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2019年10月15日
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【ツンデレとクリスマス】

2010年03月01日
 今日はクリスマスイブなので、是が非にでもぱーてーを行いたい! そして、イチャイチャしたい気持ち!
 という気持ちだけは潤沢にあるのだけど、声をかける勇気はない。
「か、勘違いしないでよね、別に断られるのが怖いんじゃないんだからねっ!」
「どやかましいっ!」
 後ろを通りがかったかなみが俺を怒鳴る。怒られて怖いので、教室の隅っこに移動する。
「……何やってんのよ」
 しばし震えを楽しんでると、かなみが俺の前に立ち、じろりと見下ろしているのに気づいた。
「あ、いや、その、……ぱ、ぱーてーの来客リストを確認してたまでさ」
 怒られて怖かったので隅っこで震えていた、と言うことは男としてのプライドが許さないので、適当なことを言ってみる。
「来客リストぉ? ばっかねー、アンタなんかが開くパーティーに人が集まるわけないじゃない」
 最初から嘘と決めてかかっているのか、かなみは鼻で笑った。
「クロロホルム仕入れたから大丈夫」
「さらってまで集めるなっ!」
 もっともなことを言われた。
「ったく。どーせ誰も来てくれないんでしょ?」
「そ、そんなことはないぞ? 両手両足の指じゃ足りないほどの人数が来るという噂が」
「絶対嘘ね。アンタみたいなのと一緒にクリスマス過ごす奇特な奴なんていないわよ」
 残念でしたー、と晴れやかな笑顔を浮かべるムカツク娘っ子。
「い、いるさっ! たで食う虫も好き好きと言うし、この銀河系のどこかにはきっと俺の事を好きで好きで仕方がない女性型の何かがいるさっ!」
「女性型の何かって……言ってて悲しくない?」
 実は自分で言ってて空しさのあまり死にそう。
「とっ、とにかくそういうことなので、俺様は来客を捌くのに忙しいのだ! さらばだかなみ、また会おうっ!」
「あっ、待ちなさいよ! ……もう」
 これ以上何か言われるとボロが出るので、というかもうすでにかなりの量のボロが出てるが、とにかく教室から飛び出す。こうなったら意地でも声をかけまくってやる!

「……おかしい」
 その後、校内を駆けずり回って必死に「俺とぱーちーしません?」と訊ねまわったが、誰一人としてうなずいてくれなかった。
「やはり執拗に『エロいことはしませんからうえっへっへっへ』と言ったのがまずかったのだろうか」
 怯えられないよう笑顔を作ったはいいが、慣れていないため引きつり、怪しくなってしまった。
「……い、いや、まだだ、まだ! ひょっとしたら気の早いサンタが俺に貧乳の妹っぽい女の子をプレゼントしてくれるかもしれない!」
 一縷の望みを抱き、帰宅する。祈るように自室のドアを開ける。
「……まぁ、そうだわな」
 見慣れた部屋は見慣れたままで、サンタも貧乳も妹もいなかった。
「あー……なんかもういいや。疲れた」
 着替えもそこそこにベッドに倒れこむ。クリスマスの情熱がしぼんでいくのを感じる。もうなんか今年はクリスマスいいや。

「……っと、起きなさいよ!」
 体を揺すられ、意識が覚醒する。
「んあ、んー……ぐぅ」
 しかし、まだ眠いので開きかけたまぶたを閉じて二度寝する。
「だから、起きろって言ってるでしょっ!」
「げはあっ!?」
 おなか痛い、すごくぽんぽんが痛い! あまりの痛みに眠気もどっか飛んで行き、代わりに理不尽な暴力に対する怒りがふつふつと! よし、この乱暴な闖入者に一言いってやる!
「貴様っ、俺様が銀河連邦総司令官だと知っての狼藉かっ!」
「……中二病はほどほどにしといた方がいいわよ」
 意外というか予想通りというか、闖入者はかなみでした。ま、コイツには以前鍵の隠し場所教えちゃったからな。
「えーと、聞いていいかどうか分からないけど、聞くぞ。なんでいるの?」
「えっ? え、えーと、その……」
 かなみは視線を空中にさまよわせた。……適当に考えてるな。
「アンタが哀れにも一人でクリスマスを過ごしてるらしいから、誘いを断ってまでして様子を見に来てやったの! 感謝しなさい!」
 照れているのか知らないが、かなみは顔を真っ赤にし、偉そうに胸を張ってそう言い切った。
「はぁ」
「何よ、その気のない返事! こーんな美少女が来てあげたのよ、もっと喜びなさいよ!」
「わぁい」
「顔が無表情! きちっと笑いなさい! あと、もっと全身を使って喜びを表現しなさい!」
「嬉しさがはちきれるっぜ!」
「……やっぱしなくていいわ。なんか、陸に打ち上げられたタコ系の深海魚みたい」
 人が折角頑張ってやったというのにこの仕打ち。
「まぁいいわ。ほら、パーティーするんでしょ?」
 かなみはコートを脱ぎ、テーブルの前に座った。そして、持っていた袋からチキンとケーキを取り出し、テーブルに並べ始めた。
「……な、何よ。勘違いしないでよね! 偶然安売りしてて、アンタには安物が似合いだと思って買ってきただけなんだから!」
 その様子を呆然と見ている俺に気づいたのか、かなみは顔を赤くしながらそう早口にまくし立てた。
「あー……うん。安物でもなんでも嬉しいです」
「……そ、そう」
 なんだか妙な雰囲気になってしまったが、とにかくパーティーの準備は整った。ジュースで乾杯する。
「ま、まあ一応ね。かんぱーい」
「おっぱーい」
 小動物なら死ぬレベルで睨まれたので、乾杯と言い直してコップを合わせる。
「しっかし……予想通りとはいえ、見事に誰もいないわね。一人くらい連れてこれなかったの?」
 かなみは周囲を見渡し、ジュースを飲みながら馬鹿にした口調で言った。
「よく調べたら、クロロホルムじゃ一瞬で昏倒しないらしくて」
「だから、さらおうとすなっ! ……でも、なんで誰も来ないかねー。アンタ、黙ってたらそこそこ見れるのに。ま、黙ってないから来ないんだけど」
 かなみは楽しそうに笑いながら俺の頬をぐいぐい引っ張った。
「それではまるで俺の性格に難ありと聞こえるが」
「そばにいたら疲れる性格ではあるわね」
 非常に失礼な奴め。俺ほど人畜無害な奴なんていないというのに、とか思いながらチキンをぱくつく。
「どう? おいしい?」
「おいしい」
「そっか。ほら、ケーキも食べなさいよ。アンタ、ショートケーキ好きだったわよね?」
 返事を聞く前にかなみは紙皿にショートケーキを載せ、俺の前に置いた。
「よく覚えてたな、俺がショートケーキ好きなの」
「えっ!? えっ、えっと、あ、あたし記憶力バツグンだから、どんなつまんないことでも覚えてるの!」
 何気ない事を聞いたつもりだったのだが、予想以上に狼狽させてしまった。申し訳なく思いながらケーキを食べる。
「あっ、これすっげーおいしい」
 話を変えるために多少アレでもおいしいと言うつもりだったが、予想を遥かに超えていたため、素直に口からついて出てきた。
「でしょっ? へへっ、前々から予約しておいただけはあるでしょ?」
「ん? 偶然安売りしてたケーキじゃないのか、これ」
 かなみは顔に笑顔を貼り付けたまま凍った。かと思ったら、突然顔を赤くして一気にまくし立てた。
「ちっ、ちちち違うわよっ! 予約をキャンセルされて売れ残ってたケーキよっ! アンタの聞き間違いっ!」
「いや、仮にそうだとしても変だよな。クリスマスなんてケーキが最も売れる時期だろうし、キャンセルされてもすぐ売れるかと」
「うっ、うるさいうるさいうるさいっ! それはドブ川のヘドロが原材料のケーキだから安いのっ! 色々聞くなっ!」
 いくらなんでも訴えられるぞ、と思ったが、あんまりにも必死だったので納得してやることにする。
「そか。それなら安くても納得だな」
「う……」
「ほら、かなみも食え。すごくおいしいぞ」
 かなみの前に持っていく。俺を何度か見た後、かなみはおずおず口にした。
「……おいしい」
 フォークを咥え、かなみはちょっと申し訳なさそうに上目づかいで俺を見た。
「……なんか、ごめんね」
「何の話だか。お前はクリスマスに一人ぼっちで哀れな俺を救済に来た優しい子だろ? 感謝されることはあっても、恨まれることなんて絶対ないさ」
「……へへっ。やっぱタカシは優しいね」
 まっすぐ言われると、非常になんというか、こう、照れる。
「……あ、照れてる?」
「気のせいだ」
「タカシってさ、褒められるの苦手だよね」
「そんなことはないぞ」
「……じゃ、なんでずっと向こう向いてるの?」
「寝違えたんだ」
「さっきまで普通だったでしょ! こっち向きなさい!」
 無理矢理かなみの方を向かされる。
「あはっ、やっぱり顔真っ赤。かっわい~♪」
 だから嫌だったんだ。ふてくされながらケーキを食べる。
「ほら、怒らないの。食べさせてあげるから」
 なんてことを言い出すのか、この娘は。
「い、いや、いい。一人で食べられる」
「いいから。ほら、あーん」
 かなみはケーキを掴み、俺に差し出した。
「いや、だから……」
「それとも、タカシがあたしにあーんしたいのかな?」
「……お願いします」
 観念して口を開ける。かなみはニコニコしながら俺にケーキを食べさせた。
「どう? おいしい? 普通に食べるよりおいしい?」
「……まあ」
「へっへー♪ そうよね、愛しのかなみちゃんが食べさせてくれてるんだもんねー♪」
 どう対処したもんでしょ、このキャラの変わりよう。……まあ、嫌じゃないけど。
「うりうり~」
 しかも、意味もなく俺のほっぺをつついてるし。楽しそうだからいいけど。
「……もーっ! タカシもちょっとは楽しそうにしなさいよ!」
 かと思ったら、突然ふくれっ面になった。気分屋め。
「いや、俺は充分楽しんでるが」
 主にかなみの変貌っぷりに。
「タカシってあんまり表情変わんないから、よく分かんないのよね……タカシってさ、何やってる時が楽しいの?」
「ん? んー……特には思いつかん」
「つまんない奴ねぇ……」
「でも、お前といる時は楽しいと思う。割と」
「……は、恥ずかしい奴ね、真顔で言ってさ」
 少なくとも、今のかなみのリンゴみたいな真っ赤な顔よりは恥ずかしくないと思う。
「……ね、ねえ。もっかいあーん、してあげよっか?」
「え、い、いや、もう結構」
「ね、ね? してほしいでしょ? ほら、あーん」
「いや、だから」
「あーん♪」
 そんな、満面の笑みであーんとか。卑怯ですよ。勝てるわけないじゃないですか。
「……あ、あーん」
 馬鹿みたいに口を開ける俺に、かなみはクスクス笑いながらケーキを食べさせた。
「おいしい? おいしい?」
「……お、おいしい」
「へへっ♪ じゃ、次はチキンね。はい、あーん♪」
 笑顔で迫るかなみに、今日は全部あーんで食べさせられる、そんな幸せな地獄絵図が脳裏に浮かんだ。

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