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2024年04月25日
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【泳ぎみゆ】

2012年08月11日
「あっちいので泳ぎたいです、お兄ちゃん!」
 ここ数日の暑さにやられ床でごろごろしてたら、妹のみゆが寄ってきてごろごろ真っ最中の俺の腹の上に座り込んできた。
「なるほど、話はよく分かった。だが、先立つものがないのだよ」
「プール行くお金くらいあるよ? ええと……じゃじゃーん、みゆ貯金ー!」
 じゃじゃーんな効果音も高らかに、みゆはポケットから小銭を取り出した。
「じゃあ行ってらっしゃい」
「お兄ちゃんも行くのー! みゆが一人で行って、頭悪そーな人にさらわれたらどうするの!?」
「みゆは超者なので無理だと思うが……もしそうなったら、世を儚んで自殺するorテロリストとして日本という国を完膚なきまで粉砕した後に自殺する」
「一瞬で何もかもを諦めたよこの人!? じゃなくて、そうならないようにお兄ちゃんがついてくの!」
「そうだな、暑いし死にたくないしそれが一番いい案だな」
 そんなわけで、近所の市営プールへやってきた。やはり誰しも暑いのだろう、人でごった返していた。
「それじゃみゆ、後で」
「了解であります、お兄ちゃん!」
 ばびっと敬礼して、みゆは女子更衣室へ向かっていった。それを追跡する俺。見つかる俺。つまみ出される俺。しょうがないので着替えてぼやーっと待つ俺。
「お待たせですだよ、お兄ちゃん」
 そんな俺まみれの俺に、声がかけられたので振り向くと、水着に着替えたみゆが立っていた。
「にゃはー……どうかにゃ? 可愛い? ぐっとくる? 押し倒したくなる? そこの陰でする?」
「質問が色々問題ありすぎです!」
「みゆが可愛くないって言うの!!!!?」
「大変可愛いです」
 どうして土下座しながら褒めなければならないのか。
 ……まあ冗談はともかく、身内贔屓を差し引いても妹は可愛いのではなかろうか!
「特に真っ赤なビキニに覆われた極小の胸がたまらない」
「お兄ちゃんお兄ちゃん、声に出てるよ?」
「わざとなんだ」
「ぬぬ……本来であれば怒るシーンなのだろうけど、みゆはお兄ちゃんがぺたんこ好きの変態やろーと知っているので怒れない! それどころか喜ばしい!」
 妹は基本的に声が大きいので、家族連れやら恋人たちが僕を犯罪者を見る目で見るので死にたい。
「にゃにゃっ、お兄ちゃんがまとうオーラが負に!? 出ろ~元気出ろ~」
 にゅろにゅろと手を動かし、珍妙な呪いをかける愛しの妹。知り合いじゃなければダッシュで逃げてる。
「まじなわれた結果、元気が出た」
「まじなった甲斐があった!」
 どんな会話だ、と思いながらも感謝の意を込めてみゆの頭をなでる。
「まじなってくれてありがとうな、みゆ」
「ふにゅにゅ……みゆ、照れ照れだよぅ」
 なでられて嬉しそうなみゆを引きつれ、とりあえず波が押し寄せるプールへ向かう。
「解説しよう! このプールは人工的な波が常に押し寄せており、この施設の中でも一二を争う人気プールだ!」
「そりはつまり、人が多い&波が押し寄せるので、うまいことお兄ちゃんに抱きつき放題って解釈でいいのかにゃ?」
「いいえ」
「そんにゃー……」
「代わりに兄が妹に抱きつくスポットとなっております」
「よっしゃこい! どさくさに紛れてみゆの尻やら乳を揉めばいいよ!」
「女子として最低限の恥じらいが欲しいです」
「にゃ、つい本能が先走っちゃったよ。ごめんね、お兄ちゃん。次からは恥ずかしがるよ」
「宣言されると萎えます」
「うんとー……それ以上近寄ると舌を噛んで死にまする!」
「極端に過ぎると思う。口調の割りに水着だし」
「もー! お兄ちゃん文句ばっかだよ! モンクだらけだよ! こぶしこぶしこぶし!」
「はは痛い痛いマジで痛いすいませんごめんなさい許してぇ!」
 文句とモンク(FFとかでお馴染みの殴る系のジョブ)をかけてぺこぽこ殴ってきたのはいいが、予想をはるかに超える攻撃力により、あっという間に兄のHPは一桁になったので土下座で許しを請う。
「許して欲しかったら波のどさくさに紛れてみゆに触ったりぎゅーってしたり大好きだよーって言いなさい!」
 後半は波とか関係ねぇと思ったが、このままぺこぽこされると黄泉路へ誘われてしまうので必死にうなずく。
「にゃ! んじゃプールへごーだよ、お兄ちゃん!」
「それはいいが、兄は何者かにべこんぼこんにされ死にそうなので少し休みたい」
「ほいみー! ……回復した?」
「いいえ」
「ぬぬ……ほいみー!」
 ほいみーと叫びながらみゆが抱きついてきた。ほにゃっとした柔らかな身体が、ちっこいながらもふにふにとその存在を見せ付ける胸が、すべすべな太ももが俺の脳髄を刺激する。
「回復したかにゃ?」
「した。あとダメな部分も隆起しがち」
「……そ、そりはおうちに帰ったあとで大人しくさせるから、今は我慢だよ、お兄ちゃん?」
「おや、そのもじもじとした羞恥はとてもいいですね。非常にえろいですよ」(なでなで)
「にゃんと! 覚えておくよ、お兄ちゃん! 夜の営みでお兄ちゃんをもっともっと満足させるべく!」
「あまり大きな声で叫ばないでください」
 気がつけば周囲の視線が犯罪者を見るものしか存在してなかったので、妹の頭をなでながら諭す。
「ふにゃ。ところでお兄ちゃん、今日はこの水着でするのはどうですかにゃ?」
「うちの妹は兄を刑務所に入れてほしいのだろうか」
「みゆを抱っこしていーこいーこしてくれるなら、そゆこと言わなくなる可能性が少しだけあるよ!」
「少しなの?」
「いーから抱っこしていーこいーこして大好きだよーって言って帰りに結婚式を挙げなさい!」
「うちの妹は無茶が過ぎる。抱っこ&いーこいーこで我慢しなさい」(なでなで)
「にゃっこあんどにゃーごにゃーご♪」
 なんかわからんが嬉しそうなのでよかった。
「ふひゅー。大変喜ばしくなったところで、そろそろプールに入らない、お兄ちゃん?」
「待つんだ、妹よ。体操しないと足が吊って溺れて死んでみゆと二度と会えないなんて!!!!?」
「落ち着けお兄ちゃん! 想像で苦しみもだえてもしょうがないよ!」
 それもそうだと思ったので、普通に兄妹で体操する。合間に抱きつかれたり抱きついたり監視員にマークされたりしながら、体操を終える。
「ふひゅー……いっしょけんめーしたら体操もけっこーしんどいね、お兄ちゃん?」
「兄は監視員の目が気になって気になって」
「もー! みゆと一緒にいる時は、みゆだけを見なさい!」
「おや、恋人の台詞のようですね」
「兄妹は恋人よりも深い絆で結ばれているので、それも当然の帰結なのだよ! ……難しい言葉使えたよ? 偉い?」
「偉い偉い」
 褒めてほしそうだったので、頭をなでてあげる。
「にゃーにゃー♪ 今日はいっぱいなでてもらえて、みゆはすっごく嬉しいよ!」
「じゃあ、ぼちぼち水に浸かろう。プールサイドでわーきゃー言うのもいい加減暑くて死にそうだ」
「ラジャったよ、お兄ちゃん!」
 そんなわけで、ようやっとプールに侵入する。ぬるめの水が暑く火照った身体を優しく冷ましていく。
「ほふー……涼しいね、お兄ちゃん!」
「いやはや全く。一生ここにいたいな」
「どーしてもそうしたいならみゆがここと交渉するけど……冬になったら凍っちゃうよ?」
 軽い気持ちで住処を変更させられそうになったので、そのぐらい心地がいいことを比喩しただけを伝える。
「にゃんだ、まぎららしい」
「勘違いするほうがどうかと思います。あと、紛らわしい、です」
「まぎららしい、まぎららしい……にゅー、言えないよう」
「頑張れ妹! ファイトだ妹!」
「……ええい、一か八かだ! マギー司郎!」
「うむ!」
「うむ!?」
 なんかびっくりしてる妹の頭をなでてると、波がざっぷんざっぷん二人の身体を揺らしだした。
「ほわわ……結構激しい波だね、お兄ちゃん」
「この激しい波に、二人の仲が引き裂かれそうだ」
「絶対に離れないもん!!!」
 両手両足を俺に絡ませ、みゆがしがみついてきた。
「凄まじい重みが兄を襲う」
「女の子は羽みたいに軽いもん!」
「羽が大群を成して攻めてきたようだ」
「軽いもん!!!」
 ぐらぐら揺らされ、その隙を突いて波が押し寄せてきた。二人まとめて水中に没す。
「げぼげぼげば」
「にゃぐにゃぐにゃべ」
 水中会話は困難と判断し、犬かき猫かき水面へ浮上。
「ぷはっ! ……やー、苦しかった」
「ぷはー! はふー、でも気持ちよかったね!」
「水中でおっぱいを揉んだ甲斐があった」
「そういう意味じゃないし、揉まれてないよ、お兄ちゃん! ……あの、揉みたかったの?」
「揉むほどないです」
「あるよ?」
 手を掴まれ、そのままみゆの胸へと誘われる。確かに平らいが、それでも指が多少埋まる程度は……ある!
「ね? あるでしょ? お兄ちゃん、らっきー♪」
 ついでなので、そのままもみもみ。
「にゃ、んにゃ……っ、あ、あの、お兄ちゃん、ここでしたら捕まっちゃうと思うんだけど……が、我慢できる? むり?」
「無理! みゆの柔らかさを前にしたら、当然の事よ!」
「捕まったら、みゆとえっちできなくなっちゃうよ?」
「清廉潔白な俺を捕まえて、誰が犯罪者か!」
「もはや清々しささえ漂うよ、お兄ちゃん!」
 とにかくこのままでは捕まるのも時間の問題なので、みゆのおっぱいから手を離す。
「にっゃ。……お兄ちゃん、もっと触りたかった?」
「勿論!!!」
「お兄ちゃんのえっちっちー♪」
「金輪際貴様なんかの乳なぞ揉むか!」
「にゃんですって!?」
「すいません揉みまくりたいです」
 もうおしっこ漏れそうなくらい怖かったので許しを請う。
「それでいいんだよー♪ じゃ、とっとと帰ってもみもみするる?」
「大変心惹かれる提案ですが、兄としてはもう少しここで妹ときゃっきゃうふふな遊びを行いたいです。まだ水没しただけなので」
「それもそだね。んじゃ、次のプールへごーだよ、お兄ちゃん!」
 次のプールは普通の25mプールだった。ここは普通のプールなので、人の数もそれなりで落ち着いて遊べそうだ。
「お兄ちゃん、ここで競争しよ? 負けた方が勝った方のいうこときくの!」
「じゃあ兄が勝ち、みゆと一緒に寝る権利を得てみせる!」
「いつも一緒に寝てるよ?」
「む。じゃ、みゆにご飯作ってもらう権利を!」
「毎日みゆがご飯作ってるよ?」
「むむ。じゃあじゃあ、みゆと一緒にお風呂に入る権利を」
「毎日一緒でうっふんあっはんだよ?」
「畜生! 何一つとして願いがねえ!」
「にゃはは。んじゃね、お兄ちゃんが勝ったら、おこづかいあっぷしたげるよ!」
「なんと! しかし、兄の小遣いはその大半がみゆへの奢りに使うのであまり意味がない気がする」
「え、えーと……気にしないのが一番だよ!」
「……まあいいや。で、みゆが勝ったら何するんだ?」
「にゅーっとね、そだね、お兄ちゃんにぎゅーってしてもらう!」
「はい、ぎゅー」
 その場でみゆをぎゅっと抱きしめる。
「にゃ!? ……にゃー♪」(嬉しい)
「完了しました」
「ぬぬ、お願いが完了しちったよ! んじゃんじゃ、なでなでしてもらう!」
「なでなで」
「にゃーにゃー♪ ……はうわっ、またなでられちった! このままではお願い事が尽きてしまうですにゃ!」
「ククク……兄が味わった苦しみをその身で味わうがいい!」
「にゅー……じゃあ、お兄ちゃんにちゅーしてもらう!」
「ぬ」
「お兄ちゃんはお外でみゆにちゅーするの恥ずかしがるので、これならお願いとして成立すること請け合い!」
「じゃあ兄はみゆとここでえっちする!」
「捕まりますが」
「がむでぶ! 俺の望みはすぐ捕まる!」
「じゃあ、そーゆーことでげっとれでぃーだよ、お兄ちゃん」
 二人でプールの中に入り、準備を行う。俺が勝っても何の権利も得られないが、公衆の面前で妹とキスという甘美な誘惑から逃れるためには、なんとしても勝たねば!
「すたーとって言ったらすたーとなのでもうすたーと!」
「卑怯スタートとは卑怯な、みゆ! そして卑怯スタートという名目なので卑怯なのは当たり前と言ってる間にすごい距離行かれた!」
 みゆを追いかけ、水をかく。特別水泳が得意というわけではなく、そして特別下手でもない俺の泳ぎでは、人魚のように水面を滑るみゆには一向に追いつけない。完璧超人め。
「このままでは……こうなってはターボ発動げぼげばごば」
 泳いでる最中に大口を開けたので口内に大量の水が入ってきたが、それでもなんとかターボを発動させる。
「! ターボとはやるね、お兄ちゃんげぼげば!」
「震えて眠るがいい、みゆごばげば!」
 二人してプールの水量を減らしながら、ターボの力を量る。気分の問題なので実際には変化がないはずだが、思い込みの強さは人類で五本の指に入るくらい強いので、かなり速度アップ。
「もう追いついてきたがばにゃばごば!」
「兄の底力思い知ったかごばげばごはっ!」
 いい加減腹がたぷたぷしてきたが、それでもみゆの足が届く範囲まで追いついた。そしてその結果、うにうに動くみゆの尻が目の前で揺れてるのでこれ以上先に進めない。
「……ぷはっ! みゆ、いっちゃーく!」
 そのまま普通にゴールされた。しょうがないのでみゆの泳いでたレーンへ移動し、勢いを殺さないままみゆの尻に顔を埋める。
「にゃにゃっ!? もー、お兄ちゃん! みゆのお尻に顔つっこまないの!」
「……ぷはっ。いや、尻が」
「にゅ? とにかく、みゆの勝ちだよ!」
「異論! 兄がみゆの躍動感あふれる尻を鑑賞せずに抜くことができないことを、みゆが気づかないだろうか。いや、そんなわけない。このレースで兄が勝てる可能性などなかったのだ!」
「……だからみゆを抜かなかったの?」
 こっくりうなずくと、ため息をつかれた。
「もう何百回とみゆのお尻見たろうに、お兄ちゃんって……」
「何度見ても飽きません」
「まあ、どっちにしてもみゆの勝ちだよ。ちゅーだよ、ちゅー!」
 うーむ。してもいいのだけど、恥ずかちいしなあ。なんかみんな見てるし。そりゃ、兄妹がちゅーちゅー言ってたら見るか。
「ぬー……約束を反故したら、大変な目に遭うよ?」
「具体的には?」
「てんちゅーって声と共に水着を剥がれ、そのまま女子更衣室に放り込まれる災難に巻き込まれる」
 その後の事態を考えなければ最高の災難だが、きっと自宅に戻るのに数ヶ月かかる。
「ちゅーと前科、どっちがいいかにゃー?」
 にんまりとした笑みを浮かべる妹に、両手を上げる。
「えへへー? ちゅーかにゃ?」
「分かった。俺も男だ、勘弁して下さい」
 そのまま手を水面に置き、土下座へ。だが、水中では土下座は難しい!
「……うーん、失敗したバタ足みたいだね。なので不許可!」
「じゃあしょうがない、ちゅーしましょう」
 水から顔を上げ、がっしとみゆの両肩に手をかける。
「わ、わわ……あ、あの、お兄ちゃん。優しく……ね?」
 うるうる揺れるみゆの瞳が、静かに閉じられる。ゆっくりとみゆの顔に唇を寄せ──
「げふーっ」
 ──てたら、みゆの口から重低音のゲップが出た。
「……え、えと」
「ま、まあ、沢山水飲んだしなあ。しょうがない」
「優しい反応は逆に酷だよ、お兄ちゃん!」
 もうキスとかそんな雰囲気は雲散霧消してしまったので、わははと笑いながらみゆの頭に手をのせる。
「うにゅー……とってもとっても残念だよ」
「ま、いいじゃん。普通に遊ぼうぜ」
「しょうがないけど……分かったよ、お兄ちゃん。しかし、みゆはまだ諦めてはいない! みゆはようやく登りはじめたばかりだからな、このはてしなく遠い男坂をよ……」
「妹が打ち切られた」
「にゃはは。んじゃ気を取り直して泳ご、お兄ちゃん?」
 連載再開を夢見て一緒に遊ぶ俺たちだった。

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