家の者を呼ぶか。いや、この程度の小物、一人で充分か。そう思案していると、見慣れた顔が視界に映った。
「ん? あ、猫だ」
「誰が猫かッ!」
「冗談だよ、まつり」
 見慣れた顔──別府タカシはまつりに軽く手を上げて挨拶した。次いで、彼女の行く手を遮るように立っている男を見る。
「あァ? なに見てんだよ」
 恫喝する男を無視し、タカシはまつりに向き直った。
「ふむ……にゃるほど。ナンパ?」
「見て分からぬか。ほれ、とっとと助けぬか、阿呆」
「えー」
「えーじゃないわいっ! ほれ、頑張らぬか!」
「はぁ、しゃーねえ……つーわけでそこの人、これは俺のなんで、ナンパは別のピーマン頭の女性にしてください」
「あァ? なめてんの? あ?」
「まつり、ダメだ。なんかニワトリみたいに頭が上下してる。この人は実はニワトリではないだろうか。ニワトリは言葉が通じないぞ」
「それはニワトリに失礼じゃぞ。それと、わらわはおぬしの物ではない。決してない」
「あー……あーあー、もーダメ、許せねー。超ぶっ殺しけってー」
 男はポケットからナイフを取り出し、二人に見せ付けるようにちらつかせた。
「つまらぬ男は凶器までつまらぬのう。ナイフなぞ、珍しくともなんともないのじゃ。のう、タカシ?」
「ひぃ、怖い! 逃げろ!」
「あっ、こら! 何をするか!」
 タカシはまつりを抱きかかえると、一目散に逃げ出した。
「あっ、テメェ待ちやがれ!」
 しばらく男の追ってくる音が聞こえていたが、それもやがて聞こえなくなった頃、タカシはまつりを降ろした。
「何故戦わぬ! あの程度の輩、ちょちょいのちょいじゃろう! スキだらけじゃったろうが!」
 降ろした瞬間、まつりは噛み付かんばかりの勢いでタカシに詰め寄った。
「ぜーぜー……いやほら、刃物怖いし」
「情けない……なんと情けないことか。はぁ、おぬしもつまらぬ男じゃのう」
 まつりは呆れたように首を振った。
「それに、まつりが巻き込まれて怪我しても嫌だし」
「ぬ……」
「という言い訳を今思いついた」
「そういうことは言わなくていいんじゃ、たわけっ!」
 叱りながらも、まつりは自分の身を案じてくれたタカシに感謝した。この人は不器用なのでこんな言い方しか出来ないが、実際はこれが本音なのだろう。
「ま、誰も怪我なくてよかったじゃん。な?」
 タカシはまつりの頭に手を置き、にんまり笑った。
「ぬ……ふ、ふん。別にタカシの助けなぞなくとも、わらわ一人で切り抜けられたのじゃ。まったく、いらぬ世話を」
「助けろって言ったの誰だっけ」
「うっ、うるさいのじゃ! ほれ、帰るぞタカシ! お供せい!」
「あ、いや、俺買い物の途中なんだけど……まいっか。お供しますよ、お姫様」
「うむ、苦しゅうない」
 まるで本物のお姫様のように鷹揚に頷くまつりを見て、タカシは苦笑した。
「そだ、おてて繋いで帰りましょう。なーんて」
「……ま、まぁ今日はおぬしもわらわが怪我せぬよう頑張ったからの。と、特別に許可してやるのじゃ」
 まつりは頬を赤く染め、タカシの手を握った。冗談のつもりで言ったことが成功してしまい、少し驚いたタカシは、思わずまつりの顔をまじまじと見つめてしまう。
「……な、なんじゃ、その目は。……い、嫌なのかえ?」
「や、ちょっと驚いただけ。嫌なわけないじゃん」
 まつりの不安げな顔に、冗談なんだけど、という言葉を飲み込む。
「そ、それもそうじゃな! わらわに手を握ってもらえるなぞ、特別の特別なんじゃぞ? 感謝せい!」
 嬉しそうににっこり笑うまつりと一緒に、タカシは帰途に着いたのだった。

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【まる 初期案(予想)】

2010年02月21日
 ある朝目覚めると、うちの猫、ねねこが寝ていた場所で見知らぬネコミミ美少女が裸で寝てた。
「うちの猫が美少女に! これはよくある生ぬるいラブコメの入り口と見た!」
「ぬー……うるさいのな。黙れご主人」
「あ、はいスイマセン」
 叱られた。いや待て、俺が主で飼い猫が君で、なわけで! 飼い猫に叱られるのはおかしい。
「やい猫、起きろ」
「ぬー……うるさいのな。……あ、飯か? 飯なのな?」
 少女は起き上がり、眠そうにまぶたをこすった。……くっ、危ない箇所が全部髪の毛で隠されており、是非とも見たい部位が見えない。いや、それより。
「おまいはねねこなのか? それとも勝手に上がりこんだ家出少女なのか? 後者の場合通報すると見せかけエロ展開に持ち込むのでそのつもりで」
「ぬ? よく分からん事を言うご主人な。どこをどー見ても……おおっ、人!」
 少女は自分の体を見てびっくりした。気づいてなかったのか。
「ど、どーゆーことなご主人!? あちしのらぶりーな毛はどこへ!?」
「剃った」
「剃毛主義者めっ!」
 なんでそんな言葉知ってんだ。
「いや、嘘。剃ってない。つか、マジでねねこなのか?」
「そうな。ご主人の飼い主、ねねこな」
「いやいやいや、おかしい。俺がご主人様。おまいはペット」
「違うのな。あちしが世話されてやってるのな。あちしが飼い主、ご主人は奴隷な」
 当然のように言い切り、ねねこは鼻息を漏らした。不遜な奴め。
「まぁいい。ねねこが人になったのか、それとも家出少女なのか、それを今からテストする」
「面倒なのな……ふわぁぁぁ」
 少女は大きなアクビをして、自分の体をペロペロ舐めた。
「正解したらササミ」
「あちしに任せるのなっ! 何するのなっ! 早く言うのな!」
 ねねこの好物、ササミの名を出した途端に従順になった。……うーん、こういうところは実にねねこ的だが、どうなんだろう。まあいい、始めよう。
「…………」(アイコンタクト開始)
「ぬ? ご主人が熱視線をあちしに送ってるのな。……ああっ!」
 よし、理解したな。
「あちしのおっぱいを見てるのな?」
 ねねこは腕を組み、得心した様子で指を立てた。
「見てねーっ! ちょうど髪で隠れてるから見えないの! いやそうじゃなくてアイコンタクトしてるんだよっ!」
「ぼいーんぼいーん、なのな」
「人の話を聞けっ! つーかぼいんぼいん言うほどねーだろっ! 洗濯板も羨むほどのド貧乳だろうがっ! いや俺の好みに最適の素敵なボディなのでありがたいですが! サンクス神様!」
「ぬー……なんだかムカつくのな」
「褒めてるよ?」
「そうは思えないのな……」
「気にするな。じゃ、引き続きアイコンタクトするので理解しろ」
「ぬー……」
「…………」(アイコンタクト中)
「ぬ? ぬぬ、ぬー……ご主人、なんだかあちしの胸のあたりがムズムズするのは気のせいなのな?」
「き、気のせいダヨ?」
「……なんか、じーっと見られてる気がするのな」
「ききききき、気のせいに決まってるじゃないか。猫と言い張る奴のおっぱいに欲情するほど堕ちてないよ。いやだなあ。はっはっは」
「ぺろ」(乳首を隠してた髪をひょいと横へ)
「ナイスおっぱい!」
「じーっ」
「あ。……見てないよ?」
「明らかに見てたのな! ナイスおっぱいって言ったのな!」
「自分から見せたくせに……」
「まぁいいのな。見られて減るもんじゃないのな。それより、アイコンタクトの答えを言うのな」
「む、理解したというのか? ふん、自称猫に俺様の崇高な思考が理解できるはずがない。どうせ当てずっぽうだろ?」
「『ナイスおっぱい』な!」
「…………。当たり」
 いや最初は違うこと考えてたんだけど、おっぱいの前に思考は全てナイスおっぱいに変換されるのです。
「やったのな! さーさみ、さーさみ!」
 喜びのダンスを舞うネコミミ少女を前に、ふと我に返る。
「なぁ、本当の本当にお前はねねこなのか? どっかの家出娘とかじゃないのか? 今なら怒らないからお兄さんに本当の事を言ってみてはどうだろうか」
「ぬ、まだ言うか。あちしはねねこなのな。その証拠に、あちししか知らないご主人の秘密を知ってるのな」
「秘密? はて、清廉潔白、聖人君子を地で行く俺様に秘密なぞあろうはずがない」
「んーと……」
「ぶばー」
 少女は四つんばいになって何かを探した。自然、その後ろにいる俺の視界に隠さなくてはならない縦線が晒されるので鼻血が出る。
「……あ、あったのな! ……ん? ご主人、血まみれなのな」
「良いものを見た……良いものを見た!」
「な、泣いてるのな! むせび泣いてるのな! ちょっと怖いのな! まあいいのな。はい、これ」
「ぬ?」
 少女に手渡された一冊のノートを見て、血の気が引く。
「なぜ貴様がこれの存在を知っている!」
「ご主人が書き溜めてるエロパロ小説なのなー! うっふーんな描写満載なのなー!」
 よし、こいつを殺して俺も死のう。
「どうなのなご主人、これであちしがねねこと証明されたと……はっ、殺気なのな!」
 はっとか言いながら机に飛ぶ少女。そして再び晒される縦筋。
「ぶばー」
「ああっ、ご主人がまたしても血まみれに! ……大丈夫なのな?」
「あー、うん。大丈夫」
 適度に血が抜けて冷静になったので、改めて考えてみよう。俺の秘密小説の存在を知るものは、この世でたった一匹、この部屋で飼っているねねこだけだ。
「マジでマジにねねこなのか?」
「だから、マジでマジにねねこなのな! 何度も言ってるのな! ご主人頭悪いのな……」
「なんで人になってるの?」
「知らないのな! そんなことより、さーさみ! さーさみ!」
「そんな約束したっけ?」
「超したのな! 約束を破ったらハリセンボンの片割れと結婚するのな!」
「想像を絶する罰ですね」
 名前だけは可愛い芸人を思い出し、軽く身震いする。
「それが嫌だったら、早くササミを用意するのな。ごーよんさんにーいち」
「待て、分かったから結婚だけは! すぐ買ってくる!」
「いってらっしゃいなのなー♪」
 裸のネコミミ少女に見送られ、サンダルで道を駆ける俺だった。

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