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2024年03月28日
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【バレンタインにチョコ渡し損ないホワイトデーに期待の持てないツンデレ】

2010年03月14日
 一ヶ月前のことは何一つ思い出したくない。戦果が0とか嘘だと言ってよバーニィ。
 だがしかし。それでも男には戦わねばならない時がある!
「具体的には記憶喪失を装い、バレンタインにチョコを貰った風で何気ない顔でホワイトデーにお返しを贈り、目当ての女の子と仲良くなるってえ寸法だ」
「……で、なんでそれをオレに言うんだ?」
 放課後、学校に残ってた友人のみおに相談したら、嫌な顔をされた。
「俺の演技力では記憶喪失を装うのは難しいし、ここはひとつみおに一発殴ってもらって実際に記憶を飛ばしてみようと思ったんだ。あ! でも、飛ばすのは記憶だけで生命は留まらせていただければ幸いです」
「なんでオレがそんなのやんなくちゃいけないんだよ。一人でやってろ、ばか」
「あと、パンツとか見せてもらっても幸いです」
「言いながらオレのスカートの中に入るなっ!」
「とても居心地がいいので住みたいです」
 たくさん殴られ蹴られたので、ほうほうの体で逃げ出す。
「畜生、しまぱんまでが俺を迫害する……!」
「いっ、言うなっ、ばかっ! えっち!」
 真っ赤な顔で俺をなじるみおだったが、そのような台詞は俺を喜ばすばかり。
「ふふん」
「なんで誇らしげなんだよっ! う~……あのなあっ! おまえのそーゆーとこ、すっごいダメだかんなっ! 分かってんのか!? ちょっとは反省しろっ、ばかっ!」
「知ってるけど、止められないんだ。体が勝手に動いたんだ」
「痴漢常習犯の台詞だぞ!?」
「大丈夫。俺の体が勝手に機能は、みおのしまぱんにしか発動しないから」
「うっ……い、いちいち人のパンツの柄を言うなっ! ばかっ、えっち!」
「白と薄い水色のコントラストが俺の心を掴んで離さないんだ。ただ、さらにもう一歩踏み込み、ローレグにしてくれると俺嬉しくて泣いちゃうかも。……いや、うん。泣きます!」
「そんな宣言知らんっ! お前もうどっか行けっ!」
「まあそう言わないで。俺を記憶喪失にしてくれたらどっか行くから」
「勝手にやってろ!」
 みおはぷりぷり怒って教室を出て行った。やりすぎたか。しょうがない、俺も帰ろうと思いながら鞄を取ろうとしたら、みおの席に鞄が置いてあるのに気づいた。
 あいつ、怒りすぎてて忘れたな。俺のせいだし、持っていってやるか。
 軽い駆け足で下駄箱へ急ぐ。果たして、ちょっと困ったような顔で所在なさげに立っているみおがそこにいた。恐らく鞄がないことに気づいたはいいが、怒って出て行った手前戻ることも出来ないのだろう。
「ん」
「あ……オレの鞄。……な、なんだよ、別に感謝なんかしないかんなっ!」
「か、勘違いしないでよねっ! 感謝されたくて持ってきたんじゃないからねっ!」
「どやかましいっ!」
 超怒られた。
「せっかく持ってきたのに怒られて悲しいが、まあいいや。一緒に帰ろうぜ、みお」
「う、うー……わ、わーったよ」
 みおとてくてく帰路に着く。
「……で?」
 その途中、みおが不意に口を開いた。
「はい?」
「だ、だから。……バレンタインにさ、誰に貰いたかったんだよ、チョコ」
 こちらを見ないまま、ぶっきらぼうにみおは俺に問い質した。
「誰って、まあ、別にいいじゃん」
「まあ、そだけどさ」
 ややあって。
「……誰でもいいならさ、別に教えてもいいよな?」
「まあ、そうなんだけど。逆に言えば、教えなくてもいいよな?」
「……あー、もう! いーよ、もう!」
 それからしばらくして。
「……な、なー?」
「ああもう。分かったよ。お前だよ、お前」
「ふぇ……っ!?」
 みおの口から変な声が出た。
「だから、お前だっての。一日中わくわくしてたのに、そのそぶりすらなかったので泣く泣く帰宅したのですよ」
「う、あ、う……」
「何を口をパクパクさせてる。気絶したいほど恥ずかしいのは俺だっつーの。ふん」
 顔に血が集まるのを感じたので、分からない程度に自分の顔をみおの反対に向ける。ええい。
「え、あ、いやだって、……う、嘘だろ! そーやってオレにお世辞言ってるだけだろ!」
「まあ、好きにとってくれ」
「う……うー!」
「頬を抓るな。痛いです」
「う、うっさい! ……え、えーと! あ、あのさ、お前さ、ホワイトデーにお返しを渡す相手誰もいないんだろ?」
「どこかの誰かが義理でも渡してくれなかったので、渡す権利が発生していないので。だからこそ、みおに俺が記憶喪失するように殴打してくれと頼んだんだけどな」
「なんで当の本人に頼むんだよ、ばか。……んでさ、その。……どーしてもってんなら、さ。……お、オレに渡してもいーぜ?」
 慌ててみおを見る。夕日のせいだかなんだか知らないが、みおの顔はまっかっかだった。
「ちっ、違うかんな!? べ、別にそーゆーのじゃなくて、お前があんまりにも哀れだったからで! みおは全然欲しくなんてなくて! え、えーと! あ、あの、罪滅ぼし! それで!」
「みおさん、一人称、一人称」
「あっ……う、うー」
 みおは興奮すると一人称がオレからみおへと変化するので、俺の好物となり危険です。
「うー!」
「なんで俺が唸られているの? そしてなんで俺の頬をつねっているの?」
「うっさい! いーから明日はオレに貢物よこせ! いーな!?」
「渡すとこの頬引っ張りは解除されるのでしょうか」
「されるから!」
「じゃあ、渡す」
「う、うん。……あ、あの、いちおー聞くけどさ、嫌々じゃないよな?」
 ……ここまで根掘り葉掘り聞いて、何を不安げな顔をしているかな、この娘は。
「確かに誰にもお返しできないってのは、男として矜持が許さない。だからと言って誰でもいい、という話でもない。その点、前述したように、みおが相手なら嬉しいことこの上ない」
「う……うー!」
「なぜ俺の頬引っ張りが再開されたのでしょうか」
「う、うっさい! そーゆーことを真顔で言うやつなんか信用できないから! とかそーゆーの!」
「そろそろ痛みで涙腺が決壊しますが、いいでしょうか」
「だから、なんでいっつも真顔なんだ!?」
「気を抜くと顔が緩み、嬉しさがはちきれるので」
「う……うーっ!!!」
「超痛いのですが」
 いつまで経っても頬引っ張りは解除されそうにないようだ。みおの真っ赤な顔を見ながら、そう思った。

 そんなわけで翌日、ちょっと高めのクッキーを買ってみおに渡す。
「ほい、お返し。……いや、貰ってないのだから、お返しってのはおかしいな。そうな、貢物だな。年貢?」
「人を悪代官にすんな、ばか。……で、でもそーだよな、何も渡してねーのにお返しって変だよな」
「あ、いやまあそうなんだけど、今回は俺のわがままを通してもらった形だし、気にすることはないと思うが」
「う、うっさい! オレを礼儀知らずにしたいのか!?」
「よく分からんなあ……」
「い、いーから! ……その、こ、これ」
 みおが後ろ手に持っていた包みが差し出された。これは……
「……チョコレート?」
「ちっ、違うかんな!? 別に渡せなかった奴とかじゃないから! こないだ沢山買って家に余ってたの! ホントに!」
「あー……。うん。ありがと、みお」
 感謝の意を込めて、みおの頭をなでる。この娘は標準より小さいので、なでやすくて俺に最適なので持って帰りてえ。
「う、うー……。お前、すぐみおの頭なでる……」
「みおさん、みおさん。一人称」
「え? ……あ、う、……うー!」
「照れ隠しに俺の頬を引っ張るのやめませんか」
「うっ、うるさいっ! 照れてなんかないもんっ!」
「しかし、そんな真っ赤な顔では信憑性が」
「うるさいうるさいうるさいっ! 文句言うぞチョコやんねーぞ!?」
「それは大変にいけない! 何も言わないのでどうか俺にチョコレートを」
「……そ、そんな欲しいの?」
「そりゃ、みおの一ヵ月ごしのバレンタインだし」
「そ、そーゆーのじゃないってば! これはみおが買いすぎて余ってただけなの!」
 またしても一人称が変わってるが、言うとまた俺の頬が大変なことになるので黙っておこう。
「と、とにかく。……はい、ちょこ。あげる」
 綺麗にラッピングされた包みを受け取る。なんかこれだけで生きてた甲斐があったような。
「……あ、あのさ。まじくても文句言うなよ?」
「え? あれ、これ手作り……?」
「な、なんだよ。いいじゃんか」
「や、さっき買いすぎで余ってるって」
 ややあって、みおの顔が音を立てて赤くなった。
「ち、ちがーの! 間違えただけなの! 市販品だけど、まずいって有名なとこで買ったから! ホントに!」
 無茶ないいわけだなあ、と思いながら改めて受け取った包みを見る。確かに綺麗にラッピングされているが、何箇所かに折り目がついていた。生まれつき不器用なコイツのことだ、何度も失敗したのだろう。
 ラッピングでそれなのだから、中身は推して知るべし、か。不器用ながら一生懸命……ええい、畜生。
「う、うー……にやにやすんな、ばか!」
「嬉しいと人間はニヤニヤしちまうもんなんだ。諦めろ」
「う、うぐぐ……うー!!!」
「だから、頬を引っ張るのはやめてくれと何度言ったか」
「うるさい! みおの勝手だもん!」
 もう全力で顔を赤くさせながら、俺の頬を引っ張り続けるみおだった。

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