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2019年10月15日
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【クリスマスに風邪をひいたら】

2010年02月05日
 クリスマスだってのに風邪ひいた。最悪だ。
「うー……チクショウ、健康なら能面のような表情で近所のコンビニを徘徊、もしもカップルが現れたなら二人が買おうと手を伸ばしたモノことごとくに嫌な解説を加える(例・『あ! そのシャンペン、ボクのおしっこそっくりですよ!』など)という荒川工考案の作戦を行ったものを……!」
「熱があるからそのようなことを思いつくのか、それとも普段からそのような悪行を考えているのか、判断が難しいですわね」
「あ……?」
 俺じゃない声がする。
「……いよいよもって俺の妄想も性質が悪くなったな。まさか、リナの姿をこうもくっきりと現実世界に映し出すだなんて」
「妄想ではありませんわ。本当にいますわよ」
 そう言いながら、俺の妄想が枕元までやってきた。
「最初に言っておきますが、見舞いじゃありませんわよ。せっかくのクリスマスに風邪をひいた馬鹿を見学に来ただけですわ」
「おっぱいが喋ってる。宇宙人?」
「おっぱいじゃありませんっ! 神野リナですわっ! 胸のことは言わないでいただけますことっ!?」
 リナの乳がぶるんっと震えた。
「よく分からんが、お前が俺の妄想であれば、俺に都合がいい展開になるに違いない。ご飯作ってくれるとか、ふーふーしてくれるとか、寝るまで傍にいてくれるとか」
「冗談じゃありませんわ。何度も言いますが、ワタクシは妄想でも何でもなく、ちゃんとした本物ですも……」
「うん? どうかしたか?」
「(ワタクシを妄想と勘違いしてるし、熱で朦朧としてる今なら、ベタベタしても大丈夫じゃ……?)」
「リナ? どした、孕んだか?」
「孕みませんわっ! ……あ、いやその、……や、やっぱりワタクシ、貴方の妄想でしてよ♪」
「やっぱりだ! リナが、あの豪華絢爛DXワガママお嬢様のリナがわざわざ俺の見舞いにくるはずなんてないよな。いや、この方がよっぽどリアリティあるな」
「こっ、この、黙って聞いてれば……」
「どした、リナ?」
「な、なんでもないですわよ♪ それで、何をしてほしいんですの?」
「胸を触りてえ」
「ダメに決まってますわ!」
「じゃあ、その豊満な乳に俺の顔を埋めてえ」
 グーで殴られた。俺の妄想強え。
「……性的なこと以外でお願いできますこと?」
「んー……じゃ、ご飯食べたい。おかゆ」
「おかゆ……そんな貧乏臭い料理、作ったことありませんわ」
「この妄想使えねえなあ」
「し、しょうがないですわ! 家ではいつもシェフが作ってるんですもの」
「んー……じゃ、作り方教えるから、作って」
「……下手ですわよ? いいんですの?」
「吐くから大丈夫」
「絶対に作りませんわ!」
 必死で謝り、どうにかリナの機嫌を直す。なんで妄想の機嫌をとらなくちゃいけねーんだ。
 その後、口で簡単におかゆの作り方を教える。
「……で、できました、わ?」
 数十分後、土鍋を載せたお盆を持つリナが、自信なさげな様子で部屋に入ってきた。
「おー。待ってたぞ」
「い、言っておきますが、味の保障はしませんわよ。もっとも、ワタクシが作ってあげたという事実が何よりの調味料ですけどね。おーっほっほっほっほ!」
 高笑いがうるさいなあと思いつつ、おかゆを一口。
「……ど、どうですの?」
「もにゅもにゅ……味がねえ」
「え? なんでですの?」
「お前、塩入れたか?」
「あ……」
 やっぱか。ただのふにゃふにゃ飯だな、コレ。まずくはないが、味がないのでおいしくもない。
「で、でも残したら許しませんわよ! せっかくワタクシが作ってあげたんだから」
「言われなくても残さねーよ」
 もう一口ぱくり。うん、平坦。のっぺり味。
「う……そ、その、でも、どうしてもって言うなら残してもいいですわよ?」
「たとえお前が妄想でも、リナの形をしたものが作ってくれたものを残すような、そんなもったいないことできないっての」
「う……」
 申し訳なさそうな、嬉しそうな顔をして、リナは何やら口ごもった。その横で土鍋をどんどん空にしていく。
「あ、それじゃせめて食べさせてあげますわ」
「え、いや、いいよ。一人で食える」
「いいから。ほら、貸しなさいな」
 リナは俺から無理やり土鍋を奪うと、レンゲで一口すくった。
「ふーっ、ふーっ。はい、あーん」
「俺を辱める気だな」
「ふふっ、どうかしら? ほら、早く食べなさいな」
「口を開けた瞬間に『ドッキリでしたー』って言いながらヘルメットの男が乱入したりしないか?」
「ドッキリじゃないですし、なんだか全体的に古いですわっ! ほら、いいから口をお開けなさいッ!」
 口の中にレンゲを突っ込まれる。
「もがもが……突っ込むな」
「ふん。貴方が最初から素直に口を開けないからですわ」
「わーったよ、開けるよ……ほら、あー」
「あら? あらあらあら? ワタクシはさっきの一口だけのつもりでしたのに。もっと食べさせてほしいんですの?」
 リナの顔が意地悪な感じに変化していく。罠か。
「うふふ、しょうがないですわね。どーしてもと言うのであれば、食べさせてあげますわよ。ああ……ワタクシって優しすぎる。おーっほっほっほっほ!」
「こいつ頭おかしい」
「失礼ですわねっ! ほら、口をお開けなさいなっ! あーんですわ!」
「あー」
「はいっ! 次! あーん!」
「あー」
 本来であればイチャイチャラブいシーンなはずだが、どうにも餅つきのシーンのようで威勢はよいが悲しい。
 そうこうしている内に、土鍋は空になっていた。
「げふー。味はともかく、満腹」
「……わ、悪かったですわね。次はもっと上手に作ってみせますわ」
「ん、期待してる」
 期待とねぎらいを込め、リナの頭をなでる。
「こ、子供じゃないんですから、こんなことされても嬉しくありませんわ……」
 ちょっと拗ねたような顔をしながらも、リナの頬はほんのりと赤くなっていた。
「さ、さて! 次ですわ。何をしてほしいかしら?」
「パイズリ」
「紳士と変態の落差が激しすぎですわッ!」
 掌底ばりのビンタされた。痛い。
「うっうっ……どちらも俺なんです」
「泣きたいのはこっちですわ! せっかくの聖夜に、なんでこんなことを……」
「あー、そだな。クリスマスだもんな。こんな日に俺につき合わせて悪かったな、リナ。もう帰ってもいいぞ。後は一人でも大丈夫だから」
「……だ、ダメですわ。許しません。ちゃんと貴方が眠るまで、傍にいてあげますわ」
「え、いや、しかし」
「ワタクシは貴方の妄想なんでしょ? なら、ワタクシのことなど気にせず、したいことをなさればいいじゃなくて?」
「……いいのか?」
「もちろんですわ。……あ、言っておきますが、エッチなのはダメですわよ?」
「うっ、ううっ……畜生、畜生!」
「泣くなッ!」
「冗談だ。じゃ、寝るまで傍にいてくれ」
「テンションの落差についていけませんわ……」
 そう言いながら、リナは俺の枕元に座った。そして、俺の手を握り、優しく微笑んだ。
「ほら、寝るまで手を握っててあげますから、安心して眠りなさいな」
「寝た後に濡れ布巾を顔にかけたりしないか?」
「なんで殺意があるんですのっ! いいから眠りなさいっ!」
 とても怖いので目をつむる。
「まったく……」
 何かぶつぶつ言った後、小さな歌声が聞こえてきた。これは……子守唄?
 その歌に誘われるように、意識がまどろんでいく。
「……お休みなさい、タカシ」
 その優しい声は、夢か現か。

「……ん」
 目が覚めた。頭も痛くないし、だるさもないし、節々の痛みもない。よし、治った。
 ふと、手に何かを握ってることに気づいた。女性の手だ。視線をずらしていく。リナが俺のベッドに上半身を預け、くーくー寝てた。
「半分くらいそうじゃないかと思ってたが、妄想じゃなかったか……」
 とりあえず握られた手を外そうと、そっと手を開くが、全然離れない。空いてる手でリナの指をはがそうとするが、離れない。
「ん、んう……」
 いかん、あんまり無茶すると起きる。
「そうなっては寝てるリナの胸を視姦したりそっと触ったりあまつさえ揉んだりできないじゃあないか!」
「このド変態ッ!」
 リナが目を覚ますなり俺にビンタをします。
「……あら? ワタクシ、寝てましたの?」
「いや、ビンタしてた」
 痛むほっぺをさすりながら、半泣きでリナに訴える。
「ど、どうせワタクシにいやらしいことをしようとしてたんでしょ? 当然の罰ですわ。おーっほっほっほっほ!」
 無意識の行動か。すげえな。
「ま、なんだ。昨日は一日ありがとうな。お前のおかげで全快だ」
「な、何のことですの? ワタクシ、ついさっき来て、寝てる貴方の傍で偶然、ぐ・う・ぜ・ん! 睡魔に襲われ、ふらふらと寝てしまっただけですわ。夢でも見てたんじゃなくて?」
 ……あー、つじつまを合わせようとしてるのな。昨日のアレが現実のリナでなく、俺の妄想のリナってことにしたい、と。
 黙っていようかと思ったが、リナの意地っ張りな様子を見てると、意地悪をしたくなってきた。
「そっかー。いやな、夢でも見てたのか、昨日うちにリナが来た気がして」
「ゆ、夢ですわ。ワタクシ、昨日はクリスマスイブなので、家で家族や各界の著名人とパーティーをしてましたの。貴方にも見せたかったですわ」
「くく……そ、そっか。んでな、俺の夢の話だが、そこでリナは甲斐甲斐しく病気の俺を世話してくれたんだ。いや、あれは嬉しかったなー」
「そ、そうですの……」
 おお、リナの顔がゆっくり赤くなっていく。
「しかし、あれ全部夢だったのか。残念だな。本当だったら、思わず惚れるほどの女っぷりだったのに」
「ほっ、本当ですの!? あ、あの、えっと、その、実は」
「でもまあ、リナはパーティーしてたらしいし、夢だよな」
「あ……」
 途端、リナの顔がゆっくりと沈んでいった。くく……いかん、面白すぎる。
「……もう帰りますわ」
 いかん、からかいすぎた。亡霊のような歩みで出て行こうとするリナの腕を掴み、慌てて引き止める。
「……なんですの?」
「あ、いやその、ごめん。昨日はありがとう」
「……だから、それは夢の話でしょ? ワタクシは、パーティーに出ていたので、関係ないですわ」
「それでも、ありがとうって言いたいの、俺は。わざわざ来てくれてありがとう。本当に感謝してる」
「う……あ……ま、まあ、身に覚えのない話ですが、いいですわ。気にしませんわよ」
 悲しそうな顔が、ゆっくりと笑顔になっていく。よかった。
「さてっ! 元気になったことだし、今日はデートでもすっか?」
「なっ、なぜワタクシが貴方のような者とデートなんてしなくてはいけなくて!?」
「俺がしたいから! よし行くぞリナ、向かうは近所の公園だ!」
「せめてもうちょっとマシな場所はなくって!? というか貴方パジャマですわよ!?」
「ははっ、気にするな」
「ワタクシが気にするんですのっ!」
 俺の部屋にリナの絶叫が木霊するのだった。

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