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2019年10月18日
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【教師とツンデレ】

2010年04月03日
 昔からの念願である、教師になった。ヤッタネ!
 で、テストの採点をしてると、日頃なにかと噛み付いてくる双海の点数が良かった。
 うむ、ここは褒めまくって懐柔しよう。大人の悪知恵、思い知れ!
 というわけでテストを返却する日が来ました。
「はーいはーい、静かに静かにー。テスト返す……静かに静かにー、テスト返します。だから静かに、静かにしてーお願いー」
「はいはいはい! ほら、みんな黙る! 先生テスト返せないでしょ!」
 双海が手を叩いてそう言うと、教室が静まった。
「や、助かったぞ双海」
「先生がしっかりしてくれれば済む話なんです!」
 俺も静まる。
「ほ、ほら! 落ち込んでないで早くテスト返しちゃってください!」
「おっ、落ち込んでなんかないぞ! ホントだぞ!?」
「いいから早くする!」
「はいっ」
 出席順にテストを返して行くと、双海の番になった。
「双海ー、双海奈々ー。出席番号21番、双海奈々ー」
「いますっ! いちいちフルネームで呼ばないでください!」
「ご、ごめんなさい」
 ついいつものクセで謝ってしまったが、ここからが大人の本領発揮だ。褒めに褒めて懐柔作戦開始!
「いや、双海は凄いな。学級委員で、そのうえ成績優秀と来た。先生びっくりだよ」
「……いきなりなんです? そんなのいいから、テスト返してください」
 訝しげに俺をじろじろ見る双海。ま、負けるな俺!
「そ、その、テスト! そう、いい点数でした! すごいね!」
「……馬鹿にしてるんですか?」
 いかん、褒めているにも関わらず、双海の機嫌がみるみる悪化してる!
「や、先生が学生の頃はいっつも補習受けてたし。すごいなーって、その、ね?」
「なんでそんな必死に褒めてるんです? ……まさか、褒めて懐柔しようとかそんな浅はかなこと考えてませんよね?」
 見透かされていた。大人っぽく華麗に誤魔化せ!
「そそそんなわけないじゃん! へ、へ、変な奴だなぁあはははは!」
「……ふーん。ちなみに私、そういう小細工する人、だいっ嫌いです」
 膝から崩れ落ちるくらいショック。ショックだけど、なんとか踏ん張って崩れ落ちない。
「うわっ、ちょ、ちょっと大丈夫?」
「へ、へーき。だいじょぶ。なんでもない」
 崩れ落ちはしなかったが、あまりのショックのためか膝が笑ってる。
「ちょっと、本当に大丈夫なんですか? 保健室行きます?」
「だ、だいじょぶ。授業しないと」
 その後、テストの答え合わせをしたのだが、双海の言葉が響いてたのか随分酷い授業をしてしまった。
「はぁ……」
 昼休み、屋上でこっそり紫煙を吐く。本当は禁煙なのだが、屋上ではOKというのが暗黙の了解になっている。もちろん、生徒はダメだが。
「……でも、なんでこんなショック受けたんだ?」
 教え子全員に好かれることなんて無理って分かってる。別に双海に嫌われたところで、いいじゃないか。
「あっ、先生。やっぱここにいたんですね」
 ぼんやりそんなことを考えてると、ドアを開いて双海が顔を出した。
「おー、双海か。どした? なんか質問でも?」
 タバコを携帯灰皿に入れ、双海に向き直る。
「あーっ! 先生、タバコ吸ったらダメですよ? ここは禁煙ですし、何より体に悪いんですから」
「あーはいはい、悪かった。もう吸わない」
「とか言って、いっつも吸ってるじゃないですか。もぅ……」
 そういや、ここで前に何回か同じようなやり取りしたっけ。
「おまえ、俺のお袋みたいなこと言うのな」
「心配されてるうちが華ですよ。そんなことより、大丈夫なんですか?」
「ん?」
「ほら、……その、私がだいっ嫌いなんて言ったから先生、なんか辛そうで……」
「あー……」
 隠してたつもりなんだが、伝わってしまっていたようだ。教師失格だな。
「だいじょぶだっての。別におまえに嫌いと言われたところで凹むような俺じゃねーべ?」
 や、本当はべこんべこんに凹みまくってたけど。
「……先生、嘘下手ですね」
「ぐ」
「授業も下手だし」
「うぐ」
「生徒にも舐められてるし」
「うぐぐ」
「そんなんじゃ世間を渡っていけませんよ? もっとしっかりしないと」
 双海は腰に手を当て、小さくため息をついた。
「あーうっせうっせうっせ! 嘘下手なのは性格だし授業下手なのは新米だし生徒に舐められてるのは生徒と距離が近いといい方に考える所存です!」
 双海に背を向け、タバコを取り出そうとして、やめる。舌の根も乾かないうちにまた吸うと、双海になに言われるか分かったもんじゃないしな。
「……はぁ。ダメダメですね、先生」
「うっさい。いーから飯でも食ってこい」
「先生が行くなら、私も行きます」
「俺は今日昼抜き。給料前で金ないの。だからほれ、早く戻れ。昼休み終わるぞ」
「じゃ、私のお弁当半分食べます?」
「えっ」
 思わず振り向くと、少しだけ恥ずかしそうにしてる双海がいた。
「ほら、だいっ嫌いなんて言っちゃったお詫びとして。ね?」
「や、でもほら、教師が生徒に飯たかるって外聞が悪すぎるというか」
「いいからいいから! ほら、早く!」
 双海は俺の手を取って、軽く駆け出した。
「うわっ、ちょ、待て!」
「あっ、そうそう」
 双海は急に立ち止まり、俺に背を向けたまま言った。
「……小細工する先生は嫌いですけど、小細工が下手な先生は嫌いじゃないですよ?」
「……えっと、それって」
「ほっ、ほら! 早くしないと昼休み終わっちゃいますよ!」
 後ろからなのではっきりしないが、かすかに見えた双海の顔は真っ赤に染まっていたような気がした。

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