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2019年10月15日
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【不摂生な男に対してツンデレが一言】

2010年04月29日
 朝ご飯をここ数年食べた記憶がねえ。
「まったく……いつもいつもお腹を鳴らして情けないですわねぇ」
 そんなわけで、午前中は腹減り魔人として近隣の住民を脅かしている(腹の音で)俺に、リナが呆れた様子で声をかけてきた。
「しょうがないだろ、朝は眠いからギリギリまで寝てたいし。その結果朝食を摂る余裕がなくなるのを一体誰が責められようか」
「ワタクシが責められますわ! いつもいつもぐーぐーぐーぐーうるさいんですの!」
 近隣の住民代表であるリナが怒った。
「グーグーだって猫である」
「言いたいだけですわね……」
「そんなわけで、俺の腹の虫は放っておいてくれ」
「何がそんなわけなんですの!? とにかく、うるさくてしょうがないんですの。どうにかしてくださる?」
「うぅむ……俺の胃を切除するか、リナの鼓膜を破るか。どっちがいい?」
「前者でお願いしますわ」
「チクショウ! この女、悩みもせずに選びやがった!」
「当然でしょう? ワタクシの美しき鼓膜と、貴方の何の価値もない胃とでは、比べるのも失礼というものですわ」
「鼓膜に美醜ってあるんですか」
「う、うるさいですわね。物の例えですわ」
「モノノ怪」
「だから貴方、それ言いたいだけですわよね!?」
「そういうわけで、俺はお腹が空いているのです」
「何がそういうわけですの。けど、そうですわね……ええ、確かに何か食べればその騒音も消えるかもしれないですわね」
「何やらよい展開の予感がするぞ!」
「そうですわね。廊下を出てしばらく行ったら男子トイレがありますわ。そこに水道があるので、いくらでも水が飲めますわよ?」
「思てたんと違う!」
「もしくは……そうですわね。校庭に出れば土が山ほどありますわよ?」
「この女、俺をミミズと勘違いしてやがる……! 勘違いしないでよね、霊長類なんだからねっ!」
「どやかましいですわっ!」
 超怒られた。
「はぁ……しょうがない。水飲んでくる」
 確かに毎日毎日腹の音を聞かされては堪ったものではないだろう。これからは一時限目終わったら水を飲んで誤魔化すか。
「お待ちなさいな」
「うん? ……え?」
 リナの差し出す手の先に、小さな弁当箱があった。
「あ、あげますわ。毒なんて入ってませんわよ」
「え? いや……え? ああ、そうか。そう言って実際は入っているオチなのだな」
「……次は入れてさしあげますことですわよ」
 いかん、余計なことを言ったような。
「ていうか、ええと……?」
「え、ええと……あれですわ。ほ、施しですわ! 持てる者は、持たざる者に施すのが当然ですの。だから、他の意味なんてなくってよ?」
「他の意味……?」
「考え込む必要はないことですわよっ! いいから食べなさいな!」
 なんかよく分からんが、食えとのことなので弁当の蓋を開ける。ちっこいおにぎりが二つ入っていた。
「おお、おにぎり。俺が食っていいのか? リナの弁当なんだろ?」
「それで貴方の騒音から逃れられるなら、安いものですわ。それに、ワタクシの分は別に用意してありますの」
「え、てことはこれ、俺のために……?」
「な、なーにを言ってるのですかね、この勘違い男は!? こっ、こんなの、ワタクシのお弁当を作るついでにちょちょいっと作っただけですわよ!? 誰もわざわざ作ったりしてないことですわよ!?」
「何っ、しかも手作りだと!? 俺はてっきりお前の家で雇ってる料理人が作ったものだとばっかり」
「え……あ、あの、ワタクシの手作りだと、何か……?」
 リナは急に不安そうに俺の顔色を窺いだした。いっつも無駄に自信に満ち溢れているくせに、何を不安がっているのか。
「いや、とても嬉しいです」
「なっ!?」
「リナの顔が赤くなった」
「なっ、なってません、なってませんわよ!? ていうか貴方、いちいち説明しないでいただけますこと!?」
「わはは。んで、食っていいのか?」
「え、ええ、どうぞ」
 おにぎりをぱくりと一口。む……具はシャケか。
「ど、どうですの? おいしいですわよね?」
「おいしい。シャケは好きだ」
 リナは安心したように息を吐いた。
「ま、まあ当然ですわね。ワタクシに失敗なんてないですもの! おーっほっほっほっほ!」
「高笑いがとてもうるさい」
「うるさいですわっ!」
 うるさいと指摘したら逆に俺が怒られた。理不尽な。
「もぐもぐごくん。次」
 一つ目のおにぎりを食べ終わり、次のおにぎりに手を伸ばす。今度は……む、昆布?
「ど、どうですの?」
「これもおいしい」
 リナは再び安心したように息を吐いた。
「ワタクシが作る以上失敗はないですが、それに加えて最高級の利尻昆布を使ってるんですの。まずいはずがないですわ。おーっほっほっほっほ!」
「感想を言うと馬鹿みたいな高笑いがついてくるのは強制なのでしょうか」
「うるさいですわっ!」
 また怒られた。
「とまれ、大変おいしかったです。ありがとうリナ、すごく嬉しかった」
 リナに感謝の意を伝えると、リナ内部で何か化学反応が起きたのか、顔がものすごく赤くなった。
「あ、あ、貴方! そんなまっすぐ言うのって、なんかずるいですわ!」
「何で怒られているんでしょうか」
「うっ、うるさいですわっ! ……と、とにかく、気に入ったのなら明日からも作ってきて差し上げてもよくってよ?」
「え、マジで? ……いや、でも迷惑だろうし、折角だけど今日だけでいいよ」
「迷惑と感じているのであれば最初から作りませんわ。貴方はただ馬鹿みたいに“うん”と一言いえばいいんですの」
 なんという傲岸不遜な言いぶり。だが、逆にリナらしい。
「じゃあ、うん。これからもお願いします」
 頭を下げながら、弁当箱を返す。
「引き受けましたわ。……ああ、こんな哀れな人にさえ施しを与えるなんて……ワタクシはなんて素晴らしいのでしょう!」
「しまった、みんな、耳を塞げ! リナの頭が悪いことが露呈してしまう!」
「貴方が一番失礼ですわっ!」
 俺を怒鳴りながらも、リナは大事そうに弁当箱をぎゅっと抱きしめていた。

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