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2026年03月20日
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【両手の使えない男に弁当をあーんで食べさせてあげるツンデレ】

2010年02月24日
 さる事故で両手を怪我してしまい、色々と不便な毎日です。
「だから猿事故ではないと言っているだろう、このボクっ娘が!」
「まったくの意味不明だよっ!? なんでボク怒られてるんだよ! ていうかボクっ娘言うなっ!」
 なんとなくボクっ娘を怒鳴ったら逆に怒られた。
「まったく……あんまりボクを怒らせない方がいいよ? ほら、タカシ今ノート取れないでしょ。どーせあとでノート貸してもらうつもりなんだろ? ボクを怒らせたら、貸してあげないんだからね」
「ボクっ娘のノートは落書きまみれだから、借りてもなぁ……」
「落書きなんてしてないよっ!」
「あれ、そだっけ? 前に教科書借りた時、全ての人物画に髭が書き加えられていたような気がしたが……」
「それタカシが書いたんだよ! 人の教科書に落書きするなんてサイテーだよ!」
「今は申し訳ない気持ちで一杯かも」
「“かも”って言った! 絶対申し訳ないなんて思ってないよこの人!?」
「お腹が空いたとは思ってる」
「そんなの知んないよっ! ……とにかくさ、今はボクのほうが立場は上なんだから、タカシは奴隷みたいな気分でいた方がいいよ」
「よし分かった。どこを舐めればいい?」
「なんの奴隷だよっ! どこも舐めなくていいっ! 靴を脱がすなっ!」
 口で必死に脱がそうとしたら、べけんべけん蹴られた。
「足でも舐めようかと思ったのに……俺の奴隷根性は伝わらなかったようだ」
「どーせタカシのことだから、ボクの足舐めたいだけなんだろっ!」
「足だけでなく、全身あますところなく舐めたいです」
「そっ、そんなこと思うな、ばかばか、変態っ!」
 正直に言ったのに叱られた。
「そんな話はどうでもいい。今は昼休みなので、飯を食いたいが生憎手がコレなので食えないのです」
 包帯でグルグル巻きの両手をバルタン星人のようにあげると、梓はため息をついた。
「で、ボクにどうしろって言うんだよ。……まさか、食べさせてくれなんて言うんじゃないだろうね?」
「食べさせて」
「嫌だよっ! なんでボクが食べささなきゃいけないんだよ! そ、そんなの、恋人みたいじゃんか!」
「しかし、食わせてもらわなければ、俺にはどうしようもない」
「う、う~……」
 梓は悩んでいるようだ。よし、もう一押し!
「今なら口移しで食べさせてもいいから」
「余計嫌だよっ! なんでボクがサービスしなきゃいけないんだよっ!」
 俺の案はお気に召さなかったようだ。
「もー、分かったよ。これ以上長引かせたらまた変な事言うだろうし、食べさせてあげるよ」
「ありがとな、梓。梓はいい奴だな。いい奴は早死にするって言うよな。梓は早く死ぬのか。俺、梓の分まで生きるよ」
「なんでそんな結論に落ち着くんだよ! なんで普通に“ありがとう”とだけ言えないかな……」
 梓はぶちぶち言いながら俺の鞄から弁当箱を取り出し、フタを開けた。
「ほら、口開けて」
「なんだか恋人同士みたいで照れるな」
「気にしないようにしてるんだからイチイチ言うなっ! ほら、あーん!」
 梓は真っ赤な顔をしたまま箸でおかずを掴み、俺の口に入れた。
「むぐむぐ」
「……どう? おいしい?」
「おいしい」
 のはいいが、周囲から殺気に満ちた視線が俺に突き刺さっているような。それ以上に、昼休みの喧騒の間を縫って「別府殺す」とか「無事に帰れると思えるなよ」という剣呑な声が聞こえてしまい怖すぎる。何気に人気あるんだな、梓って。
「こうやって見てる分には、何も考えてないアホの子みたいなのになあ」
「侮辱された!?」
 知らない間に心の声が通常の声にシフトしていた。
「あー、ごめんごめん。酷いことは心に留めておくから、食べさせて」
「留めんなっ! なんだよ、こーんな甲斐甲斐しくタカシを手伝ってあげてるボクに不満でもあるのかよ!」
「……ないな。そこそこ可愛いし、何気に優しいし、貧乳だし」
「な、なんで貧乳を褒め言葉として使ってるんだよ! タカシってば根っからの変態だね、ホント」
 俺を軽く叩きながら、梓は嬉しそうに笑っていた。
「いーから次」
「わ、分かったよ。はい、あーん」
「あー」
 次のおかずが投入される。
「もしゃもしゃ」
「おいしい?」
「おいしい」
「あはっ、タカシそればっか」
「おまいが毎回おいしいかどうか聞くからだ」
「だ、だって、タカシって基本的に無表情だから、おいしいかどうか分かんないもん……」
 少し困ったような顔をして、梓は口を尖らせた。
「梓が手ずから食べさせてくれたら、まずいものでも美味しくなるに決まってるだろ」
「う……た、タカシはそういうこと、さらっと言うよね。勘違いする子もいるかもしんないから、あんまり言わない方がいいよ?」
「勘違い? 何の?」
「……な、なんでもないっ! ほら、あーん」
 誤魔化すように梓は次のおかずを俺の口に入れた。
「まぐまぐ」
「どう? おいしい?」
「まずい」
「舌の根も乾かないうちからまずいって言ったよこの人!?」
「大根葉の炒め物は苦いからあんまり好きじゃないんだ」
 なんでこんな渋いもの作るかなあ、母さん。
「ボクが食べさせたら何でもおいしくなるんじゃないのかよっ!」
「梓が口移しで食べさせてくれたら、まずいものでも美味しくなるやも」
「するわけないだろっ! そんなの恋人同士でもやんないよっ!」
「じゃあ口の中のご飯を移さなくていいから、口と口だけ合わそう。特別に舌を絡ませる事を許可する」
「それただのキスじゃん! まったく意味ないよ!」
「やれやれ、梓はわがままだなあ……これだからボクっ娘呼ばわりされるんだぞ?」
「いやいやいや! ちっともわがままじゃないし、ボクのことボクっ娘なんて呼んでるのタカシだけなんだからね!」
「じゃあ次からは先生のこともボクっ娘と呼ぶ」
「そういうことじゃないっ! そもそも先生は自分のことボクって言わない!」
「はい? 呼びましたか?」
 近くで女生徒たちと飯を食ってた大谷先生がひょっこり顔を出した。
「呼んでませんっ!」
「ひぃぃっ、梓ちゃんが怒りました、先生なのに怒られました! 先生、先生としての威厳ぜろですか!?」
「よしよし。梓、子供を怒鳴るな」
「子供じゃありません! 大人ですっ! ちょっと小さいだけです! 大人の許容範囲内ですっ!」
 ここの生徒たちより小さい大谷先生が怒った。
「いーから先生は黙っててください!」
「はうっ! ……わ、分かりました。先生は戻ります。べ、別に梓ちゃんが怖いから戻るんじゃないですからねっ!」
 半泣きで先生は戻っていった。戻った先で生徒達に慰められているのが見えた。本当に先生か、あの人。
「あんな小さな子をいじめて、大人気ないとは思わないかね」
「う、うるさいなあ……後で謝っておくよ」
 自分でも悪いと思ったのか、梓はちょっとバツが悪そうにぼそぼそ言った。
「ま、いいや。次の飯をくれ」
「あ、うん。はい、あーん」
 大きく口を開けていると、女生徒が梓に声をかけた。二言三言言葉を交わすと、梓は何かに気づいたように大きな声をあげた。
「あっ! ……ごめんタカシ、ボク用事があったんだ。すぐ終わるから、ちょっとだけ待っててくれる?」
「おっけー」
 ごめんねと言い残し、梓は女生徒と一緒に教室を出ていった。
 ……さて暇だ。手は使えないから飯は食えないし、どうしようかなと思ってたら、近くで飯を食ってた女生徒の集団がやってきた。
「あの、別府くん……」
「一発芸、バルタン星人のマネ。ふぉっふぉっふぉ」
 苦笑された。俺の芸もまだまだのようだ。
「そうじゃなくて、あの、私たちが食べさせてもいい?」
「……どゆこと?」
 話を聞くと、さっきから梓が俺に飯を食べさせているのを見て、自分たちもやりたくなったらしい。
「女の子ってのは、誰かに飯を食べさせたがる願望があるんだな」
「そ、そういうわけじゃなくて……」
 いまいち要領を得ないが、俺としては飯を食えるのなら問題なし。
「じゃ、別府くん、口開けて。はい、あーん」
「あー」
 ポニーテールの女子が俺にご飯を食べさせる。
「おいしい?」
「むぐむぐ、おいしい」
「あはっ、よかった」
 嬉しそうにはにかむポニーの子。
「つぎ私私! はい別府くん、あーん!」
「あー」
 続いてショートカットの元気っ子が俺の口に飯を。
「どう? どう? おいしい? おいしいっしょ?」
「むぐむぐ、おいしい」
「にひー☆ 私が食べさせたんだから当然っしょ!」
 そう言って、お日さまのような笑顔をみせる元気っ子。
「……あ、あの、次は私です。……あ、あの、あーん、してください」
「あー」
 後ろに控えていた大人しそうな子が、恥ずかしそうに頬を染めて俺の口に飯を投入する。
「……ど、どうですか?」
「むぐむぐ、おいしい」
 俺の言葉に、ほっとしたように胸を撫で下ろす大人しそうっ子。
「次は私ですよー」
「……なんで先生までいるんですか」
 当然のように俺の前にいる大谷先生に問いかける。
「べ、別に先生もやりたいんじゃないですよ? 何事も経験だと思うんです! やってもいいですよね? ね?」
「口移しなら」
「思わぬところでファーストキスをする羽目になりましたよ!? こ、困りました! 先生の魅惑のぼでーが生徒を骨抜きにしてしまったようです!」
「色々思ったけど、先生、まだファーストキスしてなかったんですか」
「はううっ! ど、どうして先生の最重要機密を知ってるんですか!?」
「ダメだ、こいつ馬鹿だ」
「せっ、先生を馬鹿にするなんてダメな生徒です! 罰としてあーんしなさい! あーん!」
 罰じゃないと思うが、口答えしても色々面倒なので口を開ける。先生はおかずを掴み、俺に食べさせた。
「どうです? おいしいですか?」
「もぐもぐ、おいしい」
「うふふ……なんだかいいですね、これ。先生、気に入りました。別府くん、先生のペットになりませんか?」
「教師が生徒を肉奴隷にしようとする」
「ちっ、違います違います! 肉奴隷じゃありません! ……肉奴隷ってなんですか?」
「この場合は、先生が俺の肉体を好きな時に使える事を指します」
「へー、お買い物の時とか便利ですね。先生、高い所にある物を取るの苦手なんですよ」
 先生はちょっと勘違いしているようだ。面白いので訂正しない。
 ……のはいいが、さっきから「完全犯罪って、どうやんのかな」とか「俺にも主人公補正がかかっていれば……」とか聞こえてきて嫌になる。あと、後者の意味が分からない。
「別府くん? どうかしましたか?」
「あ、いや、なんでもない」
 意識を前に戻す。まあいいや、今はこの状況を楽しもう。とか思ってたら。
「あーッ!!!」
 超やかましい声が教室に響いた。
「待ってろって言っただろ! なんで他の子まで巻き込んでんだよ!」
 戻ってきた梓がずかずかやってきて俺を怒る。超怖い。
「や、その、違くて、この子らが自分から言ってきまして、その」
「タカシみたいなダメな奴に、そんなのしたがる女の子がいるわけないだろっ!」
 断言された。超泣きそう。
「あ、あの、お邪魔みたいだから先生たち戻りますね」
 先生たちはそそくさと元の席に戻ってしまった。せめて言い訳のひとつでも言ってから戻って欲しかった。
「さて、この機嫌が悪くなった生物をどうしたものか……」
「生物って言うなっ! 誰のせいで機嫌悪くなってると思ってるんだよっ! 待ってろって言っただろ! デレーってしてさ……馬鹿みたい!」
「や、確かに待ってろとは言われたけど、おまいは俺に食べさせるの嫌だったんだろ? 食べさす手間が省けたんだから、喜びこそすれ怒る必要ないんじゃないか?」
「う、そ、それは……」
「それに、デレーっとするのは男である以上仕方がない。可愛い子にあーんされるのは嬉しいからな」
「……なんだよ、ボク以外にされても嬉しいのかよ」(ぼそり)
「ん? すまない、よく聞こえなかったので大きな声でもう一度さんはい」
「なっ、なんでもないっ!」
「……ま、いいや。とにかく、ご飯の続きをください」
「やんないよっ! さっきの子たちに食べさせてもらったらいいだろっ!」
 困ったことに、梓はこれ以上俺にあーんをしたくないらしい。どうしようと思ってたら、先生が恐る恐る近づいてきた。
「あ、あの、先生がやりましょうか?」
「え、いいの?」
「そ、その、梓ちゃんさえよければ」
 先生は様子を窺うように梓を見た。
「……別に。タカシは女の子だったら誰でもいいみたいだし」
 随分とトゲのある言いようだったが、事実なので言い返せない。
「じゃ、じゃあ……はい、あーんしてください」
「あー」
 ぱく、もぐもぐ。
「どうですか?」
「おいしい」
「あはっ、そうです……ぴゃあ!」
 先生がふと視線を梓に向けた瞬間、奇声をあげた。
「どした、先生?」
「あ、梓ちゃんがすっごく怖い顔で先生を睨みます! 怖いです! ちょっと先生泣きそうです!」
 梓を見るが、別に普通の顔だ。
「普通だぞ。偶然梓の前に怒った幽霊が通っただけだろ」
「そっちの方が怖いです! ていうか幽霊なんていません! 気のせいです! 別に怖いからいないと思い込んでるわけじゃないです!」
 イチイチ愉快な先生だった。
「とにかく、次のご飯をくれ」
「わ、分かりました。あーんしてく……ぴゃあっ!?」
 先生がまた奇声をあげた。
「は、はうう……ごめんなさい別府くん。さる事情により、先生はもう無理ですぅ……」
 先生は半泣きで箸を置き、ふらふらした足取りで戻っていった。戻った先でまたしても女生徒たちに慰められていた。
「……なんかしたか?」
「な、なんの話カナ?」
 梓はそしらぬ顔で吹けもしない口笛を吹いた。
「はぁ……。ま、いい……いやいや、よくない! 俺、飯食えないじゃん!」
「半分食べたんだから、もういいじゃん」
 俺の弁当箱にはすでに半分空きができていた。だが、全部食べないことには満足いかない。
「頼む、梓。食べさせてくれ」
「つーん。嫌だよ」
「ぬぅ……しょうがない、奥の手だ」
「え、どうするの?」
 不思議そうな梓の前で、上体を机に這わせるように近づける。そして。
「……犬食いじゃん! 汚いなあ!」
「むぐむぐ……これしか食う方法がない」
「もー、そんなのすんなよ! ……しょ、しょうがないからボクが食べさせてやるよ!」
「いいのか? なんか怒ってたのに」
「そんな汚い事されるよりマシだよ! ほら、あーん」
「あー」
 ぱく、もぐもぐ。
「どう?」
「おいしい」
「……タカシって、平和な顔してるよね。なんか、怒ってるのが馬鹿らしくなってくるよ」
「そりゃなによりだ」
「……そもそも、タカシが他の子にちょっかい出さなきゃ済む話だったんだよな」
 梓は箸で俺の頬をぷにぷにした。向こうから来たんだけど、言ったところで信じないしなあ、このボクっ娘は。
「聞いてるのかよ? まったく、このダメ男め」
 ま、楽しそうに笑ってるし、いっか。

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【成り行きでスク水を着ることになったちゅんでれ】

2010年02月24日
「娘よ、深い意味は全くないが、スク水を着てはどうかな?」
 気のせいかもしれないが、近頃小学生の娘が父である俺をまるで犯罪者か何かでも見るかのように見る。
「……父はなぜ捕まらないのだ?」
「警察に知り合いがいるからじゃないか?」
「やはり裏に手を回していたか……現行犯でなければ無理か」
 気のせいではなく、娘の中で俺は凶悪犯に仕立て上げられているようだ。
「冗談、冗談だ、娘よ。父に警察官の知り合いはいない。父は善良なる小市民であり、悪行を嫌う正義の人であるからして、捕まっていないのだ」
「しかし、父は娘である私に色々色々卑猥なことをしているだろう」
「し、失敬な! 卑猥な行為など一度たりともしたことない! せいぜい娘が風呂に入ってる所をこそっと覗……げふんげふん、見守ったり、一緒に寝る際、ばれないようにこそっと触っ……げふんげふん、異常はないか触診するだけだ!」
「耳障りのよい言葉にしたところで犯罪は犯罪だぞ、父」
「お、誤魔化されないか? 流石は娘だ、偉いぞ。はっはっは」
 笑いながら娘の頭に手を置き、わしわしと撫でる。
「何を笑っているのか、この父は……」
 はぁ、と大きく息を吐く娘だった。
「それで、ええとなんだったか……ああそうだ、スクール水着だったな。しかし、随分と季節外れだな、父」
「いや、深い理由はないのだが、強いて言うなら、父はスク水が見たいのだ」
 娘は呆れたように頭を振った。
「なら、水着だけ見ればいいだろう。何もわざわざ私が着る必要もあるまい」
「馬鹿者! 水着単品に何の魅力があろうか! スクール水着+つるぺた娘で始めて輝く何かが現れるに決まっているだろう! その程度、父の娘であるなら理解しておけ!」
「こんなことで怒られるのは、私くらいだろうな……」
 どこか達観したような顔つきで窓の外に目を向ける娘だった。
「とにかく、父はスク水を装着した娘を見たいのだ。着てくれないと仕事辞めるぞ」
「私の知ったことか。辞めて飢え死にするがいい」
「嫌だあ、飢え死には嫌だあ! できれば腹上死がいい! 説明しよう! 腹上死とは」
「いい。知ってる。喋るな。……まったく、誰か父を介護してくれないものかな」
「はっはっは、なかなか機知に富んだジョークを言うなあ、娘よ」
「私はいつだって本気だが」
 冗談だといいなあ。
「まあ冗談はともかく、娘がスク水を着てくれないと仕事がはかどらないのだ。どうか着てはくれまいか?」
 スク水を着てくれたら仕事もやる気が出るかと思い、そう言ってみる。
「仕事……? なんだ、仕事に関係があるのか。それなら最初から言え。着てやろう」
「やった! 着て着て!」
 踊りながら引き出しを漁り、取り出したスク水を娘に渡す。
「いちいち踊るな、鬱陶しい」
「む、すまない。父は嬉しいと、つい踊ってしまうのだ。喜びが体の外に漏れ出す性質なのだ」
 そう言いながらも、父の体は踊るのを止めようとはしなかった。
「だから、踊るなと言っている!」
 叱られたので、体育座りで娘が着替えるのをじぃーっと待つ。しかし、いつまでたっても娘は着替える気配を見せなかった。
「うはうは生着替えショーはまだか、娘?」
「出てけ」
 部屋から追い出されてしまった。廊下で暗がりをじっと見つめて待つ。数分の後、暗がりが得体の知れない何かに見えてきたところで、娘から声がかかった。
「いいぞ、父」
「む、娘! 暗がりに何かが潜んでいるという想念が父を捕らえて離さないのだ! 助けて!」
 ドアを開け、そのまま娘の足元に滑り込み、すべすべの足にすがりつく。
「触るな」
 お腹を思い切り踏まれた。痛い。
「いたた……娘よ、手を出すのはよくないことだ。気をつけよ」
「足だ、問題ない」
「娘よ、父が言いたいのは手か足かではなく、暴力全般はよくないと……」
 視線を足から上に向けた瞬間、言葉を失ってしまった。
「……父? どうした」
「あー……いや」
 一体なんと説明したものだろうか。そこにあるのは確かに娘がスク水を着ただけのモノなのだが、それだけのモノがどうしてこんなにも心惹かれるのか。
 やはり乳か? 膨らみは一体どこに消えたかと思わんばかりの平らさを誇る胸部が父の心を惹き付けて離さないのか? それとも……
「や、その、……とてもよく似合うぞ。流石は父の娘だ」
「ふん。褒められたところで、全く嬉しくもない」
 そう言いながらも、娘の頬は少しだけひくついていた。
「うん、可愛い可愛い。流石は自慢の娘、どこに出しても恥ずかしくないな」
「まったく、何を言っているのか。親馬鹿にもほどがあるぞ」
「仕方ないだろう、可愛いのだから」
 娘の黒髪をすくように、頭をゆっくりなでる。
「む……こ、子供じゃないんだ、こんなことやめよ」
 言葉とは反して、娘は満更でもなさそうに目を細め、俺のされるがままに頭をなでられていた。
「いやいや、小学生は立派な子供だと思うが」
「精神的な話だ。私の心は成熟していると思うが」
「成熟、というか、侍みたいな口調だけどな」
「……父のせいだぞ。父がそんな口調だから、私に移ったのだ」
「父はそんな口調じゃないもそよ?」
「父が急に安っぽいキャラづけを!?」
「娘も語尾に“にょ”とかつけるもそ」
「断固断る。父もそれやめよ」
 少し残念。
「……それで、いつまで私の頭をなでているのだ?」
「あ」
 言われて気づいたが、ずっと娘の頭をなでていた。
「確かに、二人差し向かいで頭なでるのは変だな。よし娘、ここに座れ」
 その場にあぐらをかいて座り、膝の上をぽんぽん叩いて娘を促す。
「そ、そういうことではなくて、頭をなでることを……」
「ほれ。な? 座れ?」
「……しょ、しょうがないな、父は。……特別だぞ?」
 娘は頬を染め、恐る恐る俺の膝に腰を下ろした。ほにゅんとしたお尻の柔らかさが脳髄を刺激する。ちょっと狂いそう。
「ち、父? どうした? 何か危ない薬に手を出してるのか?」
「だ、出してない、父は出してないぞお……」
 父性から誘ったものの、性の欲が顔を出しそうで怖すぎる。こんな時は沈静呪文だ! 俺は父俺は父俺は父。
 ……よし、大丈夫。もうこれで完全に父モード。
「父、お尻の下に何か固いものがあるのだが……これは何だ?」
 ちっとも父モードじゃねえ。最低だ、俺。とにかく、今はこの状況を回避せねば!
「む、娘よ。ちょっとだけどいてはくれないだろうか」
「むぅ……なんだろうな、これは」
 何も知らない娘は、俺の膝の上で8の字を書くようにお尻を動かした。
「あー」
 そんなことをされたら、もうダメです。
「きゃうっ!? ななっ、何かお尻に挟まった、挟まったぞ!?」
「oh」
「ohじゃないっ! ち、父、なんだこれは、一体何があるのだ?」
 お願い、聞かないで。
「熱くて、硬くて、……なんだかドクンドクンと脈打ってるぞ?」
 お願い、細かく描写しないで。
「……ん? まさか、……まさかまさか」
 お願い、気づかないで。
 しかし、俺の願いも届かず、娘は大きく大きく息を吸い込んだ。
「……ああ父は娘である私を性欲の対象として見るッ! なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうかッ!」
 部屋が震えるほどの大声で、娘は言い放った。間違いなく隣近所まで届いているだろう。明日、どんな顔をして挨拶すればいいと言うのか。
「む、娘よ、そういったことは大声で言うのはどうかと父は思うな。そ、それにな、父は娘をそんな対象として見てないぞー?」
「じゃあ私のお尻の下にある固いものの説明をせよっ!」
「別次元からテレポートしてきた宇宙熱源棒、もしくは地中から迷い込んできた巨大モグラ」
「……じゃあどいて確認してみよう」
 腰を上げようとする娘の肩に手をやり、必死で制止する。今どかれると、何かがぴょこんと持ち上がること請け合い!
「ち、父が悪かった。だから、どくのだけは勘弁願いたい!」
「……新しい靴が欲しいなぁ」
「買う買う、買ってやる」
「それから、パフェ食べたいなぁ」
「分かった。次の休み……あ、締め切りが」
「……さて、そろそろどくか」
「次の休日に食べに行こうなあ! 楽しみだ、ああ楽しみだ楽しみだ!」
 半ばヤケクソにそう叫ぶ。うう……今日から徹夜だ。
「……ふう。仕方ない、それで手を打ってやろう。私に感謝するのだな、父」
 起こしかけた腰を再び下ろし、娘は俺に体を預けた。そして肩越しに振り向き、にっこり笑った。
 その笑顔を堪能している間にも、俺は必死で頭の中で数式を並べ、冷却に全力を尽くしているのだった。

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【男を名前で呼ぶのが照れ臭いちゅんでれ】

2010年02月24日
 カチ……カチ……
『ヒロユキちゃん、みーつけた』
「……ああ、いいなあ。こんな恋愛したかったなあ。はうう」
「そうか。そう思うのは構わないが、口に出すな。気持ち悪いぞ」
 昔のエロゲをこっそりやってたら、いつの間にか小学生の娘が背後にいて酷い言葉を浴びせる。慌ててディスプレイを切り、何事もないような態度をとる。
「ののののののノックくらいしてはどうかな、娘よ?」
「父、動揺が過ぎるぞ。それに、ノックなら何度もした。大方ゲームに集中しており気づかなかったのであろう」
「む。確かに並々ならぬ集中力を発揮していたことは否定できない。……あ、いや。ゲームとはなんのことであろうか? 父は仕事をしていたのだぞ?」
「えい」
「あ」
 ディスプレイがつけられてしまった。画面に赤毛の少女が映る。
「これが仕事か。私にはゲームを楽しんでいるようにしか思えないが」
「ははっ、そんなわけないじゃないか。まったく、娘はお馬鹿だなあ。もっとも、馬鹿な子ほど可愛いというし、そんなお馬鹿な娘を父は溺愛しているぞ」
「誰がお馬鹿か! 仕事をしていたと、父が先に言い出したことであろう!」
「たわけ! 無様な言い訳に決まっているだろう!」
「どうしてそこで誇らしげにできるのだ……」
 がっくりうな垂れる娘だった。
「まあばれてしまったものは仕方がない。娘よ、画面を見れ。ほーら、あかりちゃんだよー。可愛いねー」
「いかん、父が異様なほど気持ち悪い!」
 娘が冷たい。
「というか、私は未成年なのでこのような18禁ゲームを見てはいけないだろう。父が率先して見せてどうするか」
「気にするな。エロいシーンを見なければ済む話だ」
「しかし、父は変態なのでエロいシーンを私に見せ付け、恥ずかしがる私を見ようとするからなあ。そして一人悦に浸るに決まっているからなあ」
 娘の中の父親像はとても歪んでいるようだった。
「……しかし、『ヒロユキちゃん』、か。実名でやらないのか?」
「長らく呼ばれていないため、忘れてしまったんだ」
「自分の名前を忘れる奴がいるか!」
「いや、もちろん冗談だ。実名でやるのはなんだか照れ臭くてな。……そうだ! 娘が呼んではくれまいか?」
「わ、私がか!?」
 よほど意外だったのか、娘は目を大きく見開いて自分を指した。
「家族が名前を呼び合うなど、普通のことだろう。さ、呼べ」
「む、むぅ……い、いいではないか、今まで通り父と呼べば。な?」
「それでは親子と間違われるぞ?」
「立派な親子だろう! ……いや、父は立派ではないが」
「ふふん、そんなこと当の昔に知っているわ!」
「だから、どうして誇らしげなのだ……」
 悲しそうな娘だった。
「さて。それじゃ娘よ、我が名を呼べ!」
「む、むぅ……わ、分かった。そこまで言うなら言ってやる! 覚悟しろ、父!」
 娘は両手を握り締め、気合を入れた。
「娘よ、その意気だ! 娘が言ったなら、父も娘を名前で呼んでやろう。名を呼び合うだなんて、まるで恋人同士のようだなあと思った」
「言わん、名前なぞ絶対に言わんぞ!」
 余計な事を言ってしまったためか、娘は頑なになってしまった。訂正せねば。
「間違い間違い。名前で呼び合うだなんて、まるで夫婦のようだなあ」
「悪化しているぞっ!?」
「気のせいだろう。さ、娘よ。我が名を呼べ」
「だから、言わんと言ったら言わん!」
「言ったらパフェ」
「む……そ、そのようなものに釣られるほど、私は子供ではないぞ」
 言葉の上では断っているが、視線が物欲しそうだ。もう少し引っ張ればいけそうだ。
「ケーキもつける」
「……い、いちごの乗ってるやつか?」
「うむ」
「……うう、ううう……」
 娘は頭を抱え、とても懊悩としているようだった。そこまで悩むことでもないと思うが……。
「……わ、分かった。父の言うとおりにしてやる。だ、だが! いちごの乗ってるやつのためだからな! 決して父を喜ばせるために言うのではないからな!」
「いーから早く」
 娘は俺の耳元に顔を寄せ、小さく俺の名を言った。
「や、たまにはいいものだな」
「い、言ったぞ! 確かに言ったぞ! ほら、父も約束を果たせ!」
「あい分かった、父に任せろ!」
 耳元に顔を寄せ、娘の名を甘く囁く。
「ほひゃやああ!?」
 飛ぶように後ろに下がり、娘は真っ赤な顔で耳を押さえた。
「どうだ? たまにはよいものだろう?」
「こ、こ、こんな約束はしてない! いちごの乗ってるやつという話だろう!」
「あれ、そうだったか……? まあいいか。しかし、呼ばれるのもよいが、呼ぶのもよいな。娘よ、もう一度いいか?」
「断固断るッ! 何が楽しくて親子で名を呼び合うか!」
「名前呼ばないで耳に息吹きかけるだけにするから」
「目的がすり変わっているぞ!?」
「いや、思いのほか耳に弱いと知ったのでな。えい、ふー」
「んきゅっ……」
 耳に息を吹きかけると、娘は体を身悶えさせた。
「……おのれ。よくも辱めを」
 俺を睨んだかと思うと、娘は大きく息を吸い込んだ。いかん。
「あああの娘よあまり大きな声を出すのは近所迷惑かと」
「……ああ父は娘である私を性欲の対象として見るッ! なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうかッ!」
 制止するもいつもの台詞が出てしまい、窓がビリビリと震える。遅れて近所の犬が吠え出した。
「ふふ。また近所の人に謝って回らないといけないなあ」
「何を泣いている。自業自得だ、馬鹿め。まったく、世が世なら今頃父は捕まっているぞ」
「耳に息を吹きかけただけで捕まるとは、世も末だな」
「うううるさい! 耳のことは言うな! ほら、そんなのどうでもいいからケーキ屋に行くぞ! 約束は果たさないといけないからな!」
「それは分かるが……寒いし、今度にしないか?」
 それに、今出るとご近所の皆さんにどんな目で見られるか分かったもんじゃない。
「何を年寄り臭い事を……ほら、早く支度しろっ!」
 尻を蹴飛ばされたので、しぶしぶ支度する俺だった。
「……ふふ、いちごの乗ってるやつ食べるの、久しぶりだな」
 ……まあ、娘も嬉しそうだし、いっか。

拍手[6回]

【ウイルスちなみん】

2010年02月24日
 学校から帰宅して自室に入ると、何かが俺の背中に落ちてきた。
「うわっ、何だこれ! なんかねばねばねちょねちょする! さてはエイリアン的な何かが俺の天井に潜み、今まさに俺を捕食せしめんと涎を垂らしているな! ということは死ぬのか。嫌だなあ」
「……ぶっぶー。はずれ。ばーか」
「…………」
「……正解は、可愛い可愛いウイルスでしたー」
 背中から聞き覚えのある声。いつもの馬鹿だ。
「ウイルスってゲル状なの?」
「……いめぇじ、です。なんか、そんな感じがするのです」
「ま、そんなのはいい。どけ」
 体を振ってウイルスを振り落とす。
「にゃ」
 割と簡単にウイルスを剥がせた。ウイルスは緑色のぶよぶよしたゼリーのような物質に覆われており、まるで緑色のアメフラシのようで気持ち悪い。
「……落ちても、ぶよぶよのおかげで平気ー。痛くないー。……うらやましい?」
 床に落ちたウイルス──ちなみは仰向けのままわさわさ蠢いた。
「ちっとも」
「……うらやましがってくれないと、話が進みません。……それを踏まえて。……うらやましい?」
「全然」
 ちなみの頬がリスみたいに膨れた。
「……うらやましがってください」
 頼まれたので羨ましがってみる。
「いいなあ、緑色のぶよぶよ物体はいいなあ」
 実際に言葉にしてみると、まったく羨ましくない。しかもこうしている最中も床がぶよぶよの緑色の汁でどんどん汚れている。早く帰って欲しい。
「……ふふ。ようやっと本音が出ましたね。えいしょっと。……え、えいしょっと」
 ちなみはおぶおぶと手らしきものを動かして起き上がろうとしているが、着ぐるみの構造上自力では起き上がれないようだ。
「……あ、あの、タカシ、起こしてください」
「起こしたら帰る?」
「……タカシは私と遊びたくないのですか?」
「割と」
「…………」(涙じわーっ)
「ぼく、ちなみんと遊ぶの大好きさ! I play a ちなみん!」
 我ながらいい加減慣れろと思うのだが、泣かれるとついつい甘やかしてしまう。困った性分だと思いつつ、ちなみを抱き起こす。ぶよぶよして気持ち悪い。
「にゅっ。……やれやれ、そんなに私と遊びたいなら遊んであげます。……まったく、私の優しさは天井知らずです。……あ、天井に潜んでいただけに」
「別にうまくないですよ」
「……うるさいです。タカシは黙ってればいいのです」
 ちょっと不満そうにしながら、ちなみは「さて」と言って仕切りなおした。
「私のぶよぶよがうらやましいタカシに、特別さーびすです。このぶよぶよをタカシにもあげます。そーれい」
 そーれいと言いながらちなみが突っ込んできたので、ひらりとかわす。本棚やらテレビ台やらを薙ぎ倒し、ちなみが壁に激突した。
「……かわさないでください」
 壁に緑色の染みを残して、ちなみが恨めしそうに呟いた。
「緑色の物体が突っ込んできたら、誰でもかわすだろ」
「……そんな経験ないので、分かりません」
 俺だって初体験です。
「……いいから、かわさないでください。……ね?」
 ちなみは両手を合わせ、ちょこんと首をかしげて念を押した。ちょっと可愛い。
「……そーれい」
 とか思ってたらまた緑色がつっこんできた。可愛いにゃーとか思ってたせいでかわせず、まともに喰らう。さっきの計算ですか。
「……ふふ、どうです? 実にねばねばでしょう?」
「あー、それはいいが、どうやって脱出するの?」
 俺はちなみの緑のねばねばに包まれてしまった。ねばねばがまるでとりもちのように俺を離さない。
「……ウイルスですから、増殖したのです。これでタカシもウイルス。……いっしょ、いっしょ」
 ちなみは俺の手をきゅっと握り、嬉しそうに笑った。
「ウイルス対策ソフトは?」
「……残念ながら開発ちゅーです。早ければ50年後には完成するかと」
「それ早くない」
「……じゃ、私が満足したら完成します」
「“じゃ”って言ったことについては優しさから追及しないとして、いつ満足するの?」
「……タカシがぎゅーってしてくれたら、満足するやもしれません」
 期待を込めて俺をじっと見る緑な物体に、まあいいかと思いながらむぎゅーと抱きしめる俺だった。

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【男のワイシャツとツンデレとデレデレ】

2010年02月23日
 長年着ていたワイシャツがよれよれになってしまった。
「……捨てるか」
「その行為STOPだ、別府タカシっ!」
「その通りだよ、お兄ちゃん!」
「ぐべっ」
 ワイシャツをゴミ箱に入れようとした瞬間、友人のみことと隣家のちみっこ、夕美が弾丸のように突っ込んできて俺を吹っ飛ばした。きりもんで飛んで行く俺を尻目に、二人は空中を舞うワイシャツをがっしと掴んだ。
「か、勘違いするでない。別にこのようなものいらぬのだが、捨てるなぞもったいないからな。私が廃物利用してやろう」
「夕美は是非欲しいよ! 家宝にする勢いだよ! みことおねーちゃん、どっちでもいいなら夕美にちょうだい!」
「む……い、いやしかし、こういうことは所有者に決めてもらうのが一番だろう。ということでタカシ……ぬ?」
「ああっ、お兄ちゃんが壁にめり込んでるっ!」
 二人して壁から抜いてもらう。
「やれやれ。気のせいかもしれないが、なんだか既視感を感じるよ」
「そんなのどうでもいいよっ! お兄ちゃん、夕美にくれるよね? ね?」
「何を言うか。気心の知れた親友に渡して当然だろう」
「童貞を?」
「違います」
 軽い冗談なのに夕美には冷静に否定され、みことからは侮蔑の視線を刺され、俺はもうどうしたら。
「傷心の俺は一人旅に出るのだった」
「旅に出る前にどっちに渡すかだけ決めてよ、お兄ちゃん!」
「そうだぞ。……もっとも、私は残念なことにこのダメ男に惚れられているが故に、渡されるであろうな。ああ嫌だ嫌だ」
 夕美の目がすっと細まった。
「……どゆこと、お兄ちゃん?」
「体が目当てなんだ」
 みことに殴られた上、夕美からは軽蔑の視線を受けた。
「冗談です。えーーーーーーと、その、……俺は夕美も好きだぞ?」
 適当なことを言ってお茶を濁してみる。いや、嘘ではないが。
「えっ、えっ? もー、お兄ちゃんってばー、このロリコン♪ 夕美、小学生なのに……もう、やんやん♪」
 夕美はやたら嬉しそうにニコニコしながら俺の背中をばんばん叩いた。
「…………」
 そして今度はみことが怖い感じになったので怖い。
「すすすすす好きと言ってもこう、アレだぞ? 妹に対して、みたいな?」
 夕美に対して言っているように見えて、その実みことに向けて話す。
「つまり、お兄ちゃんにとっては攻略対象なんだよね?」
「はい」
 しまった、本音が! ていうか攻略対象とか言うな、夕美。
「……ということだよ、みことおねーちゃん。お兄ちゃんはロリコンさんなので、ちっこい夕美の方が好きなんだよ。と、いうわけで、ワイシャツは夕美がいただきだよ!」
「……ふ、ふふふふふ。哀れなり夕美殿! こやつがロリコンなのは百も承知! 我が肉体がどれほど凹凸に恵まれていないか知らぬのか!」
 胸を張って悲しい事を言うぺったんこ。もとい、みこと。
「そして夕美殿、貴殿には未来がある! 成長、という未来が! 一方、既に成長期を過ぎた私にはその可能性はないに等しい! この場合、別府タカシがどちらを採るか……聡い貴殿にはもう分かるであろう?」
「にゃにゃ!? ……で、でも夕美のお母さんもぺったんこだもん! きっと夕美もあんな感じになるもん!」
 なんだか議論がずれているような。確かワイシャツの話じゃなかったっけ。まあいいや、二人ともいい感じにヒートアップしてるし、ばれないように逃げよう。
「そこ。逃げるな」
 すぐばれた。部屋の中央に引っ張られ、正座させられる。
「そもそも、貴様がいかんのだ。誰彼構わず好き好き言いおって……その舌引っこ抜いてくれようか」
「ひぃ! 助けて夕美!」
 あまりの恐怖に夕美に抱きつく。
「……お、お兄ちゃん。いきなりだと、夕美、びっくりさんだよ」
 夕美は困ったような、でも満更でもないような表情でにっこり笑った。
「あ、いやその……ごめんな」
「う、ううん、いいんだよ。……えへへ」
「あは、あはは……」
「……誰か忘れていまいか、別府タカシ?」
 背後から聞こえる声に、律儀に血の気が引く。
「わ、ワイシャツが欲しいのならみことにあげるよ?」
「ほ、本当か? ……あ、いや、別にいらぬのだが、どうしてもというのなら受け取ってやらなくもないぞ」
 一瞬笑顔になったみことだったが、すぐに表情を引き締めた。
「夕美にくれないとその舌引っこ抜くよ?」
 前門の虎、後門の狼とはこのことを言うのかなあ、とか思いながら笑顔の夕美を眺める。
「「……で、どっちにくれるの?」」
「……こんなものがあるから争いが止まないんだ! こんなもの!」
 意を決し、全ての元凶であるワイシャツを引き裂く! ……ひ、引き裂く!
「……お兄ちゃん、全然破れてないよ」
「まあ、ちょっと引っ張った程度で破れるものではないしな。……さあ、どちらに渡すのだ」
 さて、今度こそ進退窮まった。

 ので、もう一つあるワイシャツもあげることにした。
「ま、まあこんなものいらぬのだが、どうしてもと言うなら、な。……ふふふふふ」
「やった、やったよ! これでいつでもお兄ちゃんと一緒な感じだよ! くんくん……はふー。くんくんくん……はふー!」
 喜び勇んで(みことは必死に隠しているようだったが)ワイシャツを抱きしめる二人だった。

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