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2019年10月18日
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【ツンデレが義妹になった】

2010年05月08日
 俺には母親がいない。俺が小さな頃に事故で死んだ、と前に親父から聞いた。
 そんな親父が、みことの母親と再婚した。
「……私が、貴様の妹だと?」
 妹となったみことの第一声がそれだった。
「では妹記念に『オニーチャーン』と鳴け。ほれ、鳴け」
「…………」
 オニーチャーンと鳴く代わりに侮蔑の視線を向けられた。
「私は今まで通り別府と呼ばせてもらう」
「いや、でもこれからはおまえも別府性になるんだからややこしいぞ。名前か、オニーチャーンか、だ」
「……愚兄め」
 などというやりとりをしたのが昨日。
「いいか、学校で私と貴様が兄妹になったなどと言うなよ」
 学校への道すがら、みことは再三に渡って俺に注意を呼びかけていた。
「わーったわーった。で、『オニーチャーン』が嫌なら『にぃにぃ』ならどうだ?」
「……やはり痛みを与えねば理解しないか?」
「名前をどう呼ぶかなんて個人の自由ですよね、みことさん?」
 みことが暗い笑みを浮かべつつ懐に手を差し入れたので、慌てて掌を返す。
「まったく、貴様は……だがしかし、今までどおり別府と呼ぶには問題がある、か……」
「冗談はともかく、名前で呼ぶのが妥当じゃないか? ほれ、練習してみ」
「む……た、たか……」
「おっはよー二人とも!」
「うきゃッ!」
 勢いよく声を掛けられ、みことが猿のような声をあげる。声の主──かなみは、不思議そうに俺たちを交互に見ていた。
「二人で登校なんて珍しいわね。みこと、こんな奴と一緒にいたら馬鹿が移るわよ」
「失敬な、馬鹿じゃないぞ。それに二人で登校なのは俺たちがむぐむぐ」
 突然背後から口を塞がれた。
「いやなに、そこで偶然会ってな」
「ふーん。……ねぇ、いくらタカシでも殺すのはちょっと……」
「ん? ……あ」
 みことが俺の鼻も一緒に押さえていることに気がついたのは、俺が死ぬほんの数秒前だった。

「……まったく、秘密を守るため亡き者にされるかと思ったぞ」
 かなみの後ろに並び、ひそひそとみことにささやく。
「だいたい貴様がいらぬことを言わなければ済む話だろうが!」
 囁き声に怒気をはらませ、みことは俺を睨んだ。
「貴様じゃなくてお兄ちゃん。もしくはタカシ」
「そんな話は今してな」
「……アンタたち、何やってんの?」
「うきゃッ!?」
 いつのまにかこちらを向いていたかなみに声をかけられ、みことは猿声を発した。
「いや、みことが結婚してくれとうるさくて」
「えええええ!? みっ、みこと、アンタ抜け駆けはなしって約束したじゃない!」
 なんの話だろう、と思ってたらみことが俺の鼻と口を塞いだ。
「あははは、いやなに、少々タカシの奴おかしくなったようだな。そのような話は一切ない」
「そ、そっか、そうよね、あはははは」
「はは、ははは……」
 抜けるような空の下、ゆっくりと俺の意識は沈殿していった。
 
「……やっぱ秘密を守るために亡き者に」
「だからすまぬと言っておるであろう!」
 目が覚めると保健室だった。気を失った俺を連れ目が覚めるまでそばにいてくれたのは嬉しいが、殺そうとしたのもまたみことなので感謝していいのか微妙なところだ。
「ほら、目が覚めたなら起きろ。まだホームルーム中だぞ」
「やれやれ、めんどくせぇなぁ」
 みことと共に教室へ向かう。そして教室に入るなり、皆の微妙な笑顔に迎えられた。
「みこと、タカシの妹になったんだって?」
 かなみのからかう気満々の声に、みことは俺を勢いよく睨みつけた。
「きっ、貴様! 言ったな!」
「言ってません! だから殺さないで!」
「あーなんだ、言ったのは私だ」
 みことの懐刀を必死に押さえていると、気の抜けた担任の声が耳に届いた。
「なんだ、言っちゃいけなかったのか? わりぃわりぃ」
 がはははは、と豪快に笑う担任を尻目に、みことは気が抜けたようにその場にぺたんと座り込んだ。
「わ、私の学校生活が……」
「ま、いいじゃん。これで大手をふるってお兄ちゃんと呼べるし。ほれ、呼べ」
「誰が呼ぶかッ! ええい不愉快だ、やはりここで亡き者に!」
 みことが懐刀を携えたので、全力で廊下に飛び出す。しかしまぁ、妹と遊んでやるのも兄の務め。
 俺は愛しい妹と一緒に廊下を駆けた。
「刃物ダメ! NO刃物!」
「大丈夫だ、刃はつぶしておる。……ただ、骨の一本や二本は覚悟してもらうがな!」
 怪しい笑みを浮かべるみことに、なんとも大変な妹が出来たとしみじみ思った。

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