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2024年04月25日
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【ツンデレに今年もあっという間に過ぎちゃったねって言ったら】

2010年01月25日
 みことの家に遊びに来たらコタツがあったので出られなくなったでゴザルの巻。
「うう……ここは天上の世界か?」
「私の家だ。温まったら帰れ」
「今日もみことは冷たいね。もう俺は泣きそうだが、そのためには水分を補給する必要があるのでコーヒー等をがぶ飲みしたいのでコーヒーください」
「素直にコーヒーをくれとだけ言え! 回りくどい!」
「本当は尿のくだりがあったのだが、それを言うと怒られると思ったので言わなかった英断を褒めろ」
「黙るか今すぐ出て行くか好きな方を選べ」
 寒いのは嫌なので黙ることにする。
「まったく……それで、砂糖は何杯入れるんだ?」
「一杯」
「なんだ、たったそれだけでいいのか?」
 みことはカップにお湯を注ぎ、インスタントコーヒーと砂糖をそれぞれスプーン一杯入れ、くるくるとかき混ぜて俺に渡した。そして、今度は自分のカップにコーヒー粉末一杯と砂糖を一杯二杯三杯四杯五杯!?
「いや、あの。入れ過ぎかと」
「……甘いの好きなんだ。わっ、悪いか!?」
 逆切れな感じで迫られ、いやーんな感じだ。だが、羞恥で顔が赤いのでイーブンということで。
「悪くない悪くない、全然悪くないです。むしろきゃわいくて微笑ましいですが、あまり砂糖を入れると歯医者が怖いなあ、と」
 ぴたり、とみことの手が止まる。
「……お前はいちいち嫌なことを言うな」
「いやぁ。うへへへ」
「褒めてないっ! 何を喜んでいるか!」
「褒められることなんてそうそうないから、間違えがちなんだ。隙さえあれば褒められたと勘違いする努力は怠ってないんだ」
「今日も無駄な努力を邁進中だな」
「いやあ。えへへへ」
「だから、褒めてないッ!」
 ひとしきり無駄に怒られてから、ずずずっとコーヒーを飲む。特別上等なコーヒーというわけではなさそう(失礼)だが、こうも寒い日だと何か普段より美味しく感じる。
「……それとも、そこにみことがいるからそう感じるのだろうか」
「む? 何の話だ?」
「独り言」
「……今日も頭が駄目な感じだな、お前は」
「悲しい感じだ」
 ずずずずっと再びカップを傾ける。
「そういや、そろそろ今年も終わりだな。毎年思うが、早かったな」
「残念ながら、それだけは貴様に同意だ」
「あと、毎年思うが、みことは可愛いなあと思うのでちゅーとかしたい。そうだ、ちゅーしませんか?」
「全く同意せんっ!」
「何ィッ!? この流れだと絶対間違えて同意すると思ったのに! 畜生、この世に絶対なんて存在しないのか!」
 可哀想な子を見る目で見られた。
「……可哀想だな、お前は」
 見るだけでなく、実際に言われた。
「まあいいや……いつかみことの方から『はきゅん♪ ご主人様の魅力にくらくらぷーですにゃん♪』とか言わせてやる」
「そんなのがお前の好みなのか?」
「そんな奴がいたら石投げる」
「むしろ私がお前に石を投げたい気分だ」
「酷いことを言う」
 卓上に置かれたミカンの皮を剥く。おいしそうだが、とりあえず俺の主義として白い筋を剥く。
「あ、私にもくれ」
「ん」
「うむ。……ふむ、甘い。もう一房くれ」
「ん」
「ふむ。むぐむぐ……うん、もう一房」
「もう自分で剥け」
「誰のミカンだ?」
「……はい」
「うむ。……ふふ、甘くてうまいな、このミカンは」
「白い筋を剥くばかりで、まだ俺の口には入ってないので分かりません」
「ふふ、頑張れ白い筋剥き士」
「FFの新しいジョブみたいだな。敵がミカン系の時のみ絶大なる力を発揮するが、普段はたまねぎせんし以下の戦力だ」
「……なんだ、ミカン系の敵って」
「最近のFFはしてないので知らないので憶測だが、クリア後の裏ダンジョンに出てくるんじゃないか? FF5のオメガとかの役どころで」
「ふふ。裏ボスがミカンと知ったときのプレーヤーの絶望は如何ほどだろうな」
「その時に俺のような白い筋剥き士がいたら何の苦労もなく倒せるのだが、ミカン以外にはまるで役に立たないマゾ職を育ててる奴なんていないだろうからな」
「じゃあ、私が冒険する時は特別に貴様を連れていってやる。光栄に思え?」
「へへー」
「ミカンを倒すまでは、私が守ってやる。……だが、いざという時は、ちゃんと私を守ってくれよ?」
 何かを試すような視線に、どきりとする。なんだ、適当な嘘話じゃないのか?
「……まあ、俺でどれだけ力になれるか分からんが、守るよ。ちゃんと」
 嘘話ではなく、そういう話だと思ったので、真面目に答える。
「……ふふ。合格」
 みことは目を細めて俺の頭をなでた。
「やれやれ、一体何の話だったんだか」
「さてな」
 みことは悪戯っぽく笑って、みかんを一房口に入れた。
「ふむ。ごちそうさま」
「ああ。……おや、俺の口にひとつも入らないうちにミカンが消えた」
「残念なことだな」
「悔しいのでここで尿を漏らしてやる」
「その瞬間貴様の首が飛ぶと思え」
「残忍すぎる刑に尿意が消滅しました」
「それでいい。……ほ、褒美だ、ほら、口を開けろ」
 まだ残っていたのか、みことの手にみかんが一房あった。そして、頬を赤く染めながらも、俺に差し出しているではないか。
「え、ええと」
「あ、あーんだ。あーんをしろ」
「がー!」
「あーんだ! がーではない!」
「混乱したんだ」
「冷静に説明するなっ! ……ほ、ほら、早く。あーん」
「あ、あーん」
 ぽい、と口の中にミカンが入れられる。
「……ど、どうだ?」
「もぐもぐもぐ。大変おいしいです」
「……そ、そうか」
「あと、あーんしてくれた喜びの舞を踊りたいのですがよろしいか?」
「ふっ、不許可だっ! い、いいか、誰にもこのこと言うなよ!?」
「知らず弱みを手に入れた!」
「言ったら殺す」
「誰にも言いません」
 あーんをしてくれた人と同じ台詞とも思えないが、大変怖かったので即答する。
「それでいい。……な、なあ。寒いから、そっちへ行っていいか?」
「え、あ、は、はい」
 みことは立ち上がると、俺のすぐ隣に移動し、コタツの中に入った。
「…………」
「う」
 みことはコタツの中で俺の手をとると、きゅっと握った。
「へへー。……暖かいな?」
「ははははははははい」
「緊張しすぎだッ! ……わ、私まで緊張するじゃないか」
「い、いやあの、あまりこういう機会に恵まれなかったもので。脳内でなら幾度となく経験したのですが」
「……そ、そんなの、私だってそうだ」
「みことにも妄想の気が?」
「そっちじゃないっ! ……こ、こういうことをしたことがない、って話だ」
 ぎゅっ、と強く手が握られる。それに釣られるように、俺も手を握り返す。
「……ふん。……貴様なんかが私をドキドキさせるなんて、生意気だ」
「大丈夫だ、恐らく俺の方がみことの数倍ドキドキしてる」
「な、何を言うか! 絶対私の方がドキドキしてるぞ!」
「何を張り合ってるか」
「だ、だって……むー」
 みことはちょっと怒ったように頬を小さく膨らませた。何その技術。俺の脳を破壊する気ですね。
「……私の方が、絶対ドキドキしてる」
「そ、そうか。そうかもな。ははははは」
 いかん。まずい。これは本気でまずい。このままでは。
「……ちょ、ちょっとだけ」
 みことはそっと俺に身体を預けた。そして、俺の胸に顔を埋めているではないか。何これ。夢?
「……な、何コレ。……頭とけそう」
「そうだ、夢だ。こんな幸せなこと、現実にあるはずがない」
「……ゆ、夢じゃないぞ、ばか」
 みことは俺を見上げながら、ちょっと怒ったように口をとがらせていた。
「じゃ、じゃあ……」
 恐る恐る、みことの頭に手をあて、ゆっくりなでてみる。
「……も、もっと」
「こ、こうか?」
「……うん」
「…………」(無心になでなで)
「……んー♪」
 猫のように目を細めて、みことは微笑んだ。よし、もう夢でも現実でもどっちでもいい。目の前にみことがいるなら、それで。
「いや……みことは可愛いなあ」
「んぅ?」
「そう、お前は可愛いなあって話」
「んー♪」
 ゴロゴロのどを鳴らす勢いでみことが俺にしがみつく。はぐはぐと甘噛みを繰り返しているのは何なのか。
「…………」(じーっ)
 そして、ついさっき気がついたが、ドアの隙間から覗いてるあの人影は何なのか。マジで。
「えーっと……みこと?」
「んー。もっとなでなでー」
「あ、いや、うん。それもいいんだけど」
「んー?」
「あの……あれ、誰?」
「ん? ……ッ!!!!?」
 俺が指差した先を見た瞬間、みことの毛が逆立った。すげぇ。
「はっ、母上っ!? 何を覗いてるか!」
「あ、あらあら、見つかっちゃった」
 ドアを押し開けて現れたのは、みことの母親だった。
「えっとね、お母さん、お菓子でもどうかなーって思って持って来たの。そうしたらね、中から声が聞こえたから、ちょーっと聞き耳立ててたの。そしたら面白そうなことになってたから♪」
「なってたから、じゃないっ!」
「あらあら、怒られちゃった。ところでみことちゃん?」
「なんだ?」
「いつまで彼氏と抱き合ってるの?」
「ん? ……っ!!?」
 顔面全てを一瞬で赤色に染めあげ、みことは俺から勢いよく離れた。
「はっ、離れろっ、馬鹿者!」
「ええっ!? いやでも、みことからくっついてきたような」
「うっ、うるさいっ! 貴様の記憶違いだっ!」
「え~? お母さんも見てたけど、みことちゃんからくっついてたわよ?」
「母上っ!?」
「ええと、おばさん。あまり聞きたくないのですが、どこから見てました?」
「えっとねぇ、みことちゃんが彼氏にあーん♪ ってしてるところら辺り?」
 ほほう。つまり、見られたくない辺りほぼ全部ですね。
「あ、あ、あ……」
 みことの顔が赤くなったり青くなったりしていて大変愉快。
「で……」
「で?」
「出て行けーっ!!!」
 癇癪を起こしたみことにより、俺もおばさんも追い出された。
「あらあら、お母さんも追い出されちゃった。……やりすぎちゃったかしら?」
 おっとりした様子でおばさんがため息を吐いた。
「多分に。まあ、とりあえず今日は帰ります。またそのうち来ます」
「ええ。みことちゃんをよろしくね?」
「もちろんです」
「……あの、それで、どうだった?」
「はい?」
「だから……あら? まだしてないのかしら?」
 どででででっという音がしたかと思ったら、勢いよくみことの部屋のドアが開いた。
「してないっ!」
 半泣きのみことが大声で答えた。
「あらあら」
「ていうかだなっ、もう帰れっ! いつまで人の部屋の前で話してるんだっ!」
「実の親に向かって酷いことを言うな、お前は」
「貴様に言ってるんだ、この馬鹿っ!」
 もう何に怒ってるんだか分からない様子でみことが俺に噛み付くように叫んだ。
「あらあら、駄目よみことちゃん。彼氏に馬鹿なんて言っちゃ」
「さっきから思ってたが、こいつは彼氏なんかじゃないっ!」
「そうです。俺はただの肉奴隷です」
「まあ! 最近の子は進んでるのねぇ……」
「信じるなあっ! 帰れーっ!」
 外まで追い出された。しょうがない、今日は帰ろう。
 ……と思っていたら、携帯にメール着信。相手は……みことだ。
『今日のこと誰かに言ったら殺す。絶対殺す。墓まで持っていけ。ていうかもう明日殺す』
 殺人予告だった。とても怖かったので返信する。
『殺されるくらいなら言いふらす。それが嫌なら今日みたいにイチャイチャしろ』
 送信したら、すぐ電話がかかってきた。
『イチャイチャなどしてないっ!』
「したじゃん」
『してないっ! アレは……そう、一種の気の迷いだっ! だから忘れろ、いいなっ!?』
「断る! 俺の記憶の中で最も光り輝くものを、そう簡単に忘れることが出来ようか!」
『だっ……!? う、き、貴様……う~!』
「最も、忘れるのは無理でも、口封じは可能です」
『や、やはり殺……』
「怖いこと言うな。さっきメールしたが、それと同じことだ。今日みたくイチャイチャすると約束するなら、決して口外しないと約束しよう」
『だ、だからイチャイチャなどしてないっ!』
「それはどうでもいい。YESかNOか!?」
『う、うう、う~……わ、分かった』
「マジかっ!? YEAH!!!」
『うるさいっ! 叫ぶな、馬鹿! い、いいか、私は貴様に強要されたから仕方なくするのだぞ? 決して私が望んでのことではないのだからな!』
「はいはい、はいはいはい」
『真面目に聞けーっ! いいか、私は本当に貴様に強要されたからで』
「はっはっは。では、また後日」
『おっ、おいっ、話はまだ終わっ』
 通話終了。さて、約束はとりつけた。いつになるかまだ決めてないが、その時が大変楽しみだ。喜びのあまりスキップしたら近所の犬に吠えられた。悲しい。

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