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2026年03月21日
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【ツンデレは夜中に一人でさみしいようです】

2010年02月01日
 夜は眠いので寝ようと布団を掴んで持ち上げたら、どういうことか見知った顔がそこに。
「……寒い。早く布団戻せ」
 あまりの事態にそのまま固まっていたら、布団の中にいた人物が迷惑そうな顔をしたまま体を縮ませた。
「いや、ちょっと落ち着こう。確かに俺は妄想激しい人物ではあるが、現実という器にこうもリアルに映し出すことが出来ようか。いやできない。反語」
「……反語って言いたいだけだ」
「うるさい。まあアレだ、ここから導きだされる結論は、なんで人の布団の中にいますか、ちなみさん」
 本来いるはずのない人物にたずねると、ちなみは面倒くさそうに口を開いた。
「……ここ、私の部屋」
「そんな無茶が通用するか。どこをどう見ても俺の部屋だ」
「……今日から私の部屋」
「コイツ無法者だ!」
「……なわけで、寝る。……早く電気消せ」
「いやいや、いやいやいや。出てけ」
「……こんな可愛らしい女の子を、冷たい風がぴうぴう吹く寒空の下、たった一人出て行けとタカシは言う。……鬼?」
「自分の家に帰れと言っているのです! 隣だろうがっ!」
「……めんどい」
「めんどいって……ていうか、いつの間にここに潜んでたんだ? 全然気づかなかったぞ」
「……タカシがゲームしてる最中に、こっそり」
「こっそりって、お前それ不法侵にゅ……」
 ……待て。ゲームしてる最中に、こっそり?
「……なんで今更ドラクエ3やってるのか知らないけど、仲間に私の名前使うのやめて欲しい。肖像権の侵害だ」
 やっぱり見られてたよチクショウ!
「……なんで二人旅? なんで?」
 にやにやしてるちなみが大変むかつきまする。ていうか恥ずかしすぎまする。
「う、うるさい! どーでもいいだろ、そんなの! いーから帰れ帰れ!」
「……今日、お母さんとお父さんが会社の旅行でいない」
「あー、らしいな」
「…………」
「な、なんだよ、人の顔をじーっと見て」
「……察せ、ばか」
「……? はっ、まさか、エロ展開かッ!?」
 ちなみは布団から這い出ると、俺の元までトコトコ歩み寄り、ゆっくりと俺の頬を引っ張った。
「違いましたか」
「……違います。……タカシとそゆことなんて、ありえない」
 とても悲しい。
「……まあ、現段階では」(ぼそり)
「にゃんと!」
「ち、ちっちゃい声で言ったんだから聞こえるな、ばか! ……うー」
 ちなみは顔を赤くして俺の頬をさらに引っ張り上げた。かなり痛え。
「……と、とにかく。二人が旅行でいないので、私の家はいま私しかいない」
「はぁ。うちは両親揃ってますよ」
 痛む頬をさすさす擦ってたら、ちなみのほっぺが小さく膨らんだ。
「…………」
 そして、何か言いたげに俺をじっと見る。なんとなく察しがついたが、でもなぁ。一応女の子だしなあ。
「えー、と。寒いだろう、とりあえず布団入れ」
 ちなみを布団の方へ促すと、きゅっと腕を掴まれた。
「……ふ、二人の方が、あったかい。……かも」
 うつむいたまま、ちなみは少し早口に言った。
「あー……そだな、一緒の方が暖かいかもな」
 一瞬のうちに色々な考えが頭を駆け巡ったが、何かあっても最悪俺が責任取ればいっかと思い、一緒に布団に入る。
「……いっしょ、いっしょ」
 心なしか嬉しそうな声をあげながら、ちなみは布団の中で俺の手を握った。この笑顔を見れただけでも、一緒に寝る甲斐があるってもんだ。
「嬉しいのは分かるが、とりあえず手を離せ。電気消せない」
「……嬉しくなんか、ないもん」
「なら、手を離せ」
「……ぱっ。離した」
「右手を離した次の瞬間に、左手を繋いだら一緒ではないかと思いますが」
「……右とか左とか、最初に言い出したのは誰なのかしら」
「ときメモだ!」
「……タカシがそーゆーゲームばっかするから、私にまでそーゆー知識がついてしまう。……いい迷惑だ」
 どうかと思う。色々。
「とにかく、明かりを消さないと寝れないので、少しでいいから手を離せ」
「……むぅ。……分かった、タカシのわがままにつきあってあげる。……菩薩のような優しい私に感謝せよ」
「わがまま!?」
「……うるさい」
 色々思ったが、手を離してもらったので布団から這い出て明かりを消す。何も見えない中、勘だけで布団の中に戻る。
「……おかえり」
「ただいま。ただいま?」
 布団に戻ると、ちなみが俺の頬を両手で包み、すりすりして出迎えた。
「……何も見えない。……本当にタカシ?」
「いや、ちなみんなんだ。胸がないー、胸がないー」
「…………」
 すりすりが頬引っ張りに変化したので大変痛い。
「痛い痛い」
「……猛省せよ、ばか」
「するので、引っ張るのをやめてください。割と痛いのですよ」
「……まったく、タカシはいつ何時でもばかで困る」
「へーへー。いーからもう寝るぞ」
「……まくらよこせ」
「ふたつもない。我慢しろ」
「……しょうがない、これで我慢する」
 ちなみは体をよじらせ、俺の胸の上に頭を置いた。
「……これでよし。頭が落ちないよう、一晩中見張ってるように」
「俺も明日学校なのですが」
「……ふぁいと」
「ふぁいとじゃねえ」
 勝手なことを言う娘の頭を優しくなでながら、まどろみに落ちていくのだった。

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【ツンデレに味噌汁作ってくれって言ったら】

2010年02月01日
 ……プロポーズ? まあいいや、言うぞ!
「梓、俺に味噌汁を作ってくれ」
「もー既に作ってるじゃん」
 しまった、今は食事中であり、現在俺がわっしわっし食ってる飯はすべて梓手製のものでありうめえ!
「あ、おかわりってコト? あー、またワカメ残してる。ちゃんと食べないとダメだよ?」
「ワカメを食うと髪が伸びるんだ。1秒で10mくらい」
「知らない間にタカシが妖怪に!? ていうかワカメ食べたら髪が伸びるって迷信だよ?」
「なんだ。なんでもいいや、おかわり」
 梓に茶碗を渡し、その隙に作戦を練り直す。このタイミングで言っても味噌汁をただ足されるだけなので、鍋に味噌汁がなくなってから言おう。
「……む? しかし、それではさらに追加で味噌汁が作られるだけでは? そんな飲みたくないぞ」
「何を一人でぶつくさ言ってるの? 変なの。まあいっつも変だけど」
 味噌汁のおかわりを俺に渡しながら、梓が俺を変人扱いする。
「いやな、ちょっと味噌汁関連で支障が起こりまして」
「師匠?」
「そう、師匠」
 間違ってるときこそ強くうなずけと昔恩師に教わったので、忠実に行う。
「味噌汁の師匠……赤だし?」
 梓の中では赤だしは味噌汁の上位らしい。
「すし屋とかで食うよな」
「おいしーよね。あ、晩におすし屋さん行こっか? タカシのおごりで」
「心の中がお前への恨み言でいっぱいだけど、普段色々世話になってるから別にいいよ」
「前置きが超余計だよっ! そんなこと言われたら行けないよっ!」
「だいじょうぶ、表面には出さないよう細心の注意を払うから」
「余計怖いよっ! もーいいよ、なんか作るよ。チャーハンとか」
「別にいいけど……お前チャーハン好きだなあ。ウッチャン?」
「違うっ! 簡単だから作るだけだよっ! 作ってもらってて文句言うなっ、ばかっ!」
 ぶちぶち言いながらも晩飯まで作ってくれる梓はいい奴だと思う。よし、この感謝を表に出してみよう。
「いつもありがとうな、梓」
「な、なんだよ、いきなり。気持ち悪いなあ」
「や、なんだかんだ言って、いい奴だなあって思って。俺みたいなひねくれ者相手に優しくしてくれるのって、おまえくらいだし」
「え、あ、……そ、そーだよ! もっとボクに感謝しろよ!」
 一瞬どうしたものかとうろたえた後、梓は胸を張って偉そうにした。しかし、慣れてないのか顔が赤い。
「分かった、ボクっ娘教を作って信者を募るから待ってろ。お布施でうはうはだぞ?」
「感謝の方向性が違うっ! そ、そじゃなくてさ、……そ、その、お買い物に一緒に行くとか、映画に行くとかさ。……で、デートとかじゃなくてね!?」
「分かった、一緒に出かけてる最中に『デートじゃない! これはデートじゃない!』と叫べばいいんだな?」
「タカシ頭おかしいよ!?」
「故意犯なんだ」
「性質が悪いよこの人!?」
 梓はがっくりうなだれてしまった。……あー、いかんな。梓といると、ついふざけてしまう。
「じゃあ、味噌汁を作ってくれ」
「さらにこの上味噌汁まで作れとな!? どこまで勝手なんだよこの人!?」
「これからずっと」
「毎日!? なんて大変……え?」
「そう、毎日」
「……え、えええええっ!?」
 梓が超うるせえ。
「そ、それって、ぷ、ぷ、ぷ」
「プレパラート」
「違うっ! そじゃなくて、その、……ぷ、プロポーズ?」
「いや、ただ純粋に俺に飯を作り続けろと言う命令」
「みらくるちょっぷっぷ!!!」
 何かが逆鱗に触れたのか、大変奇妙なチョップを俺の頭脳に繰り返し炸裂させる梓。
「返せー! 乙女のドキドキを返せー!」
「もぐもぐ……食事中に暴れてはいけませんよ、梓さん?」
「誰のせいで暴れてると思ってるんだよ、ばかーっ!」
 もしゃもしゃ飯を食う俺の頭をチョップしまくる梓だった。

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【ツンデレに耳かきしてもらったら】

2010年01月31日
 居間でテレビを見てたら急に耳が痒くなったので、耳掃除をする事にする。
「マスターが自身の耳孔を棒状の凶器で貫こうとしている現場を目撃。とてもよい光景なので、録画しておきましょう」
 奥で家事をしていたアンドロイド、ヒナタがやってきて嫌な事を言う。
「違う。これは耳掃除と言って、耳を掃除してるの。貫こうとはしてない」
「じゃあ貫いてください」
「なんで!?」
「そうすれば、きっと胸がすく思いとやらを感じられるに違いないという確信にも似た思いがするヒナタなのです」
 こいつは俺をサポートするためのアンドロイドなんだけど、どうも俺を小馬鹿にしている節がある。
「もういい。出てけ。俺は静かに耳掃除したいのだ」
「それなら、ヒナタがしてあげます」
「え、マジ!? やたっ、鉄面皮の皮肉娘とはいえ、一応は女なので膝枕の耳掃除に憧れる思春期の青年としては嬉しい感じ! やってやって!」
「お任せください、マスター。このような感じで行います」
 耳かきを渡すと、ヒナタは視認できないほどの速度で何度も虚空を突いた。
「その速度でされると、一緒に脳まで掃除されそうですが」
「大丈夫、一瞬で仕留めて見せます」
「仕留めんな! 誰も殺してくれなんて頼んでない! 耳掃除してほしいの、耳掃除!」
「面倒ですね」
「おまーがしてやるって言ったんだろーが!」
 こいつといたら脳の血管切れそう。
「マスターの血圧が160に急上昇。少し危険だと報告します」
「えっ、そんな機能まであるのか? すごいな、ロボだけあって機能が充実してんだな」
「まぁ、カンですが」
「…………」
 こいつ嫌い。
「どうしました、マスター。これほど綺麗で聡明、完全無欠なアンドロイドが側にいるというのに不機嫌そうですね」
「おまいが言うところの美点全てが、根性悪ひとつで消されるけどな」
「美点がない人間は言うことが違いますね」
 こいつすごく嫌い。
「も、いい。自分で耳掃除するから、耳かき返して」
「否定。ヒナタの仕事を取らないでください。ヒナタが行います」
「ダメだっての。おまいがすると、脳みそまで一緒に掃除するだろうが」
 ヒナタの持つ耳かきを取ろうと手を伸ばすが、ガードされ奪えない。
「大丈夫です、ヒナタを信じてください。マスターの信じるヒナタを信じてください」
「おまいのことなんて1mmたりとも信じてねーっ! そんなパクリ名セリフ言われても心動かねーっての!」
 叫びながら耳かきを引っ張るが、女の力とは思えないほどの力で握られており、取れない。
「ぐぎぎ……おまえ、すげー力だな。かの有名な妖怪、ゴリラ女か?」
「アンドロイドですので、多少は力持ちです。が、マスター相手でしたら普通の女性程度の力で充分でしたね」
「あっ、カッチーンと来たぞ! 今のセリフに男としてのプライドが刺激されたぞ! もー何が何でも奪ってやる!」
「ヒナタの唇を、ですか。マスターは気持ち悪いですね」
「言ってねーっ! 気持ち悪い言うなっ! 誰がおまいみたいな性悪ロボ子とキスしたいなんて思うか!」
「…………」
 ヒナタは無表情なまま耳かきをぐいっと引っ張った。すると、耳かきを掴んでいた俺は、釣られた魚のごとく空中を飛んでいた。
「おや? どうして俺は空にへぶっ!」
 そのままの勢いで顔面から壁に激突する。したたかに鼻を打ちつけ、とても痛い。
「……ったあ~! 何しやがるこのポンコツ!」
 鼻を押さえながらヒナタに向き直る。
「ヒナタのような見目麗しいアンドロイド相手にキスしたいと思わないなんて、マスターは異常ですね。一度脳洗浄をお勧めします」
「死ぬわっ! 何度も言うが、おまいみたいなのとロボと、どうしてキスなんてしようと思うかね。まぁ、マルチみたいな可愛いはわわっ娘なら考えないでもないけど」
「はわわ」
「…………」
「はわわ」
 無表情のまま、淡々と“はわわ”という言葉を羅列するヒナタ。
「マスターは私の萌え動作に心を奪われた様子。必ずや、キスしようとするに違いありません。マスターの要望とは言え、とても嫌だと感じずにはいられないヒナタです」
「おまいは分かっちゃいない……何も分かっちゃいない! “萌え”とはいわば、心の泉から湧き出る雫! そんな模造品で俺を満足させるなんて不可能だ!」
「こういった話題になると、マスターは途端にハキハキ喋りますね」
「…………」
「とても憮然としている顔に満足したので、耳掃除してあげます。さ、横になってください」
 その場に正座し、ヒナタは膝をぽんぽん叩いた。ここに寝ろ、ということらしい。
「耳を抉るのか?」
「それがマスターの望みとあらば、やぶさかではありません。掘削用ドリル取ってきますね」
「待って取りに行かないで抉るのノー! 普通にしろ、普通に! いいか、痛いこと禁止だぞ! 泣くからな!」
 恐る恐るヒナタの太ももに膝を乗せる。うっ……こいつ、ロボのくせに人みたいに柔らかいな。ふにふにしてる。
「……マスター、ヒナタの太ももに顔をこすりつけるのはおやめください」
「しっ、してないぞお、俺はすりすりなんてしてないぞお!?」
 本当はしました。気持ちよかったです。
「おかしいですね。マスターの表情、声の調子、発汗、動悸、全ての要素が嘘と告げています」
「なっ、何ぃっ!? そ、そんなことまで分かるのか!?」
「まぁ、カンですが」
 なにこの適当な機械。で、なんで俺は何度も騙されるのか。
「しかし、マスターの反応を見る限り、ほぼ確実に嘘ですね」
「……ああそうさ、嘘さ! したさ、ヒナタのふっにふにの太ももにすりすりしたさ! ははっ、笑うなら笑えよ! 哀れな俺を笑うがいいさ!」
「ヒナタには表情を作る機能はないので、笑えません。なので、声だけで笑ってあげます。ははははは」
 無表情ではははと声をあげるヒナタ。なんだかとってもムカツク。
「さて、それでは耳かきをします。神への祈りは済みましたか?」
「え、そんな危ないことなの?」
「ヒナタに搭載された最新式コンピュータによると、43%の確率で成功すると出ました」
「なにその低い数値!? やめて耳掃除やめて!」
「大丈夫、残りは勇気で補います」
「なんか聞いた事あるセリフですよ!? ていうかそこまでして耳掃除してほしくないしやめてやめてやめて!」
「がががーがががーがおがいがー」
「人が生きるか死ぬかの瀬戸際にへったくそな歌を歌うとな!?」
「…………」
「おや、機嫌を損ねましたね? 耳かきの動きが急に乱雑になりましたよ? ていうかホントすいませんやめてください死にますもう死にますからひぎゃあああ!」
 あまりの恐怖に気絶。

「……マスター、起きてください。マスター、起きてください」
「…………」(気絶中)
「起きないと、脳に電極を刺して強制的に起こします。3、2、1」
「起きた!」
「……ちっ」
「ちって言った! 刺す気だったよこのロボ!? ていうかなにその手のでっかい電極!?」
「気のせいです」
 気のせいとか言いながらヒナタは巨大な電極を投げ捨てた。隠す気ゼロじゃん。
「マスター、掃除完了です。ぴっかぴかになりましたと宣言するヒナタです」
「ん? ……おお、耳がすっきりしてる!」
「奇跡とはこのことを言うのですね」
 奇跡が起きないと無事じゃない耳掃除なんて聞いたことない。
「過程はともかく、耳掃除してくれてサンキュな。もう頼まないけど」
「マスターの感謝を確認。と同時に、“モウタノマナイケド”というノイズも確認。ノイズを記憶から消去」
 なんて都合のいいロボなんでしょう。
「マスターの望みを叶えられたヒナタは、素晴らしいアンドロイドだと自画自賛します。自画自賛モード発動。偉い偉い」
 自分で自分の頭をなでる変なロボ。表情は変わらないが、どこか満足そうだった。
「変なのでやめなさい。なでなでくらい、俺がやってやるよ」
 むっくら起き上がり、ヒナタの手を止めてから頭をなでる。
「あ……」
 ほんのり、ヒナタの頬に朱が差す。
「へぇ、そんな機能はあるのな。表情もつけりゃいいのに」
「機能……? 何の事か、ヒナタには理解不能です。マスターの伝達能力は赤子未満と断言します」
「断言すなっ! 頬が赤くなる機能があるんだなって言ってんだよ」
「そんな機能、ヒナタには搭載しておりません。脳の障害により、マスターにはそう見えているだけと判断します」
「イチイチ人を障害者扱いすなっ! 実際赤いんだよ、おまえのほっぺ」
 そう言いながら、ヒナタのほっぺをつんつんする。やーらかい。
「ひゃっ」
 ヒナタの口からやけに甲高い、似つかわしくない可愛らしい声が飛び出した。
「……ひゃっ?」
「気のせいです。ヒナタはそんなこと言ってません。マスターの耳はヒナタのドリル耳掃除により粉砕され、正常に機能していないと思われます」
「なんだよドリル耳掃除って! 掃除成功したんだろーが! 粉砕されてたら聞こえてねーっての!」
「うるさいです。細かい事を気にする男は女性にもてないと思うヒナタです。……もっとも、マスターはそんなものに関係なく、女性と縁がなさそうですが」
「貴様、俺の秘密どこで知った!?」
「……マスターの仮定情報を確定情報に変更。想像通り、マスターは女性に縁がない。記録。完了」
 俺の悲しい個人情報がヒナタに記録されてしまった。
「ああもう知らんっ! 俺は部屋で寝る!」
「不許可。マスターはまだヒナタへのなでなでが完了しておりません」
「ここまで馬鹿にされてするかっ!」
「マスターの狭量さを垣間見たヒナタですが、それはそれです。一度なでなですると言った以上、何が何でもなでなでしてもらいます」
 ここにすれ、と頭を差し出される。まったく、誰がするか!
「しないと、睡眠中に言った寝言を再生します」
「え……なに、俺なんか変なこと言ったの?」
「…………」
「なんか言えよう! 怖いじゃんか!」
「…………」
「分かった、分かったよ! なでりゃーいいんだろ、なでりゃ!」
 半ばヤケクソ気味に、ヒナタの頭をなでる。
「もっと優しくしないと、再生します」
 脅迫を受けたので、泣く泣く優しく頭をなでる。
「……あー、いい感じです。マスターは何をやってもダメな超ダメ人間ですが、なでなでが上手なので嫌いじゃないです」
「いや、他にも多少は取り得あると思うが。さすがになでなでだけじゃないだろ」
「ぐだぐだ言ってる暇があれば、もっと愛情を込めてなでるべきだと提案するヒナタです」
「もうしんどい」
「あと20時間頑張ってください」
「長い! 長すぎる!」
「やれやれ、マスターはひ弱ですね。根性なしなマスターなので、20分くらいで我慢します」
 目を閉じてなでなでを受ける無表情なロボを撫で続ける俺、という奇妙な構図のまま、数十分過ごす。
「おい、もういいだろ? 充分に労わったと思うが」
「……にゅ~」
 ヒナタの口から間延びした、似つかわしくない可愛らしい声が飛び出した。
「にゅー?」
「……にゅ~」
 いかん、なですぎてヒナタがおかしくなった! なんか口がωな感じになってるし!
「まあいっか、可愛いし」
「……にゅ~」
 にゅーにゅー鳴き続けるヒナタをしばらく眺めてた。程なくしてから元に戻ったヒナタにそのことを伝えると、
「超気のせいです。ヒナタはそのような言語扱いません。記憶から抹消してください。忘れないと抹殺します」
 と、真っ赤になりながら脅迫してきた。怖かったけど、ちょっと可愛かった。

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【沙夜 休日】

2010年01月31日
 休みなのでどっか遊びに行こうと部屋のドアを開けて外出しようとしたら、ガンッ!という景気がいい音がした。
「……えーと、だいじょぶか?」
 涙目でおでこを押さえてる幼馴染の沙夜がドアの影から現れた。悲しそうに俺を見上げながら、廊下に座り込んでる。
「…………」
 物言いたげな瞳でじぃぃぃぃっと見られると、なんだか俺が悪いような気がしてくる。
「いや、まさかこんなところにいるとは思わなくて。悪かった。じゃ、そゆことで」
 押さえてるおでこをなでなでしてから、沙夜をまたごうと足を上げたら、足首を掴まれた。
「ええと、そこを掴まれると進退窮まるのですが」
「…………」
 またしてもじぃぃぃぃっと。
「……えーと。遊びに来たのか?」
 こっくり、とうなずく沙夜。
「いや、しかし俺は外出するつもりだったんだけど。そうだ、お前も一緒に来るか?」
 ぷるぷるぷる、と首を横に振る。
「そっか。んじゃ、俺一人で行って来るな」
 またしてもぷるぷるぷる。
「……はぁ。それじゃ、一緒に部屋でぐだぐだすっか?」
 沙夜は嬉しそうにコクコクうなずいた。なんとなく嬉しそうな顔にチョップしてから、部屋に戻る。
「…………(怒)」
 チョップされて怒ってるのか、沙夜はちょっとむくれながら部屋に入ってきた。
「そう怒るな。ただの外出を邪魔された腹いせだ」
 沙夜は怒ってるぞー、という雰囲気を振りまきながら俺のベッドに座った。
「さて……することないな。することないからどっか行こうとしたわけだし」
 何をするかな、と思いながら座布団に座る。その俺に座る沙夜。
「重い」
 ぷるぷるぷる。重くないらしい。
「いや、重いっての」
 またもぷるぷるぷる。
「ていうか、怒ってたんじゃないのか」
 しばしの沈黙(まあ、いつも黙ってるのだけど)の後、沙夜はくるりと体を回転させ俺と相対すると、俺のほっぺをむにーっと引っ張り、にっこり笑った。
「えーと。これで帳消し、ってコトか?」
 コクコクうなずく平和そうな顔を鷲づかみする。慌ててる雰囲気が手の奥から伝わってくる。
「帳消しの上書き」
 手を離すと、はぅーって顔になってた。やれやれ、困ったちゃんだぜー、とでも言いたげな顔がむかちゅく。
「……まあいいや。そうだ、録り貯めしてたビデオでも見るかな」
 沙夜を膝に乗せたまま、リモコンでテレビをつける。そのままビデオを再生しようとリモコンを操作する俺の手を、沙夜が制した。
「ん?」
 ぷるぷるぷる。ダメらしい。テレビを見ると、動物系の番組をやってた。
「いや、これ再放送だし。見たことあるだろ?」
 コクコク。
「ならいいじゃん。ビデオ片付けたい」
 ぷるぷるぷる。リモコンを制される。ていうか奪われた。
「返して」
 ぷるぷるぷる、と首を振りながらも、沙夜はテレビに夢中だ。
「はぁ……このワガママ娘が」
 まあ、どうしても見たかったわけではない。沙夜と一緒に俺も見るか。
 ぼんにゃりテレビを眺める。芸能人と希少動物とのふれあいがテーマの番組のようだ。沙夜には悪いが、正直あまり興味がないので、ちょい退屈。手慰みに沙夜のほっぺをむにむにする。
「…………」
 ちょっと俺を見上げた後、沙夜はむにむにしてる俺の手を自分の手で包んだ。
「沙夜、この番組面白いか?」
 コクコク。
「そか。俺は捕食シーンが早く見たい。トドがペンギン喰らうようなやつ」
 沙夜は俺の顔をぺちぺち叩いた。
「いやいや、いいじゃん別に。それも自然の一部だし」
 ぷるぷるぷる。自然の一部ではないらしい。
「いやいやいや。あるって。何なら今見せてもいいぞ。youtubeとかにあるだろうし」
 パソコンを起動するため立ち上がろうとする俺を、必死で押し留める沙夜。
「まあそう遠慮するな」
 今までにない激しさで首を横に振る沙夜。何が何でも嫌らしい。
「そんな嫌か?」
 コクコクコク!と、ちょっと面白いくらいの速度で首を縦に振りまくる沙夜。首痛めるぞ。
「じゃ、やめる」
 安堵したように沙夜は息を吐いた。
「代わりに虫の捕食シーンのアップを撮影したものを」
 さっきよりも激しい抵抗にあう。
「嫌か? そんなわけないよな、虫族のヒエラルキーの頂点に立つ沙夜が、常日頃虫を捕食してはニヤリと笑ってる沙夜が嫌がるわけないよな」
 そんなのに立った覚えはない、とでも言わんばかりに沙夜は俺をぺしぺし叩いた。
「で、今日は何食べた? バッタ?」
 がぶりと俺の肩を噛む沙夜。俺を食うらしい。
「いてててて! 分かった、分かったから噛むな!」
 しぶしぶ俺から口を離すと、沙夜は恨めしげに俺を睨んだ。
「んな顔すんな。冗談だよ」
 沙夜の頭に手を載せ、なでなでなで。
「…………」
 ちょっとだけ不服そうで、ちょっとだけ嬉しそうな沙夜だった。
「それはそうと、テレビ見なくていいのか?」
 俺に言われて気づいたのか、沙夜は慌ててテレビの方を向いた。スタッフロール流れてた。
「…………」
 じぃぃぃぃっ、と俺を睨む沙夜。
「いや、そんな顔されても。まあ確かにお前で遊んで時間食ったのは確かだけど、もうテレビ点けた時点で半分以上終わってたし、その、ええと、……ごめんなさい」
 軽くため息をつき、沙夜は俺の頭をなでなでした。許してくれるらしい。
「正直俺に責任はないと思うが、許してくれるならいいや。じゃ、そろそろビデオを片付けに入りますか」
 そう言って沙夜からリモコンを受け取ろうとするも、渡してくれない。
「沙夜?」
 沙夜は俺に抱きつくと、胸に顔を押し付けた。
「ええと、ビデオ見たいのだけど」
 ぷるぷるぷる。ダメらしい。
「いや、しかし、休みくらいしかビデオ片付ける暇ないし」
 ぷるぷるぷる。やっぱりダメらしい。
「……はぁ。ったく、このワガママ娘め」
「…………♪」
 沙夜は俺から顔を離すと、にぃーっと笑った。その顔にチョップを落とす。
「チョップ軍隊だから仕方ないんだ」
 落としたチョップを両手で掴み、がぶがぶ噛む沙夜。
「痛え」
 しばらく噛んで満足したのか、沙夜は俺の指をちゅぱちゅぱ舐め始めた。
「赤子か。泣き赤子か」
 俺の話なんてちっとも聞かず、沙夜は俺の指をちゅーちゅー吸った。そうはさせじと沙夜の舌を掴む。
「秘技、舌掴み。ジョブがエンマ様だとこの後、舌引っこ抜きのコンボが可能だ」
 しかし俺のジョブはただの学生なので、せいぜい空いた手で沙夜のほっぺをなでなでするくらいだ。
「…………」
 舌を解放すると、沙夜は優しく俺の指をかぷかぷ噛んだ。どこかとろんとした目つきで俺を見てる。
「指マニアめ。将来はヤクザの落とした指を集めるに違いない」
 かぷかぷがガリガリに移行したので痛い。
「痛い痛い痛いッ! ええいっ、もう終わり!」
 沙夜の口から指を引き抜く。あー痛かった。
「…………」
 もっとしたかったのに、と不満いっぱいな様子で俺を見る沙夜。
「また今度だ、今度。これ以上やられると指がふやけて肉が削げて骨が出てくる」
 沙夜は俺の顔にチョップした。怖いこと言うの禁止らしい。
「それが嫌なら、今日は抱っこに終始してはいかがかな?」
 ちょっと小首を傾げ何事か考えた後、沙夜は俺に抱きついてきた。
「んむ。それがいい」
「…………」
 ばれないように、沙夜はそーっと俺の指に手を伸ばした。
「だから、今日は終わりだっての! また後日! ……ったく」
 残念そうな沙夜をなでる俺だった。

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【関西にたこ焼きっておいしくないよなっていったら】

2010年01月31日
 いずみが腹が減ったと言うので、学校帰りに屋台のたこ焼きを食うことになった。公園のベンチに座り、いずみと並んでたこ焼きをほうばる。
「はふはふ……はふ。あふひはー、タカひゃん」
「そうだな、断然後者の方がタイプだ」
「何の話やねん!」
「何言ってんだか全く分からなかったので、ボンキュッボンとつるぺたーんどちらが好み? と聞かれたと思い込んだ」
「そんな長いこと喋ってへんし、そんなこと聞かへん! タカちゃんのあほー!」
「ふふん」
「なんで嬉しそうやねん……あんな、熱いなあって言うてん」
「なんだ、たこ焼きの話か。……これ、うまいか?」
 そう言った途端、いずみの目が妖しく光った。いかん、と思ったが後の祭り。
「あったり前やんか! こんなおいしいもん、世界中探してもないで! ええか、小麦粉っちゅうんは何にでもあうねん。それを丸めて、しかもタコ! タコやで、タコ入れて焼いてんで、おいしいに決まってるやんか!」
「あ、ハト。くるっくー」
「ウチの話聞けっ!」
 いずみがどでででーと駆けてハトを蹴散らす。
「負けるか!」
「ひゃああああ!?」
 負けん気を刺激されたので、ハトを蹴散らしたいずみを蹴散らす。
「ウチを蹴散らすな!」
「いや、つい」
「ついやない! タカちゃんのあほー!」
 申し訳なく思ったので、いずみの頭をなでて労わる。
「こ、こんなんで誤魔化されるほど、ウチ子供やないもん」
「悪かった。金輪際なでない」
 いずみが物凄く恨みがましい目で僕を見ます。
「……タカちゃんのあほー」
「たこ焼きなんておいしくないって宣言したら、なでなでを再開する」
「…………。だっ、誰がそんなこと言うか、あほー!」
「その間は何ですか」
「なんでもあらへん! なでなでなんてしてほしないわ、あほー! タカちゃんのあほー!」
「阿呆ではないむしゃむしゃ」
「むしゃむしゃて……たこ焼き食うてるやないの! しかも、ウチの! 食うな!」
「うまひ」
「まずい言うてたやんか! どういうこっちゃ!」
「いや、前にいずみが作ってくれたのに比べたらおいしくないな、って話。これ単品だとそこそこ美味いよ?」
「……そ、そないか。そーゆーことやったらええわ」
「いずみさん、いずみさん」
「な、なんやねんな」
「顔赤いぞ」
「あっ、赤ないわっ! あほー! タカちゃんのあほー!」
「湯気が出そうな勢いで赤いのは俺の気のせいなのか」
「き、気のせいに決まってるやろ! 性格に加えて、目まで悪なったんちゃう?」
「成長の悪い奴は言うことが違うな。いつ第二次性徴が来るんだ?」
「うっさい!」
「もがもがもが」
 口の中に次々たこ焼きが詰められる。とても熱い。
「ふー……あああああ! 全部詰めてもーたやんか! もー、何すんねんな! タカちゃんのあほー!」
 俺は悪くない、と思いながら口の中のたこ焼きを必死で咀嚼する。もぐもぐごくん。
「げふー」
「うー……ウチのたこ焼きやのにぃ……。ウチがげふー言いたかった……」
「俺のことは気にせず言えばいい。さんはい」
「げふー。……たこ焼きでお腹一杯なってから言いたいんや!」
「ふむ。じゃ、自分で作ればいいじゃない。そして俺にも食べさせればいいじゃない」
「……タカちゃん、ウチの作るたこ焼き、食べたいん?」
「食べたい」
「しゃ、しゃーないなあ。そこまで言うんやったら作ったるわ。あーめんどくさ♪」
「じゃあいい」
「作るから食え! 食べへんかったら殺す!」
 知り合いに脅迫される放課後だった。

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