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2024年04月27日
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【ハナ シュークリーム】

2011年11月02日
 恋人であるところのハナがお土産片手に遊びに来たので、頭をなでてみた。
「お土産効果、抜群です。これはもう、毎回お土産を持ってきて頭をなでてもらうしかないです!」
 何やら勘違いされてる御様子。
「別に土産を持ってきたからなでたのではなく、なんとなくなでただけです」
「とっても残念な真実です……」
 何やらしょんぼり具合が大きくなったので、気合を入れて頭をなでてみる。
「えへへぇ♪」
 すると、喜び具合が大きくなったので俺の選択は正しいことが証明されました。
「んで、ハナの人や。何を買ってきたのかね?」
「しゅーくりーむです。大安売りしてたので、奮発して四つ買ってきました、四つ。……偉いですか?」
「歴史の教科書に載る程度には偉い」
「知らず大業を成し遂げていたようです!」
「んじゃ食おう食おう。あ、飲み物何がいい? 俺の唾液?」
「……あ、あーん」
「信じるな。口を開けるな。頬を赤らめるな」
「あ、彰人くんならやりかねないと思ったんです。私の想い人は少し頭がおかしいんです」
「酷いことを言うものだ」
 恋人に頭がおかしいと評される符長彰人ですこんばんは。そして俺の脳内こんばんはは今日も冴えている。
「彰人くんに鍛えられました。……凄いですか?」
「あー凄い凄い。んで、飲み物何がいい?」
「んと……紅茶がいいです」
「紅茶ね……あったかなあ」
 自室を出て台所へ向かっていると、何やら背後から気配が。すわ背後霊が実体化した、と一瞬思ったが、当然そんなわけはなく、ハナがついてきていただけだった。
「何もついてくる必要はないと思うのだけど」
「……だ、ダメですか?」
「え、いや、ダメではないが……」
「じゃ、じゃあ、一緒がいいです。いっしょ、いっしょ」
 ちょこんと俺の服の裾を小さくつまみ、ハナは嬉しそうに呟いた。
「キミはいちいち可愛いので困ります」
「そ、そんなこと言われたら、私の方が困ります」
「双方困ったということで、おでこの刑」
「や、やー! おでこやー!」
 ハナはなぜか知らないがおでこをさらされるのを嫌い、普段は前髪で隠している。だが、嫌がるリアクションが楽しくて、俺は度々ハナの前髪を上げ、おでこをさらしてしまう。
「ううう……普段の彰人くんは大好きですが、こうやって私のおでこを晒す彰人くんは嫌いです」
 ハナは俺から離れると、少し拗ねたような口ぶりで言った。
「俺はどんなハナでも大好きだよ」
「……そ、そゆこと言って私の機嫌をうかがう彰人くんはずるいです。さっき言った嫌いがもうどこかへ行ってしまったじゃないですか」
 ハナは俺の傍まで歩み寄ると、再び俺の服をきゅっと握った。
「えい」
「や、やー! またおでこやー!」
 このお嬢さんに学習機能はないようです。

「ううう……いっぱいおでこを晒されました。陵辱されました」
「また人聞きの悪いことを……」
 結局台所に辿り着くまで4回おでこを晒しました。楽しかった。
「ぷんぷんです。普段ならすぐに許してしまいますが、私の怒りは有頂天に達して怒髪が天を突いてます。ちょっとやそっとじゃ許しません」
「よく分からないが、怒ってることは伝わった」
「それだけ伝わればじゅーぶんです」
「以心伝心で嬉しいな」
「はい♪ ……い、いやいや、違います。私は怒ってるんです。……あの、彰人くん。あまり私を喜ばせることは言ってはいけません。許しちゃいます」
「ものっそい笑顔で“はい♪”って言ってたな」
「お、怒ってるんです!」
「はいはい」(なでなで)
「な、なでなでも禁止です! ほ、ほら! なんか嬉しくなってきちゃいましたよ! どーしてくれるんですか!」
「そんな怒られても」
「う、ううー……彰人くんはすぐに私を嬉しくするので注意が必要です。要注意人物です」
 背後で変なことを言ってる恋人を余所に、紅茶を探す。えーと……あ、棚の中にあった。
「あったあった。よし、たまには俺も紅茶にしよう」
「う。……ま、またです。一緒の飲み物を飲むことにより、私を喜ばせる作戦です。彰人くんは今日も策士です」
「そんなつもりは毛頭ない」
 勝手に策士認定されつつ、カップに湯を注いで部屋に戻る。紅茶はハナに持たせました。
「うし。んじゃ、ちゃっちゃと紅茶作って、ハナの買ってきたシュークリームを食おう」
 インスタントの紅茶をカップに入れ、ちゃぷちゃぷと揺する。
「? どした、ハナ。紅茶作らないのか?」
「彰人くんの使ってるのを後で使います。……あ、それとも、使い回しとか嫌ですか?」
「いやいや。それどころか、経済観念のしっかりしたお嬢さんで嫁に最適と思った次第だ」
「……お、お嫁さん」
 ハナの顔が今世紀最大に赤くなった。
「し、将来の話だよ!?」
「そ、そですよね。……び、びっくりしました」
「俺もびっくりした。サルの尻くらい赤くなるんだもん」
「でん部扱いです……」
 何やらしょんぼりした様子で、ハナは俺から受け取った紅茶をカップに入れてちゃぷちゃぷした。
「はぁ……。びっくりしすぎて、怒ってるのがどっか行っちゃいました。大弱りです」
「弱って字が鰯に似てるから?」
「今日も彰人くんの思考は謎に包まれてます」
 真顔で言われると辛い。
「まあいいや……ともかく、シュークリームを食おう」
「あ、はい。カスタードといちごの二種類があるんですけど、どっちがいいですか?」
 ハナは両手にシュークリームを持ち、俺に訊ねた。
「こうなったら運否天賦だ。せっかくだから俺はこの茶色いシュークリームを選ぶぜ!」
「は、はや……何が折角か分からないし、両方とも茶色いです」
 はい、と渡されたシュークリームをまふっとかじる。カスタードの甘い味が口内に広がった。
「カスタードだ。ん、うまい」
「よかったです。じゃ、私はこっちを……いちごです。甘くておいしーです」
 ハナは両手でシュークリームを掴み、まふっとかじった。途端、とろけるような笑みを浮かべるので、思わずこちらも気持ち悪い笑みを返してしまう。
「……あ、彰人くん。そ、そーゆー、誰もがくらくらーってなっちゃう笑みは控えるべきです。……むぎゅーってされたくなっちゃいます」
「馬鹿な!? 自分では気持ち悪いことこの上ねぇ笑みのつもりだったのだが……」
「素敵過ぎて心臓が止まりそうになる笑みです。どきどきはーとびーとです」
 本当にこのお嬢さんは俺と同い年なのか時々疑問に思う。
「……あ、あの、彰人くん。……ち、ちょこっとだけ、そっち行ってもいいですか?」
「え、あ、うん」
 ハナは俺の隣に座ると、ぴとっと肩をくっ付けた。
「あ、あの。ハナさん?」
「ちょ、ちょこっとです。ちょこっとだけしたら、満足しますから。我慢してください」
「いや、我慢も何も俺も嬉しいからいいんだけど、なんでまた突然」
「……さっきの彰人くんのすーぱー笑顔を見ちゃったら、なんだかとってもくっつきたくなったんです。くっつきたくなっちゃったんです」
 ハナはうつむきながらぼそぼそっと呟いた。髪の隙間から覗く耳がやたら赤い。
「あー。あのさ、ハナ。俺たちゃ一応恋人なんだから、好きな時に、好きなだけくっつける権利があるんだよ? だから、別に許可なんか取らなくてもいいんだぞ?」
「で、でも、それだと四六時中くっつく羽目になってしまいます。日常生活が破綻する自信があります」
「あー。なんつーか、死ぬほど好かれてますね、俺。はっはっは」
「……そ、そうです。いっぱい好きです」
 笑いながら真っ赤になってる馬鹿と、うつむきながら真っ赤になってる馬鹿が二匹います。ああもう恥ずかしい。
「あ、一応言っておくが、俺もハナに負けないくらいハナが好きだよ?」
「あ、彰人くん、そーゆーことをさりげなく言ってはダメです! 頭がおかしくなってしまいます!」
 ハナは顔を真っ赤にしたまま両手をばたばた振った。いっぱいいっぱいなのか、半泣きだ。
「ああもう。ハナちょー可愛い」
「はや、はやややや!? これはもう確実に頭がおかしくなりましたよ!?」
 我慢も限界だったのでハナを抱きしめる。しばらくばたばたしていたが、頭を数度なでると、徐々に落ち着いていった。
「はふぅ……。彰人くんに抱きしめられるとドキドキしますが、同時にすっごく落ち着きます。不思議です」
「あー、俺も俺も。ハナに触れてると、何やら落ち着く」
 そう言いながらハナのほっぺをふにふにする。ハナはくすぐったそうに目を細めた。
「えへへ。じゃ、いっぱい触ってくださいね?」
「ハナはえろいなあ」
「そ、そういう意味じゃなくてですね!?」
「あ、そういや今日は両親が家を留守にしてたんだ」
「はや、はややややっ!? ど、どうしましょうかっ! 勝負ぱんつをはいてきてませんよ!?」
「しょうがない。じゃ、今日のところはちゅーだけにしておこうか」
「はやーっ!?」
 この両目がぐるぐるしてる生物はとても可愛いなあ、と思った。

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Comment
無題
シュークリームをまふっとかじるって今まで聞いたこと無かったけど、すごいしっくりくる擬音だよね。
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