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2024年04月27日
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【シア いぬ】

2014年01月21日
※ちょいグロ&犬好き注意

 俺は学生なので学校へ行かないといけないのだけど、一人で行っては悪魔崇拝者の刺客に殺されてしまうだろう。かといってシアのような小さな子を連れて行ったら、色々と面倒なことになるのは火を見るより明らかだ。さて、どうするか……。
「ねーねー、彰人。どしたの?」

拍手[15回]

 そんなことに頭を悩ましてると、シアがちょこちょこっとやってきて俺をツンツンつついてきたので、頭をなでてみた。
「やーん♪」
 無論そんなことをしても何の解決にもならないので、シアに相談してみた。
「んー。じゃあさ、シアが彰人の中に入っていけばいいじゃないかな?」
「なか?」
「そう。こうやってさ」
「んぐっ!?」
 シアの手が黒い粘液になったと思ったら、その粘液がぐぼっと俺の口の中に入ってきた。さらに粘液はそのまま奥へ、ノドへ向かっている!
(死ぬ!? ……まあ、いいか)
 そのままシアは全身を黒い粘液にし、ずるずると俺の中へ入っていった。だが、シア全てが入っても俺は死ぬことはなく、逆にどこか体調が良くなったようにすら感じる。
『こーゆー風にして行ったらどうかなーって』
「謎の声が突然俺の中から。神か?」
『シアだよ?』
「ああこれはこれは初めまして、符長彰人と申します。貴方はシアという神なのですか」
『シアはシアだよ、かみじゃないよ!』
「随分馬鹿みたいな神もいたもんだな」
『シアはばかじゃないもん! 今日も彰人はいじわる! いじわるむし!』
「虫……?」
『シアは怒ってるんだよ。ぷんぷんだよ。ぷんすかぽーんだよ!』
「まあなんでもいいや。つまり、俺の中に入るとはこういうことなんだな?」
『うー、怒ってるのに。んと、そうなの。これなら一緒に行けるでしょ? ねっ、ねっ?』
「そだな。ただ、シアと会話してる所を誰かに見られたら面倒だな。さて、どうするか……」
『シアの声は骨の振動で彰人に伝わってるから、他の人には聞こえないはずだよ。彰人がただの、ち、ちゅーにびょー? ていう人と思われるだけだから、だいじょぶ!』
「だいじょばねー。あ、そうだ。学校へ行く前に……」
『?』

『ねぇ、彰人』
 外見上は一人でてってこ学校へ向かってると、体内のシアが俺に言葉を伝えてきた。
「なんだ、シア?」
 口の中でもごもごっとシアに返す。小声でも空気の振動ではなく骨の振動で伝わるため、問題なく明瞭に聞こえるらしい。
『別に無理してさ、が……がっこ? 行かなくてもいいんじゃないの? 命を狙われてるんだし』
「問題無いだろう。奴らも昼間から姿を現さないだろうし、仮に現してもシアがいるから対処できるし」
『んー……他のがくせいさんが狙われるかもしれないよ?』
「や、狙われてるは俺だろ。他の奴らは狙わないだろ、たぶん」
『にんむの邪魔になったら、ちゅうちょなく殺すと思うよ?』
「あー。まあ、いっか」
『死んじゃうよ?』
「木の葉を隠すなら森の中という格言もあってな」
『……いいの?』
「あまり良くないが、せっかく授業料払ってるのに休学するのももったいないし、いいさ。問題が発生してから考えるよ」
『わー。彰人って、基本的に悪だよね』
「個人的にはCHAOS寄りのLIGHT-NEUTRALだと思ってるんだけどな」
『LAWはないんだ……』
「法を順守するようなまともな奴なら、人食いの化け物と一緒になんていられないだろ」
『化け物って言った!? 彰人ひどい!』
「そんなわけで、よく分からん狂信者に怯えて隠れるつもりはない。親父もそのつもりで俺に魔導書を送ってきたんだろう。他に送る場所がなかった、という可能性も否めないが」
『あはは……まあシアはどっちでもいいけどね。ところで、がっこの人を食べてもいい?』
「それはダメ。足がつくし、知った顔が食われるところはあまり見たくない」
『ちぇ。ま、最近はいっぱい食べてるから別にいいけどね。ひと おいしいです!』
「ふーん。なあシア、お前は何が一番うまいと思うんだ?」
『ん? んー……豚さんや牛さんや鳥さんもいいけど、やっぱ人かなあ。それも、死体より生きてるの、年寄りより若いの、男より女、大人より子どもの方がおいしいね。おにくがやーらかくてね、甘みがあるの♪』
「やーらかいじゃねえ。あと、若い女や子供を食うのは許さん」
『なんで?』
「趣味」
『ふーん。まあ、シアも嗜好のレベルだからいいけどね』
「そうか。助かる」
『ふっふっふ。彰人の人間っぽいとこ、はっけーん!』
「化け物にそんなこと言われても」
『また化け物って言った!?』

 そんなこんなで学校へ到着。教室へ向かい、自分の席へ就く。
『……ねーねー彰人、ともだちとかいないの?』
 誰も俺の席へ近づかないことに気づいたのか、他の人には聞こえないのにシアはヒソヒソと声を潜めて囁いた。
「いない」
 鞄から小説を取り出し、しおりを挟んでいるところを開く。
『ふーん、そなんだ。彰人のぼっちー♪』
「後で焼き殺してやるから覚えてろコンチクショウ」
『シアに火は効かないもーん♪』
 この無敵万能戦艦め、とか思ってたら教師がやってきた。授業開始。

 しばらくぼうっと授業を受けてたら、昼休みになった。家から持ってきたパンと水筒を机の上に置く。
『それだけで足りるの?』
「なんとか。仕送りもそう多くはないし、節約しないとな」
『ふーん。あのさ、そこら辺でねこでも狩ってこようか?』
「やめれ。猫は好きなんだ」
『んじゃ、いぬ?』
「ダメです。犬も好きなの」
『ぶーぶー』
「うるせえ。人の中で騒ぐな」
 包装を破り、パンをかじる。餡の甘みが疲れを癒していく。
「はぁ……」
『……ねーねー、彰人。シアもそれ食べたい』
「ん? パンとか食べられるのか?」
『たぶん。ねーねー、シアにそれちょうだい?』
「……俺も食わなきゃいけないし、少しだけだぞ」
『わーいっ♪』
「んじゃ、口の中まで出てきてくれ。パンを口に入れるから、上手にパンだけ食ってくれ。間違えて俺の舌とか食ったら殺す」
『わー、彰人って悪魔みたい』
「やらんぞ」
『あっ、うそうそ! 彰人ってほんと天使! ぷっぷくぷー!』
「なにそれ」
『天使のラッパ』
「…………」
『ぷっぷー?』
「……まあ、いいや。ほれ、食え」
『わっわっ、ちょっと待って! いま出るから!』
 口の中にパンを入れると、ほどなくシアがノドを登ってくる感覚がやってきた。嘔吐などでお馴染みの遡上感覚なのだが、シアの場合は粘膜を傷つけないのか別段気持ち悪くも痛くもなく、むしろどこか清涼感を伴うものだった。ちょっと気持ちいい。
『もしゃもしゃもしゃ』
「どうだ?」
『ふつー』
「テメェ人の飯食っといて普通とはなんだコンチクショウ。貴重なカロリーを返しやがれ」
『むー。じゃあ後でとりさんとか捕まえておくよ』
「やっぱいいです」
『彰人はわがままさんだね?』
「このアマあとで泣かす」
 外から見るといつも通り一人だったのだが、実際は二人で会話しながら食事していたので、いつもと違いとても楽しかった。……こんなことシアには絶対に言えないが。

 水でノドをうるおすと、不意にもよおした。
『彰人、おしっこ?』
「お前、仮にも女がおしっことか堂々と言うなよ……」
『えへへ。あのね、シアが吸収しちゃってもいいよ?』
「いーよ別に。汚いだろ。トイレ行けば済む話だし」
『食べるんじゃなくて吸収するんだからヘーキなのに……』
「うっせーばーかばーか。尿食い」
『酷い!? そして最後のがいっとーひどい!』
 体内でプンスカしてるシアと一緒にトイレへ向かい、尿を解放。
「ふいぃ……ん?」
 ふと、遠くから何か聞こえた気がした。
『彰人、彰人。いぬだよ、いぬ。いぬさん。わんわん』
「犬? 珍しいな」
『んと……いぬさんがこの学校に入ってきたみたい』
「へぇ。でも、そんな物見高い方じゃないし、教室に戻って小説の続き読もう」
『うーん。それでもいいけど、あのね。そのいぬさん、操られてるみたいだよ?』
 嫌な予感がした。そして、悪い予感というものは得てして当たるもので。
『えっと……彰人を殺そうとしてるみたい』
「なるほど、刺客か。そいつは剣呑だな」
『けんのん?』
「おっかないね、って意味だ」
『へー。それで、どする? 逃げる? 食べる?』
「見られても処理が面倒だし、どっか人目のないところで仕留めるか」
 そう言ってる間も騒ぎは徐々に大きくなっている。そう遠くない。早く移動しないと。でも、どこへ?
『彰人、彰人。おくじょー』
「おくじょー? ……ああ、屋上ね。……成る程」
 うちの学校の屋上は立入禁止なので、当然誰もいない。よし、そこだ。
 階段下から聞こえてくる悲鳴に背を向け、まっすぐ上へ向かう。すぐに屋上へ向かうドアに着いた。
「シア、このドアの鍵どうにかできるか?」
『ふっふーん。シアにおっまかせー♪』
 指先に違和感が走る。見ると、俺の爪の隙間から黒い粘液質の物体が出てきているではないか。
「うわっ、謎の奇病が発症した」
『シアだよ!? 奇病扱いしないで!』プンスカ
 粘液質の物体に怒られた。その物体はにょろりとドアに伸びると、施錠を断ち切った。すぐにドアが開いた。そのまま屋上へ出る。強い風が吹いていた。ドアから数歩歩き、くるりと反転する。
『来るよ』
 黒い影が襲いかかってきた。その数、3。
『えい』
 犬とは思えぬ速度で疾風のように飛びかかってきたその影は、だが、俺から染みだしたシアの触手に容易く捕まった。
「いぬじゃねー。どう逆立ちしても無理だよ。それじゃ、いっただっきまーすっ♪」
 三匹の犬は、黒い触手に捕まったまま、俺の体内から出たシアにばりばりと食われていく。犬たちの悲痛な声があがった。
「殺してるんだ、殺されもするさ」
 何かの台詞だが、今の犬たちにぴったりの台詞だ。飼い主を選べぬ自身の運命を恨むがいい。……火の粉を払っているだけとはいえ、こうして殺している俺やシアも、いつか殺されるのだろうか。
「もぐもぐもぐ。んー、やっぱりシアはパンよりいぬさんの方が好きだなー♪」ケプ
 思考の淵に沈みかけたその時、シアの明るい声に引き戻された。
「……ぐろいな」
「おいしいよ?」モグモグ
「ま、いいや。助けてくれてサンキュな、シア」ナデナデ
「えへへー♪」モグモグ
 シアの笑顔は大変に可愛い。その口元が血まみれで、手に抱えてる半分になった犬を見なければ、だけど。
「それより、早めに食ってくれ。いつ人がやってくるかわからん」
「それも食べちゃえばいいじゃん。シアもおいしくて幸せだし、彰人もばれなくて幸せ。みんなはっぴー♪」
「犬はともかく、人が消えると現代社会は色々とややこしいんだよ。ほれ、いいから食え」
「ちぇー」モグモグ
 素早く三匹の犬を平らげると、シアは黒い粘液に変化した。そこから大きく広がって屋上を覆い、散らばった血を吸い出した。
「うー、埃とか小石とかコケとか、不純物が多くてまずいー」ゴクゴク
「我慢しろ化け物」
「また化け物って言ったー! もー、彰人きらいきらい!」プンスカ
「へーへー」
 プンスカ怒る巨大な液体状の黒い物体を適当にあしらう。
「……ふう。全部キレイにしたよ?」
「お、終わったか。んじゃ……あー、嫌だが戻ってくれ」
「嫌ってどーゆーことよっ! シアが嫌なの!?」
「あの感覚にまだ慣れないんだよ……別にシアが嫌とかじゃないから機嫌を直せ」
「むーっ」
 怒っているようだが、生憎相手は時折虹色に光る黒い粘液なので、どうにもよく分からない。
「ま、いいや。悪かった。とにかく戻ってくれ」
「むーっ。りょーかいっ」
 俺の口の中に、シアが入る。ごくりと嚥下すると、シアが体内に収まった。
『……はぁー。やっぱ彰人の中は居心地いいね!』
「うわ、すげー嬉しくない」
『なんでそんなこと言うの! 中から串刺しにするよ!』
「ヤだこの化け物超怖い」ブルブル
『また化け物って言った!? もー、彰人きらいきらいきらい!』ドタバタ
「うぐぐ、人の中で暴れるない。内臓が潰れる」
 用事を終えたので、校内に戻る。中はまだ騒然としており、教師連中が走り回っていた。
「あっ、キミ! 校内に凶暴な犬がいるんだ、早く教室に戻って!」
「もう大丈夫ですよ」
「えっ?」
 そのうちの一人に捕まったが、面倒なので言う通り教室に戻る。
 教室に戻ると、ざわつきはさらに増したように思えた。泣いてる女子もいる。怖いのか、知り合いが怪我でもしたのか。
 することもないのでいつものように小説を読んでると、教師が戻ってきた。久しぶりに教室に静寂が戻る。
「午後の授業は中止になった。今日はもう下校しろ。一応捜索して無事は確認できたが、まだどこかに犬が隠れている可能性があるので、部活も中止だ。全員すぐに下校しろ」
 いつもであれば大喜びするであろう学生たちも、自身に危険が振りかかる可能性があるとあれば話は別なのだろう、皆神妙に話を聞いていた。
『すぴゃー……すひゃー♪』
 一方、俺はシアの寝息を聞かされて不満だった。

 昼に帰宅できるのはとても嬉しい。ルンルン気分で自宅に帰り着き、居間に入る。果たして、そこでシアが待っていた。
「……あっ、彰人! お帰りー!」
 ぼーっとテレビを見ていたシアだが、俺に気づくと弾けたような笑顔を覗かせた。はつらつとしたその様子からは、とても人を喰う化け物には見えない。
「うーっす、ただいま」ナデナデ
『んじゃ、合体するね』
「ん? げぶっ」
 体内のシアが俺の口からでろりと現れ、家にいたシアと触れ合い、融合した。
「……ふんふん。やっぱりこっちにも刺客が来たみたい。分裂して正解だったみたいだよ、彰人」
 そう来ることは予期できたので、学校へ行く前にどうしようかシアと相談した結果、どうもシアは分裂できるということで、ここで留守番してもらっていたのだ。
「……せめて一言あってから出てきてくれ。いきなり出てこられるとびっくりする」
「あっ、ごめんね彰人」アハハ
「はぁ……まあいいや。んで、想像つくが、ここに来た刺客は?」
「食べたよ?」
「やっぱな……」
「おいしかったー♪」ニコニコ
「よく考えたら俺じゃなくて魔法書を狙ってるんだろうから、そりゃ家にも来るわな。で、魔法書は?」
「ちゃんとシアが体内にしまってるよ。一番安全だもん」メロリ
「まくるな。服をまくるな」モドシモドシ
「服もシアの一部だから一緒なのに……」
「見た目の問題だ、見た目の。つか、さっきまくった時に魔導書は見えなかったけど」
「シアの中にあるもん。取られたら困るし、表面には出さないよ」
「じゃあなぜ服をまくった」
「彰人をのうさつ!」ウッフーン
「あ、はい。可愛いです」ナデナデ
「なんか想像と違うけど、これはこれで!」エヘヘヘ
「まあ、なんだ。お疲れ様」ナデナデ
「ぜーんぜんっ♪ ご飯は向こうから来るし、いじわるだけど、怖がらずに一緒にいてくれる人はいるし、安心して寝れる所はあるし、シアはとっても幸せだよ♪」
「……そか」ナデナデ
「えへへー。あ、そだ! 今日はシアが一人でご飯作ったげる! さっき食べた犬の肉がまだ残ってるし、それでおいしーの作ったげるよ!」
「超迷惑です」
「おいしーのに……」
 残念そうな顔をした物騒な同居人の頭をなでる俺だった。
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無題
おお!久しぶりの不定形美少女!
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