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2017年09月24日
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【ラーメンの味で喧嘩するツンデレ】

2010年05月16日
 とある休日。お腹が空いたので何か食おうと冷蔵庫を漁ったが、何もない。ははぁこれは神がもういい死ねと言っていると悟ったので、無神論者として断固抵抗すべく、外食することにした。
 今日はよい天気だなあと思いながらぷらぷら歩いてると、能天気を具現化したような存在を発見したのでチョップしてみた。
「痛いっ!? 誰ですか、先生の頭にチョップするのは!」
 具現化した存在、即ち担任の大谷先生がわきゃわきゃわめいた。この生物は大人らしいのだが、身長やら精神年齢やら乳やら色々幼く、ロリコンである俺の心をぐらぐらさせる存在なので油断ならない。
「少なくとも俺でないことは確かだ」
「別府くんです! これはもう別府くんがしたに違いないです! ていうか、別府くんがしたという確かな証拠を見つけました!」
「ほう、俺に冤罪を被せるか。面白い、やってみせろ! 異議ありとか言ってやる!」
「今まさに先生の頭に別府くんの手が載ってます! チョップの形のままです!」
「ああ、しまった。今のナシね」
 そそくさと先生の頭から手をどけ、こほんと咳払い。
「い、一体誰が俺の先生の頭にチョップなんてしたんだ! 許さねえぞ!」
「無理がありすぎですっ! 嘘ぱわーが満載です! ……あ、あと、“俺の”ではないです! 先生は先生のものです!」
「後半の台詞に照れが入っているのは何故ですか」
「う、うるさいですっ! 大人には色々あるのですっ!」
「はいはい」(なでなで)
「頭なでないでくだたいっ!」
「くだたい?」
「うがー!」
 先生が怒って威嚇した。
「まあなんでもいいや。こんな昼間っからどしたんだ、先生?」(なでなで)
「ちっとも堪えてないです。依然なでられるがままです。……えっとですね、お昼ご飯をどこかで食べようと思ったんです」
「奇遇だな、俺もなんだ。ここで会ったのも何かの縁だ、奢らせてやってもいいぞ」
「別府くんが信じられないくらい偉そうです! 世が世なら斬り捨て御免ってされても文句言えないです!」
「文明開化が起きててよかったよ。それで、どこで食うんだ?」
「え、あれ、先生が奢るってなってる……?」
「あ、そこのラーメン屋行こう。前食って、うまかったんだ」
「ま、待ってくださいっ! 手握らないでくださいっ! 腕組むのもダメですっ! だからってお姫様抱っこはありえないですよ!?」
 色々文句を言われたので、先生を小脇に抱えて店に入る。
「いらっしゃいま……」
「ほらほら店員さん驚いてますっ! ていうか何より先生が一番驚いてますっ! 先生は鞄じゃないので小脇に抱えないでくださいっ!」
「ジャンバラヤひとつ」
「そんなのありませんっ! いーから下ろしてくださいっ!」
 ぎゃーぎゃーうるさかったので、先生を下ろし、適当なテーブル席に座る。
「ふうっ。全く、別府くんは問題児の中の問題児です。信じられないです」
「unbelievable」
「無駄に発音がいいですよぉ……」
 メニューを見る。この店の売りはこってりとしたスープだ。よし、こってりラーメン、君に決めた!
「先生、決まった?」
「んとですね……はい、いいですよ。じゃ、店員さん呼びますね」
 テーブルに据え付けられているスイッチを先生が押すと、すぐに店員さんがやってきた。
「えっと、チャーハンと、ラーメンのあっさりでお願いします」
「ラーメンのこってり、それとギョーザ」
 注文を聞き、店員さんが厨房に戻っていった。さて、話すべき議題ができた。
「先生、なんでまたあっさりなんて」
「別府くんこそ、なんでこってりなんですか? しつこすぎて死んじゃっても、先生埋めることしかできないですよ?」
「あ、ちょっと待ってくれ。ICレコーダーで録音して教育委員会に送るから、さっきの台詞もっかい言ってくれ」
「絶対に言いません!!! ……別府くんは鬼です。先生のこと、嫌いですか?」
「思いのほか好きだよ」
「普通に好きって言ったほうがいいです! なんですか、思いのほかって!」
「じゃあ、改めて。……先生、大好きだ」
「そ、それはそれで色々問題ありです! て、ていうかですね、先生の手を握ってじーっとこっちを見てはダメです! は、はやややや!?」
 先生を見つめる時間と比例して、先生の顔がどんどん赤くなっていって愉快痛快。
「も、もーいいです! ……ま、まったく、別府くんは先生をからかってばかりで困ります。先生、ぷんぷんです」
 先生は俺の手を振り払い、ぷらぷらと振った。
「臭いのか? 女の子なんだから、風呂には毎日入れよな」
「ハエがたかってるわけではないです! ぷーんぷーんではないです! ぷんぷんと言いました! 怒ってることを可愛らしく表現したのですっ!」
「自分で可愛らしくとか言うなよ……」
「う、うるさいです! 別府くんのばか!」
「で、話は戻るが、なんだってあっさりなんて頼んだんだ? この店の売りはこってりスープだぞ?」
「……前に注文したんですが、しつこくってしつこくって、全部食べられなかったんです」
「三回食えばやみつきだぞ? 現に俺なんて、週に一度は食いたくなる。そして食べなかったら手が震え、幻聴まで聞こえ出すんだ」
「本当に病みつきです! 何が入ってるんですか!?」
「鳥のダシか何かじゃないか?」
「意外と普通の答えでした!」
 などと侃々諤々先生と言い合ってると、店員さんがやってきて注文した品々をテーブルに並べた。
「わー……久々ですが、やっぱりおいしそーです。いただきまーす♪」
「くるしゅうない」
「……ずるずる」
 偉そうに言ったら、先生が嫌そうな顔をしてラーメンをすすりだした。
「んー♪ おいしいです♪ ほらほら、別府くんも一度食べたらこのあっさりスープのよさが分かりますよ?」
「まあ待て、俺の分を食ってからだ。ずるずるずる……」
 まずスープを少し飲んでから、麺をすする。うむ、想像通りうまい。
「まったりとしていて、それでいてしつこくなく」
「ものすごく嘘っぽい表現です……」
「超うめえ」
「シンプルですが、とってもよく伝わります。いりませんが!」
 手をNOという感じにして出されたので、レンゲでスープをすくい先生に向ける。
「いらないって言ってるのに……」
「まあまあ、騙されたと思って一口飲んで見てくれよ。もし飲んで騙されたと感じたのであれば、先生は騙されやすいので後で詐欺して大金うはうは」
「絶対に飲みません!!!」
 俺の説得はよく失敗します。
「それより、先生のラーメンを食べてみるべきです。あっさりしていて、とてもおいしいんですよ?」
「猿の脳みそより?」
「ありえないチョイスですっ! もーちょっとマシなものを出すべきですっ!」
「寡聞にして猿以外の脳の味を知らないんだ」
「猿は知ってるんですかっ!? 別府くんが恐ろしい生物に見えてきました……」
「男ってのは怖いものさ」
「怖いの種類が違いますっ!」
「まあ、本当は猿の味も知らないんだけどな。それはともかく、そのスープ味見していいか?」
「普通に、最初っから、わーいって言って食べればいいのに……」
「わーい」
「なんか馬鹿にされてる気がします……」
 どうしろと言うのだ。とまれ、先生が差し出したレンゲを口に含む。
「ふむ……。まあ、普通だな」
「ええっ!? そんなことないですよ、とってもおいしいですよ!? 別府くんは普段ろくなもの食べてないからそう感じるだけです!」
「俺だけでなく、別府家全体を敵に回す台詞だな」
「こんなおいしーのに……このおいしさが分からないなんて、別府くんは可哀想です。……あっ! え、えっと、お子様にはこのおいしさが分からないんですよ。……ふふん?」
「まあ、お子様は舌が発達してないので、しつこいものよりあっさりしたものの方が好きだよな」
「折角の大人アピールのチャンスを冷静に潰さないでくださいっ!」
「そこまで大人と言い張るのであれば、やはり俺様のスープを飲んで証明するしかあるまい」
 再度レンゲでラーメンのスープをすくい、先生に向ける。
「う……こ、これを飲んだら大人ですか? 先生を尊敬しますか? もういじめませんか?」
「いいえいいえいいえ」
「いっぱいいいえって言われました! 飲む理由が一切なくなりましたっ!」
「しまった。よし、嘘をつくぞ。うーんうーんうーん。これを飲んだら大人で尊敬していじめない」
「騙す気が全く見えませんっ! もうちょっと頑張って欲しいものですっ!」
「ええと……よし。俺がおいしいと感じるものを、先生に味わって欲しいんだ」
「あ、あぅ……そ、それはよい騙し文句です。先生、ちょこっとぐらぐら来ました。もうちょっと頑張ったら、先生、くらーっていっちゃうかもですよ?」
 先生は両手を合わせ、軽く首を傾げて何かを期待する目でこちらを見た。
「よし。……先生、俺が卒業したら、小さなアパートでも借りて、一緒に」
「すとーーーーーーっぷ! それはなんか違う意味でくらくらーってしちゃう大変危険な呪文なので、片手間に言うのは禁止です! 禁止禁止禁止!」
 先生は顔を真っ赤にしながら俺の頭に連続でチョップした。
「先生、痛い」
「うるさいですっ! 別府くんのばかっ! 本当に別府くんは嘘ばっかりつくダメな生徒ですっ!」
「嘘をつくかもしれないが、少なくとも年齢は詐称してはいないぞ。……あ」
「あーっ! それは先生に実は幼女だろばーかばーかって暗に言ってますね! 先生は子供ではなく、大人ですっ! ほらほら、めんきょしょー!」
 気づいた時には既に遅く、先生は手馴れた様子で懐から免許証を取り出すと、俺の頬にめり込ませだした。
「先生、痛い。あと、俺の頬に目はないので、そこに押し込まれても見えない」
「もー何十回と見せたので、知ってるでしょ!」
「なら何十回と見せなくてもいいのでは」
「毎回毎回別府くんが先生の年齢を疑うからですっ!」
「うるさい合法ロリだなあ」
「あんまりな台詞が飛び出しましたよ!?」
「黙らないと先生の口を塞いで家に持ち帰り、一緒にゲームとかするぞ」
「途中まですっごく怖かったのに、最終的には友達感覚です!」
「先生と仲良くなりたいんだ」
「一緒にラーメン食べておいて、何を言ってるですか……」
「いやはや。先生と一緒だと、何やっても楽しいよね」
「なっ、なに、何を、何を言ってるですか!? そ、そゆこと言っても先生は篭絡されませんよ!? う? う!?」
「篭絡って何の話でしょうか」
「うっ、うるさいですっ! 別府くんのばかっ!」
 先生は俺を怒りながらずるずるずるーっと一気にラーメンをすすった。
「げへんげへんげへんっ!」
 そしてむせた。
「ああほら、一気に食ったりするから。はい」
 水を渡すと、先生は一気にあおった。
「……っん、っん、っん、……ぷはぁ。ふぅ、死ぬかと思いました」
「あ、それ俺の水だった。まあいいか」
「わざとですねっ!? わざと別府くんの水を飲まして先生を混乱させる策ですねっ!?」
「この疑心暗鬼ロリはめんどくさいなあ」
「いちいちロリってつけないでくだたいっ!」
 ぎゃーぎゃー騒ぐ大谷先生を、迷惑そうな微笑ましそうな目で見る従業員と客たちだった。

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