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2024年05月06日
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【ツンデレな妹VSデレデレな姉8】

2010年03月22日
 もうすぐ2月14日。怖い。
「タカくん! お姉ちゃん、頑張るからね!」
 満面の笑みを浮かべつつ、大量のチョコを抱えた姉が怖い。
 お姉ちゃんは炊事洗濯なんでもこいなスーパーお姉ちゃんなのだが、お菓子作りは下手なのだ。
「今年こそ、タカくんにおいしいチョコ作るからね!」
 自信たっぷりに、お姉ちゃんは溶けたチョコを入れたボウルの中に塩を入れた。
「スイカに塩かけたら美味しくなるし、チョコもきっと一緒だよね、タカくん?」
「はは、ははは……」
 力なく笑って誤魔化し、妹の部屋に逃亡。
「カナぁ~……お姉ちゃんの暴走を止めてきてくれぇ」
 妹の部屋に乱入すると、カナは着替えの最中でした。
「おおっ、なんというタイミング。まるでラブコメのようではないか。そう思わないか? カナ」
「いいから出てけクソ兄貴ッ!」
 下着姿のカナが目覚まし時計を振りかぶったので、慌てて逃走する。
「ところで、いつまで同じブラしてるんだ? そろそろ新しいブラを買うべきかと兄は提言する」
「うっさい!」
 一度戻って兄の優しさを示したら、下着のままで追いかけてきたので驚いた。時計投げられた。
「……で、姉ちゃんがどうしたって?」
 カナが着替えるのを待って、事情を話す。
「ああ、またいつものアレね。……ったく、なんでこんな馬鹿のために姉ちゃんが苦労しないといけないのかしらねぇ」
「愛ゆえに!」
 真顔で言ったら、ほっぺをつねられた。違うのか。
「とにかく、姉ちゃん一人じゃ出来ないだろうし、手伝ってくる」
「おおっ、さすがカナ。ありがたう、ありがたう」
 カナは炊事洗濯なにもできないへっぽこ妹なのだが、お菓子作りだけは一級品なのだ。
「姉ちゃんのためだかんね。……勘違いしないでよ」
「いや、する! しまくりんぐ! カナが俺への愛ゆえにお菓子作りを手伝うと」
 殴られたので黙ることにする。
「じゃ、行ってくるから」
「お気をつけて」
 とにかく、カナがいれば安心だ。明日が楽しみだ。
 
 そしてやってきた14日。バレンタインな日。
「はいっ、タカくん! お姉ちゃんチョコだよ! 食べて食べて!」
「むがむが」
「ちょ、ちょっと姉ちゃん! 包みのまま口に突っ込んだらダメじゃない!」
 少しだけヤギの気持ちが分かりました。
「あははっ、タカくんに少しでも早く食べてもらおうと思って。おいしい? おいしい?」
「紙の味しかしません」
「ううっ……タカくん、お姉ちゃんの選んだ紙はおいしくないの?」(涙じわーっ)
「うまいうまいまぐまぐ」
「食うなッ! 姉ちゃんも食べさせないの!」
 カナの乱入のおかげで助かった。紙はとてもまずいです。超吐きそう。
「えへへっ。じゃあ……はいっ、お姉ちゃんからタカくんへ。チョコレートです」
 改めて渡されると、こう、なんというか、……照れくさい。
「あー……うん。ありがと、お姉ちゃん」
「……くぅぅぅぅ、照れてるタカくん可愛いっ! お姉ちゃんすりすりすりッ!」
 お姉ちゃんにすりすりされまくる。お姉ちゃんのほっぺはお餅のようにぷにぷにしてるので、悦楽気分。
「…………」
 ただ、カナがとても怖い目で俺を睨むのでおしっこ漏れそう。
「それでね、カナちゃんもチョコ作ったんだよ!」
「それは嬉しいな。カナ、チョコちょーだい」
「アンタのために作ったんじゃないわよ、ばーか」
「な……なにぃッ!? だ、だだ誰のために作ったというのだ、カナっ!」
「そんなのあたしの勝手でしょ。んじゃ、学校行こ」
「む、むぅ……」
 一体誰にやるつもりなのか。ずーっと考えてるうちに、昼休みになってしまった。
 考えてるだけでも腹は減る。弁当を食おうと鞄を漁ってると、カナが寄ってきた。
「兄貴、ちょっと放課後顔貸して」
「アンパンマンではないので取れません」
「教室で待っててね。んじゃ、約束」
 俺の小ボケをスルーし、カナはいつもの友人グループの輪に戻っていった。
 とにかく、約束したので放課後、ぼんやり椅子に座ってカナが来るのを待つ。
「あ、ちゃんと待ってたわね。感心感心」
 夕焼けが眩しく感じる頃、カナが教室にやってきた。
「当たり前だろ、約束したからな」
「他に人は……いないわね。……よしっ」
 カナは小さく気合を入れ、鞄を開いた。そして、小さな包みを取り出した。
「……ええっと、まさか」
「そ、そう、チョコよ! 悪い!?」
「いやでも、俺のために作ったんじゃないんだろ? なんで?」
「あ、あたしがどれくらい腕をあげたか、それを知るために作ったの! 今日が14日なのは、ただのグーゼン!」
 グーゼンと言い張るわりに、カナの持っているチョコには気合の入ったラッピングをしている。
「つ、つまり、自分自身のために作ったの! 納得した!? したわよね! はい、チョコ!」
 俺が口を開く暇を与えず、カナは叩きつけるように俺の手にチョコを置いた。そして慌てて鞄を持ち、逃げるようにドアへ向かう。
「あー待て待て、カナ」
「なっ、何よ、まだ何か!?」
「チョコ、ありがとな。嬉しいぞ」
 その一言で、カナの顔が夕焼けに負けないくらい赤くなった。
「う……じゃ、じゃあねッ!」
 荒々しくドアを閉め、カナは教室を出て行った。
 渡されたチョコを食べる。やっぱり、カナの作るチョコは美味しかった。

 で、家に帰るとカナがいるわけで。
 俺を見るなり顔を真っ赤にするわけで。
 それを見たお姉ちゃんが邪推して不機嫌になるわけで。
 
 お姉ちゃんが不機嫌な日は、不思議なことに俺の晩飯がゴマだけになる。

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オチわろたwwww
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