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2024年04月26日
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【ハナ 移動式簡易暖房器具】

2011年01月20日
 ここ最近超寒いので、学校の行き帰りが億劫だ。
「でもまあ、俺には移動式簡易暖房器具があるから平気さ」
「……もしかして、それは私のことなんでしょうか?」
「その通りだよ」
 俺の隣でちょっとだけ不満そうにしてるハナの鼻をふにっと押す。
「あ、でもそれじゃ、私で暖まるんですか……?」
 俺に鼻をふにふにされながら、ハナは疑問を口にした。
「そういうことだな。ちうわけで、お手を拝借」
 ハナの小さな手をとる。いつもながら俺の手と比較すると物凄く小さい。女の子ってのは本当、すごいな。
「あ……。えへへ、おててつないで、です」
「ハナが見た目相応の発言を!?」
「……違います。彰人くんと同じ高校生です。子供扱いしないでください」
 途端にハナはぶすーっと口を尖らせた。
「不満げでも可愛いとはどういうことだ」
「お、怒ってるのに喜ばせるの禁止です! ……うぅ。ほら、もう怒ってるのがどっかに行っちゃったじゃないですか」
 複雑な表情でハナは俺の腕を軽くつねった。
「いやはや。けど、寒いといいな。夏と違い、ハナとくっつくのに理由が必要なくて」
「……べ、別にいいですよ? 夏でも冬でも、何の理由もなく私にくっついてくれたら」
 ハナにしては珍しい大胆発言にそちらを見ると、想像通り顔真っ赤。
「ハナは痴女痴女しいなあ」
 そこで、いじめてみると早速泣きそうになっていた。
「ううう……。折角勇気を振り絞ったのに、酷い話です」
「ごめんな。好きな子に意地悪をする心理が未だに抜け切れていないんだ。そんな少年の心を宿す俺を許してくれ」
「嫌です。許しません」
 珍しいことは続くもので、いつもなら即許してくれるのに、今日のハナは顔を逸らして怒ったままだった。
「ぬ。これは死ぬほど困った。どうしよう。死のうか」
「ダメですっ! ……そ、そじゃなくて。え、えと」
 ハナはきょろきょろと周囲を見回し、小さく息を吸い込んだ。
「だ、抱っこ。抱っこしてください」
「おおぉう。超大胆じゃないですか、ハナさん」
「い、今なら人がいません。大ちゃんすです。おうちの中では数え切れないほど抱っこされましたが、一度くらい外で抱っこされたかったんです」
「ハナに青姦欲望が」
「……よく分かりませんが、たぶんいやらしいことを言ってます」
 ハナの口がとがりだした。この娘、俺と付き合うようになってからカンが鋭くなってやがる。
「と、とにかく抱っこです。可及的速やかに抱っこしてください。そしたら許します。ダメなら死にます」
「自殺という俺の常套手段を使われては仕方ない。はい、おいで」
 両手を広げてカムカムする。自分から言い出したくせに、ハナはためらいを見せた。
「い、いませんよね、誰も? 平気ですよね?」
「早くしないと広げた腕が閉じる罠。ごーよんさんにーいち」
「ぜろっ!」
 の掛け声と同時に、ハナがすっぽり俺の腕に納まった。すかさず抱きしめ、そのまま頭もなでる。
「はふぅぅぅ……。相変わらず彰人くんの腕の中は夢心地です。一生ここにいたいです」
「嬉しいことを言ってくれる。気をよくしたので、この勢いのままお姫様抱っこして家まで送ろうか?」
「恥ずかしさのあまり途中で悶死すること間違いなしですっ!」
 死なれるのは嫌なのでこのまま帰ろうとしてハタと気づく。この状態では歩けねえ。
「あのー、ハナさん。動けないので一度離れてもいいかな?」
「嫌です。ずっと一緒なんです」
「なんて無茶を言いやがる。このままじゃ帰れないぞ?」
「うー……じゃ、とりあえず離れます。でも、それじゃ、家に帰ったらまた抱っこしてくれますか?」
「ということは、今日はハナの家に集まるということでよろしいか?」
「よろしいです」
 よろしいらしいので、両腕部解放。最後にもう一度俺にすりすりしてから、ハナは名残惜しげに離れた。
「……ふぅ。えへへー、お外で抱き合うだなんて、なんだか熱々の恋人さんみたいで素敵でしたね?」
「実際は冷め切ってるけどな」
「私だけが一方的に彰人くんを好きという悲しい図式になってました!?」
 半泣きになってしまい可哀想だったので、帰りにクレープ買ってあげた。
「まぐまぐまぐ。いちごがおいしいです」
「ハナは食事の時リスみたいになるな。リスなのか?」
「人間です」
 しかし、試しに指を目の前でひらひらさせたら口に含んで軽く噛みだしたので、ハナげっ歯類説はかなり有力な説だと言えよう。

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