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2019年10月15日
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【ツンデレとホワイトデー】

2010年02月22日
 一ヶ月ほど前、近所に住む年上の幼なじみ、みこねえから義理(という割に手作りで気合入ってた)チョコを貰ったので、その一ヵ月後、つまり今日、お返ししないといけない。
 しかし、お金を使うのは嫌だ。だからといってそこらの雑草をプレゼントと称して渡しても、
『はい、プレゼントふぉーゆー』
『ふむ、美麗な箱だな。それで、中身は何だ?』
『くさ』
『結婚しよう』
 となる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。なので、無難に近所のスーパーで適当な品を買おうと学校帰りに寄ると、みこねえに遭遇した。
「む? どうして貴様がこんなところにいるのだ」
 嫌そうな顔をされたので半泣きで店の外に出ようとしたら、慌てた様子のみこねえに引き止められた。
「な、何も泣かずともよい! 怒ってないぞ、私は怒ってないからな」
 幼児にするように頭をなでられた。やや屈辱。
「それで、何しに来たのだ? 母君のおつかいか? 偉いぞ」
 この人は俺を幼稚園児と勘違いしてるに違いない。お使いで褒められるのは小学生までだろう。もう高校生ですよ、俺。
「や、ただのお返……」
 待て。ここで素直にお返しを買いに来たと言ったと仮定しよう。
『ホワイトデーのお返しを買いに来たんだ』
『私へのお返しをこんなおんぼろスーパーで買うつもりか? 死んだほうがいいな』(鈍く光る刃物片手に)
 さくっぶしゅーぎにゃーぱたり。
『さよなら愛しい人』
 とBADEND一直線に違いない。適当な言い訳を!
「おかえ?」
「陸へ行きたいなあ、進化したいなあ、という進化しそこねた過去の水棲生物の記憶が突如蘇ったんだ」
「…………」
 不憫な子を見る目をしたみことに頭をなでられた。
「まあそんなこんなでぶらりとお買い物に来ただけなので、俺の事は気にせずみこねえは好きに行動してください。俺は俺で適当にうろつくから」
「何を言うか。貴様のような不審人物を放っておけるか。ほら、一緒に回るぞ」
 手を引っ張られ、一緒に店内を回ることになってしまった。困った、これではお返しの菓子を買えない。
「そうだ、今日はうちで一緒にご飯食べるか? 父も母もお前のことを心配していたぞ」
 うちは両親が共働きで忙しいので、子供の頃はよくみこねえの家で飯を食っていた。その延長で、今でもたまに飯を食べさせてもらっているが、さすがにこの歳になると食い気より申し訳なさの方が先に立つ。
「や、折角のお誘いだけど……」
「今日は特別に私がオムライスを作ってやるぞ」
「行く」
 みこねえの作るオムライスは絶品なので大好きだ。申し訳なさ? そんなのオムライスの前では塵芥に等しいですよ!
「そうか。久々に腕を振るおうとしよう」
 再びみこねえは俺の頭をなでた。やめてほしいが、機嫌よさそうになでてるので我慢しよう。ほら、大人なので。
「~♪」
 鼻歌を口ずさむみこねえと手を繋ぎ、一緒に店内を回ってると、見覚えのある女生徒を見かけた。
「あら、みことじゃない。それに、弟クンも。こんにちは」
 見覚えある女性は、よくみこねえと一緒にいる友達のようだった。とまれ、挨拶を返そう。
「こんにちは」
「はい、よくできました」
 女生徒はにっこり笑い、背伸びして俺の頭をぐりぐりなでた。……どうして年上の女性というのは俺の頭を撫でるのだろう。そういう決まりでもあるのだろうか。
「姉弟そろってお買い物?」
「別に姉弟ではない。こいつが寄ってくるだけだ。全く、迷惑な話だ」
「あらそうなの? じゃ弟クン、私と一緒に来る?」
 お誘いを受けた。どうしようかとみこねえの顔を窺う。
「す、好きにしたらいいだろう。私には関係ない」
 顔を背けながらも、みこねえは俺の手をぎゅっと握った。……うーん、やっぱみこねえと一緒にいたいな。よし、断ろう。
「ね、弟クン。……いけない遊び、しよっか?」
「する」
 思わず脊髄反射で答えると、握られた手に渾身の力が込められた。骨が軋む音がここまで聞こえてくるようだ。
「ぼぼぼくはみこねえと一緒にお買い物しているので、折角ですが辞退させてください」
「あらそう残念。じゃあね、二人とも♪」
 お姉さんはひらひらと手を振って去っていった。……したかったなあ。いけない遊び、したかったなあ!
 歯噛みして悔しがってると、みこねえが俺を睨んでるのに気がついた。
「……お前は可愛い子が相手だと、すぐホイホイついていこうとするな。……お姉ちゃんがいるというのに」
 みこねえは口を尖らせ俺を責めた。みこねえの一人称が私ではなくお姉ちゃんとなった時、それは姉ぶっている時であり、大概面倒なことになる。
「や、そ、その、男と生まれたからにはやはり女性に恥をかかせてはならないと思ったまでで! 決していけない遊びに惹かれたのではないですヨ?」
「…………」
「嘘です惹かれました男の子ですから!」
 みこねえには嘘はつけない。べべべつに無言の圧力が怖いとかじゃなくて! ホントに!
「……はぁ。お姉ちゃんはどうかと思うぞ」
「すいません」
「まったく……まぁ、着いていかなかったから、いいけど」
 ようやっと機嫌が直ったようだ。やれやれ、困った姉だ。
「ところで、お前は何を買うんだ?」
「ホワイトデーのお返しを」
「…………」
 しまった、普通に答えてしまった! いかん、俺の未来予想図(BADEND一直線)が現実のものに! 回避、かいひー!
「……誰のだ」
 底冷えのする声でみこねえが俺に尋ね……いや、詰問する。
「答えろ。誰へのお返しだ」
「みみみみみこねえへのデス」
「……へ?」
 よほど意外だったのか、みこねえは珍しく間の抜けた返事をした。
「だ、だから、みこねえへのお返し」
「……わ、私のために、か?」
 包丁ENDかと思われたが、意外にも感触は悪くなかったようで、みこねえは少し顔を赤らめて訊ねた。
「え、あ、うん。……当日にこんなスーパーで探すのもどうかと思うけど」
「いやっ、いやいやいや! 大丈夫だ、お姉ちゃんは気にしないぞ! そうか、私のためか……ふふっ、そうか!」
 途端、みこねえの機嫌がとてもよくなった。見てて怖くなるくらい。
「買うお金あるか? お姉ちゃんがあげようか?」
「い、いや、みこねえへのプレゼントなんだし、それは自分で出さないとダメだろ」
「~~~~~っ!!」
 感極まったようにみこねえが俺を抱きしめ、動物にするかのように何度も何度もほお擦りする。
「偉いぞ! 流石は自慢の弟だ!」
「み、みこねえ! 当たってる、さほど大きくはないがそれでもしっかりと自己を訴えかける二つの膨らみが当たってる!」
「ん? ……さ、触りたいのか?」
「女の子がそういうこと言うのダメー!」
「お、お姉ちゃん、お前が相手なら……」
「のー! ダメ! ばつ!」
 両手でバツを作る。
「いいから買い物すませよう! な、みこねえ?」
「その後で、ということか? ……ま、まったく、えっちな奴め」
「ちげーっ!」
 そんなこんなで買い物を終え、飯をお呼ばれし、むしゃむしゃ後、みこねえの部屋に移動する。
「さて。腹もこなれたので、ホワイトデーの真骨頂を見せる時間です」
「……ぷ、プレゼントはお前なのか? ……お、お姉ちゃん、ちょっとドキドキだぞ」
「そう実は俺がプレゼント大事にしてねってちげーよ」
「ノリツッコミだ」
 何故か拍手された。
「これ。クッキー。おいしいよ、きっと」
 そこそこ高級なクッキーがあったので、みこねえに隠れて買っておいたのだ。
「クッキーか。よし、一緒に食べよう」
「え、いや、お返しだからそれはおかしいと」
「飲み物は何がいい? コーヒーか? 紅茶か?」
「尿」
 殴られたのでコーヒーを頼む。
「ほら。熱いから気をつけろ。それとも、お姉ちゃんがふーふーしようか?」
 それはとても恥ずかしいので断る。
「ふー、ふー。……ほら、ちょうどいい温度になったぞ」
 断ったのにふーふーされた。
「みこねえにこれって間接息だよなって言ったら」
「よ、余計な事を言うな、ばかっ」
 と、怒られます。
「しかし……義理チョコだったのに、こうして律儀にお返ししてくれるなんて、お前は偉いな。お姉ちゃんは誇らしいぞ。うにうに」
 誰も見てない事をいいことに、みこねえは俺を後ろから抱っこして頬をすりすりする。
「ほら、あーん」
 そしてその状態のままクッキーを食べさせようとする。
「みこねえ、流石に恥ずかしいのでやめもがもが」
「どうだ? おいしいか?」
「もがもぎゅもぎゅごくん。おいしい」
 制止している最中にクッキーを食べさせられ感想を強要された。おいしかった。
「ふふっ、そうか」
 そして、再びすりすり。
「ほら、あーん」
「いやあのみこねえ、これはお返しなのでみこねえが食べないともがもがもが」
「おいしい?」
「もぎゅもぎゅごくん。おいしい。いやそうじゃなくて」
「んー♪」
 三度すりすり。
「みこねえ、俺ばかり食べるのはおかしいと」
「あーん♪」
「いや、その、これはみこねえのために買ったものでもがもが」
「どうだ?」
「もぐごきゅん。おいしい」
「んきゅ~~~~♪」
 またすりすりされた。
 結局、クッキーは全部俺が食べました。

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