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2026年03月21日
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【男の匂いが大好きなツンデレ】
2010年01月31日
何の約束もしてないのにいきなり人の部屋に上がりこんできて、あまつさえ茶を持て愚民とかいうたわけた奴だーれだ?
「答え:まつり」
「ひゃー! ひっはふは、ははー!」
まつりのほっぺを引っ張って溜飲を下げてから、とりあえず何の用か訊ねる。
「ううう……わらわのほっぺを引っ張るとは何事じゃ、この大莫迦者め!」
「もう一度引っ張りましょうか」
「暇じゃから遊びに来てやったのじゃ、喜べうつけ者!」
手をわきわきさせながら近寄ると、まつりは早口に用件を告げた。
「ふん、最初っからそう言えば痛い目に遭わなかったものを」
「かんっぺきに悪人の台詞じゃの。まあ、元々悪人じゃから問題ないがの。にゃはははあぅーっ!」
最後にあぅあぅ語になったのは、まつりのほっぺが僕に引っ張られているからです。
「うー……すぐに暴力を振るいおって。覚えておれ、いつか絶対に復讐してやるからの」
「何か言う時はもっと近くに来てもらわないと聞こえません」
俺の攻撃範囲から逃れるためか、まつりはベッドと壁の隙間にちょこんと座り込み、何かぶつぶつ言っていた。
「なんでもないわい! それより、早く茶を持て。わらわはのどが渇いた」
「偉そうな……まあいいや、淹れてやるよ」
「高級な茶じゃないと駄目じゃぞ?」
「分かった、高級な茶に混入する」
「何を!? ていうか何も入れるな、愚か者!」
「…………」
「な、何か言え、言わぬか! わ、わらわを怯えさせるなど百年早いのじゃ! じゃから早く何か言うのじゃ!」
暗い笑みを残して、部屋を出て行く。まあ、高級ではないけど、茶くらい普通に出してやるか。
茶葉を急須に入れ、そこにポットから湯を入れ……ようと思ったが、沸いてない。
しょうがないのでヤカンで沸かし、それを湯飲みに注ぐ。ちょい時間がかかったが、完成したのでもよんもよんしながら戻る。
ノブを掴んだ時、ふと部屋の中から奇妙な声が聞こえてきた。少しだけドアを開き、中を覗き見る。
「…………」
ベッドの上に座り、まつりは熱い視線を俺が脱ぎ散らかしていたカッターシャツに注いでいた。
「……全然帰ってこんし、大丈夫じゃ……の?」
何の話だと思っていたら、まつりは意を決した表情でシャツを手に取った。
「んー♪」
そして、おもむろに顔に押し付けるではないか。人のシャツを顔に押し付けているではないか。嬉しそうな声を響かせベッドをごろんごろん転がってるではないか。
「んー、んぅー、んー♪」
それだけで飽き足らないのか、まつりはシャツを咥えてふんふん振り回した。犬?
中々に愉快な絵ではあるが、こんな様子を見られたとあってはまつりも耐えられないだろう。音を立てないようそーっと台所に戻ろうとした第一歩目で、廊下がみしりと音を立てた。
その瞬間、部屋の中からどすんばたんどでんという愉快なのか愉快でないのか分からない音が響いた。そして、それきり何の音もしなくなった。完全にばれた。
……いつまでもここでこうしていても仕方ない。意を決して部屋に入る。
「や、やあまつり。こんなところで会えるだなんて、運命だと思わないかい?」
「……覗いてたじゃろ」
まつりはベッドと壁の間に座り込み、顔を真っ赤にして俺を睨んでいた。
「な、何のことか俺には皆目」
「わらわが貴様のシャツをくんくんしてるの見てたんじゃろっ!」
隣近所にまで響かんばかりの大声で叫ぶまつり嬢。色々勘弁して。
「い、いやぁ、どうだったかな? はっはっは」
「う~……こ、これでわらわの優位に立ったつもりか! こ、この程度でわらわの牙城が崩れると思うたか、この痴れ者が!」
む。人が折角気づかないフリをしてやってるというのに、なんだこの態度。それならそれで、こっちにも考えがある。
「はうわっ!?」
先ほどまつりがふんがふんがしていたシャツを手に取り、ふんが部に顔をつける。
「やっ、やめぬか、この大莫迦者! 離せ、離せーっ!」
「や、俺のシャツだし。ただ、どういうわけかまつりの匂いがしますね。はっはっは」
「笑うな、阿呆! ……そ、そっちがそういうつもりなら……」
そう言うと、まつりはふんがシャツを引っ張った。
「これと貴様を始末すれば、最早わらわを脅かすものは存在せぬ! 潔く露と消えい!」
「超嫌です」
まつりがぐぃーっと引っ張り、俺もぐぃーっと引っ張る。互いの力でシャツがぴーんと引き伸ばされており、今にも千切れそうだ。あ、千切れた。
「ふぎゃーっ!?」
千切れるのを予期していた俺はともかく、全力で引っ張っていたまつりは千切れたシャツを持ったままぐりんぐりん後方回転し、やがて壁に激突するとその動きを止めた。
「死んだ? もし死んでたら埋めるので、そのように言って」
「……し、死んでないわいっ! 埋めるなっ!」
ゾンビみたいな動きで起き上がると、まつりはその手にシャツがあることに気づいた。
「……くくく。これさえ処分すれば、あとは貴様だけじゃ」
「いや、ここにもあるし」
そう言って、千切れたシャツを見せる。ちょうど真ん中あたりで千切れており、ふんが部が二つに分かれた形になっている。
「よ、よこせ阿呆! これはわらわが処分する!」
「『これで家でもふんがふんがし放題で、らっきーにゃ♪』って言ったら譲る」
「だっ、だだだだだ誰がそんなことするか、あ、阿呆!」
ものすごく動揺しているように見えるのは、僕の気のせいでしょうか。
「……あー、まあいいや。破れちまったし、やるよ」
「本当かっ!? ……あ、いや、別に欲しいとかじゃないんじゃぞ? 処分するだけじゃぞ?」
「じゃあこっちで捨ててもいいけど」
「わらわに任せよっ!」
素早く俺の手からシャツを奪うと、まつりは後ろを向いた。
「……これで、家で嗅ぎ放題じゃ」
「独り言は聞こえないようにお願いします」
「おっ、乙女の独り言を聞くなっ、阿呆!」
殴りかかってきたまつりをさらりとかわし、そのまま脇固めへと移行。
「ふぎゃー! 痛い痛い痛いのじゃー! 乙女にする技じゃないのじゃー!」
「まるで恋人同士がじゃれあっているようで素敵だね」
「恋人にプロレス技をする奴がおるか、阿呆ーっ! 痛い痛い痛いっ、ぎぶあっぷ、ぎぶあっぷじゃー!」
必死に俺の腕をタップするまつりだった。
「答え:まつり」
「ひゃー! ひっはふは、ははー!」
まつりのほっぺを引っ張って溜飲を下げてから、とりあえず何の用か訊ねる。
「ううう……わらわのほっぺを引っ張るとは何事じゃ、この大莫迦者め!」
「もう一度引っ張りましょうか」
「暇じゃから遊びに来てやったのじゃ、喜べうつけ者!」
手をわきわきさせながら近寄ると、まつりは早口に用件を告げた。
「ふん、最初っからそう言えば痛い目に遭わなかったものを」
「かんっぺきに悪人の台詞じゃの。まあ、元々悪人じゃから問題ないがの。にゃはははあぅーっ!」
最後にあぅあぅ語になったのは、まつりのほっぺが僕に引っ張られているからです。
「うー……すぐに暴力を振るいおって。覚えておれ、いつか絶対に復讐してやるからの」
「何か言う時はもっと近くに来てもらわないと聞こえません」
俺の攻撃範囲から逃れるためか、まつりはベッドと壁の隙間にちょこんと座り込み、何かぶつぶつ言っていた。
「なんでもないわい! それより、早く茶を持て。わらわはのどが渇いた」
「偉そうな……まあいいや、淹れてやるよ」
「高級な茶じゃないと駄目じゃぞ?」
「分かった、高級な茶に混入する」
「何を!? ていうか何も入れるな、愚か者!」
「…………」
「な、何か言え、言わぬか! わ、わらわを怯えさせるなど百年早いのじゃ! じゃから早く何か言うのじゃ!」
暗い笑みを残して、部屋を出て行く。まあ、高級ではないけど、茶くらい普通に出してやるか。
茶葉を急須に入れ、そこにポットから湯を入れ……ようと思ったが、沸いてない。
しょうがないのでヤカンで沸かし、それを湯飲みに注ぐ。ちょい時間がかかったが、完成したのでもよんもよんしながら戻る。
ノブを掴んだ時、ふと部屋の中から奇妙な声が聞こえてきた。少しだけドアを開き、中を覗き見る。
「…………」
ベッドの上に座り、まつりは熱い視線を俺が脱ぎ散らかしていたカッターシャツに注いでいた。
「……全然帰ってこんし、大丈夫じゃ……の?」
何の話だと思っていたら、まつりは意を決した表情でシャツを手に取った。
「んー♪」
そして、おもむろに顔に押し付けるではないか。人のシャツを顔に押し付けているではないか。嬉しそうな声を響かせベッドをごろんごろん転がってるではないか。
「んー、んぅー、んー♪」
それだけで飽き足らないのか、まつりはシャツを咥えてふんふん振り回した。犬?
中々に愉快な絵ではあるが、こんな様子を見られたとあってはまつりも耐えられないだろう。音を立てないようそーっと台所に戻ろうとした第一歩目で、廊下がみしりと音を立てた。
その瞬間、部屋の中からどすんばたんどでんという愉快なのか愉快でないのか分からない音が響いた。そして、それきり何の音もしなくなった。完全にばれた。
……いつまでもここでこうしていても仕方ない。意を決して部屋に入る。
「や、やあまつり。こんなところで会えるだなんて、運命だと思わないかい?」
「……覗いてたじゃろ」
まつりはベッドと壁の間に座り込み、顔を真っ赤にして俺を睨んでいた。
「な、何のことか俺には皆目」
「わらわが貴様のシャツをくんくんしてるの見てたんじゃろっ!」
隣近所にまで響かんばかりの大声で叫ぶまつり嬢。色々勘弁して。
「い、いやぁ、どうだったかな? はっはっは」
「う~……こ、これでわらわの優位に立ったつもりか! こ、この程度でわらわの牙城が崩れると思うたか、この痴れ者が!」
む。人が折角気づかないフリをしてやってるというのに、なんだこの態度。それならそれで、こっちにも考えがある。
「はうわっ!?」
先ほどまつりがふんがふんがしていたシャツを手に取り、ふんが部に顔をつける。
「やっ、やめぬか、この大莫迦者! 離せ、離せーっ!」
「や、俺のシャツだし。ただ、どういうわけかまつりの匂いがしますね。はっはっは」
「笑うな、阿呆! ……そ、そっちがそういうつもりなら……」
そう言うと、まつりはふんがシャツを引っ張った。
「これと貴様を始末すれば、最早わらわを脅かすものは存在せぬ! 潔く露と消えい!」
「超嫌です」
まつりがぐぃーっと引っ張り、俺もぐぃーっと引っ張る。互いの力でシャツがぴーんと引き伸ばされており、今にも千切れそうだ。あ、千切れた。
「ふぎゃーっ!?」
千切れるのを予期していた俺はともかく、全力で引っ張っていたまつりは千切れたシャツを持ったままぐりんぐりん後方回転し、やがて壁に激突するとその動きを止めた。
「死んだ? もし死んでたら埋めるので、そのように言って」
「……し、死んでないわいっ! 埋めるなっ!」
ゾンビみたいな動きで起き上がると、まつりはその手にシャツがあることに気づいた。
「……くくく。これさえ処分すれば、あとは貴様だけじゃ」
「いや、ここにもあるし」
そう言って、千切れたシャツを見せる。ちょうど真ん中あたりで千切れており、ふんが部が二つに分かれた形になっている。
「よ、よこせ阿呆! これはわらわが処分する!」
「『これで家でもふんがふんがし放題で、らっきーにゃ♪』って言ったら譲る」
「だっ、だだだだだ誰がそんなことするか、あ、阿呆!」
ものすごく動揺しているように見えるのは、僕の気のせいでしょうか。
「……あー、まあいいや。破れちまったし、やるよ」
「本当かっ!? ……あ、いや、別に欲しいとかじゃないんじゃぞ? 処分するだけじゃぞ?」
「じゃあこっちで捨ててもいいけど」
「わらわに任せよっ!」
素早く俺の手からシャツを奪うと、まつりは後ろを向いた。
「……これで、家で嗅ぎ放題じゃ」
「独り言は聞こえないようにお願いします」
「おっ、乙女の独り言を聞くなっ、阿呆!」
殴りかかってきたまつりをさらりとかわし、そのまま脇固めへと移行。
「ふぎゃー! 痛い痛い痛いのじゃー! 乙女にする技じゃないのじゃー!」
「まるで恋人同士がじゃれあっているようで素敵だね」
「恋人にプロレス技をする奴がおるか、阿呆ーっ! 痛い痛い痛いっ、ぎぶあっぷ、ぎぶあっぷじゃー!」
必死に俺の腕をタップするまつりだった。
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【音々 空腹】
2010年01月30日
部屋で横になり、漫画を読んでたら腹が鳴った。これは俺の内臓が空腹を訴えていると判断したので、何か食おうかなと思ったら、見覚えのある顔が部屋に飛び込んできた。
「ぬし様! ちっとも遊びに来ないから、わらわの方から遊びに来たのじゃ!」
そう言って俺の寝そべるベッドに飛び乗ってきたのは、自称許婚の音々だ。音々は猫のように俺にほお擦りすると、ぎゅっと抱きついた。
「の、ぬし様。遊びに来たわらわを褒めるかの? 甲斐甲斐しいわらわを褒めるかの? 通い妻っぽくて素敵なわらわを褒めるかの?」
「褒めたいけど、あと数秒で餓死するから褒める余裕がないんだ」
「ぬし様が餓死で即死する!? ……ぬ?」
いかん、相手するのが面倒だから適当ぶっこいたのがばれる!
「音々……好き……だった……ぞ……」
そこで、餓死したフリをして、ばたりと倒れる。
「ぬし様!? 駄目じゃ、わらわを残して死んではならぬぞ! そ、そうじゃ、今すぐ何か作ってくるから、それまで待っておるのじゃ! よいか、死んではならぬぞ!」
そう言い残し、音々は部屋を飛び出ていった。よし、これで何か食物が手に入る。恐ろしい……冴え渡りすぎる己の頭脳が恐ろしい!
そんなわけで待ってるんだけど、いつまで経っても戻ってこない。何かの拍子で家に異次元のホールが発生し、その穴に飲み込まれたと思い込んだので様子を見に行く。
「ぬー! またじゃ、また黒焦げじゃ! なんでじゃー!」
台所で、音々が頭を抱えて絶叫していた。料理はあまり得意ではない様子。しょうがない、手助けしてやろう。
「おいすー」
「ぬ、ぬし様!? 動いて大丈夫なのかえ? 餓死で即死してないかえ?」
「実はもう死んだ後なんだ。生きてるように見えるけど、霊魂なんだ」
「ぬし様がぁぁぁぁぁ!!!!!」
このお嬢様は箱入りだかなんだか知らないが、俺の言うことは割となんでも信じるので大変楽しい。
「……遅かったのじゃ。もう駄目じゃ。……ぬし様、わらわもすぐそちらへ行くから、寂しくないぞ?」
「待って嘘嘘です超生きてます!」
薄い笑みを浮かべて包丁なんて持ち出したので、慌てて本当のことを教える。
「……ぬし様は優しいから、そんな方便をつくのじゃろ? ……大丈夫じゃ。死ぬことより、ぬし様のいない世界で生きていく方が、わらわは辛い」
「だから、生きてるっつーの! ほら!」
ぐいっ、と音々の手を引っ張って俺の心臓あたりにつける。
「? ……!!! ぬ、ぬし様! 心臓の音が! 鼓動が聞こえるのじゃ!」
「だから、言っただろーが。生きてるっつーの!」
「ま、まったく。わらわを騙すなど、酷いぬし様じゃ。……でも大好きじゃー!」
喜色満面で飛び込んできた音々をさらりとかわす。
「なんでかわすのじゃ、ぬし様! わらわを優しく抱き留めるのが、ぬし様の仕事じゃろうが!」
「包丁持った奴を抱き留められるほど胆力ありません」
「ぬ? ……まあ、小さいことなのじゃ♪」
この女怖え。
「それよりぬし様、この卵がすぐ焦げるのじゃ。少し待ってて欲しいのじゃ、今すぐうちのコックを呼ぶのじゃ」
「音々の作るのが食べたかったが……まあいいか」
俺の言葉を聞いた途端、音々は持っていた携帯を投げ捨てて俺を見た。いかん。
「ぬし様の望み、しかと聞いたのじゃ! 絶対にわらわがおいしい玉子焼きを作るから、待っててほしいのじゃ!」
「……音々の心意気、俺の脳髄に響いたゼ! 分かった、音々が作るのか先か、俺が餓死するのが先か、勝負だ!」
「そんな勝負はしてないのじゃ! 普通に待ってて欲しいのじゃ!」
「分かった。普通とか超得意」
「…………」
まるで信じていない視線を俺に注いだ後、音々は料理を再開した。
「あ、そだ。お前料理苦手だろ? ちょっと教えてやるよ」
「結構じゃ。炊事洗濯は妻の仕事なのじゃ。わらわの仕事を取ってはいかんぞ、ぬし様?」
「まず妻じゃないし、仮に妻だとしてもそんな時代錯誤なことを押し付けるつもりもないが……」
「うるさいのじゃ! これはわらわの仕事なのふぎゃー!?」
別に音々が発狂したのではなく、フライパンに引いた油に火が引火してびっくりしただけのようです。
「キャンプファイアーのようで綺麗ですね」
「火じゃ、火がついたのじゃー! ぬし様の家が丸焼けになるのじゃー! 家を無くしたぬし様は、わらわの家で同棲することに……悪くないの」
黙ってフライパンに蓋をして鎮火する。
「ああっ! 何をするのじゃ、ぬし様!」
「……一緒に頑張りましょう」
なんだか色々疲れたので、それだけ何とか言いました。
「できたのじゃ! 見よぬし様、こーんな上手にできたのじゃ!」
「ごあー!」
「ぬし様が壊れた!?」
別に壊れたのではなく、台所の惨状に目を背けたくなっただけです。数十個の卵の殻も、うずたかく積まれたフライパンも、床にこぼれた卵も、掃除するの全部俺。
「……まあいいや。上手に出来たな、音々」
「全部ぬし様のおかげなのじゃ! やっぱりぬし様は素敵なのじゃ! わらわの夫に相応しいのじゃ!」
「そんなこと言いだしたら、料理学校の教師に嫁入り行く羽目になるぞ」
「ぬし様、わらわの愛情たっぷりな手料理食べて欲しいのじゃ。あーん、なのじゃ」
俺の話なんてちっとも聞かずに、音々は熱々の玉子焼きを箸で小さく切り、俺に向けた。
「あー」
「はい、なのじゃ。どうじゃ? うまいか?」
「もぐもぐもぐ。おいしい」
「……ほ、本当かの? わらわに気を使って、嘘を言ってないかの?」
「いや、本当においしいって。頑張ったな、音々」
労りと感謝を込め、音々の頭をなでる。
「……ぬし様、ぬし様ぁぁぁぁぁ!!!」
「へぐっ」
突然音々が俺にダイビングヘッドバットをしてきたので大変痛い!
「ううううう~、わらわ、ぬし様の許婚でよかったのじゃー! すっごくすっごく嬉しいのじゃー!」
「俺は割と辛い」
「ぬし様? ……ああっ、ぬし様が鼻血を出しておる! わらわの料理を作る姿に興奮したのかの?」
「貴方の頭が僕の鼻に激突したんです」
「な、なんじゃとぉ!? ……こうなっては、死んでお詫びをーっ!」
「ひぃぃぃぃっ!?」
包丁片手に狂乱する許婚を必死で説得しました。怖かったです。
「ぬし様! ちっとも遊びに来ないから、わらわの方から遊びに来たのじゃ!」
そう言って俺の寝そべるベッドに飛び乗ってきたのは、自称許婚の音々だ。音々は猫のように俺にほお擦りすると、ぎゅっと抱きついた。
「の、ぬし様。遊びに来たわらわを褒めるかの? 甲斐甲斐しいわらわを褒めるかの? 通い妻っぽくて素敵なわらわを褒めるかの?」
「褒めたいけど、あと数秒で餓死するから褒める余裕がないんだ」
「ぬし様が餓死で即死する!? ……ぬ?」
いかん、相手するのが面倒だから適当ぶっこいたのがばれる!
「音々……好き……だった……ぞ……」
そこで、餓死したフリをして、ばたりと倒れる。
「ぬし様!? 駄目じゃ、わらわを残して死んではならぬぞ! そ、そうじゃ、今すぐ何か作ってくるから、それまで待っておるのじゃ! よいか、死んではならぬぞ!」
そう言い残し、音々は部屋を飛び出ていった。よし、これで何か食物が手に入る。恐ろしい……冴え渡りすぎる己の頭脳が恐ろしい!
そんなわけで待ってるんだけど、いつまで経っても戻ってこない。何かの拍子で家に異次元のホールが発生し、その穴に飲み込まれたと思い込んだので様子を見に行く。
「ぬー! またじゃ、また黒焦げじゃ! なんでじゃー!」
台所で、音々が頭を抱えて絶叫していた。料理はあまり得意ではない様子。しょうがない、手助けしてやろう。
「おいすー」
「ぬ、ぬし様!? 動いて大丈夫なのかえ? 餓死で即死してないかえ?」
「実はもう死んだ後なんだ。生きてるように見えるけど、霊魂なんだ」
「ぬし様がぁぁぁぁぁ!!!!!」
このお嬢様は箱入りだかなんだか知らないが、俺の言うことは割となんでも信じるので大変楽しい。
「……遅かったのじゃ。もう駄目じゃ。……ぬし様、わらわもすぐそちらへ行くから、寂しくないぞ?」
「待って嘘嘘です超生きてます!」
薄い笑みを浮かべて包丁なんて持ち出したので、慌てて本当のことを教える。
「……ぬし様は優しいから、そんな方便をつくのじゃろ? ……大丈夫じゃ。死ぬことより、ぬし様のいない世界で生きていく方が、わらわは辛い」
「だから、生きてるっつーの! ほら!」
ぐいっ、と音々の手を引っ張って俺の心臓あたりにつける。
「? ……!!! ぬ、ぬし様! 心臓の音が! 鼓動が聞こえるのじゃ!」
「だから、言っただろーが。生きてるっつーの!」
「ま、まったく。わらわを騙すなど、酷いぬし様じゃ。……でも大好きじゃー!」
喜色満面で飛び込んできた音々をさらりとかわす。
「なんでかわすのじゃ、ぬし様! わらわを優しく抱き留めるのが、ぬし様の仕事じゃろうが!」
「包丁持った奴を抱き留められるほど胆力ありません」
「ぬ? ……まあ、小さいことなのじゃ♪」
この女怖え。
「それよりぬし様、この卵がすぐ焦げるのじゃ。少し待ってて欲しいのじゃ、今すぐうちのコックを呼ぶのじゃ」
「音々の作るのが食べたかったが……まあいいか」
俺の言葉を聞いた途端、音々は持っていた携帯を投げ捨てて俺を見た。いかん。
「ぬし様の望み、しかと聞いたのじゃ! 絶対にわらわがおいしい玉子焼きを作るから、待っててほしいのじゃ!」
「……音々の心意気、俺の脳髄に響いたゼ! 分かった、音々が作るのか先か、俺が餓死するのが先か、勝負だ!」
「そんな勝負はしてないのじゃ! 普通に待ってて欲しいのじゃ!」
「分かった。普通とか超得意」
「…………」
まるで信じていない視線を俺に注いだ後、音々は料理を再開した。
「あ、そだ。お前料理苦手だろ? ちょっと教えてやるよ」
「結構じゃ。炊事洗濯は妻の仕事なのじゃ。わらわの仕事を取ってはいかんぞ、ぬし様?」
「まず妻じゃないし、仮に妻だとしてもそんな時代錯誤なことを押し付けるつもりもないが……」
「うるさいのじゃ! これはわらわの仕事なのふぎゃー!?」
別に音々が発狂したのではなく、フライパンに引いた油に火が引火してびっくりしただけのようです。
「キャンプファイアーのようで綺麗ですね」
「火じゃ、火がついたのじゃー! ぬし様の家が丸焼けになるのじゃー! 家を無くしたぬし様は、わらわの家で同棲することに……悪くないの」
黙ってフライパンに蓋をして鎮火する。
「ああっ! 何をするのじゃ、ぬし様!」
「……一緒に頑張りましょう」
なんだか色々疲れたので、それだけ何とか言いました。
「できたのじゃ! 見よぬし様、こーんな上手にできたのじゃ!」
「ごあー!」
「ぬし様が壊れた!?」
別に壊れたのではなく、台所の惨状に目を背けたくなっただけです。数十個の卵の殻も、うずたかく積まれたフライパンも、床にこぼれた卵も、掃除するの全部俺。
「……まあいいや。上手に出来たな、音々」
「全部ぬし様のおかげなのじゃ! やっぱりぬし様は素敵なのじゃ! わらわの夫に相応しいのじゃ!」
「そんなこと言いだしたら、料理学校の教師に嫁入り行く羽目になるぞ」
「ぬし様、わらわの愛情たっぷりな手料理食べて欲しいのじゃ。あーん、なのじゃ」
俺の話なんてちっとも聞かずに、音々は熱々の玉子焼きを箸で小さく切り、俺に向けた。
「あー」
「はい、なのじゃ。どうじゃ? うまいか?」
「もぐもぐもぐ。おいしい」
「……ほ、本当かの? わらわに気を使って、嘘を言ってないかの?」
「いや、本当においしいって。頑張ったな、音々」
労りと感謝を込め、音々の頭をなでる。
「……ぬし様、ぬし様ぁぁぁぁぁ!!!」
「へぐっ」
突然音々が俺にダイビングヘッドバットをしてきたので大変痛い!
「ううううう~、わらわ、ぬし様の許婚でよかったのじゃー! すっごくすっごく嬉しいのじゃー!」
「俺は割と辛い」
「ぬし様? ……ああっ、ぬし様が鼻血を出しておる! わらわの料理を作る姿に興奮したのかの?」
「貴方の頭が僕の鼻に激突したんです」
「な、なんじゃとぉ!? ……こうなっては、死んでお詫びをーっ!」
「ひぃぃぃぃっ!?」
包丁片手に狂乱する許婚を必死で説得しました。怖かったです。
【空腹なツンデレ】
2010年01月30日
「あぅー……お腹、空いたのだー……」
昼休み、もっさもっさ飯を食ってると、アフリカっぽい所からの留学生であるナコが机につっぷして何か呻いていることに気づいた。
「もぐもぐ。どした、ナコもぐ。飯食わないのかむしゃむしゃ」
「話すか喋るかどっちかにするのだ! こっちにまでご飯粒が飛んできてるのだ!」
飯を食いながらナコに話しかけると、嫌がられた。
「んぐんぐ、ごくん。……で、なんで飯食わないんだ? 悪さして親に弁当抜かれたのか?」
「ナコは悪さなんてしないのだ! 早弁しただけなのだ。分かったらどっか行くのだ、オマエ邪魔なのだ」
「邪魔とは失礼な。しかし、んな腹減ってるのなら、俺の少し分けてやろうか?」
「結構なのだ。オマエの弁当なんて食べたら、胃が内側からぱーんってなるのだ」
俺の弁当、爆弾か。
「まぁいいや。いらないならそれでいい、嫌がらせでここでゆっくり飯を食わせてもらおう」
「邪魔なのだ。どっか行け」
ナコが何か言ってるが特に気にせず、近くの席から椅子を持ってきてナコの机の上に弁当を並べる。
「どっか行けと言ってるのに……人の話を聞かない奴なのだ。頭が悪いに違いないのだ」
「うっせ。しかし、この玉子焼きが絶品なんだよなあもさもさ」
「ふん。そんなこと言われても、信じないのだ。きっとおえーおえーな味なのだ」
「別に信じなくてもいいが……いやはや、それにしてもこの弁当はうめえ。我が親ながら、褒めてやりてえ」
「……そんなおいしいのか?」(じーっ)
先ほどまでの台詞はなんだったのか、と思うほどの熱視線をナコは俺の弁当箱に送った。
「欲しいのか?」
「い、いらないのだ。最初からそう言ってるのだ。いーからどっか行くのだ」
「どこにも行かないけど、本当この玉子焼きはうまい。焼き加減もさるものながら、玉子に染み込んだ出汁がたまらない」
「……せ、せめて説明はやめるのだ! 聞いてたらお腹がぐーぐー言うのだ!」
「俺は寝てる時にぐーぐー言う」
「誰でもそーなのだ! そんなことで張り合ってどうするのだ! もー! 怒ったらお腹空いたのだ! しょうがないからオマエの弁当食ってやるのだ! よこすのだ!」
「『どうかこの卑しい猿姫にお慈悲を、ご主人様』って言うなら、考えなくもない」
「ぜっっっっったいに言わないのだっ! ナコは猿じゃないのだ! ナコはナコなのだっ! それに、オマエをご主人様って呼ぶなんて、考えただけでもおえーって感じなのだ!」
「騒がしいなあむしゃむしゃ」
「誰のせいで騒がしいと思ってるのだっ! って、そんなこと言ってるうちにもう半分以上食べてるのだーっ!」
「大丈夫だ、ナコ。残りの飯がどれほどあろうとも、お前の胃袋に入る確率は万に一つもない」
「コイツ優しさが欠片もないのだ!」
「やらしさは欠片どころか塊でごろごろしてるよ?」
「うるさいのだっ! もー知らないのだ、オマエがここで弁当食べてるのが悪いのだ、取っちゃうのだっ!」
飛来した猿姫が俺の弁当を奪っていく。
「わははーのはー! ナコ、オマエの弁当いただいたのだー! ざまーみろなのだー! もしゃもしゃ……おいしーのだ!」
「ん。何よりだ」
そう言うと、ナコはきょとんとした。
「……あ、あの、ナコ、オマエの弁当取ったんだゾ? 怒らないのか?」
「怒って欲しいのか? ナコはMなのか。俺はSだし、ちょうどいいな!」
「違うのだ! そ、そじゃなくて、……いいのか?」
「お腹空いてたんだろ? いいさ」
「う……」
ナコは申し訳なさそうに視線を弁当箱に落とした。
「……返すのだ。ちょっぴり食べちゃったけど、まだ残ってるから大丈夫なのだ」
「これって間接キスだよなって言ったら」
「ぬが!? そ、そうなのだ、これを食べられたら間接キスになるのだ。困るのだ!」
既に今の時点で間接キスしているのだが、気づいていないようだし、黙っていよう。
「うぬー……な、ナコは気にしないのだ。そんなのヘッチャラなのだ。ちゃーらー、へっちゃらー、なのだ」
「太陽拳!!!!!」
「ぬぎゃー!? お、おっきな声出すな、ばか! びっくりするのだ! それになんで太陽拳なのだ!?」
「間接キスを気にしないなら、一緒に食うか」
「コイツちっとも聞いてないのだ!? て、ていうか、そんなの無理だ、ばか!」
「やはりナコみたいなお子様は、間接キスに気後れするか?」
「な! そ、そんなわけないのだ! ヘッチャラなのだ! ちゃーらー、へっちゃらー、なのだ!」
「太陽拳!!!!!」
「みぎゃー!? な、なんでまた太陽拳するのだ! って、またコイツ人の話聞かないで弁当食べてるのだ! ナコも食べるのだ!」
その後も何度か太陽拳をかましながら、ナコと一緒に弁当をつつきました。
昼休み、もっさもっさ飯を食ってると、アフリカっぽい所からの留学生であるナコが机につっぷして何か呻いていることに気づいた。
「もぐもぐ。どした、ナコもぐ。飯食わないのかむしゃむしゃ」
「話すか喋るかどっちかにするのだ! こっちにまでご飯粒が飛んできてるのだ!」
飯を食いながらナコに話しかけると、嫌がられた。
「んぐんぐ、ごくん。……で、なんで飯食わないんだ? 悪さして親に弁当抜かれたのか?」
「ナコは悪さなんてしないのだ! 早弁しただけなのだ。分かったらどっか行くのだ、オマエ邪魔なのだ」
「邪魔とは失礼な。しかし、んな腹減ってるのなら、俺の少し分けてやろうか?」
「結構なのだ。オマエの弁当なんて食べたら、胃が内側からぱーんってなるのだ」
俺の弁当、爆弾か。
「まぁいいや。いらないならそれでいい、嫌がらせでここでゆっくり飯を食わせてもらおう」
「邪魔なのだ。どっか行け」
ナコが何か言ってるが特に気にせず、近くの席から椅子を持ってきてナコの机の上に弁当を並べる。
「どっか行けと言ってるのに……人の話を聞かない奴なのだ。頭が悪いに違いないのだ」
「うっせ。しかし、この玉子焼きが絶品なんだよなあもさもさ」
「ふん。そんなこと言われても、信じないのだ。きっとおえーおえーな味なのだ」
「別に信じなくてもいいが……いやはや、それにしてもこの弁当はうめえ。我が親ながら、褒めてやりてえ」
「……そんなおいしいのか?」(じーっ)
先ほどまでの台詞はなんだったのか、と思うほどの熱視線をナコは俺の弁当箱に送った。
「欲しいのか?」
「い、いらないのだ。最初からそう言ってるのだ。いーからどっか行くのだ」
「どこにも行かないけど、本当この玉子焼きはうまい。焼き加減もさるものながら、玉子に染み込んだ出汁がたまらない」
「……せ、せめて説明はやめるのだ! 聞いてたらお腹がぐーぐー言うのだ!」
「俺は寝てる時にぐーぐー言う」
「誰でもそーなのだ! そんなことで張り合ってどうするのだ! もー! 怒ったらお腹空いたのだ! しょうがないからオマエの弁当食ってやるのだ! よこすのだ!」
「『どうかこの卑しい猿姫にお慈悲を、ご主人様』って言うなら、考えなくもない」
「ぜっっっっったいに言わないのだっ! ナコは猿じゃないのだ! ナコはナコなのだっ! それに、オマエをご主人様って呼ぶなんて、考えただけでもおえーって感じなのだ!」
「騒がしいなあむしゃむしゃ」
「誰のせいで騒がしいと思ってるのだっ! って、そんなこと言ってるうちにもう半分以上食べてるのだーっ!」
「大丈夫だ、ナコ。残りの飯がどれほどあろうとも、お前の胃袋に入る確率は万に一つもない」
「コイツ優しさが欠片もないのだ!」
「やらしさは欠片どころか塊でごろごろしてるよ?」
「うるさいのだっ! もー知らないのだ、オマエがここで弁当食べてるのが悪いのだ、取っちゃうのだっ!」
飛来した猿姫が俺の弁当を奪っていく。
「わははーのはー! ナコ、オマエの弁当いただいたのだー! ざまーみろなのだー! もしゃもしゃ……おいしーのだ!」
「ん。何よりだ」
そう言うと、ナコはきょとんとした。
「……あ、あの、ナコ、オマエの弁当取ったんだゾ? 怒らないのか?」
「怒って欲しいのか? ナコはMなのか。俺はSだし、ちょうどいいな!」
「違うのだ! そ、そじゃなくて、……いいのか?」
「お腹空いてたんだろ? いいさ」
「う……」
ナコは申し訳なさそうに視線を弁当箱に落とした。
「……返すのだ。ちょっぴり食べちゃったけど、まだ残ってるから大丈夫なのだ」
「これって間接キスだよなって言ったら」
「ぬが!? そ、そうなのだ、これを食べられたら間接キスになるのだ。困るのだ!」
既に今の時点で間接キスしているのだが、気づいていないようだし、黙っていよう。
「うぬー……な、ナコは気にしないのだ。そんなのヘッチャラなのだ。ちゃーらー、へっちゃらー、なのだ」
「太陽拳!!!!!」
「ぬぎゃー!? お、おっきな声出すな、ばか! びっくりするのだ! それになんで太陽拳なのだ!?」
「間接キスを気にしないなら、一緒に食うか」
「コイツちっとも聞いてないのだ!? て、ていうか、そんなの無理だ、ばか!」
「やはりナコみたいなお子様は、間接キスに気後れするか?」
「な! そ、そんなわけないのだ! ヘッチャラなのだ! ちゃーらー、へっちゃらー、なのだ!」
「太陽拳!!!!!」
「みぎゃー!? な、なんでまた太陽拳するのだ! って、またコイツ人の話聞かないで弁当食べてるのだ! ナコも食べるのだ!」
その後も何度か太陽拳をかましながら、ナコと一緒に弁当をつつきました。
【ツンデレに夜食は太るぞって言ったら】
2010年01月30日
いきなりまつりが押しかけてきたので、塩をまいたら大変怒られた。仕方ないので部屋にあげて遊んでたら夜中になった。
「ぬー……やいタカシ、わらわはお腹が空いたのじゃ。何かあまーいものを食べたいのじゃ。今すぐ用意せい」
「面倒だけど、他ならぬまつりの頼みだし、道端に落ちてる犬のフンをかりんとうと偽って用意するよ」
「普通に甘いものを用意せぬかっ! どうしてお前は普通に『ははー、分かりました、まつり様』と言えぬのじゃ? もっとわらわを崇めい、たわけめ」
それは普通じゃないなあ、と思いながらまつりのほっぺをむにーっと引っ張る。
「ははへっ、ははふはっ! はははひほふはほほひへ、ははへふふほほほっへひふほはーっ!」
「用意するのは構わんが、まつりよ。こんな夜中に飯なんか食って、太らないか?」
むにむにするのに満足したので手を離し、今度はまつりの腹をつんつくしながら訊ねる。
「わ、わらわが太っておると言うのかっ! わらわのどこに肉があるというのかや!?」
「……まあ、肉はないよな」
自然、視線が腹から胸へと移動して行く。
「あーっ!? いま、胸のことを! わらわの胸のことを言ったな!?」
「胸のことも言った」
「も!?」
イチイチうるせえ。
「とにかく、夜食は不許可。今すぐ餓死するとかじゃない限り、甘いものは出しません」
「が、餓死するぞよ? わらわ、今すぐ餓死するぞよ? あー、お腹きゅるきゅる、目の前真っ暗。今にも死にそうじゃわい。……の?」
の? とか言いながら俺を上目遣いで見るずるいお嬢さん。
「……はぁ。何がいい?」
「めろんぱん! 外はサクサクで、中はふわふわのがいいのじゃ! ぬべーっとしとるのはダメじゃぞ? あれは邪道じゃからのぉ」
「分かったよ。どっかでメロンとパン買ってくるよ」
「ちがわいっ! 別にパンの中にメロンが入ってるんじゃないのじゃ! あれはメロンパンという名の、メロンを模したパンなのじゃ! そんなことも分からぬとは、暗愚よのぅ。にゃーっはっはっはっは!」
「お前はそこで乾いていけ」
大変むかついたので、浮かしかけた腰を再び下ろして徹底抗戦の構えにつく。
「あっ、うそ、うそじゃ。わらわの可愛い嘘じゃ。こんな可愛い嘘にへそを曲げるほどおぬしは狭量な男ではないじゃろ? の?」
メロンパン奪還に向け、背中を向けた俺に抱きつき媚を売りまくるまつり。分かってるけど、こうもすりすりされては口をへの字に維持するのも至難の業だ。
「……まぁいいや。コンビニのでいいな?」
「うむ♪ 一緒にヤクルトも買ってくるのじゃ」
「……今更乳製品摂っても変わらんと思うが」
「またわらわの胸のことを!?」
「いや、今回は背」
「背!?」
胸を押さえたり頭押さえたり、忙しいなあ。
「いーから買ってくるのじゃ! 買ってくるのじゃ!」
「わーったよ。んじゃ、金くれ」
「ぬ? おごりに決まっておろう」
差し出した手を、そのまままつりの顔に押し付ける。
「ぬ?」
そして、万力のような力を持って締め付ける。
「みぎゃーっ!? 痛い痛い痛いのじゃー! 顔がー、わらわの顔がーっ!?」
「お金ください」
「やるやる、いくらでもやるのじゃー! じゃから一刻も早く手をのけるのじゃーっ!!!」
正しい取引が行えたので、まつりの顔から手を離す。
「ううううう……なんという悪辣な輩じゃ。火事にでも遭えばいいのじゃ」
「もしそうなったら、まつりの家に転がり込むしかないな」
「火の始末は大事じゃぞ!?」
防災の危機管理を聞いた後、まつりから金を貰ってコンビニへ。適当にメロンパンとヤクルトを買って帰宅。
「遅いのじゃ! お腹が減って死ぬかと思ったのじゃ!」
「もしゃもしゃ、すまん」
「なんでわらわのメロンパンを食っとるのじゃーっ!?」
面白いなあコイツ。
「よこせっ! ……ああ、半分も食べておるではないか。おぬしは鬼かえ?」
「人です」
半泣きで俺の歯型がついたメロンパンを見つめるまつり。こんなことで泣くな。
「ううう……こんな奴しか召使いがおらぬとは、わらわも堕ちたものよのぉ……はぐはぐ」
「誰が召使いだと一応つっこみつつ、俺との間接キスを何ら気にしないまつりに覇王のオーラを見た」
「にゃぐわっ!?」
「にゃぐわ?」
「な、なんでもないのじゃ。……さ、さて、わらわは貴様のような小者など気にしないので、引き続きパンを食うのじゃ」
とは言いながらも、それ以上口をつけようとはしない。視線はメロンパンと俺を行ったり来たり、頬は紅潮してなんとも言いがたい雰囲気に包まれている。
「そんな食いにくいなら、俺が反対側から食べてお前はその反対から食べる恋人食いをしても構わんが」
「余計食べにくいわっ! も、もうよい、黙っておれ。……わ、わらわは覇王となる者。この程度の困難、ちょちょいのちょいで乗り越えてくれるわっ!」
そう言うと、まつりは目をつむって大きく口を開けた。そして、がぷりとメロンパンをほうばった。
「むしゃむしゃむしゃ! ……ど、どうじゃ、わらわの偉業!」
「すげー」
「心がこもってないのじゃ。もっと心の底からわらわを褒め称えぬかっ!」
「パンひとつでそこまで偉そうにできるまつりに脱帽」
「……何か、いまひとつ嬉しくないのじゃが」
「不思議だねもぐもぐ」
「ぬー……ぬ? あああああっ! 貴様っ、どうしてわらわのパンを食べておるのじゃ!?」
さっきまでまつりの手にあったパンが、気がつけば俺の手の内に収まっている不思議。
「や、俺も小腹が減ってて」
そう言いながら、最後の欠片を口の中に入れる。なかなかどうして、最近のパンはコンビニのでもうまいなあ。
「わ、わらわのめろんぱんが! ……どーしてくれるのじゃ!」
「まあ、全部食うより美容のためにはいいじゃん」
「そ、それはそうじゃが……もしかして、そのためにわざと食ったのかえ?」
「いや、さっきも言ったように小腹が空いたから」
「コイツ適当じゃーっ! ばかめーっ! うわーんっ!」
半泣きでぺこぽこ叩いてくるまつりをいなすのに忙しい夜だった。
「ぬー……やいタカシ、わらわはお腹が空いたのじゃ。何かあまーいものを食べたいのじゃ。今すぐ用意せい」
「面倒だけど、他ならぬまつりの頼みだし、道端に落ちてる犬のフンをかりんとうと偽って用意するよ」
「普通に甘いものを用意せぬかっ! どうしてお前は普通に『ははー、分かりました、まつり様』と言えぬのじゃ? もっとわらわを崇めい、たわけめ」
それは普通じゃないなあ、と思いながらまつりのほっぺをむにーっと引っ張る。
「ははへっ、ははふはっ! はははひほふはほほひへ、ははへふふほほほっへひふほはーっ!」
「用意するのは構わんが、まつりよ。こんな夜中に飯なんか食って、太らないか?」
むにむにするのに満足したので手を離し、今度はまつりの腹をつんつくしながら訊ねる。
「わ、わらわが太っておると言うのかっ! わらわのどこに肉があるというのかや!?」
「……まあ、肉はないよな」
自然、視線が腹から胸へと移動して行く。
「あーっ!? いま、胸のことを! わらわの胸のことを言ったな!?」
「胸のことも言った」
「も!?」
イチイチうるせえ。
「とにかく、夜食は不許可。今すぐ餓死するとかじゃない限り、甘いものは出しません」
「が、餓死するぞよ? わらわ、今すぐ餓死するぞよ? あー、お腹きゅるきゅる、目の前真っ暗。今にも死にそうじゃわい。……の?」
の? とか言いながら俺を上目遣いで見るずるいお嬢さん。
「……はぁ。何がいい?」
「めろんぱん! 外はサクサクで、中はふわふわのがいいのじゃ! ぬべーっとしとるのはダメじゃぞ? あれは邪道じゃからのぉ」
「分かったよ。どっかでメロンとパン買ってくるよ」
「ちがわいっ! 別にパンの中にメロンが入ってるんじゃないのじゃ! あれはメロンパンという名の、メロンを模したパンなのじゃ! そんなことも分からぬとは、暗愚よのぅ。にゃーっはっはっはっは!」
「お前はそこで乾いていけ」
大変むかついたので、浮かしかけた腰を再び下ろして徹底抗戦の構えにつく。
「あっ、うそ、うそじゃ。わらわの可愛い嘘じゃ。こんな可愛い嘘にへそを曲げるほどおぬしは狭量な男ではないじゃろ? の?」
メロンパン奪還に向け、背中を向けた俺に抱きつき媚を売りまくるまつり。分かってるけど、こうもすりすりされては口をへの字に維持するのも至難の業だ。
「……まぁいいや。コンビニのでいいな?」
「うむ♪ 一緒にヤクルトも買ってくるのじゃ」
「……今更乳製品摂っても変わらんと思うが」
「またわらわの胸のことを!?」
「いや、今回は背」
「背!?」
胸を押さえたり頭押さえたり、忙しいなあ。
「いーから買ってくるのじゃ! 買ってくるのじゃ!」
「わーったよ。んじゃ、金くれ」
「ぬ? おごりに決まっておろう」
差し出した手を、そのまままつりの顔に押し付ける。
「ぬ?」
そして、万力のような力を持って締め付ける。
「みぎゃーっ!? 痛い痛い痛いのじゃー! 顔がー、わらわの顔がーっ!?」
「お金ください」
「やるやる、いくらでもやるのじゃー! じゃから一刻も早く手をのけるのじゃーっ!!!」
正しい取引が行えたので、まつりの顔から手を離す。
「ううううう……なんという悪辣な輩じゃ。火事にでも遭えばいいのじゃ」
「もしそうなったら、まつりの家に転がり込むしかないな」
「火の始末は大事じゃぞ!?」
防災の危機管理を聞いた後、まつりから金を貰ってコンビニへ。適当にメロンパンとヤクルトを買って帰宅。
「遅いのじゃ! お腹が減って死ぬかと思ったのじゃ!」
「もしゃもしゃ、すまん」
「なんでわらわのメロンパンを食っとるのじゃーっ!?」
面白いなあコイツ。
「よこせっ! ……ああ、半分も食べておるではないか。おぬしは鬼かえ?」
「人です」
半泣きで俺の歯型がついたメロンパンを見つめるまつり。こんなことで泣くな。
「ううう……こんな奴しか召使いがおらぬとは、わらわも堕ちたものよのぉ……はぐはぐ」
「誰が召使いだと一応つっこみつつ、俺との間接キスを何ら気にしないまつりに覇王のオーラを見た」
「にゃぐわっ!?」
「にゃぐわ?」
「な、なんでもないのじゃ。……さ、さて、わらわは貴様のような小者など気にしないので、引き続きパンを食うのじゃ」
とは言いながらも、それ以上口をつけようとはしない。視線はメロンパンと俺を行ったり来たり、頬は紅潮してなんとも言いがたい雰囲気に包まれている。
「そんな食いにくいなら、俺が反対側から食べてお前はその反対から食べる恋人食いをしても構わんが」
「余計食べにくいわっ! も、もうよい、黙っておれ。……わ、わらわは覇王となる者。この程度の困難、ちょちょいのちょいで乗り越えてくれるわっ!」
そう言うと、まつりは目をつむって大きく口を開けた。そして、がぷりとメロンパンをほうばった。
「むしゃむしゃむしゃ! ……ど、どうじゃ、わらわの偉業!」
「すげー」
「心がこもってないのじゃ。もっと心の底からわらわを褒め称えぬかっ!」
「パンひとつでそこまで偉そうにできるまつりに脱帽」
「……何か、いまひとつ嬉しくないのじゃが」
「不思議だねもぐもぐ」
「ぬー……ぬ? あああああっ! 貴様っ、どうしてわらわのパンを食べておるのじゃ!?」
さっきまでまつりの手にあったパンが、気がつけば俺の手の内に収まっている不思議。
「や、俺も小腹が減ってて」
そう言いながら、最後の欠片を口の中に入れる。なかなかどうして、最近のパンはコンビニのでもうまいなあ。
「わ、わらわのめろんぱんが! ……どーしてくれるのじゃ!」
「まあ、全部食うより美容のためにはいいじゃん」
「そ、それはそうじゃが……もしかして、そのためにわざと食ったのかえ?」
「いや、さっきも言ったように小腹が空いたから」
「コイツ適当じゃーっ! ばかめーっ! うわーんっ!」
半泣きでぺこぽこ叩いてくるまつりをいなすのに忙しい夜だった。
【ツンデレは寂しがってるようです】
2010年01月30日
パソコンが壊れた&中のエロデータバックアップ取ってないという素敵すぐるコンボが炸裂した結果、精神が崩壊したので数日学校を休んだ。
部屋の隅っこで三角座りをして精神を修復する作業をしていると、ぴんぽーんという音が部屋に鳴り響いた。
はてこんな昼日中にいったい誰だろう。親は仕事で出ているし……宅配便の人かな? しかし、今出迎えたら誰彼かまわず襲い掛かるであろう精神状態だから無視しよう。
そんなわけで再び隅っこ座り大戦MXを行っていたら、ピンポーンという音は絶えたが今度はドアをガチャガチャと動かす音が。
すわ強盗か、と心臓をびっくらさせていたが、鍵はしていたと一安心していたのにガチャッて音が! 開いたよ、ドア!
見つかったら死ぬのかなあ、とか思いながらガクブルしてると、階段をトントンと軽快に上がってくる闖入者。いやいやいや! 普通居間とか探すだろ!
……こ、こうなったらやられる前に殺れ、だ! 手近な物で武器になるもの──き、キンチョールしかねえ!
などと一人狼狽してたら部屋のドアがガチョリと! ええい頑張れ男の子、気合一閃殺虫剤を構え叫ぶ!
「動くな! 少しで動けばプシューだぞ!」
闖入者の頭に噴射口を突きつけ、ニヒルに言い放つ。
「……それでどうして動かないと思うのか。やはりタカシの頭はおかしい」
闖入者は見知らぬ人物ではなく、ちなみだった。
「なんだ……ちなみかよ。てっきり強盗かと思ったじゃねえか」
「……実は強盗。金を出せ」
「少しでも動くとプシューだ!」
ちなみの顔に噴射口を再び向けると、迷惑そうな顔をされた。
「……そんなのは、いい。……それより、どうして学校に来ないのか」
「ああ、そのことか」
事細かに登校できない理由を説明したら、どうしたことかちなみの顔が呆れたものに。
「……そんなことで学校に来ないとか。タカシの頭は私の想像以上に進行が進んでいたか」
「人を勝手に病人扱いするない。だいたい、そんなことと言うが、俺にとっては一大事なんだぞ? 数年分のデータが……嗚呼!」
消えたデータに再び思いを馳せていると、トントンと肩を叩く感触。顔を上げると、ちなみの──
「…………」(にやにや)
にやけ顔が! チクショウ、馬鹿にしてやがる!
「……とにかく、身体に異常がないのであれば学校に来ること。じゃないと、寂しがる人がいる」
「ほう! 例えば、誰?」
「…………。……?」
「そこで首を傾げられたら俺の心が折れること請け合い!」
「……待って。いま思い出す。うーんうーん」
腕を組んで考え込まれた。泣きそう。
「……ええと。その、だいじょぶ。人間、一人でも案外へーき」
「チクショウ! 誰一人として検索に引っかからなかった!」
「……まあ、気にしない気にしない。ほら、学校行こ」
「嫌だ。俺はこの鉄の城に一生篭もって将来的にはあしゅら男爵と戦うの?」
「……どうして疑問系」
「恐らくだけど、最初に部屋を鉄の城などと呼称したせいでマジンガーZと勘違いしたため起こった現象だろう」
「……はぁ」
呆れられた。よく呆れられます。
「……とにかく、一緒に学校行く。じゃないと、つまんない」
「む? それはつまり、俺がいないとちなみんは寂しいと?」
「……そんなことは言ってない。まったく、勝手極まること極まりない」
「極まるな。そんなことよりだな、ちなみさん。もしお前が寂しいと一言告げたなら、俺様学校に行くこと請け合い」
「…………」
「蔑みの視線じゃなくて! 優しくて甘い言葉を!」
「……はぁ。ええと、さみしー」
「そんな棒読みではなくて! もっと感情豊かに!」
「……さしみー」
「刺身!?」
「……ほら、満足したら学校行く」
何一つとして満足してないのに、無理やり着替えさせられ学校へ。……まあ、いい機会だし、いっか。
学校では昼休みの最中だった。昼飯など持ってきてないのでぐーぐー腹を鳴らして久々の学校を見物してると、ちなみがちょこちょこ俺の席までやってきた。
「……はい、これ」
そう言って俺に渡したのは、小さなパンだった。
「ここは手作りの弁当を渡して俺の好感度を上げるチャンスではないのか?」
「…………」
「ちなみの厚意に感謝致します!」
パンを奪われそうになったので素早く感謝の言葉を言って飯にかぶりつく。やれやれ。
そうやってもしゃもしゃしてたら、女生徒が寄ってきた。
「あ、別府くん来たんだ。よかったね、ちなみ。アンタずーっと寂しがってたもん」
「ふぇ!?」
ちなみ方面から変な声が出た。
「ち、ちが、そ、そんな、私ちっとも寂しくなんて!」
「いやー、どうしたものかと困ってたのよ、実際。ずーっと俯いててさ、時々別府くんの席見てはため息ついて。もう休んじゃダメだよ、別府くん?」
言いたいことだけ言って、女生徒は自分の席へ戻っていった。
「……何」
ぶすーっとした表情で、しかし顔は赤いままでちなみが不満そうに小さくうめく。
「や、マジで寂しがられていたとは。これからは何があっても毎日来るから安心しろ」
「……あ、安心とか意味分かんない。ずっと来なかったらいいのに。毎日平和だったのに」
「はっはっは。ちなみんは可愛いなあ」
ぶすーっとしたちなみのほっぺをうにうにつつく。
「……迷惑」
そう言いながらも、されるがままのちなみだった。
部屋の隅っこで三角座りをして精神を修復する作業をしていると、ぴんぽーんという音が部屋に鳴り響いた。
はてこんな昼日中にいったい誰だろう。親は仕事で出ているし……宅配便の人かな? しかし、今出迎えたら誰彼かまわず襲い掛かるであろう精神状態だから無視しよう。
そんなわけで再び隅っこ座り大戦MXを行っていたら、ピンポーンという音は絶えたが今度はドアをガチャガチャと動かす音が。
すわ強盗か、と心臓をびっくらさせていたが、鍵はしていたと一安心していたのにガチャッて音が! 開いたよ、ドア!
見つかったら死ぬのかなあ、とか思いながらガクブルしてると、階段をトントンと軽快に上がってくる闖入者。いやいやいや! 普通居間とか探すだろ!
……こ、こうなったらやられる前に殺れ、だ! 手近な物で武器になるもの──き、キンチョールしかねえ!
などと一人狼狽してたら部屋のドアがガチョリと! ええい頑張れ男の子、気合一閃殺虫剤を構え叫ぶ!
「動くな! 少しで動けばプシューだぞ!」
闖入者の頭に噴射口を突きつけ、ニヒルに言い放つ。
「……それでどうして動かないと思うのか。やはりタカシの頭はおかしい」
闖入者は見知らぬ人物ではなく、ちなみだった。
「なんだ……ちなみかよ。てっきり強盗かと思ったじゃねえか」
「……実は強盗。金を出せ」
「少しでも動くとプシューだ!」
ちなみの顔に噴射口を再び向けると、迷惑そうな顔をされた。
「……そんなのは、いい。……それより、どうして学校に来ないのか」
「ああ、そのことか」
事細かに登校できない理由を説明したら、どうしたことかちなみの顔が呆れたものに。
「……そんなことで学校に来ないとか。タカシの頭は私の想像以上に進行が進んでいたか」
「人を勝手に病人扱いするない。だいたい、そんなことと言うが、俺にとっては一大事なんだぞ? 数年分のデータが……嗚呼!」
消えたデータに再び思いを馳せていると、トントンと肩を叩く感触。顔を上げると、ちなみの──
「…………」(にやにや)
にやけ顔が! チクショウ、馬鹿にしてやがる!
「……とにかく、身体に異常がないのであれば学校に来ること。じゃないと、寂しがる人がいる」
「ほう! 例えば、誰?」
「…………。……?」
「そこで首を傾げられたら俺の心が折れること請け合い!」
「……待って。いま思い出す。うーんうーん」
腕を組んで考え込まれた。泣きそう。
「……ええと。その、だいじょぶ。人間、一人でも案外へーき」
「チクショウ! 誰一人として検索に引っかからなかった!」
「……まあ、気にしない気にしない。ほら、学校行こ」
「嫌だ。俺はこの鉄の城に一生篭もって将来的にはあしゅら男爵と戦うの?」
「……どうして疑問系」
「恐らくだけど、最初に部屋を鉄の城などと呼称したせいでマジンガーZと勘違いしたため起こった現象だろう」
「……はぁ」
呆れられた。よく呆れられます。
「……とにかく、一緒に学校行く。じゃないと、つまんない」
「む? それはつまり、俺がいないとちなみんは寂しいと?」
「……そんなことは言ってない。まったく、勝手極まること極まりない」
「極まるな。そんなことよりだな、ちなみさん。もしお前が寂しいと一言告げたなら、俺様学校に行くこと請け合い」
「…………」
「蔑みの視線じゃなくて! 優しくて甘い言葉を!」
「……はぁ。ええと、さみしー」
「そんな棒読みではなくて! もっと感情豊かに!」
「……さしみー」
「刺身!?」
「……ほら、満足したら学校行く」
何一つとして満足してないのに、無理やり着替えさせられ学校へ。……まあ、いい機会だし、いっか。
学校では昼休みの最中だった。昼飯など持ってきてないのでぐーぐー腹を鳴らして久々の学校を見物してると、ちなみがちょこちょこ俺の席までやってきた。
「……はい、これ」
そう言って俺に渡したのは、小さなパンだった。
「ここは手作りの弁当を渡して俺の好感度を上げるチャンスではないのか?」
「…………」
「ちなみの厚意に感謝致します!」
パンを奪われそうになったので素早く感謝の言葉を言って飯にかぶりつく。やれやれ。
そうやってもしゃもしゃしてたら、女生徒が寄ってきた。
「あ、別府くん来たんだ。よかったね、ちなみ。アンタずーっと寂しがってたもん」
「ふぇ!?」
ちなみ方面から変な声が出た。
「ち、ちが、そ、そんな、私ちっとも寂しくなんて!」
「いやー、どうしたものかと困ってたのよ、実際。ずーっと俯いててさ、時々別府くんの席見てはため息ついて。もう休んじゃダメだよ、別府くん?」
言いたいことだけ言って、女生徒は自分の席へ戻っていった。
「……何」
ぶすーっとした表情で、しかし顔は赤いままでちなみが不満そうに小さくうめく。
「や、マジで寂しがられていたとは。これからは何があっても毎日来るから安心しろ」
「……あ、安心とか意味分かんない。ずっと来なかったらいいのに。毎日平和だったのに」
「はっはっは。ちなみんは可愛いなあ」
ぶすーっとしたちなみのほっぺをうにうにつつく。
「……迷惑」
そう言いながらも、されるがままのちなみだった。


