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2026年03月21日
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【ツンデレととんど焼きに行ったら】

2010年02月03日
 今日の夜、近所でとんど焼きがあるらしい。暇なので行くことにした。
「お」
「……ん」
 向かう最中に、見知った顔と出会った。ちなみだ。なんとなく、一緒に向かう。
「……タカシは何を焼くの? 自分? ……なむー」
「拝むな。夏の虫じゃねーんだから焼かねーよ」
「……ちっ」
 舌打ちする娘っ子のほっぺを引っ張ってると、とんど焼きが行われる田んぼについた。既に炎は上がっていたが、人影はまばらだ。
「もうちょっといるかと思ったが、少ないな」
「……やれやれ、これだからおつむが足りない人間は。……とんど焼きが行われるのは7時。そして、今は8時。……もうみんな焼いた後に違いない」
「なるほど」
 ちなみのほっぺを引っ張って溜飲を下げつつ、ぼーっと炎を眺める。真っ暗な空に赤い炎がうねる様は、どこか非現実的で、何より美しかった。
「……あ、そだ」
 そう言って、ちなみは胸元をごそごそと探り始めた。
「こんなところでいきなり自慰するな」
「……今日はしてない」
「今日は!?」
「……ただの冗談にそんな過剰に反応するな。……これ、焼くようにお母さんに頼まれてた」
 ちなみは胸元から小さなしめ飾りを取り出すと、炎の中に投げ入れた。そして、ぱんぱんと手を叩くと、目を瞑って口の中で何かつぶやき始めた。さり気なく耳を寄せる。
「……もうちょっと大きくなりますように。……背とか胸とか色々」
「無理だ。てか、これは別に願い事を言う行事ではないと思う」
「……聞くな」
 ちなみは嫌そうな顔をして俺を睨んだ。
「あと、俺は現在のちなみの大きさが大変好ましいので大きくなられると悲しいです」
「……背? 胸?」
「両方! つるぺたはにゃあん最高ですよねウヒヒヒヒ」
「……変態め」
 どういうことか、本音を言うと変態扱い。
「ま、いーや。用事も済んだようだし、帰るか」
「……タカシは焼かないの?」
「焼くも何も、暇つぶしに来ただけだし。焼くもの持ってきてない」
「……火だるまにジョブチェンジできるちゃんす到来やも。……ごー?」
「行かねーよ」
 期待に満ちた視線を送られるが、ノリで焼死体になるのはとても嫌なので辞退する。
「……ぶー」
「ぶーじゃない。ほら、帰るぞ」
「……ん」
 最後にもう一度だけ燃え盛る炎を見た後、ちなみと一緒に元来た道を辿る。
「……うう」
 しばらく黙って歩いてたら、不意にちなみが声を漏らした。先ほどまで炎の前にいたので、より一層寒さが堪えるのか、小さな体を震わせていた。
「えーと。需要と供給の一致、ということで」
「……わ」
 ちなみを捕まえ、俺のコートの中に入れる。これで俺も暖か、ちなみも暖か、のハズ。
「……タカシ大胆。大胆すりー」
「日輪の力を借りて、今、必殺の、サンアタック!」
「……夜中におっきな声出すな。……迷惑」
 最初にネタ振ったの誰だ。
「……まあ、暖かくてよい。……タカシにしてはよい判断。……余は満足じゃ」
「んむ。俺も暖かいは柔らかいはで幸福の絶頂だ」
「……タカシの棒が私のお尻をつんつくと」
「勃ってねぇ!」
「……あ、出た。……お尻にねばねばで熱いのが」
「出てねぇ! こいつ最悪だ!」
「……むふー」
 無駄に嬉しそうな娘をコートに入れ、家まで送り届ける。
「……送迎ごくろー」
「はいはい。んじゃな、また学校で」
「……ばいばい」
 ちなみと別れ、家路に就く。ふと振り返ると、ちなみがこっちを見てた。手を振って、また進む。もう一度振り返ってみる。まだこっちを見てた。
 一瞬考えたあと、ちなみに携帯で電話をかける。
『……どしたの?』
「いや、なんとなく。暇だし、帰るまで話し相手になってもらおうかな、と」
『……別に、いいケド』
「つーわけで、家に入れ。長くなるとアレだし」
『…………』
「ど、どした?」
『……優しいね、タカシ』
「なな何のことだか俺には皆目!」
『……ふふ。……じゃ、何の話しよっか?』
 心持ち優しい声のちなみと電話越しに会話しながら、ゆっくりと帰宅するのだった。

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【あーん製造機になってるみゆ】

2010年02月03日
 兄は食事をしないと死ぬタイプの人間なので、ご飯を食べます。
「今日も妹製作の飯、いわゆるみゆ飯が美味え」
「嬉しいことを言うお兄ちゃんめ! 褒美として一生食べさせてあげるよ! 檻とかに入れて」
「フォアグラですか。兄の肝臓が大ピンチ」
「ふぉあぐらー」
 響きが気に入ったのか、ふぉあぐらーと言いながらサラダをぱりぱり食べる妹のみゆ。
「むぐむぐ……ね、お兄ちゃんはふぉあぐら食べたことある?」
 そんな高級食品、食ったことねえ。だがしかし、そんなことを言っては兄として鼎の軽重を問われかねない。
「ももももももちろんあるともさ! あれはうまいぞ、何せガチョウの肝臓だからな!」
「どんな味なの?」
 さて困った、まるで想像がつかない。
「えーと……ガチョウっぽい味?」
「……全然分かんないんだけど」
「鶏肉の倍の味」
「より一層分からないよ、お兄ちゃん! なに、倍の味って!」
「さらに倍。役満」
 ごまかすため、箸をパイに見立てて両手で持ち、こんなことを言ってみる。いや、麻雀とか全然知らないので適当です。
「満漢全席!」
 なんか対抗された。よく分からないが、漢字数が多いので負けたっぽい。
「みゆの勝ちー♪ ていうかお兄ちゃん、ホントはふぉあぐらなんてお高いもの、食べたことないでしょ?」
「はい」
「素直なので許してあげようと思ったけど、やっぱ嘘つきなお兄ちゃんには罰ゲームを受けてもらいます」
「いかん、殺される!」
「そこまで酷いことはしないよ! んと、罰は……そだね、今日はみゆがあーんしないとお兄ちゃんはご飯食べれない刑に処すー!」
「なるほど、そのあーんの際に使う箸に毒を塗るのだな? 死にたくないなあ」
「見当違いも甚だしいよ、お兄ちゃん! ……んじゃ、罰ゲーム開始! 早速あーんだよ、お兄ちゃん!」
 みゆは箸でご飯をつまみ、兄の方に向けた。
「あー」
「はい♪ おいしい、お兄ちゃん?」
「むしゃむしゃ。飯だ」
「おいしいかどうか聞いてるの!」
「おいしい」
「にゃー♪ んじゃんじゃ、どんどん行くよ、お兄ちゃん!」
 続いてみゆは何故かまたしてもご飯をつまみ、兄の方に向けた。
「はい、あーん、だよ♪」
「おかず求む」
「好き嫌いはダメだよ、お兄ちゃん?」
「いや、好き嫌いとかではなくて」
「はい、あーん♪」
「あー」
 口内に飯が投入される。うむ、先ほどと同じ飯の味。
「おいしいかにゃ、お兄ちゃん?」
「あー、うん、うまいけど、兄はおかずとか食べたいような」
「ふにゅー♪ みゆがあーんすると、お兄ちゃんは喜びMAXだね♪」
「いやあの」
「んじゃ次ね♪ はいお兄ちゃん、あーん」
 またしても! またしても飯がみゆの箸に!
「だから! 兄は! おかずが!」
「お兄ちゃん、あーん♪」
「あー!」
 最早慣れてしまった味が口内を占める。刺激が、別の味が欲しい!
「どうかにゃどうかにゃ、お兄ちゃん?」
「おかずを! どうかおかずを!」
「みゆの愛情いっぱいのおかずを食べたくて仕方がないようだね、お兄ちゃん? まったくもー、困ったお兄ちゃんだよ♪」
 言葉とは裏腹に、みゆは笑顔でハンバーグをつまんだ。
「ふっふっふー。これ、食べたいかにゃ、お兄ちゃん?」
「いい加減にしないと兄の堪忍袋の緒がかんぴょうになるぞ!」
「全く意味の分からない脅し文句だよ!」
「ほら、恵方巻とか食う季節だし」
「あー……とはならないよ、お兄ちゃん!」
 ままならぬ。
「もー……ほら、食べたかったらみゆの言うことを繰り返すんだよ?」
「嫌な予感しかしないが、ハンバーグのためなら背に腹は変えられぬ」
「こほん。……『みゆの手作りハンバーグが食べられるなんて、俺はなんて幸せ者なんだろう』」
「みゆの手掴みマングースを食べさせられるなんて、俺はなんて可哀想なんだろう」
「信じられない改変を!? 怖いよ、怖すぎるよ!」
「ハンバーグをマングースと間違えたために起こった悲劇と言えよう」
「ありえない間違いだよ、お兄ちゃん!」
「同じカタカナだし、しょうがないよね。それはともかく、そのハンバーグを兄の口に」
「むー……まぁいいよ、なんかこれ以上焦らすとジラースになりそうだし。はい、あーん」
 ジラースにはならないと思いながら、口を開けると、ハンバーグの欠片が放り込まれた。肉の味、タレの味、そして肉汁が口内を駆け巡る。
「うめぇ! 肉うめぇ!」
「みゆの手作りハンバーグ、おいしい?」
「ああ。みゆの手掴みマングース超うめえ」
「だから、これハンバーグ!」
 ハンバーグかマングースか分からない肉片を飲み込む。いやはや、普段普通に食ってるものがこれほど美味いとは……やるなあ、焦らし。
「んじゃ次ね、お兄ちゃん」
 そう言ってみゆが掴んだもの……ってえ、それトマト! 兄はトマトが大の苦手なのに!
「はい、お兄ちゃん。あーん、だよ♪」
「無理無理無理! それだけは絶対無理!」
「みゆのあーんがあれば、お兄ちゃんの好き嫌いも克服できるよ! ふぁいとだよ、お兄ちゃん!」
「口に入れた瞬間マングースが逆流するが、よろしいか」
「だから、ハンバーグなの! そして逆流はノーなの!」
「贅沢だなあ」
「いーから! はい、あーん!」
「だから、無理だって……むぐぅッ!?」
 無理やり口の中にトマトを突っ込まれた。
「ほーら食べれた♪ やったね、お兄ちゃん!」
 全くちっともやっていない! 無理なものは無理! お口の中がトマトでトマトで大変危険!
「ややっ、お兄ちゃんの顔色が青い感じに! ……えーと、やっぱ無理だったかにゃ?」
 すごい勢いでコクコクする。その勢いで口の中のトマト風味がさらに!
「しょーがない。えいやっ!」
 えいやっの掛け声と共に、みゆが飛来した。隼の反射神経を持ってこれを避ける。
「ひぎゃっ!」
 すると、後ろの壁にぶち当たり愉快な声が聞こえた。
「うぬぬ……お兄ちゃん! なんでよけるの!」
 つい、と言いたかったが、口の中がトマトなので喋れない。
「つい、じゃないよ! まったくもー!」
 普通に心を読むな。
「ふんじゃ、そろそろお兄ちゃんのお口のトマトを救出するね。むちゅー」
 むちゅーと言いながら、みゆが兄に口付けし、口内のトマトを吸い出した。ずずずずずっと移動する半液体のトマトが、トマトが!
「……ぷはー! お兄ちゃん印のトマトはおいしいよ!」
「まじい! 口の中が大変まじい!」
「ぬー! みゆにちゅーされてまじいとは何事か!」
「いやだってトマトが兄の大嫌いなトマトが口の中に縦横無尽に!」
「うるにゃー! えい!」
 みゆは再び兄に口づけすると、今度は口の中を舌で舐めまわし始めた。トマトの欠片を舐めとるのが目的と思われるが、それよりちっちゃな舌が兄の口内を駆けずり回って嗚呼!
「ちゅ……ちゅちゅ、ちゅ。どう? まじいのなくなった、お兄ちゃん?」
「まだ! 恐らく一生なくならない予定!」
「……え、えと、それじゃ、もっともっとちゅーしないとダメかにゃ、お兄ちゃん?」
 恥ずかしげに頬を染めるみゆにコクコクうなずきまくる兄です。

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【ヒーリングツンデレ】

2010年02月03日
 近頃肩がこる。
「……腕を回すことにより発生する風を使い、私のスカートの中身を覗き見ようとは。……タカシは呆れ返るほどすけべえだ」
 そんなつもりもないのに、ちなみが難癖つけてくる程度には腕を回しているのだろう。
「違う、ただの肩凝りだ」
「……肩が凝るほど勉強もしてないくせに、肩凝りなんて生意気だ」
「肩凝りとは無縁の胸囲を誇る方は、言うことが違う」
「……今日もタカシは失礼だ」
 俺の頬をぐいぐい引っ張りながら、ちなみは小さくほっぺを膨らませた。
「いやな、最近肩がこって肩がこって。そだ、ちなみいま暇だろ? ちょっと肩揉んでくれないか」
「……代わりにお前の貧相な胸を揉んで大きくしてやるから、とか言い出しそうだから断る」
 いや、言いそうだけど。お前が言うな。
「言わない、言うはずがない。そもそも、貧乳大好きだし!」
「……へ、変態め。そんなことを嬉しそうに言う奴は、頭がおかしいに違いない」
 悪態を吐きながらも、ちょっとだけ嬉しそうなのは何故ですか。
「そーゆーわけなんで、ちょちょっと肩揉んで。また今度お礼するからさ」
「……お礼参りと称し、ボコボコにされる予感」
「え、俺そんな酷いことすると思われてるの?」
「……よく考えると、タカシはヘタレなので手をあげたりはしない予感」
 ヘタレ言うな。紳士と言え。
「……ま、いい。……このひーりんぐますたーにお任せあれ」
「お願いします、頭の悪い発言をする人」
「…………」
「痛い痛い痛い! 無言で頭を噛むな!」
「……ふん、だ。……余計なこと言ったら、また噛む」
「言わないよう努力するので、普通に肩揉んで」
「ん」
 小さくそう言うと、ちなみは黙って俺の肩を揉んだ。一生懸命揉んでるのは伝わってくるのだけど、如何せん力がないのであまり気持ちよくない。
「ちなみ、もーちっと力入れられないか?」
「……これ以上力を入れると、タカシの肩がえぐれる」
「そこまでするな!」
「……もう遅い。……私に頼んだことを後悔するがいい」
 そう言って、ちなみは更に力を込めた。恐らく全力で揉んでいるのだろうが、俺にはちょうどいい感じだ。
「あー、気持ちいい」
「……はふー。……疲れた」
「頑張れヒーリングマスター」
「…………」
「痛い痛い痛い! だから噛むなっての!」
「……馬鹿にした罰」
「おまーが最初に言い出したんだろーが!」
「……知らない」
 俺の頭をかぷかぷ噛みながらも、ちなみは俺の肩を揉み続けた。数分続けてもらったおかげで、肩のこりも大分マシになったような気がする。
「サンキュ、ちなみ。もういいよ」
「……20万円になります」
「ぼったくりだ!?」
「……払えないなら、今日帰りに買い物付き合え」
「デートですか」
「……先ほどの迂闊な発言により、今日はタカシのおごりに決定」
「いつの間に!?」
「……嫌と言うほど買い食いしてやる」
「ノー! ちなみさんノー! リミット解除は俺の財布が大変危険!」
「……ふぁいと」
「ふぁいとじゃねえ!」
 小さく握りこぶしを作るちなみだった。

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【ふと男のことを大好きと言ってしまったツンデレ】

2010年02月02日
 部屋で一人死体ごっこをしてると、突然ドアががちゃりと開いた。
「俺の密やかな趣味がばれた!?」
「あんまりにもあんまりな趣味ですね、おにーさん」
 ノックもなしにやってきた闖入者は、知り合いの中学生、ふみだった。酷薄な笑みを浮かべていて超泣きそう。
「ええい、うるさい。何か用か? あ、何か妖怪? なんちて。うひゃひゃ」
「そんなザマでも生きていけると、おにーさんを見ていると勇気を持てます」
 賞賛がそのまま攻撃になる技を受ける。
「俺をいじめに来たのか?(泣)」
「まあ、そのような、そうでないような」
 ふみはきょろきょろと部屋を見回した後、クッションの上に座った。
「あ、私のことは気にせず、どうぞ引き続き何が面白いんだか全く分からない死体のフリをしてください」
「無茶言うな。で、マジで何か用か? 勉強でも教わりに来たのか?」
「おにーさんに教わるくらいなら、そこらで鼻垂らしてる小学生に教わります」
「……いや、さすがに小学生よりは学力あると自負してるぞ? ていうか、実は成績もそんな悪くないし」
「うるさいです。いーから、私のことは気にせず、おにーさんは適当にゲームでもしててください」
 よく分からないが、遊びに来た割に構って欲しくないようだ。しょうがないので、適当にゲームで遊ぶことにする。
「あ、折角だし一緒にゲームでも」
「結構です」
 すげなく断られた。悲しみに打ち震えながらゲーム機の電源を入れ、ゲーム開始。
「わ」
「げ」
 しまった。いまゲーム機の中に入っているゲームは、女の子が沢山出てくるゲームだった。最近してなかったので、すっかり忘れていた。慌ててスイッチを切る。
「おにーさん……」
「いっ、いや、違っ! これは友達が貸してくれたゲームとかって漫画とかじゃよく言うけど、これは俺がバイトしてお金貯めて買ったゲームであり、オタクだからしょうがないんだ」
「否定すると思いきや、思い切り打ち明けたおにーさん、素敵です」
「いやぁそうかなウヒヒヒヒ」
「まあ、気持ち悪いのには変わりないですが」
 悲しいので寝る。敷きっぱなしの布団にもそもそ移動し、そのまま就寝。
「寝ないでください。起きてください、おにーさん」
「傷心の身ゆえ、HPが足りなくて起きれないんだ」
「せっかく遊びに来てあげたというのに一人でふて寝するおにーさん、素敵です」
「なんと言われようが今は起き上がって相手する元気がないです。ていうか帰れ」
「……はぁ、しょうがないおにーさんです。……しょ、しょがないので、こうしてあげます」
「ひゃうわっ!?」
 突然ふみが俺の背中に抱きついてきた。驚きのあまり変な声が出た。
「へ、変な声出さないでください。おにーさんのばか」
「い、いや、無理。変な声出る」
 だってだってなんか柔らかな身体が俺の背中に当たってるんですもの! わずかながらにふにっとしたのが背中に! もふー!
「か、勘違いしないでください。これは、知らず傷つけてしまったおにーさんへの謝罪の気持ちを表しているだけです。それ以外の感情は一切入ってないです」
「そ、そうなのか。まあでも勘違いしそうになるくらい気持ちいですよ?」
「き、気持ちいいとか言わないでください。これだから女性に慣れていない人は嫌なんです。えいえい」
 ふみはえいえいと言いながら抱きしめる力を少しだけ強めた。より一層密着が激しくなり、俺の動悸もどっきんどきどきな感じに。
「ど、どきどきしすぎです、おにーさん。こっちまでどきどきが響いてきます」
「いつ殺されるのか気が気じゃないから仕方ないんだ」
「あさしんさんじょー。……嘘です」
 変な嘘つかれた。
「……え、えと。お、おにーさんの背中、結構広いですね」
「え、遠近法の関係で普段は小さく見えるんだ」
「……そんなわけないです。おにーさんはいつ何時でも馬鹿なんですね」
「いつ何時も辛らつな奴よりマシだな」
「そんな酷い人がおにーさんの近くにはいるんですか。おにーさんは可哀想ですね」
「よくもまぁそこまで他人事のように言えますね」
「私は、ある人間以外にはとっても優しいですもの」
「その範疇に丁度俺が入ってるんだよなあ」
「ふふ。残念でしたね、おにーさん」
「いや、全くだ」
 馬鹿話をしている内にお互い緊張が解れてきたのか、ふみのこわばりが解けてきた。時折俺のお腹をぽふぽふしたりする余裕まで出てきている。
「おにーさん、メタボです」
「そこまで太ってないやい。BMIでも標準値だったし」
「でも、お腹つまめます。うにうに」
「人の腹で遊ぶねい」
「えへへっ。おにーさん、大好……」
「えっ!?」
 あまりの衝撃に思わず振り向くと、ふみは真っ赤な顔で必死に手をフリフリ振っていた。
「違っ、違いますっ! ……こほん、違います。何も言ってません。何も言ってません」
 冷静にとつとつと告げるふみだったが、まだ全力で顔が赤い。
「……あ、あまりこっちを見ないように。おにーさんに見られると顔が腐り落ちます」
「そんな魔眼持ってないやい。それより、さっき」
「言ってません。何も言ってません。もし何か聞こえたとするならば、それはおにーさんの都合のいい幻聴です」
「む? ……ふむ」
 よくよく考えると、確かにその可能性の方が高いような気がしてきた。そうだよな、悲しいが、ふみが俺のことを大好きとか言うはずないか。
「そうです。どうして私がおにーさんを大好きなんて言うのですか。まったく、おにーさんは人類で最も気持ち悪いです」
「失礼な。……ん?」
「どしました、おにーさん」
「いや、幻聴も俺のことを大好きって言ってたんだ。なんで分かったんだ?」
 再びふみの顔が赤一色で染め上げられた。
「だっ、まっ、だっ!?」
「だまだ? 俺の知らない言語が今まさに」
「うっ、うるさいですっ! おにーさんはもう向こう向いててください! そしてこっちを見ないでください! 一生!」
「一生!? 馬鹿な、俺は一生壁を見続けて生きなければならないのか!?」
「そうですっ! おにーさんなんか一生壁を見続ければいいんですっ! ばかばか、ばーか!」
 がうがう言いながら、俺の背中にぎゅーっとしがみつくふみだった。

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【ある日突然ボクっ娘がお金持ちになったら】

2010年02月02日
 梓の奴が宝くじに当たったとかで、成金っぷりを遺憾なく発揮してやがる。
「あっはっはー! タカシタカシ、お金欲しい? ほーらあげるよ、500円」
 高らかに笑いながら、梓は床に500円硬貨を投げつけた。
「変わっちまったな、梓。お前はそんな奴じゃなかったのに……」
「素敵っぽい台詞だけど、床に這いつくばりながら言ってるからちっとも素敵じゃないよ?」
「くの、机の下に入り込みやがって……このタカシ様を舐めるな! 梓、なんか長い棒みたいなの持って来い」
「そんなはしたお金なんていーじゃん。ほら、ボクもっといっぱい持って」
「馬鹿野郎! いや女郎! つまり馬鹿女郎? え、そんな言葉あるの? いやそんなのはいい、1円でも大事にしろとお母さんに教わらなかったのか! あとやっぱ馬鹿女郎が気になる!」
「たしなめるならちゃんとそれだけに神経をしゅーちゅーしろ、ばかっ! なんだよ、馬鹿女郎って!」
「あ、物差し。これで……よしっ、取れた! ちゃーちゃっちゃっちゃちゃー♪」
「500円ぽっちで喜んで、ばかみたい」
「ほれ、お前も喜べ」
「ボクがあげたお金なのに、なんでボクが喜ばなくちゃいけないんだよ」
「喜ばないと殺す」
「わ、わーい! お金取れてよかったね、タカシ!」
 がくがく震えながらこわばる笑顔を見せる梓だった。
「明日の昼飯代が確保できたところで、と。こらっ、梓!」
「わふっ!」
 ぺしんと梓の頭をはたく。
「う~……何すんだよ!」
「金持ちになったのはいい。だが、それと引き換えに品性を失っては何の意味もないとは思わんかね?」
「床に這いつくばってお金を拾うのはいーの? しかも、それを返すわけでもなくお昼代にして」
「何言ってるのかちょっと分からんので気にしないとして、お金持ちになっても今まで通りの梓でいてくれると俺は嬉しい。あと、俺のパトロンになってくれるともっと嬉しい」
「分かんないフリするしぃ……。ところで、パトロンってなに?」
「メトロン星人に間違えやすい言葉だ」
「それで何が分かるってんだよ! パトロンって言葉の意味を聞いてるの!」
「顔から腹にかけてが赤く、手足の先は青。背中は黄色で背筋に沿って白い円形の器官が並んでいる。別名【幻覚宇宙人】」
「それ、メトロン星人の説明だよ!」
「間違えた。そうではなくて、パトロンとは後援者のことだ。芸術家とかに金出して支援する人のことをいう」
「タカシ、芸術家じゃないじゃん。ただの高校生じゃん」
「じゃあ、これから芸術家になるとお前を騙すから金くれ」
「騙す気ぜろだよこの人!?」
「もーなんでもいいから金くれ。贅沢したい。白いおまんまを腹いっぱい食ってみてえだ」
「タカシが急に農民さんに!?」
「だから金寄こせ。もしくは毎日俺に弁当作れ」
「お金はあげないけど……お弁当くらいなら、ボク作ってあげようか?」
「え、マジ? でもなぁ、お前が作ると絶対に毒入れるだろうからなあ」
「入れないよっ! なんでそんな悪人に仕立て上げられてるの!?」
「今日の会話だけでも顧みても、恨まれてること間違いないから」
「あー」
 納得されると、それはそれで傷つく。
「あ、うそうそ、嘘だよ。ボク、タカシに酷いこと言われるの慣れてるもん」
「そう言う事により普段から俺に虐げられていることを知らしめると共に、自らの健気さもアピールするとは……恐ろしい」
「考えすぎだよ! そこまで言うならさ、コックさん雇って、その人に作ってもらおうか?」
「……んにゃ、やっぱお前の作るのがいい」
「えっ? ……あ、あぅ」
「そこの変な人、ここは赤面禁止帯なので赤面しないように」
「へっ、変な人じゃないよ、変な人じゃないよ! 変な人にかけてはタカシに勝てるわけないよっ!」
「ばか、俺なんて世界変な人コンクールじゃ歯牙にもかけられないレベルだぞ?」
「あるの、変な人コンクール!?」
「知らん」
 梓の顔がはぅーって感じになった。
「まーそーゆーわけで、明日から弁当頼むな」
「はぅー。……え、あの、いいの?」
「いいも何も、俺が頼んでるんだ」
「……えへへっ、分かったよ、ボクにお任せだよっ♪」
「金粉を散りばめた弁当を製作し、俺を辟易させる未来に思わず微笑がこぼれる梓だった」
「そんなつもりで笑ってるんじゃないの!」
 よく分からんが、金持ちになっても今まで通りの梓のようで、何よりだ。

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