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2026年03月21日
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【ツンデレに「俺が死んだらどうする?」って聞いたら】
2010年01月25日
今日は朝からどうも身体の調子がおかしい。死ぬのやも。
「……おいす」
そんなわけで布団被って寝てたんだけど、そんな時に限ってちなみの野郎が遊びに来たりするのは何なのか。
「……む、何やら調子が悪そうな顔。……死ぬの?」
「はは、この俺様がこんな何もない所で死ぬものか」
「…………」
何か感じ取ったのか、ちなみの顔が微妙に心配そうなものになってしまった。
「ほ、本当ダヨ? ぜーんぜん調子なんて悪くないヨ?」
「……痛いの、どこ」
「いや、だから」
「……どこ」
「え、ええと、お腹」
ちなみは何も言わず俺のそばに座ると、布団に手を突っ込み、直接俺の腹を優しくさすり始めた。
「何事か!?」
「……え、えと、お腹の内部を腐食させる魔術。相手は死ぬ」
「それは困る」
「……じゃあ、早く良くなれ」
殺す相手に良くなれってなんスかそれ、と言いそうになったが、心配そうな顔してたんで、そのまま口を閉ざす。
「……なー、ちなみ」
それからしばらくちなみの腹さすさすを受けてたのだが、いい加減暇になったので、なんとはなしにちなみに話しかける。
「……ん?」
「もし本当に俺が死んだらどうする?」
「……嬉しくてしょうがない」
言葉とは裏腹に、俺の腹にかかる力が強くなった。
「……でも、勝手に死なれるのは実に不愉快。……私の手で引導を渡したい」
「どこの戦闘民族だ、お前は」
「……スーパーちなみん。……金髪になることにより戦闘力が格段にあっぷするが、校則違反になるので変身できない」
「はいはい。まあ、ちなみを残して俺が死ぬわけないけどな」
「……困った。告白された」
「してねぇ! お前みたいな周囲に困惑を撒き散らす危険人物を放置できるほど冷たくないだけだっ!」
「……むしろタカシの方が困惑を周囲に撒き散らしているかと」
そんなわけない、と即答できない自分の行いが嫌。
「……で、どしたの。お腹」
「たぶん、寝冷え」
「…………」
「痛い痛い痛い! 無言でストマックをクローするなっ!」
「……心配して損した」
「おや、心配していたのですか」
「…………」
「痛い痛い痛い! だから無言でストマックのクローはやめろっ!」
「うるさい。ばか」
「いやはや、調子が悪いのは事実なのですが」
「……まだ調子悪いの?」
「や、ちなみが来る前に比べると雲泥だけどな。さすり続けてくれたおかげで、今は大分よくなった。サンキュな、ちなみ」
「……こ、これで心置きなく死闘ができる」
「だから、どこの戦闘民族だ。あと、ボケるなら頬を染めない。顔真っ赤だぞ、お前」
「あ、赤くなんてなってない。ばか。ばかばか」
「痛い痛い痛い! だから腹を握るなッ!」
その後も数回腹を握られたが、調子が戻るまでずっと俺の腹をさすってくれたちなみは、実はいい奴なのかもしれない。
「……おいす」
そんなわけで布団被って寝てたんだけど、そんな時に限ってちなみの野郎が遊びに来たりするのは何なのか。
「……む、何やら調子が悪そうな顔。……死ぬの?」
「はは、この俺様がこんな何もない所で死ぬものか」
「…………」
何か感じ取ったのか、ちなみの顔が微妙に心配そうなものになってしまった。
「ほ、本当ダヨ? ぜーんぜん調子なんて悪くないヨ?」
「……痛いの、どこ」
「いや、だから」
「……どこ」
「え、ええと、お腹」
ちなみは何も言わず俺のそばに座ると、布団に手を突っ込み、直接俺の腹を優しくさすり始めた。
「何事か!?」
「……え、えと、お腹の内部を腐食させる魔術。相手は死ぬ」
「それは困る」
「……じゃあ、早く良くなれ」
殺す相手に良くなれってなんスかそれ、と言いそうになったが、心配そうな顔してたんで、そのまま口を閉ざす。
「……なー、ちなみ」
それからしばらくちなみの腹さすさすを受けてたのだが、いい加減暇になったので、なんとはなしにちなみに話しかける。
「……ん?」
「もし本当に俺が死んだらどうする?」
「……嬉しくてしょうがない」
言葉とは裏腹に、俺の腹にかかる力が強くなった。
「……でも、勝手に死なれるのは実に不愉快。……私の手で引導を渡したい」
「どこの戦闘民族だ、お前は」
「……スーパーちなみん。……金髪になることにより戦闘力が格段にあっぷするが、校則違反になるので変身できない」
「はいはい。まあ、ちなみを残して俺が死ぬわけないけどな」
「……困った。告白された」
「してねぇ! お前みたいな周囲に困惑を撒き散らす危険人物を放置できるほど冷たくないだけだっ!」
「……むしろタカシの方が困惑を周囲に撒き散らしているかと」
そんなわけない、と即答できない自分の行いが嫌。
「……で、どしたの。お腹」
「たぶん、寝冷え」
「…………」
「痛い痛い痛い! 無言でストマックをクローするなっ!」
「……心配して損した」
「おや、心配していたのですか」
「…………」
「痛い痛い痛い! だから無言でストマックのクローはやめろっ!」
「うるさい。ばか」
「いやはや、調子が悪いのは事実なのですが」
「……まだ調子悪いの?」
「や、ちなみが来る前に比べると雲泥だけどな。さすり続けてくれたおかげで、今は大分よくなった。サンキュな、ちなみ」
「……こ、これで心置きなく死闘ができる」
「だから、どこの戦闘民族だ。あと、ボケるなら頬を染めない。顔真っ赤だぞ、お前」
「あ、赤くなんてなってない。ばか。ばかばか」
「痛い痛い痛い! だから腹を握るなッ!」
その後も数回腹を握られたが、調子が戻るまでずっと俺の腹をさすってくれたちなみは、実はいい奴なのかもしれない。
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【沙夜 料理】
2010年01月25日
今日は親が両方とも用事があるとかで家を留守にする。すわ餓死か、とも思ったが、俺には頼りになる幼なじみがいることを思い出した。
「ということで、沙夜。今日はお前の腕の奮い所だ。がんばって俺に飯を作ってくれ!」
そう言いながら沙夜にエプロンを渡すと、小首を傾げられた。
「いや、傾げるのではなくて。ご飯を作るのです」
しかし、それでもなお沙夜は首を傾げるばかり。あまり曲げると折れるぞと思ったその時、脳裏に嫌な情報がよぎった。
「そういや……お前、全然料理できなかったな」
沙夜は腰に手を当て、えっへんと大いばりした。
「いばるな。恥じろ。……しかし、困ったな。これでは餓死してしまう」
その言葉を聴いた途端、さっきまで得意満面だった沙夜の顔が蒼白になった。
「い、いや、そこまで深刻なことではないから心配するな。別に一日飯を抜いても死にはしない」
しかし、いつも通り俺の話なんて聞いちゃいないのか、沙夜は俺にしがみついてきゅーきゅー鳴くばかり。
「あー……うん。じゃあこうしよう、一緒に飯を作ろう」
「……?」
「つまり、俺も料理ができない。お前も料理ができない。そんな二人が飯を作ったら、どんな化学反応が起こるのだろうという、アリケンのパクリのようなものだ」
沙夜は嬉しそうに俺の手を握ってぶんぶん振った。恐らくだが、内容はともかくとして俺と一緒なのが嬉しいに違いない。
「……自意識過剰王と呼んでくれ」
「?」
「なんでもない。じゃあそういうことで、料理開始!」
もうひとつエプロンあったかな、と思いながら棚の中などを探してると、つんつんと背中をつつかれた。
「うん? どした?」
振り向くと、エプロンを装着した沙夜が、その場でくるりと回転した。そして、「どうだ?」という視線を投げかけている。
「いや、そりゃもう……100点ですよ」
がしがし沙夜の頭をなでると、沙夜は嬉しそうにきゅーきゅー鳴いた。いや、そんなのはいいんです。エプロン探さないと。
沙夜に背中を向けて再び捜索を開始すると、今度は背中に抱きついてきた。
「沙夜。動き難い」
今回も俺の話なんて聞いちゃいないのか、沙夜はご機嫌な様子で俺の背中に抱きつくばかり。仕方ないので、沙夜を引きずったままエプロンを探す。
「ないなぁ……」
背後でコクコクうなずく気配がする。
「この家にはエプロンが一個しかないのだろうか。いや、しかしそれでは洗濯した際に代えがないので困る。一つくらいはあるはずだ」
再び背後でコクコク気配を感じさせる妙な生き物をぶらさげたまま探すこと数分、
「ない」
背後から残念そうに首を振る気配がこちらに送られてきた。
「ちうわけで、沙夜。俺が指示するから、お前が作れ」
肩越しに振り向いてそう伝えると、沙夜の眉根がきゅっと寄った。困っているようだ。
「だって、ないし。それに、飯は嫁として必須スキルだぞ」
嫁と聞いて、沙夜の目の色が変わった。沙夜は俺から離れると、全身にやる気をみなぎらせる!
「おお、気合満々だな!」
沙夜はコクコクコクと鼻息荒く何度もうなずいた。
しかし、それ以上何もしようとしない。どうしたのかと思ったら、ちらちらとこちらを見ている。……まさかとは思うが。
「ええと、嫁として合格か判定を求めて……ないよな?」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「……はぁ。ええと、とてもやる気に満ち溢れているし、こんな子が嫁なら俺はもう」
なんだかとても嬉しいらしく、沙夜はきゅんきゅん鳴きながら俺に抱きつくと、顔をすりすりこすりつけまくった。
バッチリいい印象を与えたようだ。などとときメモっている場合ではない。
「それより沙夜さん、俺はそろそろ腹が減りました。何か作ってください」
そう言うと、沙夜は口をむちゅーと尖らせて目をつむった。つきだされた口唇を指でがっと掴む。
「飯です。ちゅーしてくれとは言ってません」
沙夜は俺の手を振り解くと、舌をむべーっと出した。反抗期? ……いや、そうじゃなくて、この舌をぺろぺろして腹を膨らませろ、というところか。
「その案も悪くないけど、ご飯で腹を膨らませたいです」
沙夜が落ち込んだ。
「いや、だから……ええと、それはデザートの方向でひとつ」
沙夜が簡単にやる気を取り戻した。ため息ひとつ吐いてから、冷蔵庫を開ける。
「さて、何があるかな……?」
冷蔵庫を覗きこむ俺の脇から沙夜も顔を出し、一緒に考えている。……いや、考えるフリをしてる。
「あ、卵。よし、お互い初心者だし、玉子焼きでいくか!」
沙夜はあからさまに嫌な顔をした。そんな簡単なものでは嫌なようだ。
「そうは言う(?)が、沙夜よ。料理初心者の俺たちには丁度いいレベルだと思うぞ?」
沙夜は眉根をきゅっと寄せしばし何か考えた後、こっくりうなずいた。どうにか納得してくれたようだ。
「じゃあ、料理開始ー!」
俺が大きく手を上げると、沙夜も大きく手を上げた。ついでなので沙夜を抱き上げ、その場でくるくる回る。
「軽いなあ、沙夜! まるで羽みたいだよ!」
「♪♪♪」
「しかし、回る過ぎてうぇぇぇぇぇぇっぷ」
「×××」
沙夜をその場に下ろし、倒れ付す。見れば、沙夜も目を回してた。
「うぅむ……無駄にテンションが上がってしまったがため、起こった事件であろう。あと、羽みたいって言ったのは嘘です。それ相応の重みがありました」
頭をかじられてから、料理再開。
「まず、卵を割ります。違う、壁に投げつけて割るのではなくて!」
卵を持って大きく振りかぶった沙夜を慌てて止める。びっくりした。
「この……ええと、ボールに中身を入れます。だからボールと言っても野球のボールじゃなくて!」
ボールと聞いた途端またしても振りかぶる沙夜を止める。怖いよこの子。
「じゃあ、ボール……調理器具の! ボールの上で卵を割り、中身を入れてくれ」
また振りかぶられては敵わないので、沙夜を後ろから抱っこした状態で指示を出す。この状態が気に入ったのか、沙夜はご機嫌な様子で卵を割った。
「あ」
しかし、やはりそこは料理初心者。上手に卵の殻を割れず、殻の欠片がボールに入ってしまった。
「あーあ。卵の殻入り玉子焼きを食べた俺は、ノドに卵の殻が刺さり、それが原因で死んで嘘です!!!」
半狂乱でボールを投げ捨てようとする沙夜を必死で止める。冗談も言えやしねえ。
「少しくらいなら大丈夫さ。だから、料理を続けましょう」
半泣きでいぶかしむ沙夜の頭をなでてから、料理を続ける。
「ええと、次に卵を混ぜます。まぜまぜ」
箸を沙夜に渡し、混ぜさせる。しばらく混ぜた後、沙夜がこれでいいかと目で合図してきた。
「ん、そんなところだろ。で、味付けして……とりゃーず卵はこれで完成!」
近くにあっためんつゆを適量入れさせ、万歳。遅れて沙夜も万歳。
「次に玉子焼き器の出番です。まず、コンロで暖めます」
言われたとおり玉子焼き器を暖め、沙夜は俺を見た。
「うむ、満点」
沙夜の頭をなでる。沙夜は嬉しそうに目を細めた。
「次。充分に温まったら油を流しいれてなじませ、それから先ほどの卵を半分くらい入れる」
ジュンジュワーな感じで卵を流し入れる沙夜。
「ここからが難しいぞ。少し焼けたら、手前から折りたたむように巻いて」
回転させようとするが、上手にいかず、卵が破れてしまう。沙夜は泣きそうな顔で俺を見た。
「少しくらいなら失敗しても平気さ。負けずに頑張る沙夜は偉いぞ」
ぐしぐし沙夜の頭をなでて慰める。なでなででやる気を取り戻した沙夜は、両手に握りこぶしを作って玉子焼きと相対した。
「じゃあもう一度。手前から折りたたむように……そう!」
今度は上手くいった。多少いびつではあるが、見た目はしっかり玉子焼きに見える。
「じゃ、開いてる箇所に残ってる卵を入れて、さっきの要領で焼く」
さっきのでコツを掴んだのか、沙夜は自信あふれる様子で卵を焼いた。
「おおっ、さっすが沙夜先生。やるねぇ」
「♪」
ご機嫌な様子でくるくる巻いて、完成。皿に移して試食だ。
「じゃ、まずは沙夜。お前から」
しかし、沙夜はぷるぷる首を横に振った。ハテナ、と思ってたらずずいっと俺に皿を向けた。
「あ、俺から試食?」
コクコクされたので、食べてみる。
「もぎゅもぎゅもぎゅ」
「…………」(どきどきどき)
「もぎゅもぎゅもぎゅ、ごくん」
「…………」(ばっくんばっくんばっくん)
「うん。うまい」
「!!!!!」
「痛いっ!? いきなり抱きつくな、ばか!」
嬉しさのあまりか、沙夜は突然俺に突撃する勢いで抱きついてきた。沙夜の頭が俺の腹にめり込んで結構痛い。
「♪♪♪」
「はいはい。んじゃ、お前も食べてみろ。ほれ、あーん」
あー、と鳥の雛のように口を開ける沙夜の口に玉子焼きを一切れ入れる。もきゅもきゅ咀嚼すると、沙夜の顔がほころんだ。
「な? 美味いだろ?」
沙夜はコクコクうなずいて、もきゅもきゅし続けた。リスみてえ。
「これで餓死は免れた。偉いぞ、沙夜!」
で、夕食の時間。
「…………」
テーブルに広がる、玉子焼き、玉子焼き、玉子焼き。ていうか、玉子焼きしかねえ。黄色が目に痛い。
「あー……」
沙夜をちらりと見る。期待に満ち満ちた目でこちらを見ていた。
「……もー少し、色々教えておいたほうが良かったかにゃー」
俺の声なんて聞いちゃいないのか、沙夜はにこにこしながら椅子を引いてくれた。
「……まぁ、味はいいし、折角作ってくれたのだし、いいか」
覚悟を決めて、この黄色の群れを駆逐しにかかる俺だった。
「ということで、沙夜。今日はお前の腕の奮い所だ。がんばって俺に飯を作ってくれ!」
そう言いながら沙夜にエプロンを渡すと、小首を傾げられた。
「いや、傾げるのではなくて。ご飯を作るのです」
しかし、それでもなお沙夜は首を傾げるばかり。あまり曲げると折れるぞと思ったその時、脳裏に嫌な情報がよぎった。
「そういや……お前、全然料理できなかったな」
沙夜は腰に手を当て、えっへんと大いばりした。
「いばるな。恥じろ。……しかし、困ったな。これでは餓死してしまう」
その言葉を聴いた途端、さっきまで得意満面だった沙夜の顔が蒼白になった。
「い、いや、そこまで深刻なことではないから心配するな。別に一日飯を抜いても死にはしない」
しかし、いつも通り俺の話なんて聞いちゃいないのか、沙夜は俺にしがみついてきゅーきゅー鳴くばかり。
「あー……うん。じゃあこうしよう、一緒に飯を作ろう」
「……?」
「つまり、俺も料理ができない。お前も料理ができない。そんな二人が飯を作ったら、どんな化学反応が起こるのだろうという、アリケンのパクリのようなものだ」
沙夜は嬉しそうに俺の手を握ってぶんぶん振った。恐らくだが、内容はともかくとして俺と一緒なのが嬉しいに違いない。
「……自意識過剰王と呼んでくれ」
「?」
「なんでもない。じゃあそういうことで、料理開始!」
もうひとつエプロンあったかな、と思いながら棚の中などを探してると、つんつんと背中をつつかれた。
「うん? どした?」
振り向くと、エプロンを装着した沙夜が、その場でくるりと回転した。そして、「どうだ?」という視線を投げかけている。
「いや、そりゃもう……100点ですよ」
がしがし沙夜の頭をなでると、沙夜は嬉しそうにきゅーきゅー鳴いた。いや、そんなのはいいんです。エプロン探さないと。
沙夜に背中を向けて再び捜索を開始すると、今度は背中に抱きついてきた。
「沙夜。動き難い」
今回も俺の話なんて聞いちゃいないのか、沙夜はご機嫌な様子で俺の背中に抱きつくばかり。仕方ないので、沙夜を引きずったままエプロンを探す。
「ないなぁ……」
背後でコクコクうなずく気配がする。
「この家にはエプロンが一個しかないのだろうか。いや、しかしそれでは洗濯した際に代えがないので困る。一つくらいはあるはずだ」
再び背後でコクコク気配を感じさせる妙な生き物をぶらさげたまま探すこと数分、
「ない」
背後から残念そうに首を振る気配がこちらに送られてきた。
「ちうわけで、沙夜。俺が指示するから、お前が作れ」
肩越しに振り向いてそう伝えると、沙夜の眉根がきゅっと寄った。困っているようだ。
「だって、ないし。それに、飯は嫁として必須スキルだぞ」
嫁と聞いて、沙夜の目の色が変わった。沙夜は俺から離れると、全身にやる気をみなぎらせる!
「おお、気合満々だな!」
沙夜はコクコクコクと鼻息荒く何度もうなずいた。
しかし、それ以上何もしようとしない。どうしたのかと思ったら、ちらちらとこちらを見ている。……まさかとは思うが。
「ええと、嫁として合格か判定を求めて……ないよな?」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「……はぁ。ええと、とてもやる気に満ち溢れているし、こんな子が嫁なら俺はもう」
なんだかとても嬉しいらしく、沙夜はきゅんきゅん鳴きながら俺に抱きつくと、顔をすりすりこすりつけまくった。
バッチリいい印象を与えたようだ。などとときメモっている場合ではない。
「それより沙夜さん、俺はそろそろ腹が減りました。何か作ってください」
そう言うと、沙夜は口をむちゅーと尖らせて目をつむった。つきだされた口唇を指でがっと掴む。
「飯です。ちゅーしてくれとは言ってません」
沙夜は俺の手を振り解くと、舌をむべーっと出した。反抗期? ……いや、そうじゃなくて、この舌をぺろぺろして腹を膨らませろ、というところか。
「その案も悪くないけど、ご飯で腹を膨らませたいです」
沙夜が落ち込んだ。
「いや、だから……ええと、それはデザートの方向でひとつ」
沙夜が簡単にやる気を取り戻した。ため息ひとつ吐いてから、冷蔵庫を開ける。
「さて、何があるかな……?」
冷蔵庫を覗きこむ俺の脇から沙夜も顔を出し、一緒に考えている。……いや、考えるフリをしてる。
「あ、卵。よし、お互い初心者だし、玉子焼きでいくか!」
沙夜はあからさまに嫌な顔をした。そんな簡単なものでは嫌なようだ。
「そうは言う(?)が、沙夜よ。料理初心者の俺たちには丁度いいレベルだと思うぞ?」
沙夜は眉根をきゅっと寄せしばし何か考えた後、こっくりうなずいた。どうにか納得してくれたようだ。
「じゃあ、料理開始ー!」
俺が大きく手を上げると、沙夜も大きく手を上げた。ついでなので沙夜を抱き上げ、その場でくるくる回る。
「軽いなあ、沙夜! まるで羽みたいだよ!」
「♪♪♪」
「しかし、回る過ぎてうぇぇぇぇぇぇっぷ」
「×××」
沙夜をその場に下ろし、倒れ付す。見れば、沙夜も目を回してた。
「うぅむ……無駄にテンションが上がってしまったがため、起こった事件であろう。あと、羽みたいって言ったのは嘘です。それ相応の重みがありました」
頭をかじられてから、料理再開。
「まず、卵を割ります。違う、壁に投げつけて割るのではなくて!」
卵を持って大きく振りかぶった沙夜を慌てて止める。びっくりした。
「この……ええと、ボールに中身を入れます。だからボールと言っても野球のボールじゃなくて!」
ボールと聞いた途端またしても振りかぶる沙夜を止める。怖いよこの子。
「じゃあ、ボール……調理器具の! ボールの上で卵を割り、中身を入れてくれ」
また振りかぶられては敵わないので、沙夜を後ろから抱っこした状態で指示を出す。この状態が気に入ったのか、沙夜はご機嫌な様子で卵を割った。
「あ」
しかし、やはりそこは料理初心者。上手に卵の殻を割れず、殻の欠片がボールに入ってしまった。
「あーあ。卵の殻入り玉子焼きを食べた俺は、ノドに卵の殻が刺さり、それが原因で死んで嘘です!!!」
半狂乱でボールを投げ捨てようとする沙夜を必死で止める。冗談も言えやしねえ。
「少しくらいなら大丈夫さ。だから、料理を続けましょう」
半泣きでいぶかしむ沙夜の頭をなでてから、料理を続ける。
「ええと、次に卵を混ぜます。まぜまぜ」
箸を沙夜に渡し、混ぜさせる。しばらく混ぜた後、沙夜がこれでいいかと目で合図してきた。
「ん、そんなところだろ。で、味付けして……とりゃーず卵はこれで完成!」
近くにあっためんつゆを適量入れさせ、万歳。遅れて沙夜も万歳。
「次に玉子焼き器の出番です。まず、コンロで暖めます」
言われたとおり玉子焼き器を暖め、沙夜は俺を見た。
「うむ、満点」
沙夜の頭をなでる。沙夜は嬉しそうに目を細めた。
「次。充分に温まったら油を流しいれてなじませ、それから先ほどの卵を半分くらい入れる」
ジュンジュワーな感じで卵を流し入れる沙夜。
「ここからが難しいぞ。少し焼けたら、手前から折りたたむように巻いて」
回転させようとするが、上手にいかず、卵が破れてしまう。沙夜は泣きそうな顔で俺を見た。
「少しくらいなら失敗しても平気さ。負けずに頑張る沙夜は偉いぞ」
ぐしぐし沙夜の頭をなでて慰める。なでなででやる気を取り戻した沙夜は、両手に握りこぶしを作って玉子焼きと相対した。
「じゃあもう一度。手前から折りたたむように……そう!」
今度は上手くいった。多少いびつではあるが、見た目はしっかり玉子焼きに見える。
「じゃ、開いてる箇所に残ってる卵を入れて、さっきの要領で焼く」
さっきのでコツを掴んだのか、沙夜は自信あふれる様子で卵を焼いた。
「おおっ、さっすが沙夜先生。やるねぇ」
「♪」
ご機嫌な様子でくるくる巻いて、完成。皿に移して試食だ。
「じゃ、まずは沙夜。お前から」
しかし、沙夜はぷるぷる首を横に振った。ハテナ、と思ってたらずずいっと俺に皿を向けた。
「あ、俺から試食?」
コクコクされたので、食べてみる。
「もぎゅもぎゅもぎゅ」
「…………」(どきどきどき)
「もぎゅもぎゅもぎゅ、ごくん」
「…………」(ばっくんばっくんばっくん)
「うん。うまい」
「!!!!!」
「痛いっ!? いきなり抱きつくな、ばか!」
嬉しさのあまりか、沙夜は突然俺に突撃する勢いで抱きついてきた。沙夜の頭が俺の腹にめり込んで結構痛い。
「♪♪♪」
「はいはい。んじゃ、お前も食べてみろ。ほれ、あーん」
あー、と鳥の雛のように口を開ける沙夜の口に玉子焼きを一切れ入れる。もきゅもきゅ咀嚼すると、沙夜の顔がほころんだ。
「な? 美味いだろ?」
沙夜はコクコクうなずいて、もきゅもきゅし続けた。リスみてえ。
「これで餓死は免れた。偉いぞ、沙夜!」
で、夕食の時間。
「…………」
テーブルに広がる、玉子焼き、玉子焼き、玉子焼き。ていうか、玉子焼きしかねえ。黄色が目に痛い。
「あー……」
沙夜をちらりと見る。期待に満ち満ちた目でこちらを見ていた。
「……もー少し、色々教えておいたほうが良かったかにゃー」
俺の声なんて聞いちゃいないのか、沙夜はにこにこしながら椅子を引いてくれた。
「……まぁ、味はいいし、折角作ってくれたのだし、いいか」
覚悟を決めて、この黄色の群れを駆逐しにかかる俺だった。
【成績優秀なツンデレ】
2010年01月25日
生徒会長は普段勉強なんてしないくせに、学年でトップとかふざけた状況なので呪う事にした。しかし、わら人形なぞどこで仕入れたらいいのか分からない。
「売ってる場所とか知りません?」
「私に聞くな、この馬鹿ッ!」
物知りな生徒会長に事情全部話したら怒られた。
「まあ、いいじゃん。で、知りませんか?」
「知らないし、仮に知ってても教えるわけないだろ、ばか。……まったく、どうしてこんな奴が副生徒会長なんだ?」
「恐らく、子守役として」
「だっ、誰が子供だっ、誰が!?」
「会長。かーわいいね」
会長の頭をくりくりなでると、火が点いたように怒った。
「子供じゃないっ! お前より年上だ、ばかっ!」
「はぁ」
「うー……全然敬ってる感じじゃない」
会長は腰に手をあてて俺を睨んだ。しかし、どう見ても子供が無理して大人ぶってるようにしか見えないので、自然と顔が綻んでしまう。
「に、にやにやすんな、ばかー!」
「や、つい。微笑ましさとロリコンとしての喜びが顔に」
「寄るな、変態っ!」
「嫌われた」
ショックのあまりその場にうずくまる。
「むぎゅーっ! わ、私を巻き込んでうずくまるな、ばかあ!」
「しまった、近くにちっこくて抱き心地のよさそうな物体があったせいで、つい」
言いながらも、会長のすべすべ肌が俺の駄目な部分を刺激するので、思わずほお擦りしてしまう。
「すっ、すりすりすんなあ!」
「いやはや、気持ちいい」
「がぶがぶがぶっ!」
「大変痛い!」
すりすりしてたらほっぺをがぶがぶ噛まれ、痛みのあまり手を離してしまう。会長は慌てて俺から離れ、すごく怖い顔で俺を睨んだ。
「お前なあ……ちょっとそこ座れ。説教だ」
「明日でいいですか? 今日はなんだか眠くて」
「今すぐ!」
子供の言うことをきくのも大人の役目なので、唯々諾々と座る。
「お前は普段からそうだが、目上の者を敬う精神がない」
「いやいや、敬ってますよ? 会長はこんな小さいのに毎日頑張ってるなあって」
「そこっ! “こんな小さい”ってのが余計だっ!」
「いやいや、背丈の話なのでそんな過剰に反応する必要はないかと」
「それ以外に何があるっ! ……あっ、むっ、胸か、胸なのかっ!?」
会長はつるぺたい胸を隠した。
「会長は性格も含め、全身その全てが俺のストライクゾーンに入ってるので毎日辛いです。どうしてくれる」
「うっ、うるさいっ、ばかっ! そんなの私の知ったことじゃないっ!」
「そこは『じゃ、じゃあ、……お兄ちゃん、私の全部、もらってくれる?』とか言ってくれると幸いなのですが」
「お前もう退学しろ!」
「まあそれは追々考えるとして、会長。とりあえずわら人形の話の続きを」
「しないっ! だいたい、なんで私を呪うんだ? お、おまえは……その、私が好きなのだろう?」
「はあ、まあ」
「じゃーその相手を呪うっておかしいだろう!」
「理性と感情が矛盾するなんて思春期にはよくある話ですよ」
「当の本人が冷静に言うなっ! お前が言うことは基本、何も信用できないからな……」
どうやら俺は会長に嫌われているようだ。
「じゃあ呪わないので勉強教えて、勉強。このままではテストが大変なことに」
「いい気味だ、馬鹿。誰がお前なんかに教えるか」
「しょうがない……テストの分からない問題の答えの欄には、会長の個人情報を連ねるか」
「……教えてやるから、次に生徒会室に来る時は、教科書とノート持って来い」
「ヤッタネ!」
小躍りする俺の横で、会長が小声でいつか殺すとか剣呑なこと言ってるような気がするけど気のせいだ。
「売ってる場所とか知りません?」
「私に聞くな、この馬鹿ッ!」
物知りな生徒会長に事情全部話したら怒られた。
「まあ、いいじゃん。で、知りませんか?」
「知らないし、仮に知ってても教えるわけないだろ、ばか。……まったく、どうしてこんな奴が副生徒会長なんだ?」
「恐らく、子守役として」
「だっ、誰が子供だっ、誰が!?」
「会長。かーわいいね」
会長の頭をくりくりなでると、火が点いたように怒った。
「子供じゃないっ! お前より年上だ、ばかっ!」
「はぁ」
「うー……全然敬ってる感じじゃない」
会長は腰に手をあてて俺を睨んだ。しかし、どう見ても子供が無理して大人ぶってるようにしか見えないので、自然と顔が綻んでしまう。
「に、にやにやすんな、ばかー!」
「や、つい。微笑ましさとロリコンとしての喜びが顔に」
「寄るな、変態っ!」
「嫌われた」
ショックのあまりその場にうずくまる。
「むぎゅーっ! わ、私を巻き込んでうずくまるな、ばかあ!」
「しまった、近くにちっこくて抱き心地のよさそうな物体があったせいで、つい」
言いながらも、会長のすべすべ肌が俺の駄目な部分を刺激するので、思わずほお擦りしてしまう。
「すっ、すりすりすんなあ!」
「いやはや、気持ちいい」
「がぶがぶがぶっ!」
「大変痛い!」
すりすりしてたらほっぺをがぶがぶ噛まれ、痛みのあまり手を離してしまう。会長は慌てて俺から離れ、すごく怖い顔で俺を睨んだ。
「お前なあ……ちょっとそこ座れ。説教だ」
「明日でいいですか? 今日はなんだか眠くて」
「今すぐ!」
子供の言うことをきくのも大人の役目なので、唯々諾々と座る。
「お前は普段からそうだが、目上の者を敬う精神がない」
「いやいや、敬ってますよ? 会長はこんな小さいのに毎日頑張ってるなあって」
「そこっ! “こんな小さい”ってのが余計だっ!」
「いやいや、背丈の話なのでそんな過剰に反応する必要はないかと」
「それ以外に何があるっ! ……あっ、むっ、胸か、胸なのかっ!?」
会長はつるぺたい胸を隠した。
「会長は性格も含め、全身その全てが俺のストライクゾーンに入ってるので毎日辛いです。どうしてくれる」
「うっ、うるさいっ、ばかっ! そんなの私の知ったことじゃないっ!」
「そこは『じゃ、じゃあ、……お兄ちゃん、私の全部、もらってくれる?』とか言ってくれると幸いなのですが」
「お前もう退学しろ!」
「まあそれは追々考えるとして、会長。とりあえずわら人形の話の続きを」
「しないっ! だいたい、なんで私を呪うんだ? お、おまえは……その、私が好きなのだろう?」
「はあ、まあ」
「じゃーその相手を呪うっておかしいだろう!」
「理性と感情が矛盾するなんて思春期にはよくある話ですよ」
「当の本人が冷静に言うなっ! お前が言うことは基本、何も信用できないからな……」
どうやら俺は会長に嫌われているようだ。
「じゃあ呪わないので勉強教えて、勉強。このままではテストが大変なことに」
「いい気味だ、馬鹿。誰がお前なんかに教えるか」
「しょうがない……テストの分からない問題の答えの欄には、会長の個人情報を連ねるか」
「……教えてやるから、次に生徒会室に来る時は、教科書とノート持って来い」
「ヤッタネ!」
小躍りする俺の横で、会長が小声でいつか殺すとか剣呑なこと言ってるような気がするけど気のせいだ。
【男がツンデレを起こしたら】
2010年01月25日
「うー……いかん、ダメだ。おい別府、少し寝るから20分くらいしたら起こせ」
生徒会室で書類を片付けてると、会長がそんなことを言った。
「任せてください、会長。寝たことを後悔するくらい素晴らしい起こし方をしますので」
「普通に起こせ! ……あと、いちおー言っておくが、変なことしたら絶対殺すからな」
「変なこと。と言うと、具体的にはどのような」
「そっ、それは、その……ええいっ、そうやって私をからかう行為全てだっ!」
会長は顔を真っ赤にして俺を一発殴ると、肩をいからせたままソファの元へ歩き、そのまま座った。
「いーか、絶対変なことするなよ! 絶対だかんなっ!」
「ダチョウ倶楽部か。竜ちゃん最近病的な痩せ方してて心配ですよね」
「違うっ! そーゆーのではないっ! 少しでも私に触れてみろ、その時がお前の最後だからなっ!」
「触れずにどうやって起こせと言うのですか。超能力?」
「うるさいっ! もーいい、私は寝るからな!」
それだけ言って、会長は備え付けてある毛布を頭からかぶってしまった。ものの数秒もしないうちに、寝息が俺の耳まで届いてきた。
「どれだけ眠かったんだか……」
とまれ、俺は俺の仕事を片付けよう。
しばらく黙々と書類を片付けてると、会長が寝てから20分ほど経った。さて、そろそろ起こすか。
足音を立てないよう注意しながら、会長の下へゆっくり歩み寄る。
「ふひゃー……ふひゃー……」
頭までかぶっていた毛布はすっかり剥ぎ取られており、見事なまでの寝相の悪さを俺に見せ付けていた。制服の裾がまくれ、腹が丸出しだ。へそが可愛い。
「むにゅむゆ……むー」
さて、どうやってこの愉快生物を起こそう。触ることは禁止されていたが、そんなことは俺の、俺様の膨れ上がるパッションの前には無効だ。
とりあえず、さっきから愉快な寝息を立てる口元をどうにかしてみよう。そっと、会長の口に指を差し入れる。
「む……ゆ? ……むー」
変化なし。てっきり擬似フェラとかしてくれると思ったのに! がむでぶ!
それはともかく次だ次。指を引き抜き今度は……って、指が抜けねえ!
「あぎあぎあぎ」
「俺の指が!?」
何と勘違いしてるのだか知らないが、会長が俺の指を捕食し始めた! がじがじがじと結構な力でかじられており、このままではヤのつく職業と間違われかねない!
「待て会長、待て! 大変痛いのであぎあぎは勘弁!」
「……んぅ?」
「甘噛みとかならウェルカムなのでそっちの方向でひとつ!」
「……あぎあぎあぎ」
「大変痛い!」
起きてるのか寝てるのか分からないが、とにかく俺の指が大変に痛い。ここは空いてる手でどうにかすべきだと判断したので断行! 会長のほっぺをむにーっと引っ張る!
「これならさしもの会長も起きるだろ! 起きて俺の指から離れるのだ!」
「……ぅゆ?」
会長の目がうっすら開いた! 今だ、ほっぺむにーの力をさらに上げるのだ!
「くらえっ! 俺の持てる力の全て、ここにぶつけてやるっ!」
「……ほっぺ、いたいー」
「ああごめんねごめんなさい会長俺が全部悪かったです」
夢うつつの会長には勝てず、すぐさま手を離して土下座。しようとしたが、未だ指を食われたままなのでできない。
「……ん? ……うあっ、何だコレ!?」
ようやっと目が覚めたのか、会長は俺の指をぷっと吐き出した。すぐさま保護。痛かった。
「やっぱお前か、別府! 変なことするなって言ったのに!」
「幼女が寝てたら変なことするに決まってるじゃないですか」
「幼女じゃないっ! 私はお前より年上だっ! あと、そんなことを当然のように言うな、この変態っ!」
「まあそんなことより擬似フェラしてくれませんか? 不完全燃焼でどうにもこうにも」
「ふ、ふぇ……!?」
「そう、フェラ。俺の指をアレに例えて、ちゅぴちゅぱお願いします」
真摯に頼んだのに、ダメみたい。だって、会長が怒りのあまり震えてるんですもの。
「……ああ、そうだ。殺そう」
「やめて」
何故か生徒会室に置いてある木刀を手に取り、ゆらりと会長がこっちに来たので部屋から飛び出て逃げる。
「逃げるなっ、別府!」
「いやホントごめんなさいもう指ちゅぱしてくれなんて言いませんから!」
「そっ、そーゆーことを大声で叫ぶなっ、ばかーっ!」
夕暮れの校舎を二人で駆けずり回りました。まあ、捕まりましたけど。
生徒会室で書類を片付けてると、会長がそんなことを言った。
「任せてください、会長。寝たことを後悔するくらい素晴らしい起こし方をしますので」
「普通に起こせ! ……あと、いちおー言っておくが、変なことしたら絶対殺すからな」
「変なこと。と言うと、具体的にはどのような」
「そっ、それは、その……ええいっ、そうやって私をからかう行為全てだっ!」
会長は顔を真っ赤にして俺を一発殴ると、肩をいからせたままソファの元へ歩き、そのまま座った。
「いーか、絶対変なことするなよ! 絶対だかんなっ!」
「ダチョウ倶楽部か。竜ちゃん最近病的な痩せ方してて心配ですよね」
「違うっ! そーゆーのではないっ! 少しでも私に触れてみろ、その時がお前の最後だからなっ!」
「触れずにどうやって起こせと言うのですか。超能力?」
「うるさいっ! もーいい、私は寝るからな!」
それだけ言って、会長は備え付けてある毛布を頭からかぶってしまった。ものの数秒もしないうちに、寝息が俺の耳まで届いてきた。
「どれだけ眠かったんだか……」
とまれ、俺は俺の仕事を片付けよう。
しばらく黙々と書類を片付けてると、会長が寝てから20分ほど経った。さて、そろそろ起こすか。
足音を立てないよう注意しながら、会長の下へゆっくり歩み寄る。
「ふひゃー……ふひゃー……」
頭までかぶっていた毛布はすっかり剥ぎ取られており、見事なまでの寝相の悪さを俺に見せ付けていた。制服の裾がまくれ、腹が丸出しだ。へそが可愛い。
「むにゅむゆ……むー」
さて、どうやってこの愉快生物を起こそう。触ることは禁止されていたが、そんなことは俺の、俺様の膨れ上がるパッションの前には無効だ。
とりあえず、さっきから愉快な寝息を立てる口元をどうにかしてみよう。そっと、会長の口に指を差し入れる。
「む……ゆ? ……むー」
変化なし。てっきり擬似フェラとかしてくれると思ったのに! がむでぶ!
それはともかく次だ次。指を引き抜き今度は……って、指が抜けねえ!
「あぎあぎあぎ」
「俺の指が!?」
何と勘違いしてるのだか知らないが、会長が俺の指を捕食し始めた! がじがじがじと結構な力でかじられており、このままではヤのつく職業と間違われかねない!
「待て会長、待て! 大変痛いのであぎあぎは勘弁!」
「……んぅ?」
「甘噛みとかならウェルカムなのでそっちの方向でひとつ!」
「……あぎあぎあぎ」
「大変痛い!」
起きてるのか寝てるのか分からないが、とにかく俺の指が大変に痛い。ここは空いてる手でどうにかすべきだと判断したので断行! 会長のほっぺをむにーっと引っ張る!
「これならさしもの会長も起きるだろ! 起きて俺の指から離れるのだ!」
「……ぅゆ?」
会長の目がうっすら開いた! 今だ、ほっぺむにーの力をさらに上げるのだ!
「くらえっ! 俺の持てる力の全て、ここにぶつけてやるっ!」
「……ほっぺ、いたいー」
「ああごめんねごめんなさい会長俺が全部悪かったです」
夢うつつの会長には勝てず、すぐさま手を離して土下座。しようとしたが、未だ指を食われたままなのでできない。
「……ん? ……うあっ、何だコレ!?」
ようやっと目が覚めたのか、会長は俺の指をぷっと吐き出した。すぐさま保護。痛かった。
「やっぱお前か、別府! 変なことするなって言ったのに!」
「幼女が寝てたら変なことするに決まってるじゃないですか」
「幼女じゃないっ! 私はお前より年上だっ! あと、そんなことを当然のように言うな、この変態っ!」
「まあそんなことより擬似フェラしてくれませんか? 不完全燃焼でどうにもこうにも」
「ふ、ふぇ……!?」
「そう、フェラ。俺の指をアレに例えて、ちゅぴちゅぱお願いします」
真摯に頼んだのに、ダメみたい。だって、会長が怒りのあまり震えてるんですもの。
「……ああ、そうだ。殺そう」
「やめて」
何故か生徒会室に置いてある木刀を手に取り、ゆらりと会長がこっちに来たので部屋から飛び出て逃げる。
「逃げるなっ、別府!」
「いやホントごめんなさいもう指ちゅぱしてくれなんて言いませんから!」
「そっ、そーゆーことを大声で叫ぶなっ、ばかーっ!」
夕暮れの校舎を二人で駆けずり回りました。まあ、捕まりましたけど。
【ツンデレに今年もあっという間に過ぎちゃったねって言ったら】
2010年01月25日
みことの家に遊びに来たらコタツがあったので出られなくなったでゴザルの巻。
「うう……ここは天上の世界か?」
「私の家だ。温まったら帰れ」
「今日もみことは冷たいね。もう俺は泣きそうだが、そのためには水分を補給する必要があるのでコーヒー等をがぶ飲みしたいのでコーヒーください」
「素直にコーヒーをくれとだけ言え! 回りくどい!」
「本当は尿のくだりがあったのだが、それを言うと怒られると思ったので言わなかった英断を褒めろ」
「黙るか今すぐ出て行くか好きな方を選べ」
寒いのは嫌なので黙ることにする。
「まったく……それで、砂糖は何杯入れるんだ?」
「一杯」
「なんだ、たったそれだけでいいのか?」
みことはカップにお湯を注ぎ、インスタントコーヒーと砂糖をそれぞれスプーン一杯入れ、くるくるとかき混ぜて俺に渡した。そして、今度は自分のカップにコーヒー粉末一杯と砂糖を一杯二杯三杯四杯五杯!?
「いや、あの。入れ過ぎかと」
「……甘いの好きなんだ。わっ、悪いか!?」
逆切れな感じで迫られ、いやーんな感じだ。だが、羞恥で顔が赤いのでイーブンということで。
「悪くない悪くない、全然悪くないです。むしろきゃわいくて微笑ましいですが、あまり砂糖を入れると歯医者が怖いなあ、と」
ぴたり、とみことの手が止まる。
「……お前はいちいち嫌なことを言うな」
「いやぁ。うへへへ」
「褒めてないっ! 何を喜んでいるか!」
「褒められることなんてそうそうないから、間違えがちなんだ。隙さえあれば褒められたと勘違いする努力は怠ってないんだ」
「今日も無駄な努力を邁進中だな」
「いやあ。えへへへ」
「だから、褒めてないッ!」
ひとしきり無駄に怒られてから、ずずずっとコーヒーを飲む。特別上等なコーヒーというわけではなさそう(失礼)だが、こうも寒い日だと何か普段より美味しく感じる。
「……それとも、そこにみことがいるからそう感じるのだろうか」
「む? 何の話だ?」
「独り言」
「……今日も頭が駄目な感じだな、お前は」
「悲しい感じだ」
ずずずずっと再びカップを傾ける。
「そういや、そろそろ今年も終わりだな。毎年思うが、早かったな」
「残念ながら、それだけは貴様に同意だ」
「あと、毎年思うが、みことは可愛いなあと思うのでちゅーとかしたい。そうだ、ちゅーしませんか?」
「全く同意せんっ!」
「何ィッ!? この流れだと絶対間違えて同意すると思ったのに! 畜生、この世に絶対なんて存在しないのか!」
可哀想な子を見る目で見られた。
「……可哀想だな、お前は」
見るだけでなく、実際に言われた。
「まあいいや……いつかみことの方から『はきゅん♪ ご主人様の魅力にくらくらぷーですにゃん♪』とか言わせてやる」
「そんなのがお前の好みなのか?」
「そんな奴がいたら石投げる」
「むしろ私がお前に石を投げたい気分だ」
「酷いことを言う」
卓上に置かれたミカンの皮を剥く。おいしそうだが、とりあえず俺の主義として白い筋を剥く。
「あ、私にもくれ」
「ん」
「うむ。……ふむ、甘い。もう一房くれ」
「ん」
「ふむ。むぐむぐ……うん、もう一房」
「もう自分で剥け」
「誰のミカンだ?」
「……はい」
「うむ。……ふふ、甘くてうまいな、このミカンは」
「白い筋を剥くばかりで、まだ俺の口には入ってないので分かりません」
「ふふ、頑張れ白い筋剥き士」
「FFの新しいジョブみたいだな。敵がミカン系の時のみ絶大なる力を発揮するが、普段はたまねぎせんし以下の戦力だ」
「……なんだ、ミカン系の敵って」
「最近のFFはしてないので知らないので憶測だが、クリア後の裏ダンジョンに出てくるんじゃないか? FF5のオメガとかの役どころで」
「ふふ。裏ボスがミカンと知ったときのプレーヤーの絶望は如何ほどだろうな」
「その時に俺のような白い筋剥き士がいたら何の苦労もなく倒せるのだが、ミカン以外にはまるで役に立たないマゾ職を育ててる奴なんていないだろうからな」
「じゃあ、私が冒険する時は特別に貴様を連れていってやる。光栄に思え?」
「へへー」
「ミカンを倒すまでは、私が守ってやる。……だが、いざという時は、ちゃんと私を守ってくれよ?」
何かを試すような視線に、どきりとする。なんだ、適当な嘘話じゃないのか?
「……まあ、俺でどれだけ力になれるか分からんが、守るよ。ちゃんと」
嘘話ではなく、そういう話だと思ったので、真面目に答える。
「……ふふ。合格」
みことは目を細めて俺の頭をなでた。
「やれやれ、一体何の話だったんだか」
「さてな」
みことは悪戯っぽく笑って、みかんを一房口に入れた。
「ふむ。ごちそうさま」
「ああ。……おや、俺の口にひとつも入らないうちにミカンが消えた」
「残念なことだな」
「悔しいのでここで尿を漏らしてやる」
「その瞬間貴様の首が飛ぶと思え」
「残忍すぎる刑に尿意が消滅しました」
「それでいい。……ほ、褒美だ、ほら、口を開けろ」
まだ残っていたのか、みことの手にみかんが一房あった。そして、頬を赤く染めながらも、俺に差し出しているではないか。
「え、ええと」
「あ、あーんだ。あーんをしろ」
「がー!」
「あーんだ! がーではない!」
「混乱したんだ」
「冷静に説明するなっ! ……ほ、ほら、早く。あーん」
「あ、あーん」
ぽい、と口の中にミカンが入れられる。
「……ど、どうだ?」
「もぐもぐもぐ。大変おいしいです」
「……そ、そうか」
「あと、あーんしてくれた喜びの舞を踊りたいのですがよろしいか?」
「ふっ、不許可だっ! い、いいか、誰にもこのこと言うなよ!?」
「知らず弱みを手に入れた!」
「言ったら殺す」
「誰にも言いません」
あーんをしてくれた人と同じ台詞とも思えないが、大変怖かったので即答する。
「それでいい。……な、なあ。寒いから、そっちへ行っていいか?」
「え、あ、は、はい」
みことは立ち上がると、俺のすぐ隣に移動し、コタツの中に入った。
「…………」
「う」
みことはコタツの中で俺の手をとると、きゅっと握った。
「へへー。……暖かいな?」
「ははははははははい」
「緊張しすぎだッ! ……わ、私まで緊張するじゃないか」
「い、いやあの、あまりこういう機会に恵まれなかったもので。脳内でなら幾度となく経験したのですが」
「……そ、そんなの、私だってそうだ」
「みことにも妄想の気が?」
「そっちじゃないっ! ……こ、こういうことをしたことがない、って話だ」
ぎゅっ、と強く手が握られる。それに釣られるように、俺も手を握り返す。
「……ふん。……貴様なんかが私をドキドキさせるなんて、生意気だ」
「大丈夫だ、恐らく俺の方がみことの数倍ドキドキしてる」
「な、何を言うか! 絶対私の方がドキドキしてるぞ!」
「何を張り合ってるか」
「だ、だって……むー」
みことはちょっと怒ったように頬を小さく膨らませた。何その技術。俺の脳を破壊する気ですね。
「……私の方が、絶対ドキドキしてる」
「そ、そうか。そうかもな。ははははは」
いかん。まずい。これは本気でまずい。このままでは。
「……ちょ、ちょっとだけ」
みことはそっと俺に身体を預けた。そして、俺の胸に顔を埋めているではないか。何これ。夢?
「……な、何コレ。……頭とけそう」
「そうだ、夢だ。こんな幸せなこと、現実にあるはずがない」
「……ゆ、夢じゃないぞ、ばか」
みことは俺を見上げながら、ちょっと怒ったように口をとがらせていた。
「じゃ、じゃあ……」
恐る恐る、みことの頭に手をあて、ゆっくりなでてみる。
「……も、もっと」
「こ、こうか?」
「……うん」
「…………」(無心になでなで)
「……んー♪」
猫のように目を細めて、みことは微笑んだ。よし、もう夢でも現実でもどっちでもいい。目の前にみことがいるなら、それで。
「いや……みことは可愛いなあ」
「んぅ?」
「そう、お前は可愛いなあって話」
「んー♪」
ゴロゴロのどを鳴らす勢いでみことが俺にしがみつく。はぐはぐと甘噛みを繰り返しているのは何なのか。
「…………」(じーっ)
そして、ついさっき気がついたが、ドアの隙間から覗いてるあの人影は何なのか。マジで。
「えーっと……みこと?」
「んー。もっとなでなでー」
「あ、いや、うん。それもいいんだけど」
「んー?」
「あの……あれ、誰?」
「ん? ……ッ!!!!?」
俺が指差した先を見た瞬間、みことの毛が逆立った。すげぇ。
「はっ、母上っ!? 何を覗いてるか!」
「あ、あらあら、見つかっちゃった」
ドアを押し開けて現れたのは、みことの母親だった。
「えっとね、お母さん、お菓子でもどうかなーって思って持って来たの。そうしたらね、中から声が聞こえたから、ちょーっと聞き耳立ててたの。そしたら面白そうなことになってたから♪」
「なってたから、じゃないっ!」
「あらあら、怒られちゃった。ところでみことちゃん?」
「なんだ?」
「いつまで彼氏と抱き合ってるの?」
「ん? ……っ!!?」
顔面全てを一瞬で赤色に染めあげ、みことは俺から勢いよく離れた。
「はっ、離れろっ、馬鹿者!」
「ええっ!? いやでも、みことからくっついてきたような」
「うっ、うるさいっ! 貴様の記憶違いだっ!」
「え~? お母さんも見てたけど、みことちゃんからくっついてたわよ?」
「母上っ!?」
「ええと、おばさん。あまり聞きたくないのですが、どこから見てました?」
「えっとねぇ、みことちゃんが彼氏にあーん♪ ってしてるところら辺り?」
ほほう。つまり、見られたくない辺りほぼ全部ですね。
「あ、あ、あ……」
みことの顔が赤くなったり青くなったりしていて大変愉快。
「で……」
「で?」
「出て行けーっ!!!」
癇癪を起こしたみことにより、俺もおばさんも追い出された。
「あらあら、お母さんも追い出されちゃった。……やりすぎちゃったかしら?」
おっとりした様子でおばさんがため息を吐いた。
「多分に。まあ、とりあえず今日は帰ります。またそのうち来ます」
「ええ。みことちゃんをよろしくね?」
「もちろんです」
「……あの、それで、どうだった?」
「はい?」
「だから……あら? まだしてないのかしら?」
どででででっという音がしたかと思ったら、勢いよくみことの部屋のドアが開いた。
「してないっ!」
半泣きのみことが大声で答えた。
「あらあら」
「ていうかだなっ、もう帰れっ! いつまで人の部屋の前で話してるんだっ!」
「実の親に向かって酷いことを言うな、お前は」
「貴様に言ってるんだ、この馬鹿っ!」
もう何に怒ってるんだか分からない様子でみことが俺に噛み付くように叫んだ。
「あらあら、駄目よみことちゃん。彼氏に馬鹿なんて言っちゃ」
「さっきから思ってたが、こいつは彼氏なんかじゃないっ!」
「そうです。俺はただの肉奴隷です」
「まあ! 最近の子は進んでるのねぇ……」
「信じるなあっ! 帰れーっ!」
外まで追い出された。しょうがない、今日は帰ろう。
……と思っていたら、携帯にメール着信。相手は……みことだ。
『今日のこと誰かに言ったら殺す。絶対殺す。墓まで持っていけ。ていうかもう明日殺す』
殺人予告だった。とても怖かったので返信する。
『殺されるくらいなら言いふらす。それが嫌なら今日みたいにイチャイチャしろ』
送信したら、すぐ電話がかかってきた。
『イチャイチャなどしてないっ!』
「したじゃん」
『してないっ! アレは……そう、一種の気の迷いだっ! だから忘れろ、いいなっ!?』
「断る! 俺の記憶の中で最も光り輝くものを、そう簡単に忘れることが出来ようか!」
『だっ……!? う、き、貴様……う~!』
「最も、忘れるのは無理でも、口封じは可能です」
『や、やはり殺……』
「怖いこと言うな。さっきメールしたが、それと同じことだ。今日みたくイチャイチャすると約束するなら、決して口外しないと約束しよう」
『だ、だからイチャイチャなどしてないっ!』
「それはどうでもいい。YESかNOか!?」
『う、うう、う~……わ、分かった』
「マジかっ!? YEAH!!!」
『うるさいっ! 叫ぶな、馬鹿! い、いいか、私は貴様に強要されたから仕方なくするのだぞ? 決して私が望んでのことではないのだからな!』
「はいはい、はいはいはい」
『真面目に聞けーっ! いいか、私は本当に貴様に強要されたからで』
「はっはっは。では、また後日」
『おっ、おいっ、話はまだ終わっ』
通話終了。さて、約束はとりつけた。いつになるかまだ決めてないが、その時が大変楽しみだ。喜びのあまりスキップしたら近所の犬に吠えられた。悲しい。
「うう……ここは天上の世界か?」
「私の家だ。温まったら帰れ」
「今日もみことは冷たいね。もう俺は泣きそうだが、そのためには水分を補給する必要があるのでコーヒー等をがぶ飲みしたいのでコーヒーください」
「素直にコーヒーをくれとだけ言え! 回りくどい!」
「本当は尿のくだりがあったのだが、それを言うと怒られると思ったので言わなかった英断を褒めろ」
「黙るか今すぐ出て行くか好きな方を選べ」
寒いのは嫌なので黙ることにする。
「まったく……それで、砂糖は何杯入れるんだ?」
「一杯」
「なんだ、たったそれだけでいいのか?」
みことはカップにお湯を注ぎ、インスタントコーヒーと砂糖をそれぞれスプーン一杯入れ、くるくるとかき混ぜて俺に渡した。そして、今度は自分のカップにコーヒー粉末一杯と砂糖を一杯二杯三杯四杯五杯!?
「いや、あの。入れ過ぎかと」
「……甘いの好きなんだ。わっ、悪いか!?」
逆切れな感じで迫られ、いやーんな感じだ。だが、羞恥で顔が赤いのでイーブンということで。
「悪くない悪くない、全然悪くないです。むしろきゃわいくて微笑ましいですが、あまり砂糖を入れると歯医者が怖いなあ、と」
ぴたり、とみことの手が止まる。
「……お前はいちいち嫌なことを言うな」
「いやぁ。うへへへ」
「褒めてないっ! 何を喜んでいるか!」
「褒められることなんてそうそうないから、間違えがちなんだ。隙さえあれば褒められたと勘違いする努力は怠ってないんだ」
「今日も無駄な努力を邁進中だな」
「いやあ。えへへへ」
「だから、褒めてないッ!」
ひとしきり無駄に怒られてから、ずずずっとコーヒーを飲む。特別上等なコーヒーというわけではなさそう(失礼)だが、こうも寒い日だと何か普段より美味しく感じる。
「……それとも、そこにみことがいるからそう感じるのだろうか」
「む? 何の話だ?」
「独り言」
「……今日も頭が駄目な感じだな、お前は」
「悲しい感じだ」
ずずずずっと再びカップを傾ける。
「そういや、そろそろ今年も終わりだな。毎年思うが、早かったな」
「残念ながら、それだけは貴様に同意だ」
「あと、毎年思うが、みことは可愛いなあと思うのでちゅーとかしたい。そうだ、ちゅーしませんか?」
「全く同意せんっ!」
「何ィッ!? この流れだと絶対間違えて同意すると思ったのに! 畜生、この世に絶対なんて存在しないのか!」
可哀想な子を見る目で見られた。
「……可哀想だな、お前は」
見るだけでなく、実際に言われた。
「まあいいや……いつかみことの方から『はきゅん♪ ご主人様の魅力にくらくらぷーですにゃん♪』とか言わせてやる」
「そんなのがお前の好みなのか?」
「そんな奴がいたら石投げる」
「むしろ私がお前に石を投げたい気分だ」
「酷いことを言う」
卓上に置かれたミカンの皮を剥く。おいしそうだが、とりあえず俺の主義として白い筋を剥く。
「あ、私にもくれ」
「ん」
「うむ。……ふむ、甘い。もう一房くれ」
「ん」
「ふむ。むぐむぐ……うん、もう一房」
「もう自分で剥け」
「誰のミカンだ?」
「……はい」
「うむ。……ふふ、甘くてうまいな、このミカンは」
「白い筋を剥くばかりで、まだ俺の口には入ってないので分かりません」
「ふふ、頑張れ白い筋剥き士」
「FFの新しいジョブみたいだな。敵がミカン系の時のみ絶大なる力を発揮するが、普段はたまねぎせんし以下の戦力だ」
「……なんだ、ミカン系の敵って」
「最近のFFはしてないので知らないので憶測だが、クリア後の裏ダンジョンに出てくるんじゃないか? FF5のオメガとかの役どころで」
「ふふ。裏ボスがミカンと知ったときのプレーヤーの絶望は如何ほどだろうな」
「その時に俺のような白い筋剥き士がいたら何の苦労もなく倒せるのだが、ミカン以外にはまるで役に立たないマゾ職を育ててる奴なんていないだろうからな」
「じゃあ、私が冒険する時は特別に貴様を連れていってやる。光栄に思え?」
「へへー」
「ミカンを倒すまでは、私が守ってやる。……だが、いざという時は、ちゃんと私を守ってくれよ?」
何かを試すような視線に、どきりとする。なんだ、適当な嘘話じゃないのか?
「……まあ、俺でどれだけ力になれるか分からんが、守るよ。ちゃんと」
嘘話ではなく、そういう話だと思ったので、真面目に答える。
「……ふふ。合格」
みことは目を細めて俺の頭をなでた。
「やれやれ、一体何の話だったんだか」
「さてな」
みことは悪戯っぽく笑って、みかんを一房口に入れた。
「ふむ。ごちそうさま」
「ああ。……おや、俺の口にひとつも入らないうちにミカンが消えた」
「残念なことだな」
「悔しいのでここで尿を漏らしてやる」
「その瞬間貴様の首が飛ぶと思え」
「残忍すぎる刑に尿意が消滅しました」
「それでいい。……ほ、褒美だ、ほら、口を開けろ」
まだ残っていたのか、みことの手にみかんが一房あった。そして、頬を赤く染めながらも、俺に差し出しているではないか。
「え、ええと」
「あ、あーんだ。あーんをしろ」
「がー!」
「あーんだ! がーではない!」
「混乱したんだ」
「冷静に説明するなっ! ……ほ、ほら、早く。あーん」
「あ、あーん」
ぽい、と口の中にミカンが入れられる。
「……ど、どうだ?」
「もぐもぐもぐ。大変おいしいです」
「……そ、そうか」
「あと、あーんしてくれた喜びの舞を踊りたいのですがよろしいか?」
「ふっ、不許可だっ! い、いいか、誰にもこのこと言うなよ!?」
「知らず弱みを手に入れた!」
「言ったら殺す」
「誰にも言いません」
あーんをしてくれた人と同じ台詞とも思えないが、大変怖かったので即答する。
「それでいい。……な、なあ。寒いから、そっちへ行っていいか?」
「え、あ、は、はい」
みことは立ち上がると、俺のすぐ隣に移動し、コタツの中に入った。
「…………」
「う」
みことはコタツの中で俺の手をとると、きゅっと握った。
「へへー。……暖かいな?」
「ははははははははい」
「緊張しすぎだッ! ……わ、私まで緊張するじゃないか」
「い、いやあの、あまりこういう機会に恵まれなかったもので。脳内でなら幾度となく経験したのですが」
「……そ、そんなの、私だってそうだ」
「みことにも妄想の気が?」
「そっちじゃないっ! ……こ、こういうことをしたことがない、って話だ」
ぎゅっ、と強く手が握られる。それに釣られるように、俺も手を握り返す。
「……ふん。……貴様なんかが私をドキドキさせるなんて、生意気だ」
「大丈夫だ、恐らく俺の方がみことの数倍ドキドキしてる」
「な、何を言うか! 絶対私の方がドキドキしてるぞ!」
「何を張り合ってるか」
「だ、だって……むー」
みことはちょっと怒ったように頬を小さく膨らませた。何その技術。俺の脳を破壊する気ですね。
「……私の方が、絶対ドキドキしてる」
「そ、そうか。そうかもな。ははははは」
いかん。まずい。これは本気でまずい。このままでは。
「……ちょ、ちょっとだけ」
みことはそっと俺に身体を預けた。そして、俺の胸に顔を埋めているではないか。何これ。夢?
「……な、何コレ。……頭とけそう」
「そうだ、夢だ。こんな幸せなこと、現実にあるはずがない」
「……ゆ、夢じゃないぞ、ばか」
みことは俺を見上げながら、ちょっと怒ったように口をとがらせていた。
「じゃ、じゃあ……」
恐る恐る、みことの頭に手をあて、ゆっくりなでてみる。
「……も、もっと」
「こ、こうか?」
「……うん」
「…………」(無心になでなで)
「……んー♪」
猫のように目を細めて、みことは微笑んだ。よし、もう夢でも現実でもどっちでもいい。目の前にみことがいるなら、それで。
「いや……みことは可愛いなあ」
「んぅ?」
「そう、お前は可愛いなあって話」
「んー♪」
ゴロゴロのどを鳴らす勢いでみことが俺にしがみつく。はぐはぐと甘噛みを繰り返しているのは何なのか。
「…………」(じーっ)
そして、ついさっき気がついたが、ドアの隙間から覗いてるあの人影は何なのか。マジで。
「えーっと……みこと?」
「んー。もっとなでなでー」
「あ、いや、うん。それもいいんだけど」
「んー?」
「あの……あれ、誰?」
「ん? ……ッ!!!!?」
俺が指差した先を見た瞬間、みことの毛が逆立った。すげぇ。
「はっ、母上っ!? 何を覗いてるか!」
「あ、あらあら、見つかっちゃった」
ドアを押し開けて現れたのは、みことの母親だった。
「えっとね、お母さん、お菓子でもどうかなーって思って持って来たの。そうしたらね、中から声が聞こえたから、ちょーっと聞き耳立ててたの。そしたら面白そうなことになってたから♪」
「なってたから、じゃないっ!」
「あらあら、怒られちゃった。ところでみことちゃん?」
「なんだ?」
「いつまで彼氏と抱き合ってるの?」
「ん? ……っ!!?」
顔面全てを一瞬で赤色に染めあげ、みことは俺から勢いよく離れた。
「はっ、離れろっ、馬鹿者!」
「ええっ!? いやでも、みことからくっついてきたような」
「うっ、うるさいっ! 貴様の記憶違いだっ!」
「え~? お母さんも見てたけど、みことちゃんからくっついてたわよ?」
「母上っ!?」
「ええと、おばさん。あまり聞きたくないのですが、どこから見てました?」
「えっとねぇ、みことちゃんが彼氏にあーん♪ ってしてるところら辺り?」
ほほう。つまり、見られたくない辺りほぼ全部ですね。
「あ、あ、あ……」
みことの顔が赤くなったり青くなったりしていて大変愉快。
「で……」
「で?」
「出て行けーっ!!!」
癇癪を起こしたみことにより、俺もおばさんも追い出された。
「あらあら、お母さんも追い出されちゃった。……やりすぎちゃったかしら?」
おっとりした様子でおばさんがため息を吐いた。
「多分に。まあ、とりあえず今日は帰ります。またそのうち来ます」
「ええ。みことちゃんをよろしくね?」
「もちろんです」
「……あの、それで、どうだった?」
「はい?」
「だから……あら? まだしてないのかしら?」
どででででっという音がしたかと思ったら、勢いよくみことの部屋のドアが開いた。
「してないっ!」
半泣きのみことが大声で答えた。
「あらあら」
「ていうかだなっ、もう帰れっ! いつまで人の部屋の前で話してるんだっ!」
「実の親に向かって酷いことを言うな、お前は」
「貴様に言ってるんだ、この馬鹿っ!」
もう何に怒ってるんだか分からない様子でみことが俺に噛み付くように叫んだ。
「あらあら、駄目よみことちゃん。彼氏に馬鹿なんて言っちゃ」
「さっきから思ってたが、こいつは彼氏なんかじゃないっ!」
「そうです。俺はただの肉奴隷です」
「まあ! 最近の子は進んでるのねぇ……」
「信じるなあっ! 帰れーっ!」
外まで追い出された。しょうがない、今日は帰ろう。
……と思っていたら、携帯にメール着信。相手は……みことだ。
『今日のこと誰かに言ったら殺す。絶対殺す。墓まで持っていけ。ていうかもう明日殺す』
殺人予告だった。とても怖かったので返信する。
『殺されるくらいなら言いふらす。それが嫌なら今日みたいにイチャイチャしろ』
送信したら、すぐ電話がかかってきた。
『イチャイチャなどしてないっ!』
「したじゃん」
『してないっ! アレは……そう、一種の気の迷いだっ! だから忘れろ、いいなっ!?』
「断る! 俺の記憶の中で最も光り輝くものを、そう簡単に忘れることが出来ようか!」
『だっ……!? う、き、貴様……う~!』
「最も、忘れるのは無理でも、口封じは可能です」
『や、やはり殺……』
「怖いこと言うな。さっきメールしたが、それと同じことだ。今日みたくイチャイチャすると約束するなら、決して口外しないと約束しよう」
『だ、だからイチャイチャなどしてないっ!』
「それはどうでもいい。YESかNOか!?」
『う、うう、う~……わ、分かった』
「マジかっ!? YEAH!!!」
『うるさいっ! 叫ぶな、馬鹿! い、いいか、私は貴様に強要されたから仕方なくするのだぞ? 決して私が望んでのことではないのだからな!』
「はいはい、はいはいはい」
『真面目に聞けーっ! いいか、私は本当に貴様に強要されたからで』
「はっはっは。では、また後日」
『おっ、おいっ、話はまだ終わっ』
通話終了。さて、約束はとりつけた。いつになるかまだ決めてないが、その時が大変楽しみだ。喜びのあまりスキップしたら近所の犬に吠えられた。悲しい。


