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2019年10月15日
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【悪の組織の幹部なツンデレと新人ヒーローな男5】

2010年04月15日
 このところ本業である学業の方が何かと忙しく、バイトのヒーローをさぼっていたせいでこの街の治安が大変。そんなわけで、今日は久々のヒーローです。何でも、近くの公園で悪さをしているとか。いざ出撃、ヒーロー!
 ヒーロー号(自転車)で颯爽と現場にかけつけると、そこではまさに悪事が行われていた。
「わっさわっさわっさ」
 訂正。悪事かどうか分からないけど、何か行われていた。
 幹の真ん中に顔のついた桜の木の周辺で花見が行われているのだけど……これはどうしたらいいのだろう。一応要請があったのだから行ったほうがいいのだろうか。それとも帰って寝てしまおうか。ハートはどこにつけよかな。
「ん……? あーっ! ヒーロー!」
 ハートのつけ場所を悩んでいると、花見客の一人がこちらに走ってきた。……見覚えのある顔だ。
 そいつはすごい嬉しそうにこちらに駆け寄り、抱きつこうとしたが、何かに気づいたかのように突然顔を引き締めると、ずびしッと俺に指を突きつけた。
「き、貴様! なんで最近ずーっと現れないんだ! ヒーローなのに悪事を放っておくとは何事か! それでも正義の味方か!」
 見覚えのある顔の持ち主、悪の組織の幹部であるみことは怒ったようにまくし立てた。
「ふああああ」
「人が文句言ってる最中に欠伸するなッ! ヒーローだろ、びしっとしろ!」
「や、一応ヒーローという肩書きだけど、ほら。バイトだし」
「バイトでも真面目にやれ! お金貰ってるんだろ!」
「時給760円です」
「思ったより安いんだな……」
「とまれ、久々に会えて嬉しいぞ、みこと」(なでなで)
「うんっ♪」
「…………」
 ものすっごい笑顔で肯定され、俺はどうすれば。
「あ、いや、ちがっ!? ち、違う、我は嬉しくない! と、というか、人の頭を気軽になでるなッ! 我は敵だぞ!」
「抱っこしていい?」
「こいつ我の話をひとっつも聞いてないぞ!?」
 返事がなかったので肯定と判断、みことの小さい身体を抱き上げる。
「こっ、こらっ、抱っこするな!」
「いやはや、今日も素敵な抱き心地で。ところで、花見してるんだったら俺も混ぜてくれるか? みことと一緒に花見したりあーんしたりされたり膝枕されたりしてえ」
「だっ、誰が貴様なんかと! そ、そんなのより、悪事を止めるのが先だろう!」
「そんなの、誰もやってないじゃん」
「ふふん。だから貴様の目は節穴だと言うのだ。ほれ、あれを見ろ」
 みことの指す方を見る。未だ宴会が行われているだけだが、はて。
「楽しそうで何よりだ」
「違うっ! あれこそ我らが誇る悪の怪人、桜男だ! 奴が現れると周囲の人間の勤労意欲は減退し、さらに奴を囲み、花見がしたくてしたくてたまらなくなるのだ! どうだ、恐ろしいだろう?」
「恐ろしいかなあ。楽しそうでいいと思うんだけど」
「恐ろしいのだっ! 考えてもみろ、奴が現れると、その周辺では労働が一切行われなくなるのだ。結果経済は回らなくなり、世界は大混乱に陥るのだ! ふわーっはっはっはっは!」
「はぁ。まあ、たまにはいいと思うけどな。強制的な春休みみたいなもんだ」
「もっと恐怖を感じろッ! 何を受け入れているのだ貴様は!?」
「まあ、花見したら退治するか。みこと、一緒に花見しようぜ」
「あっ、こら、我は貴様なんかと花見なんてしないぞ! 抱っこしたまま連れてくなーッ!」
 みことを抱えたまま、宴会場へと向かう。
「こんにちは、ヒーローです。宿敵もいますが、混ーぜーて」
 酔っ払い連中だからか知らないが、ものすごい歓迎を受けた。宴会場の一角に案内され、周りを女性に囲まれる。
「あの、ヒーローさんって、悪の怪人を倒しまくってるあのヒーローさん? 」
「他にヒーローがいるかしらないけど、多分俺です」
 黄色い歓声が上がり、俺の気持ちも舞い上がる。キャバクラってきっとこんななんだろうなあ。
「ヒーローさん、お酒いかが?」
「未成年なので、お気持ちだけ頂きます」
「たくさん食べてね、ヒーローさん?」
「任せろ、得意だ」
 ますますキャバクラってきたなあ、と思っていたら、不機嫌なオーラが抱っこ中の生物付近から発生しだした。
「みこと、どうかしたか?」
「うるさいッ! なんでもないッ!」
 じゃあ不機嫌オーラを出さないで欲しいなあと思ってたら、目の前に箸が伸びてきた。その先に、昆布巻きが挟まれている。
「ヒーローさん、あーん♪」
「なんと! ヒーローやっててよかった。あー」
 目の前の昆布巻きを食べようと口を開けたら、急に箸が引っ込められた。どうしたのかあーんをしてきた女性を見ると、何か俺を見てすごく怯えている。
 ……いや、俺じゃなくて、俺が抱っこしているモノを見て怯えている。視線をそちらに向けると、悪の幹部としての力を遺憾なく発揮したDEATH睨みが発動中だった。
「ヒーローさん、あーん♪」
 それに気づいていない他の女性が、俺にあーん攻勢を仕掛けてきた。だが、またしても怯えたように箸が戻っていく。効果は抜群のようだ。
「ふ、ふん! やはり貴様は人気がないな。からかわれているに違いない。哀れなものだ。はーっはっはっはっは!」
「よくもまあいけしゃーしゃーと」
「し、知らん! 我は何もしてない!」
「嘘ついてたらヒーローとしての力を全力で用い、お前にちゅーする」
「し、してないけど……ち、ちこっと睨んだ、ような、気が……?」
 深くため息を吐く。まったく、折角のあーんチャンスをふいにしおって。まあこれでみこともしないだろう、改めてあーんをしてもらおうと思ったら、周囲に誰もいない?
「皆貴様を恐れて離れていったぞ。まったく、哀れなものだな。はーっはっはっはっは!」
 俺じゃなくてお前のせいだろうに、と思ったが、離れてしまったものは仕方がない。一人で飯食おう。
「……ふ、ふん。一人で食う貴様が哀れだから、我が特別に貴様と一緒に食ってやる。感謝しろよ?」
「俺なんかと花見なんてしないのでは?」
「うぐっ! ……そ、その、あれだ。ええと、花見男の特殊能力により勤労意欲が消えうせたので、貴様と戦う気も失せた、のだ?」
「疑問系ですが」
「うっ、うるさいっ! 我と一緒に花見するのかしないのか、どっちだ!?」
「そりゃ、したいに決まってるだろ」
「だ、だったらぐちぐち言うな、ばか」
 少し不満そうにそれだけ言うと、みことは置かれている弁当に手を伸ばした。しかし、俺に抱っこという名の拘束を受けているので、あと一息というところで届かなかった。
「おい、我を解放しろ。届かんではないか」
「ああ、だいじょび。何が食いたいんだ?」
「あそこの玉子焼き」
「任せろ」
 箸で玉子焼きをつまみ、みことの前に持ってくる。
「……何のマネだ」
「あーんってしろ」
「だっ、誰がするか、誰が! 我は悪の幹部、みことだぞ! どうしてそんなことを、しかもよりにもよって敵である貴様なんかにされなくてはならんのだ!」
「あーん」
「だ、だから、我は誇り高き悪の組織の一員としてだな」
「あーん」
「う……あ、あーん」
 三度目で折れたのか、みことは恥ずかしそうにおずおずと口を開けた。そこに玉子焼きを放り込む。
「どだ?」
「もぎゅもぎゅ。……おいしい」
「そか。何よりだ」
「……こ、こんなので貴様なんかに心を許したりしないからなッ! ニコニコするな、ばかっ!」
「じゃあ逆のターン」
「お?」
 箸を渡すと、みことは不思議そうな顔をして俺を見たあと、顔を真っ赤にした。
「まっ、まさか我にあーんをしろと言うのか!?」
「さすがはみこと、呑み込みが早くて助かる」
「だっ、断固として断るッ! どうして貴様なんぞにせねばならんのだッ!」
「あ、新技思いついた。ヒーローベアハッグ。説明しよう! ヒーローベアハッグとは」
「いい! 技名で大体想像つく! ……脅迫か? 脅迫なんだな? 正義の味方が悪の幹部を脅迫するのだな?」
 なんか半泣きになってて可哀想だが、そんなもので折れる俺様ではない!
「いやなら口移しでも一向に構わないけど。いや、むしろそっちの方が。……よし。みこと、ちょっと」
「どれが食べたい!?」
「最初からそう言えばいいのに。ええと、鶏のから揚げを」
「うう……正義のヒーローが脅迫なんて聞いたことないぞ。……はい。え、えと、……あ、あーん」
 みことは体の向きを変え、俺に抱っこされたまま向き合う形になると、箸をこちらに向けた。
「あー」
「は、はい」
 口の中にから揚げが入れられる。てっきりそのまま箸を突き立てられると思い、ヒーローバリアーを口内に展開していたのだが、何事もなく箸を引っ込められた。
「お、おいしいか?」
「もぐもぐもぐ。うん、おいしい」
「……も、も一個食うか?」
「食べる」
 みことは再びから揚げを取り、俺に向けた。
「あ、あーん?」
「あー」
 可愛らしい掛け声に口を開くと、そこにから揚げが入れられた。
「お、おいしい?」
「うん、美味い」
「……そ、そか。……えへ」
 ええい。嬉しそうに笑うな。我慢できないじゃないか。
「うわっ!?」
 みことを解放し、即座にその膝に頭を乗せる。
「なっ、何を!?」
「必殺、ヒーロー膝枕! 説明しよう、ヒーロー膝枕とは、ヒーローの力で強制的に相手を正座させ、そこに頭を乗せる技である!」
「……なんだ。言ってくれたら普通にしてやったのに」
「え」
「あっ! ……え、えと、ほ、ほら! 今はお休み中だから! 戦う気がなくなってるから! 特別な意味はなくてだな!?」
 じーっとみことを見てると、どんどん顔が赤くなっていった。
「う、うう……あ、あんまりこっち見るな、馬鹿者!」
「ぷわっ」
 目に手が乗せられた。何も見えない。
「ちょ、ちょっと寝てろ。しばらくしたら起こしてやるから」
「マジで? そのまま俺を一人残して帰ったりしない?」
「…………」
「何か言ったほうが俺の不安を解消させるかと思います」
「ふふっ。冗談だ、ばか。……疲れているのだろう? そのまま休め。ゆっくり休養し、体調が万全になったら、我と正々堂々戦え。それまで休戦だ」
 優しく頭がなでられる。そのまま落ちるように、俺は眠った。

 どれくらい時間が経ったのだろう。目が覚めると、辺りはすっかり夕暮れになっていた。周辺で騒いでいた人たちも既にいなくなっている。
「……随分と寝ていたな。よほど疲れていたのだな」
 しかし、俺の枕になっていた奴はそうではなかったようで、目が覚めても未だぼーっとしている俺の頬を優しくなでている。
「あー、自覚はなかったけど、そうかも。なんか最近忙しくって」
「お前の仕事は身体が資本だ。無理はするなよ?」
「ああ、分かった……って、そういうのを敵に心配されるのもなー」
「それが嫌ならMAXの状態で現れろ」
「次からそうするよ……っと」
 みことから離れ、身体を起こす。軽く身体をほぐし、桜男の前に立つ。
「わっさわっさわっさ」
 見れば見るほどやる気がなくなってくるが……まあ、怪人だし、一応倒しておくか。
「ん? ……あーっ、貴様、まさか倒す気か!? あ、でも、勤労意欲がなくなるし、ほっといても大丈夫か……?」
「えい、火炎放射器ー」
 ぼぼぼぼぼ。
「あぎゃー」
 桜男は火に包まれて死にました。
「あーっ!? 倒した!? なんで!? やる気なくなるのに!?」
「やる気とか元から皆無なので。片手間で倒しました」
「う……な、なんかずるい! 人が一生懸命育てた桜男を、よくも! 覚えていろよ!」
「あ、待った。帰るんなら途中まで送ってくよ」
「我は敵だって言ってるだろ! 敵に送られるとかないの!」
「断ったらちゅーの予感」
「……と、途中まで! ……アジトまで行ったら他の連中に見つかっちゃうから、その近くまでなら許してやる。……と、特別だぞ!? 今回だけだぞ!?」
「やった! んじゃ、行くか」
「て、手を繋ぐことまでは許可してない!」
 なんかわーわー言ってるみことと一緒に、手を繋いで帰りました。

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何でみことがベアハッグ知ってるんだよwww

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