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2024年04月25日
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【犬子 ハロウィン2】

2012年11月02日
「ううう……ハロウィンだかなんだか知らんが、寒い。寒すぎて死ぬる」
「あ、符長くんだ。えへへ、おはよ?」
 ポケットに手をつっこんで震えるかっこいい俺を目ざとくみつけた犬子が、ぽてぽてと走り寄って来て笑顔で挨拶してきた。
「ん、おはよ」(なでなで)
「あ……え、えへへ♪」
 忠義ある犬には礼節を持って応えると話題の俺なので、頭をなでて労ると嬉しそうになったのでよかったと思った。(小学生の作文風)
「なんか最近急に寒くなったと思わんか? そしてトリックオアトリートだと思わんか?」
「さ、寒いのは思うけど……なんでハロウィンをついでに言ったの?」
「お菓子ください」
「持ってないよ」
「じゃあいたづらをするのでおっぱいを揉まれても騒がないように」
「今日も朝からえっちだよ、符長くん!」
「はい」
「はいじゃないよぉ……」
 何やらはぅーって感じの顔をされた。よくされます。
「あとね、あとね。今日はハロウィンじゃないよ?」
「何を言ってるのだろう、この犬は。やはり犬程度の知能ではイベントの理解などできないのだろうか」
「まだ私のこと犬扱いしてるの!? ひょっとしてずっとなの!?」
「お手」
「しないもんっ! なぜなら私は犬じゃないから!」
「今日の犬子は頑なだな。お手とか言って犬子と触れ合いたかったが、まあ諦めるか」
「……え、えーっとねえ。な、なんだかお手がしたくなったよ。わ、わんわん?」
「ほう、やはり犬だったか。お手」
「わんわん♪ ……って! すっごく手が冷たいよ! どしたの?」
「手が冷たい奴は心まで冷たいと言うのか。なんて奴だ!」
「言ってないよ、言ってないよ!? むしろ符長くんはとっても心が暖かい人だよ?」
「今日も犬子は俺に弱みを握られているようだな」
「今日も符長くんは照れ屋さんだね?」
 にっこり笑いおって。ええい。
「ま、まあいい。ところで、今日はハロウィンではないと言っていたが、どういうことだ?」
「だって、今日は11月の2日だもん。ハロウィンはちょっと前だよ?」
「俺はタイムマシンに乗ってちょっと前から来たから大丈夫なんだ」
「仮にそうだとしても、この世界は11月2日だから意味ないよ?」
「……すまない。本当はタイムマシンになんて乗ってないんだ。許してくれ、犬子!」
「知ってるよ」
「なんという慧眼……!」
「朝から元気だね、符長くん」
「朝から犬子に会えて、嬉しさで元気が体中に満ち満ちているんだ」
「ひゃうわっ!?」
 何やら犬子が面白い感じになった。
「……え、えーとねぇ。……わ、私も、符長くんにね? あ、朝から会えて、その。……う、嬉しいんだよ?」
 顔中真っ赤にして、犬子はゆっくりと、だけどはっきりそう言った。
「流石は犬子、忠犬の名は伊達ではないな。俺も一日ぶりに会えて嬉しいよ」
「分かってたけど、分かってたけど! 分かってたけど、やっぱり犬扱い! ぬわー!」
「パパスだ」
「違うよっ!」
「わはは。……はぁ」
「……どしたの? 元気ないよ? 私に会えて元気が満ちてるんじゃないの?」
「ものすごいうぬぼれだな」
「うー! うー!」
 涙目でぽかぽか叩かれた。
「いたた、ごめんごめん」
「うぅー……酷いよ符長くん。符長くんが言ったことなのに」
「頭がおかしいから前後のことを考えず、思ったことをそのまま言うからね」
「もー、すぐ自分のこと悪く言ってぇ……悪いクセだよ?」
「わはは。それはともかく、お腹が空いたんだ」
「なんだか符長くんはいっつもお腹が空いてるね。朝ごはん食べてないの?」
「この時期の布団は心安らいでなぁ……」
「ご飯食べたら遅刻しちゃうくらいの時間に起きてるんだね……」
 何やら呆れられてる気配がする。
「あ! だからハロウィンとか言ってたんだね。それでお菓子をもらおうと」
「そうなんだ。よく分かったな」
「伊達に付き合い長くないもんね♪」
「なるほど。これほどのツーカーの仲であるなら、このまま嫁にするのが得策だな」
「よっ、嫁!? はわっ、はわわわわっ!?」
「あ、これは面白い! 写真を撮ろう」
「やめて」
「はい」
「まったくもぉ……冗談ばっかり」
「わはは」
「そいえば、前にもあったよね、こーゆーハロウィンがどーとかって」
「あー、そだな。まるで進歩がないな!」
「何を胸張ってるのこの人!?」
「それどころか、以前はお菓子が食べたいという明確な理由があったのに対し、今回はお腹が空いたという本能に突き動かされている始末。進歩どころか退化と言っていいだろう」
「また適当なこと言ってぇ……。あのね、お弁当のデザートに果物持ってきたから、それなら食べてもいーよ?」
「マジか。でも、ドリアンを教室なんかで食ってみんなに迷惑かけないかなあ? まあ犬子のせいにすればいいか」
「そんなの持ってきてないし、私のせいにしないでよ、符長くんっ!」
「匂いはキツイが、ドリアンおいしいらしいよ? 食ったことないから知らないが」
「私もないもん」
「じゃあ新婚旅行先で一緒に食べましょうね」
「やっぱり結婚するの!? はわっ、はわわわわ!?」
 なんか赤い顔であわあわしてる犬が大変に愉快だったので写真を撮ろうとしたら、やっぱり怒られた。

拍手[19回]

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Comment
No title
結婚しろ!
結婚しろ!
結婚しろ!

ああもう犬子可愛いなあ!
No title
はじめは長森だったイメージが今ではランカ・リー…
無題
こういう純粋に可愛がるssが少ない中で、こういうのを書いて下さる作者さんに感謝。

ほっこりしますね...うんうん。
無題
改行されてないように見えるのは、そういう仕様か俺のケータイがダメダメなのか
No title
「一年ぶりだな……」
「ああ……犬子だ」
No title
「次からは、せめて一カ月にいっぺんくらいは犬子を見たいものだな」

「あぁ・・・」
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