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2024年04月20日
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【お目当ての物が品切れでがっかりなツンデレ】

2011年10月14日
 そろそろ秋も深まってきたのでコンビニの品揃えも相応になってきた頃だろう、といったことを友人と話していると、何やら目を輝かせたまつりが寄ってきたのでこっそり逃げようとしたら捕まった。
「なんでわらわが近寄ったら逃げるのじゃ! しつれーなのじゃ!」
 後ろから俺に抱きつき、ふがーふがーと鼻息も荒くまつりが叫ぶ。
「また厄介ごとに巻き込まれそうな気がしたので、やれやれ系の主人公としてこれ以上やれやれと言いたくないので、前もってトラブルを避けただけなんです」
「貴様などやれやれ系の主人公ではないわ! そも、貴様などが主人公になれるはずがなかろう? なれてせいぜいわらわの物語の脇役に決まっておろう! にゃーっはっはっはっは……こら! 逃げるな!」
 気持ちよさそうに笑ってるスキに逃げようとしたら、また見つかった。しかも、俺が知らず注目を集めてるスキに友人は姿を消してるし。くそぅ。
「はぁ……。んで、何用ですか猫姫さん」(なでなで)
「姫ではあるが、わらわは猫ではない! なでるな、たわけ!」
「なでやすい位置に頭があるのでなでてるだけだ、気にするな。ただ、猫姫なんだからちゃんと猫耳を用意しておくように。次回までの宿題です」
「だから、わらわは猫ではないと言っておろうがっ! 何度言えばわるかのじゃ!?」
「なでなでなで」
「にゃっ、にゃにゃにゃ……にゃふー」
「ほらみろ、猫だ」
「猫じゃないわいっ! 貴様に強めになでられると、なんかにゃふーって鳴いちゃうだけじゃっ!」
「馬鹿丸出しですね。いや、誤解されがちですが、褒め言葉ですよ?」
「褒めてる要素がないのじゃばかものうわーんっ!」
「ああごめんごめんなさい」
 何やらうにゃうにゃ泣いてしまったので、頭をなでて慰める。この姫さんは打たれ弱すぎる。
「ぐしゅ……うう、貴様は今日もいじわるなのじゃ。すぐにわらわをいじめるのじゃ」
「基本的に人とのコミュニケーションが苦手なんだ。許せよ乙女」
「うにゅ……わらわじゃから許してやるが、次泣かしたりしたら許さんのじゃよ?」
 小さな両手で俺の手を包み込み、小さく首を傾げるまつりさん。どこで覚えた、そんな殺人技。
「分かった、結婚しよう」
「そ、そんなこと言ってないのじゃっ!」
 顔をべちべちべちっと叩かれた。
「ああ、いやその、混乱してましたスイマセン」
「ま、まったく! 貴様には困ったものなのじゃ! ぷんぷん、なのじゃ!」
 顔を赤くしながら、まつりは腕を組んでそっぽを向いた。あまりの分かりやすい怒りのポーズに笑いがこみ上げる。
「な、何を笑っとるのじゃ! わらわは怒っとるのじゃぞ!?」
「や、悪い悪い。あんまりにもあんまりなので、こらえ切れなくて」
「う~……今日も貴様は嫌な感じなのじゃ。……あっ、そ、そうじゃ! わらわを怒らせた罰なのじゃ、わらわにあんまんをおごるのじゃ!」
「唐突だな。肥え太りたくなったのか?」
「……本当に嫌な感じなのじゃ」
 じろーっとした感じの目でにらまれた。確かに、デリカシーの欠けた発言だったか。
「冗談だが、悪かった。でも、お前はもうちょっと飯食った方がいいぞ。軽すぎる」
 まつりの両ワキに手を通し、持ち上げる。さほど力をいれずとも、簡単に持ち上がった。
「わ! お、下ろすのじゃ、ばかものっ!」
「まあ落ち着け、窓の外まで手を持っていたら離してやるから」
「それじゃわらわだけが引力に引かれてミンチよりも酷くなってしまうのじゃ! 普通に教室の床に下ろすのじゃ!」
「わがままだなあ。姫の本領発揮といったところか」
「姫関係ない欲求じゃ! 生存本能なのじゃ!」
 とまれ、俺も知り合いのミンチなんて見たくはない。その場にストンと下ろしてあげる。
「うむ。それでよいのじゃ」
「よかったよかった。じゃあ俺はこれで」
「うむっ♪ ……ではないっ! 普通に解放しそうになっちゃったのじゃ! なんという策士じゃ!」
「いや、策士ではなく、単にまつりが馬鹿なだけだよ」
「冷静に説明するないばかものうわーんっ!」
 また泣かせてしまい、おろおろする俺です。

「さて、コンビニまで来ましたよ、姫さん」
「うむ」
 なんとか泣き止ませた俺だったが、その後もスキあらば逃げようとするので手を握られてます。
「わらわを二回も泣かせた罰なのじゃ。おなかいっぱいあんまんを食べさせるのじゃ」
「え、一個じゃなくて?」
「わらわをいっぱい泣かせたのじゃから、それくらいの罰はとーぜんなのじゃ!」
「いや、おごるのは別に構わんのだが、あんま量食ったら晩飯入らないんじゃないのか? お前そんな健啖な方じゃねーだろ」
「う。……じゃ、じゃあ、二個だけにしとくのじゃ。それも、一個は今食べて、もう一個は食後に温めなおして食べるのじゃ。それなら平気じゃよ……ね?」
 コクンと小首を傾げ、俺に訊ねてくるまつり。だから。気軽にそれを使うない。
「そうだな、子供は二人くらいほしいな」
「何の話じゃっ!?」
「まあとにかく、入ろう」
「わ、わわっ! ひ、引っ張るでない!」
 自動ドアに念力を送ってドアをこじ開け、店内に入り、レジの前へ行く。
「……む? な、なんじゃとおおおおお!?」
 しかし、運命の神は俺たちに微笑まなかったようだ。
「あの。ひょっとして、あんまん売り切れですか?」
 店員さんは申し訳なさそうな顔をしながらうなずいた。
「ふむ。しょうがない、帰るか、まつり……まつり?」
 まるでこの世の終わりのような雰囲気をまとわせ、力なくうつむいているまつり。そんな食いたかったのか。
「んー……あの、すいません、これください」
「ぬ……?」
 店員さんに包んでもらい、レジで清算して店を出る。
「のう、のう。何を買ったのじゃ?」
 俺の手をくいくいと引いて、まつりが訊ねる。
「ん、ああ。これこれ」
「ぬ? ……これは? 肉まん、かの?」
「あんまんがなかったからな。何もナシってのも寂しいし。一個しかないけど、よかったら食え」
「……ふ、ふんっ! わらわはあんまんが食べたかったのじゃ! こんなの食べたくないのじゃ!」
「そっか。残念だ」
「……で、でも、どーしてもわらわに食べてほしいのなら、食べてやらなくもないのじゃよ?」
 チラチラと俺を見ながら、まつりが虚勢を張る。
「な、なんで笑うのじゃ!? 今日も貴様はしつれーなのじゃ!」
「いや、なんつーか……もう逆にそこがチャームポイントにしか見えねえ。しょうがない、結婚するか!」
「す、するわけないのじゃっ! どーして貴様はすぐにわらわに結婚を申し込むのじゃ!? と、とっても不愉快なのじゃ! ぷんぷんっ!」
 まつりは顔を赤くしたままそっぽを向いた。もっとちゃんと叱ってほしいものだ。
「いやはや。とにかく、お前のために買ったんだ。できれば食ってほしいのだけれど」
「……そ、そこまで言うなら食べてやるのじゃ。……と、特別なのじゃ!」
「そいつぁありがたい。んじゃ、ほい」
 まつりに包みを渡す。俺の手を離し、まつりはごそごそと中を探った。まだ湯気の立っている肉まんが姿を現す。
「んしょ、んしょ」
 と、突然それを二つに割り出した。何をしているのかと思ったら、その片割れを俺に差し出した。
「も、元々あんまんを食べたかったのじゃ。お腹がそれ用になっちゃってるから、一個丸まるなんて入らないのじゃ。じゃ、じゃから、半分やるのじゃ。……他意なんてないのじゃっ!」
 なんだか半分怒りながら、ぐいーっと俺に肉まんを押しつけるまつり。
「そか。じゃ、ありがたくもらおうか」
「そ、そうじゃ。ありがたがるがいいのじゃ」
 俺に肉まんを渡し、まつりは即座にその手で俺の手を握った。
「……な、なんじゃ。貴様が逃げてはいかんから握っただけじゃ! 他意などないっ!」
「何も言ってません」
「へーきな顔をするでないっ、たわけっ!」
「一体どうしろと言うのだ」
「ぐぅぅぅぅ……も、もーよいのじゃ! そこの公園で一緒に食うのじゃ!」
 まつりに引っ張られ、以前も来た気がする公園へ。そこのベンチにまつりと並んで座る。
「もぐもぐもぐ。……あ、おいしーのじゃ」
「ふむ。確かにうまいな」
「うむっ♪」
 よほど気に入ったのか、まつりは足をパタパタさせながら肉まんを平らげた。子供みたいで行儀が悪いが、見た目が子供なので問題ないとも言えよう。
「もぐもぐもぎゅ……ぷはーっ! ごちそーさまなのじゃ。思ったよりもおいしかったのじゃ!」
「気に入ったようで何よりだ」
「うむっ♪ ……でも、ちょびっと足んないのじゃ」
 明らかにまつりの視線が俺の食べかけの肉まんに注がれている。
「そ、そうか。でも、もうすぐ夕飯の時間だし、大丈夫だよな?」
「……わらわ、ちょこっとだけ足りないのじゃよ?」
 稚気をふんだんに織り交ぜ、まつりは甘えた声で囁いた。ごくり、とノドが鳴る。なんだその新技。
「一個全部は食べられないんじゃなかったのか」
 しかし、これ以上篭絡されるわけにはいかない。俺は目をつむって効いてないフリを試みた。
「あ、あの、あののの? ……な、なんでわらわを抱っこするのじゃ?」
「へ? ……おおおおおっ!?」
 心は平静だったが、身体はその制御を失い、宿主が願う行動を取っていた。まつりを膝に乗せ、抱きかかえている。どういうことだ、俺!
「い、いやあの、ち、違うんデスよ? こ、これはその、なんつーか」
「……に、にゃー」
「えええええ!?」
「お、おぬしは以前からわらわのことを猫じゃ猫じゃと言うからの。そ、その、猫のフリをすれば肉まんをもらえるかと思ったのじゃ。……そ、それだけじゃからの?」
「な、なるほど。それなら猫の鳴き真似をするのも仕方ないですね」
「そ、そうなのじゃ。仕方ないのじゃ。にゃーなのじゃ」
「うーむ。これはなでざるを得ない」
「にゃ。にゃにゃにゃ。ふにゃー。にゃ」
 リズムをつけてなでると、鳴き声にも変化が出て面白い。これはやみつきになる。
「もうっ! 人で遊んではいけないのじゃ!」
 ニコニコしながらまつりが俺のなでなでを制止する。
「や、なんかもう楽しくて楽しくて」
「全く……困ったものなのじゃ。こ、こんなところを誰かに見られたら、恋人だと思われてしまうではないか」
 怒ったような拗ねたような顔で、まつりが俺を見る。何かを期待している目だ。
「心の中ではお互い蛇蝎のごとく嫌ってるけどな」
 なんか心の中に選択肢が出たんだけど、間違ったのを選んだ気がする。
「違わいっ! ……あ、いや、違くないけど、違うのじゃ! え、えと……そ、そこまで嫌っておらんってことなのじゃ……よ?」
「じゃあ俺が一方的にまつりを死ぬほど嫌ってるんだよ」(なでなで)
「ものすっごく優しい目&手つきのなでなでなのに、言ってる台詞が酷すぎなのじゃ!」
「わはははは。まつりは愉快だなあ」
「うぅー……貴様は冗談ばっかで、どれが本音なのか分からないのじゃ」
「うーん。行動からある程度察してください」
 そう言いながら、まつりの黒髪を手で梳く。シルクのようなさらさらとした髪は、何の抵抗もなく俺の手の平を滑っていった。
「……あ、あぅ」
「赤くなるな。逆にこっちが恥ずかしい」
「っ! わ、わらわは! 貴様なんか嫌いじゃ! 嫌いじゃからな!」
「悲しい話だ」
「……で、でも、その肉まんをくれたら、ちょっとだけ好きになってやってもいいのじゃよ?」
「ふむ。それは心惹かれる提案だもぐもぐごっくん」
「あーっ!? もぐもぐごっくんって全部食べちゃったのじゃ! わらわの肉まん!」
「あ。……でも、まあ、いいか!」(ぺたぺた)
「ぬーっ!? 晴れやかな笑顔でわらわの顔に手をなすりつけるでないっ、たわけ!」
「ベタベタするんだ」
「だからと言ってどうしてわらわの顔で拭くのじゃ! こんな素敵な雰囲気でそんなのするって、貴様頭がおかしいのじゃ!」
「舐めてベタベタを取ってください」
「絶対嫌なのじゃ! ていうか明らかにベタベタ取るのと別の目的なのじゃろ!?」
「ななな何の話だか! 決して指フェラさせようとなんて!」
「今日も貴様は隙あらばえっちなのじゃーっ!」
 ごばーっと怒られたが、なだめすかして舐めさせはしました。はい、変態です!(ちょお晴れやかな笑顔で)
「ちゅ、ちゅう……うー、今回だけじゃよ?」
 俺の指を口内に入れながら、少しだけ困ったような顔でまつりがつぶやく。喋るたびにまつりのちっちゃな舌が指にあたり、腰骨がゾクゾクと。
「ウヒヒィ」
「ひぃーっ!? 気持ち悪いのじゃ、気持ち悪いのじゃ!」
「し、失礼な! あまりの気持ちよさに声が漏れただけですよ!?」
「それが気持ち悪いと言っとるのじゃ!」
「なんだとコンチクショウ!? 分かった、それなら明日も一緒に買い食いしよう!」
「こやつ今日もまるで話を聞いておらん!?」
「あ、別にこうやって指を舐めてもらうだけでも俺は一向にかまいません」
「わらわが一向にかまうのじゃ! 絶対に嫌なのじゃ!」
「なんと。それよりまつり、もうちょっと舐めてください」
「どんだけ変態なのじゃ貴様!? ……あ、あとちょっとしか舐めないからの?」
 俺の手を両手で持ち、ぺろぺろと舐めるまつり。上目遣いで俺を見ながら、ねっとりと舌を俺の指にからめる。
「フヒヒィ!」
 そりゃ再度声が漏れますよ。
「ぴぃーっ!? 何度聞いても気持ち悪いのじゃーっ!」
 人気のない公園にまつりの声が響くのだった。

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【眠くなると甘えて来るツンデレ】

2010年11月12日
 まつりが遊びに来たので遊んでやったら夜になりました。
「さてお嬢さん、ボチボチ夜も更けてきたのでそろそろ帰っては如何かな?」
「う……うな……」
 いかん。そろそろどころか、こっくり船を漕いでいる。一刻も早く帰らさなければ……!
「ま、まつり。なんなら俺が家まで送っていくし、それが嫌なら親御さんかメイドさんに連絡して迎えに来てもらっても」
「うるさいのじゃー……なんだかわらわはとっても眠いのじゃー……ふわあああ……」
 いかん。船が小船から豪華客船に進化を遂げている。このままでは……!
「むぬー……ん、のー。のーのー」
 まつりは薄っすら目を開けると、身体を斜めに傾けつつ、手をくいくいして俺を呼んだ。嫌な予感を感じつつ、もそもそとまつりの元へ向かう。
「んー……かくほ!」
 確保された。具体的に言うのであれば、突然抱きしめられた。
「確保らないで」
「んー……との、わらわは眠いのじゃ」
「はぁ、それは見れば一目瞭然家内安全七転八倒ですね」
「むぬ……? うん、まあそんな感じなのじゃ」
 何がだ。
「での。眠いと枕が必要なのじゃ。なぜなら寝るから!」
「はぁ。じゃ、貸してやるよ」
「だーめなーのじゃー! 抱き枕が必須なのじゃ!」
 まつりはイヤイヤしながら枕を取ろうと立ち上がりかけた俺を揺さぶった。揺さぶられておえええって感じになり、ふらふらになりながら再びぺたりと座り込む。
「そんなわけでの? 特別にお主を抱き枕の大役に命じてやるのじゃ。感謝するのじゃぞ?」
「いいえ、結構です」
「感謝のあまりむせび泣いてもよいのじゃぞ?」
「いいえ、結構です」
「そゆわけでの、わらわは寝るのじゃ。おやすみなのじゃ♪」
「全部断ったのに何一つとして気にせず眠るだと!? この娘、やる……!」
「すぴゃすぴゃ、なのじゃ♪」
「起きてませんか?」
「起きてないのじゃー。わらわは寝てるのじゃ。起こしてはいかんのじゃよ?」
「返事してませんか」
「してないのじゃ。ふわあああ……ぬー。んじゃ、本当に寝るのじゃ。お休みなのじゃ、ぬし殿♪」
「いや、ちょっと待って。勝手に寝ないで。お休まないで」
「ふにゅふにゅ……」
 結局最後まで俺の話なんてちっとも聞かずに、まつりは幸せそうにふにゅふにゅ言いながら眠りに就いた。
「はぁ……なんちうか、なんちうか」
 色々思いながらも、携帯でまつりのメイドさんを呼ぶ。
 数分後、俺に向かってしきりにお辞儀をするメイドさんに連れられ、まつりは車で帰っていった。何もしてないのに超疲れた。

 んで、翌日。
「わらわのせいじゃないぞ!?」
「うわあっ」
 登校するなり朝からまつりが超やかましい。
「あーびっくりした。いきなり何の話だ」
「き、昨日の話じゃ、たわけ!」
「あー。物凄い迷惑を受けたが、同時にふにゅふにゅ言ってる可愛い生物を愛でられて大変満足しております」
 まつりが真っ赤になった。
「ひ、人を生物とか言うなッ! ……あ、あと、可愛いとか言うでない、おろかもの」
 何その後半の可愛らしい抗議。
「と、とにかくの。昨日の出来事は全て忘れるのじゃ。なかったことにするのじゃ」
「ええっ!? まつりが眠くて船漕いでたのも、『かくほ!』とか可愛らしく俺に抱きついてきたのも、もふもふしてきたのも全部忘れろと? そんなのってないよ!」
「全部言わんでいいわい、たわけっ!」
 まつりが顔中赤くしながら半泣きで怒った。
「ううう……とにかく、忘れるのじゃ! 命令なのじゃ! わらわの言うことを聞くのじゃ!」
「うーん……じゃあ、今日また遊びに来るなら忘れる」
「ぬ……わ、分かったのじゃ。しかし、しかしじゃ! わらわは学習するのじゃ! 愚かで愚劣で常にわらわに劣情を催しておる貴様のことじゃ、昨日のことのようなことを期待しておるようじゃろうが、二度と先のようなことは起こらぬと思え!」

 そのまた翌日。
「わらわのせいじゃないぞ!?」
 なんか昨日見た光景がリピートされてる気がします。

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【復讐鬼になったタカシ】

2010年03月19日
「許せねえ……この恨み、億倍にして返してやる!」
「ふ、面白い。やってみるがいいのじゃ!」
 楽しみに楽しみにしていたプリンをまつりに食べられ、冒頭から怒り心頭な俺です。
「今から俺は復讐鬼! ひどいことしてもまるで良心の呵責に苛まれない復讐鬼! まずはまつりのパンツを奪い、はいてない状態に!」
「ふん、すでにはいておらんのじゃ。貴様の企みなぞ、まるっとお見通しじゃ!」
「パンツはいてないことをここまで堂々と言う人は知りません」
「うるさいのじゃ!」
 はいてない人が怒った。
「じゃあ作戦変更、剃ってやる!」
「甘いのう。まだ生えておらんわ!」
「パンツはいてないはまだ生えてないは……散々だな」
「うるさいのじゃ!」
 生えてない人が怒った。
「しかし、二手三手先を読むわらわのこの技術……惚れ惚れするじゃろう?」
「普通、先を読んでもパンツを脱ぐという選択肢はないと思う。あと、生えてないのは身体的にロリぃからかと」
「うるさいのじゃ!」
 ロリぃ人が怒った。
「うぬう……ばかにしおって! 許さんのじゃ、今からわらわは復讐鬼なのじゃ! 復讐するのじゃ、復讐するのじゃ!」
「待て、復讐するは俺にあり! 勝手に復讐鬼を名乗るな! あとプリン返せ」
「うるさい、わらわの勝手じゃ! ふふ……わらわの智謀でタカシをぎゃふんと言わせるのじゃ! 謝るなら今のう」
「ごめん」
 まつりが凍った。
「謝ったからプリン返せ」
「まだなのじゃ! まだ何も復讐してないのに、謝られたら困るのじゃ! 謝るの返すのじゃ、ごめんなさい。ぺこり」
「仕方ない、許してやろう」
 ぺこりと言いながらぺこりと頭を下げられたので、許さざるを得ない。
「ち、違うのじゃ! これは返しただけで、謝ったわけではないのじゃ! ごめんではないのじゃ!」
「じゃーじゃーうるさい! なんでもいいから、プリンを返せ!」
「じゃ、じゃーじゃーうるさいとは何事じゃ! これは高貴なわらわのみ使える言葉じゃぞ! そうじゃ、わらわは高貴なる存在なのじゃ。プリンのひとつやふたつ、献上して当然と思わんかえ?」
 聞いた話によると、まつりはどっかの国のお姫様らしい。俺の予想では、戦国時代のお姫さんがタイムスリップしてきたとかそんな。
「思わん! たとえまつりが城で『爺、暇だ。罪人の首をはねよ』とか言うくらい偉くて残虐非道な人だとしても、それはそれ! プリンを返せ!」
「そんなこと言わんのじゃ! わらわをなんだと思おておる!」
「姫」
「なんじゃ、分かっておるではないか。そう、わらわは高貴なる姫! 本来、貴様のような下賎な輩がおいそれと口をきけるような者では」
「いかん、プリン分が足りなくなってきた。このままではプリン分を補うため俺の体内で化学反応が起こり、臓器が全部プリンに置き換わる」
「どうして貴様はわらわの話を途中で……な、なんじゃと!」
 まさか信じるとは思わなかったが、面白いので騙そう。
「言ってなかったが、俺は奇病、内臓プリンに侵されている。この病気にかかると、一定時間プリンを摂取しなかったら臓器が全てプリンに変わってしまうんだ」
「な、なんと、タカシがそんな大病に侵されていようとは……」
 簡単に騙される辺り、姫さんのような気がしないでもない。
「よし、今からコンビニ行ってプリンを買ってくる! それまでプリンになるんじゃないぞ、タカシ!」
「悪い……もう遅いようだ」
 ぱったり倒れ、体中の内臓がプリンになったフリをする。難しすぎる。
「た、タカシ!? まだじゃ、まだプリンになってはならん!」
「す、すまない……俺、おまえと会えて、嬉し……か……」
「こ、こうなってはわらわの口内に残るプリンのカスで補うしか……」
 いかん、話がおかしな方向に。
「な、なんか奇跡が起きて治ったような」
「気など使わずともよい! こ、これは接吻ではない、ただの人命救助じゃ。……そ、それに、おぬしとなら、わらわは、その、別に……」
 いかん、このままでは俺の唇が大変ピンチ! いやそれが嫌とかそういう話でなくてええとええと!
「そうだ、これは体液の交換でうつるという設定……いや、そういう病気なのだ! だからキスすると」
「……設定?」
 いかん、俺がピンチ。

 結局、芋づる式に嘘が全部ばれた。
「よくもわらわを騙したな! なにが内臓プリンじゃ、莫迦者!」
「すいません」
 すごい怒られたが、接吻を回避できたしまぁOK。……こういうことは、騙してとか嫌だし。

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【アンパンを投げてくるツンデレ】

2010年03月12日
 まつりがアンパンを食べたことがないと言うので、ふぅんと答えたら、買って来いと言うので、断ったら、癇癪を起こしてうるさかったので、買ってきた。
「ふむ、これがあんぱんか。さがってよいぞえ」
「感謝の言葉がまったくないことに言及するのはまた後に回すとして、金よこせ。100円」
「恐喝は犯罪じゃぞ?」
「普通に金を徴収してるだけだ!」
 ぶちぶち文句を言われたが、どうにか100円玉を手に入れた。
「さて、味はどんなものかのう」
 ビニールを破り、まつりは大きく口を開けてアンパンにかぶりついた。そして次の瞬間、噛み砕いたパンの欠片を勢いよく俺にぶちまけた。
「ああっ、まつりの唾液が付着した小麦粉の粒が俺に! 嬉しいような嬉しくないようなこの微妙な気持ち、分かります?」
「なんじゃ、この味は! わらわにこのようなものを食べさせ、腹を壊させようとは……なんと奸計に長けた奴よ」
 買って来いと言われたので、買ってきただけです。
「しかし、貴様の企みもここまでじゃ。ほれ、残りは貴様が食え」
 ぽいとアンパンを投げたので、死後かなりの確率でもったいないお化けになる俺としては受け取らざるを得なかった。
「おいおい、食べ物を粗末に扱うな。食べ物を粗末に扱うと、巡り巡って自分が粗末に扱われるぞ」
「ふん。わらわが粗末に扱われるなぞ、ありえんわい。いいから他の菓子を用意せよ」
 ええい、無駄に偉そうな奴め。よし、こうなったら俺がまつりを粗末に扱ってやる。粗末に扱われ、身も心もぼろぼろになり、そして最後には誰にも知られず、こっそり息絶え……そんな、そんな!
「にゃーっ!?」
「あんまりだ! いくら傲慢な奴とはいえ、そんなのってない!」
 自分の想像したまつりの最後に思わず感極まり、まつりを抱きしめ号泣する。
「きっ、ききき、貴様貴様きさまーっ! 高貴なるわらわに、だだ、抱きつくなど、無礼にもほどが」
「ううう……俺は最後までまつりのこと、見捨てないからな?」
「にゃ……だ、抱きつくなと、言ってるじゃろうが……」
 抱きしめながら頭をなでると、まつりの抵抗が小さくなった。
「しかしよく考えると想像の中で非業の最期を遂げただけで、現実のまつりは相も変わらず無駄に傲慢なまま顔を赤らめているなあ」
「む、無駄とはなんじゃ、無駄とは! だいたい、なぜ貴様なんぞに抱きつかれただけで顔を赤らめねばならん! 貴様の目が腐っておるのでそう見えるだけで、わらわの顔は赤くなってない!」
 りんごのようにほっぺを赤くしながら言われても、無理があるような。
「ええい、なんでもいいから離せ!」
「なでなで」
「にゃ……な、なでるでない。わらわは子供ではないので、そんなことされても、嬉しくなぞ……」
「なでなでなで」
「……そ、そのじゃな、その……にゃう」
 まつりは困ったような一声鳴いた。
「ははーん……さてはお前、猫だな?」
「誰が猫かーっ!」
 すごく怒られたので、慌ててなでる。
「なでなでなで」
「にゃう……ぬぬ、な、なでるな! 変な声が出るじゃろうが!」
「……ああ、猫でなくて、化け猫か! 偉そうなのもこれで納得!」
「化け猫じゃないわいっ!」
「馬鹿な! それじゃ、将来は化け猫を娶って幸せに暮らす俺の将来設計はどうなる!」
「貴様の将来設計なぞ知らんし、第一化け猫なぞ存在せん! このど阿呆が!」
「化け猫いないの!? じゃ、じゃあ俺は誰と結婚すればいいんだ!?」
「知るか阿呆!」
「……むぅ、仕方ない。なでるとにゃあと鳴く娘と結婚しよう」
「ふん、勝手に……いや待て。もしかすると、わらわのことかえ?」
「そうかえ」
「なっ、なんで貴様なんぞと結婚せねばならんのじゃ! わらわは嫌じゃぞ!」
 まつりは顔を真っ赤にしながら、俺との婚姻を拒んだ。よし、ここはいかに俺がすぐれた男であるかアッピールしてみよう!
「かつおぶし毎日あげるぞ? 猫まっしぐら!」
「だから、わらわは猫じゃないっ!」
「ははっ、またまた。ご冗談を」
「誰かこのど阿呆をどうにかせよっ! ああっ、だからなでるにゃーっ!」
 怒鳴る猫をなでる一日でした。

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【ツンデレが怪我をしたら】

2010年03月07日
 まつりと一緒にぽてぽて帰ってる最中、タイヤキ屋の前を通りかかった。
「これタカシ、わらわは小腹が空いた。そこのタイヤキを所望するのじゃ、献上せい」
 わがままな姫さんがわがままを言う。普通に買ってやるのもなんだし、何より偉そうなのが気に食わない。……よし、ちょっとイタズラしよう。
「タイヤキは盗み食いするのが市井のルールだ」
「なんと! 下々は物騒じゃのう……仕方ない、やってみるのじゃ」
 すんなり信じられた。まさか信じるとは思わなかったが、よく考えるとまつりは一般常識が通用しないお姫様な世界に住んでるので、信じるよね。
 なんて思ってる間に、まつりはタイヤキ屋の前に移動してた。慌てて後を追う。
「これ、そこな店主。タイヤキを4つ献上せい」
「4つね。……はい、520円ね」
「うむ、ご苦労」
 まつりが袋を受け取り、金を払わずに背を向けた。それを見て、俺は大きく息を吸い込んだ。
「うわあああ! まつりがタイヤキ盗んだあああ!」
「な、なんじゃとお!?」
 俺の叫びを聞きつけ、街のみんながわらわらとまつりを囲みました。

「まったく! 貴様は! 余計なことばかり! するのう!」
 姫ぱぅわー+俺の謝罪により騒ぎを鎮火させ、その後ちゃんと金を払ってタイヤキを手に入れた。公園に着いたのでここで食うのかと思ったが、まつりは俺の頬を引っ張るのに夢中なようで。
「盗み食いを食い止めた正義の人のほっぺを引っ張るのは、悪ですよ?」
「正義の人は嘘などつかんのじゃっ!」
 それもそうだ。それはともかくいい加減頬が痛いので、適当に謝って頬を引っ張るのをやめてもらう。
「まったく……それにしても、街中でタックル喰らうとは思いもせなんだわい」
 まつりを取り押さえる際、タックルしてた人がいたので、そのことを言ってるのだろう。
「貴重な体験できてよかったね」
「ちっともよくわいわいっ! ほれ見ろ、わらわの玉のような肌に傷が出来てしもうたのじゃ!」
 まつりは髪をかきあげ、おでこをさらした。確かに、ちょっと血が染みていた。
「ありゃ、痛そうだな」
「痛いわいっ! どうにかせい!」
「そうだな……2つあるけど、どっちがいい?」
「……一応、両方言ってみい」
「一つはそれどころじゃなくなる方法、もう一つは痛みすら感じなくなる方法」
「もっと普通の手段を取れっ!」
 ちょっと泣きそうになってるので、普通にすることにする。
「じゃ、そこのベンチで待ってろ。あ、タイヤキ先に食っててもいいぞ」
「あっ、タカシ!」
 まつりを待たせ、水道を探しに行く。ほどなくして見つけた水道でハンカチを濡らし、ベンチに戻る。
「お待たへー。……ん、まだ食ってなかったのか?」
 まつりは膝にタイヤキの袋を乗せたまま、ぼーっとしていた。
「……ふ、ふん。そんなもの、わらわの勝手じゃろう」
「ま、そだけど。んじゃ、ちっとしみるかもしんねーけど、我慢しろ。もしくは、苦痛を快楽に変えろ。……いかん、それではまつりがMに! どうしよう!?」
「うるさい」
 怒られたので、それ以上は何も言わずハンカチをまつりのおでこに軽く当てる。
「にゃっ!」
「猫だ」
「猫じゃないわい! 冷たさにびっくりして、声が出ただけじゃ!」
 怪しいものだと思いながら、再びちょんちょんとハンカチをおでこに当てる。
「にゃっ、にゃう……」
「やっぱ猫だ」
「だから、猫じゃないわい!」
 まったく信じずに、再びちょんちょんと。
「にゅ……の、のう? どうじゃ?」
「血が止まらない。このままじゃヤバイかも」
「にゃんじゃとーっ!?」
「という夢を見そうな今日この頃」
 ほっぺを引っ張られて痛い痛い。
「おぬしはいじわるじゃ。もっと優しくせい」
「へーへー」
 まつりのおでこをハンカチで少し優しく触る。
「にゃう! ……の、のう、もっと優しく触ってたもれ。まだ痛くて敵わんのじゃ」
「む、エロいぞまつり。略して悶絶わななきまつり」
「略すどころか変な言葉がついてるぞよ!?」
「なんか、エロい祭りみたいで素敵だよね」
「どこが素敵なのじゃ! ちっとも素敵じゃないのじゃ!」
「なんだと!? 貴様、エロ祭りを馬鹿にするか! 謝れ、エロ祭りを心待ちにしてる皆さんに謝れ!」
「な、なんでわらわがそんなものに謝らねばならんのじゃ! 謝らん、わらわは謝らんぞ!」
「…………」(まつりのおでこをハンカチでぐりぐりぐり)
「痛い痛い痛いのじゃ! 謝る、謝るから許してたもれ! わらわ、エロ祭りだーい好き♪」
「へ……変態だーっ!」
「おぬしが言わせたんじゃろうがっ! おのれ……一生恨んでやるのじゃ」
「とりあえずまつりをいじめられたので、満足した俺は再びまつりの傷を治すことにした」
「誰に言ってるのじゃ……にゃっ、いたっ、……うう、もっと優しくしてほしいのじゃ」
 汚れや血を落とし、キレイになったところで絆創膏をぺしーんと張る。
「にゃっ! もっと優しく張るのじゃ!」
「へーへー。ともかく、これでよし。ブッチャーに憧れてるのは知ってるけど、これからはヘッドバット自重するんだぞ?」
「タックルされて転んでできた傷じゃと言っとるじゃろうがっ! あんな悪役レスラーに憧れてなどおらんっ!」
「んなっ……き、貴様、ブッチャーを馬鹿にするか!? 謝れ、ブッチャーに謝れ!」
「あ、謝らん、今度こそ謝らんのじゃ! わらわは暴力に屈服せんのじゃ!」
「…………」(絆創膏の上から指でぐりぐりぐり)
「にゃううっ、痛い痛い痛いのじゃ! 謝る、謝るから許してたもれ! わらわ、ブッチャーだーい好き♪」
 簡単に屈服した。
「ううう……おでこ痛い……」
 まつりは半泣きでおでこを押さえた。このお姫様、弱い。
「だからあれほどヘッドバットするなと言ったのに……」
「しておらんっ! おぬしがわらわのおでこをぐりぐりしたからじゃっ! よくもわらわを傷物にしおって……責任を取れ、責任をっ!」
「ええっ、こんな猫を嫁にするの!? 猫人間との生活に戦々恐々な秋の夕暮れ!」
「誰が猫かーっ! そも、貴様なぞのところに嫁ぐわけなかろうっ!」
「俺に嫁げと言うのか? まったく、姫さんは平気な顔して無茶を言う」
「んなこと言ってないのじゃーッ! ……ぜはーぜはー……」
 いっぱい『!』を使ったので、呼吸が乱れた模様。
「まぁ責任の話は後にまわしてうやむやにするとして、とりあえずタイヤキ食おう」
「うやむやにするとはどういう了見……むぐっ」
 話を打ち切るように、まつりの口にタイヤキを詰める。
「……ぷはっ。いきなり何するのじゃ!」
「早く食わないと冷めちゃうぞ? 冷めると美味しくなくなる予感」
「ぬ……おぬしなんぞに言われんでも、分かっておるわ!」
 そう言って、まつりはタイヤキを口にした。それを横からぼーっと眺める。
「……な、なんじゃ?」
「ん、別に。美味そうに食うなーって思って」
「ぬ……じ、じろじろ見るでない、馬鹿者」
 まつりはちょっと恥ずかしそうに頬を染め、タイヤキにかじりついた。それを再びぼーっと眺める。
「……だ、だから、見るでない。食いにくいではないか」
「なんか、お前が食ってるの見てたら小腹が空いた」
「……欲しいのかえ?」
「いや、そういうわけじゃ。お前が食ってる横で恨めしそうにじーっと見てるだけだから、気にするな」
「気になるに決まってるじゃろうがっ!」
「ちなみに、心の中はお前への恨み言でいっぱいです」
「知りたくもない情報じゃっ! ああもう分かったのじゃ、特別にあげるのじゃ! じゃから、恨み言なんて思わないで欲しいのじゃ!」
 ふるふる震えながら、まつりは半泣きで俺に食いかけのタイヤキを渡した。
「サンキュ。よもや食いかけの方をくれるとは思いもしなかったぞ」
「? ……あーっ! だ、ダメなのじゃ、それでは、か……間接きっすになるのじゃ! 嫌じゃ、嫌なのじゃ! こっちの新品と交換するのじゃ!」
「別にいいけど、交換の手間賃として直接俺にキスしてください」
「それじゃ悪化してるのじゃ! ううう……なんで貴様なんぞと間接キスをせねばならんのじゃ……」
「むちゅー」
「とか言ってる間にわらわの食いかけの所にちゅーを!? う、うう……最悪なのじゃ」
「まつり、顔赤いぞ」
「ぬな!? こ、これは、そ、その……突発性の風邪じゃっ!」
「…………」
「な、なんじゃ? 疑っておるのかえ? わ、わらわは高貴なる身分じゃから、突発的に風邪をひくのじゃ!」
「…………」
「ほ、ホントじゃぞ? 嘘じゃないぞ?」
「……嘘だったら絶交」(ぼそり)
「嘘! うーそなーのじゃー! タカシを騙すために嘘をついたのじゃー! はっはー、騙されおって、馬鹿な奴なのじゃー!」
「……はぁ。なんつーか、面白いっつーか、馬鹿っつーか」
「な、なんじゃ……わらわは馬鹿じゃないわい!」
「……あーもー可愛いなあ! もう!」
 なんかもう愛情が漏れちゃったので、まつりの頭をなでなでする。
「ふにゃっ!? き、貴様、わらわの頭をなでなでするとは、万死に値するぞ!」
「なでなでなで」
「ば、万死に値する……」
「なでなで、なでなで」
「……そ、その、……にゃう」

 10分ほどなでてたら、大人しくなった。
「あー……大丈夫か?」
「……にゃふー」(満足げ)
「……大丈夫そうだな。冷めちゃったと思うけど、タイヤキ食うか?」
「……にゅふー」(満足げ)
 なんか変な生き物に進化してる。
「ほら、食べろ」
「……にょふー」(満足げ)
 まつりの口元にタイヤキを持っていくが、にゃふにょふ言うばかりでちっとも口にしない。
 しょうがないので一人で全部食べたら、後で大変叱られた。
「全部食ったじゃと!? ぐぬう……許せんのじゃ! 一生恨むのじゃ、タカシ!」
「困ったねもぐもぐ」
「口ではそう言いながらちっとも思ってないのが丸分かりじゃ! なぜなら、困ったと言ってるその口でタイヤキを食ってるからであり、つまりそれはわらわのタイヤキなので返せばかーっ!」
 ぐるぐるぱんちをしてくるまつりの頭を押さえながら食いきりました。
「にゃうう……わらわのタイヤキ……」
「そうしょげるな。そのうちいいことあるさ」
「おぬしのせいでしょげておるのじゃ、ばかーっ!」
 慰めたのに怒られた。

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