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2026年03月17日
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【ツンデレと宿題】

2010年04月03日
 俺の部屋は冬寒く夏暑い欠陥住宅なので、とてもとても暑い。扇風機をつけたところで焼け石に水、もう溶けそう。
「いや、あるいはもう溶けているのではないだろうか」
「な~にがあるいは、やねん。くだらんこと言っとる暇あったら、手動かしや」
 机を挟み、俺の対面に座るいずみが馬鹿にしたように言った。
「淫靡にか? 任せろ、得意だ」
「アホっ! なんで宿題すんのに手を淫靡に動かさなアカンねんっ!」
「いや、いずみが嫌がるかなぁ、と」
「ホンマにアホやねんなぁ……」
 しみじみ言われると、本当にそのように思えるからやめてください。
「うーむ……疲れた。いずみ、休憩しよーぜ、きゅーけー」
「アカンよー。まだやり始めて30分も経ってへんやろ? もうちょっと頑張らんと」
「えー、しんどい疲れた脳が勉強禁止令を発令するのです」
「……はぁ。あのな、夏休みの宿題一気に片付けるから手伝ってください、って言うたん誰やったっけ?」
「俺。忘れたのか? うむ、いずみの脳も勉強のあまり老化が始まったか」
 鼻を引っ張られた。そういうことではない様だ。
「あのな、タカシ。別にウチは手伝わんでもええねんで?」
「貴様、俺の学力が下から数えた方が早い雰囲気と知っての狼藉か!」
「狼藉って……でも、アンタ確かに英語は全然ダメやけど、国語とか数学はそこそこ得意やろ? やったらそれだけでも自分で……」
「む、褒めるのか? 心の準備……よし。さ、褒めれ。頭をなでろ。なでなですれ」
「犬か」
「人間です」
「知ってるわ!」
「知ってるなら聞かないで欲しい。犬になったかとドキドキするだろ」
「あのな……ああもぅええわ。なんやウチも疲れたし、休憩しよか」
「やった! アイス持ってくるな!」
 急ぎ台所に走り、カップアイスとスプーンを二つずつ取る。そして部屋に戻る。
「アイス! この日のために買っておきました!」
「そうなん、ご苦労様やな。……てっきり棒アイス持ってくる思たけど、普通のカップアイスやな」
「しまった、その手があったか! ちょっとコンビニ行ってくる!」
「アホ! 買ってきてもウチ食わんで!」
「ええ~、折角の擬似フェラチャンスなのに」
「死ね」
「嫌です」
 ちょっと泣きそうになるが、なんとか断る。
「……はぁ。ほら、諦めてそれ食い」
 しぶしぶアイスを食う。冷たくておいしい。
「ん~……やっぱ夏はアイスやなぁ」
「ひゃっこくて、おいしい」
「あ、アンタのチョコなん? ウチにもちょうだい」
「お前のバニラちょっとくれるなら」
「ん~……まぁええで」
「よし、交渉成立。ほい」
「え?」
 スプーンでアイスをすくい、いずみの前に突きつけると、彼女は目を瞬かせた。
「え、じゃない。食え」
「そ、そんなんせんでも自分で食べるからええわ」
「いーから食え。言ってる間に溶けるだろ。ほら、あーん」
「う……あ、あーん」
 何か言いたそうだったけど、それでもいずみは素直に口を開けてアイスを食べた。
「ん……チョコもおいしいなぁ」
 いずみは顔を綻ばせた。見てるこっちまで嬉しくなっちゃうじゃんコンチクショウ。
「次は俺の番。あー」
「あー……って、ま、まさかウチもすんの!?」
「当然だ。ほれ、あー」
「う……しゃ、しゃあないな。はい、あーん」
 小さく頬を染めながら、いずみは俺の口にアイスを入れた。バニラの甘みが口中に広がる。
「ん、うまい。バニラもいいなぁ」
 バニラ味を堪能したので自分のを食べてると、いずみがなんだかぼーっと自分のスプーンを見ているのに気がついた。
「どした?」
「えっ、な、なんでもないで?」
 しばらく逡巡していたいずみだが、やおら決心したようにスプーンを口に含んだ。そして、ちゅうちゅうと吸いだした。
「……いずみ。スプーンは吸うものではなく、すくうものだぞ?」
「えっ、あっ、ちゃ、ちゃうねん、ちゃうねんで?」
 何が違うのか分からない。
「よく分からんが、程々にな」
「うっ、う~……馬鹿にしてるやろ」
 不満そうに俺を睨むいずみ。
「馬鹿にはしてない。馬鹿には」
 変な奴だなぁとは思ったけど。
「う~……あっ、アンタのせいや! 全部アンタのせいやからな!」
「何が?」
「う、うるさいわ! ええか、全部アンタが悪いんやからな? ウチ悪ないで?」
 全然なんのことか分からない。……性格のことか?
「確かに悪いかもしれんが、なにも今言わなくても……」
「いっ、いま言わんでいつ言うねん! アンタがあんな、その、……間接キスみたいなマネするから、ウチ……」
「ああ!」
 なるほど、なんか変だと思ったらそれが原因か。理由が分かってすっきり。
「つまり意識してしまったのか。初々しい奴だなぁ、かーわいー」
「かっ、からかうな、アホっ!」
 いずみは真っ赤になりながら、ヤケクソ気味に俺のほっぺをにうにう引っ張った。
「わはははは、かーわいー」
「まだ言うかッ!」
 沢山沢山にうにうされたけど、からかえて満足。ただ、まるで宿題が手につかなかったのだけが残念無念。
 明日もいずみ誘おう。

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【教師とツンデレ】

2010年04月03日
 昔からの念願である、教師になった。ヤッタネ!
 で、テストの採点をしてると、日頃なにかと噛み付いてくる双海の点数が良かった。
 うむ、ここは褒めまくって懐柔しよう。大人の悪知恵、思い知れ!
 というわけでテストを返却する日が来ました。
「はーいはーい、静かに静かにー。テスト返す……静かに静かにー、テスト返します。だから静かに、静かにしてーお願いー」
「はいはいはい! ほら、みんな黙る! 先生テスト返せないでしょ!」
 双海が手を叩いてそう言うと、教室が静まった。
「や、助かったぞ双海」
「先生がしっかりしてくれれば済む話なんです!」
 俺も静まる。
「ほ、ほら! 落ち込んでないで早くテスト返しちゃってください!」
「おっ、落ち込んでなんかないぞ! ホントだぞ!?」
「いいから早くする!」
「はいっ」
 出席順にテストを返して行くと、双海の番になった。
「双海ー、双海奈々ー。出席番号21番、双海奈々ー」
「いますっ! いちいちフルネームで呼ばないでください!」
「ご、ごめんなさい」
 ついいつものクセで謝ってしまったが、ここからが大人の本領発揮だ。褒めに褒めて懐柔作戦開始!
「いや、双海は凄いな。学級委員で、そのうえ成績優秀と来た。先生びっくりだよ」
「……いきなりなんです? そんなのいいから、テスト返してください」
 訝しげに俺をじろじろ見る双海。ま、負けるな俺!
「そ、その、テスト! そう、いい点数でした! すごいね!」
「……馬鹿にしてるんですか?」
 いかん、褒めているにも関わらず、双海の機嫌がみるみる悪化してる!
「や、先生が学生の頃はいっつも補習受けてたし。すごいなーって、その、ね?」
「なんでそんな必死に褒めてるんです? ……まさか、褒めて懐柔しようとかそんな浅はかなこと考えてませんよね?」
 見透かされていた。大人っぽく華麗に誤魔化せ!
「そそそんなわけないじゃん! へ、へ、変な奴だなぁあはははは!」
「……ふーん。ちなみに私、そういう小細工する人、だいっ嫌いです」
 膝から崩れ落ちるくらいショック。ショックだけど、なんとか踏ん張って崩れ落ちない。
「うわっ、ちょ、ちょっと大丈夫?」
「へ、へーき。だいじょぶ。なんでもない」
 崩れ落ちはしなかったが、あまりのショックのためか膝が笑ってる。
「ちょっと、本当に大丈夫なんですか? 保健室行きます?」
「だ、だいじょぶ。授業しないと」
 その後、テストの答え合わせをしたのだが、双海の言葉が響いてたのか随分酷い授業をしてしまった。
「はぁ……」
 昼休み、屋上でこっそり紫煙を吐く。本当は禁煙なのだが、屋上ではOKというのが暗黙の了解になっている。もちろん、生徒はダメだが。
「……でも、なんでこんなショック受けたんだ?」
 教え子全員に好かれることなんて無理って分かってる。別に双海に嫌われたところで、いいじゃないか。
「あっ、先生。やっぱここにいたんですね」
 ぼんやりそんなことを考えてると、ドアを開いて双海が顔を出した。
「おー、双海か。どした? なんか質問でも?」
 タバコを携帯灰皿に入れ、双海に向き直る。
「あーっ! 先生、タバコ吸ったらダメですよ? ここは禁煙ですし、何より体に悪いんですから」
「あーはいはい、悪かった。もう吸わない」
「とか言って、いっつも吸ってるじゃないですか。もぅ……」
 そういや、ここで前に何回か同じようなやり取りしたっけ。
「おまえ、俺のお袋みたいなこと言うのな」
「心配されてるうちが華ですよ。そんなことより、大丈夫なんですか?」
「ん?」
「ほら、……その、私がだいっ嫌いなんて言ったから先生、なんか辛そうで……」
「あー……」
 隠してたつもりなんだが、伝わってしまっていたようだ。教師失格だな。
「だいじょぶだっての。別におまえに嫌いと言われたところで凹むような俺じゃねーべ?」
 や、本当はべこんべこんに凹みまくってたけど。
「……先生、嘘下手ですね」
「ぐ」
「授業も下手だし」
「うぐ」
「生徒にも舐められてるし」
「うぐぐ」
「そんなんじゃ世間を渡っていけませんよ? もっとしっかりしないと」
 双海は腰に手を当て、小さくため息をついた。
「あーうっせうっせうっせ! 嘘下手なのは性格だし授業下手なのは新米だし生徒に舐められてるのは生徒と距離が近いといい方に考える所存です!」
 双海に背を向け、タバコを取り出そうとして、やめる。舌の根も乾かないうちにまた吸うと、双海になに言われるか分かったもんじゃないしな。
「……はぁ。ダメダメですね、先生」
「うっさい。いーから飯でも食ってこい」
「先生が行くなら、私も行きます」
「俺は今日昼抜き。給料前で金ないの。だからほれ、早く戻れ。昼休み終わるぞ」
「じゃ、私のお弁当半分食べます?」
「えっ」
 思わず振り向くと、少しだけ恥ずかしそうにしてる双海がいた。
「ほら、だいっ嫌いなんて言っちゃったお詫びとして。ね?」
「や、でもほら、教師が生徒に飯たかるって外聞が悪すぎるというか」
「いいからいいから! ほら、早く!」
 双海は俺の手を取って、軽く駆け出した。
「うわっ、ちょ、待て!」
「あっ、そうそう」
 双海は急に立ち止まり、俺に背を向けたまま言った。
「……小細工する先生は嫌いですけど、小細工が下手な先生は嫌いじゃないですよ?」
「……えっと、それって」
「ほっ、ほら! 早くしないと昼休み終わっちゃいますよ!」
 後ろからなのではっきりしないが、かすかに見えた双海の顔は真っ赤に染まっていたような気がした。

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【龍を召喚できる姉ちなみん】

2010年04月02日
「……タカくん、タカくん」
 ゲームをしてたら、ちなねぇが俺の背をつんつん突いてきた。
「ゲーム中なので後で」
「……えい」
「あああああ! リセットした! 猫リセットならぬ、姉リセットした!」
 膝を突いて悲しみに浸っていると、ちなねぇが顔を覗き込んできた。
「……どんまい」
「誰のせいで悲しんでると思ってんだ!」
「……あのね、タカくん。……お姉ちゃん、すごい特技を編み出しました」
 俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなねぇは変なこと言い出した。
「特技? セーブせずに2時間ぶっつけでしてたゲームのデータを復元するとか?」
「その特技とは……龍を召還することなのです」
 すごい? と目が訴えてるが無視。
「そんなのできるわけねぇじゃん、ばーか」
「むっ。……姉を馬鹿呼ばわりとは、いい度胸です。……すなわち、グッド度胸」
 あまり怒られている気がしない。
「……そんなグッド度胸保持の弟を、召還した龍に噛み砕いてもらいましょう」
「え」
「……なむなむ、なむなむ」
 なむなむ言い出した姉を見る。……いや、まさか、マジ?
「……龍さん龍さん、出て来いはよーん」
 両手を上げ、聞くだけでやる気を根こそぎ奪われるような掛け声を上げるちなねぇ。刹那、上げた両手の間から煙が出た。
「……ふふ、せいこー」
 煙が消えると、そこに一匹の龍がいた。……手の平サイズの。
「小さッ!」
「……山椒は、小粒でもぴりりと辛いと言います。……うなぎに最適。……そうだ、今日はうなぎにしましょう。タカくん、作るの手伝ってください」
「や、それは構わんが今はうなぎより龍を! 助けてちなねぇ!」
 このままではミニ龍に噛み砕かれ、新聞の一面を飾ってしまう。……いいとこスポーツ新聞だな。
 なんて考えてると、龍が俺めがけ躍りかかってきた!
「うわぁっ!」
 目を瞑って痛みを待つ。待つ。……来ない。そっと目を開ける。
「ぴー♪」
 龍は長い舌を器用に操り、俺の頬をぺろぺろ舐めてた。
「あ、味見されてる! ちなねぇ、助けて!」
「……おかしい、敵を襲うはずなのに。……説明書、せつめいしょ……」
 ちなねぇは胸元から薄い冊子を取り出し、読み始めた。一刻も早くこの状況から脱すべく、俺も隣から覗き込む。
『犬っぽい何かでも出来る! 必殺召還の書!』
 説明書の題にやる気を削がれながら、問題の箇所を探す。……あ、あったあった。
『召還された龍は召還主と同じ思考をします。対象を憎めばその対象を攻撃しますが、近くに好意を抱く対象がいた場合、その対象と遊ぶ事を優先します』
「…………」
「…………」
「ぴー♪」
 俺の部屋に、龍の甲高い鳴き声が響き渡る。
「えーと、ちなねぇ、これって……」
「ち、違う、違うのです。誰も弟に好意なんて抱いてません」
 真っ赤な顔で否定されても、そうですかと頷くのは難しいです。
「まーとにかく噛み砕かれることはないみたいだな。よかったよかった」
 胸を撫で下ろし、龍を見る。落ち着いて見てみれば、愛嬌があって可愛いと言えなくもない。
「ぴー♪」
「おっ、あははっ。うん、結構可愛いじゃないか」
 ぺろぺろと舌を伸ばしてきた龍の顎の下をなでる。龍は嬉しそうにぴーぴー鳴いた。
 そんな俺たちを、ちなねぇは面白くなさそうにじっと見ていた。
「……ぴー」
 なんか怖いなぁと思ってたら、突然ちなねぇが龍の鳴きマネをしながら俺のほおを舐めた。
「ちっ、ちちち、ちなねぇ!?」
「……召還主ですから、召還した龍の真似をするのも仕方ないのです」
「そっ、そそ、そっかな?」
「そうなのです。……やれやれ、弟の頬を舐める羽目になるとは。……さまなーも大変です」
 大変です、と言いながら、ちなねぇは凄く嬉しそうだった。

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【ヤガランテを召喚できる妹ちなみん】

2010年04月02日
「……おにーちゃん、おにーちゃん」
「……兄は今、便所に篭もっています。用件がある方は、便所の外に出てからお願いします」
 トイレの中から機械的な声で妹に返す。
「……大?」
「お願いだから便所くらい静かにさせてください」
 便所の中から妹に懇願する羽目になるとは思いもしなかった。
「……ふぁいと、おにーちゃん」
 応援された。何を頑張れと言うのか。
 しばらく頑張って異物を放出し、すっきりしたので流してからドアを開ける。がんっ、といい音がした。
「……うぅ~」
 ちなみがぺたりと床に座り込み、両手でおでこを押さえていた。
「なんでここにいるんだよ……」
「ぶつけた~……。おにーちゃん、責任取って」
「結婚しよう」
「ヤだ」
 即答されると、それはそれでショック。
「で? 便所の前で何やってんだ?」
「あ、そうそう……えっと、ちなみはヤガランテを召還できるようになりました~」
 嬉しそうにない胸を張るちなみだが、分からないことが幾つかあります。
「ヤガランテとやらが何か分からんし、召還とか無理」
「…………」(ほっぺぷくー)
 機嫌を損ねたようだ。さらに困ったことに、腹も減った。しばらく俺の中で協議した結果、飯を優先。
「ちなみ、昼飯なににする? 作るの面倒だし、ラーメンでいいか?」
「……ヤだ。ちゃんとしたの作って。おにーちゃん特製チャーハンがいい」
「んー、チャーハンならいっか。作るから手伝え、ちなみ」
「……ちなみがヤガランテ召還するの見てくれるなら、手伝う」
 よく分からんが、それでちなみの気が済むならいいだろう。
「分かった分かった。兄が見ててやるから、ちゃっちゃとするがいい」
「……おにーちゃんのくせに偉そう。……あとで嫌がらせしてやる」
「そういうことは俺のいないところで言え」
「おにーちゃん、邪魔しないで。……集中できないじゃない」
 なんか怒られた。
「……なむなむ、……ヤガランテさんヤガランテさん、出て来いはよーん」
 どこかで聞いたことのある極めてやる気を削ぐ言葉を呟き、ちなみは両手を上げた。すると、上げた両手の間からどこからともなく煙が舞い起こった。
「おおっ!?」
「……ふふ、だーいせーいこー」
 煙が収まると、ちなみの前に小さなロボットが鎮座していた。
「……ごー、ヤガランテ。……おにーちゃんを抹殺だ」
 物騒なことを言いながら、ロボットを向けるちなみ。
「なんで殺されるんでしょう」
「……もっとちなみと遊んでくれていれば、死なない未来もあったかも」
 やめて死んだものとみなさないで。まだ生きてます。
 ちなみがヤガランテと呼ぶロボットが一歩一歩俺の方に歩み寄ってくる。……えーと。
「えい」
「ああっ、……でこぴんした」
 ロボットは転んだまま足を動かすだけで、自分では起き上がれないようだ。
「ふっ……この程度で兄を倒そうなどと、十年早い! 出直して来い!」
「……うっ、うう、ううう~……」
「え、えと、ちなみ?」
「……ふぇぇぇぇぇぇん」
 ロボットが倒され悲しくなったのか、ちなみは突然泣き出してしまった。
「あっ、あ~……ごめんな、ちなみ。悪いお兄ちゃんだったな」
 ちなみの頭を撫でながら謝る。
「……うっ、ぐすっ……うん、悪いおにーちゃんだった。……ひっく」
「手伝うからさ、次はお兄ちゃんを殺せるの召還しような?」
 慰めるためとはいえ、なんて台詞だ。
「うっ、うん。……次は、おにーちゃん殺せるの出す。……でも、ちなみと遊んでくれるなら、半殺しで我慢してあげる」
 出来れば半殺しもやめて欲しいなぁと思いながら、俺はちなみを抱っこするのだった。

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魔幼女

2010年04月02日
 唯一の特技である逃げ足を用い、誰一人戦うことなくやってきた魔王城。真っ向から戦うと100%負けるので、暗殺だ!
 というわけで魔物に見つからないよう、震えながら夜を待つ。草木も眠る丑三つ時、こっそり魔王がいるという部屋に忍び込む。
 ……魔王がいる部屋ってくらいだから骸骨とか血まみれの死体とかゴロゴロしてると思ったが、なんか、すげーファンシー。女の子の部屋みたい。
 おっと、それより魔王だ魔王。こいつを倒して救国の英雄に!
 金やら女やら名声やらという文字が頭を駆け巡る中、天蓋のついたベッドに近寄る。
魔幼「……くーくー」
 そこにいたのは魔王ではなく、クマのぬいぐるみを抱いたちっちゃな女の子だった。……もしかして魔王、逃げた?
勇者「ふ……ふははははは! 俺に恐れをなして逃げたか! 恐るるに足らず、魔王!」
魔幼「ん……むぅ、うるさい……」
 幼女が起きた。半開きの目を手でごしごしとこすり、俺を見た。
魔幼「……だれ?」
勇者「みんなの憧れ、勇者だよ」
 親しみやすさを演出するためにっこり笑いかけると、幼女の目が見開かれた。
魔幼「もっ、もう来たの!? ど、どうしよ、今日は来ないと思ってなんの準備もしてないのに……あぅぅ」
 女の子はベッドから飛び降りると、わたわたとタンスが置いてある方に走った。
魔幼「あうっ!」
 こけた。
勇者「あーはいはい、なに焦ってんだか知らないけど、俺は魔王とかと違って無差別に虐殺とかしないから安心しな」
 女の子を抱き起こすと、睨まれた。
魔幼「わたしだって無差別じゃない! 逆らう人とかだけしか殺してないぞ!」
勇者「子供が変なこと言い出した」
魔幼「子供じゃなくて、魔王だぞ!」
勇者「ぶわははは!」
魔幼「笑った!?」
勇者「や、面白い娘っ子だ。よし、お兄ちゃんの妹にしてやるから、人に言えないようなことしよう」
魔幼「いーやー! はなせ、ばかー!」
勇者「よーし、とりあえずお医者さんごっこしような。どこが悪いんですかー?」
魔幼「わっ、こら、服を脱がせんな!」
 楽しい楽しいことをしてたら、廊下から複数の足音が聞こえてきたが、今はお医者さんごっこの方が大事!
側近「魔王様! 勇者が潜入したと報告が……」
魔幼「うわーん、はなせ、はなせよー!」
勇者「うーん、いけない世界に足を踏み入れたようだ。だがしかし、ロリはいいなぁ」
 女の子の平坦な胸元に顔を埋めていて気づかなかったが、なんか化け物に囲まれてる。
 集団リンチの末、死んだ。
王様「おお勇者よ、死んでしまうとは情けな……」
勇者「よし、もっかい!」
王様「ひいっ!?」
 棺桶から勢いよく飛び出したら、王様が変な声あげてた。
勇者「こんにちは、勇者です」
王様「しし、知っとるわい! いきなり棺桶から飛び出すな! びっくりして死ぬかと思ったわい……」
勇者「あー確かにおっさんぐらいの歳だと、衝撃で棺桶に入る可能性は高いわな。はっはっは」
王様「…………」
 不穏な空気を感じたので、逃げるように呪文で魔王城の王座まで飛ぶ。
魔幼「うわっ、また来た!」
 王座には魔王ではなく、先ほどの幼女がいた。
勇者「こんにちは、愛でに来ました」
魔幼「ちがうだろ、おまえ魔王たおしに来たんだろ!?」
勇者「あ、あー……いや、覚えてたよ?」
魔幼「うそつけっ!」
勇者「けど、魔王いないみたいだし楽しく遊びましょう」
魔幼「だ、だからわたしが魔王なの! が、がおー、がおー!」
勇者「ふむ、魔王ごっこか? なら俺も魔王に。……貴様のはらわたを喰らい尽くしてくれるわッ!」
 得意の化け物ボイスで、幼女に凄む。
魔幼「う……うわぁぁん! こわいよーーーーーーっ!!!」
 幼女が全力で泣き出した。その鳴き声を聞きつけた化け物たちに、また囲まれた。
王様「おお勇者よ、また死んだか……」
 なかなか魔王に会えない。

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