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2026年03月23日
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【桃と相合傘したら】

2010年01月22日
 放課後、さあ帰ろうと思ったら、突然とんでもない勢いで雨が降ってきた。傘は持ってきてない。
 もうこうなったら教室に骨を埋めるしかないと悲壮な覚悟を決めていたら、ちょんちょんと背中をつつかれた。
「ん? おお」
「どないしたん、アキちゃん。帰らへんの?」
 振り返ると、俺の胸くらいの高さからこちらを見上げるちっこい少女が、関西弁を駆使しつつ小首をかしげていた。
「雨に濡れると力が出ないから、雨が止むのを待ってるんだ」
「いつアンパンマンになったん?」
「朝食にアンパンを食べた時に」
「ほなウチもアンパンマンやな。いや、女やからアンパンウーマンか。あはは」
「パイパンマン?」
「いっ、いらんこと言わんでええねん、あほー!」
 少女が真っ赤な顔で僕の頬を全力で引っ張ります。この反応……まさかっ!? ……いや、言うまい。
「冗談はともかく、雨がやむのを待ってるのですよ、傘なしの身としては」
「……こんなん、あるねんけどな?」
 そう言って、目の前の少女は鞄から小さな折りたたみ傘を取り出した。
「なるほど、これを傘なしの亡者たちに見せ付け、奪い合わせる様を眺めようというのだな? 悪趣味だな」
「なんでやねん! 一緒に帰ろ言うてんねん!」
「分かってたけど、その言葉を言わせたかっただけなんです」
「う……も、もー。……あ、あんね、アキちゃん。ウチと一緒に帰ろ?」
 顔を赤らめ、もじもじと俺にぎこちなく笑いかける少女に、俺は最初から抱いていた疑問をぶつけることにした。
「ところで、誰だっけ」
「ずこー!」
「すげぇ、昭和コケだ!」
「桃や、桃! 桃子! アキちゃんが居候してる家の娘や!」
「なんだ。道理で見覚えがあると思った」
 ちょっとした事情により、桃の家から通学している俺だった。忘れてた。
「脳が壊れてるん……?」
「本気で心配そうな顔をされると、切なくなるのでやめてください」
「あはは。ほな、帰ろ?」
「分かった。それはともかく喰らえ、必殺アイアンクロー!」
「みぎゃああ! なんで!?」

 アイアンクローの件を叱られた後、桃と一緒に帰宅する。
「まったくもー……意味もなくアイアンクローしたらアカンよ?」
「すいません。ところで、傘を借りてる身で文句を言うのもアレなんだが、その、ピンクの傘って……」
「かーいーやんな?」
「お前一人ならともかく、俺がこれを差すのはかなりの精神力が必要なのだが」
「そんなん言うても、しゃーないやん。傘はこれ一本しかないねんから」
「家を出るとき、ふたつ持ってきてくれたらよかったのに」
「何言うてんねん。そもそも、アキちゃんが悪いねんで? ウチは家出る前にちゃんと持ってき言うたのに、『雨なんて降らねーよ。降っても俺の力で雨雲を吹き飛ばしてくれる!』とか言うて持っていかへんかってんもん」
「自分で言うのもなんだが、朝の俺の発言は頭が悪すぎるな」
「いっつもそんなやで?」
 我ながらどうかと思う。もう少し色々頑張ろう。
「それはともかく。相合傘は嬉しいが、ショッキングピンクの傘を差す俺の図というのは、大変にショッキングだな」
「ショッキング言いたいだけやん。……でも、アレやな。相合傘やな」
 俺が持つ傘の柄の部分に、桃が手を重ねてくる。そして、にへらーっとしまりのない顔を見せた。
「あはー……な、なんや恋人同士みたいで照れるな?」
「事実は全く違うがな!」
「そ、そやけど、……そんな力いっぱい言わんでもええやん。……アキちゃんのあほー」
「照れてるんだ」
「真顔で言われても信じられへんもん。もーちょっとそれらしい表情してくれへんと」
「照れてるんだ」
「なんで満面の笑みなん!? 怖っ、アキちゃんの笑顔怖あっ!」
 大変傷ついた。
「あっ、嘘、嘘やでー? アキちゃんの笑顔怖く……ないことないけど、ウチは見捨てへんからな?」
 慰められたはずだが、ダメージの方がでかいのはどういうことだ。
「もういいから帰ろうぜ……」
「あっ、怒った? アキちゃん、怒った? ……ごめんなあ。ウチ、アキちゃん相手やと、ちょお言いすぎてまうねん」
「いーから帰るぞ」
 わしわしっと桃の頭を撫でて怒ってないことをアッピール。
「あうぅ……もー、髪ぐしゃぐしゃになるやん」
「文句を言うときは笑わずに言え」
「や、やって……うー、アキちゃんのあほー」
 阿呆呼ばわりされながら雨の街を歩く。傘に閉じ込められた世界にいるせいか、世界に俺と桃ふたりだけ、という馬鹿げた錯覚に陥りそうだ。
「……なんかな、世界に二人だけみたいやんな?」
「馬鹿がもう一人いた」
「な、なんやねん。しっつれーやなあ……」
「馬鹿筆頭が答えるに、俺も似たようなことを考えていたところだ」
「え……そ、そうなん。……一緒のこと、考えとってんな? ……えへ、アキちゃんと一緒かあ」
「顔にしまりがないですね!」
「や、やって、……しゃーないやん。一緒とか言われたら、顔ほにゃーってなってまうもん」
 ぬ。……く、くそぅ、そんなことを言って俺の顔のしまりすらなくす作戦か! チクショウ、負けるか!
「うにゅー! な、なんでウチのほっぺ引っ張るん!?」
「照れ隠しだ、気にするな」
「めっちゃ気にするっちゅーねん、あほー! ……ん? 照れ隠しっちゅうことは、アキちゃんも嬉しいん?」
「いいえ」
「……なんで向こう向いてるん?」
「首の筋が突然俺の制御を受け付けなくなったからだ」
「……なんで耳真っ赤なん?」
「毛細血管の野郎が耳に血液を集めたいと言うので、仕方なく耳に血液を送ったまでだ」
「……えへー。アキちゃん?」
「甘ったるい声が聞こえる。幻聴か」
「あはは。……あんな、あんな、……ウチもな、……えへ、アキちゃんと一緒でな、嬉しいねんで?」
 ちろりと桃の方へ視線を向けると、なんだかすごく幸せそうな笑顔があった。畜生、俺の負けだ。
「洋式と和式、どっちが好きだ?」
「うん? 何の話……ま、まさか、あ、あの、け、結婚式の? そ、そんなんまだ早い、早いって! せめて学校卒業してからでないと! でででもどーしても言うんやったら学生婚でもウチは」
 顔を真っ赤にして手をわたわたと振ってる桃は大変愛らしいが、そうではなくて。
「いや、便座の話」
「地獄突き!」
「ぐげっ」
「なんであーゆー話の流れやったのに便座の話になるん!? ほら、苦しんでるフリせんとウチの話聞き!」
 フリじゃないです。呼吸できないくらい苦しいんです。
「うー……あーあ、ほんまアキちゃんはアカンなあ。ムード台無しや。ムードクラッシャーや」
「げほっげほっ……いきなり地獄突きしてくる奴もかなりアレだと思うぞ」
「うっさい、あほー。ムードクラッシャーには罰や」
「罰?」
「せや。今日は帰ったらウチと一緒にご飯作ること。けっこー大変なんやで?」
「ほほう。一緒に料理とか、新婚さんのようで素敵ですね!」
「しっ、新婚さん!? は、はわ……」
「いや、サンコンさん。聞き間違えやすいから気をつけろよ、桃?」
「なんでサンコンさんが素敵やねん! ていうか絶対そんなん言うてなかった!」
 桃にみゃーみゃー言われながら一緒に帰りました。

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【ツンデレを手伝ったら】

2010年01月21日
 放課後、帰っても暇なので俺と同じように暇な人を探して校内をぷらぷらしてると、かなみと会った。
「こんにちは、ご機嫌いかが?」
「アンタと会ったおかげで最悪よ」
 げんなりした顔でかなみがつぶやくが、負けない。
「そいつは何より。ところで、暇なので俺に構え」
「こっちは準備で忙しいの! ったく、なんだってあたしがクリスマス会の準備なんてしないといけないのよ……」
「ふむ? なにやら面白げな匂いを感じ取ったぞ。なんですか、そのクリスマス会とは」
 どういうことか、かなみの顔が呆れたものへと変貌していく。
「……アンタ、やっぱ聞いてなかったのね。今日のHRで先生が言ってたじゃない、うちのクラスは終業式の後、みんなでクリスマス会するって」
「ふむ。町内会のイベント的な扱いの代物と見た。よしかなみ、俺もその準備とやらを手伝うぞ」
「いい。ていうか嫌」
 二秒で返答された。
「それで、まず何をすればいい?」
「嫌だって言ってるでしょうが! 聞こえなかったの!?」
「聞こえた上に泣きそうになったが、それをぐっと飲み込んで聞こえなかったフリをしたんだ」
「アンタは……まあ、どうしても手伝いたいってんなら手伝ってもいいわよ?」
「どうしても」
「あたしに忠誠を誓う?」
「誓う誓う。靴も舐めるし生クリームも舐めるしケーキも食べたい」
「途中で舐めたいものに変わってる! ……はぁ、まあいいわ。んじゃ、こっち来て」
「任せろ、得意だ」
「誰もあたしにぴたーっとくっつけとは言ってない! お尻を触るなッ!」
「どさくさに紛れたし、いけると思ったんだ」
 沢山殴られた後、かなみに連れられやってきたのは、俺たちの教室だった。
「おや、ここ?」
「そーよ。みんなー、人手確保したよー!」
 わー、という歓声が俺に向けられる。
「一発芸、餃子」
 場が静まった。超泣きそう。
「……なんで一発芸なんてしてるの?」
「視線が集まったので、何かしなければならないという脅迫概念に襲われた故に。しかし、失敗しました。饅頭の方がよかったのだろうか。ちなみにやり方は」
「いーからこっち来なさい!」
 饅頭のやり方をレクチャーしようとしたら、かなみに耳を引っ張られた。
「あはは……別府くんは愉快だね」
「別に俺は好きで愉快なわけではない」
 連れて来られた先で、クラスメイトの笹子が折り紙でわっかの飾りを作っていた。ますます町内会のイベント色が強くなってきた。
「こーやってね、色んな色の折り紙で飾りを作るの。簡単だけど、量が多いから大変なの」
「なるほど、つまり俺にその工程を自動化する機械を作れと言うのだな。笹子は無茶を言う。だが……よし、やってみよう!」
「言ってない! あーもー、アンタ放っておいたら何するか分からないから、あたしがアンタ見張る!」
 俺の鼻をぎゅーっと摘まみながら、かなみは俺と笹子の間の席に座った。それを見て、笹子がくすくす笑う。
「……な、何よ」
「ううん、何でもないよ。……大変だね、かなみちゃん」
 俺には何のことか分からない笹子の台詞だったが、かなみには何か思うところがあるのだろう、一気に顔が赤くなった。
「どうしたかなみ、顔が赤いぞ。大丈夫か? 保健室行くか? ……ていうか、何が大変なのだ?」
「う、うっさい! アンタは知らなくていいのよ!」
 何のことか分からずかなみに訊ねるが、鼻を再び摘ままれるだけに終わった。
「ふふ。じゃ、別府くん、わっか作ってくれる?」
「分かった。間違って鶴になるかもしれないけど、できるだけ頑張る」
「普通鶴になんてならない! わざと鶴にしたら殺すわよ」
 間違えると死ぬというとんでもない恐怖に怯えながら、せっせとわっかを作る。
「うーむ……飽きた」
「早ッ! まだ5分も経ってないじゃない。もうちょっと頑張りなさいよ」
「かなみがパンツ見せてくれたら頑張れる」
 見せてくれるどころか、顔面を握り締められるだけで終わった。痛いばかりで何も嬉しくない。
「ったく。このスケベ」
「ふふ。二人とも仲いいね」
「はぁ? 今のどこを見たらそう見えるの?」
 笹子の言葉に、かなみはちょっと不機嫌そうに答えた。
「だって、別府くんってああいうえっちなこと、私とか、他の子に言ってるとこ見たことないもん。かなみちゃんと仲がいいって証拠だよね」
「う……」
 かなみは居心地悪そうに机の下でスカートをぎゅっと握りながら、俺を睨んだ。
「いや、まあ、あの、なんちうか、アレですよ、相手を見て言葉を選んでると言うか、かなみ相手だと割と踏み込んだとこまでいけるというか、もういいや結婚しよう」
「途中で説明を諦めるなッ! ちゃんと最後まで説明しろッ!」
「あはははは!」

 しばらく没頭して作業してると、いつの間にやらいい時間になっていた。今日の準備はここで終了、ということで次々と教室から出て行く生徒たちを余所に、かなみは未だ教室に残り何か冊子を作っていた。
「何やってんだ? 帰るぞ」
「んー……もうちょっと。あとちょっとでキリのいいとこいくから」
「どーしたの、別府くん? 帰らないの?」
 他の友達と一緒に教室から出て行った笹子が、俺がいないことに気づき教室に戻ってきた。
「んー、と。ちょっと忘れ物」
「……ああ。ふふ、そっか。頑張ってね」
 ちらりとかなみの方を見て、笹子は意味ありげな笑みを浮かた。そして、ばいばいと手を振って教室から出て行った。
「ほら、アンタも帰りなさいよ」
「……その前に、忘れ物をちょっとな」
 言いながら、席に着いてかなみの作業を手伝う。
「何やってんのよ。忘れ物持って帰りなさいよ」
「んー、まあ、そうなんだが」
「……何よ、誰も手伝ってなんて言ってないでしょ」
「手伝うな、とも言ってないだろ」
「…………」
 ちょっとふてくされた様子だったが、かなみはそれ以上何も言わずに手を動かし続けた。

 数十分後、ようやく全作業が終わった。
「はふー。疲れた」
「……何よ、イヤミ?」
「ミーはおフランス帰りざんす」
「そっちじゃないっ! ……まあいいわ。……その、アンタがアレしてくれたから、早く終わった」
 かなみはそっぽを向きながらぽしょぽしょ呟いた。顔がほんのり朱に染まってる事は、指摘しない方が殴られずに済みそうだ。
「んむ。じゃ、帰りましょう」
「あっ、待って。アンタ、忘れ物は?」
「えー……と、あー、いや」
「…………。そっか。ふふっ、帰ろ?」
「あ、ああ」
 かなみと一緒に学校を出る。時刻は既に夕刻、すぐにでも日が落ちるだろう。
「アンタってさー……よく分かんないわよね」
「そう見えないかもしれないが、人間です」
「知ってるわよ! そうじゃなくて、……なんか、いい奴なんだか嫌な奴なんだか、よく分かんない」
「ちょお善人ですよ?」
「……あはっ、分かった。自分でそう言う善人はいないから、アンタは嫌な奴。決定♪」
「なんという誘導尋問か」
「嫌な奴だから、これから先の人生、アンタ色んな人から嫌われっぱなしね。かわいそー」
「勝手に人の人生を決められた」
「……だ、だからさ。……今だけ、あたしが少しだけアンタのこと、好きになってあげる。か、感謝しなさいよ?」
 そう言いながら、かなみは俺の手をきゅっと握った。
「ふひっ!?」
「なっ、なんて声出してるのよ!」
「い、いやあの、びっくりしまして」
「……そ、そう。……嫌じゃない?」
「全然! ちっとも! それどころか嬉しさのあまり俺の脳でなにやら興奮物質が分泌されてる模様!」
「う……」
「かなみ?」
「う、うるさいっ! 嬉しいとか言うなっ!」
 かなみは顔を真っ赤にして俺に怒鳴った。
「いや、言う。俺は言うね。かなみに手を握られて俺は嬉しい」
「だっ、だから、嬉しいって言うなーっ!」
「ははははは。ちょお幸せ」
「ああもおっ! やっぱアンタって嫌な奴っ!」
 なんと言われようと手を離さないかなみだった。

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【ツンデレが最近筋トレしてると言うので、どのくらい筋肉が付いたか触って確かめてみたら】

2010年01月21日
 放課後、教室でちなみとだらだらだべっていると、ふと話題が筋トレになった。
「……私の見立てだと、タカシのお腹は筋肉のきの字もなく、贅肉でぷよぷよだと見た。……ぱよえーん」
「ぱよえーんは言わなくていいです。しかし、俺はこう見えて結構締まっているぞ?」
「……見せれ」
「いやん」
 乙女を装ったのに無理やり服をはだけられた。
「……やっぱりぷよぷよ。……ぱよえーん」
 ちなみは俺に馬乗りになり、人の腹をぷよぷよつついていた。
「人の腹をつつくな」
「…………」
「無言で腹をこねるな!」
「……くそう、タカシの腹のくせに私を魅了するとは生意気だ」
「そんなつもりは毛頭ありません。ところでちなみ、お前はどうなんだ?」
「?」
 俺から退いて元の席に戻ったちなみが、不思議そうに首を傾げていた。
「だから、贅肉だよ。胸に一切ないのは知っているが、腹とかどうだ? いっつもリスみてーに菓子をカリカリ食ってるじゃん。結構あるんじゃないか?」
「……ふむ。そう言うことにより私に服をはだけさせ、おっと手が滑ったとか言って私の胸を揉む寸法か」
「どうしても俺を性犯罪者にしたいようですね。あと、揉むほどないように思えますが」
「…………」
「無言で人の頬をつねるな」
「……うるさい、馬鹿。……タカシは貧乳好きのくせに、すぐ人の胸を馬鹿にする」
「貴様、俺の秘密どこで知った!?」
「……いっつもタカシが自分で言ってるくせに、何を言っているのか。……虎視眈々と私の胸を狙っているのも、私にはまるっとお見通しだ」
「いや、それは別に」
「…………」
「だから、無言で人の頬をつねるな」
「……うるさい、馬鹿」
 ちなみはちょこっと怒ったように口を尖らせた。
「……閑話休題、私は最近筋肉トレーニングをしてるので、ムキムキだ。……見たい?」
「胸を? まあどうしてもと言うなら見てやらんこともない」
「……そしてそのまま押し倒すと見た。……さよなら、膜」
「だからッ! ええい、女の子が膜とか言うなッ!」
「……ふふり」
 俺にほっぺをつねられても全く堪えていない模様。チクショウ。
「……じゃなくて、お腹。……ちょー引き締まってる予感」
「びっくり人間とかで見る全身これ筋肉って感じのボディービルの女性くらい?」
「……あそこまでだと、正直引くので我慢している」
 したいのか。
「……まあ、とにかく。お願いしますちなみ様ーって言って土下座して、タカシの後の人生全て私に尽くすのであれば、見せてやらないこともない」
「とんでもない譲歩だな」
「……頑張った。……偉い? ……なでなでする?」
「あー偉い偉い」
 ちなみのほっぺをぐにーっと引っ張ってやる。
「……おかしい。……これはなでなでじゃない気がする」
「気のせいだろ」
「……私は賢いので、タカシ如きの奸計には騙されない」
 ちなみも負けじと俺の頬を引っ張ってきた。お互いがお互いの頬を引っ張り合うこの勝負、目が離せないゼ……!
「……で。見る?」
「人が名勝負を繰り広げていると言うのに、この淡白な娘さんは……まあいいや」
 いい加減頬が痛いので手を離すと、ちなみも俺から手を離した。やれやれ。
「ええと、見たいけど後の人生全てを賭けてまでは見たくありません」
「……じゃ、そゆのはいい。見たければ見ればいい」
 そう言って、ちなみは服を捲り上げお腹を晒した。別に筋肉で引き締まっていることはなかったが、三段腹助けてぇ! という腹でもない。ごく普通の女性らしいお腹だった。
「じぇんじぇん引き締まってないですが」
「……さっきのタカシの頬引っ張りで筋肉がずたずたになり、こうなってしまった。……一生恨む」
「なんでお前のほっぺを引っ張ったら腹の筋肉がずたずたになるんだ」
「……医者じゃないから知らない」
 めちゃくちゃ言う奴の鼻をつまむ。
「……むー」
「むーじゃねえ。ていうかだな、年頃の娘さんが人前で肌を晒すなんて、あまり感心できないぞ?」
「……私だって、いちおーは相手を見てやってる」
「む」
 そ、そりはつまり、俺が相手だから構わないと……? つまりは、そういうことなのか?
「……タカシが相手だと、後で賠償金がっぽり貰っても心が痛まない」
「そういうオチかチクショウ! がむでぶ!」
「がむでぶ?」
「はぁ……まあいいや。でも、筋肉はないが贅肉もない、よい腹ですね」
 ちなみの腹をつつく。ふにふにサラサラで気持ちいい。ずっと触っていたい、そんな気持ちにさせる。
「……陵辱された」
「イチイチ人聞きが悪いッ! ちょっとつついただけだッ!」
「……このまま押し倒す?」
「さないッ! まったく……お前、俺をどんな極悪人だと思ってんだ?」
「ふふり。……で?」
「うん?」
「……どう、私のお腹」
「どう、と言われても……」
 ふにふにとちなみのお腹をつつく。他の女性の腹を見たことがないので断言はできないが、目に余るほど醜くも一目で心を奪われるほど美しくもないように思える。
 ただ、触り心地は個人的には大変好みだ。春夏秋冬ずーっと触っていたい。
「……うー。……タカシはずーっと私のお腹を触っている。……気に入られた模様」
「え、いや、……まあ気に入ったかどうかで言えば気に入った、かな?」
 へそに指を出し入れしながらちなみに答える。
「……なら、よし。……じゃ、へそ出し入れ料100万円」
 ちなみは服を戻しながらとんでもないことを言った。
「新種の美人局だとぉ!?」
「……とはいえ、タカシは学生なのでそんなお金はないのは知っている。……なので、私に優しくしたり、嬉しくしたりすることをすれば、ちょっとずつ減らしてあげる」
「ほう。具体的に何をすれば?」
「なでなで」
「…………」
 即答と来ましたよ。
「……早速、する? 一なでなでで、一円まいなす」
「超しないと借金減りませんね」
「……その通り。……やれやれ、タカシのためになでなでさせてあげるなんて、私は優しすぎる」
「無理やり俺に借金を作らせたのは誰だ」
「……ちなみ、何にも分かんない」
 あどけない表情でちなみは小首を傾げた。
「うぐ……ッ」
 あまりの衝撃に頭がくらくらする。チクショウ、コイツ自分の武器って奴を知ってやがる!
「……タカシは簡単で困る」
「ぐぅ……ええいっ! 分かった、分かりました! 嫌と言うほどなでてやる!」
「わ、わ」
 ちなみを後ろから抱っこして、頭をなでなでする。
「いかがですか、お嬢様」
「……なでられている」
「いや、それは知っている。じゃなくて、強すぎるとか、弱すぎるとか」
「……特には。……このまま続けろ」
 そう言って、ちなみは俺に背中を預けて目をつむった。
「……私が満足するまでなでること」
「わーったよ。いちにぃさんしぃ」
「……数えるの禁止」
「ええっ!? じゃあ何回したのか分からなくなるじゃねえか!」
「……私の気分で借金を増減するので、回数は別にいい」
「増!?」
「……手が止まってる。……借金1万円ぷらす」
「なんという恐怖政治か! これじゃいつまで経っても終わらねぇ!」
「……タカシ、ふぁいと」
 借金地獄に落ちてしまったが、ちなみは気持ちよさそうだし、実は俺も満更でもないし、別にいいかな、と思った。

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【ゆずねえ クリスマス】

2010年01月21日
 そろそろ年の瀬、クリスマスが近づいてきた。即ち、
「ねぇねぇアキくん。アキくんは何がほしい?」
「静かな時間」
「アキくん大人っぽくて偉いね! お姉ちゃん、なでなでしてあげる。いーこいーこ♪」
 登校中に頭をなでられ、道行く人々にひそひそとあることないこと囁かれる季節がやってきたのだ。
「そうじゃなくてね、クリスマスだよ。お姉ちゃん、アキくんになんでも買ってあげるよ? 何がいい?」
 そう言って、柚子ことゆずねえがにっこり微笑んだ。
 ゆずねえは俺がガキの頃からお隣に住んでおり、物心ついた頃には既に弟扱いされていた。そしてそのまま現在に至るわけだが。
「別にいいよ、子供じゃないんだし。それより、ゆずねえこそ欲しいものないのか? 俺の財力で叶う程度の品なら用意したいのだが……ゆずねえ?」
 突然、ゆずねえが震えだした。その姿に生来の負けん気が刺激されたので、負けじと生まれたての子鹿のように小刻みに震える。唸れ俺のディアマインド!(鹿心)
「……アキくんがいーこに育ってくれて、お姉ちゃん、大感激っ!」
 ぐわしっと抱きしめられ、激しく頭をなでられる。なんでもいいが胸に顔が埋まっていて苦しいやら気持ちいいやら気持ちいいのでもっとしてください。
「ところでアキくん、どうして震えてたの?」
「……ぷはっ。生まれたての子鹿の霊に憑りつかれたんだ」
「出てけっ、アキくんから出てけっ!」
 軽い冗談のせいで半泣きのゆずねえに割と本気の殴りを受け、超泣きそう。
「ふー……アキくん、霊は出てった? ……ああっ、アキくんが泣いてる!」
「すいません殺さないでください」
「お、お姉ちゃんはアキくんを殺さないよ? ……むしろ、アキくんの魅力にめろめろで、お姉ちゃんドキドキしてそのまま心臓止まっちゃうかもしんないから、そのせいで死んじゃうかもしれないよ?」
「なるほど。どんな葬式がいい?」
「アキくん葬がいい!」
 受け入れられた。ていうかなんだ、俺葬って。
「説明しよう! アキくん葬とは、棺の中に一面アキくんの写真がプリントされてて、しかも中には等身大アキくん人形があるの。念仏はアキくんが普段歌ってるアニソンを流して、もうこうなったら飾る肖像画もアキくんの写真でいいよね?」
「それはもう俺の葬式だ」
「アキくんが死ぬなんてダメッ! 5000歳くらいまで生きなさい!」
 それはもう一種の妖怪だ。
「まあいいや、頑張って超長寿になるよ。それよりゆずねえ、クリスマスなんだけど」
「お姉ちゃんと一緒に過ごしたいんだね? えへへ~、お姉ちゃんも~♪」
「いや、そういうわけでは」
 にへにへしながら近寄ってきた姉が面白かったので、思ってもないことを言ってみたら、ゆずねえの表情が凍りついた。
「……どういうことっ! はっ、まさかお姉ちゃん以外の姉と一緒に過ごす気!? お姉ちゃん、そんなの許さないよ!」
 かと思ったら、突然俺の肩を掴み、がくんがくん揺さぶってきた。ていうか誰だ、ゆずねえ以外の姉って。姉って増えるものなのか?
「いませんいません、俺にとって姉はゆずねえ一人だけだよ」
「アキくん……お姉ちゃん、超感動!」
「負けるか、超振動!」
「びびびびび~。……アキくん、なんで対抗したの?」
「それが分かったら苦労しないんだ」
「どうしてこんな変な子になっちゃったんだろ……育て方間違えたかな?」
 真顔で言われるとアンニュイになるのでやめてください。
「じゃなくてぇ! ……もー、アキくんと話してるといっつも脱線するよ」
「それはもう俺が相手なのだから諦めてもらわないと」
「…………頑張ろうね、アキくん」
 力ない笑顔で言われると、悲しくなってくる。
「でね、クリスマス。アキくん何が欲しい?」
「ゆずねえのパンツ」
「……ど、どうしてもって言うなら、お姉ちゃん、あげてもいいけど」
 ゆずねえは顔を真っ赤にしながらつぶやいた。嗜虐心に火がつく。
「ゆずねえが今はいてるパンツ」
「いま!? ……ど、ど、どうしても? 他のじゃだめ?」
「ダメ。どうしても」
 本当はそんなことないのだが、半泣きでおろおろしてるゆずねえを見てると、いじめたくなってしまうので、そう言ってしまうのもしょうがないだろう。
「……う、うう~……あ、アキくんのため、アキくんのため」
「待てゆずねえ、冗談だ! スカートに手を突っ込むな!」
「じょうだん……?」
「ていうかだな、仮に本当だとしても、今ここで脱ぐ必要もないと思うのだが」
「だ、だって、すぐ使うのかなーって思って……」
 使うとか言うな。
「そ、それよりアキくん! お姉ちゃんに嘘ついちゃダメでしょ! お姉ちゃん怒るよ!」
「ほう。果たして姉の怒りは俺に届くかな?」
「ばかにしてぇ……もー、アキくん! めっ!」
「うっうっ……ごめんなさいゆずねえ。俺が悪かった」
「あっ、ああ、あああ……アキくんっ!!!」
 泣きマネでこの場をやり過ごそうと思ったら、ゆずねえがすごい勢いで俺に抱きついてきた。
「アキくん……ごめんね、ごめんね。泣かせちゃってごめんね。叱ったりして、悪いお姉ちゃんだったね。」
「い、いや、そんなことないぞ? そもそも嘘をついた俺が悪いわけだし」
 ゆずねえはじーっと俺を見た。そして、俺の頬をゆっくりさすった。
「……アキくんが優しい子に育ってくれて、お姉ちゃん、大満足♪」
「い、いやあ。そもそもさっきの泣いたのも嘘泣きだし、あまり喜ばれると心が痛み申す」
「……うそ?」
「うん」
「……も、もーっ! お姉ちゃん、アキくんを悲しませたーって思ってドキドキしたじゃない!」
「いやはや。ごめんね、ゆずねえ」
「ふんだ。お姉ちゃんを騙すアキくんなんて知らないもん」
 機嫌を損ねてしまったのか、ゆずねえはあさっての方向を向いてしまった。怒ってるんだぞ、と分かりやすく頬を膨らませているのが可愛い。
「えい」
 その膨らんでるほっぺを指で押す。
「ぷしー。……も、もー。お姉ちゃん、怒ってるんだよ?」
「知ってる」
「じゃ、じゃあ、しおらしいこと言わないと。……お姉ちゃん、許すタイミング図れないじゃない」
 ゆずねえは俺の手を取り、困ったように眉を寄せながらつぶやいた。
「ゆずねえが相手だと、つい意地悪しちゃうんだ。ごめんよ、ゆずねえ」
「むー……それって、お姉ちゃんが特別ってこと?」
「いやあ、どうだろう」
「そこはもう特別だよーでいいじゃない! もー! アキくんの鈍感! 女心知らず! 千人針!」
「待てゆずねえ、最後の意味分からん!」
「そんな失礼なアキくんは、クリスマスにお姉ちゃんと過ごさなければなりません。罰です。決定です」
「罰にはならないと思うが……うん。じゃあ、一緒にクリスマスな」
「……へへー♪ じゃねじゃね、アキくん。ちゃんと何が欲しいか考えておくんだよ? お姉ちゃん、何でも買ってあげるからね?」
「ゆずねえのパンツ」
「……あ、アキくんのため、アキくんのため」
「だから、スカートに手を突っ込むなッ!」
 ままならない姉と一緒に登校するのだった。

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【かまくらを作るツンデレ】

2010年01月21日
 今年の冬はすごい。普段は滅多に雪なんて降らない地方なのに、今日は一面銀世界だ。
「ぬふふー、かまくらじゃ、かまくらなのじゃー」
 それに浮かれたまつりが学校の校庭に勝手にかまくらを作ってる。今は内部を施行しているようなので、ばれないようにそっと近づき、入り口を雪で硬く硬く塞ぐ。
「ふう、とりあえずこんなものなのじゃ。次は……ぬ? な、何なのじゃー!?」
 どうやら入り口が塞がっていることに気がついたようだ。外側から聞き耳を立てることにする。
「入り口が埋まってるのじゃ! 一大事なのじゃ! このままでは春まで発見されないのじゃ!」
 いや、その前に普通に餓死か凍死すると思う。などと考えていると、内側からドンドンと激しい衝撃音が聞こえてきた。
 入り口を体当たりしているようだが、まつりの小さな身体程度ではビクともしないほど固めているので自力での脱出は難しいだろう。
「はぁはぁ……ちっとも崩れないのじゃ。……ま、まさか、本当に閉じ込められたのかえ?」
 そうです。正確には俺が閉じ込めたんだけど。
「……だ、誰か傍にいないかえ? わ、わらわはまだここにいるのじゃ、誰か助けてたもれ!」
 む。声に少々泣きが入っている。面白かったし、そろそろ助けるか。
「おや、こんなところにカマクラのような何かが」
 わざとらしく声をあげて、俺が近くにいることをまつりに知らせる。
「!!! その声、タカシか!」
「それはどうかな?」
「その人を食った言い回しは絶対タカシなのじゃ! 特別に命ずる、わらわを助けよ!」
「まつりのためなら、この命、惜しくはない! どうすればいい、指示してくれ!」
「タカシ……わらわ、感激なのじゃ! で、では、このカマクラの入り口を崩してほしいのじゃ!」
「寒いから嫌だ」
「命を惜しまないって言った口で、寒いから嫌!? 寒さ>命なのかえ!?」
「じゃあまた春にでも」
「待って待ってお願い助けて! 寒くて死にそうなのじゃ!」
「三回まわってワンって言ったら助ける」
「ぐるぐるぐる、わん! 言ったのじゃ! 助けてたもれ!」
「ここからじゃ内部が見えない。本当にしたか確認できないので、残念ながら助けられません」
「タカシは悪魔なのじゃー! うわーん!」
 いかん、泣かしてしまった。しょうがないのでパワーオブパワーで入り口を崩す。
「ぐすぐす……ん?」
「大丈夫か?」
「タカシー! ふわーん!」
 まつりが泣きながら俺の胸に飛び込んできた。
「ううう……怖かったのじゃ、もう一生閉じ込められたものだと思ったのじゃー」
「よしよし、もう大丈夫だぞ」(なでなで)
「ううう……ふぅー」
 まつりは俺になでられ、安心したように鼻息を漏らした。
「タカシ、ありがとうなのじゃ。おかげで助かったのじゃ。タカシは命の恩人なのじゃ」
「いやあ、そんな感謝されると照れますねウヒヒヒヒ」
 俺の笑い声に感謝してるはずのまつりが引いた。
「で、でも、なんで塞がったんじゃろか……しかも、あんな強固な壁になって」
「ああ、それは俺がこう、ぺたぺたと」
「……何じゃと?」
 事の顛末を分かりやすくまつりに伝えたのに、とても怒られた。
「なんでわらわを閉じ込めるんじゃ!」
「感謝されたかったんだ。あと、困るまつりも見たかったんだ。一挙両得」
「マッチポンプもいいところなのじゃ!」
「マッチポンプぁーと呼んでくれ」
「マッチポンプぁー。……言い難いのじゃ! というか、名前なんてどうでもいいのじゃ! やっぱりタカシは悪魔なのじゃ!」
「よし。折角まつりがカマクラを作ったことだし、一緒に入ろう」
「こやつちっともわらわの話を聞いておらぬぞよ!? こっ、こら、わらわを持つな!」
 まつりを小脇に抱えたまま、カマクラの内部に入る。
「ふむ。一人で作ったにしては上出来じゃないか?」
「ふん。貴様みたいな悪魔に褒められても嬉しくないのじゃ」
「フンコロガシが作った糞の方が綺麗だな」
「だからって貶されても嬉しくないのじゃ! あと、比較対象があんまりなのじゃ!」
「ううむ……しかし、やはり雪だけあって冷えるな。あ、カイロ的存在発見。らっくぃー」
「わらわはカイロじゃないのじゃ! こっ、こら、抱っこするな、すりすりするでない、ほっぺをはむはむするにゃーっ!」
 寒さのせいにしてまつりで温まりました。冬サイコー。

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