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2026年03月21日
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【ツンデレにお世辞を強要されたら】
2010年02月08日
休みなのでたまには贅沢に喫茶店でコーヒー飲んでたら、帽子を目深に被ったかなみが店内に入ってきた。店の奥へ行こうとしてる最中、俺を見つけて勝手に人の席に座った。
「勝手に座るねい」
「あ、誰か来るの? それともデート? なわけないわよね。アンタだもんね」
「ものすっげー失礼だな……」
「あはははは。あ、あたしコーヒーね」
注文を聞きに来たウェイトレスさんに、手馴れた様子でかなみは答えた。
「で、どしたんだ? 今日は休みなのか?」
「そうじゃなくて、ちょっとだけ休憩。窓からアンタがここに入ってるの見えてね、寂しいアンタの相手してあげようって思ってね」
「別に寂しくはないが……で、どこでやってんだ?」
「そこのビルで、ちょっとね」
そう言うと、かなみは手をぎゅっと握り、口をパクパクさせた。
「職業に貴賎はない、というが、やはりクラスメイトが風俗で働いてるのは悲しいな」
「違うッ! 歌手! アイドル! 芸能人! 新曲の収録中よ!」
「という設定のイメクラ」
「脳みそぶちまけますわよ?」
とても怖いので泣きそう。
「……ったく。アンタねー、今をときめくかなみちゃんにセクハラするなんて、いい度胸してるわね」
別にかなみの頭がおかしくなったのではなく、本当にこいつは今をときめいている。簡単に言うとマジ芸能人で売れっ子。
「芸能人なんだから、セクハラ慣れしてるだろ」
「あ、それ偏見。確かに枕やってる子もいるけど、やってない子もいるのよ? で、あたしはそういうの一切断ってるの。実力のみでここまで来たのよ? すごい? すごい?」
なんか褒めてほしそうな顔で俺をじーっと見てるので、適当に褒めてやることにする。
「あーすごいすごい」
「なんかテキトー。もっとちゃんと褒めなさいよ」
「昆布ひとつでよくぞここまで登りつめた!」
かなみの頭の両端からでろーんと伸びてる昆布を掴みながら褒める。
「昆布違うっ! これ髪の毛! ツインテール!」
「そう怒るなよ、はるぴー」
「かなみよッ!」
「……ぃよし。じゃ、俺そろそろ帰るな」
「何をしてやったりな顔してるか! ちっとも褒めてない! ちゃんと褒めるまで帰宅不許可!」
「別に俺が褒めなくても、誰も彼もがちやほやしてくれんだろ」
「うっ……そ、そだけど、その……」
「だろ? んじゃ、そゆことでぐげっ」
にゅるりと帰ろうとしたら、襟を掴まれた。
「い、いーから褒めるの! アンタはそれくらいしか能がないでしょ!」
「失敬だな、キミは……」
「いーから! アンタに褒めてもらわないと、なんかやる気でないの! ほら、ぐだぐだ言ってないで褒めるの!」
さて、どうしたものか。褒めろ、と言われても……。
「えーと。えらいぞッッッッッ!!!」
「何がよっ!」
「すずねえっぽいのにダメなのか?」
「誰よすずねえ!?」
「いや、しかしいきなり褒めろ言われても困るのだが。何を褒めるのだ?」
「え、えーと……ほ、ほら、あたしの笑顔がキュートだとか、歌を聴いたら癒されるとか、色々あるじゃない?」
「キュート(笑)癒される(笑)」
大層殴られた。
「芸能人にボコられる一般人って、下世話な週刊誌が喜びそうなネタだと思わないか?」
「うっさい! ……あー! 時間なくなっちゃたじゃないの!」
店に備えられてる時計を見て、かなみは素っ頓狂な声を上げた。
「そか。それは残念」
「今日の夜アンタの家行くから待ってなさいよ! ちゃんと褒めてもらうから!」
「え」
「嫌そうな顔するな! このあたしが行ってあげるんだから、光栄に思いなさいよ?」
「無茶を言うな」
「口答えするな!」
「はい」
で、その夜。
「すっごいすっごい頑張って、早めに終わらせてあげたわよ!」
ものすっごい笑顔でかなみが俺の部屋にいます。
「頼んでませんが」
てってってと俺の元まで歩み寄り、かなみはちょこんと座った。
「こんな頑張ったあたしに、何か言うことあるでしょ?」
「明日も頑張れ」
「ちーがーうーっ!」
耳をぎうーっと引っ張られた。痛い。
「じゃなくて! ほ、ほら、アンタあたしのこと好きで好きでしょうがないでしょ?」
まず前提条件が間違ってる。……べっ、別にそこまで好きじゃないんだからねっ!
「だ、だから特別に……そ、その、褒めるのに、なでなでとかしてもいいから。あ、あと、ほっぺにチュッとかも、別に……」
「じゃあほっぺをなでなでする」
「ホントッ!?」
てっきり「混ぜるなッ!」とか言われると思ったのだが、なんか気に入られたっぽい。
「ほらほら、早くやりなさいよ」
「任せろ、得意だ」
言われるままほっぺをなでなでする。
「なんで自分のほっぺをすりすりしてるかっ!」
「間違えた」
「そんな間違え普通しないっ! ほら、あたしのほっぺをすりすりしなさい!」
俺の手をとり、かなみは自分のほっぺに押し当てた。
「ほら、ふにふにむにむにしなさいよ」
そう言って、かなみは目をつむった。
「そこまでやったら、もう自分でやるも同じだと思うが」
「アンタの手でないと意味ないわよ。……べべべ別に深い意味はないケドっ!?」
「ふむ。つまり言葉に深い意味はないが、声が裏返ってることに深い意味があるのだな。動揺?」
「冷静に分析するなッ!」
赤い人に殴られた。
「もー。……いーから、ふにふにむにむにしなさいよ」
「すごい動詞だな」
「いーからする!」
「はいはい」
言われるままふにふにむにむにする。
「今日も一日よく頑張ったな。偉いぞ」
「ふふん、当然よ。……はふー」
「気持ちいいのか?」
「全然。……はふー」
否定するかなみだったが、口元を緩ませ涎を一筋垂らしてる様は、どう見ても気持ちよさげだった。
「なんか、動物をグルーミングしてるみたい」
「むにゃー」
「猫?」
「むにゃー♪」
猫らしい。
ひとしきり頬をふにふにむにむにしたら満足したのか、かなみは人の布団で眠ってしまった。
「警戒ゼロかよ……」
いっそ襲ってやろうか、と思いもしたが、俺を信頼して油断しきってる顔を見ると、そんな気も失せてしまう。
「さて、と」
携帯を取り出し、かなみのマネージャーにぴぽぱ。寝てしまったので今日は俺んちに泊めることを告げ、いつもすいませんというマネージャーの気弱げな声と同時に通話終了。
「はぁーあ。どこで寝るかな……」
人の布団を全部占領して口をむにむにさせてるアイドルを見て、ため息をつく俺だった。
「勝手に座るねい」
「あ、誰か来るの? それともデート? なわけないわよね。アンタだもんね」
「ものすっげー失礼だな……」
「あはははは。あ、あたしコーヒーね」
注文を聞きに来たウェイトレスさんに、手馴れた様子でかなみは答えた。
「で、どしたんだ? 今日は休みなのか?」
「そうじゃなくて、ちょっとだけ休憩。窓からアンタがここに入ってるの見えてね、寂しいアンタの相手してあげようって思ってね」
「別に寂しくはないが……で、どこでやってんだ?」
「そこのビルで、ちょっとね」
そう言うと、かなみは手をぎゅっと握り、口をパクパクさせた。
「職業に貴賎はない、というが、やはりクラスメイトが風俗で働いてるのは悲しいな」
「違うッ! 歌手! アイドル! 芸能人! 新曲の収録中よ!」
「という設定のイメクラ」
「脳みそぶちまけますわよ?」
とても怖いので泣きそう。
「……ったく。アンタねー、今をときめくかなみちゃんにセクハラするなんて、いい度胸してるわね」
別にかなみの頭がおかしくなったのではなく、本当にこいつは今をときめいている。簡単に言うとマジ芸能人で売れっ子。
「芸能人なんだから、セクハラ慣れしてるだろ」
「あ、それ偏見。確かに枕やってる子もいるけど、やってない子もいるのよ? で、あたしはそういうの一切断ってるの。実力のみでここまで来たのよ? すごい? すごい?」
なんか褒めてほしそうな顔で俺をじーっと見てるので、適当に褒めてやることにする。
「あーすごいすごい」
「なんかテキトー。もっとちゃんと褒めなさいよ」
「昆布ひとつでよくぞここまで登りつめた!」
かなみの頭の両端からでろーんと伸びてる昆布を掴みながら褒める。
「昆布違うっ! これ髪の毛! ツインテール!」
「そう怒るなよ、はるぴー」
「かなみよッ!」
「……ぃよし。じゃ、俺そろそろ帰るな」
「何をしてやったりな顔してるか! ちっとも褒めてない! ちゃんと褒めるまで帰宅不許可!」
「別に俺が褒めなくても、誰も彼もがちやほやしてくれんだろ」
「うっ……そ、そだけど、その……」
「だろ? んじゃ、そゆことでぐげっ」
にゅるりと帰ろうとしたら、襟を掴まれた。
「い、いーから褒めるの! アンタはそれくらいしか能がないでしょ!」
「失敬だな、キミは……」
「いーから! アンタに褒めてもらわないと、なんかやる気でないの! ほら、ぐだぐだ言ってないで褒めるの!」
さて、どうしたものか。褒めろ、と言われても……。
「えーと。えらいぞッッッッッ!!!」
「何がよっ!」
「すずねえっぽいのにダメなのか?」
「誰よすずねえ!?」
「いや、しかしいきなり褒めろ言われても困るのだが。何を褒めるのだ?」
「え、えーと……ほ、ほら、あたしの笑顔がキュートだとか、歌を聴いたら癒されるとか、色々あるじゃない?」
「キュート(笑)癒される(笑)」
大層殴られた。
「芸能人にボコられる一般人って、下世話な週刊誌が喜びそうなネタだと思わないか?」
「うっさい! ……あー! 時間なくなっちゃたじゃないの!」
店に備えられてる時計を見て、かなみは素っ頓狂な声を上げた。
「そか。それは残念」
「今日の夜アンタの家行くから待ってなさいよ! ちゃんと褒めてもらうから!」
「え」
「嫌そうな顔するな! このあたしが行ってあげるんだから、光栄に思いなさいよ?」
「無茶を言うな」
「口答えするな!」
「はい」
で、その夜。
「すっごいすっごい頑張って、早めに終わらせてあげたわよ!」
ものすっごい笑顔でかなみが俺の部屋にいます。
「頼んでませんが」
てってってと俺の元まで歩み寄り、かなみはちょこんと座った。
「こんな頑張ったあたしに、何か言うことあるでしょ?」
「明日も頑張れ」
「ちーがーうーっ!」
耳をぎうーっと引っ張られた。痛い。
「じゃなくて! ほ、ほら、アンタあたしのこと好きで好きでしょうがないでしょ?」
まず前提条件が間違ってる。……べっ、別にそこまで好きじゃないんだからねっ!
「だ、だから特別に……そ、その、褒めるのに、なでなでとかしてもいいから。あ、あと、ほっぺにチュッとかも、別に……」
「じゃあほっぺをなでなでする」
「ホントッ!?」
てっきり「混ぜるなッ!」とか言われると思ったのだが、なんか気に入られたっぽい。
「ほらほら、早くやりなさいよ」
「任せろ、得意だ」
言われるままほっぺをなでなでする。
「なんで自分のほっぺをすりすりしてるかっ!」
「間違えた」
「そんな間違え普通しないっ! ほら、あたしのほっぺをすりすりしなさい!」
俺の手をとり、かなみは自分のほっぺに押し当てた。
「ほら、ふにふにむにむにしなさいよ」
そう言って、かなみは目をつむった。
「そこまでやったら、もう自分でやるも同じだと思うが」
「アンタの手でないと意味ないわよ。……べべべ別に深い意味はないケドっ!?」
「ふむ。つまり言葉に深い意味はないが、声が裏返ってることに深い意味があるのだな。動揺?」
「冷静に分析するなッ!」
赤い人に殴られた。
「もー。……いーから、ふにふにむにむにしなさいよ」
「すごい動詞だな」
「いーからする!」
「はいはい」
言われるままふにふにむにむにする。
「今日も一日よく頑張ったな。偉いぞ」
「ふふん、当然よ。……はふー」
「気持ちいいのか?」
「全然。……はふー」
否定するかなみだったが、口元を緩ませ涎を一筋垂らしてる様は、どう見ても気持ちよさげだった。
「なんか、動物をグルーミングしてるみたい」
「むにゃー」
「猫?」
「むにゃー♪」
猫らしい。
ひとしきり頬をふにふにむにむにしたら満足したのか、かなみは人の布団で眠ってしまった。
「警戒ゼロかよ……」
いっそ襲ってやろうか、と思いもしたが、俺を信頼して油断しきってる顔を見ると、そんな気も失せてしまう。
「さて、と」
携帯を取り出し、かなみのマネージャーにぴぽぱ。寝てしまったので今日は俺んちに泊めることを告げ、いつもすいませんというマネージャーの気弱げな声と同時に通話終了。
「はぁーあ。どこで寝るかな……」
人の布団を全部占領して口をむにむにさせてるアイドルを見て、ため息をつく俺だった。
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【お腹が減ったのを我慢してるツンデレ】
2010年02月08日
昼になったので飯をむしゃむしゃ食ってたら、何やら視線がチクチク痛い。元を辿っていくと、羨ましそうな、憎々しそうな目で隣の席から俺を睨んでる依音がいた。
「……欲しいのか?」
「いりません」
そう言って、依音はぷいと視線を逸らした。それならそれでいいやと思い再びむしゃむしゃしてたら、またしてもチクチク視線が。
「や、欲しいのなら別にやるから、そんなじーっと見るねい。気になって落ち着いて食えやしない」
「欲しいなんて一言も言ってません。第一、お腹空いてませんし」
まるでタイミングを見計らったかのように、依音の腹から重低音が響いた。
「これでも空いてないと」
「……空いてません」
心持ち頬が赤いのは、自分でも説得力がないと気づいているからなのだろう。
「んーと。弁当忘れたのか?」
「持ってきてます」
「じゃあ、なんで食わないんだ?」
「うるさいです。どっか行ってください」
「ここ、俺の席」
「奇遇ですね、私の席も残念なことに、ここです」
「…………」
「……なんですか」
「……や、別になんでも。とにかく、落ち着いて食えないからこっち見るな」
「頼まれても見ませんよ」
「そいつは重畳」
再びむしゃむしゃ弁当食ってたら、またまた先の痛みを伴う視線が。
「だーっ! お前の視線はなんか痛いんだよ!」
「見てません」
「見てたっての!」
「……自意識過剰(ぼそり)」
「聞こえたよ!?」
「聞こえるように言いましたから」
「ああもうっ、何でもいいからこっちを見るな。もしくは、俺の弁当を食え。どーせ忘れたんだろ?」
「だから、持ってきてます。ほらこの通り」
そう言って、依音は机の横にかけてあったセカンドバッグから弁当の包みを取り出した。
「んじゃ、食えよ」
「食べません」
そして、再びバッグに戻してしまった。
「……えーと。ひょっとしてダイエット中?」
「超うるさいです。二度とその口を開かないよう提言します。なんでしたら縫いましょうか?」
「超結構です。結構と言っている。言っているのだからソーイングセットを出すなッ!」
「残念です……」
女性の嗜みとしては大変結構なことだが、その技術が俺を苦しめるのであれば話は別だ。
「なんだ、ただのダイエットかよ……」
「うるさいと言ったはずです」
「だから、イチイチ針を取り出すなッ! 怖えよっ!」
「知りません」
「まったく……女ってのは本当ダイエットが好きだな。そんな痩せたいものか?」
「当たり前です。冬は太りやすくて大変なんです。お鍋にお餅にミカンに猫さん。ぷくぷくです」
「猫食うの!? 怖っ、依音怖あっ!」
「食べませんッ! 猫さんがコタツにいるのでコタツから脱出不能になり、ぼんやりミカン食べちゃうんですっ!」
「だよなあ。あー怖かった」
「貴方の想像の方が怖いです。まったく……」
「で、結局ダイエットと」
「あ。……誘導尋問ですね。酷いです。悪魔です。悪魔は塩を口に詰めて縫います」
「だから、故あるごとに俺を縫おうとするなッ!」
針を片手に俺をぬいぐるみにしようとする依音から離れる。
「むー……」
「怒るな。てか、どこが太ってんだ?」
「女性にそんなこと聞く時点で、モテないことが丸わかりです」
「うるせえ」
「とにかく、そういう訳なんでご飯は食べないんです。分かったら一人で食べててください」
言うだけ言って、依音は再び顔を逸らした。
「んー、まあそういうことなら分かったが……けどなあ」
「なんですか。まだ何か用ですか」
面倒くさそうに、依音は視線だけこちらに向けた。
「いやな、お前くらい痩せてて可愛い子でもダイエットしなきゃいけないなんて、女の子ってのは大変だなーって思っただけ」
「っ!? いっ、いきなり何を言ってるんですか、貴方は。頭おかしくなったんですか。なったんですね」
音がしそうな勢いで顔を真っ赤にすると、依音は早口に俺への悪口をまくし立てた。
「…………」
「……な、なんですか」
「依音のそーゆーところ、可愛いよな」
「からかってますね!? からかってるんでしょう! ええそりゃもうからかってるに決まってます! 針です、針の出番です!」
「違う出番じゃないそれは女の子の道具であり武器じゃないっ!」
俺を針山にしようとする依音から離れる。
「うー……」
「怒るな。とにかくさ、俺から見たらダイエットとか必要ないようにしか見えないから、飯食え飯。仮にダイエットするにしても、絶食なんてダメだ」
「……偉そうですね」
「偉いんだ」
「……偉いなら、しょうがないです。お弁当、食べてやります」
「ん」
隣で弁当箱の包みを開けるのを見届け、今度はこちらの弁当を食う。
「……まあ、せっかくなんで一緒に食べてやります」
ずりずりとイスを寄せ、依音が俺の机にやってきた。
「……な、なんですか」
「そーゆーところも可愛いよな」
「針ですッ!」
「混乱したら針を出す癖どうにかしろっ!」
針を片手に暴れる依音を押さえたら、チャイムが鳴った。昼休み終わった。
「……貴方のせいで、ご飯食べれませんでした」
「俺のせい!?」
こっくりうなずく依音の横で、ひたすら驚く俺だった。すげえ責任転嫁。
「……欲しいのか?」
「いりません」
そう言って、依音はぷいと視線を逸らした。それならそれでいいやと思い再びむしゃむしゃしてたら、またしてもチクチク視線が。
「や、欲しいのなら別にやるから、そんなじーっと見るねい。気になって落ち着いて食えやしない」
「欲しいなんて一言も言ってません。第一、お腹空いてませんし」
まるでタイミングを見計らったかのように、依音の腹から重低音が響いた。
「これでも空いてないと」
「……空いてません」
心持ち頬が赤いのは、自分でも説得力がないと気づいているからなのだろう。
「んーと。弁当忘れたのか?」
「持ってきてます」
「じゃあ、なんで食わないんだ?」
「うるさいです。どっか行ってください」
「ここ、俺の席」
「奇遇ですね、私の席も残念なことに、ここです」
「…………」
「……なんですか」
「……や、別になんでも。とにかく、落ち着いて食えないからこっち見るな」
「頼まれても見ませんよ」
「そいつは重畳」
再びむしゃむしゃ弁当食ってたら、またまた先の痛みを伴う視線が。
「だーっ! お前の視線はなんか痛いんだよ!」
「見てません」
「見てたっての!」
「……自意識過剰(ぼそり)」
「聞こえたよ!?」
「聞こえるように言いましたから」
「ああもうっ、何でもいいからこっちを見るな。もしくは、俺の弁当を食え。どーせ忘れたんだろ?」
「だから、持ってきてます。ほらこの通り」
そう言って、依音は机の横にかけてあったセカンドバッグから弁当の包みを取り出した。
「んじゃ、食えよ」
「食べません」
そして、再びバッグに戻してしまった。
「……えーと。ひょっとしてダイエット中?」
「超うるさいです。二度とその口を開かないよう提言します。なんでしたら縫いましょうか?」
「超結構です。結構と言っている。言っているのだからソーイングセットを出すなッ!」
「残念です……」
女性の嗜みとしては大変結構なことだが、その技術が俺を苦しめるのであれば話は別だ。
「なんだ、ただのダイエットかよ……」
「うるさいと言ったはずです」
「だから、イチイチ針を取り出すなッ! 怖えよっ!」
「知りません」
「まったく……女ってのは本当ダイエットが好きだな。そんな痩せたいものか?」
「当たり前です。冬は太りやすくて大変なんです。お鍋にお餅にミカンに猫さん。ぷくぷくです」
「猫食うの!? 怖っ、依音怖あっ!」
「食べませんッ! 猫さんがコタツにいるのでコタツから脱出不能になり、ぼんやりミカン食べちゃうんですっ!」
「だよなあ。あー怖かった」
「貴方の想像の方が怖いです。まったく……」
「で、結局ダイエットと」
「あ。……誘導尋問ですね。酷いです。悪魔です。悪魔は塩を口に詰めて縫います」
「だから、故あるごとに俺を縫おうとするなッ!」
針を片手に俺をぬいぐるみにしようとする依音から離れる。
「むー……」
「怒るな。てか、どこが太ってんだ?」
「女性にそんなこと聞く時点で、モテないことが丸わかりです」
「うるせえ」
「とにかく、そういう訳なんでご飯は食べないんです。分かったら一人で食べててください」
言うだけ言って、依音は再び顔を逸らした。
「んー、まあそういうことなら分かったが……けどなあ」
「なんですか。まだ何か用ですか」
面倒くさそうに、依音は視線だけこちらに向けた。
「いやな、お前くらい痩せてて可愛い子でもダイエットしなきゃいけないなんて、女の子ってのは大変だなーって思っただけ」
「っ!? いっ、いきなり何を言ってるんですか、貴方は。頭おかしくなったんですか。なったんですね」
音がしそうな勢いで顔を真っ赤にすると、依音は早口に俺への悪口をまくし立てた。
「…………」
「……な、なんですか」
「依音のそーゆーところ、可愛いよな」
「からかってますね!? からかってるんでしょう! ええそりゃもうからかってるに決まってます! 針です、針の出番です!」
「違う出番じゃないそれは女の子の道具であり武器じゃないっ!」
俺を針山にしようとする依音から離れる。
「うー……」
「怒るな。とにかくさ、俺から見たらダイエットとか必要ないようにしか見えないから、飯食え飯。仮にダイエットするにしても、絶食なんてダメだ」
「……偉そうですね」
「偉いんだ」
「……偉いなら、しょうがないです。お弁当、食べてやります」
「ん」
隣で弁当箱の包みを開けるのを見届け、今度はこちらの弁当を食う。
「……まあ、せっかくなんで一緒に食べてやります」
ずりずりとイスを寄せ、依音が俺の机にやってきた。
「……な、なんですか」
「そーゆーところも可愛いよな」
「針ですッ!」
「混乱したら針を出す癖どうにかしろっ!」
針を片手に暴れる依音を押さえたら、チャイムが鳴った。昼休み終わった。
「……貴方のせいで、ご飯食べれませんでした」
「俺のせい!?」
こっくりうなずく依音の横で、ひたすら驚く俺だった。すげえ責任転嫁。
【ツンデレと恋人ごっこをしたら】
2010年02月08日
久しぶりの休日だというのにすることがない。あまりに暇なので友人のいずみを呼び出したが、それでも暇だ。
「なーなー、タカちゃん、なんかせーへんの? なーなー、なーなーて」
こいつを使って何か面白げなことを思いつきたいのだが、なーなー言いながら俺の腕をゆさゆさ揺するちっこい物体のせいで思いつかない。
「全部お前のせいだッ!」
「何が!?」
「む、驚き顔のいずみを見て思いついた。恋人ごっこしよう」
「何で!?」
「よく驚く人だなあ」
「いや、そやなくて! ……な、なんでウチと恋人ごっこするん? あ、アレなん、ウチのこと、その、タカちゃん、す、す、す……」
「暇だから」(断言)
赤らんでいたいずみの顔がはぅーって感じになった。
「暇やからって……」
「あと、身近な女の子でエロい欲求を手軽に満たしたい」
「絶対せーへん!」
どういうことか、へそを曲げられた。
「というのは冗談で、本当はいずみのことが大好きなんじゃないカナ」
「え……ほ、ホンマに?」
「いや、どうだろう」
「どないやねんっ! タカちゃんのテキトー星人!」
「いや、人間です。厳密に言えば地球人です。地球星人?」
「うっさい! タカちゃんのあほー!」
まあその後も紆余曲折あったが、適当にだまくらかして恋人ごっこ契約成立。
「えっちなんは絶対なし! ええな!」
「任せろ」
「……めっちゃ信用できひん」
「大丈夫、いきなり挿れたりしない」
「ウチ帰る!」
「待て待て、冗談だ。まったく、いずみたんったらー♪」
「うわっ、キモ!」
恋人っぽく振舞ってみたら気持ち悪がられ悲しい。
「あっ、ウソウソ、嘘やで。ホンマはキモ可愛いから可愛いを抜いた感じや」
一瞬喜んだが、よく考えると感想が変わってないので依然変わらず悲しい感じだ。
「あははー。……酷いことせーへんかったら、えーよ?」
ふんわりした笑顔を浮かべ、いずみは俺に体を預けた。
「よし、縄、縄……あと、ムチ」
「早速酷いことされる!?」
「よく考えたらそんな趣味はないのでSMはしない」
「や、やんね。もー、驚かすんナシやで」
「浣腸と、洗面器と、それから……」
「帰るー! ウチおうち帰るー!」
「いやいや、冗談に決まっとろーが」
幼児化してまで逃げようとするいずみを背中から抱きしめる。
「……ホンマに? 酷いことしたら嫌やで?」
「しないしない。俺が神と崇めるスポポビッチ様に誓ってもいい」
「額にMの刺青がある変態を神と拝める奴の言う事なんか信じられへん!」
詳しいな。スポポビッチマニア? スポマニ?
「じゃあ自身に誓って、しない」
「……それやったら、まあ、信じたってもええケド」
いずみは俺の膝の上でくるりと向きを反転させた。俺の胸を指でくりくりしつつ、少しうるんだ瞳を向ける。
「納得したようなので、とりあえずキス」
「そんな『とりあえずビール』みたいな感じではウチのファーストキスはやれへん!」
「む。なれば、とりあえず抱っことしゃれ込もうではないか」
「ええけど……タカちゃん、ムードとかもうちょっと気にした方がええで」
言いながらも、いずみは俺にぎゅっと抱きついてくれた。
「極めてささやかな膨らみ……膨らみ?が俺の胸を優しく刺激しているような、気のせいのような……気のせいだな」
「失礼なモノローグは口に出すな、あほー! 気のせいちゃうわ! めっちゃあててるっちゅーねん!」
「確かに、肋骨はごりごりあたってる」
「おっぱいや! あててんのよ、や!」
「よく分からんな。どれ、直接あててみてはどうだろう」
「それは名案! ……やないわ、あほー! するわけないやんか!」
「どれどれ……ほほう」
「するわけない言うてんのに何でウチの服まくりあげてんのこの人!?」
一瞬だけ桜色の突起物が見えたが、やたらめったら頭をぺこぽこ叩かれたので、すぐに服を戻さざるを得なかった。
「うー……おっぱい見られたぁぁ……。なんでブラまで一緒にまくりあげんねん。タカちゃんのあほー……」
「おっぱいって平面でしたっけ。俺の記憶だと立体だと思いましたが」
鬼気迫る顔で睨まれた。超怖え。
「これから成長するんや!」
「乳首が?」
「おっぱい全体が! ぼかーんってなんねん! すっごいことになるねんで!」
「爆発するの?」
「うがー!」
貧乳が怒った。どんな獣(近所の人懐こい犬に限る)をも恍惚とさせる魔技、なでなでをもって落ち着かせる。
「……タカちゃん、ウチのこと馬鹿にしてばっかや。ウチのこと、嫌い?」
しばらくすると落ち着いたのか、俺に抱っこされたままでいずみはぽつりと呟いた。
「嫌いな奴とこんなことするわけねーだろ」
ぽんぽんと背中を優しく叩く。ほふー、といずみから鼻息が漏れた。
「ほな、なんで? なんでいぢわるするん?」
「……えーと。照れ隠し、という噂がまことしやかに囁かれている、という噂」
いずみの顔を見ないよう、そっぽを向きながらぼそぼそと。
「噂の噂なん? 変なのー」
「いやまったく。変だな」
いずみの笑う気配に、知らずこちらも破顔。
なんだか和んでしまったので、結局抱っこしたりほっぺをすりすりしたり名前を呼び合ったりしただけだった。気がついたら夜だった。
「超早え」
「はむはむ……ほむ?」
俺のほっぺをはむはむしながら、いずみは器用に小首を傾げるのだった。
「なーなー、タカちゃん、なんかせーへんの? なーなー、なーなーて」
こいつを使って何か面白げなことを思いつきたいのだが、なーなー言いながら俺の腕をゆさゆさ揺するちっこい物体のせいで思いつかない。
「全部お前のせいだッ!」
「何が!?」
「む、驚き顔のいずみを見て思いついた。恋人ごっこしよう」
「何で!?」
「よく驚く人だなあ」
「いや、そやなくて! ……な、なんでウチと恋人ごっこするん? あ、アレなん、ウチのこと、その、タカちゃん、す、す、す……」
「暇だから」(断言)
赤らんでいたいずみの顔がはぅーって感じになった。
「暇やからって……」
「あと、身近な女の子でエロい欲求を手軽に満たしたい」
「絶対せーへん!」
どういうことか、へそを曲げられた。
「というのは冗談で、本当はいずみのことが大好きなんじゃないカナ」
「え……ほ、ホンマに?」
「いや、どうだろう」
「どないやねんっ! タカちゃんのテキトー星人!」
「いや、人間です。厳密に言えば地球人です。地球星人?」
「うっさい! タカちゃんのあほー!」
まあその後も紆余曲折あったが、適当にだまくらかして恋人ごっこ契約成立。
「えっちなんは絶対なし! ええな!」
「任せろ」
「……めっちゃ信用できひん」
「大丈夫、いきなり挿れたりしない」
「ウチ帰る!」
「待て待て、冗談だ。まったく、いずみたんったらー♪」
「うわっ、キモ!」
恋人っぽく振舞ってみたら気持ち悪がられ悲しい。
「あっ、ウソウソ、嘘やで。ホンマはキモ可愛いから可愛いを抜いた感じや」
一瞬喜んだが、よく考えると感想が変わってないので依然変わらず悲しい感じだ。
「あははー。……酷いことせーへんかったら、えーよ?」
ふんわりした笑顔を浮かべ、いずみは俺に体を預けた。
「よし、縄、縄……あと、ムチ」
「早速酷いことされる!?」
「よく考えたらそんな趣味はないのでSMはしない」
「や、やんね。もー、驚かすんナシやで」
「浣腸と、洗面器と、それから……」
「帰るー! ウチおうち帰るー!」
「いやいや、冗談に決まっとろーが」
幼児化してまで逃げようとするいずみを背中から抱きしめる。
「……ホンマに? 酷いことしたら嫌やで?」
「しないしない。俺が神と崇めるスポポビッチ様に誓ってもいい」
「額にMの刺青がある変態を神と拝める奴の言う事なんか信じられへん!」
詳しいな。スポポビッチマニア? スポマニ?
「じゃあ自身に誓って、しない」
「……それやったら、まあ、信じたってもええケド」
いずみは俺の膝の上でくるりと向きを反転させた。俺の胸を指でくりくりしつつ、少しうるんだ瞳を向ける。
「納得したようなので、とりあえずキス」
「そんな『とりあえずビール』みたいな感じではウチのファーストキスはやれへん!」
「む。なれば、とりあえず抱っことしゃれ込もうではないか」
「ええけど……タカちゃん、ムードとかもうちょっと気にした方がええで」
言いながらも、いずみは俺にぎゅっと抱きついてくれた。
「極めてささやかな膨らみ……膨らみ?が俺の胸を優しく刺激しているような、気のせいのような……気のせいだな」
「失礼なモノローグは口に出すな、あほー! 気のせいちゃうわ! めっちゃあててるっちゅーねん!」
「確かに、肋骨はごりごりあたってる」
「おっぱいや! あててんのよ、や!」
「よく分からんな。どれ、直接あててみてはどうだろう」
「それは名案! ……やないわ、あほー! するわけないやんか!」
「どれどれ……ほほう」
「するわけない言うてんのに何でウチの服まくりあげてんのこの人!?」
一瞬だけ桜色の突起物が見えたが、やたらめったら頭をぺこぽこ叩かれたので、すぐに服を戻さざるを得なかった。
「うー……おっぱい見られたぁぁ……。なんでブラまで一緒にまくりあげんねん。タカちゃんのあほー……」
「おっぱいって平面でしたっけ。俺の記憶だと立体だと思いましたが」
鬼気迫る顔で睨まれた。超怖え。
「これから成長するんや!」
「乳首が?」
「おっぱい全体が! ぼかーんってなんねん! すっごいことになるねんで!」
「爆発するの?」
「うがー!」
貧乳が怒った。どんな獣(近所の人懐こい犬に限る)をも恍惚とさせる魔技、なでなでをもって落ち着かせる。
「……タカちゃん、ウチのこと馬鹿にしてばっかや。ウチのこと、嫌い?」
しばらくすると落ち着いたのか、俺に抱っこされたままでいずみはぽつりと呟いた。
「嫌いな奴とこんなことするわけねーだろ」
ぽんぽんと背中を優しく叩く。ほふー、といずみから鼻息が漏れた。
「ほな、なんで? なんでいぢわるするん?」
「……えーと。照れ隠し、という噂がまことしやかに囁かれている、という噂」
いずみの顔を見ないよう、そっぽを向きながらぼそぼそと。
「噂の噂なん? 変なのー」
「いやまったく。変だな」
いずみの笑う気配に、知らずこちらも破顔。
なんだか和んでしまったので、結局抱っこしたりほっぺをすりすりしたり名前を呼び合ったりしただけだった。気がついたら夜だった。
「超早え」
「はむはむ……ほむ?」
俺のほっぺをはむはむしながら、いずみは器用に小首を傾げるのだった。
【ちなねえ 起こされる】
2010年02月07日
俺こと彰人には年上の幼馴染がいる。昔から色々と可愛がってもらって非常にありがたいのだが、高校生になった今でもその対応が変わらないのはどうなんだろう。
「……重いですか、アキくん?」
そんなことを寝起きのぼんやりした頭で考えつつ、人の布団の上にのぺーと乗ってる年上の幼馴染、ちなねえを見る。
「あまりの重さに全内臓が震撼しそうだ」
「……お姉ちゃんは、映画じゃないです」
「ええっ!? 知らなかった……」
「……朝から変なアキくん」
「朝っぱらから人の布団にのっかる妖怪みたいな奇行してる人に言われたくない」
ほっぺをうにーっと引っ張られた。
「痛え」
「……お姉ちゃん、アキくんの育て方間違ったかな?」
「はいはい。いーからのけ」
ちなねえごと布団を横にまくり上げ、起床。おはようございます。
「にゃ。……ひどい。お姉ちゃん捨てられました。……お姉ちゃん、めそめそ」
うるさいので布団で巻く。
「……お姉ちゃん、お寿司になりました。……出してください」
「朝、人の布団に乗ってこないなら出す」
うにうにと体をくねらせ、ちなねえは自力で脱出しようとした。しばらくうねうねしてたが、無理っぽい。
「……出して、ください」
泣きそうになってたので、慌てて布団から解放する。
「……アキくんのいじわる」
「いや全く。ごめんな、ちなねえ」
「……ちゅーしてくれたら、許します」
「俺のことは永久に許さなくていいです」
「がーん。……選択肢を誤りました。やはり、『許せねえ。絶対殺す』という選択肢の方がよかったのでしょうか?」
それだけは絶対に違うと断言できるが、もう朝から疲れ果てたのでちなねえを放って部屋を出る。
「……お姉ちゃんもー」
ふらふらしながらちなねえもついてきた。そしてそのまま俺を抜き、一人で台所に入ってしまった。
「もふもふ。……おいしい」
続いて俺も台所に入ると、さっき台所に入ったはずのちなねえがまだ湯気の立ってるパンをぱくついていた。
「おはよ。母さん、俺のパンは?」
「ちなちゃんが食べてるわよ」
皿洗いしてる母さんがこともなげに言った。幸せそうに人のパンを食べてるちなねえを見る。
「むしゃむしゃむしゃむしゃ、ごくん。……食べてないです」
口周りにむちゃくちゃパンくずをつけながら、ぷるぷると首を振るちなねえ。隠す気ゼロだな、この人。
「母さん、まだパンある?」
「ないわよ」
「…………」
「……げふー」
ちなねえの満足そうなゲップを聞いてると、朝からなんだか泣きそうになる。
「……アキくん、可哀想。……お姉ちゃんのゲップでよかったら、いくらでも吸っていいですよ? ……お姉ちゃんの思いやりに、アキくんにっこり」
そんな許可では、とてもじゃないがにっこりできない。
「よかったわね、彰人」
「どこによかったと思える要素があるか挙げてくれないか、母さん」
「こーんな可愛い幼馴染がいて」
母さんの言葉に、ちなねえの顔がほころんだ。
「可愛くなくても、人の朝食を勝手に食わない幼馴染の方がいい」
ちなねえがしょぼーんな感じになった。
「ほらほら、いーから二人とも行った行った。早くしないと遅刻よ」
母さんの言葉に時計を見る。む、結構いい時間じゃないか。
「ちょっと俺着替えてくる。ほらちなねえ、いつまでもしょぼーんとしてないで玄関行ってろ」
「うー……お姉ちゃん、挽回します。アキくんの着替え手伝います」
「嫌です」
そう言ったのに手伝われた。
「はい、ばんざーい」
「一人でできます」
「……ばんざーい?」
小首をちょこんと傾げ、両手を胸の前に合わせてばんざーいと言うちなねえに負け、素直に万歳する。
「……よくできました。はい、ぬぎぬぎ。……わ、裸」
「ちなねえが俺を視姦する」
「…………」(じーっ)
「ホントに視姦すなッ! いーから制服よこせっ!」
「……はい」(じーっ)
未だ視姦を続けるちなねえから制服を受け取り、ぱぱぱっと着替える。
「……ぷよぷよ」
「腹を突つくなっ!」
Tシャツを着てる最中に腹をつっつかれた。
「……もうちょっと鍛えた方がいいと思うお姉ちゃんです。……ぷよぷよです。……ぷよぷよ」
「つつくなっての!」
「……癖になります」
「なるな!」
ちなねえの頭を押さえて腹を押すのを抑制し、どうにか着替え終わる。色々邪魔されたため、ちょっと時間がヤクイ感じだ。
「……もっと押したいです」
だというのに、ちなねえはハンターの目で俺の腹を見つめ続けている。
「押すな。何か押したいのであれば、自身のつるぺたんXな胸でも押してろ」
「……アキくんの大好きな、つるぺたんX保持者です」
どうして俺の性癖がばれているのか。
「……アキくん、えっちな本は定期的に隠す場所を変えたほうがいいですよ? ……まあ、あんなにたくさんあっては、隠すのも大変と思いますが」
「ちなねえ、俺をいじめて楽しいか(泣)」
「……よしよし」
頭をなでられたが、ちっとも嬉しくなかった。
姉ぱぅわーによりなんとか泣き止んだ俺は、鞄片手に明るい光溢れる外へ飛び出し……
「待って、アキくん待って~」
姉がもたもたと靴を履いているので飛び出せなかった。
「5秒以内に履かないと、今日は学校休んでちなねえとイチャイチャする」
「…………。だ、ダメです。サボりなんて悪い子がすることです」
「ちなねえが俺を嫌う」
「……お姉ちゃん、アキくんのこと大好きですよ? 嫌うなんて、ありえませんよ?」
極々当たり前のことのように、ちなねえはまっすぐな好意を俺に向けた。
「……は、恥ずかしいことを言う姉め。干からびてしまえ!」
「……アキくんは恥ずかしがりやさんですね。……そーゆーところも、お姉ちゃん、大好きです」
人の手を勝手に取って、ちなねえはにっこり微笑むのだった。
そして遅刻するのだった。
「ちなねえ、足遅すぎだッ! 俺の早歩きとちなねえの全力疾走が同じ速さってどういうことだ!」
「……お姉ちゃん、悪くないもん」
膨れっ面のちなねえだった。
「……重いですか、アキくん?」
そんなことを寝起きのぼんやりした頭で考えつつ、人の布団の上にのぺーと乗ってる年上の幼馴染、ちなねえを見る。
「あまりの重さに全内臓が震撼しそうだ」
「……お姉ちゃんは、映画じゃないです」
「ええっ!? 知らなかった……」
「……朝から変なアキくん」
「朝っぱらから人の布団にのっかる妖怪みたいな奇行してる人に言われたくない」
ほっぺをうにーっと引っ張られた。
「痛え」
「……お姉ちゃん、アキくんの育て方間違ったかな?」
「はいはい。いーからのけ」
ちなねえごと布団を横にまくり上げ、起床。おはようございます。
「にゃ。……ひどい。お姉ちゃん捨てられました。……お姉ちゃん、めそめそ」
うるさいので布団で巻く。
「……お姉ちゃん、お寿司になりました。……出してください」
「朝、人の布団に乗ってこないなら出す」
うにうにと体をくねらせ、ちなねえは自力で脱出しようとした。しばらくうねうねしてたが、無理っぽい。
「……出して、ください」
泣きそうになってたので、慌てて布団から解放する。
「……アキくんのいじわる」
「いや全く。ごめんな、ちなねえ」
「……ちゅーしてくれたら、許します」
「俺のことは永久に許さなくていいです」
「がーん。……選択肢を誤りました。やはり、『許せねえ。絶対殺す』という選択肢の方がよかったのでしょうか?」
それだけは絶対に違うと断言できるが、もう朝から疲れ果てたのでちなねえを放って部屋を出る。
「……お姉ちゃんもー」
ふらふらしながらちなねえもついてきた。そしてそのまま俺を抜き、一人で台所に入ってしまった。
「もふもふ。……おいしい」
続いて俺も台所に入ると、さっき台所に入ったはずのちなねえがまだ湯気の立ってるパンをぱくついていた。
「おはよ。母さん、俺のパンは?」
「ちなちゃんが食べてるわよ」
皿洗いしてる母さんがこともなげに言った。幸せそうに人のパンを食べてるちなねえを見る。
「むしゃむしゃむしゃむしゃ、ごくん。……食べてないです」
口周りにむちゃくちゃパンくずをつけながら、ぷるぷると首を振るちなねえ。隠す気ゼロだな、この人。
「母さん、まだパンある?」
「ないわよ」
「…………」
「……げふー」
ちなねえの満足そうなゲップを聞いてると、朝からなんだか泣きそうになる。
「……アキくん、可哀想。……お姉ちゃんのゲップでよかったら、いくらでも吸っていいですよ? ……お姉ちゃんの思いやりに、アキくんにっこり」
そんな許可では、とてもじゃないがにっこりできない。
「よかったわね、彰人」
「どこによかったと思える要素があるか挙げてくれないか、母さん」
「こーんな可愛い幼馴染がいて」
母さんの言葉に、ちなねえの顔がほころんだ。
「可愛くなくても、人の朝食を勝手に食わない幼馴染の方がいい」
ちなねえがしょぼーんな感じになった。
「ほらほら、いーから二人とも行った行った。早くしないと遅刻よ」
母さんの言葉に時計を見る。む、結構いい時間じゃないか。
「ちょっと俺着替えてくる。ほらちなねえ、いつまでもしょぼーんとしてないで玄関行ってろ」
「うー……お姉ちゃん、挽回します。アキくんの着替え手伝います」
「嫌です」
そう言ったのに手伝われた。
「はい、ばんざーい」
「一人でできます」
「……ばんざーい?」
小首をちょこんと傾げ、両手を胸の前に合わせてばんざーいと言うちなねえに負け、素直に万歳する。
「……よくできました。はい、ぬぎぬぎ。……わ、裸」
「ちなねえが俺を視姦する」
「…………」(じーっ)
「ホントに視姦すなッ! いーから制服よこせっ!」
「……はい」(じーっ)
未だ視姦を続けるちなねえから制服を受け取り、ぱぱぱっと着替える。
「……ぷよぷよ」
「腹を突つくなっ!」
Tシャツを着てる最中に腹をつっつかれた。
「……もうちょっと鍛えた方がいいと思うお姉ちゃんです。……ぷよぷよです。……ぷよぷよ」
「つつくなっての!」
「……癖になります」
「なるな!」
ちなねえの頭を押さえて腹を押すのを抑制し、どうにか着替え終わる。色々邪魔されたため、ちょっと時間がヤクイ感じだ。
「……もっと押したいです」
だというのに、ちなねえはハンターの目で俺の腹を見つめ続けている。
「押すな。何か押したいのであれば、自身のつるぺたんXな胸でも押してろ」
「……アキくんの大好きな、つるぺたんX保持者です」
どうして俺の性癖がばれているのか。
「……アキくん、えっちな本は定期的に隠す場所を変えたほうがいいですよ? ……まあ、あんなにたくさんあっては、隠すのも大変と思いますが」
「ちなねえ、俺をいじめて楽しいか(泣)」
「……よしよし」
頭をなでられたが、ちっとも嬉しくなかった。
姉ぱぅわーによりなんとか泣き止んだ俺は、鞄片手に明るい光溢れる外へ飛び出し……
「待って、アキくん待って~」
姉がもたもたと靴を履いているので飛び出せなかった。
「5秒以内に履かないと、今日は学校休んでちなねえとイチャイチャする」
「…………。だ、ダメです。サボりなんて悪い子がすることです」
「ちなねえが俺を嫌う」
「……お姉ちゃん、アキくんのこと大好きですよ? 嫌うなんて、ありえませんよ?」
極々当たり前のことのように、ちなねえはまっすぐな好意を俺に向けた。
「……は、恥ずかしいことを言う姉め。干からびてしまえ!」
「……アキくんは恥ずかしがりやさんですね。……そーゆーところも、お姉ちゃん、大好きです」
人の手を勝手に取って、ちなねえはにっこり微笑むのだった。
そして遅刻するのだった。
「ちなねえ、足遅すぎだッ! 俺の早歩きとちなねえの全力疾走が同じ速さってどういうことだ!」
「……お姉ちゃん、悪くないもん」
膨れっ面のちなねえだった。
【ツンデレな妹VSデレデレな姉17】
2010年02月07日
テストが返って来たので点数を見たら驚いた。
「カナカナカナ! あ、別に急にDNAの野郎が突然変異を起こしヒグラシになったのではなく、妹の名を呼んでいるだけですから皆さんご安心を!」
妹がつかつかと僕の席まで来て殴打します。
「誰もそんな心配してないわよ! で、何? くだらない用件だと殴るわよ」
「もう既に殴られていますが」
「それとは別で殴るの」
妹が常に怖い。
「まあ、殴るのはとにかく、これを見てくれ」
先ほど受け取ったテスト用紙をカナに見せる。
「……うわ、何コレ」
「そんなことも知らないのか? やれやれ、お兄ちゃんが教えてやろう。これはテスト用紙と言い、テストを受ける際に必要になる紙でげふっ」
また殴られた。
「そんなことは知ってる! 点数の事を言ってるの!」
「俺はテスト用紙のことを言った。そして殴られた」
「うっさい! 何よこの点数! 赤点ギリギリじゃないの!」
「一点差って凄くないか? 額に入れて飾りたいよな。よしカナ、今日は帰りに額買いに行こう」
「行くかッ! あーもう、勉強よ!」
「性の?」
殴られたので、違うみたい。
「教室から所変わって自宅へと移行したのですが、これは俺の隠されたテレポーテーション能力が発動したと考えていいのかな、お姉ちゃん」
「その通りだよタカくん! タカくんは超能力が使えてすごいねー。お姉ちゃん鼻高々だよ!」
「はい、そこの馬鹿姉弟黙る」
「「ぶーぶー」」
「ぶーぶーうるさい!」
お姉ちゃんと二人でブーイングしたのに、やっぱり俺だけ殴られた。
「じゃ、馬鹿兄貴のために、勉強を始めます」
「そうか、頑張ってくれ。俺はみんなのために何か甘いものでも買って来よう」
「兄貴のためにやってんの!」
そそくさと逃げようとしたら捕まった。
「お姉ちゃんねー、あんまんが食べたいなぁ♪」
そしてお姉ちゃんはワンテンポ遅れている。こんなとろいくせに、テストは500点満点で498点とかありえない数字なので羨ましい。
「なあカナ、『あんまんならそこにあるじゃないか。胸にたわわに実っている二つの美味しそうなあんまんが!』という台詞を思いついたのだけど、そんなこと言ったらカナの貧乳を前に失礼かな?」
「失礼よッ!」
貧乳に殴られた。
「お姉ちゃんのおっぱいは、あんまんじゃないよ?」
そしてお姉ちゃんはずれている。
「あーもーいいから勉強するわよ!」
「めんどい。お姉ちゃん、膝枕して」
「いいよ。おいで、タカくん♪」
ふらふらとお姉ちゃんのふとももに引き寄せられていたら、カナに阻まれた。
「勉強するの! このままじゃ兄貴留年しちゃうよ? いいの、あたしより学年下になって」
「……! それは非常にいけない! そうなったらカナと一緒の授業もカナと一緒の修学旅行もなくなってしまう!」
「え、あ、そ、そなんだ……。あ、あは、あたしは妹より下の学年は嫌なのかなーって思ったんだけど……そっか、あたしと一緒がよかったんだ。……あは」
「むー! お姉ちゃん、むー!」
カナが嬉しそうに頬をかくと、お姉ちゃんの機嫌が悪くなって俺のほっぺが引っ張られます。
「あと、カナと一緒の体育とかカナと一緒の水泳とかカナと一緒の着替えとかなくなるのも嫌だ」
「そんなのは今もないっ!」
「じゃあ、やろうよ」
「やんないッ!」
「そうだよタカくん! タカくんはお姉ちゃんと一緒の体育でお姉ちゃんと一緒の水泳でお姉ちゃんと一緒の着替えをしないとダメなのに!」
「学年が違うからできないんだ、お姉ちゃん」
「お姉ちゃん、しょんぼり……」
お姉ちゃんがいじけた。
「だー! もう、いーから勉強するの!」
カナが切れたので、勉強を開始する。学園きっての秀才と天才がいるので、はかどること間違いなし。
「飽きた」
はかどりはしたが、俺の忍耐力が根をあげた。
「まだ10分しか経ってないわよ? もっと頑張らないと」
「一問解くごとにカナとお姉ちゃんの服が一枚脱げるって方式なら頑張れる」
「そんな親父臭い方式やんないわよっ! こらそこっ、いそいそと脱がない!」
嬉しそうに服を脱いでたお姉ちゃんがカナに叱られ、泣きそうになってた。
「まったく……自分のことなんだから、ご褒美がある方がおかしいわよ」
「正論だが、それだけで動けるほど真っ当な人間じゃないぞ、俺は」
「何を偉そうに言ってんだか……」
カナが俺のほっぺをうにーと引っ張った。
「まめでんきう! 服を脱ぐのがダメなら、一問クリアするごとに、すりすりしていいか?」
「タカくん、まめでんきうってなぁに?」
「閃いた事を明示化したんだよ、お姉ちゃん」
「んなことはどうでもいい! すりすりって、そんなのダメに決まってるじゃない!」
「そう? お姉ちゃんは平気だよ? むしろすりすりしたい、したいよ、タカくん!」
言いながらもすりすりするお姉ちゃん。しかし、カナは抵抗があるようで、ぶつぶつと何か呟いている。
「(ど、どうしよ……すりすりは恥ずかしいけど、ご褒美ってことならあたしからって訳じゃないから抵抗なくできるような……ああでも兄貴とすりすりなんて……あうううっ)」
「あー、あの、嫌なら別にどうしてもって訳じゃないので、その」
「いっ、嫌とは言ってないでしょ、嫌とは! 兄貴がどうしてもって言うなら、その、……やってあげてもいいわよ、……その、すりすりってのを」
ちょっと照れたような拗ねたような口ぶりに、胸がどきりとする。
「むー! お姉ちゃん、むー!」
それを敏感に察したお姉ちゃんが俺のほっぺを引っ張るので痛い。
「ま、まあとにかく、そういうことなら頑張ってみる」
……勉強中……
「……と、解けた、よ?」
数分の格闘の後、どうにか一問解くことに成功。
「しゅーがちゃーんしゅー!」
すかさずお姉ちゃんが俺に飛びつき、口で機械音を立てながらすりすりしまくった。
「はふー。お姉ちゃん、ちょびっと満足」
「じゃ、じゃあ、あたしも……」
おずおずとカナもやってきて、俺の隣に座ると、ちらりと俺を見た。
「し、失礼するわよ……」
「お、おう」
カナは俺の膝にちょこんと座り、正面から軽く抱きしめるような形で俺のくっつき、頬と頬を合わせた。
「ぷにぷにする」
「うううるさいっ! 感想言うなっ! 好きでやってるんじゃないわよ!」
真っ赤な顔でそう言いながらも、カナは俺から離れようとしなかった。
「も、もういい? もういいわよね? 充分よね?」
「まだ。あー、至福」
なんだか和んでしまい、思わずカナの背中に片手を回し、空いた手で頭をなでなでしてしまう。
「ひゃっ!?」
「あ、ごめん」
「……べ、別にいいケド」
許可が出たので、ゆっくり頭をなでてみる。
「……もっと」
……ちょっと驚いた。まさか、さらに欲求されるとは。
「早く」
「あ、う、うん」
ゆっくり、優しくカナの頭をなでる。気持ちいいのか、カナは猫のように目を細めた。
「んー」
「おかしい。俺へのご褒美のはずが、カナへのご褒美になっているような」
「喋る暇があったら、もっとなでなで」
「あ、はい」
いかん、なでなで機械になっている。そして、それがちっとも悪い気がしないのがまた。
「……うー、お姉ちゃんの存在が無視されてるぅぅぅ……」
「きゃああああ!?」
地の底から響くような恨めしそうな声に、カナが至近距離で大声を出すので鼓膜破れそう。
「お姉ちゃんは、ここにいますか……?」
「いないよ」
「やっぱりだー!!! お姉ちゃん、知らない間に死んでたー! だからお姉ちゃんほっぽいてタカくんとカナちゃんがイチャイチャイチャイチャしてたんだあああああ! うえええん!」
「姉ちゃんを騙して泣かせるな、この馬鹿兄貴!」
カナにショートアッパーされた。
「いや、まさか騙されるとは思わなくて。ごめんね、お姉ちゃん。お姉ちゃんは生きてるよ。ただ、あえて無視したんだ」
「うえええん!!!」
お姉ちゃんの泣きが強まった。
「だから、泣かすなって言ってるでしょうが!」
また殴られた。いい加減頭ぐらんぐらんする。
「ぐすん。……カナちゃんも、お姉ちゃんがいるって分かってて無視したの?」
「え、あ、えーと、いや、あたしは、その、……な、なでなでに夢中になってて、気づかなかったっていうか」
「それはそれでうえええん!!!」
お姉ちゃんがやかましい。
「お姉ちゃんもー! お姉ちゃんも前後不覚になるくらいタカくんになでなでされる!」
「ぜ、前後不覚って、そこまでされてたわけじゃ……」
「してたよ! お姉ちゃんアイでじーって見てたもん! すっごくなでなでされてたもん!」
「ちょ、ちょっと兄貴、どうにかしてよ」
カナの困ったような視線と、お姉ちゃんの怒ったような視線が俺に突き刺さる。
「えーーーーーっと、じゃあこうしよう」
「ふにゃー……お姉ちゃん、とろけそー……」
「んー……」
二人ともを抱っこしてなでなでする、というとても受け入れられないであろう案を出したら通ってしまい、30分以上なでりんぐなのでとても手がだるい。
「おふた方、俺の手が限界なので終了してよろしいか」
ふたつの頭が同時にぷるぷると首を横に振った。ダメらしい。
「いや、しかし勉強もしないといけないし、その」
「ふぁいとだよー……タカくんー……」
「んー……」
二人とも半分以上違う世界に行ってるくせに、俺を解放してくれない。しょうがないので、なでなで続行。
「はふはふはふ~。お姉ちゃん、幸福の刑に処された~」
「んー。んー。んー」
なでられまくってぐにゃぐにゃになってるお姉ちゃんと、猫のように俺にすりすりしまくってるカナと、腕がもう動かない俺がいます。
「超疲れたのでもう寝たい俺」
「んー……?」
カナが視線だけで悲しさを訴えてきた。
「あ、いや、もうちょっとだけなら別に構わないケド、その」
「んー♪」
すりすり続行らしい。
明けて翌日。いつものようにみんなで朝食を食べているのだけど、何故かカナがこっちに顔を向けてくれません。
「カナ、どした?」
「(あああああ……なんで、なんでなんでなんであんな甘えちゃったかなあ! あーもう、恥ずかしくって兄貴の顔見れないじゃないの!)」
「カナ?」
「う……うっさい、馬鹿兄貴! あたしを騙して勉強しなかった罪、受けてもらうからね!」
「えええええ!? いや俺は勉強しないとって言ったよ!?」
「う、うるさいっ! 今日こそちゃんと勉強してもらうからねっ! パンもらいっ!」
食べてる最中のパンをもぎ取られた。
「あああああ! 俺の、俺のパンが! お姉ちゃん、カナが俺のパン取った!」
「タカくん可哀想! 代わりにお姉ちゃんとちゅーしていいよ?」
「いいえ、結構です」
「がーん!? お姉ちゃん、しょんぼり……」
ショックを受けてるお姉ちゃんの横で、真っ赤な顔をしたままがつがつパンをむさぼるカナだった。
「カナカナカナ! あ、別に急にDNAの野郎が突然変異を起こしヒグラシになったのではなく、妹の名を呼んでいるだけですから皆さんご安心を!」
妹がつかつかと僕の席まで来て殴打します。
「誰もそんな心配してないわよ! で、何? くだらない用件だと殴るわよ」
「もう既に殴られていますが」
「それとは別で殴るの」
妹が常に怖い。
「まあ、殴るのはとにかく、これを見てくれ」
先ほど受け取ったテスト用紙をカナに見せる。
「……うわ、何コレ」
「そんなことも知らないのか? やれやれ、お兄ちゃんが教えてやろう。これはテスト用紙と言い、テストを受ける際に必要になる紙でげふっ」
また殴られた。
「そんなことは知ってる! 点数の事を言ってるの!」
「俺はテスト用紙のことを言った。そして殴られた」
「うっさい! 何よこの点数! 赤点ギリギリじゃないの!」
「一点差って凄くないか? 額に入れて飾りたいよな。よしカナ、今日は帰りに額買いに行こう」
「行くかッ! あーもう、勉強よ!」
「性の?」
殴られたので、違うみたい。
「教室から所変わって自宅へと移行したのですが、これは俺の隠されたテレポーテーション能力が発動したと考えていいのかな、お姉ちゃん」
「その通りだよタカくん! タカくんは超能力が使えてすごいねー。お姉ちゃん鼻高々だよ!」
「はい、そこの馬鹿姉弟黙る」
「「ぶーぶー」」
「ぶーぶーうるさい!」
お姉ちゃんと二人でブーイングしたのに、やっぱり俺だけ殴られた。
「じゃ、馬鹿兄貴のために、勉強を始めます」
「そうか、頑張ってくれ。俺はみんなのために何か甘いものでも買って来よう」
「兄貴のためにやってんの!」
そそくさと逃げようとしたら捕まった。
「お姉ちゃんねー、あんまんが食べたいなぁ♪」
そしてお姉ちゃんはワンテンポ遅れている。こんなとろいくせに、テストは500点満点で498点とかありえない数字なので羨ましい。
「なあカナ、『あんまんならそこにあるじゃないか。胸にたわわに実っている二つの美味しそうなあんまんが!』という台詞を思いついたのだけど、そんなこと言ったらカナの貧乳を前に失礼かな?」
「失礼よッ!」
貧乳に殴られた。
「お姉ちゃんのおっぱいは、あんまんじゃないよ?」
そしてお姉ちゃんはずれている。
「あーもーいいから勉強するわよ!」
「めんどい。お姉ちゃん、膝枕して」
「いいよ。おいで、タカくん♪」
ふらふらとお姉ちゃんのふとももに引き寄せられていたら、カナに阻まれた。
「勉強するの! このままじゃ兄貴留年しちゃうよ? いいの、あたしより学年下になって」
「……! それは非常にいけない! そうなったらカナと一緒の授業もカナと一緒の修学旅行もなくなってしまう!」
「え、あ、そ、そなんだ……。あ、あは、あたしは妹より下の学年は嫌なのかなーって思ったんだけど……そっか、あたしと一緒がよかったんだ。……あは」
「むー! お姉ちゃん、むー!」
カナが嬉しそうに頬をかくと、お姉ちゃんの機嫌が悪くなって俺のほっぺが引っ張られます。
「あと、カナと一緒の体育とかカナと一緒の水泳とかカナと一緒の着替えとかなくなるのも嫌だ」
「そんなのは今もないっ!」
「じゃあ、やろうよ」
「やんないッ!」
「そうだよタカくん! タカくんはお姉ちゃんと一緒の体育でお姉ちゃんと一緒の水泳でお姉ちゃんと一緒の着替えをしないとダメなのに!」
「学年が違うからできないんだ、お姉ちゃん」
「お姉ちゃん、しょんぼり……」
お姉ちゃんがいじけた。
「だー! もう、いーから勉強するの!」
カナが切れたので、勉強を開始する。学園きっての秀才と天才がいるので、はかどること間違いなし。
「飽きた」
はかどりはしたが、俺の忍耐力が根をあげた。
「まだ10分しか経ってないわよ? もっと頑張らないと」
「一問解くごとにカナとお姉ちゃんの服が一枚脱げるって方式なら頑張れる」
「そんな親父臭い方式やんないわよっ! こらそこっ、いそいそと脱がない!」
嬉しそうに服を脱いでたお姉ちゃんがカナに叱られ、泣きそうになってた。
「まったく……自分のことなんだから、ご褒美がある方がおかしいわよ」
「正論だが、それだけで動けるほど真っ当な人間じゃないぞ、俺は」
「何を偉そうに言ってんだか……」
カナが俺のほっぺをうにーと引っ張った。
「まめでんきう! 服を脱ぐのがダメなら、一問クリアするごとに、すりすりしていいか?」
「タカくん、まめでんきうってなぁに?」
「閃いた事を明示化したんだよ、お姉ちゃん」
「んなことはどうでもいい! すりすりって、そんなのダメに決まってるじゃない!」
「そう? お姉ちゃんは平気だよ? むしろすりすりしたい、したいよ、タカくん!」
言いながらもすりすりするお姉ちゃん。しかし、カナは抵抗があるようで、ぶつぶつと何か呟いている。
「(ど、どうしよ……すりすりは恥ずかしいけど、ご褒美ってことならあたしからって訳じゃないから抵抗なくできるような……ああでも兄貴とすりすりなんて……あうううっ)」
「あー、あの、嫌なら別にどうしてもって訳じゃないので、その」
「いっ、嫌とは言ってないでしょ、嫌とは! 兄貴がどうしてもって言うなら、その、……やってあげてもいいわよ、……その、すりすりってのを」
ちょっと照れたような拗ねたような口ぶりに、胸がどきりとする。
「むー! お姉ちゃん、むー!」
それを敏感に察したお姉ちゃんが俺のほっぺを引っ張るので痛い。
「ま、まあとにかく、そういうことなら頑張ってみる」
……勉強中……
「……と、解けた、よ?」
数分の格闘の後、どうにか一問解くことに成功。
「しゅーがちゃーんしゅー!」
すかさずお姉ちゃんが俺に飛びつき、口で機械音を立てながらすりすりしまくった。
「はふー。お姉ちゃん、ちょびっと満足」
「じゃ、じゃあ、あたしも……」
おずおずとカナもやってきて、俺の隣に座ると、ちらりと俺を見た。
「し、失礼するわよ……」
「お、おう」
カナは俺の膝にちょこんと座り、正面から軽く抱きしめるような形で俺のくっつき、頬と頬を合わせた。
「ぷにぷにする」
「うううるさいっ! 感想言うなっ! 好きでやってるんじゃないわよ!」
真っ赤な顔でそう言いながらも、カナは俺から離れようとしなかった。
「も、もういい? もういいわよね? 充分よね?」
「まだ。あー、至福」
なんだか和んでしまい、思わずカナの背中に片手を回し、空いた手で頭をなでなでしてしまう。
「ひゃっ!?」
「あ、ごめん」
「……べ、別にいいケド」
許可が出たので、ゆっくり頭をなでてみる。
「……もっと」
……ちょっと驚いた。まさか、さらに欲求されるとは。
「早く」
「あ、う、うん」
ゆっくり、優しくカナの頭をなでる。気持ちいいのか、カナは猫のように目を細めた。
「んー」
「おかしい。俺へのご褒美のはずが、カナへのご褒美になっているような」
「喋る暇があったら、もっとなでなで」
「あ、はい」
いかん、なでなで機械になっている。そして、それがちっとも悪い気がしないのがまた。
「……うー、お姉ちゃんの存在が無視されてるぅぅぅ……」
「きゃああああ!?」
地の底から響くような恨めしそうな声に、カナが至近距離で大声を出すので鼓膜破れそう。
「お姉ちゃんは、ここにいますか……?」
「いないよ」
「やっぱりだー!!! お姉ちゃん、知らない間に死んでたー! だからお姉ちゃんほっぽいてタカくんとカナちゃんがイチャイチャイチャイチャしてたんだあああああ! うえええん!」
「姉ちゃんを騙して泣かせるな、この馬鹿兄貴!」
カナにショートアッパーされた。
「いや、まさか騙されるとは思わなくて。ごめんね、お姉ちゃん。お姉ちゃんは生きてるよ。ただ、あえて無視したんだ」
「うえええん!!!」
お姉ちゃんの泣きが強まった。
「だから、泣かすなって言ってるでしょうが!」
また殴られた。いい加減頭ぐらんぐらんする。
「ぐすん。……カナちゃんも、お姉ちゃんがいるって分かってて無視したの?」
「え、あ、えーと、いや、あたしは、その、……な、なでなでに夢中になってて、気づかなかったっていうか」
「それはそれでうえええん!!!」
お姉ちゃんがやかましい。
「お姉ちゃんもー! お姉ちゃんも前後不覚になるくらいタカくんになでなでされる!」
「ぜ、前後不覚って、そこまでされてたわけじゃ……」
「してたよ! お姉ちゃんアイでじーって見てたもん! すっごくなでなでされてたもん!」
「ちょ、ちょっと兄貴、どうにかしてよ」
カナの困ったような視線と、お姉ちゃんの怒ったような視線が俺に突き刺さる。
「えーーーーーっと、じゃあこうしよう」
「ふにゃー……お姉ちゃん、とろけそー……」
「んー……」
二人ともを抱っこしてなでなでする、というとても受け入れられないであろう案を出したら通ってしまい、30分以上なでりんぐなのでとても手がだるい。
「おふた方、俺の手が限界なので終了してよろしいか」
ふたつの頭が同時にぷるぷると首を横に振った。ダメらしい。
「いや、しかし勉強もしないといけないし、その」
「ふぁいとだよー……タカくんー……」
「んー……」
二人とも半分以上違う世界に行ってるくせに、俺を解放してくれない。しょうがないので、なでなで続行。
「はふはふはふ~。お姉ちゃん、幸福の刑に処された~」
「んー。んー。んー」
なでられまくってぐにゃぐにゃになってるお姉ちゃんと、猫のように俺にすりすりしまくってるカナと、腕がもう動かない俺がいます。
「超疲れたのでもう寝たい俺」
「んー……?」
カナが視線だけで悲しさを訴えてきた。
「あ、いや、もうちょっとだけなら別に構わないケド、その」
「んー♪」
すりすり続行らしい。
明けて翌日。いつものようにみんなで朝食を食べているのだけど、何故かカナがこっちに顔を向けてくれません。
「カナ、どした?」
「(あああああ……なんで、なんでなんでなんであんな甘えちゃったかなあ! あーもう、恥ずかしくって兄貴の顔見れないじゃないの!)」
「カナ?」
「う……うっさい、馬鹿兄貴! あたしを騙して勉強しなかった罪、受けてもらうからね!」
「えええええ!? いや俺は勉強しないとって言ったよ!?」
「う、うるさいっ! 今日こそちゃんと勉強してもらうからねっ! パンもらいっ!」
食べてる最中のパンをもぎ取られた。
「あああああ! 俺の、俺のパンが! お姉ちゃん、カナが俺のパン取った!」
「タカくん可哀想! 代わりにお姉ちゃんとちゅーしていいよ?」
「いいえ、結構です」
「がーん!? お姉ちゃん、しょんぼり……」
ショックを受けてるお姉ちゃんの横で、真っ赤な顔をしたままがつがつパンをむさぼるカナだった。


