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2019年10月15日
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【ツンデレと雨宿り】

2010年05月16日
 急な通り雨に道をふさがれ、俺はぼーっと雨宿りしていた。やまないな、と思っていると隣に誰かやってきた。
「……リナ?」
「あら、タカシじゃないの。奇遇ですわね」
「なんでこんなとこにいるんだ? 車で帰ったんじゃないのか? 急に貧乏になったのか?」
「なってません! 今日は少し歩きたい気分でしたの。……でも、ついてませんわね。急に雨が降ってきますし、隣にタカシがいますし」
「前者は認めるが、後者はむしろ幸運なことだぞ」
「……何を言ってるのかしら。それにしても、嫌な雨ね……。早くやまないかしら」
 リナにつられ、俺も空を見上げる。重苦しい雲は視界いっぱいに広がり、まだまだやむ気配を見せなかった。
「本格的に降りそうだな……まいったな」
「ええ、本当に参りましたわ。このままタカシの側にいるという苦行を強いられるのは非常に辛いですわね」
「…………」
 リナはなかなか辛辣だ。ちょっと泣きそう。
 それからしばらく待ったけど、雨が止む気配はない。……無言が続いて、どうにも居心地が悪い。適当な話題を振るか。
「あ、そうだ、腹減ってないか? 俺チョコ持ってんだけど、よかったらやるよ」
 ポケットからチョコを取り出し、何か言われる前にリナに渡す。
「随分と強引ですわね……。それにしても、どうしてチョコレートなんて持ってますの?」
 リナがチョコを口にするのを待って、俺は言った。
「いつ遭難しても大丈夫なようにな。保存食と聞いたことがある」
「……ひょっとして、古いんですの?」
「ワインとかは古いほうが美味しいって聞いたが」
「これはチョコレートですわ!」
 リナはハンカチを取り出して口元を覆い、チョコを吐き出してしまった。
「ああ、もったいない……」
「まったく、タカシときたら……ああ、何食べてるんですの! ここにお出しなさい!」
 俺がチョコを頬張るのを見て、リナは慌てた様子でハンカチを広げた。ちょっとチョコがついてる。
「むぐむぐ……大丈夫だよ、腹は丈夫な方だし」
「何言ってるんですの!? 万が一、ということがあるでしょう! ほら、早く!」
「やだ。もったいない。むぐむぐ……むがぁ!」
 リナは強引に俺の口を開き、中のチョコを取り出そうとした。
「ああ、もうほとんど溶けてますわ……もう、何を考えてますの!」
 それはお前に聞きたい。
「古いチョコを食べて、お腹を壊して、……それで死んだりしたらどうするんですの!」
「いや、そんなもんで死んだりはしないと思うが……」
「いいから! もうこんなことはしないと約束なさい!」
 えらい剣幕に、思わずうなずいてしまう。
「よろしい、それでいいのです。……まったく、タカシはダメですわね。一人で放っておくと野垂れ死ぬんじゃないかしら?」
 そこまでダメ人間じゃない、と否定できないのが少し悲しい。
「じゃあリナが面倒見てくれ」
 仕返しとばかりにそう言うと、リナは頬を染めてまくし立てた。
「なっ、なにを言ってるんですの!? なんで私がタカシなんかの面倒を見なくちゃならないんですの!?」
「放っておかれたら死ぬから」
 自分で言っておいてなんだが、小動物か何かか、俺は。
「小動物みたいですわね……」
 ほらみろ、リナにも思われた。
「あーもういいや。ぼちぼち小雨になってきたし、帰ろうぜ」
 リナに手を差し出すが、受け取ってくれない。
「え、でもまだ少し降ってますし、もう少し……」
「いいから!」
 リナの手を強引に取り、俺はそぼ降る雨の中に飛び出した。
「きゃっ! ……もう、本当に強引ですわね」
 ため息をつくリナの笑顔を見て、雨も悪くないと思いながら俺たちは走った。

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