[PR]
2026年03月21日
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
【沙夜 節分】
2010年02月02日
幼馴染の沙夜が豆まきをしたいという目で俺を見る。
「いや、どんな目だ」
「…………?」
「や、なんでもない。ええと、間違ってたら謝るが、ひょっとして豆まきがしたいのか?」
沙夜はコクコクうなずいた。
「……すげぇな、幼馴染の以心伝心ぱぅわー」
「…………?」
「なんでもない。しかし、なんでまたこんな微妙な時期に? やるなら節分の時にすればいいものを」
沙夜の目が『するの忘れてた』と訴えてきた。
「にゃるほど。ドジ」
沙夜のほっぺがぷくーっと膨れる。
「怒るねい。しかし、豆ねぇ……あったかなあ」
冷蔵庫の中身を思い出していると、沙夜はポケットをごそごそと探り、何かを取り出した。
「用意周到ですね」
コクコクうなずきながら、沙夜は取り出した袋から豆を何粒か取り出した。そして、大きく振りかぶった。
すわ豆惨殺事件発生か、と思ったが、沙夜は振りかぶった手の動きを緩め、ゆっくり俺の口の前まで持ってきた。
「え、まかないのか? 食うの?」
沙夜はコクコクうなずくと、俺に向け口を大きく開けた。
「……えと、ひょっとして、あーんしろって?」
大きく口を開けると、正解だったのか、沙夜はにっこり笑って俺の口の中に豆を一粒入れた。
「もむもむ。ふむ、おいしい」
豆を味わっていると、沙夜は俺に豆を一粒渡し、あーんと口を開いた。
「交代ですか」
嬉しそうにコクコクうなずくと、沙夜はおあーんと口を開けた。
「ふむ。沙夜、おあずけ、おあずけだ」
沙夜はおあえーんと口を開けたまま、じっと待った。
「いやはや、犬っぽくて可愛いなあ!」
何かが気に障ったのだろう、沙夜がじとーっとした目つきで俺を見る。
「冗談だよ。ほれ、あーん」
沙夜の口の中に豆を一粒入れ、さて戻ろうかと思った瞬間に指ごと捕食された。
「沙夜さん、食うのは豆であり、俺の指は食べ物ではないので出しなさい」
淡々と説明したのに、沙夜ときたら俺の話なんてちっとも聞かずに人の指をぺろぺろするばかり。
「出せ」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「いや、ぷるぷるじゃなくて」
引き抜こうとしたら、沙夜は両手で俺の手を持ち、そのまま固定しやがった。
「百歩譲って豆まきが豆を食べさせあうのはいい。だが、これは確実に豆まきではないと思うが」
沙夜は分からないフリをして、俺の指に舌をからませた。いや、気持ちいいけど。
「楽しそうですね」
「♪」
「はぁ……まあいいや」
空いてる手で豆を拾い、ぽりぽり食う。煎ってあっておいしい。
「…………」
ふと、沙夜の舌が止まっていることに気づいた。ようやっと飽きてくれたか。
「ん? どした」
沙夜は俺の指から口を離すと、あーんと口を開けた。
「あー、俺が豆食ってるの見て自分も欲しくなった、と」
沙夜はコクコクうなずいた。
「しょーがねーなぁ……ほれ、あーん」
おあーんと開いてる口に、豆を入れる。そして、猿も驚くほどの素早さをもって指を引き抜く。失敗。
「♪」
両手でがっしり固定し、沙夜は俺の指をぺろぺろ舐めた。
「いや、あのさ。豆食えよ、豆」
沙夜は一旦俺の指を口から離すと、口の中に入れておいた豆をぼりぼり食べた。そして、すぐに俺の指を口に含んだ。
「……いや、食べたら指舐めてもいいという話ではない」
「…………」(うるうる)
「だけど俺は度量が宇宙一広いので舐めてもいいから泣かないでくださいお願いします!」
沙夜は簡単に泣き止むと、俺の指をちゅーちゅー吸い始めた。
「嘘泣きとか、ずるいと思うます」
沙夜はなんのことか分からないフリをして、楽しそうに俺の指を舐めるのだった。
「いや、どんな目だ」
「…………?」
「や、なんでもない。ええと、間違ってたら謝るが、ひょっとして豆まきがしたいのか?」
沙夜はコクコクうなずいた。
「……すげぇな、幼馴染の以心伝心ぱぅわー」
「…………?」
「なんでもない。しかし、なんでまたこんな微妙な時期に? やるなら節分の時にすればいいものを」
沙夜の目が『するの忘れてた』と訴えてきた。
「にゃるほど。ドジ」
沙夜のほっぺがぷくーっと膨れる。
「怒るねい。しかし、豆ねぇ……あったかなあ」
冷蔵庫の中身を思い出していると、沙夜はポケットをごそごそと探り、何かを取り出した。
「用意周到ですね」
コクコクうなずきながら、沙夜は取り出した袋から豆を何粒か取り出した。そして、大きく振りかぶった。
すわ豆惨殺事件発生か、と思ったが、沙夜は振りかぶった手の動きを緩め、ゆっくり俺の口の前まで持ってきた。
「え、まかないのか? 食うの?」
沙夜はコクコクうなずくと、俺に向け口を大きく開けた。
「……えと、ひょっとして、あーんしろって?」
大きく口を開けると、正解だったのか、沙夜はにっこり笑って俺の口の中に豆を一粒入れた。
「もむもむ。ふむ、おいしい」
豆を味わっていると、沙夜は俺に豆を一粒渡し、あーんと口を開いた。
「交代ですか」
嬉しそうにコクコクうなずくと、沙夜はおあーんと口を開けた。
「ふむ。沙夜、おあずけ、おあずけだ」
沙夜はおあえーんと口を開けたまま、じっと待った。
「いやはや、犬っぽくて可愛いなあ!」
何かが気に障ったのだろう、沙夜がじとーっとした目つきで俺を見る。
「冗談だよ。ほれ、あーん」
沙夜の口の中に豆を一粒入れ、さて戻ろうかと思った瞬間に指ごと捕食された。
「沙夜さん、食うのは豆であり、俺の指は食べ物ではないので出しなさい」
淡々と説明したのに、沙夜ときたら俺の話なんてちっとも聞かずに人の指をぺろぺろするばかり。
「出せ」
ぷるぷるぷる。沙夜の首が横に振られる。
「いや、ぷるぷるじゃなくて」
引き抜こうとしたら、沙夜は両手で俺の手を持ち、そのまま固定しやがった。
「百歩譲って豆まきが豆を食べさせあうのはいい。だが、これは確実に豆まきではないと思うが」
沙夜は分からないフリをして、俺の指に舌をからませた。いや、気持ちいいけど。
「楽しそうですね」
「♪」
「はぁ……まあいいや」
空いてる手で豆を拾い、ぽりぽり食う。煎ってあっておいしい。
「…………」
ふと、沙夜の舌が止まっていることに気づいた。ようやっと飽きてくれたか。
「ん? どした」
沙夜は俺の指から口を離すと、あーんと口を開けた。
「あー、俺が豆食ってるの見て自分も欲しくなった、と」
沙夜はコクコクうなずいた。
「しょーがねーなぁ……ほれ、あーん」
おあーんと開いてる口に、豆を入れる。そして、猿も驚くほどの素早さをもって指を引き抜く。失敗。
「♪」
両手でがっしり固定し、沙夜は俺の指をぺろぺろ舐めた。
「いや、あのさ。豆食えよ、豆」
沙夜は一旦俺の指を口から離すと、口の中に入れておいた豆をぼりぼり食べた。そして、すぐに俺の指を口に含んだ。
「……いや、食べたら指舐めてもいいという話ではない」
「…………」(うるうる)
「だけど俺は度量が宇宙一広いので舐めてもいいから泣かないでくださいお願いします!」
沙夜は簡単に泣き止むと、俺の指をちゅーちゅー吸い始めた。
「嘘泣きとか、ずるいと思うます」
沙夜はなんのことか分からないフリをして、楽しそうに俺の指を舐めるのだった。
PR
【ツンデレとバレンタイン】
2010年02月02日
今年はバレンタインが土曜日なので、残念ながら学校は休みだ。いや、本当に残念だ。学校があれば死ぬほどもらえたろうになあ!
……な、泣いてないよ、泣いてないよ!?(見えない何かに必死に抵抗)
落ちてたタオルで目元を拭っていると、インターホンが鳴った。はてこんな日に一体誰が。……ひょひょひょっとして可愛いおにゃのこが俺の家をつきとめ、ち、ち、ち、チョコを!?
矢も楯もたまらず転がるように受話器を取り、耳元にあてる。
「は、は、はい」
『別府くん、先生です。先生が来ました。開けてください』
「その声は大谷先生か。聞こえてくるロリ声に、一瞬にしてテンションが下がった」
『なんでいきなりテンション下がるんですか! あとロリ声ってなんですか! 先生、大人なので低音の魅力満載ですよ! ごあー!』
「ごあー?」
『そです。ごあーです。分かったら、開けてください』
「先生がそこで『お兄ちゃん♪』って媚びたら開ける」
『絶対に嫌ですッ! 先生、大人ですから別府くんはお兄ちゃんじゃないです! むしろ別府くんが先生をお姉ちゃんと呼ぶべきです! ほら、呼んでください!』
「お姉ちゃん」
『……て、照れますね』
「満足したら帰れ変態」
『へ、変態なんかじゃないです! 変態は別府くんの方です!』
「まあ、否定はしないが」
『そこは否定してくだたいっ!』
「くだたい?」
「もー! 揚げ足取らないでください! ちょっと用があったんで来たんです! いーから開けてください!』
なかなか愉快だったが、あんまり玄関先で喚かれても迷惑なんで、家にあげることにした。
「まったくもー……どして家に入るだけでこんな苦労しなくちゃならないんですか?」
ぶちぶち言いながら、自称大人の大谷先生が家に入ってきた。小さな体に似つかわしくない大きな鞄を持っている。なんだ?
「苦労した方が喜びもひとしおだろ」
「こんなことで苦労なんてしなくていいんですっ!」
「いやはや」
「いやはやじゃないですよぅ。……さて」
そう言うと、先生は居住まいを正し、俺に向き直った。
「先生、大人なので来るもの拒まずです」
「先生のビッチ宣言に、思わずしおしお」
「ちちち違いますっ! 何を言うですか貴方は!? まだしたことないです!」
「ほほう、それは興味深い情報だ」
「うぐ……な、何を言わせるですかっ! そ、そんなのはどーでもいいんです、どーでも」
先生は顔を赤くしながら、何でもない風を装った。
「そじゃなくて、その……きょ、今日は何の日か知ってます……よね?」
「全人類の半数が俺の元へチョコを届けに疾走する日だ。現在までに、数十万人が俺の元へチョコを届けに参った」
「……どこにあるんですか、その大量のチョコは」
「食った」
「質量保存の法則に従うと、別府くんのお腹は破裂してますよ?」
「食ったそばから消化するんだ。今日だけで既に両手両足では足りない数便所へ走った」
「きちゃないですっ! そんな強がりはいーんです。そもそも、今日は逆チョコの日ですよ?」
何を言ってるのだろう、この人は。
「さ、先生にチョコレートください。あ、だいじょぶですよ。先生、義理でも全然おっけーですから♪」
何を言ってるのだろう、この人は。
「別府くんはどんなチョコくれるんですか? 先生、ごでぃばっての食べてみたいです」
よく分からないが、スイーツ臭がするのでご退場願おう。
「べ、別府くん!? ほうき、それホウキです! 先生、ホウキで転がされてます!」
「大丈夫、ホウキは使い慣れてる」
「そんな心配してませんっ! ぷわっ、埃が、埃が口の中に入りましたよ!?」
「死にはしないさ。あ」
「みぎゃー!?」
先生はごろごろ転がされ、段差にどすんと頭から落ちた。
「うぐぐぐ……痛いです、頭が割れそうです」
「あー……ごめん。頭痛薬取ってくる」
「そんなのじゃ取れない痛みですっ!」
「薬じゃ治らない病……やれやれ、恋の病か。やっかいだな」
「やっかいなのは別府くんの頭ですっ! もー、先生をホウキで掃く生徒なんて、聞いたことありません!」
「奇遇だな、俺もだ」
「ぎにゃー!」
先生が怒った。怒った?
「別府くん! ちょっとそこに座りなさい!」
「はい」
「誰も先生の膝に座れなんて言ってませんよ!? 重い、重いです!」
「教職を預かる者が、この程度の重圧に根を上げてどうする」
「物理的に重いんです! うぐー、うぐぐー、膝が潰れますー!」
割とマジっぽかったので、腰を浮かす。先生はほっとしたように息を吐いた。
「どして先生を掃くんですか! 先生、埃まみれで誇りが汚れちゃいましたよ! ……ふふん?」
「別にうまくないですが」
「ええっ!?」
ええじゃねえ。
「ええと、先生を掃いた理由は、簡単に言うとスイーツ連中は殺せって電波が囁くんだ」
「うちの生徒がもうダメです!」
もうダメとか言うな。
「冗談はともかく、一応聞いておくが、逆チョコのためにうちに来たのか?」
「別府くんのおうちだけじゃなくて、他の生徒たちの家にも行きました。いっぱいチョコもらいました♪」
そう言うと、先生は持っていた鞄を開けた。チョコレートが山と詰め込まれている。
「いー風習ですよね、逆チョコ♪ 甘いのいっぱい食べれて、先生幸せです♪」
「あー、一応聞いておくが、お返しにちゃんと先生もチョコあげたんだろうな?」
「どしてですか? 先生のチョコがなくなるじゃないですか」
「……そですか」
きっと他の連中も知らず家にあげてしまい、先生に請われてチョコを買いに走ったのだろう。お返しのチョコがないとも知らず。哀れな……。
「さっ、それじゃ、別府くんの番です。チョコください」
「……はぁ。別にいいけど、チョコを溶かして俺の分身に塗りたくるから、恍惚とした表情でぺろぺろ舐めてくれよな」
「別府くんとてもえっちですっ!!!」
それが何を指すのかを一瞬で察知したのだろう、先生は全力で顔を赤くした。
「だって、合法ロリだし、いいかなーって。てへ」
「なんですか合法ロリって! 先生、大人ですからロリとか言う単語は似つかわしくないんです! いーからください! チョコ! ちょーこー!」
先生はその場に横になり、じたじたと暴れだした。どこが大人だ。
「分かった、分かったから暴れるな。スカートの中が丸見えだぞ」
「みっ、見ないでくださいっ! 別府くんえっちです!」
しゅばっと居住まいを正し、先生は俺を睨んだ。
「むー……み、見ましたか?」
「当然だろ。くまぱん!」
「うわぁぁん! 別府くんが『やーい、先生の見た目にお似合いだぁー』って吹聴しますー!」
してねえ。物まねがムカツク。
「ほら、泣くな。チョコ買ってきてやるから」
「ぐすぐす……本当ですか?」
「ああ。麦チョコとチロルチョコのどっちがいい?」
「安く済まそうとされてますー! うぇぇぇん!」
厄介。厄介だ、この人。
結局何がいいのか分からなかったので、近所のコンビニまで一緒に来た。
「しっかし、あれだけもらっておいて、まだもらおうとするとは……本当にチョコが好きなんだな、先生」
「え、えーと……まあ、それもそうなんですが」
先生は恥ずかしげにうつむき、指と指をくにくにと合わせた。
「? まぁいいや、入るぞ」
むぃぃぃんと自動ドアが開く。らっしゃっせーという店員のやる気のない声を受け、中へ。
「んと……どれがいーですかね。別府くん、選んでください」
「これ」
「チロルチョコです! 20円です! 不許可です!」
「贅沢だなあ……じゃ、これで」
「おせんべです! もはやチョコですらないです!」
「食いたくなったんだ」
「むー……別に買ってもいいですけど、ちゃんとチョコも買ってくださいよね、チョコ」
「へーへー」
先生と一緒にぷらぷらと店内を探索する。どれにしようかと思ってたら、視界に隅っこに先生が俺の持つカゴの中に何か入れようとしているのが映った。
「何やってんだ、先生」
「ひゃうわっ!? ちち違います、違います!」
「……『マシュマロ』」
「だだっ、だってだってだって! おいしそーだったんですもん!」
「没収」
「あああああ……」
元あった場所にマシュマロを戻すと、先生は力なくうな垂れた。
「ましゅまろー……」
「嫌と言うほどチョコを食えるんだから、いらないだろ」
「それはそれとして、食べたかったんですー。別府くんのばか」
「自分で買えよ……」
「ヤです」
このわがまま合法ロリが……あとでヒィヒィ言わせてやる。
「うぅ? なんか寒気が……」
「俺の思考が先生に流れ込んだんだろ」
「なんかとっても怖いですっ!」
などとぎゃーぎゃー言い合いながら、しばし店内をうろつく。その甲斐もあって、どうにか先生のお眼鏡に適うチョコを見つけた。
「ポッキーねえ。うまいけど、こんなのでいいのか?」
「いいです。ポッキー、おいしいです」
レジで清算して、店を出る。
「あれ?」
一緒に出てきたと思ったが、先生はなぜかまだ店内にいた。一度お菓子コーナーに戻り、何かを掴んでレジで清算してる。
……ああ、マシュマロか。なんか知らんが欲しがってたし。
「はぁはぁ……そ、それじゃ行きましょ、別府くん?」
「おっけー」
先生と一緒に帰宅。
「さて。それじゃ、はい。逆チョコとかいう不愉快な風習」
「ものすっごく受け取りづらいですっ!」
先生はとても嫌そうな顔をしながら俺のポッキーを受け取った。
「……えへ」
しかし、受け取った途端、嬉しそうに先生の顔が綻んだ。
「まあ、嬉しそうで何よりだ」
「べ、別に別府くんにもらったから嬉しいんじゃないですよ!? ち、チョコが好きだからですよ!?」
「一発芸、まな板の上の鯉」
「なんでこのタイミングで一発芸なんてするんですかっ!」
「いや、お茶を濁さないといてもたってもいられなくて」
「あ、あぅぅ……」
先生の顔が真っ赤になった。ええい。
「い、いーからもう帰れ。チョコはやったぞ」
「あ、あの、あのあの、そーしたいんですけど、そのあの、……こ、これ」
先生は持ってたコンビニの袋を探った。マシュマロがどうしたってんだ。
「……あ、あの、これ。どぞ」
そう言って差し出されたのは、マシュマロではなく、見紛うことなきチョコレートだった。
「え。えと?」
「……きょ、今日はバレンタインです。ほほほら、逆チョコもらったし! お、お返し、お返しですよぅ! やだなあ別府くん、意識しちゃって!」
「いや、他の生徒にはやってないとか言って」
「なな何のことか先生分かりません、分かりませんとも! そ、それじゃ別府くん、また学校で!」
呆然とする俺にチョコを渡すと、先生は顔を真っ赤にしたまま部屋から飛び出していった。
「はは……」
手に残るチョコレートに、我知らず笑いが込み出てくるのだった。
……な、泣いてないよ、泣いてないよ!?(見えない何かに必死に抵抗)
落ちてたタオルで目元を拭っていると、インターホンが鳴った。はてこんな日に一体誰が。……ひょひょひょっとして可愛いおにゃのこが俺の家をつきとめ、ち、ち、ち、チョコを!?
矢も楯もたまらず転がるように受話器を取り、耳元にあてる。
「は、は、はい」
『別府くん、先生です。先生が来ました。開けてください』
「その声は大谷先生か。聞こえてくるロリ声に、一瞬にしてテンションが下がった」
『なんでいきなりテンション下がるんですか! あとロリ声ってなんですか! 先生、大人なので低音の魅力満載ですよ! ごあー!』
「ごあー?」
『そです。ごあーです。分かったら、開けてください』
「先生がそこで『お兄ちゃん♪』って媚びたら開ける」
『絶対に嫌ですッ! 先生、大人ですから別府くんはお兄ちゃんじゃないです! むしろ別府くんが先生をお姉ちゃんと呼ぶべきです! ほら、呼んでください!』
「お姉ちゃん」
『……て、照れますね』
「満足したら帰れ変態」
『へ、変態なんかじゃないです! 変態は別府くんの方です!』
「まあ、否定はしないが」
『そこは否定してくだたいっ!』
「くだたい?」
「もー! 揚げ足取らないでください! ちょっと用があったんで来たんです! いーから開けてください!』
なかなか愉快だったが、あんまり玄関先で喚かれても迷惑なんで、家にあげることにした。
「まったくもー……どして家に入るだけでこんな苦労しなくちゃならないんですか?」
ぶちぶち言いながら、自称大人の大谷先生が家に入ってきた。小さな体に似つかわしくない大きな鞄を持っている。なんだ?
「苦労した方が喜びもひとしおだろ」
「こんなことで苦労なんてしなくていいんですっ!」
「いやはや」
「いやはやじゃないですよぅ。……さて」
そう言うと、先生は居住まいを正し、俺に向き直った。
「先生、大人なので来るもの拒まずです」
「先生のビッチ宣言に、思わずしおしお」
「ちちち違いますっ! 何を言うですか貴方は!? まだしたことないです!」
「ほほう、それは興味深い情報だ」
「うぐ……な、何を言わせるですかっ! そ、そんなのはどーでもいいんです、どーでも」
先生は顔を赤くしながら、何でもない風を装った。
「そじゃなくて、その……きょ、今日は何の日か知ってます……よね?」
「全人類の半数が俺の元へチョコを届けに疾走する日だ。現在までに、数十万人が俺の元へチョコを届けに参った」
「……どこにあるんですか、その大量のチョコは」
「食った」
「質量保存の法則に従うと、別府くんのお腹は破裂してますよ?」
「食ったそばから消化するんだ。今日だけで既に両手両足では足りない数便所へ走った」
「きちゃないですっ! そんな強がりはいーんです。そもそも、今日は逆チョコの日ですよ?」
何を言ってるのだろう、この人は。
「さ、先生にチョコレートください。あ、だいじょぶですよ。先生、義理でも全然おっけーですから♪」
何を言ってるのだろう、この人は。
「別府くんはどんなチョコくれるんですか? 先生、ごでぃばっての食べてみたいです」
よく分からないが、スイーツ臭がするのでご退場願おう。
「べ、別府くん!? ほうき、それホウキです! 先生、ホウキで転がされてます!」
「大丈夫、ホウキは使い慣れてる」
「そんな心配してませんっ! ぷわっ、埃が、埃が口の中に入りましたよ!?」
「死にはしないさ。あ」
「みぎゃー!?」
先生はごろごろ転がされ、段差にどすんと頭から落ちた。
「うぐぐぐ……痛いです、頭が割れそうです」
「あー……ごめん。頭痛薬取ってくる」
「そんなのじゃ取れない痛みですっ!」
「薬じゃ治らない病……やれやれ、恋の病か。やっかいだな」
「やっかいなのは別府くんの頭ですっ! もー、先生をホウキで掃く生徒なんて、聞いたことありません!」
「奇遇だな、俺もだ」
「ぎにゃー!」
先生が怒った。怒った?
「別府くん! ちょっとそこに座りなさい!」
「はい」
「誰も先生の膝に座れなんて言ってませんよ!? 重い、重いです!」
「教職を預かる者が、この程度の重圧に根を上げてどうする」
「物理的に重いんです! うぐー、うぐぐー、膝が潰れますー!」
割とマジっぽかったので、腰を浮かす。先生はほっとしたように息を吐いた。
「どして先生を掃くんですか! 先生、埃まみれで誇りが汚れちゃいましたよ! ……ふふん?」
「別にうまくないですが」
「ええっ!?」
ええじゃねえ。
「ええと、先生を掃いた理由は、簡単に言うとスイーツ連中は殺せって電波が囁くんだ」
「うちの生徒がもうダメです!」
もうダメとか言うな。
「冗談はともかく、一応聞いておくが、逆チョコのためにうちに来たのか?」
「別府くんのおうちだけじゃなくて、他の生徒たちの家にも行きました。いっぱいチョコもらいました♪」
そう言うと、先生は持っていた鞄を開けた。チョコレートが山と詰め込まれている。
「いー風習ですよね、逆チョコ♪ 甘いのいっぱい食べれて、先生幸せです♪」
「あー、一応聞いておくが、お返しにちゃんと先生もチョコあげたんだろうな?」
「どしてですか? 先生のチョコがなくなるじゃないですか」
「……そですか」
きっと他の連中も知らず家にあげてしまい、先生に請われてチョコを買いに走ったのだろう。お返しのチョコがないとも知らず。哀れな……。
「さっ、それじゃ、別府くんの番です。チョコください」
「……はぁ。別にいいけど、チョコを溶かして俺の分身に塗りたくるから、恍惚とした表情でぺろぺろ舐めてくれよな」
「別府くんとてもえっちですっ!!!」
それが何を指すのかを一瞬で察知したのだろう、先生は全力で顔を赤くした。
「だって、合法ロリだし、いいかなーって。てへ」
「なんですか合法ロリって! 先生、大人ですからロリとか言う単語は似つかわしくないんです! いーからください! チョコ! ちょーこー!」
先生はその場に横になり、じたじたと暴れだした。どこが大人だ。
「分かった、分かったから暴れるな。スカートの中が丸見えだぞ」
「みっ、見ないでくださいっ! 別府くんえっちです!」
しゅばっと居住まいを正し、先生は俺を睨んだ。
「むー……み、見ましたか?」
「当然だろ。くまぱん!」
「うわぁぁん! 別府くんが『やーい、先生の見た目にお似合いだぁー』って吹聴しますー!」
してねえ。物まねがムカツク。
「ほら、泣くな。チョコ買ってきてやるから」
「ぐすぐす……本当ですか?」
「ああ。麦チョコとチロルチョコのどっちがいい?」
「安く済まそうとされてますー! うぇぇぇん!」
厄介。厄介だ、この人。
結局何がいいのか分からなかったので、近所のコンビニまで一緒に来た。
「しっかし、あれだけもらっておいて、まだもらおうとするとは……本当にチョコが好きなんだな、先生」
「え、えーと……まあ、それもそうなんですが」
先生は恥ずかしげにうつむき、指と指をくにくにと合わせた。
「? まぁいいや、入るぞ」
むぃぃぃんと自動ドアが開く。らっしゃっせーという店員のやる気のない声を受け、中へ。
「んと……どれがいーですかね。別府くん、選んでください」
「これ」
「チロルチョコです! 20円です! 不許可です!」
「贅沢だなあ……じゃ、これで」
「おせんべです! もはやチョコですらないです!」
「食いたくなったんだ」
「むー……別に買ってもいいですけど、ちゃんとチョコも買ってくださいよね、チョコ」
「へーへー」
先生と一緒にぷらぷらと店内を探索する。どれにしようかと思ってたら、視界に隅っこに先生が俺の持つカゴの中に何か入れようとしているのが映った。
「何やってんだ、先生」
「ひゃうわっ!? ちち違います、違います!」
「……『マシュマロ』」
「だだっ、だってだってだって! おいしそーだったんですもん!」
「没収」
「あああああ……」
元あった場所にマシュマロを戻すと、先生は力なくうな垂れた。
「ましゅまろー……」
「嫌と言うほどチョコを食えるんだから、いらないだろ」
「それはそれとして、食べたかったんですー。別府くんのばか」
「自分で買えよ……」
「ヤです」
このわがまま合法ロリが……あとでヒィヒィ言わせてやる。
「うぅ? なんか寒気が……」
「俺の思考が先生に流れ込んだんだろ」
「なんかとっても怖いですっ!」
などとぎゃーぎゃー言い合いながら、しばし店内をうろつく。その甲斐もあって、どうにか先生のお眼鏡に適うチョコを見つけた。
「ポッキーねえ。うまいけど、こんなのでいいのか?」
「いいです。ポッキー、おいしいです」
レジで清算して、店を出る。
「あれ?」
一緒に出てきたと思ったが、先生はなぜかまだ店内にいた。一度お菓子コーナーに戻り、何かを掴んでレジで清算してる。
……ああ、マシュマロか。なんか知らんが欲しがってたし。
「はぁはぁ……そ、それじゃ行きましょ、別府くん?」
「おっけー」
先生と一緒に帰宅。
「さて。それじゃ、はい。逆チョコとかいう不愉快な風習」
「ものすっごく受け取りづらいですっ!」
先生はとても嫌そうな顔をしながら俺のポッキーを受け取った。
「……えへ」
しかし、受け取った途端、嬉しそうに先生の顔が綻んだ。
「まあ、嬉しそうで何よりだ」
「べ、別に別府くんにもらったから嬉しいんじゃないですよ!? ち、チョコが好きだからですよ!?」
「一発芸、まな板の上の鯉」
「なんでこのタイミングで一発芸なんてするんですかっ!」
「いや、お茶を濁さないといてもたってもいられなくて」
「あ、あぅぅ……」
先生の顔が真っ赤になった。ええい。
「い、いーからもう帰れ。チョコはやったぞ」
「あ、あの、あのあの、そーしたいんですけど、そのあの、……こ、これ」
先生は持ってたコンビニの袋を探った。マシュマロがどうしたってんだ。
「……あ、あの、これ。どぞ」
そう言って差し出されたのは、マシュマロではなく、見紛うことなきチョコレートだった。
「え。えと?」
「……きょ、今日はバレンタインです。ほほほら、逆チョコもらったし! お、お返し、お返しですよぅ! やだなあ別府くん、意識しちゃって!」
「いや、他の生徒にはやってないとか言って」
「なな何のことか先生分かりません、分かりませんとも! そ、それじゃ別府くん、また学校で!」
呆然とする俺にチョコを渡すと、先生は顔を真っ赤にしたまま部屋から飛び出していった。
「はは……」
手に残るチョコレートに、我知らず笑いが込み出てくるのだった。
【何かいつもお腹を空かせているツンデレ】
2010年02月02日
お昼休みは飯を食うと相場が決まっているので、俺も飯を食う。
「……じぃっ」
しかし、知り合いに擬音つきでじっと見られたまま昼食を摂れるほど、肝は据わっていない。
「えーと。何か用ですか、ちなみさん」
「……別に」
「そか。じゃ、遠慮なく」
「……じぃっ」
ちなみは両手の指とアゴを机の上にちょこんと置き、じーっと俺の弁当箱を見つめている。
「えーと。見られてると非常に食い難いのですが」
「……だいじょぶ。……私の知ってるタカシは、その程度の苦境、ものともしない。……ふぁいと」
「褒められて悪い気はしないが、俺の知ってる俺はこの程度の苦境で根を上げるぞ」
「……根性なし」
誰のせいだ。
「ったく……お前、飯は?」
「食べた」
「満腹か?」
「足んない」
「…………」
「……じぃっ」
「……はあ。半分やるよ」
「……んむ」
ちなみは当然といった様子で俺の弁当箱からおむすびを取り出し、もむもむ食べだした。
「うまいか?」
「……まあまあ」
「人の飯取っておいてまあまあとか、殺意を覚えますよね」
「……狭量」
非常に不愉快なので、ちなみのほっぺを引っ張る。しかし、全く気にせずもむもむ咀嚼を続けるちなみは大物なのかもしれない。
「……もむもむ、ごくん。……おかわり」
「あ、こら、おにぎりばっか取るな。おかずも食え」
「……おにぎり、好き」
「好きでも何でも主食ばっか取られると俺が困る」
「……タカシはつけものだけ食べてればいい」
「よくない! 俺も一応は若者なので肉とかそういった脂ギッシュなものを食いたいと──だからおにぎりばっか二個も三個も取るな!」
「……確保。もむもむ」
ちなみはおにぎりを咥え、更に両手に一個ずつおにぎりを持った。
「ええい、おにぎり娘めが! 結局おにぎり全部おまえが食べちゃったじゃねえか! 一個くらい返せ!」
「……もむもむ、ごくん。……タカシがおにぎり欲しいダンスを情熱的に踊ったら、返す」
「よし分かった、任せろ!」
自分でも物分りが良すぎると思うが、おにぎりが食べたいので教室の中心でもよんもよん踊りまくる。
「ふぅ……どうだ!?」
会心のダンスを笑顔で終える。気のせいか、クラス中から奇異の視線が集まってるような。
「あー……いや違うんです、別にお腹が空きすぎて頭がおかしくなったわけではないです。ちょっとおにぎり欲しいダンスを踊っただけで」
言い訳すると、気のせいか、視線の色が強くなったような。
「……ええいっ、もういい! それよりちなみ、約束のぉぉぉぉぉ!?」
「……けぷ」
あらあら、ちなみったら、人の弁当全部平らげて満足そうにお腹さすってますよ。(笑)
「いや(笑)じゃねえ! ちなみ! 俺の弁当返せ!」
「……?」
「不思議そうな顔すんなあ!」
「……吐こうか?」
「んなことされて喜んだら異常者だろうが!」
「……だいじょぶ。……タカシは立派な異常者。……胸張っていい」
「胸張る箇所がねえよっ!」
「……?」
「だから、不思議そうな顔すんなッ!」
結局、腹をきゅるきゅる鳴らしっぱなしで午後の授業受けました。
「……きゅるきゅるうるさい」
迷惑そうな顔してるちなみがむかちゅく。
「……じぃっ」
しかし、知り合いに擬音つきでじっと見られたまま昼食を摂れるほど、肝は据わっていない。
「えーと。何か用ですか、ちなみさん」
「……別に」
「そか。じゃ、遠慮なく」
「……じぃっ」
ちなみは両手の指とアゴを机の上にちょこんと置き、じーっと俺の弁当箱を見つめている。
「えーと。見られてると非常に食い難いのですが」
「……だいじょぶ。……私の知ってるタカシは、その程度の苦境、ものともしない。……ふぁいと」
「褒められて悪い気はしないが、俺の知ってる俺はこの程度の苦境で根を上げるぞ」
「……根性なし」
誰のせいだ。
「ったく……お前、飯は?」
「食べた」
「満腹か?」
「足んない」
「…………」
「……じぃっ」
「……はあ。半分やるよ」
「……んむ」
ちなみは当然といった様子で俺の弁当箱からおむすびを取り出し、もむもむ食べだした。
「うまいか?」
「……まあまあ」
「人の飯取っておいてまあまあとか、殺意を覚えますよね」
「……狭量」
非常に不愉快なので、ちなみのほっぺを引っ張る。しかし、全く気にせずもむもむ咀嚼を続けるちなみは大物なのかもしれない。
「……もむもむ、ごくん。……おかわり」
「あ、こら、おにぎりばっか取るな。おかずも食え」
「……おにぎり、好き」
「好きでも何でも主食ばっか取られると俺が困る」
「……タカシはつけものだけ食べてればいい」
「よくない! 俺も一応は若者なので肉とかそういった脂ギッシュなものを食いたいと──だからおにぎりばっか二個も三個も取るな!」
「……確保。もむもむ」
ちなみはおにぎりを咥え、更に両手に一個ずつおにぎりを持った。
「ええい、おにぎり娘めが! 結局おにぎり全部おまえが食べちゃったじゃねえか! 一個くらい返せ!」
「……もむもむ、ごくん。……タカシがおにぎり欲しいダンスを情熱的に踊ったら、返す」
「よし分かった、任せろ!」
自分でも物分りが良すぎると思うが、おにぎりが食べたいので教室の中心でもよんもよん踊りまくる。
「ふぅ……どうだ!?」
会心のダンスを笑顔で終える。気のせいか、クラス中から奇異の視線が集まってるような。
「あー……いや違うんです、別にお腹が空きすぎて頭がおかしくなったわけではないです。ちょっとおにぎり欲しいダンスを踊っただけで」
言い訳すると、気のせいか、視線の色が強くなったような。
「……ええいっ、もういい! それよりちなみ、約束のぉぉぉぉぉ!?」
「……けぷ」
あらあら、ちなみったら、人の弁当全部平らげて満足そうにお腹さすってますよ。(笑)
「いや(笑)じゃねえ! ちなみ! 俺の弁当返せ!」
「……?」
「不思議そうな顔すんなあ!」
「……吐こうか?」
「んなことされて喜んだら異常者だろうが!」
「……だいじょぶ。……タカシは立派な異常者。……胸張っていい」
「胸張る箇所がねえよっ!」
「……?」
「だから、不思議そうな顔すんなッ!」
結局、腹をきゅるきゅる鳴らしっぱなしで午後の授業受けました。
「……きゅるきゅるうるさい」
迷惑そうな顔してるちなみがむかちゅく。
【殺意の波動に目覚めたツンデレ】
2010年02月01日
「……きゅぴーん」
ちなみが殺意の波動に目覚めたらしく、俺を見ては目元を光らせる。
怖いので手でそっと目を押さえると、ちなみの口が尖がった。
「……困る」
しょうがないので手をのけると、ちなみは嬉しそうに小さく微笑んだ。
「……ん。……じゃ、殺していい?」
「NO」
「えー」
ぽふりとちなみの頭に手を置くと、残念そうな声が返ってきた。
「……殺意の波動に目覚めたのだから、殺すのが当然の筋合い。……どうして殺してはいけないのか」
無茶を言っているような気がするのは俺だけだろうか。
「知り合いが殺意の波動に目覚めたのは初めてだからよく分からないけど、法律がダメだと言ってたような気がする」
「……そゆのは、いい。……タカシは黙って私に瞬獄殺されればいいと思う」
「思うな。目を光らせるな。片足だけでスライドするな」
「……ちっ」
小さく舌打ちすると、ちなみは目を光らせるのをやめた。
「女の子が舌打ちするねい。それはそうと、どうしてまた殺意の波動になんか目覚めたんだ?」
我ながらどんな質問だ、と思いながらちなみに尋ねる。
「……タカシのことを思ってると、胸がとくんとくんと高鳴って、……気がついたら」
「字面だけ見たら素敵なのに、結果が殺意の波動とは。女力がなさすぎる」
「…………」
「だから、無言でスライドすなっ!」
「……ちっ」
「それで、どうすんだ? やはり、俺より強い奴に会いに行くのか?」
「……私より弱い奴に会いに行く」
「コイツ最低だ!」
「……じーっ」
「なぜ俺を見る」
「……私より弱い奴、はっけーん」
「いや待て落ち着け、殺意の波動に目覚めたとはいえ、ちなみは女性、そして俺は曲がりなりにも男。結果は歴然ではなくて?」
「……試してみよう」
「試すまでもないよ? いや本当に、本当に! だから目を光らせるな! notスライド!」
「……たー」
やる気のないかけ声とともにちなみが俺に触れると、世界が暗転した。数十発の打撃エフェクトの後、『しゅんごくさつ』の文字が画面に。なんだ、画面て。
「……めっさつ」
「痛い! なんか体中痛い! 上の方に体力バーがあったらコンマ数ミリしか残ってないと思う!」
「……む、めっされてない。……ちゃんと死ぬ」
ごろりと転がる俺のおでこをぺちぺち叩くちなみ。そんな攻撃で死にたくない。
「……こうなっては、もう一度瞬獄殺するしか……?」
「さっきのおでこぺちぺちで体力が尽きた。死亡」
「…………」
「死亡と言ったのになぜ無言でスライドする!?」
べきばきぼきべきばき。
「……めっさつ」
「ふふ。子供みてーな奴にべっこぼこにされる俺」
「……子供とは失礼な」
ぼろ雑巾みたいになってる俺の隣に座り、ほっぺをむにーと引っ張るちなみ。容赦ないですね。
「……じゃ、勝ったので、明日はタカシと買い物に行く。……で、その時に使うお金は全部、タカシの財布持ち」
「悪魔だ! 悪魔がいる!」
「……きゅぴーん」
「楽しみだなあ! ちなみとのデート!」
「……で、デートなんかじゃない。……ただの買い物。……ま、まったく、勘違いも甚だしい」
「…………」
「……な、なんだよぅ」
「そういうところも可愛いよな」
りんごみたいになってるほっぺたをつつくと、何かがまずかったようで、ちなみが無言でスライドしてきた。
ちなみが殺意の波動に目覚めたらしく、俺を見ては目元を光らせる。
怖いので手でそっと目を押さえると、ちなみの口が尖がった。
「……困る」
しょうがないので手をのけると、ちなみは嬉しそうに小さく微笑んだ。
「……ん。……じゃ、殺していい?」
「NO」
「えー」
ぽふりとちなみの頭に手を置くと、残念そうな声が返ってきた。
「……殺意の波動に目覚めたのだから、殺すのが当然の筋合い。……どうして殺してはいけないのか」
無茶を言っているような気がするのは俺だけだろうか。
「知り合いが殺意の波動に目覚めたのは初めてだからよく分からないけど、法律がダメだと言ってたような気がする」
「……そゆのは、いい。……タカシは黙って私に瞬獄殺されればいいと思う」
「思うな。目を光らせるな。片足だけでスライドするな」
「……ちっ」
小さく舌打ちすると、ちなみは目を光らせるのをやめた。
「女の子が舌打ちするねい。それはそうと、どうしてまた殺意の波動になんか目覚めたんだ?」
我ながらどんな質問だ、と思いながらちなみに尋ねる。
「……タカシのことを思ってると、胸がとくんとくんと高鳴って、……気がついたら」
「字面だけ見たら素敵なのに、結果が殺意の波動とは。女力がなさすぎる」
「…………」
「だから、無言でスライドすなっ!」
「……ちっ」
「それで、どうすんだ? やはり、俺より強い奴に会いに行くのか?」
「……私より弱い奴に会いに行く」
「コイツ最低だ!」
「……じーっ」
「なぜ俺を見る」
「……私より弱い奴、はっけーん」
「いや待て落ち着け、殺意の波動に目覚めたとはいえ、ちなみは女性、そして俺は曲がりなりにも男。結果は歴然ではなくて?」
「……試してみよう」
「試すまでもないよ? いや本当に、本当に! だから目を光らせるな! notスライド!」
「……たー」
やる気のないかけ声とともにちなみが俺に触れると、世界が暗転した。数十発の打撃エフェクトの後、『しゅんごくさつ』の文字が画面に。なんだ、画面て。
「……めっさつ」
「痛い! なんか体中痛い! 上の方に体力バーがあったらコンマ数ミリしか残ってないと思う!」
「……む、めっされてない。……ちゃんと死ぬ」
ごろりと転がる俺のおでこをぺちぺち叩くちなみ。そんな攻撃で死にたくない。
「……こうなっては、もう一度瞬獄殺するしか……?」
「さっきのおでこぺちぺちで体力が尽きた。死亡」
「…………」
「死亡と言ったのになぜ無言でスライドする!?」
べきばきぼきべきばき。
「……めっさつ」
「ふふ。子供みてーな奴にべっこぼこにされる俺」
「……子供とは失礼な」
ぼろ雑巾みたいになってる俺の隣に座り、ほっぺをむにーと引っ張るちなみ。容赦ないですね。
「……じゃ、勝ったので、明日はタカシと買い物に行く。……で、その時に使うお金は全部、タカシの財布持ち」
「悪魔だ! 悪魔がいる!」
「……きゅぴーん」
「楽しみだなあ! ちなみとのデート!」
「……で、デートなんかじゃない。……ただの買い物。……ま、まったく、勘違いも甚だしい」
「…………」
「……な、なんだよぅ」
「そういうところも可愛いよな」
りんごみたいになってるほっぺたをつつくと、何かがまずかったようで、ちなみが無言でスライドしてきた。
【ツンデレの下半身から何か音がしたんですが】
2010年02月01日
昼休み。教室でもっさもっさパンを食んでいると、一緒に昼食してたかなみの下半身らしき部位から小さな音がした。
「これはもうリモコンローターが振動したに違いないと確信を持っているが、仮にも女性相手なので口に出すのははばかられたがつい言ってしまった。どうしよう?」
40回くらい殴られた。
「ったく……これよ、これ」
「そう言ってかなみが取り出したのは、まぎれもなくローターだった」
もう10回殴られた。
「訂正、携帯電話だった」
「どう見てもそうじゃない! 変なことばっか言って……いやらしい」
「てへ☆」
「キモッ!」
「なんだと!? ちょっと待て、俺の媚びごまかしが本当に気持ち悪いかクラスのみんなに判定してもらう! おーいみんな、ちょっと」
俺を殴って行動を封じてから、かなみが営業スマイルでなんでもないと誤魔化した。
「……ふぅ。えーと……あ、ママからメール」
ため息一つついて、かなみは携帯を操作した。
「ほほう」
ずずいっと寄ってメールの中身を見ようとしたが、隠された。
「見ないで。プライバシーの侵害よ」
「分かった。じゃ、代わりに……ほほう」
「携帯を見なかったらパンツを見ていいとは言ってない!」
スカートの中に頭を突っ込んだら、とても蹴られた。
「だったら最初っから言ってくれよな。まったく、いい迷惑だ!」
「言わなくても分かるでしょ! 常識から考えたら!」
「本当は分かってたけど、適当言ってパンツ見たかったんだ」
正直に言うと殴られる。なんて世だ!
「アンタねぇ、今世紀最大のアイドルにそんなことして、事務所とファンと親衛隊が黙ってないわよ!」
何を言ってるのだろう、この子は。
「……アンタ、その顔は忘れてるでしょ。あたしがアイドルだっての」
……あ、あー。そういえば、なんか最近テレビでよく見るような。
「お、覚えてたぞ? いや本当に。サインください」
「このやりとりする度にサインして、もう10枚以上した! アンタ保存してるんでしょうね!?」
「鍋の下とか本棚の下とかに保存してます」
「それ下敷きにしてるんじゃない! ぶち殺すわよ!?」
このアイドル超怖え。
「嘘、嘘です。かなみのサインをそんな粗末に扱うわけないじゃないか」
「本当に?」
「本当、本当。いつも寝るとき抱いて寝ます」
「……そ、それならいいけど」
心なしか、かなみの頬が赤らんだような。
「で、朝起きたら色紙べきばき。わはは」
「笑い事じゃないでしょ! あに人のサイン折ってるのよ!」
「あと、寝る時に色紙の角が当たって超痛え。どうにかなりません?」
「ならないッ! もーいー! アンタには金輪際サインしてやんない!」
「じゃあ、『金輪際サインしません』ってサインして」
「がー!」
かなみが怒った。
「分かったよ、そんな怒るならもういいよ。はぁ……かなみに婚姻届を書いてもらうのも夢と消えたな」
「えにゃ!?」
「えにゃ?」
「そ、それはいいの! そ、そじゃなくて、その、さっき! ……こ、婚姻がどーとか」
「ああ、いつか書いて欲しかったんだが……もうサインしてもらえないなら、無理な話だな」
「……べ、別に、アンタがサインを粗末にしないなら、その、……さ、サイン、してもいーけど」
「本当か!?」
「かっ、勘違いしないでよね! 普通のサインよ、サイン! 婚姻届なんかには絶対しないから!」
「……そうか」
「なっ、何を落ち込んでるフリしてるのよ! そもそもアンタなんかがあたしと釣り合い取れると思ってるの!?」
「……ああ。パンおいしいなあ」
机に顔をべたりと乗せた状態で、手を使わずにくっちゃくっちゃとパンを食む。
「……だぁーっ、もうっ! 辛気臭いなあ! 分かったわよ、考えてあげるわよ!」
「本当か!?」
がぶあっと起き上がり、かなみの両肩に手を置く。
「かっ、考えるだけよ、考えるだけ! サインする確率なんて万に一つもないのよ!」
「でも、0じゃないんだろ?」
「……ま、まあ」
「それならなんとかなるさな。わはははは!」
「あに笑ってんのよ! 書くかもって話よ! そ、そりゃ先の話だからどうなるか分かんないし、あたしもできれば書──って、なっ、なんでもないっ!」
「うん? まあとにかく、よかったよかった!」
「あ、……あぅぅ」
かなみはなんだか小さくなって、顔を赤らめている。変な奴。
「とまれ、これで俺の趣味『知り合いに婚姻届のサインをしてもらったもので紙飛行機を作る』が行えるかもしれない! ありがとな、かなみ!」
「……趣味?」
どうしたことか、かなみの顔が笑顔なのにとってもおっかないよ。
「別府くーん、あのね、宿題……べっ、別府くんっ!?」
「やあ犬子。できることなら保健室へ連れて行ってはくれまいか」
「いーけど……どしたの? そんなズタボロで」
とある知り合いの女性に目を覆わんばかりの仕打ちを受け、もはや自力では動けない俺を不思議そうな目で見る犬子だった。
「これはもうリモコンローターが振動したに違いないと確信を持っているが、仮にも女性相手なので口に出すのははばかられたがつい言ってしまった。どうしよう?」
40回くらい殴られた。
「ったく……これよ、これ」
「そう言ってかなみが取り出したのは、まぎれもなくローターだった」
もう10回殴られた。
「訂正、携帯電話だった」
「どう見てもそうじゃない! 変なことばっか言って……いやらしい」
「てへ☆」
「キモッ!」
「なんだと!? ちょっと待て、俺の媚びごまかしが本当に気持ち悪いかクラスのみんなに判定してもらう! おーいみんな、ちょっと」
俺を殴って行動を封じてから、かなみが営業スマイルでなんでもないと誤魔化した。
「……ふぅ。えーと……あ、ママからメール」
ため息一つついて、かなみは携帯を操作した。
「ほほう」
ずずいっと寄ってメールの中身を見ようとしたが、隠された。
「見ないで。プライバシーの侵害よ」
「分かった。じゃ、代わりに……ほほう」
「携帯を見なかったらパンツを見ていいとは言ってない!」
スカートの中に頭を突っ込んだら、とても蹴られた。
「だったら最初っから言ってくれよな。まったく、いい迷惑だ!」
「言わなくても分かるでしょ! 常識から考えたら!」
「本当は分かってたけど、適当言ってパンツ見たかったんだ」
正直に言うと殴られる。なんて世だ!
「アンタねぇ、今世紀最大のアイドルにそんなことして、事務所とファンと親衛隊が黙ってないわよ!」
何を言ってるのだろう、この子は。
「……アンタ、その顔は忘れてるでしょ。あたしがアイドルだっての」
……あ、あー。そういえば、なんか最近テレビでよく見るような。
「お、覚えてたぞ? いや本当に。サインください」
「このやりとりする度にサインして、もう10枚以上した! アンタ保存してるんでしょうね!?」
「鍋の下とか本棚の下とかに保存してます」
「それ下敷きにしてるんじゃない! ぶち殺すわよ!?」
このアイドル超怖え。
「嘘、嘘です。かなみのサインをそんな粗末に扱うわけないじゃないか」
「本当に?」
「本当、本当。いつも寝るとき抱いて寝ます」
「……そ、それならいいけど」
心なしか、かなみの頬が赤らんだような。
「で、朝起きたら色紙べきばき。わはは」
「笑い事じゃないでしょ! あに人のサイン折ってるのよ!」
「あと、寝る時に色紙の角が当たって超痛え。どうにかなりません?」
「ならないッ! もーいー! アンタには金輪際サインしてやんない!」
「じゃあ、『金輪際サインしません』ってサインして」
「がー!」
かなみが怒った。
「分かったよ、そんな怒るならもういいよ。はぁ……かなみに婚姻届を書いてもらうのも夢と消えたな」
「えにゃ!?」
「えにゃ?」
「そ、それはいいの! そ、そじゃなくて、その、さっき! ……こ、婚姻がどーとか」
「ああ、いつか書いて欲しかったんだが……もうサインしてもらえないなら、無理な話だな」
「……べ、別に、アンタがサインを粗末にしないなら、その、……さ、サイン、してもいーけど」
「本当か!?」
「かっ、勘違いしないでよね! 普通のサインよ、サイン! 婚姻届なんかには絶対しないから!」
「……そうか」
「なっ、何を落ち込んでるフリしてるのよ! そもそもアンタなんかがあたしと釣り合い取れると思ってるの!?」
「……ああ。パンおいしいなあ」
机に顔をべたりと乗せた状態で、手を使わずにくっちゃくっちゃとパンを食む。
「……だぁーっ、もうっ! 辛気臭いなあ! 分かったわよ、考えてあげるわよ!」
「本当か!?」
がぶあっと起き上がり、かなみの両肩に手を置く。
「かっ、考えるだけよ、考えるだけ! サインする確率なんて万に一つもないのよ!」
「でも、0じゃないんだろ?」
「……ま、まあ」
「それならなんとかなるさな。わはははは!」
「あに笑ってんのよ! 書くかもって話よ! そ、そりゃ先の話だからどうなるか分かんないし、あたしもできれば書──って、なっ、なんでもないっ!」
「うん? まあとにかく、よかったよかった!」
「あ、……あぅぅ」
かなみはなんだか小さくなって、顔を赤らめている。変な奴。
「とまれ、これで俺の趣味『知り合いに婚姻届のサインをしてもらったもので紙飛行機を作る』が行えるかもしれない! ありがとな、かなみ!」
「……趣味?」
どうしたことか、かなみの顔が笑顔なのにとってもおっかないよ。
「別府くーん、あのね、宿題……べっ、別府くんっ!?」
「やあ犬子。できることなら保健室へ連れて行ってはくれまいか」
「いーけど……どしたの? そんなズタボロで」
とある知り合いの女性に目を覆わんばかりの仕打ちを受け、もはや自力では動けない俺を不思議そうな目で見る犬子だった。


