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2024年05月08日
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【ふと男のことを大好きと言ってしまったツンデレ】

2010年02月02日
 部屋で一人死体ごっこをしてると、突然ドアががちゃりと開いた。
「俺の密やかな趣味がばれた!?」
「あんまりにもあんまりな趣味ですね、おにーさん」
 ノックもなしにやってきた闖入者は、知り合いの中学生、ふみだった。酷薄な笑みを浮かべていて超泣きそう。
「ええい、うるさい。何か用か? あ、何か妖怪? なんちて。うひゃひゃ」
「そんなザマでも生きていけると、おにーさんを見ていると勇気を持てます」
 賞賛がそのまま攻撃になる技を受ける。
「俺をいじめに来たのか?(泣)」
「まあ、そのような、そうでないような」
 ふみはきょろきょろと部屋を見回した後、クッションの上に座った。
「あ、私のことは気にせず、どうぞ引き続き何が面白いんだか全く分からない死体のフリをしてください」
「無茶言うな。で、マジで何か用か? 勉強でも教わりに来たのか?」
「おにーさんに教わるくらいなら、そこらで鼻垂らしてる小学生に教わります」
「……いや、さすがに小学生よりは学力あると自負してるぞ? ていうか、実は成績もそんな悪くないし」
「うるさいです。いーから、私のことは気にせず、おにーさんは適当にゲームでもしててください」
 よく分からないが、遊びに来た割に構って欲しくないようだ。しょうがないので、適当にゲームで遊ぶことにする。
「あ、折角だし一緒にゲームでも」
「結構です」
 すげなく断られた。悲しみに打ち震えながらゲーム機の電源を入れ、ゲーム開始。
「わ」
「げ」
 しまった。いまゲーム機の中に入っているゲームは、女の子が沢山出てくるゲームだった。最近してなかったので、すっかり忘れていた。慌ててスイッチを切る。
「おにーさん……」
「いっ、いや、違っ! これは友達が貸してくれたゲームとかって漫画とかじゃよく言うけど、これは俺がバイトしてお金貯めて買ったゲームであり、オタクだからしょうがないんだ」
「否定すると思いきや、思い切り打ち明けたおにーさん、素敵です」
「いやぁそうかなウヒヒヒヒ」
「まあ、気持ち悪いのには変わりないですが」
 悲しいので寝る。敷きっぱなしの布団にもそもそ移動し、そのまま就寝。
「寝ないでください。起きてください、おにーさん」
「傷心の身ゆえ、HPが足りなくて起きれないんだ」
「せっかく遊びに来てあげたというのに一人でふて寝するおにーさん、素敵です」
「なんと言われようが今は起き上がって相手する元気がないです。ていうか帰れ」
「……はぁ、しょうがないおにーさんです。……しょ、しょがないので、こうしてあげます」
「ひゃうわっ!?」
 突然ふみが俺の背中に抱きついてきた。驚きのあまり変な声が出た。
「へ、変な声出さないでください。おにーさんのばか」
「い、いや、無理。変な声出る」
 だってだってなんか柔らかな身体が俺の背中に当たってるんですもの! わずかながらにふにっとしたのが背中に! もふー!
「か、勘違いしないでください。これは、知らず傷つけてしまったおにーさんへの謝罪の気持ちを表しているだけです。それ以外の感情は一切入ってないです」
「そ、そうなのか。まあでも勘違いしそうになるくらい気持ちいですよ?」
「き、気持ちいいとか言わないでください。これだから女性に慣れていない人は嫌なんです。えいえい」
 ふみはえいえいと言いながら抱きしめる力を少しだけ強めた。より一層密着が激しくなり、俺の動悸もどっきんどきどきな感じに。
「ど、どきどきしすぎです、おにーさん。こっちまでどきどきが響いてきます」
「いつ殺されるのか気が気じゃないから仕方ないんだ」
「あさしんさんじょー。……嘘です」
 変な嘘つかれた。
「……え、えと。お、おにーさんの背中、結構広いですね」
「え、遠近法の関係で普段は小さく見えるんだ」
「……そんなわけないです。おにーさんはいつ何時でも馬鹿なんですね」
「いつ何時も辛らつな奴よりマシだな」
「そんな酷い人がおにーさんの近くにはいるんですか。おにーさんは可哀想ですね」
「よくもまぁそこまで他人事のように言えますね」
「私は、ある人間以外にはとっても優しいですもの」
「その範疇に丁度俺が入ってるんだよなあ」
「ふふ。残念でしたね、おにーさん」
「いや、全くだ」
 馬鹿話をしている内にお互い緊張が解れてきたのか、ふみのこわばりが解けてきた。時折俺のお腹をぽふぽふしたりする余裕まで出てきている。
「おにーさん、メタボです」
「そこまで太ってないやい。BMIでも標準値だったし」
「でも、お腹つまめます。うにうに」
「人の腹で遊ぶねい」
「えへへっ。おにーさん、大好……」
「えっ!?」
 あまりの衝撃に思わず振り向くと、ふみは真っ赤な顔で必死に手をフリフリ振っていた。
「違っ、違いますっ! ……こほん、違います。何も言ってません。何も言ってません」
 冷静にとつとつと告げるふみだったが、まだ全力で顔が赤い。
「……あ、あまりこっちを見ないように。おにーさんに見られると顔が腐り落ちます」
「そんな魔眼持ってないやい。それより、さっき」
「言ってません。何も言ってません。もし何か聞こえたとするならば、それはおにーさんの都合のいい幻聴です」
「む? ……ふむ」
 よくよく考えると、確かにその可能性の方が高いような気がしてきた。そうだよな、悲しいが、ふみが俺のことを大好きとか言うはずないか。
「そうです。どうして私がおにーさんを大好きなんて言うのですか。まったく、おにーさんは人類で最も気持ち悪いです」
「失礼な。……ん?」
「どしました、おにーさん」
「いや、幻聴も俺のことを大好きって言ってたんだ。なんで分かったんだ?」
 再びふみの顔が赤一色で染め上げられた。
「だっ、まっ、だっ!?」
「だまだ? 俺の知らない言語が今まさに」
「うっ、うるさいですっ! おにーさんはもう向こう向いててください! そしてこっちを見ないでください! 一生!」
「一生!? 馬鹿な、俺は一生壁を見続けて生きなければならないのか!?」
「そうですっ! おにーさんなんか一生壁を見続ければいいんですっ! ばかばか、ばーか!」
 がうがう言いながら、俺の背中にぎゅーっとしがみつくふみだった。

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もっと…もっとふみをください……
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