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2026年03月17日
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【ツンデレに「今日のパンツ何色?」って聞いたら】
2010年04月20日
「かなみ、今日のパンツ何色?」
「聞きながらスカートめくるなッ!」
ひどく殴られた。
「軽いジョークなのに……」
「重いわよ! 相変わらず馬鹿ね……」
「むっ。馬鹿じゃないぞ」
「どう見ても馬鹿よ。しかも、大馬鹿。救いようのないくらい馬鹿」
「し、失礼な! ならば明日、俺がいかに聡明か見せてやろう」
「……なんか嫌な予感がするから、いい」
「今から作戦練るから、楽しみに待ってろよ!」
「人の話聞けッ!」
次の日。俺は一晩寝ずに考えた作戦を決行した。
「かなみ、今日のパンツ何色?」
「スカートに頭突っ込むなッ!!!」
ひどくひどく殴られた。歯も折れた。
「な、何故だ!? これなら他者の目にかなみのパンツが映らないと言うのに!」
「アンタの目に映るでしょうが!」
「映るだけでなく、香りも堪能できました。白い布地の奥から、どこか甘やかな香りが」
首を絞められた。“スカートの中はいい香り”という秘密を守るため、俺を殺す気か!?
「……はぁ、馬鹿は死んでも治らないって言うし、殺してもなぁ」
「げほげほ……うう、馬鹿じゃないのに、馬鹿じゃないのに……」
「はいはい、そーね。アンタは馬鹿じゃない。ちょっとオツムが足りないだけだもんね」
「うむ。……あれ、同じような意味のような……?」
「気のせい気のせい」
首を傾げてると、かなみに頭をなでられた。様々な疑問がどうでもよくなってくる。
「えへへぇ」
「うわっ、気持ち悪ッ」
「…………」
「無言でスカートの中に入るなッ!」
大変殴られた。痛みも大変なことに。
「落ち込んだ時はかなみのスカートの中、と決めてるんだ」
「アンタは一生落ち込むな!」
「じゃあ、俺に優しくするがいい。ほれ、優しくすれ」
調子にのると鉄拳が飛んでくるので、おちおち調子にも乗れやしない。
「だから、スカートに潜り込むな!」
「かなみのスカートの中にいると、落ち着くんだ。引っ越そうかな」
「できるかッ!」
「努力すれば夢は叶うと言うし、大丈夫。俺を信じろ!」
「……はぁ。そんなスカート好きなら、一着あげるからそれに潜ってなさい」
「や、スカートそのものには興味ない。俺が興味あるのは、あくまでかなみなわけで」
「んな……」
不思議なことに、かなみの顔が朱に染まった。
「そ、そういうこと言うな、ばかっ!」
「なんで? 俺はいつだってかなみに興味津々だぞ」
「う……」
俺が口を開くたび、かなみの顔の赤さが増していく。
「どうして一向に胸が成長しないのだろう、とか、まだ胸がAAAなのか、とか」
「AAに成長したわよッ!」
「げはぁっ!?」
貫く勢いのボディーブローが腹に突き刺さる。
「うう……成長おめでとう」
「死ね、馬鹿!」
かなみは俺をそのままに、足音荒くどっかへ行ってしまった。
「……まぁ、本当の興味は別なんだけどな」
かなみがいなくなったのを確認してから、俺は転がったままぼそりと呟くのだった。
「聞きながらスカートめくるなッ!」
ひどく殴られた。
「軽いジョークなのに……」
「重いわよ! 相変わらず馬鹿ね……」
「むっ。馬鹿じゃないぞ」
「どう見ても馬鹿よ。しかも、大馬鹿。救いようのないくらい馬鹿」
「し、失礼な! ならば明日、俺がいかに聡明か見せてやろう」
「……なんか嫌な予感がするから、いい」
「今から作戦練るから、楽しみに待ってろよ!」
「人の話聞けッ!」
次の日。俺は一晩寝ずに考えた作戦を決行した。
「かなみ、今日のパンツ何色?」
「スカートに頭突っ込むなッ!!!」
ひどくひどく殴られた。歯も折れた。
「な、何故だ!? これなら他者の目にかなみのパンツが映らないと言うのに!」
「アンタの目に映るでしょうが!」
「映るだけでなく、香りも堪能できました。白い布地の奥から、どこか甘やかな香りが」
首を絞められた。“スカートの中はいい香り”という秘密を守るため、俺を殺す気か!?
「……はぁ、馬鹿は死んでも治らないって言うし、殺してもなぁ」
「げほげほ……うう、馬鹿じゃないのに、馬鹿じゃないのに……」
「はいはい、そーね。アンタは馬鹿じゃない。ちょっとオツムが足りないだけだもんね」
「うむ。……あれ、同じような意味のような……?」
「気のせい気のせい」
首を傾げてると、かなみに頭をなでられた。様々な疑問がどうでもよくなってくる。
「えへへぇ」
「うわっ、気持ち悪ッ」
「…………」
「無言でスカートの中に入るなッ!」
大変殴られた。痛みも大変なことに。
「落ち込んだ時はかなみのスカートの中、と決めてるんだ」
「アンタは一生落ち込むな!」
「じゃあ、俺に優しくするがいい。ほれ、優しくすれ」
調子にのると鉄拳が飛んでくるので、おちおち調子にも乗れやしない。
「だから、スカートに潜り込むな!」
「かなみのスカートの中にいると、落ち着くんだ。引っ越そうかな」
「できるかッ!」
「努力すれば夢は叶うと言うし、大丈夫。俺を信じろ!」
「……はぁ。そんなスカート好きなら、一着あげるからそれに潜ってなさい」
「や、スカートそのものには興味ない。俺が興味あるのは、あくまでかなみなわけで」
「んな……」
不思議なことに、かなみの顔が朱に染まった。
「そ、そういうこと言うな、ばかっ!」
「なんで? 俺はいつだってかなみに興味津々だぞ」
「う……」
俺が口を開くたび、かなみの顔の赤さが増していく。
「どうして一向に胸が成長しないのだろう、とか、まだ胸がAAAなのか、とか」
「AAに成長したわよッ!」
「げはぁっ!?」
貫く勢いのボディーブローが腹に突き刺さる。
「うう……成長おめでとう」
「死ね、馬鹿!」
かなみは俺をそのままに、足音荒くどっかへ行ってしまった。
「……まぁ、本当の興味は別なんだけどな」
かなみがいなくなったのを確認してから、俺は転がったままぼそりと呟くのだった。
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【辛いもの食ってつらそうなツンデレ】
2010年04月19日
コンビニに以前話題になった暴君ハバネロがあったので、話のタネに買ってみた。
コンビニ袋を携え外に出ると、偶然小さな先輩に出会った。
「よお、先輩。今帰りか?」
「…………」
「え、見れば分かるだろ? いや、そうなんだけど……」
「…………」
「え、何買ったのかって? これ、スナック菓子」
菓子と聞いて、先輩の目が怪しくきらめいた。
「…………」
「え、よこせ? いや、いくら先輩が妖怪ハラヘッタでも、これは先輩みたいなおこちゃまには辛くて無理だ」
先輩は俺の体によじ登った。そして俺の胸あたりまで登ると、器用にほっぺを引っ張られた。
「……先輩、んな無理して引っ張らなくても」
「…………」
「え、無理してない? ……そースか。まぁそれはともかく、辛いのダメだったろ、確か」
「…………」
「え、大丈夫? 大人だから辛いのへーき? いや、無理だって。お兄さんの言うこと聞いときなさい」
先輩は地面に飛び降り、不満そうにほっぺを膨らませて俺のすねを蹴った。
「痛い痛い! ああもう、わーったよ。その代わり、辛くても我慢しろよ」
菓子を渡すと、先輩は待ちきれない様子で袋を破った。そして、一息にスナックを口に入れた。
最初笑顔だった先輩の顔が、みるみる悲しそうに変化していく。
「だから言ったろ、先輩にゃ無理だって。ほら、ここに吐き出せ」
しかし、先輩は頭を振って咀嚼した。涙目になりながらも、先輩はなんとか飲み込んだようだ。
「…………」
「え、全然へーきだった? そっか、なら残り全部やるよ」
先輩が凍った。
「いや、俺は単に話のタネに買っただけだから。美味しく食べれる奴が食うに限るだろ」
先輩はあぅあぅと言葉にならない声で何かを訴えようとしていた。
「よかったな先輩、タダでお菓子もらえて。らっきー♪」
先輩は小さく“全然らっきーじゃない”と悲しげに言った。当然、聞こえないフリをした。
「よし、ここは先輩の得意技である“菓子一気食い”を披露してもらおうか」
先輩が再び凍った。
「…………」
「え、折角貰ったものを一気に食べるなんて申し訳ない? ははっ、何言ってんだよ先輩。俺は先輩に喜んでもらえりゃ、それでいいんだ」
先輩の頭をなでると、先輩は泣きそうな目で俺をみつめた。
「う……」
この、子犬のような目に弱い。
「…………」
「え、年上の綺麗なお姉さんをいじめて楽しいか、このクソ虫……って言った?」
先輩は半泣きのままコクコク頷いた。
「あははははー……先輩♪ 食え」
先輩の小さな口を無理やりこじ開け、その中にハバネロを注ぎ込む。
「!!!??」
先輩は目を白黒させて道路を跳ね回った。
「わはははは! 大丈夫か、先輩?」
買っておいた清涼飲料水を先輩に渡すと、先輩は一気に飲み干した。
「…………」
「え、おいしかった? やっぱり辛いのなんてへーき? ……すごいな、先輩」
強がりもここまでくると、逆に感心してしまう。
「…………」
「でも、もういい? お腹いっぱい? そりゃ残念、こんなのもあるんだけど」
袋の中からチョコレートを取り出すと、先輩は目を輝かせた。
「…………」
「え、やっぱりちょっとお腹空いた? ……先輩、可愛いな」
馬鹿にされたと感じたのか、先輩は頬を膨らませて俺の脚を蹴った。
「わはははは! はい先輩、チョコあげる」
チョコを渡すと、先輩は途端に機嫌を直して嬉しそうに頬張った。
「……先輩、リスみたい」
先輩は口をもごもごさせながら「リスじゃないもん」と小さく呟くのだった。
コンビニ袋を携え外に出ると、偶然小さな先輩に出会った。
「よお、先輩。今帰りか?」
「…………」
「え、見れば分かるだろ? いや、そうなんだけど……」
「…………」
「え、何買ったのかって? これ、スナック菓子」
菓子と聞いて、先輩の目が怪しくきらめいた。
「…………」
「え、よこせ? いや、いくら先輩が妖怪ハラヘッタでも、これは先輩みたいなおこちゃまには辛くて無理だ」
先輩は俺の体によじ登った。そして俺の胸あたりまで登ると、器用にほっぺを引っ張られた。
「……先輩、んな無理して引っ張らなくても」
「…………」
「え、無理してない? ……そースか。まぁそれはともかく、辛いのダメだったろ、確か」
「…………」
「え、大丈夫? 大人だから辛いのへーき? いや、無理だって。お兄さんの言うこと聞いときなさい」
先輩は地面に飛び降り、不満そうにほっぺを膨らませて俺のすねを蹴った。
「痛い痛い! ああもう、わーったよ。その代わり、辛くても我慢しろよ」
菓子を渡すと、先輩は待ちきれない様子で袋を破った。そして、一息にスナックを口に入れた。
最初笑顔だった先輩の顔が、みるみる悲しそうに変化していく。
「だから言ったろ、先輩にゃ無理だって。ほら、ここに吐き出せ」
しかし、先輩は頭を振って咀嚼した。涙目になりながらも、先輩はなんとか飲み込んだようだ。
「…………」
「え、全然へーきだった? そっか、なら残り全部やるよ」
先輩が凍った。
「いや、俺は単に話のタネに買っただけだから。美味しく食べれる奴が食うに限るだろ」
先輩はあぅあぅと言葉にならない声で何かを訴えようとしていた。
「よかったな先輩、タダでお菓子もらえて。らっきー♪」
先輩は小さく“全然らっきーじゃない”と悲しげに言った。当然、聞こえないフリをした。
「よし、ここは先輩の得意技である“菓子一気食い”を披露してもらおうか」
先輩が再び凍った。
「…………」
「え、折角貰ったものを一気に食べるなんて申し訳ない? ははっ、何言ってんだよ先輩。俺は先輩に喜んでもらえりゃ、それでいいんだ」
先輩の頭をなでると、先輩は泣きそうな目で俺をみつめた。
「う……」
この、子犬のような目に弱い。
「…………」
「え、年上の綺麗なお姉さんをいじめて楽しいか、このクソ虫……って言った?」
先輩は半泣きのままコクコク頷いた。
「あははははー……先輩♪ 食え」
先輩の小さな口を無理やりこじ開け、その中にハバネロを注ぎ込む。
「!!!??」
先輩は目を白黒させて道路を跳ね回った。
「わはははは! 大丈夫か、先輩?」
買っておいた清涼飲料水を先輩に渡すと、先輩は一気に飲み干した。
「…………」
「え、おいしかった? やっぱり辛いのなんてへーき? ……すごいな、先輩」
強がりもここまでくると、逆に感心してしまう。
「…………」
「でも、もういい? お腹いっぱい? そりゃ残念、こんなのもあるんだけど」
袋の中からチョコレートを取り出すと、先輩は目を輝かせた。
「…………」
「え、やっぱりちょっとお腹空いた? ……先輩、可愛いな」
馬鹿にされたと感じたのか、先輩は頬を膨らませて俺の脚を蹴った。
「わはははは! はい先輩、チョコあげる」
チョコを渡すと、先輩は途端に機嫌を直して嬉しそうに頬張った。
「……先輩、リスみたい」
先輩は口をもごもごさせながら「リスじゃないもん」と小さく呟くのだった。
【バレンタインとツンデレ】
2010年04月19日
「チョコください、委員長」
「ヤ」
いつものように委員長と帰宅してる最中、今日はバレンタインと気づきチョコをせがむも一言で断られた。
「なんで貴方にチョコをあげないといけないの。甘いのが食べたいなら、コンビニで何か買ってきたらいいじゃない」
「や、そうではなくて。バレンタインに愛の塊チョコを食べたいという男心でして」
「だったら尚のことよ。貴方なんかにあげるチョコなんてないわよ」
「むぐぐ……し、しかし、付き合っているというのに、愛する彼氏にチョコの一つぐらいいいのでは?」
「だっ、誰と誰が付き合ってるってのよ、誰が!」
「俺と、委員長が、ラブラブ」
顔に参考書を投げつけられた。
「へ、変なこと言わないで! 私はただ、頭の悪い別府くんに勉強を教えてあげてるだけ! 勘違いしないでよ!」
「では、勘違いを真実にしようではないか。おお、そういえば今日はバレンタイン。さ、委員長。チョコください」
地面に落ちた参考書を委員長に返すと、また投げつけられた。角が当たって超痛え。
「いいから帰る! おばさまと担任の先生と校長先生に貴方の勉強頼まれてるんだから、ちょっとは頑張りなさいよ」
「う、ううう……チョコ、チョコ……甘いチョコが食いたい」
俺は委員長に引かれながら、えぐえぐとしゃくり上げるのだった。近所の園児が俺を指差し笑ってるのが悔しかった。
「チョコー……」
「はぁ、まだ言ってる」
家に帰り、委員長から個別授業を受けてるがまるで頭に入らない。俺はコタツの上に頭を乗せ、どうして委員長がチョコをくれないのか考えていた。
「……金か? 委員長! 金を俺が出せば、チョコを買ってくれるか?」
「ヤ」
委員長の一言で撃沈する。……どうやら本気でくれないようだ。
「今年こそ、チョコ0から脱却できると思ったんだけどなぁ……現実は甘くないなぁ」
「え、別府くん、チョコ今まで貰ったことないの?」
「も、貰ったことくらいある! 確か幼稚園の時に、保母さんから貰ったような」
「…………」
「な、なんだよぅその目は! 貰ったのは事実だ! たぶん!」
「……そうね。よかったね」
どうしてか、憐憫の目で見られているような気がしてならない。
「ほら、いいからこの問解きなさい」
「うー……花子さんと太郎くんがいます。二人が子作りをしたとして、何ヵ月後に子供が生まれるでしょう、か……。最近の教科書は過激だな」
「そんなの全然書いてないわよ! 今やってるの数学だし!」
「うーん……3以上数えられないから、数学苦手なんだよなぁ」
「もうちょっとマシな言い訳しなさいよ。ほら、頑張る頑張る。今日のノルマが終わったら、ご褒美あげるから」
「ご褒美!? 処女か、処女だな!」
物凄い怒られた。
「すいません、おっぱいタッチで我慢します」
「なんでよ! そういうのじゃないわよ!」
なんだか分からないが、ご褒美があるなら頑張ろう。
その後、17回ほど委員長に怒られながらも、どうにか今日のノルマを終える。
「うー……つーかーれーたーぁー……」
「お疲れ様。はい、ご褒美」
「さてはチョコだな!? なんだかんだ言って優しいからな、委員長は」
コタツの上にちょこんと置かれたそれは、チョコにしてはやけに丸々としてて、オレンジ色で、ミカンのようで。
「……いかん。目を酷使しすぎたせいか、チョコがミカンに見える」
「おいしいわよ、ミカン」
委員長は鞄からミカンを4つほど取り出し、そのうちの一つを手に取った。
「ミカン、嫌い?」
「嫌いじゃないけど、今日ぐらいは黒くて甘くて、でもどこか苦味のある菓子を食べたかったなぁ、とか」
ぶちぶち文句を言いながら、ミカンの皮を剥いて食べる。
「ん、甘い」
「でしょ? 私、ミカンって好きなんだ。このミカン当たりね」
チョコを貰えないのは残念だけど、まぁこうやってコタツに入って委員長とミカン食うのも悪くない、かな。
……ごめんなさい強がりです。本当は血尿が出るほどチョコが欲しかったです。
「おいしいわね、このミカン」
「むぐむぐ……委員長、いちいち白い筋取るのやめたら? 気にすることないと思うが」
「この方がおいしいし、綺麗よ」
適当に話してると、すぐにミカンは二人の腹の中に収まってしまった。
委員長を玄関先まで送る。外はもう夕闇に包まれていた。
「ミカンありがとな、委員長。美味かったよ」
「そ、そう。……あ、そうだ。コレあげる」
そう言って委員長が差し出したのは、綺麗にラッピングされた小さな包みだった。
「え、委員長、これって……」
「じゃ、じゃあまた明日!」
委員長は素早く走って行ってしまった。部屋に戻り、包みを開ける。果たして、そこには小さなチョコが入っていた。
「委員長……」
小さくて、少し歪んだチョコを頬張る。甘くて、少しだけ苦かった。
翌日。俺はいつもの場所で委員長を待っていた。いつもより少し遅れて、委員長がゆっくりやって来た。
「おっはよー、委員長!」
「お、おはよう……」
委員長はなんだか居心地悪そうに体を揺すった。
「チョコありがとうな、委員長。あんな嬉しいチョコは生まれて初めてだ」
「ち、チョコチョコ言わないでくれる? 義理なんだから、そんな喜ばないでよ」
「や、義理でもなんでも嬉しいもんは嬉しいし。それをしっかり伝えないのは失礼だと思うわけで」
「……そ、そう。義理でそんな喜んで、おめでたい性格ね」
「ま、ホントは本命がよかったんだけどな。それは来年まで待つ」
「だっ、誰が貴方なんかに本命チョコをあげるってのよ! 貴方なんて、来年もその次もずーっと義理に決まってるわよ!」
「ほう、委員長は俺とずーっと一緒か。幸せなことこの上ないな」
「なっ……!」
委員長は顔を赤くして口元をもごもごさせた後、一人で学校へ向かってしまった。
「ああ待って待って委員長! 一緒に行こう!」
足早に歩く委員長の後を、俺は軽く駆けて追いかけるのだった。
「ヤ」
いつものように委員長と帰宅してる最中、今日はバレンタインと気づきチョコをせがむも一言で断られた。
「なんで貴方にチョコをあげないといけないの。甘いのが食べたいなら、コンビニで何か買ってきたらいいじゃない」
「や、そうではなくて。バレンタインに愛の塊チョコを食べたいという男心でして」
「だったら尚のことよ。貴方なんかにあげるチョコなんてないわよ」
「むぐぐ……し、しかし、付き合っているというのに、愛する彼氏にチョコの一つぐらいいいのでは?」
「だっ、誰と誰が付き合ってるってのよ、誰が!」
「俺と、委員長が、ラブラブ」
顔に参考書を投げつけられた。
「へ、変なこと言わないで! 私はただ、頭の悪い別府くんに勉強を教えてあげてるだけ! 勘違いしないでよ!」
「では、勘違いを真実にしようではないか。おお、そういえば今日はバレンタイン。さ、委員長。チョコください」
地面に落ちた参考書を委員長に返すと、また投げつけられた。角が当たって超痛え。
「いいから帰る! おばさまと担任の先生と校長先生に貴方の勉強頼まれてるんだから、ちょっとは頑張りなさいよ」
「う、ううう……チョコ、チョコ……甘いチョコが食いたい」
俺は委員長に引かれながら、えぐえぐとしゃくり上げるのだった。近所の園児が俺を指差し笑ってるのが悔しかった。
「チョコー……」
「はぁ、まだ言ってる」
家に帰り、委員長から個別授業を受けてるがまるで頭に入らない。俺はコタツの上に頭を乗せ、どうして委員長がチョコをくれないのか考えていた。
「……金か? 委員長! 金を俺が出せば、チョコを買ってくれるか?」
「ヤ」
委員長の一言で撃沈する。……どうやら本気でくれないようだ。
「今年こそ、チョコ0から脱却できると思ったんだけどなぁ……現実は甘くないなぁ」
「え、別府くん、チョコ今まで貰ったことないの?」
「も、貰ったことくらいある! 確か幼稚園の時に、保母さんから貰ったような」
「…………」
「な、なんだよぅその目は! 貰ったのは事実だ! たぶん!」
「……そうね。よかったね」
どうしてか、憐憫の目で見られているような気がしてならない。
「ほら、いいからこの問解きなさい」
「うー……花子さんと太郎くんがいます。二人が子作りをしたとして、何ヵ月後に子供が生まれるでしょう、か……。最近の教科書は過激だな」
「そんなの全然書いてないわよ! 今やってるの数学だし!」
「うーん……3以上数えられないから、数学苦手なんだよなぁ」
「もうちょっとマシな言い訳しなさいよ。ほら、頑張る頑張る。今日のノルマが終わったら、ご褒美あげるから」
「ご褒美!? 処女か、処女だな!」
物凄い怒られた。
「すいません、おっぱいタッチで我慢します」
「なんでよ! そういうのじゃないわよ!」
なんだか分からないが、ご褒美があるなら頑張ろう。
その後、17回ほど委員長に怒られながらも、どうにか今日のノルマを終える。
「うー……つーかーれーたーぁー……」
「お疲れ様。はい、ご褒美」
「さてはチョコだな!? なんだかんだ言って優しいからな、委員長は」
コタツの上にちょこんと置かれたそれは、チョコにしてはやけに丸々としてて、オレンジ色で、ミカンのようで。
「……いかん。目を酷使しすぎたせいか、チョコがミカンに見える」
「おいしいわよ、ミカン」
委員長は鞄からミカンを4つほど取り出し、そのうちの一つを手に取った。
「ミカン、嫌い?」
「嫌いじゃないけど、今日ぐらいは黒くて甘くて、でもどこか苦味のある菓子を食べたかったなぁ、とか」
ぶちぶち文句を言いながら、ミカンの皮を剥いて食べる。
「ん、甘い」
「でしょ? 私、ミカンって好きなんだ。このミカン当たりね」
チョコを貰えないのは残念だけど、まぁこうやってコタツに入って委員長とミカン食うのも悪くない、かな。
……ごめんなさい強がりです。本当は血尿が出るほどチョコが欲しかったです。
「おいしいわね、このミカン」
「むぐむぐ……委員長、いちいち白い筋取るのやめたら? 気にすることないと思うが」
「この方がおいしいし、綺麗よ」
適当に話してると、すぐにミカンは二人の腹の中に収まってしまった。
委員長を玄関先まで送る。外はもう夕闇に包まれていた。
「ミカンありがとな、委員長。美味かったよ」
「そ、そう。……あ、そうだ。コレあげる」
そう言って委員長が差し出したのは、綺麗にラッピングされた小さな包みだった。
「え、委員長、これって……」
「じゃ、じゃあまた明日!」
委員長は素早く走って行ってしまった。部屋に戻り、包みを開ける。果たして、そこには小さなチョコが入っていた。
「委員長……」
小さくて、少し歪んだチョコを頬張る。甘くて、少しだけ苦かった。
翌日。俺はいつもの場所で委員長を待っていた。いつもより少し遅れて、委員長がゆっくりやって来た。
「おっはよー、委員長!」
「お、おはよう……」
委員長はなんだか居心地悪そうに体を揺すった。
「チョコありがとうな、委員長。あんな嬉しいチョコは生まれて初めてだ」
「ち、チョコチョコ言わないでくれる? 義理なんだから、そんな喜ばないでよ」
「や、義理でもなんでも嬉しいもんは嬉しいし。それをしっかり伝えないのは失礼だと思うわけで」
「……そ、そう。義理でそんな喜んで、おめでたい性格ね」
「ま、ホントは本命がよかったんだけどな。それは来年まで待つ」
「だっ、誰が貴方なんかに本命チョコをあげるってのよ! 貴方なんて、来年もその次もずーっと義理に決まってるわよ!」
「ほう、委員長は俺とずーっと一緒か。幸せなことこの上ないな」
「なっ……!」
委員長は顔を赤くして口元をもごもごさせた後、一人で学校へ向かってしまった。
「ああ待って待って委員長! 一緒に行こう!」
足早に歩く委員長の後を、俺は軽く駆けて追いかけるのだった。
【節分とツンデレ】
2010年04月19日
昼休み。豆を廊下に蒔いてたら、学食で食事を終えたかなみに見つかりこっぴどく叱られた。
「いやでも、今日は節分ですし……」
腫れた顔をさすりながらどうにか言い訳するも、
「だからって廊下歩いてる人にぶつけんなッ!」
かなみは飛沫を飛ばしながら俺を怒鳴るのだった。
「そう怒るな。ほら、お前もやったらいかに楽しいか分かるだろう。なくなったら、そこに置いといた豆使っていいから」
教室の隅を占拠している豆袋を指しつつ、かなみに豆を持たせる。すると、かなみの口角が吊り上がっていくではないか。
しまった。鬼に金棒、かなみに豆だ。殺される。
「……そうね。鬼は外と言うし、馬鹿も外でいいわよね」
「いやいやいや! 馬鹿も人権を保持している感じが痛い痛い痛い!」
かなみはこの上なく嬉しそうに俺に豆をぶつけた。
「あーっはっはっはっは! こりゃ楽しいわ!」
「……あ、またタカシがいじめられてる」
ちなみが俺を指差し酷いこと言った。
「いじめられてねぇ! 倒錯した愛の形だ!」
「ちなみ、アンタもやる?」
「……やる」
ちなみは嬉しそうに豆を受け取ると、楽しそうに俺目がけ豆を投げつけた。
「いてててて! 畜生、そうは見えないのに何気に豆痛え!」
「……うふふふふ、これ、楽しい」
このままここにいては豆に殺される。俺は校庭まで逃げることにした。
「あ、逃げた! みんな、手伝って!」
かなみの声に、「おう」とか「任せろ」とか「私もやりたかったんだー」とか、そんな声が背中から聞こえてくる。
畜生、なんでウチのクラスこういう時だけ団結力がありやがるんだ!
上履きのまま校庭に出る。校庭にいる生徒たちが、俺の顔を見て驚いてる。失礼な。
……いや、違う。俺じゃない、俺の背後を見て驚いてる。
恐る恐る肩越しに背後を見る。ウチのクラス総出で俺を追いかけていた。
「な、なんで全員が!?」
「日頃の行いの成果ね! あーっはっはっはっは!」
かなみは嬉しそうに哄笑した。
「ふふふふふ……タカシ! 積年の恨み、ここで晴らせてもらう!」
「恨み持たれる覚えなんてねーよ!」
みことの投げる豆弾をどうにか避ける。……ありえねー、地面に穴開いてる。
「ふふっ、愉快よのぉ♪」
どこから先回りしたのか、満面の笑みでまつりが眼前の木の後ろから現れ、至近距離で豆を俺に投げつけた。
「秘技! 今時マトリックス!」
説明しよう! 今時マトリックスとは、今時マトリックスの例の変なポーズをして弾丸をさけることである!
「いてててて! 超痛え!」
今時マトリックスは豆を避けることは出来ないだけでなく、腰に致命的なダメージを与えた。
「あははははっ、やっぱりタカシって馬鹿だねー。ボクもいくよーッ!」
梓の投げるひょろひょろ豆を受け取り、反対に投げ返す。
「ふぎゃっ! ……ううううう、なんでボクだけ当たらないんだよー!」
「そんなへろへろ豆、当たる方がどうかしてるさな。わはははひぎゃ!」
腰に手を当て笑ってると、四方八方から豆の集中砲火を受けた。
「なーに笑ってるのよ。ほらほら、逃げないと死ぬわよ?」
「うぐぐぐぐ……奥義、セクハラ離脱!」
説明しよう! セクハラ離脱とは、女生徒のスカートをめくり、それに人々が気を取られている隙に包囲から脱出することである!
結果は大成功。女生徒二人の悲鳴と、見事なしまぱんを網膜に残し、俺はその場から逃げた。すまない、見知らぬ女生徒よ。
「た、タカシーッ! 絶対許さないわよーッ!」
鬼気迫る声が聞こえたけど、聞こえないフリ。振り返ると、たぶん失禁する。
今年一番の頑張りを使い、どうにか校庭裏の窓から校舎に逃げ込む。
「はぁ、やれやれ……ん?」
「…………」
小さな先輩が洋式便座の上に座り、顔を真っ赤にして俺を見ていた。よく見ると、スカートからパンツが覗いていた。
「や、先輩。……その、なんというか、……パンツにプリントされてる熊、かわいいね」
「……! ……!」
先輩は半狂乱で俺にトイレットペーパーを投げた。
「ごごごめん先輩! この侘びはいずれまた!」
ほうほうの体で便所から逃げ出す。……うう、女子便所の窓だったとは。
「あーっ! アンタ、どっから出てきてんのよ!」
便所から出てくるところをかなみに見つかった。
「女子便所」
素直に答えると、いつになく鋭い勢いで豆が飛んできた。
「アンタ……アンタ、ぜーったいに殺す!」
「まま待って! 先輩のパンツを見たのは不可抗力でして!」
「こ……この、犯罪者がーッ!」
鬼はどっちだ、と言いたい程かなみの顔が憤怒に染まる。
本気で身の危険を感じたので、必死に走ってかなみを振り切り屋上へ。
「あ、タカシや」
「ニイハオ、タカシ。何やってるアル?」
「うぐ、いずみにメイシン……」
屋上には、手すりにもたれ掛かったいずみとメイシンがいた。
「お、お前らも俺を?」
「なんかあったん? ウチら、昼休みはずっとここにおったから知らんねんけど」
「そうアル。ワタシたち、ここでご飯食べてたネ」
しかし、そう言われても素直に信じることは出来ない。
「悪いが、調べさせてもらう」
「え、ちょ、ちょっと」
「な、何するカ?」
いずみとメイシンの体をまさぐり、豆がないか調べる。
「ちょ、ちょっと、こんなお天道様が出てるうちからやなんて……ウチ、ウチ」
「た、タカシ……そんなことされたら、ワタシ、あぅぅ……」
ふむ……どうやら豆はないようだ。勘違いを詫びるため顔を上げると、熱っぽく潤むいずみとメイシンの瞳が。
「ふ、二人とも、どしたの?」
「はぁはぁ……た、タカシ……ウチ、ウチな」
「た、タカシ……ワタシ、ワタシは……」
「ここかーっ、タカシーッ!」
叫び声と同時に扉が大きな音を立てて開いた。そこに、かなみがいた。
「や、やぁ、かなみ。ご機嫌いかが?」
「な……あ、あ、アンタ、何やってんの!?」
何をやってるか、と言われても。ただいずみとメイシン、二人と抱き合って
「って、何ぃぃぃぃ!? ち、違う、誤解だ!」
「何が誤解よ! 何をどう見ても乳繰り合ってるようにしか見えないじゃない! し、しかも二人同時だなんて……不潔よ!」
「乳繰り合ってるとは……また凄い言葉が出てきたなぁ」
「誤魔化すなぁ!」
かなみと話してる間に、続々とクラスメイトが屋上にやってきた。
「……むっ。……タカシ、変態行為してる」
「ふっ、不潔なッ! ええい、今日こそ成敗してくれる!」
「まったく、こんな楽しそうなことになんで儂を呼ばんのじゃ!? 許さん、手打ちの刑じゃ!」
「…………」
「綺麗なお姉さんをはずかしめた罰を、って先輩が言ってるよ。ボクも助太刀したい気分だよ!」
みんな勝手なこと言ってやがる。一つだけ共通してるのは、どうやら俺は今日死ぬらしい。
「は、ははは……いずみ、メイシン、助けて」
「なんや分からんけど、タカシが悪いみたいやな」
「そうアルね。たまには懲らしめられるべきアル」
望みは絶たれた。……否、切り札がまだある!
「……家主のピンチだ。こういう時くらい役に立て、無駄飯食らいの幽霊ッ!」
一か八か、空に向かって叫ぶ。刹那、何もない空間から煙とともに幽霊が現れた。
「無駄飯ぐらいじゃないわよッ! たまに掃除とか手伝ってるじゃない!」
「頬に飯粒ついてる」
「ご、ご飯食べてる最中に呼ばれたんだから仕方ないじゃない! そ、それでピンチって?」
「俺を除き、この場にいる連中全員呪え」
「ああ、そういうの無理。ごめーんね。んじゃ、ご飯食べてくるー」
何の役にも立たず、幽霊は消えた。
「……心底使えねー! 畜生、あの無駄飯食らい!」
「……呪えとか、面白いこと言うわねー、タカシ?」
じりじりと、笑顔の奥に怒気を秘めたかなみたちが寄ってきた。
「は、ははは、……冗談だよ?」
クラスメイト総出で豆をぶつけられた。豆で臨死体験できるとは思いもしなかった。
臨死体験の後、十八番の土下座で許しを請って皆に許してもらった。
その後、ぼんやり過ごしてると放課後になってお家へダッシュ。
「ただいまー」
「あら、お帰りなさいまし」「ん、おかーりー」
なんか、俺の部屋なのにリナっぽい女生徒と藪坂っぽい女生徒がいる。
「……いかん、俺の病状が幻覚までレベルアップした」
「幻覚って失礼ですわね。本物ですわよ」
「……レベルアップって何だよ」
藪坂がせんべいを食いながら馬鹿にしたように……って
「おまえ、なに俺のせんべい食ってんだよ! 返せ!」
「せんべいうめー。ばりばりばり」
手を伸ばすが時すでに遅く、藪坂は一気に俺の、俺のせんべいを!
「う、ううううう……クラス中から寄ってたかっていじめられ、果ては楽しみにしていたせんべいまでも……!」
「や、藪坂さん、タカシ泣いてますわよ?」
「う……せ、せんべいくらいで泣くなよ。男だろ?」
「ううっ……こうなっては、藪坂の手に残るせんべいの欠片だけでも!」
藪坂に襲い掛かり、手を舐めまくる。
「なっ、何しやがるテメェ!」
「べろべろべろべろ! うーん、せんべいの味しない。強いて言うなら、藪坂味?」
「きゃああああ! た、タカシが藪坂さんを手篭めに!」
藪坂は俺の頭をぽこぽこ殴るし、リナはでっかい声でとんでもないこと叫ぶし、たーいへん。
「……落ち着いたか?」
「はい、すいませんでした」
顔を腫らしながら藪坂に頭を下げる。二人がかりで殴られ、とても痛かったです。
「ええとな、オレらが別府ん家来たのは」
「わたくし達も豆まきをしたかったんですわ」
それなら二人で勝手にやってくれよ、と言いたかったけど言わない。もう殴られるの嫌だし。
「やっぱ鬼役は別府で決まりだろ? 豆投げやすいし」
決まってません。勝手に俺に鬼の面をつけないでください。
「まぁ……とっても似合ってますわ。まるで鬼の面をつけるために生まれてきたかのよう」
褒められても嬉しくない。ていうか、微妙に馬鹿にされてるような。
「んじゃ、豆まき開始ー!」
「いや、あの」
「えいえいっ、ですわっ」
文句を言う暇もなく、リナが俺めがけ豆を投げつけた。
しかし、そこはクラスメイト全員から豆を投げられたという経験を持つ俺。この程度の豆、痛くも痒くもない。
「あら……なんだか平気って感じですわね。やはり、これを使わないとダメのようですわね」
リナは、さっきから気になっていたどでかい袋から、何か禍々しい機械を取り出した。
「な、なんですか、それ?」
「鬼殲滅用機関銃、らしいですわ。詳しいことは知りませんが、とっても素敵ですわよね?」
「あっ、いいなそれ。オレにも貸して」
「いいですわよ、もう一つありますから」
よく分からんが、また死ぬのは嫌なので藪坂が機械をいじくってる間に窓から脱出。
「逃がさないぜっ!」
藪坂の叫びと同時に、怪しい機械から豆がとんでもない勢いで飛び出した。
「いででででででッ! こんなの豆まきじゃねえ!」
窓から庭に立ってる木に飛び移り、リナたちから距離を取る。体に穴開くかと思った。
「うふふふふっ、そんなところにいたらダメですわよ。……すぐ終わってしまいますわ」
リナはどこか恍惚とした表情で機械のトリガーを引き絞った。素早く手を離し、木から飛び降りる。
「りっ、リナ! その機械禁止! 見ろ、木の枝吹き飛んだぞ!?」
「うふふふっ、タカシも吹き飛びたくなかったら逃げた方がいいですわよ?」
リナの目にハンターの炎が灯る。さぁ、逃げろ。
「なっ、なんで俺ばっかこんな目に……!」
泣きながら裸足で街を駆ける俺を、通行人が奇異の目で見ていた。
「うふふふ……楽しいわ、楽しいですわ、タカシ!」
「あははははっ! 逃げろ逃げろ、別府ーッ!」
狩猟者の声が背後から聞こえてきたので、俺は涙を撒き散らしながら逃げた。
すぐ捕まった。トラウマがまた増えた。豆が怖い。
「いやでも、今日は節分ですし……」
腫れた顔をさすりながらどうにか言い訳するも、
「だからって廊下歩いてる人にぶつけんなッ!」
かなみは飛沫を飛ばしながら俺を怒鳴るのだった。
「そう怒るな。ほら、お前もやったらいかに楽しいか分かるだろう。なくなったら、そこに置いといた豆使っていいから」
教室の隅を占拠している豆袋を指しつつ、かなみに豆を持たせる。すると、かなみの口角が吊り上がっていくではないか。
しまった。鬼に金棒、かなみに豆だ。殺される。
「……そうね。鬼は外と言うし、馬鹿も外でいいわよね」
「いやいやいや! 馬鹿も人権を保持している感じが痛い痛い痛い!」
かなみはこの上なく嬉しそうに俺に豆をぶつけた。
「あーっはっはっはっは! こりゃ楽しいわ!」
「……あ、またタカシがいじめられてる」
ちなみが俺を指差し酷いこと言った。
「いじめられてねぇ! 倒錯した愛の形だ!」
「ちなみ、アンタもやる?」
「……やる」
ちなみは嬉しそうに豆を受け取ると、楽しそうに俺目がけ豆を投げつけた。
「いてててて! 畜生、そうは見えないのに何気に豆痛え!」
「……うふふふふ、これ、楽しい」
このままここにいては豆に殺される。俺は校庭まで逃げることにした。
「あ、逃げた! みんな、手伝って!」
かなみの声に、「おう」とか「任せろ」とか「私もやりたかったんだー」とか、そんな声が背中から聞こえてくる。
畜生、なんでウチのクラスこういう時だけ団結力がありやがるんだ!
上履きのまま校庭に出る。校庭にいる生徒たちが、俺の顔を見て驚いてる。失礼な。
……いや、違う。俺じゃない、俺の背後を見て驚いてる。
恐る恐る肩越しに背後を見る。ウチのクラス総出で俺を追いかけていた。
「な、なんで全員が!?」
「日頃の行いの成果ね! あーっはっはっはっは!」
かなみは嬉しそうに哄笑した。
「ふふふふふ……タカシ! 積年の恨み、ここで晴らせてもらう!」
「恨み持たれる覚えなんてねーよ!」
みことの投げる豆弾をどうにか避ける。……ありえねー、地面に穴開いてる。
「ふふっ、愉快よのぉ♪」
どこから先回りしたのか、満面の笑みでまつりが眼前の木の後ろから現れ、至近距離で豆を俺に投げつけた。
「秘技! 今時マトリックス!」
説明しよう! 今時マトリックスとは、今時マトリックスの例の変なポーズをして弾丸をさけることである!
「いてててて! 超痛え!」
今時マトリックスは豆を避けることは出来ないだけでなく、腰に致命的なダメージを与えた。
「あははははっ、やっぱりタカシって馬鹿だねー。ボクもいくよーッ!」
梓の投げるひょろひょろ豆を受け取り、反対に投げ返す。
「ふぎゃっ! ……ううううう、なんでボクだけ当たらないんだよー!」
「そんなへろへろ豆、当たる方がどうかしてるさな。わはははひぎゃ!」
腰に手を当て笑ってると、四方八方から豆の集中砲火を受けた。
「なーに笑ってるのよ。ほらほら、逃げないと死ぬわよ?」
「うぐぐぐぐ……奥義、セクハラ離脱!」
説明しよう! セクハラ離脱とは、女生徒のスカートをめくり、それに人々が気を取られている隙に包囲から脱出することである!
結果は大成功。女生徒二人の悲鳴と、見事なしまぱんを網膜に残し、俺はその場から逃げた。すまない、見知らぬ女生徒よ。
「た、タカシーッ! 絶対許さないわよーッ!」
鬼気迫る声が聞こえたけど、聞こえないフリ。振り返ると、たぶん失禁する。
今年一番の頑張りを使い、どうにか校庭裏の窓から校舎に逃げ込む。
「はぁ、やれやれ……ん?」
「…………」
小さな先輩が洋式便座の上に座り、顔を真っ赤にして俺を見ていた。よく見ると、スカートからパンツが覗いていた。
「や、先輩。……その、なんというか、……パンツにプリントされてる熊、かわいいね」
「……! ……!」
先輩は半狂乱で俺にトイレットペーパーを投げた。
「ごごごめん先輩! この侘びはいずれまた!」
ほうほうの体で便所から逃げ出す。……うう、女子便所の窓だったとは。
「あーっ! アンタ、どっから出てきてんのよ!」
便所から出てくるところをかなみに見つかった。
「女子便所」
素直に答えると、いつになく鋭い勢いで豆が飛んできた。
「アンタ……アンタ、ぜーったいに殺す!」
「まま待って! 先輩のパンツを見たのは不可抗力でして!」
「こ……この、犯罪者がーッ!」
鬼はどっちだ、と言いたい程かなみの顔が憤怒に染まる。
本気で身の危険を感じたので、必死に走ってかなみを振り切り屋上へ。
「あ、タカシや」
「ニイハオ、タカシ。何やってるアル?」
「うぐ、いずみにメイシン……」
屋上には、手すりにもたれ掛かったいずみとメイシンがいた。
「お、お前らも俺を?」
「なんかあったん? ウチら、昼休みはずっとここにおったから知らんねんけど」
「そうアル。ワタシたち、ここでご飯食べてたネ」
しかし、そう言われても素直に信じることは出来ない。
「悪いが、調べさせてもらう」
「え、ちょ、ちょっと」
「な、何するカ?」
いずみとメイシンの体をまさぐり、豆がないか調べる。
「ちょ、ちょっと、こんなお天道様が出てるうちからやなんて……ウチ、ウチ」
「た、タカシ……そんなことされたら、ワタシ、あぅぅ……」
ふむ……どうやら豆はないようだ。勘違いを詫びるため顔を上げると、熱っぽく潤むいずみとメイシンの瞳が。
「ふ、二人とも、どしたの?」
「はぁはぁ……た、タカシ……ウチ、ウチな」
「た、タカシ……ワタシ、ワタシは……」
「ここかーっ、タカシーッ!」
叫び声と同時に扉が大きな音を立てて開いた。そこに、かなみがいた。
「や、やぁ、かなみ。ご機嫌いかが?」
「な……あ、あ、アンタ、何やってんの!?」
何をやってるか、と言われても。ただいずみとメイシン、二人と抱き合って
「って、何ぃぃぃぃ!? ち、違う、誤解だ!」
「何が誤解よ! 何をどう見ても乳繰り合ってるようにしか見えないじゃない! し、しかも二人同時だなんて……不潔よ!」
「乳繰り合ってるとは……また凄い言葉が出てきたなぁ」
「誤魔化すなぁ!」
かなみと話してる間に、続々とクラスメイトが屋上にやってきた。
「……むっ。……タカシ、変態行為してる」
「ふっ、不潔なッ! ええい、今日こそ成敗してくれる!」
「まったく、こんな楽しそうなことになんで儂を呼ばんのじゃ!? 許さん、手打ちの刑じゃ!」
「…………」
「綺麗なお姉さんをはずかしめた罰を、って先輩が言ってるよ。ボクも助太刀したい気分だよ!」
みんな勝手なこと言ってやがる。一つだけ共通してるのは、どうやら俺は今日死ぬらしい。
「は、ははは……いずみ、メイシン、助けて」
「なんや分からんけど、タカシが悪いみたいやな」
「そうアルね。たまには懲らしめられるべきアル」
望みは絶たれた。……否、切り札がまだある!
「……家主のピンチだ。こういう時くらい役に立て、無駄飯食らいの幽霊ッ!」
一か八か、空に向かって叫ぶ。刹那、何もない空間から煙とともに幽霊が現れた。
「無駄飯ぐらいじゃないわよッ! たまに掃除とか手伝ってるじゃない!」
「頬に飯粒ついてる」
「ご、ご飯食べてる最中に呼ばれたんだから仕方ないじゃない! そ、それでピンチって?」
「俺を除き、この場にいる連中全員呪え」
「ああ、そういうの無理。ごめーんね。んじゃ、ご飯食べてくるー」
何の役にも立たず、幽霊は消えた。
「……心底使えねー! 畜生、あの無駄飯食らい!」
「……呪えとか、面白いこと言うわねー、タカシ?」
じりじりと、笑顔の奥に怒気を秘めたかなみたちが寄ってきた。
「は、ははは、……冗談だよ?」
クラスメイト総出で豆をぶつけられた。豆で臨死体験できるとは思いもしなかった。
臨死体験の後、十八番の土下座で許しを請って皆に許してもらった。
その後、ぼんやり過ごしてると放課後になってお家へダッシュ。
「ただいまー」
「あら、お帰りなさいまし」「ん、おかーりー」
なんか、俺の部屋なのにリナっぽい女生徒と藪坂っぽい女生徒がいる。
「……いかん、俺の病状が幻覚までレベルアップした」
「幻覚って失礼ですわね。本物ですわよ」
「……レベルアップって何だよ」
藪坂がせんべいを食いながら馬鹿にしたように……って
「おまえ、なに俺のせんべい食ってんだよ! 返せ!」
「せんべいうめー。ばりばりばり」
手を伸ばすが時すでに遅く、藪坂は一気に俺の、俺のせんべいを!
「う、ううううう……クラス中から寄ってたかっていじめられ、果ては楽しみにしていたせんべいまでも……!」
「や、藪坂さん、タカシ泣いてますわよ?」
「う……せ、せんべいくらいで泣くなよ。男だろ?」
「ううっ……こうなっては、藪坂の手に残るせんべいの欠片だけでも!」
藪坂に襲い掛かり、手を舐めまくる。
「なっ、何しやがるテメェ!」
「べろべろべろべろ! うーん、せんべいの味しない。強いて言うなら、藪坂味?」
「きゃああああ! た、タカシが藪坂さんを手篭めに!」
藪坂は俺の頭をぽこぽこ殴るし、リナはでっかい声でとんでもないこと叫ぶし、たーいへん。
「……落ち着いたか?」
「はい、すいませんでした」
顔を腫らしながら藪坂に頭を下げる。二人がかりで殴られ、とても痛かったです。
「ええとな、オレらが別府ん家来たのは」
「わたくし達も豆まきをしたかったんですわ」
それなら二人で勝手にやってくれよ、と言いたかったけど言わない。もう殴られるの嫌だし。
「やっぱ鬼役は別府で決まりだろ? 豆投げやすいし」
決まってません。勝手に俺に鬼の面をつけないでください。
「まぁ……とっても似合ってますわ。まるで鬼の面をつけるために生まれてきたかのよう」
褒められても嬉しくない。ていうか、微妙に馬鹿にされてるような。
「んじゃ、豆まき開始ー!」
「いや、あの」
「えいえいっ、ですわっ」
文句を言う暇もなく、リナが俺めがけ豆を投げつけた。
しかし、そこはクラスメイト全員から豆を投げられたという経験を持つ俺。この程度の豆、痛くも痒くもない。
「あら……なんだか平気って感じですわね。やはり、これを使わないとダメのようですわね」
リナは、さっきから気になっていたどでかい袋から、何か禍々しい機械を取り出した。
「な、なんですか、それ?」
「鬼殲滅用機関銃、らしいですわ。詳しいことは知りませんが、とっても素敵ですわよね?」
「あっ、いいなそれ。オレにも貸して」
「いいですわよ、もう一つありますから」
よく分からんが、また死ぬのは嫌なので藪坂が機械をいじくってる間に窓から脱出。
「逃がさないぜっ!」
藪坂の叫びと同時に、怪しい機械から豆がとんでもない勢いで飛び出した。
「いででででででッ! こんなの豆まきじゃねえ!」
窓から庭に立ってる木に飛び移り、リナたちから距離を取る。体に穴開くかと思った。
「うふふふふっ、そんなところにいたらダメですわよ。……すぐ終わってしまいますわ」
リナはどこか恍惚とした表情で機械のトリガーを引き絞った。素早く手を離し、木から飛び降りる。
「りっ、リナ! その機械禁止! 見ろ、木の枝吹き飛んだぞ!?」
「うふふふっ、タカシも吹き飛びたくなかったら逃げた方がいいですわよ?」
リナの目にハンターの炎が灯る。さぁ、逃げろ。
「なっ、なんで俺ばっかこんな目に……!」
泣きながら裸足で街を駆ける俺を、通行人が奇異の目で見ていた。
「うふふふ……楽しいわ、楽しいですわ、タカシ!」
「あははははっ! 逃げろ逃げろ、別府ーッ!」
狩猟者の声が背後から聞こえてきたので、俺は涙を撒き散らしながら逃げた。
すぐ捕まった。トラウマがまた増えた。豆が怖い。
【ツンデレがお見舞いに来てくれたら】
2010年04月19日
風邪ひいた。鼻は詰まるはノドは痛いは熱は出るはこの世の地獄を一人味わってます。
んなわけで布団に包まってゲホゴホ言ってると、インターホンが鳴った。受話器を取る。
「うー……はいはい、なんでしょう」
「あ、タカシ? ボク、ボクだよ」
黙って受話器を置く。瞬間、インターホンの音が連続で鳴り響いた。
「はい」
「なんで黙って切るんだよ! ボクだよ、梓だよ!」
「や、なんとなく。んで、なんか用か? 風邪ひいてしんどいので、用は手短に頼む」
「あ、それなんだけど、とりあえず家に入っていい?」
「んー……まぁ許す。鍵はしてないので勝手に入るがいい」
「なんでそんな偉そうなのかなぁ……」
程なく、ボクっ娘が制服のまま我が家に侵入してきた。
「こんちは、タカシ」
「お帰りはあちらです」
「なんでだよ! 来たばっかりだよ!」
「あーもう、あんまでかい声出すな。頭に響いて痛い」
「あっ、そうだね、タカシ病人だもんね。ほらほら、ふらふら歩いてないで布団に入ってないと」
誰のせいでふらふらしてんだと言いたいが、いい加減体もだるいので大人しく誘導されるがまま布団に入る。
「んで、何用だ? ……まさか、調子の悪い時を狙って普段の鬱憤を晴らそうと」
「違うよ! タカシ、今日学校休んだでしょ? お見舞いに来たんだよ」
そう言って、梓は持ってきた袋から何か取り出した。
「もーもーかーんー♪(青いサイバーなロボネコ風に)」
「超似てねえ」
「うぐっ……か、風邪引いてる時はやっぱりこれだよね♪ いまお皿に出すから、ちょっと待っててね」
そう言い残して、梓は台所に向かった。
「もーもかん~、もーもかん~♪ かーぜの時は~、桃!」
微妙に音がずれてる変な歌が聞こえてくる。病状が悪化しそうだ。
「はーい、桃だよ。食べて食べて」
梓が嬉しそうに桃を入れた皿を持って戻ってきた。
「変な歌が聞こえてきて病状が悪化し、風邪が肺炎にパワーアップした。たぶん数日後に死ぬ」
「死なないよッ! 変な歌じゃないし! いーから食べる」
「うー……食欲ねえんだよ」
「何か食べないとよくならないよ? ほら、一口だけでもいいから食べて。はい、あーん」
「んー……梓が口移ししてくれるなら食う」
「なっ、なに言ってるんだよ、ばかっ! そんなことできるわけないじゃん!」
「じゃあ、このまま枯れ死ぬこととしよう」
「うっ、う~う~……う~、う~!」
「うーうーうるさい。消防車か」
「うう……く、口移ししたら、食べるんだよね?」
「うむ」
別に口移しでなくとも食べれるんだけど、即答する。
「じゃ……じゃあ、したげるよ。い、言っとくけどね、本当はヤなんだからねッ!?」
「もぐもぐ」
「人が口移ししたげるって言ってるのに一人で食べてる!? もぐもぐって!」
「冗談に決まってるだろ、ばーか」
「ううっ……タカシに馬鹿って言われると、どこまでも落ち込んで行くよ」
失礼な奴だもぐもぐ。
「うーん……味しないな。梓、醤油取って」
「取らないよッ! 桃に醤油かけるなんて聞いたことないよ!」
「なんか、味しないんだ。ソースでもいいから取って」
「風邪ひいてるからだよ。食べたらぐっすり寝て、早く元気になってよね? タカシが学校来ないと、なんだかつまんないよ」
「じゃあ今から学校行こう。梓、そこの制服取って」
「もう今日は学校終わったから意味ないよッ! ……はぁ、タカシって病気の時でも変なこと言ってるんだね。……いつも熱にうなされてるのかな?」
梓は真剣な顔をして失礼なことを考えていた。
「ま、とにかく見舞いありがとな。今から寝るし、帰ってもいいぞ」
「そうはいかないよ! タカシ、放ってたら野垂れ死にそうだもん。一度家に帰ってお泊りの準備してきたし、今日は泊まっていくよ」
「え」
梓は鞄を開き、パジャマやら歯磨きやら取り出した。
「明日は休みだし、いいよね? ボク、一所懸命タカシのお世話するよ!」
「や、その、……俺、男だよ?」
「? 知ってるよ?」
このお嬢さんは危なすぎる。俺を男と知ってて泊まるとは……。釘を刺したほうがいいな。
「梓、おまえだって一応女の子なんだから、ふらふら男の家に泊まるのはよくないぞ。お兄さん、おまえが変な奴に騙されないか不安で不安で」
「? 他の男の人の家に泊まるわけないじゃん。タカシの家だから泊まるんだよ?」
「……じゃ、じゃあ大丈夫……かな。うん」
ええい、あっけらかんと恥ずかしいこと言いおって。くそ。
「おばさん達、今日明日と出張って聞いたし……あっ! タカシ、熱上がってるよ! 顔真っ赤だよ! 体温計たいおんけい……」
「あ、いや、これは別に熱とかそんなじゃなくて」
俺の話なんか聞いちゃいないのか、梓は体温計を探しに部屋から出て行った。
うう……くそ、梓みたいなつるぺた娘を意識してしまうとは……不覚。
いや、違う違う違う! 意識なんかしてない、これは熱のせいだ。きっとそうだ。そうに違いない。
「あったよー、タカシ!」
だから、満面の笑みを浮かべて部屋に飛び込んできた梓を見て、動悸が激しくなったのも熱のせいだ。
んなわけで布団に包まってゲホゴホ言ってると、インターホンが鳴った。受話器を取る。
「うー……はいはい、なんでしょう」
「あ、タカシ? ボク、ボクだよ」
黙って受話器を置く。瞬間、インターホンの音が連続で鳴り響いた。
「はい」
「なんで黙って切るんだよ! ボクだよ、梓だよ!」
「や、なんとなく。んで、なんか用か? 風邪ひいてしんどいので、用は手短に頼む」
「あ、それなんだけど、とりあえず家に入っていい?」
「んー……まぁ許す。鍵はしてないので勝手に入るがいい」
「なんでそんな偉そうなのかなぁ……」
程なく、ボクっ娘が制服のまま我が家に侵入してきた。
「こんちは、タカシ」
「お帰りはあちらです」
「なんでだよ! 来たばっかりだよ!」
「あーもう、あんまでかい声出すな。頭に響いて痛い」
「あっ、そうだね、タカシ病人だもんね。ほらほら、ふらふら歩いてないで布団に入ってないと」
誰のせいでふらふらしてんだと言いたいが、いい加減体もだるいので大人しく誘導されるがまま布団に入る。
「んで、何用だ? ……まさか、調子の悪い時を狙って普段の鬱憤を晴らそうと」
「違うよ! タカシ、今日学校休んだでしょ? お見舞いに来たんだよ」
そう言って、梓は持ってきた袋から何か取り出した。
「もーもーかーんー♪(青いサイバーなロボネコ風に)」
「超似てねえ」
「うぐっ……か、風邪引いてる時はやっぱりこれだよね♪ いまお皿に出すから、ちょっと待っててね」
そう言い残して、梓は台所に向かった。
「もーもかん~、もーもかん~♪ かーぜの時は~、桃!」
微妙に音がずれてる変な歌が聞こえてくる。病状が悪化しそうだ。
「はーい、桃だよ。食べて食べて」
梓が嬉しそうに桃を入れた皿を持って戻ってきた。
「変な歌が聞こえてきて病状が悪化し、風邪が肺炎にパワーアップした。たぶん数日後に死ぬ」
「死なないよッ! 変な歌じゃないし! いーから食べる」
「うー……食欲ねえんだよ」
「何か食べないとよくならないよ? ほら、一口だけでもいいから食べて。はい、あーん」
「んー……梓が口移ししてくれるなら食う」
「なっ、なに言ってるんだよ、ばかっ! そんなことできるわけないじゃん!」
「じゃあ、このまま枯れ死ぬこととしよう」
「うっ、う~う~……う~、う~!」
「うーうーうるさい。消防車か」
「うう……く、口移ししたら、食べるんだよね?」
「うむ」
別に口移しでなくとも食べれるんだけど、即答する。
「じゃ……じゃあ、したげるよ。い、言っとくけどね、本当はヤなんだからねッ!?」
「もぐもぐ」
「人が口移ししたげるって言ってるのに一人で食べてる!? もぐもぐって!」
「冗談に決まってるだろ、ばーか」
「ううっ……タカシに馬鹿って言われると、どこまでも落ち込んで行くよ」
失礼な奴だもぐもぐ。
「うーん……味しないな。梓、醤油取って」
「取らないよッ! 桃に醤油かけるなんて聞いたことないよ!」
「なんか、味しないんだ。ソースでもいいから取って」
「風邪ひいてるからだよ。食べたらぐっすり寝て、早く元気になってよね? タカシが学校来ないと、なんだかつまんないよ」
「じゃあ今から学校行こう。梓、そこの制服取って」
「もう今日は学校終わったから意味ないよッ! ……はぁ、タカシって病気の時でも変なこと言ってるんだね。……いつも熱にうなされてるのかな?」
梓は真剣な顔をして失礼なことを考えていた。
「ま、とにかく見舞いありがとな。今から寝るし、帰ってもいいぞ」
「そうはいかないよ! タカシ、放ってたら野垂れ死にそうだもん。一度家に帰ってお泊りの準備してきたし、今日は泊まっていくよ」
「え」
梓は鞄を開き、パジャマやら歯磨きやら取り出した。
「明日は休みだし、いいよね? ボク、一所懸命タカシのお世話するよ!」
「や、その、……俺、男だよ?」
「? 知ってるよ?」
このお嬢さんは危なすぎる。俺を男と知ってて泊まるとは……。釘を刺したほうがいいな。
「梓、おまえだって一応女の子なんだから、ふらふら男の家に泊まるのはよくないぞ。お兄さん、おまえが変な奴に騙されないか不安で不安で」
「? 他の男の人の家に泊まるわけないじゃん。タカシの家だから泊まるんだよ?」
「……じゃ、じゃあ大丈夫……かな。うん」
ええい、あっけらかんと恥ずかしいこと言いおって。くそ。
「おばさん達、今日明日と出張って聞いたし……あっ! タカシ、熱上がってるよ! 顔真っ赤だよ! 体温計たいおんけい……」
「あ、いや、これは別に熱とかそんなじゃなくて」
俺の話なんか聞いちゃいないのか、梓は体温計を探しに部屋から出て行った。
うう……くそ、梓みたいなつるぺた娘を意識してしまうとは……不覚。
いや、違う違う違う! 意識なんかしてない、これは熱のせいだ。きっとそうだ。そうに違いない。
「あったよー、タカシ!」
だから、満面の笑みを浮かべて部屋に飛び込んできた梓を見て、動悸が激しくなったのも熱のせいだ。


