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2026年03月18日
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【ツンデレが「どうしてもって言うなら」って言ったら、男が「嫌々行かせても面白くないからいいよ」とデートを無しにされてしまった】
2010年03月18日
ということで、デートはなくなったので家に帰ってきたのだけど。
「…………」
どういうわけか、かなみも俺の家についてきて、何をするわけでもなくベッドに座り、体育座りで俺をじーっと見てて。
「あ、あの、かなみさん、あれほど嫌がっていたでぃとはなくなったし、俺の家にいる必要はないような」
「……何か言った?」
「何も言ってません」
赤子が見たら子宮に戻りかねない目つきで見られたので、口をつぐむ。ていうか怖い。俺が何をしたというのだ。
そして、体育座りなんて素敵な座り方をしていたらパンツが丸見えではないか。いいのか。見るぞ。見たぞ。よし、しましま!
「……?」
もうちょっと深い角度から見たいな……よし、不自然にならない程度に上体を下げ、しましまをもっと! more simasima!
「なに変な動き……って、あっ!!」
ばれた。3回ほど殴られた。
「この、どエロ!」
「うっさい殴るスキー。あっ、殴るスキー。ロシア系の妖怪。夜な夜な街中をうろつき、ウォッカ片手に道行く通行人を殴りまくるはた迷惑な怪物。普段は内職で糊口を凌いでいるという噂」
適当な解説をしてたら、もう一発追加された。
「はぁ……殴られるは嫌な視線受けるは、何がそんな不服だというのだ。おまえが嫌で嫌で仕方がないと言っていたデートはなくなったんだぞ?」
「そっ、それはその、言葉のあやというか、その……」
「?」
「……ああもう、不思議そうな顔すんな!」
何を言わんとしているのか、皆目検討がつかない。そしてなぜまた殴られのか分からない。
「痛くて泣きそうだゼ!」(半泣き)
「はぁ……なんだってこんなのに……」
「たで食う虫も好き好き、と言いますから」
適当にそんなことを言ってみたら、かなみの顔が赤くなった。
「あっ、アンタ、……気づいてた、の?」
「当然だ!」
もちろん何の話か分からないが、即答する。
「……う、うう、ううう~」
すると、かなみの顔がこれ以上赤くなるとヤバイのではないかと思うほど赤くなった。
「か、かなみ? 赤いですよ? ヤクイ感じですよ?」
「赤くないッ!」
そこを否定されると、もう俺にできることなんて。
「ち、違うのよ? 別にあたしはアンタのことなんてその、……ねぇ?」
「はぁ」
どうやら俺関係で赤くなっているようで。なんでせうか。かなみが俺に惚れてる? ……いやいや、ないない、それはない。逆ならあるけど。
「そ、そうよ。アンタが勘違いしてるだけで、あたしはアンタなんて何とも思ってないのよ」
「俺は色々思ってるけどな」
なにせ、日々殴られたり蹴られたりして不満のるつぼですから、と繋げようとしたのに、かなみが俺をじーっと見つめたりするので怖くて言えない。
「……そ、そうなんだ。……ふーん」
気のせいかもしれないが、かなみの瞳に熱が籠もったような。
「……じゃ、じゃあさ、どうしてもって言うなら……デート、してあげてもいいわよ?」
なにがどうなってじゃあなのか分からないが、その提案は素敵だね。が、言っておかなくてはならないことが一つだけ。
「嫌々行かせても面白くないからいいよ」
かなみの目が点になった。
「……アンタ」
「はい?」
「なんでループしてんのよ!? これじゃ、いつになってもデートできないじゃないの!」
「こっ、これは……妖怪、殴るスキーの仕業?」
「そんな存在しない妖怪の仕業なわけないでしょ! アンタのせいよ、アンタの! この馬鹿この馬鹿この馬鹿!」
「これは失礼を。じゃ、なんだ。ええと、かなみ。俺と、その、……水族館でも行きませんか?」
大変叱られたので、今度はループしないよう細心の注意を払いながらデートに誘いました。
「……ま、まぁ、どうして……あ、これ言ったらまたループするわね。え、えっと……おほん。……ま、まぁ、行ってあげるわよ。おさかな、好きだし」
そんな感じの返事を貰ったので、今度こそ普通にデートできそうな予感!
「喜ばしい予感!」
「はぁ……なんで普通に喜べないのかね、この子は」
なんて、優しく微笑みながら俺のほおをつっつくかなみでした。
「…………」
どういうわけか、かなみも俺の家についてきて、何をするわけでもなくベッドに座り、体育座りで俺をじーっと見てて。
「あ、あの、かなみさん、あれほど嫌がっていたでぃとはなくなったし、俺の家にいる必要はないような」
「……何か言った?」
「何も言ってません」
赤子が見たら子宮に戻りかねない目つきで見られたので、口をつぐむ。ていうか怖い。俺が何をしたというのだ。
そして、体育座りなんて素敵な座り方をしていたらパンツが丸見えではないか。いいのか。見るぞ。見たぞ。よし、しましま!
「……?」
もうちょっと深い角度から見たいな……よし、不自然にならない程度に上体を下げ、しましまをもっと! more simasima!
「なに変な動き……って、あっ!!」
ばれた。3回ほど殴られた。
「この、どエロ!」
「うっさい殴るスキー。あっ、殴るスキー。ロシア系の妖怪。夜な夜な街中をうろつき、ウォッカ片手に道行く通行人を殴りまくるはた迷惑な怪物。普段は内職で糊口を凌いでいるという噂」
適当な解説をしてたら、もう一発追加された。
「はぁ……殴られるは嫌な視線受けるは、何がそんな不服だというのだ。おまえが嫌で嫌で仕方がないと言っていたデートはなくなったんだぞ?」
「そっ、それはその、言葉のあやというか、その……」
「?」
「……ああもう、不思議そうな顔すんな!」
何を言わんとしているのか、皆目検討がつかない。そしてなぜまた殴られのか分からない。
「痛くて泣きそうだゼ!」(半泣き)
「はぁ……なんだってこんなのに……」
「たで食う虫も好き好き、と言いますから」
適当にそんなことを言ってみたら、かなみの顔が赤くなった。
「あっ、アンタ、……気づいてた、の?」
「当然だ!」
もちろん何の話か分からないが、即答する。
「……う、うう、ううう~」
すると、かなみの顔がこれ以上赤くなるとヤバイのではないかと思うほど赤くなった。
「か、かなみ? 赤いですよ? ヤクイ感じですよ?」
「赤くないッ!」
そこを否定されると、もう俺にできることなんて。
「ち、違うのよ? 別にあたしはアンタのことなんてその、……ねぇ?」
「はぁ」
どうやら俺関係で赤くなっているようで。なんでせうか。かなみが俺に惚れてる? ……いやいや、ないない、それはない。逆ならあるけど。
「そ、そうよ。アンタが勘違いしてるだけで、あたしはアンタなんて何とも思ってないのよ」
「俺は色々思ってるけどな」
なにせ、日々殴られたり蹴られたりして不満のるつぼですから、と繋げようとしたのに、かなみが俺をじーっと見つめたりするので怖くて言えない。
「……そ、そうなんだ。……ふーん」
気のせいかもしれないが、かなみの瞳に熱が籠もったような。
「……じゃ、じゃあさ、どうしてもって言うなら……デート、してあげてもいいわよ?」
なにがどうなってじゃあなのか分からないが、その提案は素敵だね。が、言っておかなくてはならないことが一つだけ。
「嫌々行かせても面白くないからいいよ」
かなみの目が点になった。
「……アンタ」
「はい?」
「なんでループしてんのよ!? これじゃ、いつになってもデートできないじゃないの!」
「こっ、これは……妖怪、殴るスキーの仕業?」
「そんな存在しない妖怪の仕業なわけないでしょ! アンタのせいよ、アンタの! この馬鹿この馬鹿この馬鹿!」
「これは失礼を。じゃ、なんだ。ええと、かなみ。俺と、その、……水族館でも行きませんか?」
大変叱られたので、今度はループしないよう細心の注意を払いながらデートに誘いました。
「……ま、まぁ、どうして……あ、これ言ったらまたループするわね。え、えっと……おほん。……ま、まぁ、行ってあげるわよ。おさかな、好きだし」
そんな感じの返事を貰ったので、今度こそ普通にデートできそうな予感!
「喜ばしい予感!」
「はぁ……なんで普通に喜べないのかね、この子は」
なんて、優しく微笑みながら俺のほおをつっつくかなみでした。
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【ツンデレな妹VSデレデレな姉12】
2010年03月18日
お姉ちゃんのおっぱいが大きくなったらしい。
「タカくんが頑張ってくれたおかげだね♪」
「ま、待ってください! 俺は何もしていない! 私は無実だ! 頑張るとか意味わかんない! ぼくみっつ!」
「……じゃあなんでそんな慌ててんの、みっつのお兄さん?」
大きくなった姉とは対照的に、未だ悲しい胸囲の妹が俺を捕まえて放さない。
「ほ、本当ですよ? 触るとか揉むとかそういう淫乱ふしだら団地妻なワードは俺には似合わないよ?」
「だよね、タカくん揉むより吸う方が好きだもんねー♪」
「違う違う違うちぐげっ」
お姉ちゃんの天真爛漫な攻撃により、妹の拳が俺の腹に恐るべき勢いで収まりました。
「どういうことよっ!」
「すいません許してください痛みで人は時に死ぬとさる漫画で学んだんです」
平身低頭許しを請う。プライド? そんなもの妹の前では紙くず同然ですよ。
「猿漫画……プロゴルファー?」
お姉ちゃんが変なことを言ってるけど、いつものことなので気にしない。
「だいたい姉ちゃんも姉ちゃんよ! 姉ちゃんが甘やかすから、兄貴もふら~っと行っちゃうのよ!」
「人を灯りに誘われる蛾みたいに言うない」
「害がないだけまだ蛾の方がマシよ」
「しかし、奴らは燐粉を! 粉を撒き散らしますよ、粉! あの粉を考えると、俺の方が2倍、いや4倍は役に立つかと! その辺どう考え」
「黙れ」
凄く怖いので黙る。ちょっと涙出た。
「あ、タカくん泣いてる……可哀想だけど、可愛い~♪」
お姉ちゃんが俺の頭を抱き、よしよしと撫でた。隙あらば可愛がられる。
「はぁ……姉ちゃんに言っても無駄か」
「今頃分かったか、愚かなり妹よ!」
お姉ちゃんに守られている今なら、妹のカナにでかい顔ができる。
「……ふ、ふふ、後で覚えときなさい、兄貴」
ただ、その後は物理的に顔がでかくなってしまうのが難点ですね。暴力反対。
「まぁそういうわけで、お姉ちゃんのブラを買いに来たのですがどうです、カナさん?」
「なんで兄貴まで呼ぶのよ、姉ちゃん」
どうやら俺はあまり歓迎されてないようだ。確かに女性用下着売り場に男性がいるのは、あまり望ましくない光景だろう。
「タカくんが脱がすんだから、タカくんの気に入った下着がいいよねー?」
店員さんたちがお姉ちゃんの言葉を聞き、犯罪者を見る目つきで俺を見る。
「手馴れたもんですよ」
「否定しろ、馬鹿兄貴!」
期待されていた言葉を言ったのにカナに叱られた。確かに嘘はよくないよね。
「じゃあ俺はそこで待ってるから、二人で買ってきてよ」
「なに言ってるの? タカくんも一緒に来るんだよ」
そう来るとは思っていたが、一緒に回るのはさすがに恥ずかしい。うむ、適当な言い訳で回避だ!
「パンツを見ると奪わずにはいられないんだ。我慢できないんだ。できなかったんだ!」
言ってる内に自分でもそうかなぁと洗脳され、気がつけばお姉ちゃんのスカートに頭から突っ込んでいた。よし、パンツを脱がして……!
「変態かっ!」
カナのつっこみで正気に戻る。
「ふぅ……助かった。ありがとう、カナ」
「あ、あの、それよりお姉ちゃんのパンツ返して……」
カナと握手してると、お姉ちゃんがものすごく恥ずかしそうに太ももをすり合わせながらおずおず言って来た。
「返して欲しければ、カナのパンツと交換だ!」
「いいから姉ちゃんに返せ、馬鹿兄貴ッ!」
高々と温もりの残るパンツを掲げていると、カナに張り飛ばされた。ピヨってる間にパンツも奪われた。
「あ、あの、カナちゃん、悪いんだけど、ちょっとだけパンツ貸して?」
「もう取ったから交換しなくていいっ! ほら、兄貴は置いて下着見よ、下着!」
「で、でもカナちゃん、わたしまだパンツはいてない、パンツはいてないよ~」
お姉ちゃんの情けない叫びが聞こえるような気がするけど、頭がぐわんぐわんしてよく分からない。ついでにそのまま気絶しちまえ。えい、がくり。
で。
「かわいーの買ったよ♪ また後で見せてあげるね♪」
綺麗な包みを振り回すお姉ちゃんと、ちゃっかり自分の分も買ってるカナと帰路を共にしているわけで。
「お姉ちゃんがブラ買ったのは分かるんだけど、なんでカナも一緒に? ……まさか、大きくなったのか?」
「まさかって何よ! ……いや、大きくなってないけどさ」
少し拗ねたようにぼそぼそ言うカナが、ちょっとだけ可愛い。
「カナちゃんはね、パンツ買ったの」
「ちょ、ちょっと姉ちゃん! そんな大きい声で言わないでよ!」
カナは真っ赤な顔でお姉ちゃんの言葉を遮ろうとした。
「パンツか、お姉ちゃん!」
「ぱんつだよ、タカくん!」
「パンツー!」
「ぱんつー!」
お姉ちゃんと二人で唱和したのに、俺だけ殴られた。
「姉ちゃんも兄貴に乗せられない!」
「ごめんね、カナちゃん。しょぼーん」
カナに叱られ、しょぼーんと言いながら指をくにくにさせるお姉ちゃん。
「まぁそう責めるな。この指をくにくにさせる動作に免じて許してやれ」
「意味分かんないし、扇動した本人が許すとか言うなッ!」
「いや、この指くにくにが俺の心を捕らえて放さないんだ。いわばこの指が牢屋の檻で、このくにくにが看守」
「えへへー、タカくん♪」
お姉ちゃんの指を握って逐一説明してたら、お姉ちゃんがにっこり笑いかけてきたので困る。
「お、お姉ちゃん……」
「ん? なぁに、タカくん?」
ん、と小首を傾げたりされたら、もっと困る。
「んっ、んっ! えへんえへんえへん!」
「あれ、どうしたのカナちゃん? 風邪?」
さらりと俺の手から離れ、お姉ちゃんはわざとらしく咳をするカナの様子を見に行った。
「貧乳病だ、お姉ちゃん! あの咳を吸い込むと乳がみるみるしぼむぞ、それ逃げろ!」
「そんな病気あるかッ! 待て、兄貴!」
追いかけてきたカナをからかうように、俺は自宅へ向けて駆け出した。
「あ~、待ってよ二人とも~」
そんな俺たちの後をよたよたとお姉ちゃんがついてくる。結局家まで追いつけなかったお姉ちゃんにべそべそ泣かれたけど、概ね楽しい一日でした。
「んー、くにくに難しいな……もっと自然に」
その夜、カナの部屋の前を通った時にそんな声が聞こえてきたような気がしたけど、聞こえない聞こえない。
「タカくんが頑張ってくれたおかげだね♪」
「ま、待ってください! 俺は何もしていない! 私は無実だ! 頑張るとか意味わかんない! ぼくみっつ!」
「……じゃあなんでそんな慌ててんの、みっつのお兄さん?」
大きくなった姉とは対照的に、未だ悲しい胸囲の妹が俺を捕まえて放さない。
「ほ、本当ですよ? 触るとか揉むとかそういう淫乱ふしだら団地妻なワードは俺には似合わないよ?」
「だよね、タカくん揉むより吸う方が好きだもんねー♪」
「違う違う違うちぐげっ」
お姉ちゃんの天真爛漫な攻撃により、妹の拳が俺の腹に恐るべき勢いで収まりました。
「どういうことよっ!」
「すいません許してください痛みで人は時に死ぬとさる漫画で学んだんです」
平身低頭許しを請う。プライド? そんなもの妹の前では紙くず同然ですよ。
「猿漫画……プロゴルファー?」
お姉ちゃんが変なことを言ってるけど、いつものことなので気にしない。
「だいたい姉ちゃんも姉ちゃんよ! 姉ちゃんが甘やかすから、兄貴もふら~っと行っちゃうのよ!」
「人を灯りに誘われる蛾みたいに言うない」
「害がないだけまだ蛾の方がマシよ」
「しかし、奴らは燐粉を! 粉を撒き散らしますよ、粉! あの粉を考えると、俺の方が2倍、いや4倍は役に立つかと! その辺どう考え」
「黙れ」
凄く怖いので黙る。ちょっと涙出た。
「あ、タカくん泣いてる……可哀想だけど、可愛い~♪」
お姉ちゃんが俺の頭を抱き、よしよしと撫でた。隙あらば可愛がられる。
「はぁ……姉ちゃんに言っても無駄か」
「今頃分かったか、愚かなり妹よ!」
お姉ちゃんに守られている今なら、妹のカナにでかい顔ができる。
「……ふ、ふふ、後で覚えときなさい、兄貴」
ただ、その後は物理的に顔がでかくなってしまうのが難点ですね。暴力反対。
「まぁそういうわけで、お姉ちゃんのブラを買いに来たのですがどうです、カナさん?」
「なんで兄貴まで呼ぶのよ、姉ちゃん」
どうやら俺はあまり歓迎されてないようだ。確かに女性用下着売り場に男性がいるのは、あまり望ましくない光景だろう。
「タカくんが脱がすんだから、タカくんの気に入った下着がいいよねー?」
店員さんたちがお姉ちゃんの言葉を聞き、犯罪者を見る目つきで俺を見る。
「手馴れたもんですよ」
「否定しろ、馬鹿兄貴!」
期待されていた言葉を言ったのにカナに叱られた。確かに嘘はよくないよね。
「じゃあ俺はそこで待ってるから、二人で買ってきてよ」
「なに言ってるの? タカくんも一緒に来るんだよ」
そう来るとは思っていたが、一緒に回るのはさすがに恥ずかしい。うむ、適当な言い訳で回避だ!
「パンツを見ると奪わずにはいられないんだ。我慢できないんだ。できなかったんだ!」
言ってる内に自分でもそうかなぁと洗脳され、気がつけばお姉ちゃんのスカートに頭から突っ込んでいた。よし、パンツを脱がして……!
「変態かっ!」
カナのつっこみで正気に戻る。
「ふぅ……助かった。ありがとう、カナ」
「あ、あの、それよりお姉ちゃんのパンツ返して……」
カナと握手してると、お姉ちゃんがものすごく恥ずかしそうに太ももをすり合わせながらおずおず言って来た。
「返して欲しければ、カナのパンツと交換だ!」
「いいから姉ちゃんに返せ、馬鹿兄貴ッ!」
高々と温もりの残るパンツを掲げていると、カナに張り飛ばされた。ピヨってる間にパンツも奪われた。
「あ、あの、カナちゃん、悪いんだけど、ちょっとだけパンツ貸して?」
「もう取ったから交換しなくていいっ! ほら、兄貴は置いて下着見よ、下着!」
「で、でもカナちゃん、わたしまだパンツはいてない、パンツはいてないよ~」
お姉ちゃんの情けない叫びが聞こえるような気がするけど、頭がぐわんぐわんしてよく分からない。ついでにそのまま気絶しちまえ。えい、がくり。
で。
「かわいーの買ったよ♪ また後で見せてあげるね♪」
綺麗な包みを振り回すお姉ちゃんと、ちゃっかり自分の分も買ってるカナと帰路を共にしているわけで。
「お姉ちゃんがブラ買ったのは分かるんだけど、なんでカナも一緒に? ……まさか、大きくなったのか?」
「まさかって何よ! ……いや、大きくなってないけどさ」
少し拗ねたようにぼそぼそ言うカナが、ちょっとだけ可愛い。
「カナちゃんはね、パンツ買ったの」
「ちょ、ちょっと姉ちゃん! そんな大きい声で言わないでよ!」
カナは真っ赤な顔でお姉ちゃんの言葉を遮ろうとした。
「パンツか、お姉ちゃん!」
「ぱんつだよ、タカくん!」
「パンツー!」
「ぱんつー!」
お姉ちゃんと二人で唱和したのに、俺だけ殴られた。
「姉ちゃんも兄貴に乗せられない!」
「ごめんね、カナちゃん。しょぼーん」
カナに叱られ、しょぼーんと言いながら指をくにくにさせるお姉ちゃん。
「まぁそう責めるな。この指をくにくにさせる動作に免じて許してやれ」
「意味分かんないし、扇動した本人が許すとか言うなッ!」
「いや、この指くにくにが俺の心を捕らえて放さないんだ。いわばこの指が牢屋の檻で、このくにくにが看守」
「えへへー、タカくん♪」
お姉ちゃんの指を握って逐一説明してたら、お姉ちゃんがにっこり笑いかけてきたので困る。
「お、お姉ちゃん……」
「ん? なぁに、タカくん?」
ん、と小首を傾げたりされたら、もっと困る。
「んっ、んっ! えへんえへんえへん!」
「あれ、どうしたのカナちゃん? 風邪?」
さらりと俺の手から離れ、お姉ちゃんはわざとらしく咳をするカナの様子を見に行った。
「貧乳病だ、お姉ちゃん! あの咳を吸い込むと乳がみるみるしぼむぞ、それ逃げろ!」
「そんな病気あるかッ! 待て、兄貴!」
追いかけてきたカナをからかうように、俺は自宅へ向けて駆け出した。
「あ~、待ってよ二人とも~」
そんな俺たちの後をよたよたとお姉ちゃんがついてくる。結局家まで追いつけなかったお姉ちゃんにべそべそ泣かれたけど、概ね楽しい一日でした。
「んー、くにくに難しいな……もっと自然に」
その夜、カナの部屋の前を通った時にそんな声が聞こえてきたような気がしたけど、聞こえない聞こえない。
【ツンデレな妹VSデレデレな姉13】
2010年03月17日
妹のカナが熱を出した。
「どうしよどうしよ、タカくん! カナちゃん、熱あるよ!」
「ああどうしようどうしよう! カナが、カナが死んじゃう!」
「うるさい」
カナの部屋でお姉ちゃんと二人でドタバタしてたら、俺だけカナに殴られた。
「ちょっと熱出ただけ。別に死にゃしないわよ」
布団に戻り、カナは胸元から温度計を取り出し、お姉ちゃんに渡した。はだけた胸元をじぃぃぃぃっと見つめていたら殴られた。
「37度……うーん、今日は学校お休みだね、カナちゃん」
お姉ちゃんの言葉に、カナは小さくうなずいた。
「カナだけ休むなんてずるい。俺も休む」
「子供かッ!」
「大人です。いや、まだ成人してないから大人とはいえないものの、気分的には大人です」
「そういうことじゃなくて……ああもう、しんどいんだから怒らせるなっ!」
「まぁまぁ。タカくんはカナちゃんが心配だから、看病したいんだよ。ね?」
お姉ちゃんは憤るカナをなだめてから、俺に視線を移した。
「いっ、いや、俺はズル休みの背徳感を味わいだけで、別にカナが心配とかそんな」
必死で言い訳するものの、お姉ちゃんは訳知り顔でうんうんうなずくばかりだし、カナは真っ赤になって俺を睨んでるし、嗚呼。
「じゃ、お姉ちゃん学校行ってくるね。カナちゃんのことお願いね、タカくん」
下手クソな鼻歌を口ずさみながら、お姉ちゃんは部屋を出て行った。
「……ああもう、仕方ないから世話されてやるわよ。感謝しなさいよ」
「すげー偉そう」
「……嫌なら看病しなくていいわよ、別に」
途端に機嫌を損ね、カナは背を向けてしまった。
「看病という名の元に恥辱の限りを尽くそうと思った矢先にこれか! こうなっては機嫌を直してもらうよう、思ってもない事を並べて悦に浸らせ」
「兄貴。ちょいこっち来て」
「なになにー?」
ふらふらカナの寝る布団に近づいたら、鼻殴られた。鼻血でた。
「病気でも関係なしですか」
「うっさい! 思ってる事をそのまま口に出す癖どうにかしろっ!」
俺もどうにかしたいです。それはともかく、血が出るので鼻にティッシュを詰める。
「とにかく、セクハラ……ごほんごほん、セクハ……いやいや、看病したいのですが」
「妹に欲情するって、変態と思うわよ」
「し、失敬な! 妹に欲情せずして何に欲情しろというのか! 全国1兆人の妹ファンに謝れ! でも姉も大好きです!」
「地球人口より多いっ! 怒るなら変態って言われたこと怒れ! あと死ね」
全部律儀にツッコんでくれた。立派な芸人に育ってくれて兄は嬉しいが、最後のツッコミが冷たすぎて泣きそう。
「まぁそんなわけで、兄は純粋にカナを心配しているのです」
「病人を怒らせて、何言ってんだか……」
心底呆れたようにため息を吐いて、カナは布団に寝そべった。
「とにかくさ、大したことないんだし、寝てたら治るわよ」
「しかし、それでは俺が暇だ」
「知らないわよ。兄貴が勝手に学校休んで、勝手に看病しようとしてるだけでしょ?」
「む……」
確かにそうなのだが、ちっとくらい感謝してくれても罰は当たるまい。さらに、感謝が行き過ぎてエッチなことをしてくれても罰は当たるまい。しかし……。
「……ちょっと、どこ見てるのよ」
「カナのぺたい胸じゃパイズリは無理だな」
カナの すごい 暴力
「死ぬぜ?」
「死ね!」
部屋から追い出されてしまった。今戻ると本当に殺されかねない。寝ると言ってたし、しばらく時間を置こう。
しばらく時間を置いたら昼になった。カナの様子を見に部屋へ。
小さくノックをするが、返事がない。まだ寝てるのかな?
そっとドアを開け、中を覗く。果たして、小さな寝息を立てるお嬢様が布団の中にいた。
音を立てないようにドアを閉め、くーくー言ってるお姫様に近づく。
「……寝てる時は可愛いのになぁ」
ぴくり、とカナが小さく身じろぎして、寝息が止まった。
「あ、起きちゃったか?」
「……く、くーくー」
まだ寝ているようだ。少し寝息がわざとらしいような気がするが、病気の時は寝息もみだれるのかもしれない。
カナのオデコに手を当て、熱を測る。……よく分からんが、たぶん平熱だろう。一安心。
枕元に座り、みだれた前髪を手で揃える。ついでに頭もなでる。
「……ん♪」
気のせいか、少しだけカナの顔が綻んだような気がした。
……ふむ。起きてる時になでたりしたら殴られるだろうし、今のうちに起きない程度に沢山なでよう。
「なでなでなで」
「……♪♪♪」
カナの顔がすげー嬉しそうに綻んだ。どんな夢見てんだか。
「……っと、あんま長居したら起こしちまうな」
腰を上げようとしたら、途中で何かに引っかかった。見ると、いつのまにか服の裾を掴まれていた。これでは立てない。
カナの手を解こうとするものの、しっかり握られており、無理に解こうとすれば起きてしまうかもしれない。
「困ったな……」
このままではカナが起きた時に勘違いされ、殴られること請け合い。
「ウケアイ!」
フレーズが気に入ったので小さく呟くと、カナがぶほっと噴き出した。
「カナ? 起きたのか?」
カナは小さくぷるぷる震えてはいるが、目はしっかりつむられたままだった。震えるって事は……寒いのか?
周囲を見回すが、あいにく布団はカナが被ってるものしかない。……んーむ、前例がないわけでもないし、まぁいっか。
「ちょい失礼」
「っ!?」
カナの寝てる布団の中に入る。俺の体温でカナを温める冬山作戦だ。
「うむ、ホコホコ」
カナ方向から小さく“あぅあぅ”という声が聞こえるような、聞こえないような。
……しっかし、こうやって一緒に寝るなんて最近なかったけど、……いかんな。大変いかんですよ。
カナの匂いがいい匂いで。お姉ちゃんとはまた違ったいい匂いで。
気がつけばカナの頭を抱え込み、思い切りカナの香りを胸いっぱいに吸い込んでいた。
「あ……」
自分の行為に気づいて慌てて体を離すと、俺を見上げるカナの視線とかち合った。めっちゃ起きてた。
「い、いつから?」
「え、えっと……今! 今さっき起きたの!」
「……そ、そか」
大変嘘臭いですが、それを指摘する度胸は御座いません。
「そっ、それより兄貴、なんでここにいるのよっ」
「あ、いや、その、ごめん。なんか寒そうだったから。……もう出るな」
布団から這い出ようとしてたら、腕を掴まれた。
「……? どした?」
「……まっ、まだ、寒いから。……もうちょっと」
こっちを見ようとしないまま、カナが囁く。
「……じゃ、じゃあ、お邪魔します」
半分出てた体を布団に戻し、再び布団の中でカナと向き合う。……ええい、なんでカナ相手にこんな緊張しなけりゃならんのだ。
「……な、なんか喋りなさいよ」
緊張してるのはカナも同じようで、俺の腹を指で押しながら何か喋れとせっつく。
「え、えと、いい匂いですね」
「…………」
カナは顔を真っ赤にして黙ってしまった。失敗したようだ。
「そ、そうじゃなくて、その、な? あ、あははは」
「……うぅ」
笑って誤魔化そうとするも、カナは小さくうめくだけで誤魔化されない。
「……喋る事ないなら、その、……したいこと、したらいいじゃない」
「したいこと?」
「……な、なでなで、……とか」
…………。なでなで、って。
「べっ、別に起きてなかったわよ!? ゆ、夢の中で兄貴があたしの頭なでてて、嬉しそうだったから!」
カナの すごい 言い訳
「つまり、カナは頭なでて欲しいと。大好きなお兄ちゃんに頭なでて欲しいと」
「だっ、誰もそんなこと……ひゃっ」
カナの頭に手を乗せ、優しくなでる。
「……うぅ」
何か言いたそうだが、言い出せないまま俺にされるがままのカナ。ちょっと可愛い。
「……なー。もういいか?」
可愛いけど、それも小一時間続けてるとなると話は別。超しんどい。
「まだ。もっと」
カナは安心しきったように俺に抱きつき、目を細めながらもっとなでろとせっつく。
「なんか、すげー甘えん坊になってるな」
「……病気の時くらい、甘えん坊になるわよ」
悪い? とでも言いたげな口ぶりで囁くカナ。
「いかん、カナが普段の暴虐ぶりからは考えられないくらい可愛く見える」
「……兄貴ってさ、いっつも失礼よね」
口だけは不満そうにしながら、カナは自分の顔を俺の胸に押し付けた。
「……兄貴は、さ。いつもみたいな、元気なあたしの方がいい? ……甘えん坊は、嫌い?」
「……ばーか」
カナの頭をくしゃくしゃに撫でる。
「大事な大事な妹なんだ。元気なカナも、甘えん坊のカナも、どっちも大好きに決まってる。俺がカナを嫌う訳ねーだろ」
そう言って、カナを優しく抱きしめる。カナの鼻息が胸に当たり、ちょっとくすぐったい。
「……お兄ちゃん……」
カナの俺を呼ぶ言い方が、昔の──小さかった頃に戻っていた。
「ははっ、甘えついでにキスでもするか? ほら、外国だと親愛の情を示すのにキスするだろ?」
なーんて、と言おうとして、俺を見上げるカナの瞳が熱っぽく潤んでいることに気づいた。
「お兄ちゃん……」
「え、えと、カナ? あの、家族のキスって、ほっぺたにすると思うんですケド……」
「……そんなの、聞こえないよ……」
カナの口唇が少しずつ、少しずつ近寄ってくる。このままでは、だがしかし……!
「たっだいまーっ! カナちゃん、元気になっ……あああああ! カナちゃんとタカくんが合体してるーっ!?」
お姉ちゃんが部屋に入ってくるなり、不穏当な言葉を隣近所に響き渡らせた。
「ちょ、ちょっと姉ちゃん! なに叫んでんのよ!」
「そうだ。まだ挿れてないぞ」
「兄貴も何を冷静に訂正してるかっ! ほらっ、早く出た出た!」
カナに布団から蹴り出された。とにかく、パニックに陥ってるお姉ちゃんをなんとかしないと。
……しかし。キスを中断され、ほっとしたのが半分、残念なのが半分なのは、兄としてどうなんだろうな。
「どうしよどうしよ、タカくん! カナちゃん、熱あるよ!」
「ああどうしようどうしよう! カナが、カナが死んじゃう!」
「うるさい」
カナの部屋でお姉ちゃんと二人でドタバタしてたら、俺だけカナに殴られた。
「ちょっと熱出ただけ。別に死にゃしないわよ」
布団に戻り、カナは胸元から温度計を取り出し、お姉ちゃんに渡した。はだけた胸元をじぃぃぃぃっと見つめていたら殴られた。
「37度……うーん、今日は学校お休みだね、カナちゃん」
お姉ちゃんの言葉に、カナは小さくうなずいた。
「カナだけ休むなんてずるい。俺も休む」
「子供かッ!」
「大人です。いや、まだ成人してないから大人とはいえないものの、気分的には大人です」
「そういうことじゃなくて……ああもう、しんどいんだから怒らせるなっ!」
「まぁまぁ。タカくんはカナちゃんが心配だから、看病したいんだよ。ね?」
お姉ちゃんは憤るカナをなだめてから、俺に視線を移した。
「いっ、いや、俺はズル休みの背徳感を味わいだけで、別にカナが心配とかそんな」
必死で言い訳するものの、お姉ちゃんは訳知り顔でうんうんうなずくばかりだし、カナは真っ赤になって俺を睨んでるし、嗚呼。
「じゃ、お姉ちゃん学校行ってくるね。カナちゃんのことお願いね、タカくん」
下手クソな鼻歌を口ずさみながら、お姉ちゃんは部屋を出て行った。
「……ああもう、仕方ないから世話されてやるわよ。感謝しなさいよ」
「すげー偉そう」
「……嫌なら看病しなくていいわよ、別に」
途端に機嫌を損ね、カナは背を向けてしまった。
「看病という名の元に恥辱の限りを尽くそうと思った矢先にこれか! こうなっては機嫌を直してもらうよう、思ってもない事を並べて悦に浸らせ」
「兄貴。ちょいこっち来て」
「なになにー?」
ふらふらカナの寝る布団に近づいたら、鼻殴られた。鼻血でた。
「病気でも関係なしですか」
「うっさい! 思ってる事をそのまま口に出す癖どうにかしろっ!」
俺もどうにかしたいです。それはともかく、血が出るので鼻にティッシュを詰める。
「とにかく、セクハラ……ごほんごほん、セクハ……いやいや、看病したいのですが」
「妹に欲情するって、変態と思うわよ」
「し、失敬な! 妹に欲情せずして何に欲情しろというのか! 全国1兆人の妹ファンに謝れ! でも姉も大好きです!」
「地球人口より多いっ! 怒るなら変態って言われたこと怒れ! あと死ね」
全部律儀にツッコんでくれた。立派な芸人に育ってくれて兄は嬉しいが、最後のツッコミが冷たすぎて泣きそう。
「まぁそんなわけで、兄は純粋にカナを心配しているのです」
「病人を怒らせて、何言ってんだか……」
心底呆れたようにため息を吐いて、カナは布団に寝そべった。
「とにかくさ、大したことないんだし、寝てたら治るわよ」
「しかし、それでは俺が暇だ」
「知らないわよ。兄貴が勝手に学校休んで、勝手に看病しようとしてるだけでしょ?」
「む……」
確かにそうなのだが、ちっとくらい感謝してくれても罰は当たるまい。さらに、感謝が行き過ぎてエッチなことをしてくれても罰は当たるまい。しかし……。
「……ちょっと、どこ見てるのよ」
「カナのぺたい胸じゃパイズリは無理だな」
カナの すごい 暴力
「死ぬぜ?」
「死ね!」
部屋から追い出されてしまった。今戻ると本当に殺されかねない。寝ると言ってたし、しばらく時間を置こう。
しばらく時間を置いたら昼になった。カナの様子を見に部屋へ。
小さくノックをするが、返事がない。まだ寝てるのかな?
そっとドアを開け、中を覗く。果たして、小さな寝息を立てるお嬢様が布団の中にいた。
音を立てないようにドアを閉め、くーくー言ってるお姫様に近づく。
「……寝てる時は可愛いのになぁ」
ぴくり、とカナが小さく身じろぎして、寝息が止まった。
「あ、起きちゃったか?」
「……く、くーくー」
まだ寝ているようだ。少し寝息がわざとらしいような気がするが、病気の時は寝息もみだれるのかもしれない。
カナのオデコに手を当て、熱を測る。……よく分からんが、たぶん平熱だろう。一安心。
枕元に座り、みだれた前髪を手で揃える。ついでに頭もなでる。
「……ん♪」
気のせいか、少しだけカナの顔が綻んだような気がした。
……ふむ。起きてる時になでたりしたら殴られるだろうし、今のうちに起きない程度に沢山なでよう。
「なでなでなで」
「……♪♪♪」
カナの顔がすげー嬉しそうに綻んだ。どんな夢見てんだか。
「……っと、あんま長居したら起こしちまうな」
腰を上げようとしたら、途中で何かに引っかかった。見ると、いつのまにか服の裾を掴まれていた。これでは立てない。
カナの手を解こうとするものの、しっかり握られており、無理に解こうとすれば起きてしまうかもしれない。
「困ったな……」
このままではカナが起きた時に勘違いされ、殴られること請け合い。
「ウケアイ!」
フレーズが気に入ったので小さく呟くと、カナがぶほっと噴き出した。
「カナ? 起きたのか?」
カナは小さくぷるぷる震えてはいるが、目はしっかりつむられたままだった。震えるって事は……寒いのか?
周囲を見回すが、あいにく布団はカナが被ってるものしかない。……んーむ、前例がないわけでもないし、まぁいっか。
「ちょい失礼」
「っ!?」
カナの寝てる布団の中に入る。俺の体温でカナを温める冬山作戦だ。
「うむ、ホコホコ」
カナ方向から小さく“あぅあぅ”という声が聞こえるような、聞こえないような。
……しっかし、こうやって一緒に寝るなんて最近なかったけど、……いかんな。大変いかんですよ。
カナの匂いがいい匂いで。お姉ちゃんとはまた違ったいい匂いで。
気がつけばカナの頭を抱え込み、思い切りカナの香りを胸いっぱいに吸い込んでいた。
「あ……」
自分の行為に気づいて慌てて体を離すと、俺を見上げるカナの視線とかち合った。めっちゃ起きてた。
「い、いつから?」
「え、えっと……今! 今さっき起きたの!」
「……そ、そか」
大変嘘臭いですが、それを指摘する度胸は御座いません。
「そっ、それより兄貴、なんでここにいるのよっ」
「あ、いや、その、ごめん。なんか寒そうだったから。……もう出るな」
布団から這い出ようとしてたら、腕を掴まれた。
「……? どした?」
「……まっ、まだ、寒いから。……もうちょっと」
こっちを見ようとしないまま、カナが囁く。
「……じゃ、じゃあ、お邪魔します」
半分出てた体を布団に戻し、再び布団の中でカナと向き合う。……ええい、なんでカナ相手にこんな緊張しなけりゃならんのだ。
「……な、なんか喋りなさいよ」
緊張してるのはカナも同じようで、俺の腹を指で押しながら何か喋れとせっつく。
「え、えと、いい匂いですね」
「…………」
カナは顔を真っ赤にして黙ってしまった。失敗したようだ。
「そ、そうじゃなくて、その、な? あ、あははは」
「……うぅ」
笑って誤魔化そうとするも、カナは小さくうめくだけで誤魔化されない。
「……喋る事ないなら、その、……したいこと、したらいいじゃない」
「したいこと?」
「……な、なでなで、……とか」
…………。なでなで、って。
「べっ、別に起きてなかったわよ!? ゆ、夢の中で兄貴があたしの頭なでてて、嬉しそうだったから!」
カナの すごい 言い訳
「つまり、カナは頭なでて欲しいと。大好きなお兄ちゃんに頭なでて欲しいと」
「だっ、誰もそんなこと……ひゃっ」
カナの頭に手を乗せ、優しくなでる。
「……うぅ」
何か言いたそうだが、言い出せないまま俺にされるがままのカナ。ちょっと可愛い。
「……なー。もういいか?」
可愛いけど、それも小一時間続けてるとなると話は別。超しんどい。
「まだ。もっと」
カナは安心しきったように俺に抱きつき、目を細めながらもっとなでろとせっつく。
「なんか、すげー甘えん坊になってるな」
「……病気の時くらい、甘えん坊になるわよ」
悪い? とでも言いたげな口ぶりで囁くカナ。
「いかん、カナが普段の暴虐ぶりからは考えられないくらい可愛く見える」
「……兄貴ってさ、いっつも失礼よね」
口だけは不満そうにしながら、カナは自分の顔を俺の胸に押し付けた。
「……兄貴は、さ。いつもみたいな、元気なあたしの方がいい? ……甘えん坊は、嫌い?」
「……ばーか」
カナの頭をくしゃくしゃに撫でる。
「大事な大事な妹なんだ。元気なカナも、甘えん坊のカナも、どっちも大好きに決まってる。俺がカナを嫌う訳ねーだろ」
そう言って、カナを優しく抱きしめる。カナの鼻息が胸に当たり、ちょっとくすぐったい。
「……お兄ちゃん……」
カナの俺を呼ぶ言い方が、昔の──小さかった頃に戻っていた。
「ははっ、甘えついでにキスでもするか? ほら、外国だと親愛の情を示すのにキスするだろ?」
なーんて、と言おうとして、俺を見上げるカナの瞳が熱っぽく潤んでいることに気づいた。
「お兄ちゃん……」
「え、えと、カナ? あの、家族のキスって、ほっぺたにすると思うんですケド……」
「……そんなの、聞こえないよ……」
カナの口唇が少しずつ、少しずつ近寄ってくる。このままでは、だがしかし……!
「たっだいまーっ! カナちゃん、元気になっ……あああああ! カナちゃんとタカくんが合体してるーっ!?」
お姉ちゃんが部屋に入ってくるなり、不穏当な言葉を隣近所に響き渡らせた。
「ちょ、ちょっと姉ちゃん! なに叫んでんのよ!」
「そうだ。まだ挿れてないぞ」
「兄貴も何を冷静に訂正してるかっ! ほらっ、早く出た出た!」
カナに布団から蹴り出された。とにかく、パニックに陥ってるお姉ちゃんをなんとかしないと。
……しかし。キスを中断され、ほっとしたのが半分、残念なのが半分なのは、兄としてどうなんだろうな。
【ツンデレな妹VSデレデレな姉14】
2010年03月17日
昨日は俺、妹のカナ、お姉ちゃんの三人が血で血を洗う抗争を繰り広げていた(徹夜で桃鉄)ので、授業中だというのに眠くて仕方がない。
「ぐ、ぐぅ……むむ、……ぐぅ」
必死でまぶたを開けようとしているが、眠気がまぶたを閉じさせようと邪魔をする。
「あー、じゃあ17ページを……別府、読め」
人が必死で睡魔と戦っているというのに、壇上のオッサンがうるさくて敵わない。
「べ、別府くん、先生が読めって言ってるよ」
隣の生徒が俺の腕をつんつん突付く。いったい何の用だというのだぐぅぐぅ。
「別府くん、別府くん、……起きてる? おーい、とりあえず立ってよぉ」
立てと言うなら立とう。こう、いい感じに立つ。
「んぐ……ここに俺vs睡魔の闘いの火蓋が切って落とされたのだった」
「そんなこと書いとらんぞ」
「ところで火蓋ってなんだろうな……ぐぅぐぅ」
「わ、立ったまま寝てる。器用だね、別府くん」
「別府、後で職員室来い」
なんか気がついたら職員室で怒られてた。首を傾げながら職員室を後にする。
「……ほんっと、よく怒られる人だこと」
廊下でカナが待ってた。いつもより喋りにキレがないのは、やっぱり眠いせいだろうか。
「ふぁぁぁ……眠。……ねー兄貴、このまま教室戻ったらあたし寝ちゃうよー。どーしよ」
珍しくカナが俺に頼っている。ここは兄として頼りになるところを見せつけねば!
「大丈夫。寝ちゃったら俺が優しく起こしてあげるから安心しろ」
「え、や、優しく? ……どんな風に?」
どこか期待に満ちた目で俺を見つめるカナ。
「スカートの中に手突っ込んで」
「どこが優しいのよッ!」
「優しいタッチでさわるよ?」
殴られた。
「荒々しいのが好みですか?」
3回殴られた。鼻血出た。
「あーもー……はぁ。暴れたら疲れて余計眠くなっちゃった」
じゃあ殴るなと言いたいけど、また殴られては敵わないので黙って自分の鼻にティッシュを詰める。
「ふぁぁ……じゃ、俺は保健室で寝てくる」
「えっ、ちょっとずるいわよ! あたしも眠いのに!」
「んじゃお前も来たらいいだろ。同衾推奨……なわけないよね? 別々に寝るのが当たり前だよね?」
拳が近づいてきたので、慌てて真っ当なことを言ってみる。
「当然よ。……でも、病気でもないのに寝ていいのかな?」
カナは基本的に真面目さんなので、こういったサボりイベントに慣れていない。いや、慣れてない方がいいに決まってるんだけど。
「いーいー。もしばれて怒られても、俺にそそのかされたって言えばそれで済む」
「んー……いいのかなぁ」
「いーのいーの。どーせ教室戻っても寝ちゃうだろ? だったら保健室でぐっすり寝て、午後からしっかり授業受けた方がいいって」
「んー……なんか詭弁っぽいけど、兄貴の言うとおりにする。眠いしね」
そういったわけでカナと二人で保健室へ。
「ありゃ、別府に……妹さんも。別府はサボりとして……妹さんは?」
顔見知りの気だるげ保険医が俺たちを出迎えた。保健室でくわえタバコってのは正直どうなんだろう。
「カナが妊娠した」
「してないッ!」
「あらら、大変。相手は誰?」
親指で自分を指すと、カナに沢山殴られた。また鼻血出た。
「近親相姦? やるねー別府。けど、二人とも学生なんだから避妊はしっかりね」
「違いますッ! もーいい、あたし教室戻る!」
「あー待て待て、冗談だ」
保健室から出ようとするカナの手を取り、引き止める。
「という訳で、先生。ねむねむモードなので、しばしねむねむしたい俺たちを貴方はどう思うか」
「……寝たら? 頭回ってないのバレバレよ」
「やった、許可が出た! 寝るぞカナッ!」
「ひゃあああ!? ちょ、何すんのよっ!」
「お姫様抱っこ」
「だから、なんでするのかって聞いてんの!」
「誰かをお姫様抱っこするのに理由がいるのかい?」
「いるに決まってるでしょッ!」
適当にかっこいい台詞並べてもカナには通用しなかった。でも、お姉ちゃんにはたぶん通用する。とにかく、カナを降ろす。
「まったく……いらんことばっかして」
「眠いから仕方ないよね? 普段の俺はもっと賢しいハズだよ」
「いつもと同じよ?」
真顔で言われると、まるで反論できない。
「あー……小芝居をしてるところ悪いが、ベッドの空きが一つしかないんだ」
「小芝居じゃありません! ……って、そうなんですか?」
カナの言葉に、保険医がうなずく。どうしたもんかと眠まった頭を高速回転、アイデアが出た。
「一緒に寝よう」
「絶対イヤ」
一秒と経たず戻ってきた言葉に、ちょっと傷つく。兄妹なんだからいーじゃん、別に。
「じゃあ、俺が既に寝てる奴と一緒に寝る」
「ダメに決まってるでしょ。もう、ちょっとは本気で考え……」
「……いや、別にいいんじゃないか? ちょうど寝てる子はキミ達のお姉さんだし」
「お、ラッキー。んじゃ、俺はお姉ちゃんと一緒に寝るぐげっ」
保険医の言葉にスキップでお姉ちゃんの待つふわふわ布団へ向かっていたら、カナに首を掴まれた。
「が、学校で一緒に寝るなんてダメッ!」
「おや、家では一緒なのかい?」
うなずこうとしたら、隣から拳が襲ってきて喋れなかった。
「キミはMなのかい?」
「カナがSなだけです」
「違うわよっ!」
「むにゅ……うぅん、何かあったの、せんせー?」
騒いでいて起こしてしまったのか、ベッドを隔てるカーテンが開き、目を擦ってるお姉ちゃんが姿を現した。
「あっ、タカくん! タカくんもお昼寝? 眠いもんねー」
てぺてぺとペンギンのような足つきで俺の元まで歩み寄り、お姉ちゃんはにっこり笑って俺の手を握った。
「えへへー。タカくん、お姉ちゃんと一緒にお昼寝しよ?」
元より抵抗するつもりがない上に、お姉ちゃんのはにかむような笑顔とあっては俺の答えは一つしかない。
「するっばあっ」
語尾がおかしくなったのは、隣の貧乳が俺のアゴを打ち抜いたからです。
「ダメよダメダメ、絶対ダメッ! 一緒なんてダメっ!」
家ではよく一緒に寝てるのに、ここまで頑なに否定されると反骨心が鎌首をもたげまくり!
「くく……そんな簡単にこの俺が食い下がると思ったか、愚か者め!」
と言おうと思ったのだけど、アゴが痛くて床を芋虫みたいに転がりまわるので精一杯です。あと、言うとたぶんまた殴られるので言わないで正解。
「あー……思ったんだが、キミたち姉妹が一緒に寝て、そこで転がってる覗き魔が一人で寝てはどうかな?」
保険医が正解を言った。覗き魔という呼び名は別として。
「でも、お姉ちゃんはタカくんと一緒に寝たいです」
お姉ちゃんが真顔で無茶を言った。寝ぼけていると願いたい。
「姉ちゃん、なに馬鹿なこと言って……どこ見てんのよ、馬鹿兄貴!」
お姉ちゃんにつっこもうとしていたカナの足元にさりげなく転がってパンツをじっと見たら、踏まれた。
「お、お姉ちゃ~ん、カナが妹のくせに兄の顔を踏む~」
「タカくん、めっ!」
お姉ちゃんに慰めてもらおうと擦り寄ったら、怒られた。やはり妹とはいえ、パンツを覗くのはよくないと言いたいのだろうか。
「カナちゃんのパンツ見る前に、ちゃんとお姉ちゃんのパンツを見なさい!」
違った。世界広しとはいえ、姉のパンツを覗かないで怒られるのは俺か涎くらいなものだろう。
「ちょっと、姉ちゃんも兄貴も、ここ学校なんだからあんまり自由にしないの! 先生も呆れて……」
「ははっ、なんとも麗しい姉弟愛だな。なんだか私も弟が欲しくなってきたぞ」
保険医は度量がすごく広かった。
「どうだ、そこの弟を一つ私にくれないか?」
「「ダメですっ!」」
四つの腕が俺を引っ張り、二つのほわほわおっぱいと二つの控えめおっぱいを背中に感じた。
「……あー、お姉ちゃんはなんとなくそうするだろなーとは思ったが」
「……つ、ついよ、つい。別にいらないんだけどね、こんな兄貴」
控えめおっぱいの持ち主が、恥ずかしそうに頬を染めていた。
「お姉ちゃんはねー、タカくんいるよー。必須アイテムだよー」
豊満な方はいつものように平和な顔ですりすりしてきた。
「アイテム呼ばわりはどうかと思ったが、眠気がMAXなので寝たい。先生、体調不良ってことで寝ます」
二人に抱きつかれたままベッドに移動する。
「ちょ、ちょっと姉ちゃん、手離して、手! 姉ちゃんの手が上だから、どけてくれないとあたし兄貴から離れられないじゃない!」
「あ、3人一緒で寝るなんて久しぶりだねー。えへ、お姉ちゃん、ちょっと楽しみ」
いつもと同じように見えたが、これでかなり眠いようで、今日のお姉ちゃんは頭が緩い感じだ。
「ちょ、ちょっと姉ちゃんってば! もう、先生、どうにかしてください!」
「あー、ベッドは汚さんようにな」
もう興味をなくしたのか、保険医は机に向かって書き物をしながら適当に言った。
「大丈夫だぞ、カナ。学校だし挿れたりしないぞ」
「学校どころか家でも挿……そ、そういうことしたことないわよっ!」
その言葉を言わないところに淑女のたしなみを感じる。どうでもいい。
なんてことを考えてる間に、ベッドに到着。団子状態でベッドに寝そべる。
「うわ、落ちる落ちる! 兄貴、もっと向こう行きなさいよ!」
「そうすると、お姉ちゃんが床に落ちることに。……できない、そんな非道なこと、俺にはできない!」
「タカくん……お姉ちゃん、優しいタカくんの心遣いに超感動! すりすりすりっ!」
「お姉ちゃーんっ」(もふもふ)
すりすりされたので、お返しにもふもふする。
「ばっ、ばか、それあたしだって! 姉ちゃんの胸はそっち!」
カナと間違えた。狭いからしょうがないよね。
「ごめん、カナ。こっちだな、こっち。えい、もふもふー」
「だっ、だから、それはあたしだってば! こっ、こら、もふもふしないのっ」
お姉ちゃんの巨乳もよいが、カナの貧乳も趣があって大変よろしい。よし、もう一度!
「……よく考えたら、狭いからってあたしと姉ちゃん間違うわけないわよね」
しまった、ばれた。
と、いうわけで。
「くー……くー……」
「ぐーぐー……んう、馬鹿兄貴……」
罰として、ロッカーの中に閉じ込められるという刑に処されました。寂しいは掃除用具が臭いは割と最悪。
「こうなっては怪人、ロッカー男として一世を風靡するしか……!」
「ロッカー男、保健室では静かにな」
先生に注意されたので、黙って寝る。
「ぐ、ぐぅ……むむ、……ぐぅ」
必死でまぶたを開けようとしているが、眠気がまぶたを閉じさせようと邪魔をする。
「あー、じゃあ17ページを……別府、読め」
人が必死で睡魔と戦っているというのに、壇上のオッサンがうるさくて敵わない。
「べ、別府くん、先生が読めって言ってるよ」
隣の生徒が俺の腕をつんつん突付く。いったい何の用だというのだぐぅぐぅ。
「別府くん、別府くん、……起きてる? おーい、とりあえず立ってよぉ」
立てと言うなら立とう。こう、いい感じに立つ。
「んぐ……ここに俺vs睡魔の闘いの火蓋が切って落とされたのだった」
「そんなこと書いとらんぞ」
「ところで火蓋ってなんだろうな……ぐぅぐぅ」
「わ、立ったまま寝てる。器用だね、別府くん」
「別府、後で職員室来い」
なんか気がついたら職員室で怒られてた。首を傾げながら職員室を後にする。
「……ほんっと、よく怒られる人だこと」
廊下でカナが待ってた。いつもより喋りにキレがないのは、やっぱり眠いせいだろうか。
「ふぁぁぁ……眠。……ねー兄貴、このまま教室戻ったらあたし寝ちゃうよー。どーしよ」
珍しくカナが俺に頼っている。ここは兄として頼りになるところを見せつけねば!
「大丈夫。寝ちゃったら俺が優しく起こしてあげるから安心しろ」
「え、や、優しく? ……どんな風に?」
どこか期待に満ちた目で俺を見つめるカナ。
「スカートの中に手突っ込んで」
「どこが優しいのよッ!」
「優しいタッチでさわるよ?」
殴られた。
「荒々しいのが好みですか?」
3回殴られた。鼻血出た。
「あーもー……はぁ。暴れたら疲れて余計眠くなっちゃった」
じゃあ殴るなと言いたいけど、また殴られては敵わないので黙って自分の鼻にティッシュを詰める。
「ふぁぁ……じゃ、俺は保健室で寝てくる」
「えっ、ちょっとずるいわよ! あたしも眠いのに!」
「んじゃお前も来たらいいだろ。同衾推奨……なわけないよね? 別々に寝るのが当たり前だよね?」
拳が近づいてきたので、慌てて真っ当なことを言ってみる。
「当然よ。……でも、病気でもないのに寝ていいのかな?」
カナは基本的に真面目さんなので、こういったサボりイベントに慣れていない。いや、慣れてない方がいいに決まってるんだけど。
「いーいー。もしばれて怒られても、俺にそそのかされたって言えばそれで済む」
「んー……いいのかなぁ」
「いーのいーの。どーせ教室戻っても寝ちゃうだろ? だったら保健室でぐっすり寝て、午後からしっかり授業受けた方がいいって」
「んー……なんか詭弁っぽいけど、兄貴の言うとおりにする。眠いしね」
そういったわけでカナと二人で保健室へ。
「ありゃ、別府に……妹さんも。別府はサボりとして……妹さんは?」
顔見知りの気だるげ保険医が俺たちを出迎えた。保健室でくわえタバコってのは正直どうなんだろう。
「カナが妊娠した」
「してないッ!」
「あらら、大変。相手は誰?」
親指で自分を指すと、カナに沢山殴られた。また鼻血出た。
「近親相姦? やるねー別府。けど、二人とも学生なんだから避妊はしっかりね」
「違いますッ! もーいい、あたし教室戻る!」
「あー待て待て、冗談だ」
保健室から出ようとするカナの手を取り、引き止める。
「という訳で、先生。ねむねむモードなので、しばしねむねむしたい俺たちを貴方はどう思うか」
「……寝たら? 頭回ってないのバレバレよ」
「やった、許可が出た! 寝るぞカナッ!」
「ひゃあああ!? ちょ、何すんのよっ!」
「お姫様抱っこ」
「だから、なんでするのかって聞いてんの!」
「誰かをお姫様抱っこするのに理由がいるのかい?」
「いるに決まってるでしょッ!」
適当にかっこいい台詞並べてもカナには通用しなかった。でも、お姉ちゃんにはたぶん通用する。とにかく、カナを降ろす。
「まったく……いらんことばっかして」
「眠いから仕方ないよね? 普段の俺はもっと賢しいハズだよ」
「いつもと同じよ?」
真顔で言われると、まるで反論できない。
「あー……小芝居をしてるところ悪いが、ベッドの空きが一つしかないんだ」
「小芝居じゃありません! ……って、そうなんですか?」
カナの言葉に、保険医がうなずく。どうしたもんかと眠まった頭を高速回転、アイデアが出た。
「一緒に寝よう」
「絶対イヤ」
一秒と経たず戻ってきた言葉に、ちょっと傷つく。兄妹なんだからいーじゃん、別に。
「じゃあ、俺が既に寝てる奴と一緒に寝る」
「ダメに決まってるでしょ。もう、ちょっとは本気で考え……」
「……いや、別にいいんじゃないか? ちょうど寝てる子はキミ達のお姉さんだし」
「お、ラッキー。んじゃ、俺はお姉ちゃんと一緒に寝るぐげっ」
保険医の言葉にスキップでお姉ちゃんの待つふわふわ布団へ向かっていたら、カナに首を掴まれた。
「が、学校で一緒に寝るなんてダメッ!」
「おや、家では一緒なのかい?」
うなずこうとしたら、隣から拳が襲ってきて喋れなかった。
「キミはMなのかい?」
「カナがSなだけです」
「違うわよっ!」
「むにゅ……うぅん、何かあったの、せんせー?」
騒いでいて起こしてしまったのか、ベッドを隔てるカーテンが開き、目を擦ってるお姉ちゃんが姿を現した。
「あっ、タカくん! タカくんもお昼寝? 眠いもんねー」
てぺてぺとペンギンのような足つきで俺の元まで歩み寄り、お姉ちゃんはにっこり笑って俺の手を握った。
「えへへー。タカくん、お姉ちゃんと一緒にお昼寝しよ?」
元より抵抗するつもりがない上に、お姉ちゃんのはにかむような笑顔とあっては俺の答えは一つしかない。
「するっばあっ」
語尾がおかしくなったのは、隣の貧乳が俺のアゴを打ち抜いたからです。
「ダメよダメダメ、絶対ダメッ! 一緒なんてダメっ!」
家ではよく一緒に寝てるのに、ここまで頑なに否定されると反骨心が鎌首をもたげまくり!
「くく……そんな簡単にこの俺が食い下がると思ったか、愚か者め!」
と言おうと思ったのだけど、アゴが痛くて床を芋虫みたいに転がりまわるので精一杯です。あと、言うとたぶんまた殴られるので言わないで正解。
「あー……思ったんだが、キミたち姉妹が一緒に寝て、そこで転がってる覗き魔が一人で寝てはどうかな?」
保険医が正解を言った。覗き魔という呼び名は別として。
「でも、お姉ちゃんはタカくんと一緒に寝たいです」
お姉ちゃんが真顔で無茶を言った。寝ぼけていると願いたい。
「姉ちゃん、なに馬鹿なこと言って……どこ見てんのよ、馬鹿兄貴!」
お姉ちゃんにつっこもうとしていたカナの足元にさりげなく転がってパンツをじっと見たら、踏まれた。
「お、お姉ちゃ~ん、カナが妹のくせに兄の顔を踏む~」
「タカくん、めっ!」
お姉ちゃんに慰めてもらおうと擦り寄ったら、怒られた。やはり妹とはいえ、パンツを覗くのはよくないと言いたいのだろうか。
「カナちゃんのパンツ見る前に、ちゃんとお姉ちゃんのパンツを見なさい!」
違った。世界広しとはいえ、姉のパンツを覗かないで怒られるのは俺か涎くらいなものだろう。
「ちょっと、姉ちゃんも兄貴も、ここ学校なんだからあんまり自由にしないの! 先生も呆れて……」
「ははっ、なんとも麗しい姉弟愛だな。なんだか私も弟が欲しくなってきたぞ」
保険医は度量がすごく広かった。
「どうだ、そこの弟を一つ私にくれないか?」
「「ダメですっ!」」
四つの腕が俺を引っ張り、二つのほわほわおっぱいと二つの控えめおっぱいを背中に感じた。
「……あー、お姉ちゃんはなんとなくそうするだろなーとは思ったが」
「……つ、ついよ、つい。別にいらないんだけどね、こんな兄貴」
控えめおっぱいの持ち主が、恥ずかしそうに頬を染めていた。
「お姉ちゃんはねー、タカくんいるよー。必須アイテムだよー」
豊満な方はいつものように平和な顔ですりすりしてきた。
「アイテム呼ばわりはどうかと思ったが、眠気がMAXなので寝たい。先生、体調不良ってことで寝ます」
二人に抱きつかれたままベッドに移動する。
「ちょ、ちょっと姉ちゃん、手離して、手! 姉ちゃんの手が上だから、どけてくれないとあたし兄貴から離れられないじゃない!」
「あ、3人一緒で寝るなんて久しぶりだねー。えへ、お姉ちゃん、ちょっと楽しみ」
いつもと同じように見えたが、これでかなり眠いようで、今日のお姉ちゃんは頭が緩い感じだ。
「ちょ、ちょっと姉ちゃんってば! もう、先生、どうにかしてください!」
「あー、ベッドは汚さんようにな」
もう興味をなくしたのか、保険医は机に向かって書き物をしながら適当に言った。
「大丈夫だぞ、カナ。学校だし挿れたりしないぞ」
「学校どころか家でも挿……そ、そういうことしたことないわよっ!」
その言葉を言わないところに淑女のたしなみを感じる。どうでもいい。
なんてことを考えてる間に、ベッドに到着。団子状態でベッドに寝そべる。
「うわ、落ちる落ちる! 兄貴、もっと向こう行きなさいよ!」
「そうすると、お姉ちゃんが床に落ちることに。……できない、そんな非道なこと、俺にはできない!」
「タカくん……お姉ちゃん、優しいタカくんの心遣いに超感動! すりすりすりっ!」
「お姉ちゃーんっ」(もふもふ)
すりすりされたので、お返しにもふもふする。
「ばっ、ばか、それあたしだって! 姉ちゃんの胸はそっち!」
カナと間違えた。狭いからしょうがないよね。
「ごめん、カナ。こっちだな、こっち。えい、もふもふー」
「だっ、だから、それはあたしだってば! こっ、こら、もふもふしないのっ」
お姉ちゃんの巨乳もよいが、カナの貧乳も趣があって大変よろしい。よし、もう一度!
「……よく考えたら、狭いからってあたしと姉ちゃん間違うわけないわよね」
しまった、ばれた。
と、いうわけで。
「くー……くー……」
「ぐーぐー……んう、馬鹿兄貴……」
罰として、ロッカーの中に閉じ込められるという刑に処されました。寂しいは掃除用具が臭いは割と最悪。
「こうなっては怪人、ロッカー男として一世を風靡するしか……!」
「ロッカー男、保健室では静かにな」
先生に注意されたので、黙って寝る。
【吸血鬼になったボクっ娘】
2010年03月17日
数日前から学校に来ないなと思ってボクっ娘宅にお邪魔したら、吸血鬼になったらしい。面白そうなので、信じることにする。
「うう……なんでこんなことに」
「大変だね」
「まったくちっとも全然心がこもってないよ! ちゃんと信じてる? もっと全身全霊で同情してよ!」
同情と言い切った。そこまで言うならこっちもやってやる!
「可哀想だ、可哀想だぞボクっ娘! だが、来世はぼいんぼいーんな巨乳に生まれると信じて、現世はつるぺたで生きろ」
「胸のことで同情しろなんて言ってない! ていうか来世って、現世はもう無理なの!?」
「む、腹が減った。ボクっ娘、菓子を持てい」
「人の話を聞けっ! あと、ボクっ娘ボクっ娘ゆーなっ! 梓って呼べよ、梓って! なんでそんな偉そうなんだよっ!」
「分かった、話も聞くし梓とも呼ぶし精神的に平民になる。で、なんだっけ? 吸血鬼?」
「そうだよ。うう……これからは語尾にザマスってつけなきゃだよ。……あ、ザマス」
ボクっ娘の中の吸血鬼観はおかしかった。
「それでは有閑マダムのようなので却下」
「ボクとしてもありがたいよ」
「それで?」
「?」
ボクっ娘は不思議そうに小首を傾げた。その動作は大変可愛らしいですが、そうではなくて。
「俺にどうしろというのだ。生憎と白木の杭なんて持ってなくてな。だが、明日には用意するから待っててほしい」
「杭なんてどうするの?」
どうやら知らないようなので、俺の知っている吸血鬼の弱点(白木の杭を心臓に打ち込むと死ぬ)を述べてみる。
「なんで殺そうとするんだよッ! 怖いよ、吸血鬼ハンターだよ! 吸血鬼ハンタータカシ……ちょっとかっこいいよ!」
「怒るか褒めるかどっちかにしろ」
「えーと……じゃ、怒るよ! 殺意をぶつけられてぷんぷんだよ!」
「いかん、吸血鬼が怒ってるのにまるで怖くない」
「……し、新米吸血鬼だからカナ?」
激しく違うと思うが、はっきり言うと泣かれてしまいそうなので黙っておこう。
「で、なんの話だっけ?」
「ええと、タカシがボクを殺そうとしたことだよ。友達を殺そうとするなんて、タカシは酷いね。極悪だね。ヤクザも真っ青だよ」
「いやなに、俺はてっきり『化け物としてでなく、人として死にたいんだよ。……せめて、愛する人の手で』とかいう展開かと思っただけで」
「あ、ああ愛してなんかないよ! ホントだよ!? ホントだもん!」
「んな全力で否定しなくとも分かってる。ただの冗談だろーが」
「……ふん、分かってないじゃん」(ぼそり)
「何をだ! 言わねば頭蓋骨を粉砕する!」
「タカシ耳が良すぎで、その上怖すぎるよ! 吸血鬼を脅すなよ、ばかっ!」
涙目で抗議されたので、粉砕はやめておく。つーか、今の梓は吸血鬼なので逆に俺が粉砕される。
「……うー、そうじゃなくて、血が吸いたいんだよ、血。ね、ちゅーってしていい?」
「任せろ!」
梓を抱き寄せ、顔を近づける。
「なな、ななな!? なにしてんだよぉ!?」
「ちゅー。いわゆるキス」
「ちゅー違いだよ! 吸うの! ボクが! タカシの血を! ちゅーって!」
「なんだ、紛らわしい」
解放すると、梓はそっぽを向いて3回ほど深呼吸し、こっちに向き直った。
「ま、まったく、どんな勘違いなんだよ。やれやれ、困ったちゃんだね、タカシは」
「梓、まだ顔赤い」
「うるさいッ!」
せっかく教えてあげたのに怒られた。
「とにかく! 血吸うの! いい? いいよね? いただきまー」
「断る!」
「……そ、そうだよね、誰もボクみたいな化け物と一緒にいたくないもんね。……一人寂しく野垂れ死んだ方がいいよね」
いかん、梓たんが一瞬にして自分の世界に逃げ込んでいく!
「というのはフェイントで、本当は血を吸ってほしくて仕方がないんだ」
「フェイント?」
「いーから吸え。早くしないと帰る」
「あっ、あっ、分かったよ。もう、せっかちだなぁ……」
首元をさらす。梓は歯を立て、おずおず俺の首筋に喰らいついた。
「いつっ」
吸血鬼に血を吸われると、絶頂に近い感情を得ると何かで見たのだけど……何か吸われてる感覚だけで、気持ちよくなんてなかった。ちょっと残念。
「ちうちう……ごめんね、タカシ」
「いいさ。蚊に吸われてるのに慣れてる……あ」
「ちゅーちゅー……なに? どしたの?」
「いま気づいたが、血吸われたら俺も吸血鬼になるんじゃ?」
「…………」
「おい。黙るな」
「……え、えへへ、……吸血鬼コンビたんじょー……なんて」
すかさず梓の頭をどつく。
「叩いた! 女の子の頭叩いたよ! 悪魔だよ!」
半泣きのまま両手で頭を押さえる梓のほっぺを引っ張る。
「悪魔じゃなくて吸血鬼だよ!」
言ってるそばから口中に違和感が。……伸びてるな、犬歯。
「あぅあぅ、あぅーっ!」
「ええい、日本語喋れ日本語! もしくは中国語!」
「うー……にーはお!」
中国語を喋ったので許す。梓を解放し、自分の頭を抱える。
「はぁ……吸血鬼なぁ。困ったなあ」
「んー……けっこーへーきだよ? ご飯にちょっと困って、お日さまの光浴びてもちょっとくらくらーってするだけで、だいじょびだったし」
「……浴びたのか?」
「いや、今日寝ぼけてて、人間の時みたいにカーテン開けたらお日さまがぴかーって。てへ」
そのまま灰になってもおかしくない事を平然とするところが、実にボクっ娘的というか。
「まーいーや。とにかく、明日から学校来い。とりあえず普通に日常をこなしつつ、人間に戻る方法を探るべ」
「別にボクはこのままでもいーけど。……タカシとおんなじだし」(ぼそり)
「性別が!? 知らなかった……」
「だから、なんでそんな耳いーんだよ! そして性別は違う! ボク女の子! がーる!」
「そうだな。……そうだといいな」
「なんでそんな慈愛に満ちた目で見るんだよぉ!? ホントだよ、女の子だよ! ……いや、パンツの中は見せないけどさ」
「なんだ」
「なんだって言った! やっぱそれが目当てだったんだ! タカシのエロ! エロ吸血鬼!」
こんなふうに梓とじゃれあってると、別に吸血鬼でもいいかと思えてくる。……梓と一緒だし。
「うう……なんでこんなことに」
「大変だね」
「まったくちっとも全然心がこもってないよ! ちゃんと信じてる? もっと全身全霊で同情してよ!」
同情と言い切った。そこまで言うならこっちもやってやる!
「可哀想だ、可哀想だぞボクっ娘! だが、来世はぼいんぼいーんな巨乳に生まれると信じて、現世はつるぺたで生きろ」
「胸のことで同情しろなんて言ってない! ていうか来世って、現世はもう無理なの!?」
「む、腹が減った。ボクっ娘、菓子を持てい」
「人の話を聞けっ! あと、ボクっ娘ボクっ娘ゆーなっ! 梓って呼べよ、梓って! なんでそんな偉そうなんだよっ!」
「分かった、話も聞くし梓とも呼ぶし精神的に平民になる。で、なんだっけ? 吸血鬼?」
「そうだよ。うう……これからは語尾にザマスってつけなきゃだよ。……あ、ザマス」
ボクっ娘の中の吸血鬼観はおかしかった。
「それでは有閑マダムのようなので却下」
「ボクとしてもありがたいよ」
「それで?」
「?」
ボクっ娘は不思議そうに小首を傾げた。その動作は大変可愛らしいですが、そうではなくて。
「俺にどうしろというのだ。生憎と白木の杭なんて持ってなくてな。だが、明日には用意するから待っててほしい」
「杭なんてどうするの?」
どうやら知らないようなので、俺の知っている吸血鬼の弱点(白木の杭を心臓に打ち込むと死ぬ)を述べてみる。
「なんで殺そうとするんだよッ! 怖いよ、吸血鬼ハンターだよ! 吸血鬼ハンタータカシ……ちょっとかっこいいよ!」
「怒るか褒めるかどっちかにしろ」
「えーと……じゃ、怒るよ! 殺意をぶつけられてぷんぷんだよ!」
「いかん、吸血鬼が怒ってるのにまるで怖くない」
「……し、新米吸血鬼だからカナ?」
激しく違うと思うが、はっきり言うと泣かれてしまいそうなので黙っておこう。
「で、なんの話だっけ?」
「ええと、タカシがボクを殺そうとしたことだよ。友達を殺そうとするなんて、タカシは酷いね。極悪だね。ヤクザも真っ青だよ」
「いやなに、俺はてっきり『化け物としてでなく、人として死にたいんだよ。……せめて、愛する人の手で』とかいう展開かと思っただけで」
「あ、ああ愛してなんかないよ! ホントだよ!? ホントだもん!」
「んな全力で否定しなくとも分かってる。ただの冗談だろーが」
「……ふん、分かってないじゃん」(ぼそり)
「何をだ! 言わねば頭蓋骨を粉砕する!」
「タカシ耳が良すぎで、その上怖すぎるよ! 吸血鬼を脅すなよ、ばかっ!」
涙目で抗議されたので、粉砕はやめておく。つーか、今の梓は吸血鬼なので逆に俺が粉砕される。
「……うー、そうじゃなくて、血が吸いたいんだよ、血。ね、ちゅーってしていい?」
「任せろ!」
梓を抱き寄せ、顔を近づける。
「なな、ななな!? なにしてんだよぉ!?」
「ちゅー。いわゆるキス」
「ちゅー違いだよ! 吸うの! ボクが! タカシの血を! ちゅーって!」
「なんだ、紛らわしい」
解放すると、梓はそっぽを向いて3回ほど深呼吸し、こっちに向き直った。
「ま、まったく、どんな勘違いなんだよ。やれやれ、困ったちゃんだね、タカシは」
「梓、まだ顔赤い」
「うるさいッ!」
せっかく教えてあげたのに怒られた。
「とにかく! 血吸うの! いい? いいよね? いただきまー」
「断る!」
「……そ、そうだよね、誰もボクみたいな化け物と一緒にいたくないもんね。……一人寂しく野垂れ死んだ方がいいよね」
いかん、梓たんが一瞬にして自分の世界に逃げ込んでいく!
「というのはフェイントで、本当は血を吸ってほしくて仕方がないんだ」
「フェイント?」
「いーから吸え。早くしないと帰る」
「あっ、あっ、分かったよ。もう、せっかちだなぁ……」
首元をさらす。梓は歯を立て、おずおず俺の首筋に喰らいついた。
「いつっ」
吸血鬼に血を吸われると、絶頂に近い感情を得ると何かで見たのだけど……何か吸われてる感覚だけで、気持ちよくなんてなかった。ちょっと残念。
「ちうちう……ごめんね、タカシ」
「いいさ。蚊に吸われてるのに慣れてる……あ」
「ちゅーちゅー……なに? どしたの?」
「いま気づいたが、血吸われたら俺も吸血鬼になるんじゃ?」
「…………」
「おい。黙るな」
「……え、えへへ、……吸血鬼コンビたんじょー……なんて」
すかさず梓の頭をどつく。
「叩いた! 女の子の頭叩いたよ! 悪魔だよ!」
半泣きのまま両手で頭を押さえる梓のほっぺを引っ張る。
「悪魔じゃなくて吸血鬼だよ!」
言ってるそばから口中に違和感が。……伸びてるな、犬歯。
「あぅあぅ、あぅーっ!」
「ええい、日本語喋れ日本語! もしくは中国語!」
「うー……にーはお!」
中国語を喋ったので許す。梓を解放し、自分の頭を抱える。
「はぁ……吸血鬼なぁ。困ったなあ」
「んー……けっこーへーきだよ? ご飯にちょっと困って、お日さまの光浴びてもちょっとくらくらーってするだけで、だいじょびだったし」
「……浴びたのか?」
「いや、今日寝ぼけてて、人間の時みたいにカーテン開けたらお日さまがぴかーって。てへ」
そのまま灰になってもおかしくない事を平然とするところが、実にボクっ娘的というか。
「まーいーや。とにかく、明日から学校来い。とりあえず普通に日常をこなしつつ、人間に戻る方法を探るべ」
「別にボクはこのままでもいーけど。……タカシとおんなじだし」(ぼそり)
「性別が!? 知らなかった……」
「だから、なんでそんな耳いーんだよ! そして性別は違う! ボク女の子! がーる!」
「そうだな。……そうだといいな」
「なんでそんな慈愛に満ちた目で見るんだよぉ!? ホントだよ、女の子だよ! ……いや、パンツの中は見せないけどさ」
「なんだ」
「なんだって言った! やっぱそれが目当てだったんだ! タカシのエロ! エロ吸血鬼!」
こんなふうに梓とじゃれあってると、別に吸血鬼でもいいかと思えてくる。……梓と一緒だし。


