忍者ブログ

[PR]

2024年05月18日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【ツンデレがストーカー被害に遭ったら】

2011年09月14日
 授業も終わったのでさあ帰ろうと思ったら、先に帰ったはずのかなみが教室に戻ってきた。はて一体どうしたのだろうと様子をうかがっていると、まっすぐこちらにやって来た。
「ちょっと来なさい」
「今日は怒られることしてませんよ? それとも存在しているだけで怒られるレベルにまで達したの? 怪獣レベルですね!」
「いーから早く来い!」
 怒られたので素直について行く。しかし、今日は本当に大人しくしていたので怒られる理由が浮かばない。……まさか、なんかとなくむしゃくしゃしたから難癖つけて俺を殴るつもりか? なんて酷い奴だ!
 ぷんぷんしながら付いていくと、空き教室に連れてこられた。え、誰も見てないところで殴りまくるの? 死ぬよ? ……こうなったら!
「……えっと、それで話なんだけど」
「すいませんでしたっ!」
「……へ?」
 先手必勝とばかりにこちらから土下座をしかける。これで毒気を抜かれ、殴られずに済むに違いない!
「……えーと。アンタなんかやったの?」
「いや、何も。いつものように理不尽な暴力が降りかかると思い、先手を打っただけだ」
「理不尽って何よ! んなことしたことないわよ!」
 土下座したのに頭をぺこぽこ叩かれた。解せぬ。
「で、殴るんじゃなけりゃ、何の用だ? 人目を忍んでるんだから、それなりの用だろ?」
 もう土下座する理由はないので立ち上がり、教室の隅に固められてる机に寄りかかる。
「う……アンタ、無駄に察しがいいのね。頭悪いのに」
「俺は別に帰ってもいいんだが」
「あ、ウソウソ! えっとね、ちょっと頼みがあるの」
「珍しいな。俺に出来ることか?」
「……えーと、アンタにしかできないっていうか」
「? 歯切れ悪いな。ばびっと言え!」
「……ああもうっ! アンタあたしと付き合いなさいっ!」
 …………。ほう。
「なっ、何を無言で赤くなってんのよ! ちっ、違うわよ! そーゆうんじゃないわよ! 誰がアンタなんかと!」
「だよな。あーびっくりした」
「(……何で素直に納得してるのよ、馬鹿!)」
「はい? 何か言いました?」
「何も言ってないわよッ!」
「はいすいません、はいすいません!」
 なんか超怒られた。怖い。
「ったく、馬鹿。あのさ、あたしってモテるでしょ?」
「あー。性格はともかく、外面はいいからな。猫かぶり姫とでも命名しようか?」
「うるさい。まーそーゆーわけだから、モテてモテて。毎日ラブレターもらうのよ」
「自慢話しにきたのか? そういうの聞くのは得意じゃないのですが、我慢して聞かないといけないの? 一刻も早く帰りてえ」
「いいから黙って聞きなさい! そうやってもらうラブレターの中に、ちょっと変なのが混じっててね」
 何やら話がマズイ方向に行ってる気がする。
「その……あたしの盗撮写真、みたいなのが入ってて」
「分かった、犯人を見つけ出して殺す」
「違うっ! 落ち着け! 何を真顔で言ってんのよ!」
「大丈夫だ、社会的に抹殺するだけだ。もちろん骨の一本や二本は覚悟してもらうが」
「ダメだってのっ! 相手は女の子よっ!」
「女だろうが何だろうが……え? おんな? ストーカーが?」
「そうよ。それに、盗撮って言っても、えっちなのじゃなくて、登校中のあたしとか、普段着のあたしが映ってるだけだから」
「そ、そなのか。それならそこまでしなくてもいいか」
「う、うん。……その、アリガト」
「や。その。なんというか、友人が辱められるのは耐え難いからな。まあ今回は相手が女で被害も軽微なようだからアレだけど」
「……え、えいっ」
 何やら鼻をむぎゅーっとつままれた。
「何をする」(鼻声)
「うっ、うるさいっ! なんかしたくなっただけ!」
「変な奴」(鼻声)
「アンタには言われたくないっ! ……そ、それでね。そういう写真と一緒に、いつも見てますって手紙が入ってて、ちょっと怖くて……」
「……ふむ」
 確かに、知らない奴に監視されてるなんて恐怖以外の何者でもないだろう。
「分かった。それで、俺はどうしたらいい? そのストーカー女とお前がレズってる所を写真に収めればいいのか?」
 殴られたので、違うみたい。
「だから、最初に言ったとおり、あたしと付き合うフリをしてほしいの」
「フリか」
「フリよ。当たり前じゃない。誰がアンタなんかと本気で付き合うってのよ」
「そりゃそうだ。わはははは!」
 なんかまた殴られた。
「なんで?」
「うっさい! 馬鹿!」
「解せぬ」
「うるさいうるさいうるさいっ! とにかくっ、アンタと付き合ってるって噂が立てば、その子も引き下がるでしょ? そーゆーわけだから、今からあたしとアンタは恋人同士! いいわねっ!?」
「はい」
 本当はよくないけど、とても怖かったのでうなずく俺を君は責められるだろうか。
「そっ。……じゃ、じゃあ、一緒に帰ろっか。ほら、恋人同士だし」
「あ、いや、今日は俺本屋に寄るつもりだから別々の方が」
「恋人同士だし、一緒に、帰るわよね?」
「はい」
 仮とはいえ、恋人になった瞬間に尻に敷かれる俺を君はどう思うか。
「うんっ、素直でいいわね♪」
「しかし、恋人か……。そだ、せっかくだし、おてて繋ぐか? なーん……」
「えっ!? ……そ、そうね、恋人だもんね」
 ちゃって、という声を出す前に、そっとかなみが手を出してきた。
「な、何してんのよ。早く手繋ぎなさいよ、ばか」
 なんて、軽くうつむきながら、真っ赤な顔で、ちょっと拗ねたみたいに言うんですの。
「なんかもう信じらんないくらい可愛いので顔を舐めていいですか?」
「アンタ絶対わざとでしょ!」
 べしべし叩かれましたの。

 とはいえ手は繋ぐみたいで、学校の廊下を手を繋いだまま歩いています。
「やー、しかし、なんと言うか……大変恥ずかしいですね!」
「う、うるさい。こっちだって恥ずかしいの我慢してるんだから、アンタも我慢しなさいよね。……て、ていうか、嘘とはいえ、アンタと恋人なんて最悪なんだけど」
「ごめんなさい」
「なんでアンタが謝んのよッ! あたしから頼んでるのにッ!」
「不思議だね」
「全然思ってない! ていうかあにうっすら笑ってんのよ! 怒れ、この馬鹿!」
「なんで俺が頬をつねられてるの?」
 などとイチャイチャ(?)しながら歩いてると、下駄箱に着いた。しかし、かなみは手を離そうとしない。
「あの、かなみさん。手を離さないと靴を履き替えられないのですが」
「わ、分かってるわよ馬鹿。……あの、あとでもっかい繋ぐよね?」(ちょこんと小首を傾げながら)
「うーん。やっぱ舐めていいですか?」
 なんか知らんが涙目のかなみに頬をつねられてから、靴を履き替える。履き終わると、ちょこちょこっとかなみが寄ってきて、すぐに手を繋いできた。
「ど、どこから例の子が見てるか分かんないから。外にいる時はずっと恋人のフリしないと」
「あー、確かにお前に気づかれずに隠し撮りしてるくらいだから、ひょっとしたら今も見てるかもしれんなあ」
「そ、そーゆーわけだから、手繋ぐの。……別にアンタと手繋ぎたいわけじゃないから。勘違いしないでよね」
「するわけないだろ」
 またしても涙目のかなみに頬をぎうぎう何故か引っ張られる。
「アンタ本当はあたしのこと嫌いでしょ!?」
「いやいや。一方的に嫌われてはいるが、俺はかなみのこと嫌いじゃないぞ?」
「うぐっ」
 一瞬にしてかなみの顔が真っ赤になった。
「や。その。もちろん、友達としてデスヨ?」
「わ、分かってるわよ! 当然よ! ……こ、こっち見るな、ばか!」
 またしても鼻をつままれた。
「や、そんなことをされては、そちらを見ざるを得ない」(鼻声)
「う、うるさいっ! ばかっ!」
 そんなことをしながら一緒に下校。
「はー……なんだって校門をくぐるだけでこんな疲れなくちゃいけないのよ」
「ま、ストーカーが諦めるまでだ。我慢しろ。……あ、そういや、家の中は大丈夫か? 盗撮とか」
「あー、それは流石にだいじょ……」
 途中まで言いかけた所で、急にかなみの動きが止まった。どうしたのだろうか。
「……や、やっぱダメかも」
 どういうわけか、かなみは真っ赤になりながらダメと訴えかけた。
「マジか。うーん、こうなったらそういう業者に頼んで隠しカメラとか探してもらうしかないかなあ?」
「あ、そ、それは大丈夫。窓から望遠で撮ってるみたいだから」
「あ、そうなのか。んじゃカーテン閉めれば大丈夫だな」
「で、でも、見せ付けるのが目的だから、今日はアンタあたしの家に来なさい。そこでストーカーに見せ付けるの」
「え。……あの、何を?」
「……い、色々」
「いろいろ……」
 そりゃ、恋人同士の色々と言ったら、ピンクいのがメインでしょう。
「な、何変なこと考えてんのよっ! えっちなのは禁止だからねっ!」
 かなみは頬を染めながら先手を打った。
「今の一言で生きる希望が潰えた」
「やっぱか! この変態めっ! ……そ、そんなにえっちなのはやらせるわけないでしょ、ばかっ!」
「そんなに?」
「ち、ちょっとくらいなら別に。……す、すりすりとか、なでなでとか。……ほっ、ほら、こっちから頼んでるんだから、それくらいのサービスはしないとねっ!?」
「は、はい」
 なんだかすごい勢いだったので深く考えずにうなずいたが、よかったのだろうか。
「そ、そう。……じゃ、じゃあ、今日はうちに来なさいよね」
「いかん、なんかもう興奮してきた」
「イチイチ言うなっ、ばかっ!」
 ぺこぽこ叩かれながらも、かなみの家に到着。かなみのおばさんにからかわれつつも、どうにか二階に上がることに成功。はひぃ。
「あ、着替えるから廊下で待ってて。覗いたら殺すから」
 死ぬのは嫌なので廊下で大人しく待ってると、かなみが顔を出した。
「き、着替え終わったから。入っていいわよ」
 ということなので、部屋に入る。かなみはベッドの上にちょこんと座っていた。
「す、好きなとこに座っていいから」
「あ、ああ」
 流石にかなみの隣というわけにもいかないので、部屋の中央に置かれたクッションの上に座る。と、かなみの俺の隣にすすすーっと寄ってきた。
「……な、何よ。恋人なんだからこのくらいの距離普通でしょ?」
「分かりません」
「普通なの! ……あ、あたしもよく知んないけど」
 とか言いながら、かなみは俺の手を握り、それどころか俺の肩に頭を預けましたよ!?
「これは大変にいけない! ああもう、俺の中の何かが溢れてきそうだ!」
「う、うるさい! 興奮するな、ばか! フリよ、フリ!」
「分かってます、分かってはいるんですが! ああもうなんか幸せすぎて俺は今日死ぬかもしれない」
「おおげさっ! ……て、ていうか、幸せとか嘘っぽい」
「なんで?」
「な、なんでって……ああもうっ、不思議そうな顔するなっ、ばかっ!」
「痛え」
 がじがじと肩を噛まれた。まあ、甘噛みなのでさほど痛くはなかったけど。
「そ、そんなことより、他にも色々しなさいよね」
「い、色々とは?」
「だ、抱っことか、すりすりとか、なでなでとか。……い、一般論よ!? 一般論として、恋人にやってほしいことを羅列しただけっ!」
 抱っこはともかく、なでなで等は恋人にもあまりしないと思う。
「うぅー……」
 が、してほしそうな感が強かったので、なでてみた。
「……もっといっぱいなでなさいよ、ばか。強さはそれくらいでいーから。もっといっぱい」
「はいはい」
「はいは一回! あと、抱っことかもしろ。後ろからね。抱っこね。むぎゅーってね」
 気のせいか、どこか幼くなってきている気がする。とはいえ、その要求にNOを突きつける理由などない。後ろからかなみを抱きかかる。
「う、うぅー……。ね、ねぇ、あたしのこと好き?」
「…………。ええっと。これは恋人のフリをしている状態で答えればいいのでせうか」
「べ、別に。どっちでも。アンタがあたしを好きだろうが嫌いだろうが、あたしの人生には全く関係ないし」
「そうか。なれば応えよう、その心意気に! ええと、実は嫌いじゃないどころか、物凄く好きです」
「~~~~~~~~っ!!!」
「痛い痛い痛い」
 かなみは突然俺の腕をがぶがぶ噛んだ。足もドンドン床に叩きつけている。一寸怖い。
「ど、どっちよ! 演技の方、本音の方!?」
「お前の人生には全く関係ないんじゃねーのか」
「いーから! 答えろ!」
「秘密です」
「顔赤いから本音の方! 本音の方よね!?」
「顔赤いのはお前だ。そして、秘密だと言っています」
「本音だって言え!」
「怖いです」
「んなことは聞いてないッ!」
 思ったことを言ったら怒られた。
「うぐぐぐ……がぅーっ!」
 かなみは妙な叫び声をあげると、くるりと身体を180度回転させた。つまり、俺と抱き合う形になったわけなのだが。
「ま、間違えたの! 間違えたからしょーがないの!」
「何が」
「分かんない!」
 ほら見なさい、これが混乱です。
「分かんないから、あたしを抱っこしろ!」
「この状態で? 姫様も無茶を言う」
「いーから! やんないと殺す!」
「はい」
 そんなわけで、向き合った状態でかなみを抱っこする。大変柔らかいうえ、ものすごくいい匂いまでしやがる。人生の幸運をとんでもない勢いで消費してるような気がする。
「うぅ……なんか頭クラクラするぅ……。……もーっ、なんなのよっ!」
「何が」
「ふつーの顔がムカツク! アンタは慣れてるかもしんないけど、こっちは初めてなのよっ! ちょっとは気使いなさいよっ!」
「ものすごくえろい台詞ですね!」
 ぺこぽこ殴られた。
「一応訂正しておくが、女性を抱っこするなんてこっちも初めてだぞ」
「そ、そなんだ。……は、初めてどーしだ」
 だから、どうしてお前はそういうことをはにかみながら言いやがりますか。
「わっ! ものすっごい嬉しそう! ニヤニヤしてる! 顔も赤いし! ばかみたい!」
「馬鹿とか言うな。一応俺も人間なんで、嬉しいとニヤけちまうんだよ」
「えっへっへー、一緒だ一緒ー♪」
 かなみは俺に頬擦りしまくりながら、ご機嫌な様子で節をつけて言った。
「ものっそいご機嫌ですね」
「な、何言ってんのよ。そんなことないわよ。アンタなんかとくっついてなくちゃいけないんだもん。不本意よ、不本意」
 などと言っている今現在も、かなみは依然俺にべそーっと抱きついており、説得力は皆無と言っていいだろう。
「ほら、手が止まってる。もっとなでなでしろ」
「はいはい」
 こんな感じのことをしていたら一瞬で夜になった。どういうことだ。
「はぅ、はぅぅ……」
 かなみはなでられすぎて頭がおかしくなったのか、俺に抱きついたままはぅはぅ言ってる。
「あの、そろそろ帰らないといけないのだけど……かなみ? 聞いてる?」
「んー?」
「だから、夜なので、帰らないと、いけないんです」
「んふー……。……ん?」
「いかん、脳のメルトダウンが一向に治まりやしねえ」(なでなで)
「んー♪」
「まあいっか。そういうことで、帰るな」
「ん?」
 すっくと立ち上がると、俺の膝に乗ってたかなみはその場にころんと倒れた。
「あうっ。……えっ、あっ? 嘘、もうこんな時間!? どういうことよっ!」
「なんで怒られてるの?」
 ようやっと目が覚めたのか、かなみはいつもの調子で俺を怒鳴った。
「ま、今日の様子をストーカーが見てたんならもう大丈夫だろ。そゆわけで、俺は帰るな。ばいばーい」
「う、うん。……あの、明日もよろしくね」
 なんか今変な言葉聞きましたよ?
「あの。俺の話聞いてました?」
「し、しつこいから! ストーカーはしつこいから! 最低でも一週間……ううん、二週間……いや、一ヶ月は毎日やんないと。今日みたいなの」
 一ヶ月毎日かなみとすりすりイチャイチャ地獄ですか。なんという生殺し。死ぬよ、俺?
「……あによ。嫌なの?」
「いや、そういうことじゃなくて、別の心配をですね」
「……嫌なら別にいいわよ。あ、アンタなんかいなくても、全然へーきだし」(半泣き)
「お前はもう少しその武器の威力を考えた方がいい」
「わっ、ひゃっ!?」
 あまりの威力に堪らずかなみを抱っこしつつ頭をなでる。
「え、えーっと。これはその、明日もいいってコト?」
「そゆこと」
「そ、そう。ま、まあ、ストーカーが諦めるまでの辛抱よね。あーあ、アンタなんかと恋人のフリしなきゃなんなんて、本当最悪よね」
「まあ、一ヶ月の我慢ですよ」
「……ひ、ひょっとしたら一ヶ月じゃ諦めないかもしんないから、二ヶ月くらいやんないとダメかも」
「…………」
「さ、三ヶ月カナ?」
「……まあ、いいや。俺でよければ、何ヶ月でも付き合うぞ」
「そ、そう。まあ、あたしと付き合えるんだから、そんなの当然よね?」
「なんて傲岸不遜な。明日嫌というほど抱っこしてやる」
「じゃ、じゃああたしは対抗して、嫌ってほどアンタのほっぺをぺろぺろしてやるもん!」
「誤ってキスしそうですね!」
「し、しないわよ。……えっち」
 どうして頬を染めながら満更でもない感じでそんなことを言うのですか!!!
「ああもう結婚してえなあ!!!」
「ひっ、人の家でなに叫んでんのよ、ばかっ!」
 あまりに可愛かったので思わず叫んでしまった。ここかなみの家なのに。
 戦々恐々しながら家を出る。幸いにしておじさんはまだきたくしてなかったようだ。よかった。とまれ、今日はこれで終わり。かなみと一緒に家を出る。お見送りしてくれるらしい。
「んじゃ明日な。お休みー」
「う、うん。お休み。またね。明日ね」
 ちっちゃく手をパタパタ振るかなみに見送られ、俺は家路に就くのだった。とか思ったらケータイが震えだした。かなみからメールだ。
『今日はアリガト。あと、結婚とか無理。大人になってからじゃないと無理。いっぱい稼いでくれないと無理。最悪共働きとか無理。日本式とキリスト教式とどっちがいい?』
 全体的におかしい。最後特におかしい。とはいえかなみも疲れているのだろう、責めるのは酷か。俺は無難な返事だけしておくのだった。

 で、翌日。
「昨日のメール嘘だから! あの時頭おかしくなってたから!」
 登校するなりかなみがよってきて真っ赤な顔でぎゃんぎゃん言ってきて困った。
「分かってる、分かってるから」
「そ、そう。……で、アンタ日本式とキリスト教式とどっちがいいのよ」
「ヤベェ、こいつまだ頭おかしい!」
 涙目で俺をつねるかなみでした。

拍手[88回]

PR

【ツンデレにキャッチコピーを付けてみよう】

2011年08月22日
 キャッチコピーか。任せろ、得意だ。丁度よくかなみがやって来た。
「……『動く昆布』!」
「誰が昆布か! これは髪だって何百回と言ってるでしょうが!」
 両のツインテールを持って、かなみがぎゃんぎゃん叫んだ。
「そう怒るなよ、はるぴー」
「はるぴーじゃないッッッ!!!」
 すごく怒られた。
「ったく……いきなりなんなのよ」
「いやね、キャッチコピーをつけろって神から啓示がありまして」
「うわー……」
 素で引かれた。
「まあそう羨ましがるな」
「引いてんのよッ! ……まあ、どーせアンタのことだから、なんとなくしたくなっちゃっただけだろうケド」
「流石ははるぴー、俺のことをよく理解してらっしゃる」
「かなみだって言ってるでしょうが! 次間違ったら絶対殺す!」
 このお嬢さんはすぐに人を殺そうとするのでとても怖い。
「あのね、かなみさん。人を殺すのは、ダメなんだよ?」
「そもそもアンタが原因なんだから諦めなさい」
「それもそうか! わはははは!」
「受け入れて爆笑するな!」
 もう何をやっても怒られる。
「ったく、今日も馬鹿。で、道いく人にキャッチコピーつけるなんてどうしようもないことやってんだから、アンタいま暇でしょ?」
「客観的に自分の成したことを言われると死にたくなるが、そうだな、暇だ」
「はぁ……。あのさ、暇なら買い物付き合いなさい。ジュースくらいならおごったげるから」
「デートなら行く」
「だ、誰がアンタなんかとデートなんかするのよ!」
「デートなら行く、もとい。デートという体なら行く」
「……そ、それはつまり、中身は普段の買い物でも、デートって言うなら、来るってコト?」
 こっくりうなずくと、かなみは顔を赤くしながら何やら難しい顔をした。
「……わ、分かったわ。分かったわよ! デートよ、デート! 文句ある!?」
「なんで怒ってるの?」
「う、うっさい! いーから行くわよ!」
「ひぃ」
 なんか顔を真っ赤にしてる怖い人に手を握られ、連行されました。
 強制収容所かどこかに連れて行かれるかと思ったが、いつものウインドウショッピングらしい。のはいいんだが。
「あの。いつまで手を握っているのでしょうか」
「な、何よ! アンタがデートだって言い張るから、握ってやってんでしょ!」
「いや、そうなんだけど」
「……それとも、嫌なの?」
 しゅん、とした表情で上目遣いとか、どこで手に入れたキラースキルですか。
「まさかまさかまさかまさかまさか」
「言いすぎ! あと、首を横に振りすぎ! 怖いわよ!」
 すごい勢いで否定したら首が取れるところでした。
「……と、とにかく、嫌じゃないのよね?」
「当然です」
「……そ、そか。そなんだ。……えへへっ、ただの買い物なのに、デートだと思ってる。ばーか♪」
 かなみは俺にニッコリ微笑みかけた。なんて破壊力だ。
「ちょっと俺の家に来てくれません? 5分ほど舐めるだけですから」
「寄るな変態ッ!」
 思ったことを言ったら一瞬にして嫌われた。
「まったく……なんだってアンタはそんなにアホなの?」
「『これを言ったらどうなるかな? 怒られるかな? でも面白いし、言っちゃえ!』が俺の基本理念ですから」
「そんな理念捨ててしまえ!」
「いや全く。あと、さっきのは舐めたいという台詞は、面白いから言ったのではなく、とても可愛いかったので思わず出た言葉です」
「な……っ! ……あ、アンタは、そゆことを、真顔で言うなっ!」
 ぽこぽこ、とまるで女の子みたいな威力のパンチを肩に受ける。
「……う、うぅー。こ、こっち見るな、ばかっ!」
 かなみは自分のバッグで顔を隠してしまった。
「やっぱ舐めていい?」
「変態を治せ、ばかっ!」
 どうやら俺はままならないようです。

拍手[26回]

【三連休、一度も男と会えずじまいで終わりそうなツンデレ】

2011年07月19日
 なんか急に欠員が出たとかで、この連休はずーっとバイトしてた。超疲れた。
 そんな連休の最終日。その日は珍しく早めに上がれた。疲れたおっぱい! 疲れたおっぱい! と心の中で回復呪文を唱えながら家まで歩いてると、うなだれた様子のかなみが前から歩いてきた。
 どうしたんだろう、と少し心配になっていると、かなみが顔をあげた。目が合った。なんかこっちに走ってきた。逃げる。
「逃げるなあああああ!!!」
「すいませんバイトのお金が入るのはまだ先なんです今はないんです助けてぇ!」
「人聞きの悪いこと叫ぶな、馬鹿!!!」
 とりあえず公園があったので逃げ込む。しかし、バイトの疲れもあり、足がよろけて超無様に転んだところを捕まえられた。
「ぜーっ、ぜーっ……な、なんで逃げるのよ、馬鹿」
 かなみは俺に馬乗りになり、襟を掴んだ。このまま絞め殺すのか!?
「いや、追いかけられると逃げる習性が俺の遺伝子には備わっていましてね」
「もー……無駄に疲れたじゃないの、馬鹿」
「いやはや、すいません」
「……それで、さ。なんで、ずーっとあたしを避けてたのよ」
「……はい?」
「だ、だから! ……この連休中さ。ずーっとあたしを無視してさ。携帯に連絡しても返事くんないし。メールしても無視するし」
「へ?」
「へ、じゃないわよ! わざとでしょ! わざと無視してたんでしょ! アンタなんかに無視されても平気だけど! 平気だけど! なんかムカつくじゃない!」
「いやいや痛い痛い」
 襟を掴まれたまま激しく揺さぶられたため、頭が地面にがっつんがっつん当たって超痛い。しかし、ここが公園でよかった。地面が芝生だからまだ大丈夫だが、コンクリなら今頃脳がでろりと出ているに違いない。
「わははは」
「あに笑ってんのよ!」
 自分の死体を想像し思わず笑ってしまったが、そんなタイミングではなかったために叱られた。
「や、失敬。ええとだな、ここ数日ずーっとバイトで家に帰ると疲れてバタンQという生活を繰り返していたのだ。結果、携帯の確認を怠っていたがために起こった悲劇ではなかろうか」
「え? ……そなの?」
「そうなの。毎日朝から晩までバイト漬けでな。いや、疲れた疲れた」
「……今までいっぱい悪口言われた腹いせに、無視してたんじゃないの?」
「するわけねーだろ馬鹿」
「あいたっ!」
 かなみにデコピンしてやる。全く、変な勘違いをしおって。
「う~……痛いじゃないのよ」
「それくらい我慢しろ馬鹿。つーかだな、悪口を言ってたって自覚はあるのだな」
「う……そ、それは、まあ。……怒ってる?」
「怒りのあまり変身をあと一回残してるのに頭がエクレアみたいな状態のまま死んでしまいそうだ」
「どこのフリーザよっ! ていうか最後死んでるし!」
「しまった」
「しまったじゃないわよ……それで、結局のところ怒ってるの?」
「怒ってない」
「ホントに?」
「本当に。というか、お前と一緒にいて悪口言われるたびに怒ってたら身がもたねーよ」
「……なによ。それって、あたしがずーっとアンタの悪口言ってるみたいじゃないのよ」
「違わないのか?」
「ちが……わないけどさ。ふん。馬鹿。意地悪」
 かなみは俺の顔に何度もチョップした。軽くだからいいが、結構痛い。
「割れます。顔が割れます」
「知らないわよ。あのさ、それでさ。今日もバイトだったの?」
「だったの。や、疲れた疲れた」
「そなんだ。……あ、あのさ、そのさ。ひっ、膝枕、したげよっか?」
 …………。え?
「ちっ、違うのよ!? 勘違いしないでよね! なんか誤解して追いかけちゃったこととか今までいっぱい悪口言っちゃったとかそーゆーのの罪滅ぼしのためだけで!?」
 かなみは顔を真っ赤にして、あわあわしながら言葉を並べた。
「あ、うん。まあ、その、なんちうか、してくれると嬉しいです」
「う、うん、うん。……じゃ、じゃあ、そこのベンチいこ」
 そんなわけで、近くのベンチに二人して腰掛ける。時刻は宵闇迫る夕刻、人気はない。しかも、公園の木々がうまい具合に俺たちを道路から隠してくれている。
「じゃ、じゃあ、どぞ」
「う、うむ」
 かなみの太ももに頭をのっける。ふにょっとして超気持ちいいのでこのまま寝てしまいそうです。
「ど、どう? 気持ちいー?」
「気持ちー。乳の脂肪が全部太ももにきているがための気持ちよさなのでしょうね」
「…………」
 無言で頬を超つねられた。割と本気で取れるかと思った。
「嘘ですごめんなさい頬を取らないで!」
「ふんだ。ばか」
「でも、いつだって言ってるけど、俺はお前の貧乳具合が大好きですよ?」
「そんなの言われて喜ぶ女の子なんていないっ!」
「でも、お前は喜んでるよな」
「よっ、喜ぶわけないじゃない! な、なに言ってるのよ、ばかっ!」
「表情と口調は怒ってるけど、その頬の赤さを俺の目から隠せまい!」
「えっ!? ちっ、ちちちっ、違うわよ、これは夕日に照らされて赤く見えるだけなのっ! アンタに好きとか言われて喜ぶわけないじゃない!」
 そう言ってる最中に、どんどん頬が赤くなっているのは指摘しない方がいいのだろうな。
「かなみは可愛いなあ」
 なので、感想だけ言うことにした。
「かっ、可愛いとか言うなっ、ばかっ! えっち!」
「いていていて」
 すると、沢山殴られたので言うんじゃなかった。
「はぁ……まったく、なんで殴られるって分かっててそーゆーコト言うかなあ」
「我慢できなかったんだろうね、きっと」
「自分のことなのに他人事みたいに……ほんっと、アンタって変な奴よね。ばーかばーか♪」
 かなみは楽しそうに笑いながら俺の頬をうにうにと押した。
「かなみ」
「んー、なに?」
 いつまでもその笑顔を見ていたいが、これだけは言っておかなければならない。
「また今度さ、一緒に遊びに行こうな」
「……ど、どしてもって言うなら、行ってやらないでもない」
 かなみはまたしても顔を赤くして、明後日の方向を見ながらぽしょぽしょと呟くのだった。

拍手[31回]

【笹を担いでるところをツンデレに見られたら】

2011年07月05日
 もうすぐ七夕らしいので、笹買ってきた。その帰宅中、ばったりかなみに会った。
「ばったりとバタリアンて似てますよね。ははは。じゃ俺はこれにて」
「あからさまに避けてるのがばれてるわよっ、ばかっ!」
 最大限のさりげなさでエンカウントから逃れたかったのだが、失敗したようだ。
「ったく……なによ、ばか」
「ああ、いや、避けているのではなくて。ただ、この植物について言及されたくなかっただけで」
「え? ……ふぅ~ん。で、なに? なんなの? その笹」
 触れて欲しくないと聞いた途端、かなみは嬉しそうな笑みで早口に問いかけた。
「うちのパンダの食欲が旺盛で、供給が追いつかないんだ」
「嘘つけっ!」
「いや、本当に。最近うちの親父がとある泉で溺れたらパンダになりまして」
「どこのらんまよっ!」
「そんなわけで、七夕用の笹なんだ」
「どこがそんなわけよっ! 初耳よっ!」
「ちなみに、触れて欲しくないと言ったのは罠です。この一連のボケが笹を担いでる時に浮かんでしまい、誰かに言いたくて言いたくて」
「途中からそんな気がしたわよ、ばかっ!」
「よく叫ぶ人だなあ」
「誰が叫ばさせてんのよっ! ……ぜーぜー」
「辛そうですね。短冊に『かなみのノドがうるおいますように』って書いておくよ」
「素直にジュースの一本くらいおごりなさいっ!」
 そんなわけで、無理矢理財布を強奪され、自販機でジュースを奢る羽目になってしまった。なんという不幸。
「んーと……どれにしよっかな」
「俺のオススメはこのドクロマークがついてる『極楽一直線』というジュースだな。メーカーの客を舐めてる感が半端ではない」
「アンタが飲め」
「ばか、俺みたいな性格破綻者が極楽なんかに行けるわけないだろ」
「どこを指摘してんのよ! ……ったく、これにしよ」
 かなみが白魚のような指でむんぎゅと押したのは、オレンヂジュースだった。
「うわ、地味」
「ジュースに地味も何もないでしょ! ……そういうアンタは、どんなのを選ぶのかしら?」
「ぽち」
 俺もかなみと一緒のジュースを買う。
「どういうことよっ!」
「かなみと一緒のジュースを飲みたかったんだ」
「う……へっ、変態! なっ、なによっ、擬似間接キスとでも言うつもり!? ばっかじゃないの!?」
 かなみの顔がみるみる赤くなっていく。自分で言って照れてどうする。
「でも本当は普通にオレンヂジュースが飲みたかったんだ」
「死ねっ!」
「大変痛い!」
 缶を投げつけられた。常人なら一撃で顔が吹き飛んでいるであろうが、俺は我慢強いので鼻血を出す程度で済んだ。
「あのですね、かなみさん。投げるな。危ないから」
「うるさいっ! ばかっ!」
「馬鹿でも何でも。危ないから」
 かなみの手を握り、投げつけられた缶を渡す。まだ開いてないので飲めるハズ。
「……う、うるさい。ばか」
「まあ、俺に投げるのであればまだいいが、他人にすると死者が出るから」
「……アンタくらいにしかやんないわよ、こんな危ないこと」
「じゃあいいや。ただ、手加減していただけると何かと助かります」
「……う、う~~~~~っ!」
「踏むな」
 げしげし何度も足を踏まれた。我慢できるとは言え、痛いものは痛い。
「何をほげーっとした顔してんのよ! 怒りなさいよ! 酷いことされてんだから!」
「ほげー顔は生まれつきだから諦めてくれ。そして、怒るのは好きじゃないから嫌なんだ」
「怒れーっ!」
 何やら頬を引っ張られた。仕返しに頭をなでてやる。
「頭なでんなっ!」
「おはへはおほっへほうふふ(訳:お前が怒ってどうする)」
「ぐう……もー、決めた! 今日はアンタを怒らせる! つーわけで、今からアンタの家行くから!」
 俺から手を離し、ずびしっと指を突きつけるかなみ嬢。なんの宣言してんだ。
「そりゃ構わんが、笹の取り付け手伝えよ。あ、ついでに短冊に願い事も書いてけ」
「ふんっ! アンタが死にますようにって願い事書いてやるんだから!」
「およそ90年後には叶うことだろう」
「遅い、おーそーいっ! ていうかアンタ長生きしすぎっ!」
「かなみを看取ってから死ぬつもりなんだ」
「な、何を勝手に夫婦にしてんのよっ! 妄想でも禁止よ、禁止!」
「しょうがない。現実で夫婦になるので我慢しとくか。ああこんな貧乳と結婚か。ついてない」
「なんでそっちはおっけーって思うのよ、ばかっ! ていうか貧乳言うなっ! こっちこそアンタみたいな変態お断りよ!」
「でも本当は貧乳大好きだから満更でもないんですよ?」
「知らんっ!」
「だから教えてるんじゃないか。ははっ、かなみって結構ばーかー。でも馬鹿な子ほど可愛いって言うかー」
「絶対、殺すっ!」
 などと殺気を振り撒く娘っ子と一緒に帰宅しました。いっぱい殴られた。

拍手[20回]

【かなみは俺の嫁2】

2011年03月19日
 今日もかなみは俺の嫁です。
 とはいえ、学校ではそういう関係であることは秘密にしているので、表面上は今まで通りただの友人としている。そういうわけで、友人として一緒に登校しているのだけれど。
「…………」
 きンらきンらした目で俺の方を見ながら、これみよがしに手をふりふりしてアッピールする嫁。
「……あーと。なんでしょうか」
 視線に耐えかね、しょうがなしに問いかける。
「へへー。あのさっ、あのさっ? 私と手、繋ぎたいでしょ?」
「いいえ」
 一瞬にして超不機嫌な顔になるかなみ。
「あによっ! こんなくぁいいかなみちゃんと手を繋ぎたくないって言うの!?」
「自分でかなみちゃんとか言うな。じゃなくて」
 かなみの耳に口を寄せ、小さな声で囁く。
「わっ、ふひゃっ!?」
「今は周囲に人がいないからいいが、そんなにベタベタしてたら結婚してるってばれるだろ」
 素早く離れると、かなみは両手を耳にあて、赤い顔で口を開いた。
「う、うぅー。ベタベタなんてしてないもんっ! ていうか、耳弱いの知ってるくせにふーふー息吹きかけるなっ!」
「そんなつもり毛頭ねぇよ……」
 ぺこぽこ弱い攻撃をあしらいながら、小さくため息。そもそも、ばれると面倒くさいことになるから結婚していることを隠そうと言い出したのはかなみからだったのに、実際にばれる原因を作っているのはコイツ。納得がいかない。
「むー。あによ、人の顔をじーっと見て」
「でもまあ、惚れた弱みって奴か。しょうがない」
「そっ、そゆこといきなり言うなっ! 反則! ばか!」
 突然かなみは顔を真っ赤にして、再び俺をぺこぽこ叩いた。
「痛い痛い。叩くねい」
「むー……そ、それよりさ。今日はもう学校さぼって家に帰っちゃわない? 授業とか面倒でしょ?」
「いきなり何言ってんだ」
「そ、そしたらちゅーとかいっぱいできるし……」
「…………」
「しっ、したいってことじゃなくてさ!? アンタがしたいんじゃないかって思っただけで!」
「学校行ってる間くらいは我慢できます」
「で、でも、他にも抱っことかなでなでとかもできないんだよ? 発狂しちゃわない?」
「お前は人を何だと思ってんだ……」
「色魔」
 かなみにした色々を思い出すに、簡単に否定できない。結婚した後でなければ絶対確実に捕まっている。
「……な、何を赤くなってんのよ、えろまじん」
「貧乳には無限の可能性が眠っていることを思い出しただけだ」
「どえろまじん!!!!!」
 そしてかなみも自分がされた色々を思い出したのだろう、超真っ赤になった。
「ううううう……正直、結婚するまでアンタがあそこまでえっちだと思いもしなかったわ」
「まだ全然全力出してませんよ?」
「えええええっ!? えっ、でも毎日一緒にお風呂入ってぺろぺろちゅーちゅーされてるよ!? なのにまだ全力じゃないの!?」
「声がでけえ上に発言がヤバすぎる!」
 つむじをぐりぐりぐりーっとして注意する。興奮しすぎだ。
「うにゅぐ……う、うるさいっ! そもそも、アンタが変なこと言うからっ! 全部アンタのせいっ! えっちえっちえっち!」
「何て責任転嫁だ」
 げしげしと足を蹴られながら呟く。まあ、こいつを嫁にした時点で受け入れてるからいいんだけど。
「こほん。ともかく、学校をサボるのはダメ。お前も夫がダメ人間になるのを見たくないだろ」
「もー既にダメ人間じゃない」
「そんな説もある」
「あははっ。……でもま、一緒にいたげるけどね。宣言しちゃったもんね、健やかなる時も病める時も、ってね?」
「お前は本当に隠す気があるのか」
 得意げにウインクしてるかなみの頭をわしわしっとなでる。なんかもうこいつが俺の隣にいるのが嬉しくて仕方がない。
「い、今は周りに誰もいないからいいんだもん。で、でも学校着いたらベタベタ禁止だからね。ベタベタしたら怒るからね。晩ご飯のおかず一品減らしちゃうからね」
「おかずが減るのは辛いな。分かった、ベタベタせずにふにふにする」
「擬音変えたらいいって話じゃないっ! こら、言ってる傍からふにふにするなーっ!」
 ぷりぷり怒りながらも、ほっぺをふにふにされてどこか嬉しそうなかなみだった。

拍手[24回]