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2024年03月29日
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【野菜が苦手なツンデレ】

2010年04月28日
 最近仲良くなった先輩と一緒に中庭で昼食を摂っていると、先輩が野菜をさけて食べているのに気がついた。
「先輩、野菜も食べないとダメだよ?」
「…………」
「え、野菜嫌いなの?」
 先輩はコクンと頷いた。無表情でその上極めて小声なので、聞きとるのに修練が必要だ。
「でも、食べないと大きくなれないよ。上級生なのに下級生と間違われるの、嫌でしょ?」
「…………」
「え、大きなお世話? でも、野菜食べてちゃんと栄養とれば背も胸も大きくなるかも痛い痛い痛い」
 先輩は無言で俺のほっぺを引っ張った。気にしていたようだ。
「…………」
「え、本当に食べたら大きくなるかって? そりゃそうさ、食えばその場で背ズギャーン、胸ドカーン、だぞ!」
 先輩は少し考えた後、意を決したようにブロッコリーをフォークで刺した。そして、口の中に入れた。
「…………」
 先輩は泣きそうな顔になった。
「ファイトだ、先輩! 飲み込んじまえば味なんて消えちゃうぞ! ほら、ノド元過ぎればなんとやらって言うし」
「…………」
 先輩は泣きそうな顔のままもぎゅもぎゅと口の中の野菜を噛んだ。噛む度にどんどん泣きそうになるので、見てるこっちがハラハラする。
「…………」
「え、まずい? 出していい? ダメダメダメ! もうちっとだ、頑張れ先輩!」
「…………」
「え、俺が鬼? ひどい? 悪魔? ……なんと言われても出しちゃダメだぞ」
 俺が出すのを許さないと知ると、先輩は恨めしそうに半泣きで俺をじっと見つめた。しかし、これも全て先輩のため。俺は心を鬼にした。
 そして、先輩のノドが動き、飲み込んだのを知った。
「おおっ、やったな先輩! えらいぞ!」
 わしわしと先輩の頭をなでる。先輩は不服そうな表情を浮かべながら、でも嬉しそうに頬を少し染めた。
「…………」
「え、背が伸びない? 胸も大きくならない? そりゃすぐにはならないさ。そう言ったのは先輩に食べさせるためいてててて」
 先輩は不満そうに口をとがらせ、俺のほっぺを引っ張るのだった。

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