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2019年10月18日
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【男を名前で呼ぶのが照れ臭いちゅんでれ】

2010年02月24日
 カチ……カチ……
『ヒロユキちゃん、みーつけた』
「……ああ、いいなあ。こんな恋愛したかったなあ。はうう」
「そうか。そう思うのは構わないが、口に出すな。気持ち悪いぞ」
 昔のエロゲをこっそりやってたら、いつの間にか小学生の娘が背後にいて酷い言葉を浴びせる。慌ててディスプレイを切り、何事もないような態度をとる。
「ののののののノックくらいしてはどうかな、娘よ?」
「父、動揺が過ぎるぞ。それに、ノックなら何度もした。大方ゲームに集中しており気づかなかったのであろう」
「む。確かに並々ならぬ集中力を発揮していたことは否定できない。……あ、いや。ゲームとはなんのことであろうか? 父は仕事をしていたのだぞ?」
「えい」
「あ」
 ディスプレイがつけられてしまった。画面に赤毛の少女が映る。
「これが仕事か。私にはゲームを楽しんでいるようにしか思えないが」
「ははっ、そんなわけないじゃないか。まったく、娘はお馬鹿だなあ。もっとも、馬鹿な子ほど可愛いというし、そんなお馬鹿な娘を父は溺愛しているぞ」
「誰がお馬鹿か! 仕事をしていたと、父が先に言い出したことであろう!」
「たわけ! 無様な言い訳に決まっているだろう!」
「どうしてそこで誇らしげにできるのだ……」
 がっくりうな垂れる娘だった。
「まあばれてしまったものは仕方がない。娘よ、画面を見れ。ほーら、あかりちゃんだよー。可愛いねー」
「いかん、父が異様なほど気持ち悪い!」
 娘が冷たい。
「というか、私は未成年なのでこのような18禁ゲームを見てはいけないだろう。父が率先して見せてどうするか」
「気にするな。エロいシーンを見なければ済む話だ」
「しかし、父は変態なのでエロいシーンを私に見せ付け、恥ずかしがる私を見ようとするからなあ。そして一人悦に浸るに決まっているからなあ」
 娘の中の父親像はとても歪んでいるようだった。
「……しかし、『ヒロユキちゃん』、か。実名でやらないのか?」
「長らく呼ばれていないため、忘れてしまったんだ」
「自分の名前を忘れる奴がいるか!」
「いや、もちろん冗談だ。実名でやるのはなんだか照れ臭くてな。……そうだ! 娘が呼んではくれまいか?」
「わ、私がか!?」
 よほど意外だったのか、娘は目を大きく見開いて自分を指した。
「家族が名前を呼び合うなど、普通のことだろう。さ、呼べ」
「む、むぅ……い、いいではないか、今まで通り父と呼べば。な?」
「それでは親子と間違われるぞ?」
「立派な親子だろう! ……いや、父は立派ではないが」
「ふふん、そんなこと当の昔に知っているわ!」
「だから、どうして誇らしげなのだ……」
 悲しそうな娘だった。
「さて。それじゃ娘よ、我が名を呼べ!」
「む、むぅ……わ、分かった。そこまで言うなら言ってやる! 覚悟しろ、父!」
 娘は両手を握り締め、気合を入れた。
「娘よ、その意気だ! 娘が言ったなら、父も娘を名前で呼んでやろう。名を呼び合うだなんて、まるで恋人同士のようだなあと思った」
「言わん、名前なぞ絶対に言わんぞ!」
 余計な事を言ってしまったためか、娘は頑なになってしまった。訂正せねば。
「間違い間違い。名前で呼び合うだなんて、まるで夫婦のようだなあ」
「悪化しているぞっ!?」
「気のせいだろう。さ、娘よ。我が名を呼べ」
「だから、言わんと言ったら言わん!」
「言ったらパフェ」
「む……そ、そのようなものに釣られるほど、私は子供ではないぞ」
 言葉の上では断っているが、視線が物欲しそうだ。もう少し引っ張ればいけそうだ。
「ケーキもつける」
「……い、いちごの乗ってるやつか?」
「うむ」
「……うう、ううう……」
 娘は頭を抱え、とても懊悩としているようだった。そこまで悩むことでもないと思うが……。
「……わ、分かった。父の言うとおりにしてやる。だ、だが! いちごの乗ってるやつのためだからな! 決して父を喜ばせるために言うのではないからな!」
「いーから早く」
 娘は俺の耳元に顔を寄せ、小さく俺の名を言った。
「や、たまにはいいものだな」
「い、言ったぞ! 確かに言ったぞ! ほら、父も約束を果たせ!」
「あい分かった、父に任せろ!」
 耳元に顔を寄せ、娘の名を甘く囁く。
「ほひゃやああ!?」
 飛ぶように後ろに下がり、娘は真っ赤な顔で耳を押さえた。
「どうだ? たまにはよいものだろう?」
「こ、こ、こんな約束はしてない! いちごの乗ってるやつという話だろう!」
「あれ、そうだったか……? まあいいか。しかし、呼ばれるのもよいが、呼ぶのもよいな。娘よ、もう一度いいか?」
「断固断るッ! 何が楽しくて親子で名を呼び合うか!」
「名前呼ばないで耳に息吹きかけるだけにするから」
「目的がすり変わっているぞ!?」
「いや、思いのほか耳に弱いと知ったのでな。えい、ふー」
「んきゅっ……」
 耳に息を吹きかけると、娘は体を身悶えさせた。
「……おのれ。よくも辱めを」
 俺を睨んだかと思うと、娘は大きく息を吸い込んだ。いかん。
「あああの娘よあまり大きな声を出すのは近所迷惑かと」
「……ああ父は娘である私を性欲の対象として見るッ! なんという星の下に生まれてきてしまったのだろうかッ!」
 制止するもいつもの台詞が出てしまい、窓がビリビリと震える。遅れて近所の犬が吠え出した。
「ふふ。また近所の人に謝って回らないといけないなあ」
「何を泣いている。自業自得だ、馬鹿め。まったく、世が世なら今頃父は捕まっているぞ」
「耳に息を吹きかけただけで捕まるとは、世も末だな」
「うううるさい! 耳のことは言うな! ほら、そんなのどうでもいいからケーキ屋に行くぞ! 約束は果たさないといけないからな!」
「それは分かるが……寒いし、今度にしないか?」
 それに、今出るとご近所の皆さんにどんな目で見られるか分かったもんじゃない。
「何を年寄り臭い事を……ほら、早く支度しろっ!」
 尻を蹴飛ばされたので、しぶしぶ支度する俺だった。
「……ふふ、いちごの乗ってるやつ食べるの、久しぶりだな」
 ……まあ、娘も嬉しそうだし、いっか。

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