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2024年04月20日
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【ツンデレに最近太ったんじゃないの?って言われたら】

2011年07月20日
 本屋をうろうろしてたら、ちなみがいたので頭をなでてみた。
「……これはびっくり。豚が私の頭をなでている」
 豚。てっきり人間だと思っていたのだけど、俺は豚だったのか。これは新事実だ。
「初めまして、人間改め豚です。……ところで、俺の豚語は通じているのでしょうか?」
「……普通の人間には通じないが、私は天才なのでだいじょぶ」
「それは幸い。ところで、俺の将来はどうなるのでしょうか? やはり出荷?」
「……どなどなどーなーどーなー」
 なんということだ。未来が何も見えない。
「……ていうか、太ったよね、タカシ」
「むぅ」
 豚ごっこは終わりのようで、ちなみは俺の腹を指でぷにぷにと押した。
「そんな一見して分かるほど太ってるか?」
「……一見しては分からないけど、タカシ研究家の私には分かる。……2kgは太ってるに違いない」
「人を勝手に研究するない」
 ちなみのほっぺをむいむい引っ張って抗議するが、まるで堪えた様子がない。
「……それで、実際はどのくらい太ったの?」
「知らん。体重計に乗る習慣がないもので」
「……全世界の女子に謝れ」
「ごめんなさい」
 とりあえず代表してちなみに謝ってみる。
「……あと、ジュースもおごれ」
「なんでやねん」
 ぺしんとちなみのおでこに軽くつっこむ。とはいえ、俺もノドは乾いている。……よし。
 おでこを押さえて不満げにしてるちなみに来い来いと手招きすると、何の疑いもない顔でふらふら寄ってきたので一緒に本屋を出る。そしてそのまま近くの喫茶店へ移動。
「……なんでやねんからのおごり。……やはりタカシは侮れない」
「俺もノド乾いたからね」
「……なるほど、こうしてブクブクと肥え太るのか」
「非常に不愉快です」
「……不愉快の人、パフェも頼んでいい?」
「ダメです」
「……タカシの好きな気持ち悪い萌え動作をしてやるから」
「そんな前置きをされて、どうして俺が喜ぶと思うのだ」
「……お兄ちゃん、大好き」
「よぅし、全メニューおごってやろう!」(なでなで)
「……やはりタカシは今日もダメだ。というか、ダメじゃない日がない」
 反論する材料が全くない。
「……まあ、全部おごられても食べきれないので、パフェだけにする」
 というわけで、俺はアイスコーヒー、ちなみはチョコパフェを注文する。待ってる間何するかなと思ってると、ちなみが俺のすぐ隣に移動してきた。
「どしました」
「……実測」
「お?」
 横合いからもふっと抱きつかれた。
「……ふぅむ。やはりいつもより肉付きがあるように思える」
「こ、これはさしもの俺も勘違いをしそうだ!」
「……かんちがいしないでよね贅肉の量を測っただけなんだからね?」
 テンプレ通りなのにちっとも萌えない。チクショウ。
「……悲しそう。やーいばーかばーか」
「悲しさのあまり亜脱臼しそうだ」
「……亜人間だから?」
「普通の人間です! 亜じゃねえ!」
 コイツは俺のボケにさらにボケを被せてくるから油断ならない。
「……タカシはゴブリンの間なら人気ありそう」
「亜から脱却したいです」
「……来世に期待?」
「そこまでのインターバルが長すぎるゼ……!」
 などとちなみにいじめられていると、注文の品が運ばれてきた。俺の前にアイスコーヒー、そしてちなみの前に、
「おおおおお……」
 パフェがででんと置かれる。あまりのオーラにちなみも思わず声が出ている。それにしても……美味そう感が半端ではない!
「な、なあちなみ。俺にも一口」
「絶対にあげない」
「…………」
「はぐはぐ。……おお、おおおおお」
 美味さに打ち震えている。一方こちらは悔しさに打ち震えています。
「タカシ、タカシ」
「な、なんだ? くれるのか?」
「……はぐっ。……ああ、おいしい」
 これみよがしに食べてるところを見せ付けられるだけでした。
「あの、ちなみさん。覚えてないかもしれないけれど、これ、俺のおごりなんだよ? なのに、俺には一口も食べさせてくれないの?」
「むぐむぐ。……あー」
 口を開けてアイスを見せるだけとか……!
「もむもむ。タカシのおごりのパフェはとてもおいしい」
「……ずずず」
 悔しさを紛らわすため、アイスコーヒーを飲む。うまい。……うまいけど! うまいけどさ!
「……食べたい?」
「いいのかっ!?」
「聞いただけ」
「…………」
「タカシの悔しそうな顔を肴に食べるパフェは格別だ。もぐもぐ」
 仮に怨念が質量を持ったら、俺は即それに潰され死ぬことだろう。
「……どしても食べたい?」
「今度こそ本当かっ!?」
「……しょがない。じゃあ」
「やったあ! さっすがちなみ、世界が誇る貧乳とはまさにこのことだ」
「…………。タカシの口にパフェが入ることはないと思え」
「しまった! なんたるチア! 俺って奴はいつもこうだ! 貧乳が褒め言葉ではないと何故学習しない!」
「……今日もタカシは通常運行だ」
「はぁ……しょうがない。潔く諦めよう」
 しょんぼりしたままアイスコーヒーを飲んでると、つんつんと服を引っ張られた。
「ん、なんだ?」
「……名案が浮かんだ」
「たぶんきっと絶対に名案じゃない」
 俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなみは話を続けた。
「……まず、タカシが私を抱っこする。次に、私がパフェを食べる。その際、パフェが冷たいので私の体温が若干下がる。タカシは私を抱っこしているので、それを感じることができる」
「はぁ」
「……結果として、タカシもパフェを食べたのと同じ現象を味わうことができる」
「えええええ!? なんて無茶な理論だ! だがちなみを抱っこすることに異論はないので是非やろう」
「……明らかに別目的で私を抱っこしようとしている。これだからえろやろうは」
「なななんのことか俺にはさっぱり! ていうか言い出したのお前だろ」
「……なんのことか私にはさっぱり。……いーから早く抱っこしろ」
「なんていい台詞なんだ。録音したいのでもう一度お願いします」
「……一回百万円」
 そんなお金はないので、諦めてちなみを後ろから抱きしめる。
「ん、お前痩せたか?」
「……ちょこっと。暑いから。……でも、よく分かったね」
「お前が俺に抱きついて太ったかどうか分かるように、俺もお前を抱っこすりゃ分かるんだ」
「……頻繁に抱かれている」
「……いや、そうなんだけど。もうちょっと別の言い方だと人聞きも悪くないのでありがたいのですが」
「……頻繁に中に出され」
「明らかに別の方ですよね、それっ!?」
「……ふふん?」
「はぁ……いーから早くパフェを食え」
「……これだから早漏は」
「せっかち! せっかちって話ですよね!?」
「……やれやれ、そういう話になるとすぐあわあわする。……これだから童貞は」
 悔しいのでちなみのつむじをむぎゅーっと押してやる。
「……やめろ。背が縮みそうだ」
「中学生や小学生どころか、幼稚園児に間違われてしまえ!」
「……幼稚園児に性的いたづらをする性犯罪者として捕まってしまえ」
「ままならないなあ」
「……まったくだ。……もぐもぐ」
 そのような感じで、ぱくぱくとパフェを食べるちなみを後ろから抱っこしてました。

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