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2017年12月11日
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【ゆずねえと朝の支度】

2010年01月25日
 起床して、登校準備して、行ってきます。でもその前に、隣家へ入る。
 おばさんに挨拶してするりと二階へ。『ゆずこのお部屋』と書かれたネームプレートの部屋にノックなしで入る。
「みょーむみょーむみょーむ」
「奇妙な音してるだろ。寝息なんだぜ、これ」
 そんなみょーむ人を揺すって起こす。
「起きろ、ゆずねえ。起きろ」
「ん……わ、わわ。地震?」
「そうだ。巨大地震で既に世界は崩壊した。早く起きないとゆずねえも崩壊する」
「お姉ちゃんは崩壊しないよ?」
「じゃあ俺が崩壊させてやる」
「うー……朝からアキくんがいやらしいよぉ」
「いや、意味が分からん」
 アキくんという高校生につけるにしては嫌なあだ名の俺こと彰人が答える。
「つまりー、お姉ちゃんにえっちなことをして、お姉ちゃんを前後不覚に陥らせることにより、お姉ちゃんを崩壊させるって寸法なのカナ?」
「俺に聞いてどうする。あとお姉ちゃんを多用しすぎだ。いいから起きれ」
「うー……アキくんが冷たい。でも、そだね。起きるね。はい」
 そう言って、ゆずねえは俺に手を差し出した。
「何ですか、この手は」
「抱き起こして?」
 そっとゆずねえの顔に手を覆い被せる。
「違うよー、抱き起こすのー!」
「一人で起きないと顔の皮剥がす」
「お姉ちゃん、一人で起きられます!」
「とてもよい返事で大満足です」
 手をどけると、怯えた様子のゆずねえの顔が出てきた。
「はわはわはわ……」
「む。そういう萌え媚び言語は嫌いではないので多用するように」
「じゃ、これからはわーはわー言うから、抱き起こしてくれるカナ?」
「顔の皮が不要なのであれば」
「お姉ちゃん、一人で起きられます!」
「早く下りてくるように」
 寝たままびしっと敬礼してるゆずねえを残し、先に階下へ下りる。
「どうだった?」
 淹れたてのコーヒーを俺に渡しながら、おばさんが訊ねてきた。
「後数分で下りてくると思います」
「ごめんね、毎朝毎朝」
「まあ、俺も嫌いじゃないですから、ゆずねえ起こすの。それに、このコーヒーがついてきますし」
 ぐいっとカップを傾け、コーヒーを飲む。おばさんの淹れるコーヒーは何か違うのか、とてもおいしいので好きだ。
「柚子も『アキくんに起こされるの好きー♪ でも寝てるお姉ちゃんのおっぱいに悪戯するのは閉口』って言ってたわよ」
 ぶばーと口内のコーヒーをカップに戻す。
「わ、汚い」
「げほっげほっ……ええと、おばさん。一応訊ねますが、信じました?」
「可愛い娘の言うことを、誰が信じないものか!」
 前から薄々感じてはいたが、やはりゆずねえの親だけあって、この人どこかおかしい。ていうかなんだ、さっきのゆずねえのマネ。巧すぎだろ。
「にゃむにゃむ……」
 カップの中のコーヒーをどうしたものかと思案してると、ゆずねえがパジャマのまま眠そうに目を擦りながら部屋に入ってきた。
「うー、眠いよー……お母さん、コーヒーちょうだい」
「彰人くんのコーヒーもらいなさい」
 さっきの俺の行動の顛末を見ているはずのおばさんがとんでもないことを言った。
「アキくん、ちょーだい?」
「あ、いや、このコーヒーには少々問題が」
「彰人くん成分たっぷりで、柚子もにっこり」
「よく分からないけどお姉ちゃん飲む!」
「ああっ、あああっ!」
 俺からカップを奪い、ゆずねえは一気に飲み干した。
「……げぶはー! ぬるい! もう一杯!」
「ええと、大変申し上げにくいのですが、ゆずねえ」
「うん? なぁに、アキくん?」
 こてりと小首を傾げるゆずねえに、コーヒーの仔細を伝える。
「……というわけで、不可抗力とはいえ俺が一度口に含んだものを飲ましてしまいました。ごめんなさい」
「何を謝る必要があるものか! むしろお姉ちゃんは大喜びです!」
「いや、それはどうかと思う」
「よし! お母さん、もう一杯コーヒーちょうだい! そんで、アキくんはそれを一度口に含んでもどしなさい!」
「任せろ娘! 彰人くん、吐しゃの準備はおーけー?」
「この家の人みんな頭おかしい」
 泣きそうになりながらふと壁にある時計を見ると、いつもなら家を出ている時間だった。
「ゆずねえ、学校行こ。あんまりゆっくりしてたら遅刻する時間だぞ」
「でもまだアキくん特製コーヒーが!」
「そんなものは飲むな。聞き分けないと顔の皮剥がす」
「お姉ちゃん、すぐ準備します!」
 よほど怖かったのか、ゆずねえは慌てて部屋から飛び出した。
「……彰人くん、インディアンみたいな脅し文句ね」
「相手が女性なので頭の皮は剥がさないところに注目してほしいです」
「ジェントルマンね!」
 そもそもジェントルマンは皮を剥がさないよな、と思ってると、ゆずねえが制服に着替えて戻ってきた。
「ふー、ふー……な、何秒!?」
「5年」
「お姉ちゃん、どっかで時空の狭間に迷った!?」
「信じるな。準備できたなら行くぞ、ゆずねえ」
「あー、でもまだご飯食べてないー!」
「コンビニで何か適当に買って、食いながら歩けばいいだろ」
「アキくん、めっ! 食べながら歩いたらお行儀悪いでしょ?」
「滅された」
「漢字が違うよ!? お、お姉ちゃん、アキくんを滅してないよ? お姉ちゃんはアキくんが幽体になっても成仏させないよ?」
 それが愛情なのかどうなのか判断に迷うが、とりあえずそんなことはどうでもいい。
「そんなことよりご飯だよ、ご飯! 朝ごはん食べないと元気が出ないよ、アキくん?」
「いや、だからもうそんな時間が……」
「はい、柚子」
 縄か何かでふんじばって無理やり連行しようかと考えてると、おばさんがゆずねえに何か手渡した。
「……おにぎり?」
「さっき作っておいたの。ぱぱーって食べちゃいなさい、その間に母さんが彰人くんを大人の魅力で篭絡させておくから」
 途中までよき母っぽい台詞だったのに、やはりゆずねえの母親だけあってダメな部分が姿を現した。
「ダメーっ! お姉ちゃんが熟しきらない青い魅力で、何より大きなおっぱいで篭絡させるのー!」
「繰り返すが、この家の人頭おかしい」
 結局遅刻した。

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